説明

上腕保持装置、及び、上腕補助装置

【課題】利用者の前腕部分、及び、手部分の動きの関連づけを実現することの可能な上腕保持装置、及び、上腕補助装置を提供する。
【解決手段】肘下椀部40と連結された内側連結部41には、連結紐88を介してグローブ90連結されている。連結紐88は、非伸縮性で且つ変形自在の材料で構成されている。グローブ90は、連結紐88が変形することにより、内側連結部41と相対移動可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の上腕を保持する上腕保持装置、及び、利用者の上腕の動作を補助する上腕補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
利用者の体幹に保持しつつ、利用者の肩関節を駆動させる着用形関節駆動装置が知られている(例えば、特許文献1、2、3参照)。従来の着用形関節駆動装置では、肩関節に対応して回転する関節部が用いられていたが、前腕部分、及び、手部分の動きが考慮されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−340854号公報
【特許文献2】WO2004/087033A1
【特許文献3】特開2009−273711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮し、スムーズな動きを実現しつつ、利用者の前腕部分、及び、手部分の動きを、相互に伝達することの可能な上腕保持装置、及び、上腕補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の上腕保持装置は、利用者の体幹に支持される支持体と、利用者の体側に沿って回転可能な第1回転部材と、前記第1回転部材の回転方向と交差する方向に回転可能な第2回転部材と、前記第1回転部材及び前記第2回転部材と交差する方向に回転可能な第3回転部材と、を有する関節部と、利用者の体幹に近い側の近接位置と近接位置よりも利用者の体幹から遠い離間位置との間を移動可能に、前記関節部を前記支持体に保持する関節移動部と、前記関節部に取り付けられ、利用者の上腕部に装着される上腕装着部と、前記上腕装着部と前記第1回転部材の回転方向と同方向に回転可能に連結された肘回転部材と、前記肘回転部材に取り付けられ、利用者の肘下椀に装着される肘下椀部と、前記肘下椀部と連結され、利用者の手指間に肘下腕へ向かう力を作用させる受部が形成され、前記肘下椀部との距離を所定長以下となるように維持しつつ利用者の手に装着される手装着部と、を備えている。
【0006】
ここで、利用者の体側に沿った方向とは、利用者の体側と略平行な面を回転面とした回転方向をいう。
【0007】
請求項1に記載の上腕保持装置では、関節部が関節移動部により、利用者の体幹に近い側の近接位置と近接位置よりも利用者の体幹から遠い離間位置との間を移動可能とされて支持体に保持されている。したがって、利用者が肩関節を動作させた時の動きに合わせて関節部が近接位置と離間位置との間を移動することができ、利用者は、上腕をスムーズに動かすことができる。
【0008】
また、利用者の肘下椀に肘下椀部が装着されており、この肘下椀部は肘回転部材を介して第1回転部材の回転方向と同方向に回転可能に連結されているので、肘下椀部を第1回転部材の回転方向と同方向に動かすことができる。また、利用者の手指間に肘下腕へ向かう力を作用させる受部が形成された手装着部が、肘下椀部との距離が所定長さで維持されつつ利用者の手に装着されているので、肘下椀部の動き、特に前腕へ向かう力を利用者の手に伝達することができる。
【0009】
請求項2に記載の上腕保持装置は、前記手装着部が、前記肘下椀部に対して相対移動可能に連結されていること、を特徴とする。
【0010】
このように、手装着部を肘下椀部に対して相対移動可能にすることにより、利用者は手首を自由に動かすことができる。
【0011】
請求項3に記載の上腕保持装置は、前記肘下椀部の手首に近い側には、利用者の掌側に配置される内側連結部が構成され、前記手装着部は、前記内側連結部と連結されていること、を特徴とする。
【0012】
このように、肘下椀部において、利用者の掌側に配置される内側連結部に手装着部を連結させることにより、手装着部を装着した状態で、利用者は手首を掌が内側になるように容易に曲げることができる。
【0013】
請求項4に記載の上腕補助装置は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の上腕保持装置と、前記第1回転部材を回転させる第1アクチュエータと、前記第2回転部材を回転させる第2アクチュエータと、前記肘回転部材を回転させる肘アクチュエータと、を備えている。
【0014】
請求項4に記載の上腕補助装置では、第1アクチュエータを用いて第1回転部材を回転させ、第2アクチュエータを用いて第2回転部材を回転させることにより、請求項1〜3のいずれか1項に記載の上腕保持装置を装着した利用者の関節部の動作を補助することができる。また、肘アクチュエータを用いて肘回転部材を回転させることにより、請求項1〜3のいずれか1項に記載の上腕保持装置を装着した利用者の肘関節の動作を補助することができる。そして、本発明では、肘下椀部と手装着部との距離が所定長以下となるように維持され、かつ、受部が形成されているので、肘下椀部からの肘下腕へ向かう力を受けて利用者の手指間に作用させることができる。
【0015】
本発明の上腕補助装置は、請求項5に記載のように、前記第1アクチュエータ、第2アクチュエータ、及び、肘アクチュエータは、一端側が前記第1回転部材、前記第2回転部材、及び、肘回転部材に各々支持され、他端側が前記支持体に支持され、内部に空気を供給されることにより短縮する空気圧式アクチュエータで構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の上腕保持装置、及び上腕補助装置によれば、利用者の前腕部分、及び、手部分のスムーズな動きを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る上腕補助装置を示す斜視(一部分解)図である。
【図2】本発明の実施形態に係る上腕補助装置が腰部補助装置と連結されている状態の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る上腕補助装置の右腕側を上方からみた図である。
【図4】本発明の実施形態に係る上腕補助装置の右腕側のグローブを(A)は掌側からみた図であり、(B)は側方からみた図である。
【図5】本発明の実施形態に係る上腕補助装置が備えるアクチュエータの概略を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る上腕補助装置が備えるアクチュエータの給排気機構の概略を示す図である。
【図7】本実施形態に係る腰部補助装置の一部分解斜視図である。
【図8】利用者が起立状態で装着されている状態の本発明の実施形態に係る上腕補助装置を側方から見た図である。
【図9】利用者が前屈状態で荷物を持ち上げる際の動作を説明する説明図である。
【図10】利用者が荷物を持ち上げた状態で保持する際の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の腕保持装置、及び上腕補助装置の実施形態について図面を参照して説明する。なお、説明の便宜上、図中矢印FRにて示す利用者の前方側を前側とし、利用者の肩幅方向に相当する左右方向矢印Sは、この前方側を向いてみた場合の方向を基準とする。また、利用者の体幹に沿った体幹方向を矢印Hにて示す。
【0019】
図1には、本実施形態に係る上腕補助装置10が示されている。また、図2には、腰部補助装置60と連結された状態の上腕補助装置10が示されている。
【0020】
上腕補助装置10は、利用者の肩幅方向に沿って配置される肩フレーム12を備えている。肩フレーム12は、利用者の体幹に沿って互いに平行に配置される2本の背中フレーム13の上部で2本の背中フレーム13を架け渡すように配置され固定されている。
【0021】
肩フレーム12の上面には、ガイドレール14が設けられている。ガイドレール14は、肩フレーム12の左右に各々設けられている。一方のガイドレール14Rは、肩フレーム12の肩幅方向Sの中央側から僅かに右前方に向かう方向に沿って配置されており、右先端部は肩フレーム12の右端部外側に突出されている。他方のガイドレール14Lは、肩フレーム12の肩幅方向の中央側から僅かに左前方に向かう方向に沿って配置されており、左先端部は肩フレーム12の左端部外側に突出されている。
【0022】
ガイドレール14Rには、移動プレート16が係合されている。移動プレート16は、図3に示すように、ガイドレール14Rに沿って、利用者の体幹に近い側の近接位置P1と、近接位置P1よりも利用者の体幹から遠い離間位置P2との間を移動可能とされている。移動プレート16上面前側には、取付突部材18が固定されている。取付突部材18は、移動プレート16上に立設されており、取付突部材18には上側が僅かに体幹に沿った体幹方向Hから利用者の体幹側へ傾斜した取付面18Fが構成されている。
【0023】
取付面18Fには、第3回転部材20が取り付けられている。第3回転部材20は、所謂ヒンジ(蝶番)で構成されており、内板部20A及び外板部20Bを有している。内板部20Aの一方の板面は、取付面18Fに固定されている(図1参照)。内板部20A及び外板部20Bは、取付面18Fに沿った第3回転軸20Rを回転軸として第3方向D3に回転可能とされている。
【0024】
外板部20Bの板面には、第2回転部材22が取り付けられている。第2回転部材22は、図1に示すように、第2取付板23、第2軸部24、第2軸受部25、及び、L字アーム部26を有している。第2取付板23は、円板状とされ、一方の面側が第3回転部材20の外板部20Bに取り付けられている。第2軸部24は、円板状とされ、第2取付板23の他方の面側に取り付けられている。第2軸受部25は、円板状とされ中央に第2軸部24を配置可能な穴25Aが構成されている。第2軸部24は穴25Aに挿入されている。第2軸受部25と第2軸部24とは、第2軸受部25の内周に設けられた不図示の軸受けによって相対回転可能とされている。第2軸受部25の第2取付板23と逆側面にはL字アーム部26が取り付けられている。
【0025】
L字アーム部26は、略L字状に屈曲された長尺板で構成されている。L字アーム部26は、L字の内側が利用者の前方に向くように配置されている。L字アーム部26の一端の外面側に第2軸受部25が取り付けられている。これにより、L字アーム部26は、外板部20Bの法線方向である第2回転軸22Rを回転軸として、第3方向と交差する第2方向D2に回転可能とされている。
【0026】
L字アーム部26の他端内側には、第1回転部材32が取り付けられている。第1回転部材32は、第1取付板33、第1軸部34、第1軸受部35、及び、アーム部36を有している。第1取付板33は、円板状とされ、一方の面側がアーム部36に取り付けられている。また、第1軸受部35の片面側は、L字アーム部26の他端内側に取り付けられている。第1取付板33、第1軸部34、及び第1軸受部35の形状及び相互の取付構造については、第2取付板23、第2軸部24、及び第2軸受部25と同様である。第1軸受部35と第1軸部34とは、第1軸受部35の内周に設けられた不図示の軸受けによって相対回転可能とされている。第1軸受部35の第1取付板33と逆側面にはアーム部36が取り付けられている。
【0027】
アーム部36は、長尺板状とされ、一端側の板面が第1取付板33に取り付けられている。アーム部36は、第2回転軸22Rと略直交する第1回転軸32Rを回転軸として、第1方向D1に回転可能とされている。
【0028】
アーム部36の長尺方向の中間部より先端側には、上腕装着部38が設けられている。上腕装着部38は、弧状に湾曲された板状とされ、利用者の上腕下側を覆うように配置されている。なお、上腕装着部38は、利用者の上腕部に固定される必要はないが、面ファスナー等により上腕を一周覆うように配置されていてもよい。
【0029】
アーム部36の先端には、肘回転部材42が取り付けられている。肘回転部材42は、肘取付板43、肘軸部44、肘軸受部45及び、肘連結部46を有している。肘取付板43は、円板状とされ、一方の面側が肘連結部46に取り付けられている。また、肘軸受部45の片面側は、肘連結部46の肘取付板43と逆側面に取り付けられている。肘取付板43、肘軸部44、及び、肘軸受部45の形状及び相互の取付構造については、第2取付板23、第2軸部24、及び第2軸受部25と同様である。肘軸受部45と肘軸部44とは、肘軸受部45の内周に設けられた不図示の軸受けによって相対回転可能とされている。肘連結部46は、肘軸部44の中心軸42Rを中心として、アーム部36の回転方向である第1方向D1と同方向に回転可能となるように、連結されている。
【0030】
肘連結部46には、肘下椀部40が一体的に連結されている。肘下椀部40は、利用者の肘下椀の下側を受けるように肘下椀(前腕)に沿って配置され、肘側で肘連結部46に連結されている。肘下椀部40の手首側端部40Eには、利用者の手首付近で掌側を覆う内側連結部41が構成されている。内側連結部41は、肘下椀部40の手首側端部40Eにおいて腕幅方向の一方の端辺から他方の端辺へ架け渡されている。肘下椀部40は、肘軸部44を中心軸として第1方向D1に回転可能とされている。
【0031】
内側連結部41には、手装着部としてのグローブ90連結されている。グローブ90は、連結紐88を介して内側連結部41と連結されており、連結紐88の一端が内側連結部41に取り付けられ、連結紐88の他端がグローブ90に取り付けられている。連結紐88は、非伸縮性で且つ変形自在の材料で構成されており、内側連結部41とグローブ90との距離は、長さL1よりも長くならないようになっている。また、グローブ90は、連結紐88が変形することにより、長さL1の範囲内において、内側連結部41と相対移動可能となっている。
【0032】
図4に示されるように、グローブ90は、いわゆる手袋の形状とされており指先部分が覆われていないもので構成されている。グローブ90は、利用者の手指HFを挿通可能な5本の手指部92を備えており、隣り合う手指部92の間の各々には、受部94が構成されている。受部94は、隣り合う手指部92同士を連結し、利用者の手指間(水かき部分)に肘下椀へ向かう方向(矢印F)方向へ向かう力を利用者の手HAに伝達することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、グローブ90の指先が開放されているものを用いているが、指先の覆われたものを用いてもよい。
【0034】
本実施形態では、前述した肩フレーム12、ガイドレール14、移動プレート16、取付突部材18、第3回転部材20、第2回転部材22、第1回転部材32、及び、肘下椀部40、肘回転部材42、及び、グローブ90で、上腕保持装置11が構成されている。また、第3回転部材20、第2回転部材22、第1回転部材32で、肩関節部が構成されている。
【0035】
なお、上記では、ガイドレール14R側に配置されて利用者の右腕を保持する、移動プレート16、取付突部材18、第3回転部材20、第2回転部材22、第1回転部材32、及び、肘下椀部40について説明した。図中では省略されているが、ガイドレール14L側に配置されて利用者の左腕を保持する、移動プレート16、取付突部材18、第3回転部材20、第2回転部材22、第1回転部材32、肘下椀部40、及び、肘回転部材42も、上記と左右対称に設けられている。
【0036】
背中フレーム13の上部後方側には、第1アクチュエータ50、第1アクチュエータ50U、第2アクチュエータ52、及び、肘アクチュエータ53が配置されている。
【0037】
第1アクチュエータ50、第2アクチュエータ52、及び、肘アクチュエータ53は、空気圧式アクチュエータ(流体圧式アクチュエータ、所謂、McKibben人工筋肉)とされている。図5(A)(B)に示すように、空気圧式アクチュエータACは、膨張収縮体であるインナーチューブICと、インナーチューブICを覆う網状の被覆体であるメッシュスリーブMSとを備えている。メッシュスリーブMSは、例えば伸縮性を持たない高張力繊維等の線材により構成されている。また、メッシュスリーブMSの長さ(軸)方向の両端部は、インナーチューブICの長さ方向の両端部に固定されている。
【0038】
図5(B)に示すように、インナーチューブICは、内部に空気が供給されることにより膨張する。そして、インナーチューブICの膨張は、メッシュスリーブMSにより空気圧式アクチュエータAC全体の長さの縮小に変換される。即ち、空気圧式アクチュエータACは、空気が供給されると、径が拡大されつつ長さが縮小される。この長さの縮小により、空気圧式アクチュエータACはその短縮方向への力Fを発生する。
【0039】
図6に示すように、第1アクチュエータ50、第1アクチュエータ50U、第2アクチュエータ52、及び、肘アクチュエータ53(第1アクチュエータ50U、第2アクチュエータ52及び肘アクチュエータ53については不図示)には、スイッチSWを介してコンプレッサCPが接続されている。スイッチSWは、第1アクチュエータ50、第1アクチュエータ50U、第2アクチュエータ52、及び、肘アクチュエータ53の各々に対応して給気スイッチS1と排気スイッチS2が設けられており、給気スイッチS1がオン、且つ、排気スイッチS2がオフにされた場合には、コンプレッサCPから当該給気スイッチS1に対応する第1アクチュエータ50、第1アクチュエータ50U、第2アクチュエータ52、肘アクチュエータ53へ圧縮空気が供給され、排気スイッチS2がオン、且つ、給気スイッチS1がオフにされた場合には、対応する第1アクチュエータ50、第1アクチュエータ50U、第1アクチュエータ50U、第2アクチュエータ52、肘アクチュエータ53内の空気が排気される。
【0040】
図2に示すように、第1アクチュエータ50の一端側には、ワイヤ50Rが取り付けられている。ワイヤ50Rの一端部は、第1回転部材32の第1軸受部35の外周面に固定され、ワイヤ50Rの他端部は、第1アクチュエータ50の一端部に固定されている。ワイヤ50Rは、第1軸受部35の第1回転軸32Rの後方側(利用者の背中側)において第1軸受部35の上方から巻き掛けられるようになっている。
【0041】
また、第1アクチュエータ50Uの一端側には、ワイヤ50URが取り付けられている。ワイヤ50URの一端部は、第1回転部材32の第1軸受部35の外周面に固定され、ワイヤ50URの他端部は、第1アクチュエータ50Uの一端部に固定されている。ワイヤ50URは、第1軸受部35の第1回転軸32Rの前方側(利用者の前側)において第1軸受部35の上方から巻き掛けられるようになっている。すなわち、ワイヤ50Rと逆方向に巻き掛けられている。
【0042】
また、第2アクチュエータ52の一端側にも、ワイヤ52Rが取り付けられている。ワイヤ52Rの一端部は、第2回転部材22の第2軸受部25の外周面に固定され、ワイヤ52Rの他端部は、第2アクチュエータ52の一端部に固定されている。ワイヤ52Rは、第2軸受部25の第2回転軸22Rの利用者から遠い側において第2軸受部25の上方から巻き掛けられるようになっている。
【0043】
また、肘アクチュエータ53の一端側にも、ワイヤ53Rが取り付けられている。ワイヤ53Rの一端部は、肘回転部材42の第肘軸受部45の外周面に固定され、ワイヤ53Rの他端部は、肘アクチュエータ53の一端部に固定されている。ワイヤ53Rは、肘軸受部45の肘回転軸52Rの利用者から遠い側において肘軸受部45の上方から巻き掛けられるようになっている。
【0044】
次に、腰部補助装置60について説明する。図2に示すように、腰部補助装置60は、利用者の腰部に装着される腰フレーム62、利用者の背部に装着される背中フレーム13、腰フレーム62と背中フレーム13とを連結する腰回転部66、及び、大腿パット77を備えている。背中フレーム13は、上腕保持装置11と共用とされている。
【0045】
腰フレーム62は、平面視にて前方に開口した略半円状(U字状)とされ、腰フレーム62の左右両端に、腰回転部66が配設されている。腰回転部66を介して、腰フレーム62が背中フレーム13と連結されている。
【0046】
図7に示すように、腰回転部66は、腰連結部67、フランジ部材68、軸部材69、及び、接続プレート70を備えている。腰連結部67は、方形板状のプレート部67A及び、円筒状の円筒部67Bを備えている。プレート部67Aは、板面が利用者の体側に沿うように配置され、腰フレーム62の左右両端部に各々固定されている。円筒部67Bは、プレート部67Aの板面から法線方向に突出され、肩幅方向に配置されている。
【0047】
フランジ部材68は、一対の円板の間にワイヤ巻き取り部が構成された糸巻き形状とされ、円筒部67Bが挿通される穴68Hが構成されている。フランジ部材68は、円板の一方面が腰連結部67に固定されている。
【0048】
接続プレート70は、略L字状のL字部70A、略円板状の円板部70Bを備えている。L字部70Aは、背中フレーム13の下端部にL字が前方へ向かうように配置され背中フレーム13に固定されている。円板部70Bは、L字部70Aの先端部内側に固定されている。円板部70Bには、円筒部67Bに対応する位置に穴(不図示)が構成されている。
【0049】
軸部材69は、円板状のフランジ部69A、及び、フランジ部69Aと一体的に構成されフランジ部69Aの板面から法線方向に突出する軸部69Bを備えている。軸部材69は、軸部69Bを円筒部67Bの中空に挿入した状態で、フランジ部69Aが円板部70Bの外側面に固定されている。したがって、腰連結部67及びフランジ部材68と、軸部材69及び接続プレート70とは、軸部69Bを回転軸として相対回転可能とされている。これにより、腰フレーム62と背中フレーム13とが、腰回転部66を介して相対回転可能となっている。
【0050】
各大腿パット77は、変形自在な素材により略円筒状に構成されている。この大腿パット77の前側には、上下方向(大腿パット77の軸方向)に沿って延在する分割線77Aが形成されており、大腿パット77の前側は、分割線77Aを境にして左右に開くことができるようになっている。大腿パット77は、連結チューブ73により、腰フレーム62の後側に形成された環状部62Rに取り付けられている。
【0051】
大腿パット77の左右の下端部には、ストッパ部材としてのゴムチューブ74の両端部がそれぞれ連結されており、U字状のゴムチューブ74が、大腿パット77から垂下されている。このゴムチューブ74の長さは、足裏に引掛けることができ、且つ、その状態で遊びがないように設定されており、ゴムチューブ74を足裏に引掛けた状態で、大腿パット67の上方へのずれが制限されるようになっている。
【0052】
背中フレーム13の後側には、各々腰用アクチュエータ54が配置されている。腰用アクチュエータ54の一端側にはそれぞれ、ワイヤ54Rが取り付けられている。ワイヤ54Rの一端部は、接続プレート70の角部に配置された滑車71を介してフランジ部材68の外周面に固定され、ワイヤ54Rの他端部は、腰用アクチュエータ54の一端部に固定されている。ワイヤ54Rの他端側は、フランジ部材68の後方側(利用者の背中側)においてフランジ部材68の下方から巻き掛けられるようになっている。
【0053】
なお、腰用アクチュエータ54の構成ついては、第1アクチュエータ50と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0054】
図2に示すように、上腕補助装置10の肩フレーム12の上面中央部2箇所には、ベルト上取付部12Bが形成されている。また、腰フレーム62の屈曲部分の各々には、ベルト下取付部62Bが形成されている。ベルト上取付部12B及びベルト下取付部62Bには、2本の肩ベルト80の一端と他端が各々取り付けられている。肩ベルト80の長手方向の中間部には、連結ベルト81が連結されている。連結ベルト81は、各々の肩ベルト80の中間部から利用者の正面に向かって肩幅方向Sに延出され、中央部で留め具81Aにより互いに連結可能とされている。肩ベルト80は、利用者の背中から肩前を経由して腰部後側に至るようにして利用者に装着され、連結ベルト81は、利用者の正面側で2本の肩ベルト80を連結する。
【0055】
図8に示すように、腰フレーム62の両端に取り付けられた腰連結部67の各々には、腰前ベルト82、及び、腰後ベルト84が固定されている。腰前ベルト82は、各々の腰連結部67の先端側から延出されており、利用者の正面付近で各々の腰前ベルト82が留め具82Aにより連結可能とされている。腰後ベルト84は、一方の腰連結部67の後端側から他方の腰連結部67へ架け渡されるように、腰フレーム62の内側に沿って配置され、腰フレーム62に固定されている。
【0056】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0057】
図8に示すように、装着時には、上腕補助装置10及び腰部補助装置60の背中フレーム13は、利用者の背中に沿って配置され、第2回転部材22のL字アーム部26が利用者の肩の外側に配置される。利用者の上腕の前側に上腕装着部38が配置され、利用者の肘下腕部の下側に肘下受部42が配置される。なお、図6では、左腕に対応する第1回転部材32、第2回転部材22、第3回転部材20、肘回転部材42等の上腕保持装置の部分は省略されている。
【0058】
利用者の肩関節が動かされると、利用者の上腕は、肩関節の回転中心を変えながら、第1方向D1、第2方向D2、第3方向D3に回転する。利用者の上腕が第1方向D1に回転すると、図6に示すように、第1回転部材32が第1回転軸32R周りに回転し、第2方向D2に回転すると、第2回転部材22が第2回転軸22R周りに回転し、第3方向D3に回転すると、第3回転部材20が第3回転軸20R周りに回転する。そして、利用者の肩関節の回転中心の移動にあわせて、移動プレート16がガイドレール14に沿って近接位置P1と離間位置P2との間を移動する。
【0059】
本実施形態では移動プレート16により、肩関節の回転中心の移動にあわせた移動が可能なので、利用者の上腕のスムーズな動きを実現することができる。
【0060】
なお、本実施形態では、ガイドレール14を直線状として直線状に構成したが、利用者の肩に沿った曲線状として、この方向に移動プレート16を移動させてもよい。
【0061】
利用者が荷物Nを持ち上げるときには、図9に示すように、第1アクチュエータ50を短縮させると共に、肘アクチュエータ53も短縮させる。第1アクチュエータ50、肘アクチュエータ53の短縮は、第1アクチュエータ50、肘アクチュエータ53のスイッチSWの給気スイッチS1をオン、且つ排気スイッチS2をオフにして、第1アクチュエータ50、肘アクチュエータ53へ給気することで行われる。これにより、第1回転部材32を中心として、アーム部36に対して矢印F1Rの力が作用する。また、肘回転部材42を中心として、肘下椀部40に対して矢印F2の力が作用する。そして、グローブ90には、上方向の力F3が作用し、この力F3が受部94で受けられて利用者の手HAに伝達され、手HAで保持した荷物Nを持ち上げることができる。
【0062】
本実施形態では、グローブ90の受部64で力F3を受けて利用者の手HAへ伝達するので、グローブ90を装着しない場合と比較して、肘下椀部40が利用者の上腕側へずれるなどの不都合が生じにくく、力F3を効率よく伝達して、スムーズに荷物Nを持ち上げる矢印F4方向の力を作用させることができる。
【0063】
また、図10に示すように、荷物Nを持ち上げた状態で保持する場合には、第1アクチュエータ50Uを短縮させると共に、肘アクチュエータ53も短縮させる。第1アクチュエータ50U、肘アクチュエータ53の短縮は、第1アクチュエータ50U、肘アクチュエータ53のスイッチSWの給気スイッチS1をオン、且つ排気スイッチS2をオフにして、第1アクチュエータ50U、肘アクチュエータ53へ給気することで行われる。これにより、第1回転部材32を中心として、アーム部36に対して矢印F1Uの力が作用する。また、肘回転部材42を中心として、肘下椀部40に対して矢印F2の力が作用する。そして、グローブ90には、利用者の肘側へ向かう力F3が作用し、この力F3が受部94で受けられて利用者の手HAに伝達される。したがって、荷物Nによる下向きの荷重Wは、肘下椀部40の手首側端部40Eだけでなく、グローブ90側にも分散される。これにより、利用者の肘下椀の手首側端部40Eとの境界部分における負担が減少し、荷物Nの保持状態を容易に維持することができる。
【0064】
なお、本実施形態では、利用者の手を覆うグローブ90を装着する例について説明したが、必ずしも手を覆うものでなくてもよく、利用者の手指間に肘下椀部40側へ向かう力を作用させることの可能な受部を有する形状とすることもできる。
【0065】
以上、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、本実施形態では、アクチュエータとして、空気圧式アクチュエータを用いたが、モータの作動により回転体に巻き付けられ、又は回転体から巻き出されるワイヤを、アクチュエータとして用いてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10 上腕補助装置
11 上腕保持装置
12 肩フレーム
14 ガイドレール
16 移動プレート
18 取付突部材
20 第3回転部材
22 第2回転部材
32 第1回転部材
38 上腕装着部
40 肘下椀部
41 内側連結部
42 肘回転部材
50 第1アクチュエータ
50U 第1アクチュエータ
53 肘アクチュエータ
88 連結紐
90 グローブ
94 受部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の体幹に支持される支持体と、
利用者の体側に沿って回転可能な第1回転部材と、前記第1回転部材の回転方向と交差する方向に回転可能な第2回転部材と、前記第1回転部材及び前記第2回転部材と交差する方向に回転可能な第3回転部材と、を有する関節部と、
利用者の体幹に近い側の近接位置と近接位置よりも利用者の体幹から遠い離間位置との間を移動可能に、前記関節部を前記支持体に保持する関節移動部と、
前記関節部に取り付けられ、利用者の上腕部に装着される上腕装着部と、
前記上腕装着部と前記第1回転部材の回転方向と同方向に回転可能に連結された肘回転部材と、
前記肘回転部材に取り付けられ、利用者の肘下椀に装着される肘下椀部と、
前記肘下椀部と連結され、利用者の手指間に肘下腕へ向かう力を作用させる受部が形成され、前記肘下椀部との距離を所定長以下となるように維持しつつ利用者の手に装着される手装着部と、
を備えた上腕保持装置。
【請求項2】
前記手装着部は、前記肘下椀部に対して相対移動可能に連結されていること、を特徴とする請求項1に記載の上腕保持装置。
【請求項3】
前記肘下椀部の手首に近い側には、利用者の掌側に配置される内側連結部が構成され、
前記手装着部は、前記内側連結部と連結されていること、を特徴とする請求項2に記載の上腕保持装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の上腕保持装置と、
前記第1回転部材を回転させる第1アクチュエータと、
前記第2回転部材を回転させる第2アクチュエータと、
前記肘回転部材を回転させる肘アクチュエータと、
を備えた上腕補助装置。
【請求項5】
前記第1アクチュエータ、第2アクチュエータ、及び肘アクチュエータは、一端側が前記第1回転部材、前記第2回転部材、及び肘回転部材に各々支持され、他端側が前記支持体に支持され内部に空気を供給されることにより短縮する空気圧式アクチュエータとされていること、を特徴とする請求項4に記載の上腕補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−239818(P2012−239818A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115910(P2011−115910)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】