説明

下水処理装置

【課題】本発明の課題は、消費電力削減とNO放出量を抑制し、下水処理場から排出されるCOを削減できる下水処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の下水処理装置は、活性汚泥により下水を処理する下水処理装置G1であって、活性汚泥が投入され、流入する下水が生物反応して処理される生物反応槽1と、生物反応槽1内の液体の酸化還元電位を計測する酸化還元電位計測手段4と、生物反応槽1内の液体に酸素を供給する曝気手段2と、酸化還元電位計測手段4の計測値を基に生物反応槽1のNOガス生成量を推定し、NOガス生成量の推定値に基づき曝気手段2を制御する第1制御手段3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理の過程で発生する温室効果ガスおよびCO排出量を削減するための下水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理方式には活性汚泥と呼ばれる微生物で下水中の窒素、リン等を生物学的に処理する活性汚泥法がある。活性汚泥法では下水中の窒素は、アンモニア体窒素(NH−N)を硝酸体窒素(NO−N)に酸化する硝化工程と、硝酸体窒素(NO−N)を窒素ガス(N)に還元する脱窒工程により除去される。
【0003】
しかし、硝化工程、脱窒工程の副生成物としてNOが生成することが知られている。NOはCOに比べ310倍程度の温室効果を有しており、温室効果が高いことから地球温暖化防止のための排出削減対象物質になっている。
O生成量が増加する条件は、硝化反応の進行および不完全な脱窒反応が挙げられる(非特許文献1)。
【0004】
硝化反応に伴い生成する硝酸体窒素(NO−N)の生成量を酸化還元電位(以下、ORP(Oxidation-reduction Potential)と称す)により推定し、生物反応槽の曝気流量や反応槽間の循環流量を制御する方法が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−038683号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】下水道の長期的技術開発に関する基礎調査,(財)下水道新技術推進機構(1996)http://www.jiwet.jp/result/annual/plan/1996a1-1-2m.htm
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、NO生成量を抑制する手段には硝化反応の抑制や脱窒反応の促進が挙げられる。特許文献1では硝化反応や脱窒反応は反応に伴い、ORPが変化することを利用して微生物に酸素を与えるための曝気流量や反応槽間の循環流量を制御しているが、NOが発生することについては考慮されていない。このため、曝気のためのブロワ(送風機)や循環ポンプの電力消費量は削減できるが、NOを含めた下水処理場全体のCO排出量を削減できない恐れがある。
【0008】
本発明は上記実状に鑑み、ブロワ、ポンプなどの消費電力削減とNO放出量を抑制し、下水処理場から排出されるCOを削減できる下水処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、第1の本発明に関わる下水処理装置は、活性汚泥により下水を処理する下水処理装置であって、前記活性汚泥が投入され、流入する下水が生物反応して処理される生物反応槽と、前記生物反応槽内の液体の酸化還元電位を計測する酸化還元電位計測手段と、前記生物反応槽内の液体に酸素を供給する曝気手段と、前記酸化還元電位計測手段の計測値を基に前記生物反応槽のNOガス生成量を推定し、前記NOガス生成量の推定値に基づき前記曝気手段を制御する第1制御手段とを備えている。
【0010】
第2の本発明に関わる下水処理装置は、活性汚泥により下水を処理する下水処理装置であって、前記活性汚泥が投入され、流入する下水が生物反応して処理される生物反応槽と、前記生物反応槽内の液体の酸化還元電位を計測する酸化還元電位計測手段と、前記生物反応槽内の液体に酸素を供給する曝気手段と、前記生物反応槽内の排気ガス中のNOガス量を計測するNO計測手段と、前記酸化還元電位計測手段の計測値と前記NO計測手段の計測値とに基づいて前記曝気手段を制御する第2制御手段とを備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、酸化還元電位計測手段、NO計測手段等の計測値を基に生物反応槽の運転を制御することで、曝気風量を削減し、かつNOガス発生(生成)量を抑制できるため、下水処理場のCO排出量を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係わる実施形態1の下水処理装置を示す概念的構成図である。
【図2】実施形態1の実験結果の好気槽のORP(酸化還元電位)とNO生成量との関係を示す図である。
【図3】実施形態2の下水処理装置を示す概念的構成図である。
【図4】実施形態2の実験結果の嫌気槽のORP(酸化還元電位)とNO生成量との関係を示す図である。
【図5】実施形態3の下水処理装置を示す概念的構成図である。
【図6】実施形態3のNO生成レベルの分類の例を示す図である。
【図7】実施形態4の下水処理装置を示す概念的構成図である。
【図8】実施形態4の制御手段の制御方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
(実施形態1)
図1に、本発明に係わる実施形態1の下水処理装置G1の概念的構成図を示す。
実施形態1の下水処理装置G1は、複数の微生物群を含む活性汚泥が投入され、流入する下水(被処理水)を微生物群で生物反応させて処理する生物反応槽1を備える。
【0014】
生物反応槽1の後段には沈殿池5(図1中、二点鎖線で示す)が備えられており、生物反応槽1から送られる処理水を活性汚泥の沈殿により、沈殿した活性汚泥と上澄みの処理水とに固液分離する。
図示していないが、沈殿池5で分離された活性汚泥の一部は生物反応槽1に返送汚泥として戻される。
【0015】
下水処理装置G1の生物反応槽1には、生物反応槽1に流入する下水(液体)中に空気などの酸素含有気体を供給する曝気手段2が設置されている。曝気手段2から生物反応槽1に送られた空気などの酸素含有気体は、槽内の撹拌と下水を処理する際に活性汚泥が必要とする酸素を供給している。
また、生物反応槽1には、反応液の酸化還元電位(ORP)を計測するORP計4が生物反応槽1に設置されている。
【0016】
下水処理装置G1には、ORP計4の計測値が送信される制御手段3が設置されており、制御手段3は、ORP計4の計測値に従って曝気手段2を制御し、生物反応槽1への曝気量を調整している。制御手段3は、コンピュータ、回路等で成るコントローラ等で構成される。
【0017】
ところで、生物反応槽1の下水処理におけるNO生成条件の一つに、アンモニア体窒素(NH−N)を硝酸体窒素(NO−N)に酸化する硝化反応の進行が挙げられる。
生物反応槽1に流入する下水中に含まれるアンモニア体窒素(NH−N)は、活性汚泥による硝化反応でNO−Nを経てNO−Nに酸化される。そのため、NOが硝化工程の副生成物として生成される。
【0018】
硝化反応は、アンモニア体窒素(NH−N)に酸素原子(O)が化学結合する酸化反応であるため、曝気手段2による酸素(O)の供給量によって反応量を制御できる。このように、硝化反応の進行に伴い電子のやり取りが行われることから、ORP(酸化還元電位)は上昇する。このため、ORPは硝化反応の間接的な指標となる。
【0019】
図2に、発明者らが実施した実験の結果である好気槽でのORP(酸化還元電位)とNO(ガス)生成量との関係を示す。なお、生物反応槽1を、その内部の液体に、空気などの酸素含有気体を供給する場合を好気槽と称し、空気などの酸素含有気体を供給しない場合を嫌気槽と称する。
【0020】
図2から、好気槽においては、NO(ガス)生成量(以下、NO生成量と記載)はORP(酸化還元電位)の上昇にほぼ比例して増加することが分かる。この結果より、好気槽において、硝化反応を促進するために、ORPを上昇させることを目的として曝気量を増加させることは、曝気手段2の動力由来のCO排出量(曝気手段2の電力消費に起因するCO排出量)の増加に加え、NOに由来するCO排出量も増加させることが明らかある。なお、NOに由来するCO排出量とは、NO(ガス)生成量をCO排出量に換算したものをいう。
【0021】
次に、制御手段3の制御方法について説明する。
制御手段3のメモリ等の記憶部には、予め、図2に示す好気槽のORPとNO生成量の関係式の情報が入力されている。一例として図2の実験結果の点を内挿、外挿して一次関数の近似式として入力すると、例えば直線の線形式となる。これにより、制御手段3は、入力されたORPとNO生成量の関係式(近似式)を用いて、ORP計4の計測値からNO生成量を算出する。
【0022】
制御手段3は、予め設定されたNO生成量の目標値になるように曝気手段2の送気量を制御する。
窒素の流入負荷が大きい下水処理装置G1では、NOが多く生成されるため、NO生成量の目標値を大きく設定するとよい。また、ORP計4の設置場所が生物反応槽1の上流側に近いほど、相対的に、下流側での化学反応量が多くNO(ガス)の生成量が多くなると想定されるため、NO生成量の目標値を小さく設定すると良い。
【0023】
実施形態1によれば、ORP計4の計測値を基に曝気手段2を制御することで曝気風量を削減しつつNO発生量を抑制できるため、下水処理場のCO排出量を削減できる。また、温室効果が大きいNOの生成量を目標とする量に制御でき、地球温暖化防止に貢献できる。
【0024】
(実施形態2)
図3に、実施形態2の下水処理装置G2の概念的構成図を示す。
実施形態2の下水処理装置G2は、図1に示す実施形態1の生物反応槽1を嫌気槽21Aと好気槽21Bとに分割して設け、好気槽21Bで処理した反応液(液体)を嫌気槽21Aに循環させるための循環ポンプ(循環手段)25を設置したものである。
実施形態2のその他の構成は、実施形態1の構成と同様であるので、同様な構成要素には、実施形態1の構成要素に20番台の符号を付して示し、詳細な説明を省略する。
【0025】
下水処理装置G2の循環ポンプ25は、コントローラなどの制御手段23によって流量を制御される。
また、ORP計24が、嫌気槽21Aに設置され、嫌気槽21Aの反応液(液体)のORPが測定される。嫌気槽21Aは、硝酸体窒素(NO−N)が窒素ガス(N)に還元される脱窒反応が進行する反応槽であり、無酸素槽とも呼ばれる。
Oは、嫌気槽21Aの脱窒工程おいて、硝酸体窒素(NO−N)の酸素原子(O)が分離され窒素(N)に還元される過程で生成する。すなわち、NOは、NO−N → NO−N → NO → Nと反応が進む還元される過程で生成する。
【0026】
嫌気槽21Aにおける脱窒反応が良好に進行している場合、NOはNガスとなり大気中に発散するが、脱窒反応が不完全、すなわち脱窒不良になると溶解性NOが嫌気槽21Aの反応液(液体)内に蓄積する。嫌気槽21A内の溶解性NOを含む反応液が、嫌気槽21Aから好気槽21Bへ流下すると、好気槽21Bにおいて、反応液中の溶解性NOが、曝気によりパージされ排ガス中のNO濃度が大きく増加する。
そのため、嫌気槽21Aにおいて脱窒不良を回避して溶解性NOの蓄積を抑制できれば、好気槽21BからのNOの排出量を削減できる。
【0027】
図4に、発明者らが実施した実験の結果である嫌気槽のORP(酸化還元電位)とNO生成量との関係を示す。
O生成量は嫌気槽21AのORPの上昇に伴い増加することが分かる。図4の結果より、NO生成量をORPに対して指数関数による近似式でNO生成量を推定できることが分かる。なお、指数関数の代わりにORP値を変数とする2次式等の線形式の近似式を用いてNO生成量を推定してもよい。
【0028】
次に、下水処理装置G2の制御手段23の制御方法について説明する。
嫌気槽21AのORPの増加は、循環ポンプ25の循環に伴い、好気槽21Bから嫌気槽21Aに循環される反応液中のNO−NのNに対する脱窒時に消費される流入水由来の有機物の炭素源(C)の比率(C/N)の低下や、反応液の循環による嫌気槽21Aへの溶存酸素の持ち込みが起因する。なお、NO−Nの脱窒工程で、有機物(炭素源(C))が用いられ(消費され)るので、有機物(炭素源(C))の減少は脱窒不良の起因となる。
【0029】
制御手段23のメモリ等の記憶部には、予め図4の結果より求めた嫌気槽21AのORPに対するNO生成量の近似式のデータが記憶されている。
制御手段23は、嫌気槽21Aの反応液のORP計24の計測値から、記憶された近似式のデータに従い、NO生成量の推定値を算出する。
そして、制御手段23はNO生成量の推定値が予め設定されたNO生成量の目標値になるように、循環ポンプ25の循環流量を制御する。
【0030】
O生成量の推定値が、目標値を超えた場合は循環ポンプ25による循環流量を小さくする一方、NO生成量の推定値が、NO目標値を下回る場合は循環ポンプ25による循環流量を増加するか、或いは、現状の流量を維持する。
循環ポンプ25による循環流量を低下させても、NO生成量の推定値が目標値を超える場合、制御手段23は曝気手段22を制御して曝気量を削減する。これにより、嫌気槽21Aへの反応液の循環等による持ち込み溶存酸素を削減する。
【0031】
実施形態2によれば、ORP計24の計測値を基に、循環ポンプ25や曝気手段22を制御することで、嫌気槽21Aと好気槽21Bとの間の循環流量や、好気槽21Bの曝気手段22による曝気風量を削減しつつ、NO発生量を抑制できる。そのため、下水処理場のCO排出量を削減できる。
【0032】
(実施形態3)
図5に、実施形態3の下水処理装置G3の概念的構成図を示す。
実施形態3の下水処理装置G3は、図1に示す実施形態1の生物反応槽1を嫌気槽31Aと好気槽31Bとに分割して設け、嫌気槽31Aにその内部の反応液の酸化還元電位を計測する嫌気槽用ORP計34Aを設置するとともに、好気槽31Bにその内部の反応液の酸化還元電位を計測する好気槽用ORP計34Bを設置する。そして、制御装置33の演算結果を表示するための表示手段36を備えたものである。
【0033】
実施形態3のその他の構成は、実施形態1の構成と同様であるので、同様な構成要素には、実施形態1の構成要素に30番台の符号を付して示し、詳細な説明を省略する。
下水処理装置G3における表示手段36の表示方法について説明する。
制御手段33のメモリ等の記憶部は、予め、図2に示す好気槽のORPとNO生成量の関係式(近似式)の情報と図4に示す嫌気槽のORPとNO生成量の関係式(近似式)の情報とが入力されている。
【0034】
制御手段33は、嫌気槽31Aにおける嫌気槽用ORP計34AのORP(酸化還元電位)の計測信号と好気槽31Bにおける好気槽用ORP計34BのORP(酸化還元電位)の計測信号を受信する。制御装置33は、嫌気槽31Aおよび好気槽31BのそれぞれのORPの計測値を基に、図2に示す好気槽のORPとNO生成量との関係式(近似式)の情報、図4に示す嫌気槽のORPとNO生成量の関係式(近似式)の情報とに基づいて、嫌気槽31Aおよび好気槽31BのそれぞれのNO生成量を推定する。
【0035】
制御装置33は、嫌気槽31Aおよび好気槽31BのそれぞれのNO生成量の推定値の情報を表示手段36に送る。表示手段36は、嫌気槽31Aおよび好気槽31BにおけるNO生成量の各推定値、両推定値を加えた値等を表示装置(図示せず)に表示する。
なお、表示手段36では、制御手段33から現状の運転条件を入手し、曝気手段32や循環ポンプ(図示せず)などの消費エネルギからCO排出量を算出し、消費エネルギによるCO排出量に、NO推定値から換算したCO排出量を加えて表示することが好ましい。
【0036】
表示手段36の他の表示方法として、ORP計測値からNO排出量をNO排出量の多さでレベル分けして表示してもよい。
図4に示す嫌気槽31AでのORPの増加は、ORPの増加によりNO生成量が指数関数的に増加する一方、図2に示す好気槽31BでのORPの増加は、ORPの増加によりNO生成量が直線的に増加する。そのため、ORPが−150mVを超えると、図4に示す嫌気槽31AでのORPの増加は、次第に図2に示す好気槽31BでのORPの増加に比べ、NO生成量が大きくなる。
従って、NO生成量のレベルは、例えば、図6に示すように、分類できる。レベル1からレベル5になるに従ってNO発生量が増加し、レベル5が最もNO発生量が大きい。
【0037】
図6では、レベル1から3では、図4に示す嫌気槽31AでのORP<−150の場合にNO発生量が小さいので、ORP<−150と設定する一方、図2に示すように、好気槽31Bでは、ORPの増加に対してNO発生量が直線的に増加するため、好気槽31BのORPを3段階に分けて設定する。そして、図6のレベル3、4、5では、図2に示す好気槽31BでのORPを>100とする一方、図4に示す嫌気槽31AでのORP≧−150でのNO発生量が次第に大きく増加するので、嫌気槽31AでのORPを、−150(mV)でレベル4、5に2段階に分けて設定したものである。一例として発生(生成)レベルを5段階に分類したが、NO発生(生成)レベルに合わせ警報等を出力するとよい。
【0038】
実施形態3によれば、ORP計34A、34Bの計測値を基に、NO発生量の推定値を表示できるため、NO推定値から換算したCO排出量と消費エネルギによるCO排出量とを表示でき、下水処理場のCO排出量を容易に把握できる。
なお、実施形態3では、NO発生レベルを5段階に分けた場合を例示したが、2以上の任意の複数レベルに分けてもよいのは勿論である。
【0039】
(実施形態4)
図7に、実施形態4の下水処理装置G4の概念的構成図を示す。
実施形態4の下水処理装置G4は、図1に示す実施形態1の下水処理装置G1と異なり、生物反応槽41の上部に曝気の排ガスを回収するための排ガス回収手段47と、排ガス回収手段47のガスのNO濃度(NO生成量)を計測するためのNO計48を備え、NO発生量の計測信号を制御手段43に伝達したものである。
【0040】
実施形態4のその他の構成は、実施形態1の構成と同様であるので、同様な構成要素には、実施形態1の構成要素に40番台の符号を付して示し、詳細な説明を省略する。
下水処理装置G4の制御手段43の制御方法を、図8を用いて説明する。図8は、実施形態4の制御手段43の制御方法を示すフロー図である。
【0041】
先ず、制御手段43は、ORP計44による生物反応槽41の反応液のORP(酸化還元電位)の検知信号を受け取り、生物反応槽41の反応液のORPの計測値が所定値a未満か否か判定する(図8のS801)。所定値aは0〜100mVに設定すると良い。
ORP計44のORPの計測値が所定値a未満の場合(S801でYes)、制御手段43は曝気手段42の曝気流量を増加させる(S802)。
【0042】
一方、ORP計44のORPの計測値が所定値a以上の場合(S801でNo)、S803に移行し、制御手段43は生物反応槽41におけるNO計48のNO生成量の検知信号を受信し、NO生成量の計測値が所定値bより大きいか否か判定する。所定値bは10〜100ppmに設定すると良い。
【0043】
生物反応槽41におけるNO計48のNO生成量の計測値が所定値bより大きい場合(S803でYes)、制御手段43は曝気風量を増加させる(S802)。
一方、生物反応槽41におけるNO計48のNO生成量の計測値が所定値b以下の場合(S803でNo)、制御手段43は曝気風量を減少させ(S804)、制御を終了する。
なお、一回の制御で、曝気手段42の曝気量の増減は現状値の10%〜20%程度にするとよい。また、制御手段43の制御周期はORP計44とNO計48の計測周期以上に設定するとよい。実施形態4では、所定値aを低く設定すると曝気量を削減できる。
【0044】
但し、曝気量を削減しすぎると、生物反応槽41の一部に溶存酸素が低く、嫌気化する部分ができ、脱窒反応(NO−N → NO−N → NO → N)が進行する。その際、有機物(C)不足や溶存酸素(O)により不完全な脱窒反応となり、NOが発生することがある。NOが大量に発生した場合は不完全な脱窒が進行していると考えられるため、曝気量を増加させる必要がある。
【0045】
実施形態4の下水処理装置G4は、NOを抑制できる最低限の曝気量に曝気手段42を制御可能であり、下水処理場から排出されるCOを削減できる。
実施形態1〜4によれば、ORP計の計測値またはNO計48のNO(ガス)生成量の計測値を基に、生物反応槽の運転を制御することにより、曝気風量または嫌気槽、好気槽間の循環流量の少なくとも何れかを削減し、かつ、NO発生量を抑制できるため、下水処理場のCO排出量を削減できる。
【0046】
また、下水処理場において、ORP計の計測値またはNO計48のNO(ガス)生成量の計測値、および曝気風量や嫌気槽、好気槽間の循環流量等の下水処理装置の電力消費量等の消費エネルギを基に、ORP計の計測値またはNO計48のNO(ガス)生成量の計測値から換算されるCO排出量と消費エネルギによるCO排出量の少なくとも何れかを最小または少なく制御することも可能である。
【0047】
なお、実施形態1(図1参照)の生物反応槽1におけるORP計4の計測値によるNO生成量の推定値を、実施形態3と同様に、NO生成量の大きさで、2以上の任意の複数レベルに分けてもよい。同様に、実施形態2(図3参照)の嫌気槽21AにおけるORP計24の計測値によるNO生成量の推定値を、NO生成量の大きさで、2以上の任意の複数レベルに分けてもよい。同様に、実施形態4(図7参照)の生物反応槽41におけるNO計48のNO生成量の計測値を、NO生成量の大きさで、2以上の任意の複数レベルに分けてもよい。
【0048】
また、実施形態1、2、4において、実施形態3と同様に、NO推定値またはNO計48の計測値や、NO推定値またはNO計48の計測値から換算されるCO排出量の多さでの分類の結果を表示装置に表示する表示手段を設けることも可能である。
なお、嫌気槽、好気槽間の循環手段として、循環ポンプ25を例示したが、嫌気槽、好気槽間で反応液の循環が行えれば、循環ポンプ以外の循環手段としてもよい。
また、前記実施形態においては、各構成を個別に説明したが、これらの構成を適宜、組み合わせて構成してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1、41 生物反応槽
2、22、32、42 曝気手段
3、23、33 制御手段(第1制御手段)
4、24、44 ORP計(酸化還元電位計測手段)
21A 嫌気槽
21B 好気槽
25 循環ポンプ(循環手段)
34A 嫌気槽ORP計(第1酸化還元電位計測手段)
34B 好気槽ORP計(第2酸化還元電位計測手段)
36 表示手段(NO推定値表示手段)
43 制御手段(第2制御手段)
47 排ガス回収手段
48 NO計
G1、G2、G3、G4 下水処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性汚泥により下水を処理する下水処理装置であって、
前記活性汚泥が投入され、流入する下水が生物反応して処理される生物反応槽と、
前記生物反応槽内の液体の酸化還元電位を計測する酸化還元電位計測手段と、
前記生物反応槽内の液体に酸素を供給する曝気手段と、
前記酸化還元電位計測手段の計測値を基に前記生物反応槽のNOガス生成量を推定し、前記NOガス生成量の推定値に基づき前記曝気手段を制御する第1制御手段とを
備えたことを特徴とする下水処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の下水処理装置において、
前記生物反応槽は、嫌気槽と好気槽とを有し、
前記好気槽内の液体を前記嫌気槽へ循環する循環手段をさらに備え、
前記酸化還元電位計測手段は前記嫌気槽に設置されるとともに、前記曝気手段は前記好気槽に設置されており、
前記第1制御手段は、前記酸化還元電位計測手段の計測値を基に前記生物反応槽のNOガス生成量を推定し、前記NOガス生成量の推定値に基づき前記曝気手段と前記循環手段とを制御する
ことを特徴とする下水処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の下水処理装置において、
前記酸化還元電位計測手段は、第1酸化還元電位計測手段と第2酸化還元電位計測手段とであり、
前記第1酸化還元電位計測手段は前記嫌気槽に設置され、かつ、前記第2酸化還元電位計測手段は前記好気槽に設置されており、
前記第1制御手段は、前記第1・第2酸化還元電位計測手段のそれぞれの計測値を基に前記嫌気槽および前記好気槽のそれぞれのNOガス生成量を推定し、前記NOガス生成量の推定値に基づき前記曝気手段と前記循環手段とを制御する
ことを特徴とする下水処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3何れか一項記載の下水処理装置において、
前記第1制御手段は、前記NOガス生成量の推定値に基づき少なくとも2つ以上のNO生成レベルに分類するNO生成レベル分類手段と、当該分類の結果を表示装置に表示するNO推定値表示手段とを備えた
ことを特徴とする下水処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちの何れか一項記載の下水処理装置において、
前記第1制御手段は、前記NOガス生成量の推定値が所定の目標値になるように制御する
ことを特徴とする下水処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうちの何れか一項記載の下水処理装置において、
前記第1制御手段は、前記NOガス生成量の推定値と前記下水処理装置の消費エネルギとに基づき、前記NOガス生成量の推定値から換算されるCO排出量と前記消費エネルギによるCO排出量の少なくとも何れかを最小または少なくなるように制御する
ことを特徴とする下水処理装置。
【請求項7】
活性汚泥により下水を処理する下水処理装置であって、
前記活性汚泥が投入され、流入する下水が生物反応して処理される生物反応槽と、
前記生物反応槽内の液体の酸化還元電位を計測する酸化還元電位計測手段と、
前記生物反応槽内の液体に酸素を供給する曝気手段と、
前記生物反応槽内の排気ガス中のNOガス量を計測するNO計測手段と、
前記酸化還元電位計測手段の計測値と前記NO計測手段の計測値とに基づいて前記曝気手段を制御する第2制御手段とを
備えたことを特徴とする下水処理装置。
【請求項8】
請求項7記載の下水処理装置において、
前記第2制御手段は、前記NO計測手段の計測値が所定の目標値になるように制御する
ことを特徴とする下水処理装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8記載の下水処理装置において、
前記第2制御手段は、前記NO計測手段の計測値と前記下水処理装置の消費エネルギとに基づき、前記NO計測手段の計測値の推定値から換算されるCO排出量と前記消費エネルギによるCO排出量の少なくとも何れかを最小または少なくなるように制御する
ことを特徴とする下水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−245359(P2011−245359A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117917(P2010−117917)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】