説明

下水管路

【構成】 下水管路10は、マンホール12に接続された下水管14を含み、下水管14は、既設管16とそれの内部に独立して設けられる更生管18を含む。合成ゴムからな止水部材20は、既設管16の内面に密着する短管20aとその一方端から拡がって形成されるフランジ20bとを有する。SUSからなる保護部材22は、止水部材20の短管20aの内面に沿う外面を有する短管22aと、それの一方端から拡がるフランジ22bとを含む。2つのフランジ20bおよび22bが、それらの外周縁より内側で、アンカ24によってマンホール内壁12aに固着される。止水部材の短管20aは保護部材の短管22aより長いので、短管20aは他方端において保護部材22から露出し、更生管18の外周に直接接触し、その位置で更生管の外面が止水部材20の短管20aによって止水される。
【効果】 地盤変動によって更生管が軸方向に変位しても、更生管に接触する止水部材の短管の一部で止水性を維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は下水管路に関し、特にたとえば、マンホールと既設管との接続部分において地震などによる地盤変動が生じたときでも止水性能を確保できるように耐震化した、下水管路に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の耐震化方法の一例が特許文献1および特許文献2に提案されている。特許文献1および2のいずれにおいても、弾性継手を用いてマンホールと下水管とを接続する。地震が発生したときに地盤変動によって既設管がマンホールから離脱しても、弾性継手が伸縮することによって止水性を維持するものである。
【特許文献1】特開2003‐105788号公報[E02D 29/12 F16L 41/08]
【特許文献2】特開2006‐307540号公報[E02D 29/12 F16L 41/08]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1および特許文献2で提案された背景技術は、既設管だけの場合、もしくは更生管が一体化した既設管の場合には適用可能であるが、たとえば形成工法によって既設管内に別の更生管を設けた下水管路には適用が極めて困難である。形成工法で設けた更生管は地盤変動の際、既設管とは別の挙動をすると考えられているからである。
【0004】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、下水管路を提供することである。
【0005】
この発明の他の目的は、別の更生管で更生してしかも耐震化した、下水管路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、マンホールと前記マンホールに接続された既設管とを有し、前記既設管をその内部に設置した更生管で更生した下水管路であって、既設管と更生管との間であって、マンホールの近傍に設けられた止水部材を備える、下水管路である。
【0007】
請求項1の発明では、下水管路(10:実施例で相当する部分を例示するとしたときの参照番号。以下同様。)において、マンホール(12)間に下水管(14)が接続され、その下水管は既設管(16)とその内部にたとえば形成工法によって設けられた更生管(18)を含む。そして、そのマンホールの近傍に止水部材(20,20a,26,26A)を設ける。この止水部材は、更生管の外面で止水する。
【0008】
請求項1の発明によれば、更生管の外面で止水するようにしているため、地震による地盤変動があっても、この下水管路から漏水することはなく、地震直後でも供用可能である。
【0009】
請求項2の発明は、止水部材は、少なくとも更生管のマンホールからの抜け出し量に相関して決められた所定位置に設けられる、請求項1記載の下水管路である。
【0010】
請求項2の発明では、抜け出し量(L2)に相関して決められた所定位置に止水部材が設けられ、その所定位置において、止水部材(20,20a,26,26A)が更生管の外周に直接接触して、止水する。
【0011】
請求項2の発明によれば、想定できる最大地盤変動量に応じて決めた所定位置で止水部材によって止水するようにしているので、地震による地盤変動があっても、この下水管路から漏水することはない。
【0012】
請求項3の発明は、止水部材は、少なくとも既設管の管端から所定位置までの第1の長さを有する短管部を有し、かつ既設管と更生管との間に固定的に配置され、さらに少なくとも第1の長さより短い第2の長さを有する短管部を有し、止水部材の短管部を覆い、かつ少なくとも所定位置において止水部材の短管部を露出させる保護部材を備える、請求項2記載の下水管路である。
【0013】
請求項3の発明では、止水部材(20)は、第1の長さの短管部(20a)を有し、保護部材(22)は、第1の長さより短い第2の長さを有する短管部(22a)を有し、この保護部材の短管部が止水部材の短管部を覆いかつ所定位置で露出させる。止水部材の短管部によって更生管の外周で止水する。
【0014】
請求項4の発明は、止水部材は、第1の長さの短管と、短管の一方端から拡がって形成されるフランジとを含み、フランジがマンホールの内壁に固着される、請求項2記載の下水管路である。
【0015】
請求項4の発明では、止水部材(20)の短管によって更生管の外周で止水する。
【0016】
請求項5の発明は、止水部材は、既設管の内面の所定位置に設けられ、既設管の内面と更生管の外面との間で止水する第1の止水リングを含む、請求項1または2記載の下水管路である。
【0017】
請求項5の発明では、第1の止水リング(26,26A)が更生管(18)の外面で止水する。ただし、止水リングは、ゴム輪やO(オー)リングを含む概念である。
【0018】
請求項6の発明は、既設管の内面の所定位置に形成された止水リング収容部をさらに備え、第1の止水リングは止水リング収容部に収容される、請求項5記載の下水管路である。
【0019】
請求項6の発明では、既設管(16)の内面に止水リング収容部(28)を形成し、そこにゴム輪(26)を収容する。
【0020】
請求項7の発明は、既設管の内面に沿う外面を有し、内面に止水リング収容部が形成されたハウジングをさらに備え、止水リング収容部に第1の止水リングが収容され、ハウジングは第1の止水リングが所定位置に位置するように既設管と更生管との間に固定される、請求項6記載の下水管路である。
【0021】
請求項7の発明では、ハウジング(30)を用い、そのハウジングの外面は既設管の内面に沿うように設計され、ハウジングの内面に止水リング収容部(28A)を形成する。その止水リング収容部(28A)に第1の止水リング(26A)を収容し、第1の止水リングが更生管を止水する。
【0022】
請求項8の発明は、ハウジングは短管形状の第1部分と第1部分の一方端からフランジ形状に拡がって形成される第2部分とを含み、第1部分の内面に第1の止水リングを収容する止水リング収容部が設けられ、さらに第2部分の外面に形成された別の止水リング収容部、および別の止水リング容部に収容され、第2部分とマンホールの内壁との間を止水する別の止水リングを備える、請求項7記載の下水管路である。
【0023】
請求項8の発明では、ハウジング(30A)は短管形状の第1部分(30Aa)およびそれの一方端から拡がるフランジ形状の第2部分(30Ab)を含み、第1部分の内面および第2部分の外面にそれぞれ第1および第2の止水リング収容部(28A,28B)を形成し、そこに第1および第2の止水リング(26A,26B)をそれぞれ収容する。したがって、第1の止水リングが更生管外面で止水し、第2の止水リングがマンホール内壁で止水する。
【0024】
請求項9の発明は、所定位置は更生管のスパン長の半分の1.5%で計算される位置である、請求項2ないし8のいずれかに記載の下水管路である。
【0025】
請求項9の発明では、更生管を止水する所定位置が、たとえば、L1/2×1.5%で計算される。したがって、想定できる最大量の地盤変動があっても、止水性を確実に維持できる。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、地震などの地盤変動があっても、止水部材が更生管の外面を止水するので、止水性能を維持することができる。
【0027】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1を参照して、この発明の一実施例の下水管路10は、土中に埋設され、その上端入口が地上に露出して設けられるマンホール12を含み、マンホール12同士が土中に敷設された下水管14で接続される。下水管14は、マンホール12の流入側では流入管と呼ばれ、流出側では流出管と呼ばれることがある。また、図1では明示していないが、この実施例の下水管路10は自然流下式の下水管路であるので、下水管14は勾配を有して設置される。さらに、図1では省略しているが、マンホール12内には人間が出入りするためのはしごまたはステップが設置されている。
【0029】
下水管14は、たとえば、コンクリート管や陶管などのような既設管16とその内部に、この既設管16とは別に設置された更生管18を含む。更生管18は、たとえば、塩ビ管であり、EX工法(更生工法の名称)などの形成工法によって既設管16内に設けられる。形成工法では更生管18と既設管16との間にはモルタルのような裏込め材が注入されることはないので、更生管18は既設管16内において既設管16とは独立して変位する。つまり、更生管18と既設管16とは異なる挙動をする。この発明は、このような既設管とは独立した(一体でない)更生管を有する下水管路に適用するように意図されている。
【0030】
図2は図1に示す実施例のマンホール12と下水管14との接続部分を拡大したもので、この図2に示すように、既設管16をマンホール12の壁に形成した孔に挿入した後、既設管16の外面とその孔の内面との隙間にはたとえばモルタル13を充填することによって、既設管16がマンホール12に接続される。そして、既設管16と更生管18との間に、止水部材20と保護部材22との積層体が介挿される。ただし、図1では各部が細かくなりすぎるので、全体構成を明確にする目的で、主として、マンホール12および下水管14を図示している。
【0031】
なお、図2に示すように、更生管18は、マンホール12内において、この内壁12aより内方に突出するように既設管16内に挿入されているが、これは、更生管18の端部をパテなどで処理するためであり、また、更生管18が温度変化によって伸縮することを考慮しているためである。この更生管18の内方への突出量はたとえば、5cm程度とされる。
【0032】
止水部材20は、全体として、たとえば、水膨張ゴムやSBR(スチレン・ブタジエン・ゴム)のような合成ゴムで形成され、既設管16と更生管18との間に介在される短管20aとこの短管20aの一方端から、短管20aの軸と直交する方向に拡がって外周が円形に形成されるフランジ20bとを含む。保護部材20は、全体として、たとえば、SUS(ステンレス)のような金属やポリエチレンなどの樹脂で形成され、既設管16と更生管18との間に介在される短管22aとこの短管22aの一方端から、短管22aの軸と直交する方向に拡がって外周が円形に形成されるフランジ22bとを含む。
【0033】
止水部材20のフランジ20bおよび保護部材22のフランジ22bは、ともに、それらの外周縁よりやや内側で、取り付け部材として機能するアンカ24によって、マンホール12の内壁12aに固着される。実施例では2つのフランジ20bおよび22bは、ほぼ同じ大きさに形成され、1つのアンカ24で一緒に固定されているが、別々の大きさとし、個別の取り付け部材で内壁12aに止めるようにしてもよい。フランジ20bおよび22bをマンホール12の内壁12aに固着することによって、結果的に、短管20aおよび22aを既設管16と更生管18との間に固定的に保持することができる。
【0034】
なお、保護部材22は止水部材20を保護するためのものである。止水部材20と更生管18とを保護部材22で絶縁し、更生管18が軸方向に変位したときに止水部材20がそれに追従して伸縮しないようにし、かつ止水部材20の破損を防止する。保護部材22はまた、更生管18の軸方向変位を滑らかにするという機能も併有していて、更生管18が滑らかに動くことによって、更生管18の変位による止水部材20へのダメージを可及的小さくできる。
【0035】
ただし、必要な部分では止水部材20は更生管18と直接接触する必要があるので、この実施例では、止水部材20の短管20aの長さ(第1長さ)は、保護部材22の短管22aの長さ(第2長さ)より長くされ、止水部材20の短管20aは、それの他方端(フランジ20bが形成されている側が「一方端」である。)において、長さの差(=第1長さ−第2長さ)だけ保護部材22からはみ出す(露出する)。つまり、止水部材20は短管20aの他方端側で、更生管18と直接接触している。この接触位置が「所定位置」であり、この所定位置で、止水部材20が更生管18の外面(既設管16と更生管18との間)を止水する。既設管16の連結が外れたり、元々既設管が破損していたりして、既設管16と更生管18との間からも漏水する可能性があり、かつそのようなときでも止水できる。
【0036】
所定位置は、更生管18のスパン長L1(図1)に対して、L2(=L1/2×1.5%)の位置に設定される。L1/2とするのは、1スパン長を2つのマンホール接続部分で分担するからであり、L1=50mとしたとき、L2は37.5cm(約40cm)となる。ただし、ここで挙げた「1.5%」は、たとえば、下水道協会の指針などにおい、大規模地震による地盤変動の考えられ得る最大の大きさ(割合)として認識されている数字である。この実施例では、更生管18はマンホール12の内方に突出させているため、更生管18が最大に抜け出た場合でも、止水部材20は更生管18と接触した状態を維持する。更生管18をマンホール12内に突出させないで設置した場合には、L2=(L1/2×1.5%)+αの位置に設定する必要がある。ただし、「α」としては、限定しないが、5cm程度が適量であると想定されている。
【0037】
図1および図2に示す実施例において地震による地盤変動が図3の矢印で示す方向に生じた場合を想定すると、既設管16の管端16aが図3に示すようにマンホール12の内壁12aから外側に変位する。ただし、図3では既設管16の管端16aはマンホール12の壁厚内にとどまっている場合を図示しているが、地震の程度によっては既設管16が完全にマンホール12から離脱することもある。一方、更生管18も既設管18と同じ矢印方向へ変位し、管端18aはマンホール12の内壁12aから遠ざかる。更生管18は既設管16と別異の挙動をするものであるので、同じ方向に変位したとしても変位量が違うこともあり、図3では既設管16に比べて更生管18の変位量が大きい場合を図解している。このような場合でも、止水部材20は、想定できる最大変位量すなわち上記距離L2に相関する所定位置で更生管18の外面と直接接触しているので、少なくともその位置で更生管18の外面を止水することができる。したがって、既設管16が完全にマンホール12から離脱した場合であっても、あるいは既設管16が完全にマンホール12から離脱しないまでもモルタル13が破損した場合は漏水があるが、そのような場合でも、止水部材20によって更生管18の外面で止水できるので、地震直後であってもこの下水管路は使用可能であり、完全な復旧は後日の修理を待てばよい。
【0038】
なお、図2および図3からよく分かるように、この実施例の止水部材20の短管20aおよび保護部材22の短管22aのそれぞれの先端(マンホール12に遠い側の端部)はたとえば外面が傾斜するテーパ状にするなどして、でるだけ肉薄に形成される。その理由は、更生管18がマンホール12側に変位したとき、止水部材20がめくれ上がるのを防止するために、さらには、更生管18の外面がそれらのテーパ面に沿って外方に拡がるようにし、それによって更生管18の外面を止水部材20の短管20aにできるだけ密着させて、止水性を向上させるためである。
【0039】
図4はこの発明の他の実施例の要部を示す図解図であり、この実施例は、以下の点を除いて、図1および図2に示す実施例と同様である。したがって、ここでは重複する説明は省略する。なお、図4では、後述の易伸長部22cを含む一部を拡大して円内に示した。
【0040】
この実施例の止水部材20は、先の実施例の止水部材と同様の短管20aと、その短管20aの一端に形成されるかつ先の実施例の止水部材のものとは異なるフランジ20bAとを有する。フランジ20bAは、フランジの径方向(図4でいえば上下方向)において伸長(伸張)できるように易伸長部20cを含む。易伸長部20cはこの実施例では折り畳み形状にされているが、それに限らず、たとえば、蛇腹形状のように、容易に変形して結果的にフランジ20bAを伸長させられる形状であれば、任意の形状が採用できる。
【0041】
図4の実施例において、地震による地盤変動を受けたとき、既設管16および更生管18が軸方向に変位するが、図5に示すように、止水部材20の短管20aの他方端と更生管18の外面との接触によって、止水性が維持される。このとき、上記易伸長部20cにおいてフランジ20bAが伸長するので、地盤変動によって止水部材20にフランジ20bAの伸長方向の力が加わっても、止水部材20の破損が回避できる。
【0042】
なお、図2の実施例および図4の実施例ではいずれも、止水部材20を保護部材22で覆うようにしたが、保護部材22は必須のものではなく、場合によっては、省略されてもよい。
【0043】
また、これらの実施例では止水部材20のフランジ20bまたは20bAおよび保護部材22のフランジ22bをともにマンホール12の内壁12aに固着するようにした。しかしながら、少なくとも止水部材20のフランジ20bまたは20bAを内壁12aに固着すればよく、保護部材22のフランジ22bは必ずしも内壁12aに固着する必要はない。
【0044】
図6はこの発明の他の実施例の要部を示す図解図であり、この実施例では、先の実施例で使用した止水部材20および保護部材22を用いない。ただし、下水管14すなわち既設管16および更生管18は先の実施例と同様であるので、以下では重複する部分に関する説明は省略する。
【0045】
この実施例の止水部材は、ゴム輪26である。このゴム輪26も先の止水部材と同様に合成ゴムからなり、前述の所定位置(マンホール内壁から距離L2の位置)において既設管16の内面に形成されているゴム輪溝(ゴム輪収容部)28に収容される。
【0046】
図6の実施例において、地震が発生したとき、更生管18は管端18aが図7に示すようにマンホール12の内壁12aから遠ざかる方向に変位する。しかしながら、地盤変動が大きいとしても、上記距離L2(所定位置)は、想定できる最大地盤変動量を考慮して設計した位置であるので、更生管18の管端18aがゴム輪26の位置を越えてマンホール12からさらに遠ざかる方向へ移動することはない。したがって、更生管18の外面は必ずゴム輪26で止水されることになり、地震の際に下水管から漏水することはない。
【0047】
なお、図6の実施例ではゴム輪26を収容するためのゴム輪溝28を既設管16の内面に直接形成した。したがって、既設管16の強度が若干損なわれることが考えられる。この発明が適用されるような更生管18は既設管16自体が破損または損傷しても下水管の機能を維持できるので、ゴム輪溝28によって既設管16が破損しても平常時なら特に問題は生じないが、地震で破壊された場合には、ゴム輪26が止水部材の役目を果たさなくなる可能性があるので、既設管16に直接ゴム輪溝28を形成すると強度低下を生じて不都合があるかもしれない。
【0048】
そこで、図8に示す変形実施例では、ゴム輪溝28を既設管16に直接形成することはしないで、ゴム輪溝を形成するためのアダプタないしハウジング30を用いる。このハウジング30は、図9に示すように、比較的に肉薄のたとえば塩ビまたはステンレスなどの短管であり、その外面が既設管16の内面に沿うような大きさ(外径)に選ばれていて、内面にゴム輪溝28Aを形成している。なお、図8からよくわかるように、ハウジング30の両端内面は端部に向かうほど肉薄になるように傾斜して形成される。その理由は、先の実施例で保護部材の短管22aおよび止水部材20の短管20aの先端を肉薄にしたのと同じである。ただし、図9はそのことは図示していない。そして、このハウジング30を図8に示すように既設管16の内面に、かつゴム輪溝28Aすなわちゴム輪26Aがマンホール12の内壁12から距離L2の前記の所定位置に位置決めされるように、固定的に配置する。たとえば、エポキシなどの充填系接着剤を用いれば、ハウジング30を容易に既設管16の内面上に接着できる。
【0049】
図8の実施例においても、図6の実施例と同様に、地盤変動があっても、更生管18の外面は必ずゴム輪26Aで止水されることになり、ゴム輪26Aによる止水機能が発揮される。
【0050】
図8の実施例で、ハウジング30すなわちゴム輪26Aをより安定的に所定位置に保持するためには、既設管16の内面を少し削ってできる凹環にハウジング30をはめ込むようにしてもよい。
【0051】
図8の実施例ではゴム輪溝28Aを既設管16とは別に形成するために短管状のハウジング30を用いた。これに対して、図10の実施例では、ハウジング30Aを用いる。このハウジング30Aもたとえば塩ビまたはステンレスなどで形成され得るが、このハウジング30Aは、第1のゴム輪溝28Aを保持しておくための短管30Aaと、この短管30Aaの一方端から、短管30Aaの軸方向に直交する方向に拡がって外周が円形になるフランジ30Abとを有する。このフランジ30Abはマンホール12の内壁12aに沿うように拡がり、その外周縁のやや内側で、アンカ24によって、マンホール内壁12aに固着または固定される。
【0052】
ハウジング30Aのフランジ30Abの外面すなわちマンホール内壁12aに対向する面には、第2のゴム輪溝(ゴム輪収容部)28Bが形成され、このゴム輪溝28Bの中にゴム輪26Bが収容される。
【0053】
この実施例では、更生管18と既設管16との間での止水は第1のゴム輪26Aで行われ、第2のゴム輪28Bはマンホール内壁12aにおける止水を分担する。たとえば、地震によって既設管16がマンホール12から離脱したかあるいは既設管16の周りのモルタルが破損した場合を想定すると、この場合、もし第2のゴム輪28Bがなければ、マンホール12の孔や既設管16の周囲から漏水が発生する。ところが第2のゴム輪28Bを設けていれば、このゴム輪28Bによってマンホール内壁12aとフランジ30Abとの間で止水されるので、このような場合でも、止水性を維持できる。ただし、ゴム輪26Aによる止水効果は、図8の実施例のゴム輪26Aや図6の実施例のゴム輪26と同様である。
【0054】
図6の実施例、図8の実施例さらには図10の実施例では、いずれも、止水リングとしてゴム輪26、26A、26Aおよび26Bを用い、それらのゴム輪をゴム輪溝28、28A、28Aおよび28Bに収容するようにした。しかしながら、これらのゴム輪は必ずしもゴム輪溝に収容する必要はない。止水リングとしては、ゴム輪溝がないパッキン形状のものでもよい。この発明はこれらの両方を包含するよう意図されていて、止水リングとしては、ゴム輪やOリングを利用可能である。
【0055】
また、図10の実施例ではハウジング30Aのフランジ30Abの外面に、アンカ
24より内側に1つのゴム輪26Aを配置しただけである。しかしながら、図示しないが、このアンカ24よりさらに外側に第3のゴム輪(またはOリング)を設けることも考えられる。アンカ24の内側にだけ止水リング(ゴム輪)26Bを設置した場合、もし既設管がマンホール12内に突出(突入)したときには、アンカ24より内側はマンホール内壁12aから浮き上がってしまうので、ゴム輪26Bだけであれば、そのゴム輪26Bとマンホール内壁との間に隙間ができてしまうので、漏水を生じる。これに対して、もしアンカ24の外側にもフランジ30Abと内壁12aとの間に止水リング(図示せず)を設置しておけば、このように場合に、フランジ30Abが、アンカ24を支点として動くので、止水リングを内壁12aに押し付ける方向に作用する。したがって、フランジ30Abと内壁12aとの間の止水がより一層確実に行なえる。
【0056】
なお、上述の各実施例では、止水部材20や保護部材22、ゴム輪26、ゴム輪26Aとハウジング30などは、既設管16を更生管で更生する前に取り付けるようにしたが、このようにこれらの部品を更生後に配置するようにしてもよい。更生後に装着するためには、たとえば、更生管を必要な部分だけ加熱して軟化させて一旦縮径し、その状態で止水部材などの必要部品を配置し、その後縮径部分をパッカー(加熱蒸気を更生管に与えながら拡径するためのバルーン様のもの)で元通りに既設管に沿わせるようにすればよい。
【0057】
さらに、上述の実施例ではいずれも、止水部材が少なくとも更生管18の管端から距離L2の位置(所定位置)で更生管18の外面を止水するようにした。この所定位置は必ずしも距離L2に相関して決められる必要はなく、この距離L2よりマンホール12により近い位置に設定されてもよく、距離L2よりマンホール12に遠い位置に設定されてもよい。
【0058】
そして、各実施例の更生管は塩ビ管をEX工法で既設管内に配置したものを想定した。しかしながら、更生管は、塩ビ管に限らず、FRPなどの反転工法によるものも含む。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1はこの発明の一実施例の下水管路を示す図解図である。
【図2】図2は図1に示す下水管路の要部を拡大して示す図解図である。
【図3】図3は図1および図2に実施例の下水管路に対して地盤変動を生じた際の挙動の一例を示す図解図である。
【図4】図4はこの発明の他の実施例を示し、図2に相当する要部を示す図解図である。
【図5】図5は図4に実施例の下水管路に対して地盤変動を生じた際の挙動の一例を示す図解図である。
【図6】図6はこの発明のさらに他の実施例を示し、図2に相当する要部を示す図解図である。
【図7】図7は図6の実施例の下水管路に対して地盤変動を生じた際の挙動の一例を示す図解図である。
【図8】図8は図6の実施例の変形例を示し、図2に相当する要部を示す図解図である。
【図9】図9は図8に示す実施例に用いられるハウジングを示す図解図である。
【図10】図10はこの発明のさらに他の実施例を示し、図2に相当する要部を示す図解図である。
【符号の説明】
【0060】
10 …下水管路
12 …マンホール
14 …下水管
16 …既設管
18 …更生管
20 …止水部材
20a …短管
20b,20bA …フランジ
22 …保護部材
22a …短管
22b …フランジ
24 …アンカ
26,26A,26B …ゴム輪
28,28A,28B …ゴム輪収容部(ゴム輪溝)
30,30A …ハウジング
30Aa …短管
30Ab …フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホールと前記マンホールに接続された既設管とを有し、前記既設管の内部に設置した更生管で更生した下水管路であって、
前記既設管と前記更生管との間であって、前記マンホールの近傍に設けられた止水部材を備える、下水管路。
【請求項2】
前記止水部材は、少なくとも前記更生管の前記マンホールからの抜け出し量に相関して決められた所定位置に設けられる、請求項1記載の下水管路。
【請求項3】
前記止水部材は、少なくとも前記既設管の管端から前記所定位置までの第1の長さを有する短管部を有し、かつ前記既設管と前記更生管との間に固定的に配置され、さらに
少なくとも前記第1の長さより短い第2の長さを有する短管部を有し、前記止水部材の前記短管部を覆い、かつ少なくとも前記所定位置において前記止水部材の前記短管部を露出させる保護部材を備える、請求項2記載の下水管路。
【請求項4】
前記止水部材は、前記第1の長さの短管と、前記短管の一方端から拡がって形成されるフランジとを含み、前記フランジが前記マンホールの内壁に固着される、請求項2記載の下水管路。
【請求項5】
前記止水部材は、前記既設管の内面の前記所定位置に設けられ、前記既設管の内面と前記更生管の外面との間で止水する第1の止水リングを含む、請求項1または2記載の下水管路。
【請求項6】
前記既設管の内面の前記所定位置に形成された止水リング収容部をさらに備え、前記第1の止水リングは前記止水リング収容部に収容される、請求項5記載の下水管路。
【請求項7】
前記既設管の内面に沿う外面を有し、内面に止水リング収容部が形成されたハウジングをさらに備え、前記止水リング収容部に前記第1の止水リングが収容され、前記ハウジングは前記第1の止水リングが前記所定位置に位置するように前記既設管と前記更生管との間に固定される、請求項6記載の下水管路。
【請求項8】
前記ハウジングは短管形状の第1部分と前記第1部分の一方端からフランジ形状に拡がって形成される第2部分とを含み、
前記第1部分の内面に前記第1の止水リングを収容する止水リング収容部が設けられ、さらに
前記第2部分の外面に形成された別の止水リング収容部、および
前記別の止水リング収容部に収容され、前記第2部分と前記マンホールの内壁との間を止水する別の止水リングを備える、請求項7記載の下水管路。
【請求項9】
前記所定位置は前記更生管のスパン長の半分の1.5%で計算される位置である、請求項2ないし8のいずれかに記載の下水管路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−248601(P2008−248601A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92330(P2007−92330)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(505142964)クボタシーアイ株式会社 (192)
【出願人】(503315702)クボタシーアイプラテック株式会社 (16)
【Fターム(参考)】