説明

下痢型過敏性腸症候群治療剤

【課題】 下痢型過敏性腸症候群の新規な治療薬の創製
【解決手段】1日量として0.002〜0.02mgの塩酸ラモセトロン又はこれと等モル量のラモ
セトロン若しくは製薬学的に許容されるその他の塩を有効成分として含有する下痢型過敏
性腸症候群治療剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、とりわけ下痢型過敏性腸症候群治療剤又は過敏性腸症候群の下痢症状
改善剤に係るものである。
【背景技術】
【0002】
ラモセトロンは、化学名を(−)−(R)−5−[(1−メチル−1H−インドール−3−イル)カ
ルボニル]−4, 5, 6, 7−テトラヒドロ−1H−ベンズイミダゾールと称する。
塩酸ラモセトロンは、抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、
嘔吐)の改善薬として販売されており、通常、成人に対し0.1mgを1日1回経口投与又は0
.3mgを1日1回静注投与される。(例えば、非特許文献1、2参照)
特許文献1には、ラモセトロンおよびその製薬学的に許容される塩を含む一連のテトラ
ヒドロベンズイミダゾール誘導体が5HT3受容体拮抗作用を有することが開示されてい
る。当該作用に基づきシスプラチンなどの制癌剤及び放射線による嘔吐の抑制、偏頭痛、
複合頭痛、三叉神経痛、不安症状、胃腸運動障害、消化性潰瘍、過敏性腸症候群等の予防
・治療の可能性が示唆され、臨床的投与量は通常成人1日あたり静注で0.1〜10mg、経口
で0.5〜50mgであり、これを1回で或いは数回に分けて投与することが記載されている。
【0003】
一方、特許文献2には、5HT3受容体拮抗剤が女性の非便秘型過敏性腸症候群患者の
治療に有用であることが記載され、治療有効量は1日0.01〜500mgの範囲、好ましくは0.0
5〜50mgであると記載されている。具体的には、非便秘型過敏性腸症候群患者に対しアロ
セトロン1〜8mgを1日2回投与した臨床試験の結果、女性患者はプラセボと比べて痛み及
び不快感の緩和、便の堅さ、排便頻度、緊急を要する日の割合に有意な改善が見られたが
、男性患者では便の堅さ以外はプラセボに対して有意な改善が見られなかったことが記載
されている。
更に、特許文献3には、5HT3受容体拮抗剤は1日3回、1〜16mgを投与することに
より男性及び女性の過敏性腸症候群患者の治療に有用であることが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平3−223278号公報
【特許文献2】特表2001−518495号公報
【特許文献3】国際公開第2002/007713号パンフレット
【非特許文献1】「ナゼアOD錠0.1mg添付文書」2003年4月改訂
【非特許文献2】「ナゼア注射液0.3mg添付文書」2003年4月改訂
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは十分に有効な治療薬のない下痢型過敏性腸症候群の新規な治療薬の創製を
目的として、鋭意検討を行った。本発明者らはかつて過敏性腸症候群患者に対し塩酸ラモ
セトロンを1日2回投与する臨床試験を試みたが、プラセボに対する有意な治療効果を確
認できなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、塩酸ラモセトロンの過敏性腸症候群に対する治療有効量は、抗悪性腫瘍
剤投与により誘発される消化器官症状の改善剤として現在使用されている投与量0.1〜0.3
mgよりもはるかに低用量ではないかとの着想を得た。そこで、極めて低用量(0.001〜0.0
1mg)の塩酸ラモセトロンを含有する安定な製剤を開発し、係る製剤を用いて下痢型過敏
性腸症候群患者に対する12週間に及ぶ臨床試験を行った結果、顕著な有効性を確認し、
発明を完成させた。
すなわち、本発明は、1日量として0.002〜0.02mgの塩酸ラモセトロン又はこれと等モ
ル量のラモセトロン若しくは製薬学的に許容されるその他の塩を有効成分として含有する
下痢型過敏性腸症候群治療剤、或いは、1日量として0.002〜0.02mgの塩酸ラモセトロン
又はこれと等モル量のラモセトロン若しくは製薬学的に許容されるその他の塩を有効成分
として含有する過敏性腸症候群の下痢症状改善剤に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、男女を問わず有効な優れた下痢型過敏性腸症候群治療剤、或いは、過敏
性腸症候群の下痢症状の改善剤を提供できる。
後述の試験例1に示す通り、塩酸ラモセトロンは0.005mg又は0.01mgの1日1回経口投
与により下痢型過敏性腸症候群患者に対して男女を問わず有効であった。また、0.005mg
投与により0.01mg投与と変わらない顕著な治療効果を得たことから、更にこの半量程度で
も有効性が期待できる。また、試験例1の対象は日本人の成人患者であり、小児の至適用
量は更に少量である可能性が示唆され、一方で欧米人の至適用量が日本人の倍量であるこ
ともよくあることである。従って、塩酸ラモセトロンの特に好ましい投与量は1日量0.00
2〜0.02mgの範囲であるが、患者の年齢や民族の相違により、1日量0.001〜0.05mgの範囲
で下痢型過敏性腸症候群或いは過敏性腸症候群の下痢症状を改善できると考えられる。
特許文献1にはラモセトロンを含むテトラヒドロベンズイミダゾール誘導体の臨床的投
与量は通常1日あたり0.1mg以上と記載されており、塩酸ラモセトロンが1日量0.002〜0.0
2mgの範囲で治療効果を有することは示唆も開示もない。また、本発明は、1)非特許文献
1と2に開示された塩酸ラモセトロンを有効成分とする抗悪性腫瘍剤投与により誘発され
る消化器官症状の改善剤に対しては、治療有効量が1/5〜1/50のはるかに低用量である点
で、2)特許文献2に開示された薬剤に対しては、男性患者、女性患者を問わずに十分な治
療効果が得られる点で、3)特許文献3に開示された薬剤に対しては、1/50〜1/500の極め
て低用量の1日1回投与により十分な治療効果が得られる点で、各々優れており、係る効
果はこれらの従来技術から予測できないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
ラモセトロン及びその製薬学的に許容される塩は特許文献1に記載された製法により、
或いはそれに準じて容易に入手可能である。
ラモセトロンの製薬的に許容される塩としては、具体的には、塩酸、硫酸、リン酸、臭
化水素酸などとの鉱酸塩、酢酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸
、フマール酸、酒石酸、メタンスルホン酸などの有機酸との塩、グルタミン酸、アスパラ
ギン酸などの酸性アミノとの塩が挙げられる。中でも、市販されている塩酸ラモセトロン
が好ましい。
本発明の薬剤は、経口または非経口投与に適した有機又は無機の担体、賦形剤、その他
の添加剤を用いて、常法に従って、経口固形製剤、経口液状製剤または注射剤として調製
することができる。好ましいのは患者が自ら容易に服用でき且つ保存、持ち運びに便利な
経口固形製剤であり、具体的には錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤、丸剤等であ
る。
【0009】
このような固形製剤においては、活性物質が、少なくとも一つの不活性な希釈剤、例え
ば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン
、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと混合される。組成物は常法に従って、不活性な希
釈剤以外の添加剤、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセ
ルロースのような結合剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリエ
チレングリコール、スターチ、タルクのような潤滑剤、繊維素グリコール酸カルシウムの
ような崩壊剤、ラクトースのような安定化剤、グルタミン酸又はアスパラギン酸のような
溶解補助剤、ツイーン80、トリアセチンのような可塑剤、酸化チタン、三二酸化鉄のよ
うな着色剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要によりショ糖、ゼラチン、寒天、
ペクチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレ
ートなどの糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質のフィルムで被膜してもよい。
また、市販されている「ナゼアOD錠0.1mg」のように口腔内崩壊錠にしてもよい。例
えば、米国特許第5466464号明細書、米国特許第5576014号明細書、米国特
許第6589554号明細書、国際公開第03/009831号パンフレット、国際公開
第02/092057号パンフレットなどに従い、口腔内崩壊錠とすることができる。
【0010】
本発明の薬剤は極めて低用量のラモセトロンを含有することから、温湿度に対する安定
化技術を施した製剤が特に好ましい。
例えば、カルボニル基を有する特定の化合物を添加することにより、温湿度に対するラ
モセトロンの安定化を達成することができる。カルボニル基を有する特定の化合物として
具体的には、脂肪族カルボン酸(詳細には、飽和または不飽和で、直鎖状または分枝状の
脂肪族モノ−、ジ−またはトリ−カルボン酸。特に、炭素数が3〜36の脂肪族カルボン
酸)またはそのエステル、ヒドロキシカルボン酸(詳細には、飽和または不飽和で、直鎖
状または分枝状の脂肪族ヒドロキシモノ−、ジ−またはトリ−カルボン酸。特に、炭素数
が3〜36のヒドロキシカルボン酸)またはそのエステル、酸性アミノ酸、エノール酸、
芳香族カルボキシル化合物(詳細には、炭素数1乃至4個のアルキル基やヒドロキシ基が
置換していてもよい芳香族モノ−、ジ−またはトリ−カルボン酸。特に、炭素数が7〜2
0の芳香族カルボン酸)またはそのエステル、カルボキシル基を有する高分子物質が挙げ
られ、これらの化合物は1種または2種以上組合せて適宜使用することができる。
【0011】
とりわけ、カルボニル基を有する特定の化合物としては、ヒドロキシカルボン酸または
そのエステル、カルボキシル基を有する高分子物質、芳香族カルボキシル化合物またはそ
のエステルや、エノール酸が好ましく、特にヒドロキシカルボン酸またはそのエステル、
カルボキシル基を有する高分子物質や、芳香族カルボキシル化合物またはそのエステルが
好適であり、至適にはヒドロキシカルボン酸またはそのエステル、カルボキシル基を有す
る高分子物質がより好ましい。
脂肪族カルボン酸としては好ましくは、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸で
ある。ヒドロキシカルボン酸として、好ましくは酒石酸、リンゴ酸、クエン酸であり、更
に好ましくは酒石酸、クエン酸である。酸性アミノ酸として好ましくは、グルタミン酸や
アスパラギン酸である。芳香族カルボキシル化合物として好ましくは、フタル酸、没食子
酸プロピルであり、更に好ましくは没食子酸プロピルである。カルボキシル基を有する高
分子物質として好ましくは、カルボキシメチルセルロースやアルギン酸であり、更に好ま
しくは、カルボキシメチルセルロースである。また、エノール酸として好ましくは、アス
コルビン酸やエリソルビン酸であり、更に好ましくは、アスコルビン酸である。
【0012】
上記のカルボニル化合物には、クエン酸水和物あるいはクエン酸無水物のように、水和
物や結晶水を持たない無水物も本発明の安定化効果を発揮することが解明されており、水
和物、無水物、あるいはこれらの混合物のいずれも含まれる。また、高分子物質の重合度
、分子量などは特に限定されるものではないが、カルボキシメチルセルロースでは、特に
重量平均分子量が約11万程度、アルギン酸では約20万程度のものが好ましい。
ラモセトロンまたはその製薬学的に許容される塩を安定化させる化合物の配合量として
は、安定化を達成できる量であれば特に制限されない。例えば、処方中0.01〜90重量%で
あり、好ましくは0.01〜50重量%であり、更に好ましくは製造性も加味して、0.1〜10重
量%である。
【0013】
ラモセトロン又はその製薬学的に許容される塩の投与量は、投与ルート、疾患の症状、
投与対象の年齢、人種、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定される。塩酸ラモ
セトロンでは、通常経口投与の場合成人1人当たり約1日量0.001〜0.05mg、最も好まし
くは1日量0.002〜0.02mgであり、これを1日1回食後に経口投与する。
【実施例】
【0014】
以下に実施例及び試験例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの
実施例等に限定されるものではない。
実施例1
塩酸ラモセトロン 0.02部
乳糖 86部
ヒドロキシプロピルセルロース 3部
酒石酸 1部
黄色三二酸化鉄 0.2部
酸化チタン 10部
軽質無水ケイ酸 0.3部
ヒドロキシプロピルセルロース 3部、塩酸ラモセトロン0.02部および酒石酸1部を水35
部にマグネチックスターラーを用いて攪拌溶解させた後、酸化チタン10部および黄色三二
酸化鉄0.2部をライカイ機を用いて練合し、噴霧液(ヒドロキシプロピルセルロース、濃度
8重量%)を調製した。つぎに、乳糖86部を流動層造粒機(FLOW COATER、フロイント社製)
に仕込み、前記噴霧液を5g/minの噴霧速度で噴霧することにより流動造粒した。造粒後、
この造粒物を吸気温度40℃で5分間乾燥した後、軽質無水ケイ酸0.3部を混合し、散剤を得
た。
【0015】
実施例2
塩酸ラモセトロン 0.0008部
マンニトール 89部
クエン酸無水物 0.1部
マルトース 10部
赤色三二酸化鉄 1部
ステアリン酸マグネシウム 1部
マルトース10部、塩酸ラモセトロン0.0008部およびクエン酸無水物0.1部、赤色三二酸
化鉄1部を水67部にマグネチックスターラーを用いて攪拌懸濁して噴霧液(濃度15重量%)
を調製した。つぎに、マンニトール89部を流動層造粒機(FLOW COATER、フロイント社製)
に仕込み、前記噴霧液を10g/minの噴霧速度で噴霧することにより流動造粒した。造粒後
、この造粒物を吸気温度40℃で5分間乾燥した後、ステアリン酸マグネシウム1部を混合し
た。その混合粉末を、ロータリー打錠機を用いて一錠当たり120mgで打錠し、初期硬度約1
kpを有する錠剤とした。これを25℃、相対湿度75%で18時間保存した後、30℃、相対湿度4
0%で4時間保存し、口腔内崩壊錠を得た。
実施例3
実施例2と同様の製造法で、クエン酸無水物の添加量を0.2部に代えて、口腔内崩壊錠
を得た。
実施例4
実施例2と同様の製造法で、クエン酸無水物の添加量を0.5部に代えて、口腔内崩壊錠
を得た。
【0016】
実施例5
塩酸ラモセトロン 0.0008部
マンニトール 89部
アスコルビン酸 0.2部
マルトース 10部
赤色三二酸化鉄 1部
ステアリン酸マグネシウム 1部
マルトース10部、塩酸ラモセトロン0.0008部およびアスコルビン酸0.2部、赤色三二酸
化鉄1部を水67部にマグネチックスターラーを用いて攪拌懸濁して噴霧液(濃度15重量%)
を調製した。つぎに、マンニトール89部を流動層造粒機(FLOW COATER、フロイント社製)
に仕込み、前記噴霧液を10g/minの噴霧速度で噴霧することにより流動造粒した。造粒後
、この造粒物を吸気温度40℃で5分間乾燥した後、ステアリン酸マグネシウム1部を混合し
た。その混合粉末を、ロータリー打錠機を用いて一錠当たり120mgで打錠し、初期硬度約1
kpを有する錠剤とした。これを25℃、相対湿度75%で18時間保存した後、30℃、相対湿度4
0%で4時間保存し、口腔内崩壊錠を得た。
実施例6
実施例5と同様の製造法で、アスコルビン酸量を0.5部に代えたものを製造し、口腔内
崩壊錠を得た。
【0017】
実施例7
塩酸ラモセトロン 0.0008部
マンニトール 88部
マルトース 10部
黄色三二酸化鉄 1部
クエン酸無水物 0.2部
ステアリン酸マグネシウム 1部
マルトース10部、塩酸ラモセトロン0.0008部、赤色三二酸化鉄1部およびクエン酸無水
物0.2部を水67部にマグネチックスターラーを用いて攪拌懸濁して噴霧液(濃度15重量%)
を調製した。つぎに、マンニトール88部を流動層造粒機(FLOW COATER、フロイント社製)
に仕込み、吸気温度50℃、噴霧速度10 g/min、スプレー/ドライ/シェーキングのサイ
クルを15秒/15秒/10秒で、前記噴霧液を噴霧することにより流動造粒した。造粒後、こ
の造粒物を吸気温度40℃で5分間乾燥した後、ステアリン酸マグネシウム1部を混合した。
その混合粉末を、ロータリー打錠機を用いて一錠当たり120mgで打錠し、初期硬度約1kpを
有する錠剤とした。これを25℃、相対湿度75%で18時間保存した後、30℃、相対湿度40%で
4時間保存し、口腔内崩壊錠を得た。
【0018】
実施例8
塩酸ラモセトロン 0.01部
アビセル 86部
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 10部
クエン酸水和物 0.5部
ヒドロキシプロピルセルロース 3部
ステアリン酸マグネシウム 0.5部
ヒドロキシプロピルセルロース3部、クエン酸水和物0.5部、塩酸ラモセトロン0.01部を
水27部にマグネチックスターラーを用いて攪拌溶解させ、噴霧液(ヒドロキシプロピルセ
ルロース濃度10重量%)を調製した。つぎに、アビセル86部、低置換度ヒドロキシプロピ
ルセルロース10部を流動層造粒機(製品名:GPCG-5、パウレックス社製)に仕込み、前記噴
霧液を100g/minの噴霧速度で噴霧することにより流動造粒した。造粒後、この造粒物を吸
気温度40℃で5分間乾燥した後、ステアリン酸マグネシウム0.5部を混合した。その混合粉
末を、ロータリー打錠機を用いて一錠当たり100mgで打錠し、錠剤を得た。
【0019】
実施例9
塩酸ラモセトロン 0.1部
乳糖 77部
コーンスターチ 19部
カルボキシメチルセルロース(CMC) 5部
ヒドロキシプロピルセルロース 3部
ステアリン酸マグネシウム 0.3部
ヒドロキシプロピルセルロース3部、塩酸ラモセトロン0.1部を水35部にマグネチックス
ターラーを用いて攪拌溶解させ、噴霧液(ヒドロキシプロピルセルロース濃度8重量%)を
調製した。つぎに、乳糖77部、コーンスターチ19部、CMC酸5部を流動層造粒機(製品名:F
LOW COATER、フロイント社製)に仕込み、前記噴霧液を10g/minの噴霧速度で噴霧すること
により流動造粒した。造粒後、この造粒物を吸気温度40℃で5分間乾燥した後、ステアリ
ン酸マグネシウム0.3部を混合した。その混合粉末を、ロータリー打錠機を用いて一錠当
たり120mgで打錠し、錠剤を得た。
【0020】
実施例10
塩酸ラモセトロン 0.0008部
マンニトール 89部
没食子酸プロピル 5部
マルトース 10部
ステアリン酸マグネシウム 1部
マルトース10部、塩酸ラモセトロン0.0008部および没食子酸プロピル5部を水67部にマ
グネチックスターラーを用いて攪拌懸濁して噴霧液(濃度15重量%)を調製した。つぎに、
マンニトール89部を流動層造粒機(FLOW COATER、フロイント社製)に仕込み、前記噴霧液
を噴霧することにより流動造粒した。造粒後、この造粒物を吸気温度40℃で5分間乾燥し
た後、ステアリン酸マグネシウム1部を混合した。その混合粉末を、ロータリー打錠機を
用いて一錠当たり120mgで打錠し、錠剤を得た。
【0021】
試験例1 下痢型過敏性腸症候群患者に対する臨床試験
下痢型過敏性腸症候群患者(IBS)を対象として,以下の条件で臨床試験を行った。
対象:RomeII診断基準(D.A. Drossman et al., p351-432, Degnon Associates, McLean,
2000)に準ずる下痢型IBS患者
症例数:418例
治験薬剤と投与方法:プラセボ、塩酸ラモセトロン0.005mgおよび0.01mgを1日1回12週間
経口投与した
試験期間:観察期1週間、治療期12週間
観察項目:
1.主要評価項目
(1)IBS症状の全般改善効果(被験者による評価)
治療期移行後、治験薬服薬開始日を1日目として、被験者は1週間ごとにIBSによるすべ
ての症状を総合して治験薬によるIBS症状の全般改善効果を観察期の状態と比較して評価
し、患者日誌に記入した。なお、IBS症状の全般改善効果のスコアは以下の通りとした。
0=症状がなくなった、1=かなり改善した、2=やや改善した、3=変わらなかった、4=
悪くなった
4週間のうち2週間以上でスコアが0または1であった被験者を月間レスポンダーとし
て、プラセボ、塩酸ラモセトロン0.005mgおよび0.01mgの各群毎に、1月毎の月間レスポ
ンダー率を算出した。
【0022】
2.副次評価項目
(1)腹痛・腹部不快感改善効果(被験者による評価)
治療期移行後、治験薬服薬開始日を1日目として、被験者は1週間ごとに治験薬による腹
痛・腹部不快感改善効果を観察期の状態と比較して評価し、患者日誌に記入した。なお、
腹痛・腹部不快感改善効果の評価スコアは以下の通りとした。
0=症状がなくなった、1=かなり改善した、2=やや改善した、3=変わらなかった、4=
悪くなった
(2)便通状態改善効果(被験者による評価)
治療期移行後、治験薬服薬開始日を1日目として、被験者は1週間ごとに治験薬による便
通状態改善効果を観察期の状態と比較して評価し、患者日誌に記入した。なお、便通状態
改善効果の評価スコアは以下の通りとした。
0=正常に近い状態になった、1=かなり改善した、2=やや改善した、3=変わらなかった
、4=悪くなった
(3)腹痛・腹部不快感の重症度
治験期間中(観察期および治療期)、被験者は毎日その日の腹痛・腹部不快感の重症度
を評価し、患者日誌に記入した。腹痛・腹部不快感の重症度スコアは以下の通りとした。
0=なし、1=弱い、2=中程度、3=強い、4=非常に強い
(4)便形状(性状)
治験期間中、被験者は毎日その日の便形状(性状)をブリストル便形状スケールのスコ
ア(タイプ)を用いて患者日誌に記入した。なお、1日に複数回排便した場合、あるいは1
回の排便にて異なった便形状(性状)の便があった場合は、被験者がその日の最も代表的
な(最もわずらわしいと感じた)便の形状(性状)を1つだけ記入した。
(5)排便回数
治験期間中、被験者は毎日その日の排便回数を患者日誌に記入した。
(6)便意切迫感
治験期間中、被験者は毎日その日の便意切迫感の有無を患者日誌に記入した。
(7)残便感
治験期間中、被験者は毎日その日の残便感の有無を患者日誌に記入した。
副次評価項目の(1)〜(3)についても主評価項目と同様に月間レスポンダー率を算出した

【0023】
結果:
IBS症状の全般改善効果における最終時点月間レスポンダー率はプラセボ群で26.9%であ
った。一方、塩酸ラモセトロン0.005mgおよび0.01mg群の月間レスポンダー率はそれぞれ4
2.6%および43.0%であり、プラセボのレスポンダー率を15%以上上回った。0.005mgおよび0
.01mg群のプラセボ群に対するp値はそれぞれ0.0273および0.0264であった。尚、塩酸ラモ
セトロン0.005mgおよび0.01mg群とプラセボ群とのレスポンダー率の差は、男性患者と女
性患者の間で差は見られなかった。
また、腹痛・腹部不快感改善効果および便通状態改善効果における最終時点月間レスポ
ンダー率においても、塩酸ラモセトロン0.005mgおよび0.01mg群でプラセボ群を10%以上上
回った。
以上のことより、塩酸ラモセトロン0.005mgおよび0.01mgの下痢型過敏性腸症候群患者
に対する有意な治療効果が確認された。また、塩酸ラモセトロンは特許文献2に開示され
たアロセトロンとは異なり男性患者、女性患者を問わずに有効であること、特許文献3に
開示された薬剤とは異なり1日1回投与で十分に有効であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1日量として0.002〜0.02mgの塩酸ラモセトロン又はこれと等モル量のラモセトロン若し
くは製薬学的に許容されるその他の塩を有効成分として含有する下痢型過敏性腸症候群治
療剤。
【請求項2】
1日量として0.002〜0.02mgの塩酸ラモセトロン又はこれと等モル量のラモセトロン若し
くは製薬学的に許容されるその他の塩を有効成分として含有する過敏性腸症候群の下痢症
状改善剤。

【公開番号】特開2006−8707(P2006−8707A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273001(P2005−273001)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【分割の表示】特願2004−141975(P2004−141975)の分割
【原出願日】平成16年5月12日(2004.5.12)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】