説明

下部槽交換システム及び下部槽交換方法

【課題】地金及びスラグ除去作業時に昇降シリンダーが破損せず、また下部槽の交換作業の効率化及び人的負荷の軽減が可能な下部槽交換システム及び下部槽交換方法を提供する。
【解決手段】下部槽交換システムは、レール11上を走行する台車12、台車12上を昇降する昇降架台16、昇降架台16を昇降させる昇降シリンダー15、昇降架台16上に設置され、前後左右方向に移動可能とされたスライドテーブル18、及び地金回収ボックスを支持する地金回収ボックス支持手段20とを有する芯合わせ装置10と、スライドテーブル18上にセット可能とされ、下部槽に接続される2基の浸漬管が載置可能とされた浸漬管移送架台と、スライドテーブル18上にセット可能とされる下部槽移送架台を下部槽と共に懸吊可能な吊り治具とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶鋼を精錬する真空脱ガス槽の一部を構成する下部槽を交換する際に使用される下部槽交換システム及び当該下部槽交換システムを用いた下部槽交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
転炉において一次精錬が終了した溶鋼は、脱炭のため、又は水素や窒素などの溶存ガスの除去を目的として、真空脱ガス処理装置を用いた脱ガス処理が行われる。脱ガス処理では、真空脱ガス槽の下部(浸漬管)を取鍋内の溶鋼に浸漬させた後、真空脱ガス槽内が真空状態となるように真空脱ガス槽内のエアを吸引することにより、溶鋼が真空脱ガス槽内に吸い上げられ、溶鋼中のガス成分が真空脱ガス槽内に放出される。
【0003】
RH方式等の真空脱ガス槽は、上から順に天蓋、上部槽、下部槽、浸漬管からなり、これらをボルトで接続した構成とされている。真空脱ガス槽の下部槽及びこれに接続される浸漬管は、交換や補修のため、上部槽から定期的に取り外してそれぞれ補修作業場所へと移動させる必要があり、補修後は、新たな下部槽を上部槽に接続した後、当該下部槽に新たな浸漬管を接続する作業が行われる。
【0004】
真空脱ガス槽の下部槽の交換技術に関して、例えば、特許文献1では、RH方式の真空脱ガス槽の下部槽又は浸漬管の交換に使用される芯合わせ装置の発明が開示されている。この下部槽又は浸漬管の芯合わせ装置は、真空槽(真空脱ガス槽)の取付けフランジの直下位置に移動可能な台車と、昇降手段によって台車上で昇降する昇降架台と、昇降架台上に設置され、真空槽の下位置に取付ける下部槽又は浸漬管を直立状態で保持するスライドテーブルと、スライドテーブルを前後左右方向に移動させる横移動手段とを備えている。
【0005】
また、特許文献2では、底面が開口する大径浸漬管を有する真空脱ガス槽の下部槽の交換を目的とした下部槽交換システム及び下部槽交換方法の発明が開示されている。この下部槽交換システムは、底面が開口する下部槽と、当該下部槽を交換するための下部槽交換用台車とから構成され、下部槽の上部外周には、下面に向けた受容部を有する預け座が複数箇所に設けられている。また、下部槽交換用台車は、走行軌条上を走行可能な台車本体と、下部槽の各預け座の受容部内に挿入される挿入支持部が設けられた支持テーブルと、支持テーブルを支持する基台部と、台車本体に設けられ、基台部を昇降させる昇降装置と、支持テーブルを基台部に対して前後左右方向に移動させる移動機構とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−272889号公報
【特許文献2】特開2009−173981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、真空脱ガス槽の下部槽交換に関する従来技術には、以下のような問題があった。
真空脱ガス槽は、上述したように天蓋、上部槽、下部槽、浸漬管から構成されている。このため、下部槽を交換する場合、浸漬管を取り外した後、下部槽を取り外さなければならない。そして、上部槽に付着している地金及びスラグの除去作業を行った後、新たな下部槽を上部槽に取り付け、さらに浸漬管を新たな下部槽に取り付ける必要がある。上部槽に付着している地金及びスラグの除去作業では、地金及びスラグを、カロライズパイプなどの酸素パイプから供給される酸素で溶断除去、あるいは機械的に除去して落下させている。その際、環境上の配慮から、除去した地金及びスラグはグランド上に落とすのではなく、芯合わせ装置の昇降架台上に載置した地金受けボックスにより回収している。しかし、地金受けボックスが載置される昇降架台が昇降シリンダーで支持されているため、地金及びスラグの重量が大きい場合、地金及びスラグの落下衝撃により昇降シリンダーが破損するという問題があった。
【0008】
また、下部槽の交換作業では、補修場へ下部槽を輸送する必要があり、下部槽を下部槽移送架台に載置して輸送している。しかし、下部槽が載置された下部槽移送架台をクレーンで吊った場合、下部槽と下部槽移送架台との間にコイルバネが介装されているため、下部槽が不安定となり危険である。そのため、下部槽を別の場所に一度仮置きして、下部槽移送架台をトレーラに積載した後、下部槽を下部槽移送架台に載置している。その結果、作業回数が多くなると共に、作業スペースが必要になるという問題があった。
【0009】
さらにまた、下部槽の交換作業では、浸漬管の交換が必要となるが、2基の浸漬管は同時ではなく別々に交換する作業となるため、作業回数が多くなり、全体の補修時間が長くなる。その結果、非稼働時間が多くなって設備稼働率低減の要因となっていた。
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、地金及びスラグ除去作業時に昇降シリンダーが破損せず、また下部槽の交換作業の効率化及び人的負荷の軽減が可能な下部槽交換システム及び下部槽交換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、第1の発明は、溶鋼を精錬する真空脱ガス槽の一部を構成する下部槽を交換するシステムであって、
(A)軌道上を走行する台車と、前記台車上で昇降する昇降架台と、前記昇降架台を下方から着脱自在に支持し、該昇降架台を昇降させる昇降シリンダーと、前記昇降架台上に設置され、前後左右方向に移動可能とされたスライドテーブルと、前記真空脱ガス槽の上部槽に付着した地金及びスラグの除去作業に使用される地金回収ボックスを支持する地金回収ボックス支持手段とを有する芯合わせ装置と、
(B)前記スライドテーブル上にセット可能とされ、前記下部槽に接続される2基の浸漬管が載置可能とされた浸漬管移送架台と、
(C)前記スライドテーブル上にセット可能とされ、前記下部槽が載置される下部槽移送架台と、
(D)前記下部槽移送架台を懸吊するための吊りピースAと、前記下部槽移送架台上の前記下部槽を懸吊するための吊りピースBとを有し、前記下部槽移送架台を前記下部槽と共に懸吊可能な吊り治具とを備えることを特徴としている。
【0012】
また、第2の発明は、第1の発明に係る下部槽交換システムを用いて、溶鋼を精錬する真空脱ガス槽の一部を構成する下部槽を交換する方法であって、以下の工程を備えている。
(1)前記浸漬管移送架台を前記スライドテーブル上にセットし、前記芯合わせ装置を前記真空脱ガス槽の下方に移動させた後、前記昇降架台を上昇させて、前記下部槽に接続されている2基の浸漬管を前記浸漬管移送架台上に載置させ、前記下部槽から前記2基の浸漬管を取り外し、次いで前記昇降架台を下降させ、前記芯合わせ装置を前記真空脱ガス槽から移動させた後、前記2基の浸漬管が載置された前記浸漬管移送架台を前記スライドテーブルから移送する工程。
(2)前記下部槽移送架台を前記スライドテーブル上にセットし、前記芯合わせ装置を前記真空脱ガス槽の下方に移動させた後、前記昇降架台を上昇させて、前記下部槽を前記下部槽移送架台上に載置させ、前記真空脱ガス槽の上部槽から前記下部槽を取り外し、次いで前記昇降架台を下降させ、前記芯合わせ装置を前記真空脱ガス槽から移動させた後、前記下部槽が載置された前記下部槽移送架台を前記吊り治具を用いて前記スライドテーブルから移送する工程。
(3)前記地金回収ボックスを前記昇降架台上に載置し、前記芯合わせ装置を前記真空脱ガス槽の下方に移動させた後、前記昇降架台を上昇させて、前記地金回収ボックス支持手段をセットし、前記上部槽に付着している地金及びスラグを前記地金回収ボックスに回収し、次いで、前記地金回収ボックス支持手段を格納して前記昇降架台を下降させ、前記芯合わせ装置を前記真空脱ガス槽から移動させた後、前記地金回収ボックスを前記昇降架台から移送する工程。
(4)新たな下部槽が載置された前記下部槽移送架台を前記吊り治具を用いて前記スライドテーブル上にセットし、前記芯合わせ装置を前記真空脱ガス槽の下方に移動させた後、前記昇降架台を上昇させて前記新たな下部槽を前記上部槽に接近させ、前記スライドテーブルを前後左右方向に移動させて前記新たな下部槽の位置決め(芯合わせ)を行って該新たな下部槽を前記上部槽に接続し、次いで前記昇降架台を下降させ、前記芯合わせ装置を前記真空脱ガス槽から移動させた後、前記下部槽移送架台を前記吊り治具を用いて前記スライドテーブルから移送する工程。
(5)新たな2基の浸漬管が載置された前記浸漬管移送架台を前記スライドテーブル上にセットし、前記芯合わせ装置を前記真空脱ガス槽の下方に移動させた後、前記昇降架台を上昇させて前記新たな浸漬管を前記新たな下部槽に接近させ、前記スライドテーブルを前後左右方向に移動させて前記新たな浸漬管の位置決め(芯合わせ)を行って該新たな浸漬管を前記新たな下部槽に接続し、次いで前記昇降架台を下降させ、前記芯合わせ装置を前記真空脱ガス槽から移動させる工程。
【0013】
また、第1の発明に係る下部槽交換システムでは、前記地金回収ボックス支持手段が、前記台車上に立設された固定支柱と、前記地金回収ボックスが載置される前記昇降架台と前記固定支柱との間に介装可能とされた可動支柱とを有するようにしてもよい。
【0014】
地金及びスラグ除去作業時に、地金回収ボックスが載置された昇降架台を上昇させ、昇降架台と固定支柱との間に可動支柱を介装する。そして、昇降シリンダーのロッドを下降させ、地金回収ボックスを昇降架台を介して地金回収ボックス支持手段で支持すると共に、昇降架台と昇降シリンダーとを離間させる。これにより、昇降架台に作用する地金及びスラグの衝撃力は、昇降架台から可動支柱を介して固定支柱に伝達され、地金及びスラグの衝撃力が昇降シリンダーに作用することはない。
一方、地金及びスラグ除去作業が終了すると、昇降シリンダーで昇降架台を支持して該昇降架台を僅かに上昇させ、昇降架台と可動支柱とを離間させる。そして、昇降架台と固定支柱との間から可動支柱を取り外し、昇降シリンダーにより昇降架台を下降させる。
【0015】
また、第1の発明に係る下部槽交換システムでは、前記吊り治具の下面に耐熱材が貼着されていることを好適とする。
上部槽から取り外された下部槽は高熱を帯びているため、下部槽から放射される輻射熱によって吊り治具が変形するおそれがある。そのため、当該構成では、吊り治具の下面に耐熱材を貼着することにより、吊り治具の変形を防止している。
【発明の効果】
【0016】
第1及び第2の発明では、地金及びスラグの除去作業に使用される地金回収ボックスを支持する地金回収ボックス支持手段を備えているので、除去した地金及びスラグの衝撃力が昇降シリンダーに作用せず、地金及びスラグの落下衝撃によって昇降シリンダーが破損することがない。
また、下部槽が載置された下部槽移送架台を懸吊する吊り治具と、2基の浸漬管が載置可能とされた浸漬管移送架台とを備えているので、従来に比べて下部槽の交換作業が効率化され、人的負荷の軽減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係る下部槽交換システムを構成する芯合わせ装置を該芯合わせ装置の進行方向から見た立面図である。
【図2】図1のA−A矢視断面図である。
【図3】図2のB部位の拡大図である。
【図4】同芯合わせ装置の上部を該芯合わせ装置の進行直交方向から見た部分立面図である。
【図5】(A)は格納時における地金回収ボックス支持手段の平面図、(B)は同地金回収ボックス支持手段を芯合わせ装置の進行方向から見た立面図、(C)は同地金回収ボックス支持手段を芯合わせ装置の進行直交方向から見た立面図である。
【図6】(A)はセット時における地金回収ボックス支持手段の平面図、(B)は同地金回収ボックス支持手段を芯合わせ装置の進行方向から見た立面図、(C)は同地金回収ボックス支持手段を芯合わせ装置の進行直交方向から見た立面図である。
【図7】(A)は浸漬管移送架台を芯合わせ装置の進行方向から見た立面図、(B)は浸漬管移送架台を芯合わせ装置の進行直交方向から見た立面図である。
【図8】同浸漬管移送架台上に設置される基部、支持部材、及び枠の平面図である。
【図9】(A)は下部槽移送架台を芯合わせ装置の進行方向から見た立面図、(B)は下部槽移送架台を芯合わせ装置の進行直交方向から見た立面図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係る下部槽交換方法を説明するための模式図である。
【図11】同下部槽交換方法を説明するための模式図である。
【図12】同下部槽交換方法を説明するための模式図である。
【図13】同下部槽交換方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態に付き説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の説明では、芯合わせ装置の進行方向を「前後」、進行直交方向を「左右」と呼ぶことにする。
【0019】
[下部槽交換システム]
本発明の一実施の形態に係る下部槽交換システムは、溶鋼を精錬する真空脱ガス槽(図示省略)の一部を構成する下部槽51(図11参照)及び浸漬管52(図10参照)の芯合せを行う芯合わせ装置10(図1参照)と、下部槽51に接続される2基の浸漬管52が載置可能とされた浸漬管移送架台31(図7参照)と、下部槽51が載置される下部槽移送架台41、及び下部槽51を下部槽移送架台41に載置した状態で懸吊可能な吊り治具46(図9参照)とから概略構成されている。
【0020】
芯合わせ装置10は、レール11(軌道の一例)上を走行する台車12と、台車12上で昇降する昇降架台16と、昇降架台16を昇降させる昇降シリンダー15と、昇降架台16上に設置され、前後左右方向に移動可能とされたスライドテーブル18と、真空脱ガス槽の上部槽50に付着した地金及びスラグの除去作業に使用される地金回収ボックス53を支持する地金回収ボックス支持手段20とを備えている(図13参照)。
【0021】
平面視して矩形状とされた台車12の前部及び後部の各両側部には、台車12に設置されたモータ14により駆動し、レール11上を走行する一対の車輪13がそれぞれ取り付けられている(図1参照)。レール11は真空脱ガス槽と補修場(交換場)等との間に敷設されており、レール11に沿って台車12を真空脱ガス槽の直下まで移動させることができる。
【0022】
昇降シリンダー15は、台車12の前部及び後部の各中央に1台立設されている。昇降シリンダー15は電動シリンダーとされ、各昇降シリンダー15に近接して該昇降シリンダー15を駆動するためのモータ24が設置されている(図10参照)。昇降シリンダー15は、シリンダー15aの基端部が台車12上に固定されており、シリンダー15aに挿入されているロッド15bが上下方向に移動することにより昇降架台16が昇降する。
【0023】
昇降架台16は平面視して矩形状とされている。昇降架台16の周縁部は、中央部に比べて高い位置にあり、作業者が載ることのできる作業ステージ19とされている(図4参照)。前後の作業ステージ19の各中央部下面には、昇降シリンダー15のロッド15b先端部と連結される支承部30が設置されている。支承部30には、球面状とされたロッド15b先端部と嵌合する凹陥部が形成されている。昇降シリンダー15のロッド15b先端部は、支承部30の凹陥部内で上下方向に移動可能とされ、支承部30から着脱自在とされている。
【0024】
図2に示すように、台車12の四隅には、ボックス柱からなる固定支柱25が設置されている。各固定支柱25は、長辺面が台車12の対角線方向と平行になるように配置されている。また、平面視して各固定支柱25の内側には、昇降架台16から下方に延びるH型鋼からなる昇降フレーム17が配置されている。各昇降フレーム17は、一方のフランジが固定支柱25の一方の短辺面と対峙するように配置されている(図3参照)。そして、固定支柱25の短辺面に面する、昇降フレーム17のフランジ面には、ローラー26が装着され、当該フランジ面に面する、固定支柱25の短辺面には、ローラー26をガイドするガイドレール27が固定支柱25の材軸方向に設置されている。これにより、昇降架台16は、安定して昇降することができる。
【0025】
スライドテーブル18は、平面視して矩形状とされ、四隅に配置されたクロススライドガイド28を介して昇降架台16上に設置されている(図4参照)。このクロススライドガイド28は、平面視して直交する上レール28a及び下レール28bと、上レール28a及び下レール28bに沿って走行する摺動部28cとから構成されている。なお、上レール28aはスライドテーブル18に、下レール28bは昇降架台16にそれぞれ固定されている。
【0026】
また、スライドテーブル18の上面には、当該上面から上方に突出し、浸漬管移送架台31及び後述するアダプター40(図11参照)をセットするための位置決めピン18bが形成されている(図4参照)。一方、スライドテーブル18の下面には、当該下面から下方に突出する突起部18aが形成されている。突起部18aは、スライドテーブル18の前部、後部、右部、左部に1つずつ配置され、各突起部18aに近接して、突起部18aを水平方向に押圧するための油圧シリンダー29が昇降架台16に設置されている。
前後左右方向にスライドテーブル18を移動させる場合は、全ての油圧シリンダー29のロッドを最後退限まで引っ込めておき、移動方向の油圧シリンダー29のみに作動油を送給して、所定の方向にスライドテーブル18を移動(寸動)させる。スライドテーブル18の移動が終わると、各突起部18aをそれぞれ対応する油圧シリンダー29が押圧するようにする。更に必要な場合には、全油圧シリンダー29のバルブを閉じて、スライドテーブル18の動きをロックする。
【0027】
図5(A)、(B)、(C)は格納時における地金回収ボックス支持手段20の状態を、図6(A)、(B)、(C)はセット時(作動時)における地金回収ボックス支持手段20の状態をそれぞれ示したものである。地金回収ボックス支持手段20は、昇降架台16から下方に延びる棒状部材22と、ヒンジ23で棒状部材22に連結され、水平面内で回動する可動支柱21と、台車12上に立設された固定支柱25とから概略構成されている。また、可動支柱21には、当該可動支柱21を回動させるための操作ハンドル21aが、棒状部材22には、操作ハンドル21aを格納するための留め具22aがそれぞれ装着されている。
【0028】
地金回収ボックス支持手段20をセットする場合は、昇降架台16を上昇させた後、作業者が操作ハンドル21aにより可動支柱21を90°回動させて、昇降架台16と固定支柱25との間に可動支柱21を介装する。そして、昇降シリンダー15のロッド15bを下降させる。
一方、地金回収ボックス支持手段20を格納する場合は、昇降シリンダー15のロッド15bを上昇させ、昇降架台16を支持して昇降架台16を僅かに上昇させ、昇降架台16と可動支柱21とを離間させる。そして、作業者が操作ハンドル21aにより可動支柱21を90°回動させて、昇降架台16と固定支柱25との間から可動支柱21を取り外した後、可動支柱21が動かないように留め具22aで可動支柱21を拘束する。
【0029】
浸漬管移送架台31は、平面視して矩形状とされた移送台32から概略構成され、2基の浸漬管52が載置可能とされている(図7(A)、(B)参照)。移送台32上には、平面視して方形状の基部35が2基設置されている(図8参照)。各基部35の四隅には、浸漬管52を支持するための支持部材36が立設され、4本の支持部材36は、平面視して略八角形状の枠37で一体化されている(図8参照)。各支持部材36の上部には、浸漬管52を弾性支持するためのコイルバネ36aが内装されており、浸漬管52を下部槽51に取り付ける際、コイルバネ36aの付勢力により浸漬管フランジ(図示省略)と下部槽フランジ(図示省略)の密着性が確保される構造となっている。
また、移送台32の四隅は懸吊部33とされ、懸吊部33の先端部には、浸漬管移送架台31をクレーンフック39で吊る際に使用するワイヤ38を取り付けるための吊りピース34が溶接されている。なお、移送台32の下面には、スライドテーブル18上に形成された位置決めピン18bが挿入される位置決め穴32aが形成されている。
なお、浸漬管移送架台31に載置された浸漬管52は高熱であるため、基部35の上面にグラスウール層を設けることが好ましい。
【0030】
下部槽移送架台41は、平面視して矩形状とされた移送台42から概略構成されている。移送台42の四隅は懸吊部43とされ、懸吊部43の先端部には、ワイヤを取り付けるための吊りピース44が溶接されている(図9(A)、(B)参照)。また、移送台42上には、下部槽51を弾性支持するための複数のコイルバネ45(4本×2列)が配設され、下部槽51を上部槽50に取り付ける際、コイルバネ45の付勢力により下部槽フランジ(図示省略)と上部槽フランジの密着性が確保される構造となっている。一方、移送台42の下面には位置決め穴42aが形成されており、アダプター40の上面に設けられた位置決めピン40bにより移送台42が固定される。
なお、下部槽移送架台41に載置された下部槽51は高熱であるため、移送台42の上面にグラスウール層を設けることが好ましい。
【0031】
吊り治具46は、平面視して概略井桁状とされ、長尺梁46aと短尺梁46bから構成されている。各長尺梁46aの両端部には、下部槽移送架台41を吊るための吊りピースA47aが、各短尺梁46bの一方の端部には、下部槽移送架台41上の下部槽51を吊るための吊りピースB47bがそれぞれ接合されている。また、吊り治具46の重心位置には、当該吊り治具46をクレーンフック39で吊り上げるための吊り上げ部48が形成されている。さらにまた、長尺梁46a及び短尺梁46bの下面には、下部槽51から放射される輻射熱によって吊り治具46が変形しないように、グラスウール(耐熱材の一例)からなる耐熱板49が設置されている。
【0032】
[下部槽交換方法]
次に、上記構成を有する下部槽交換システムを用いて下部槽51を交換する方法について説明する。
【0033】
(1−1)浸漬管移送架台31をクレーン(図示省略)でスライドテーブル18上にセット(浸漬管移送架台31の下面に形成された位置決め穴32aにスライドテーブル18の位置決めピン18bを挿入)した後、芯合わせ装置10を真空脱ガス槽の下方に移動させる(図10参照)。
(1−2)昇降シリンダー15を駆動して昇降架台16を上昇させ、下部槽51に接続されている2基の浸漬管52を浸漬管移送架台31上に載置させる。
(1−3)下部槽51から2基の浸漬管52を取り外す。
(1−4)昇降シリンダー15を駆動して昇降架台16を下降させた後、芯合わせ装置10を真空脱ガス槽から移動させる。
(1−5)2基の浸漬管52が載置された浸漬管移送架台31をクレーンで吊り上げてスライドテーブル18から補修場へ移送する。
【0034】
(2−1)高さ調節用のアダプター40をスライドテーブル18上にセット(アダプター40の下面に形成された位置決め穴40aにスライドテーブル18の位置決めピン18bを挿入)した後、下部槽移送架台41を吊り治具46を用いてクレーンによりアダプター40上にセットする(図11参照)。そして、芯合わせ装置10を真空脱ガス槽の下方に移動させる。
(2−2)昇降シリンダー15を駆動して昇降架台16を上昇させ、下部槽51を下部槽移送架台41上に載置させる。
(2−3)真空脱ガス槽の上部槽50から下部槽51を取り外す。
(2−4)昇降シリンダー15を駆動して昇降架台16を下降させた後、芯合わせ装置10を真空脱ガス槽から移動させる。
(2−5)下部槽51が載置された下部槽移送架台41を吊り治具46を用いてクレーンで吊り上げてアダプター40から補修場へ移送する。次いで、アダプター40をスライドテーブル18から取り外す。
【0035】
(3−1)地金回収ボックス架台54の脚部54aでスライドテーブル18を跨ぐようにして、地金回収ボックス架台54を昇降架台16上にセットする(図12参照)。そして、地金回収ボックス53を地金回収ボックス架台54上に載置する。
(3−2)芯合わせ装置10を真空脱ガス槽の下方に移動させた後、昇降シリンダー15を駆動して昇降架台16を上昇させる。
(3−3)操作ハンドル21aにより可動支柱21を回動させて、昇降架台16と固定支柱25との間に可動支柱21を介装し、昇降シリンダー15のロッド15bを下降させることにより地金回収ボックス支持手段20をセットする(図13参照)。
(3−4)上部槽50に付着している地金及びスラグを地金回収ボックス53に回収する。
(3−5)昇降シリンダー15で昇降架台16を支持して昇降架台16を僅かに上昇させ、昇降架台16と可動支柱21とを離間させる。そして、操作ハンドル21aにより可動支柱21を回動させ、昇降架台16と固定支柱25との間から可動支柱21を取り外して地金回収ボックス支持手段20を格納する。
(3−6)昇降シリンダー15を駆動して昇降架台16を下降させた後、芯合わせ装置10を真空脱ガス槽から移動させる。
(3−7)地金回収ボックス53及び地金回収ボックス架台54を昇降架台16から取り外す。
【0036】
(4−1)高さ調節用のアダプター40をスライドテーブル18上にセットした後、新たな下部槽51が載置された下部槽移送架台41を吊り治具46を用いてクレーンによりアダプター40上にセットする。そして、芯合わせ装置10を真空脱ガス槽の下方に移動させる。
(4−2)昇降シリンダー15を駆動して昇降架台16を上昇させ、新たな下部槽51を上部槽50に接近させる。
(4−3)油圧シリンダー29を駆動してスライドテーブル18を前後左右方向に移動させ、新たな下部槽51の位置決め(芯合わせ)を行った後、新たな下部槽51を上部槽50に接続する。
(4−4)昇降シリンダー15を駆動して昇降架台16を下降させた後、芯合わせ装置10を真空脱ガス槽から移動させる。
(4−5)下部槽移送架台41を吊り治具46を用いてアダプター40から、次いでアダプター40をスライドテーブル18からそれぞれ取り外す。
【0037】
(5−1)新たな2基の浸漬管52が載置された浸漬管移送架台31をクレーンによりスライドテーブル18上にセットした後、芯合わせ装置10を真空脱ガス槽の下方に移動させる。
(5−2)昇降シリンダー15を駆動して昇降架台16を上昇させて新たな浸漬管52を新たな下部槽51に接近させる。
(5−3)油圧シリンダー29を駆動してスライドテーブル18を前後左右方向に移動させて新たな浸漬管52の位置決め(芯合わせ)を行った後、先ほど接続された下部槽51に新たな浸漬管52を接続する。
(5−4)昇降シリンダー15を駆動して昇降架台16を下降させた後、芯合わせ装置10を真空脱ガス槽から移動させる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、上記実施の形態では、昇降シリンダーとして電動シリンダーを使用しているが、油圧シリンダーでもよい。また、上記実施の形態では、下部槽交換システムを下部槽の交換に使用しているが、浸漬管の交換のみの場合に下部槽交換システムが使用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0039】
10:芯合わせ装置、11:レール(軌道)、12:台車、13:車輪、14:モータ、15:昇降シリンダー、15a:シリンダー、15b:ロッド、16:昇降架台、17:昇降フレーム、18:スライドテーブル、18a:突起部、18b:位置決めピン、19:作業ステージ、20:地金回収ボックス支持手段、21:可動支柱、21a:操作ハンドル、22:棒状部材、22a:留め具、23:ヒンジ、24:モータ、25:固定支柱、26:ローラー、27:ガイドレール、28:クロススライドガイド、28a:上レール、28b:下レール、28c:摺動部、29:油圧シリンダー、30:支承部、31:浸漬管移送架台、32:移送台、32a:位置決め穴、33:懸吊部、34:吊りピース、35:基部、36:支持部材、36a:コイルバネ、37:枠、38:ワイヤ(索条)、39:クレーンフック、40:アダプター、40a:位置決め穴、40b:位置決めピン、41:下部槽移送架台、42:移送台、42a:位置決め穴、43:懸吊部、44:吊りピース、45:コイルバネ、46:吊り治具、46a:長尺梁、46b:短尺梁、47a:吊りピースA、47b:吊りピースB、48:吊り上げ部、49:耐熱板、50:上部槽、51:下部槽、52:浸漬管、53:地金回収ボックス、54:地金回収ボックス架台、54a:脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶鋼を精錬する真空脱ガス槽の一部を構成する下部槽を交換するシステムであって、
(A)軌道上を走行する台車と、前記台車上で昇降する昇降架台と、前記昇降架台を下方から着脱自在に支持し、該昇降架台を昇降させる昇降シリンダーと、前記昇降架台上に設置され、前後左右方向に移動可能とされたスライドテーブルと、前記真空脱ガス槽の上部槽に付着した地金及びスラグの除去作業に使用される地金回収ボックスを支持する地金回収ボックス支持手段とを有する芯合わせ装置と、
(B)前記スライドテーブル上にセット可能とされ、前記下部槽に接続される2基の浸漬管が載置可能とされた浸漬管移送架台と、
(C)前記スライドテーブル上にセット可能とされ、前記下部槽が載置される下部槽移送架台と、
(D)前記下部槽移送架台を懸吊するための吊りピースAと、前記下部槽移送架台上の前記下部槽を懸吊するための吊りピースBとを有し、前記下部槽移送架台を前記下部槽と共に懸吊可能な吊り治具とを備えることを特徴とする下部槽交換システム。
【請求項2】
請求項1記載の下部槽交換システムにおいて、前記地金回収ボックス支持手段は、前記台車上に立設された固定支柱と、前記地金回収ボックスが載置される前記昇降架台と前記固定支柱との間に介装可能とされた可動支柱とを有することを特徴とする下部槽交換システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の下部槽交換システムにおいて、前記吊り治具の下面に耐熱材が貼着されていることを特徴とする下部槽交換システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の下部槽交換システムを用いて、溶鋼を精錬する真空脱ガス槽の一部を構成する下部槽を交換する方法であって、
前記浸漬管移送架台を前記スライドテーブル上にセットし、前記芯合わせ装置を前記真空脱ガス槽の下方に移動させた後、前記昇降架台を上昇させて、前記下部槽に接続されている2基の浸漬管を前記浸漬管移送架台上に載置させ、前記下部槽から前記2基の浸漬管を取り外し、次いで前記昇降架台を下降させ、前記芯合わせ装置を前記真空脱ガス槽から移動させた後、前記2基の浸漬管が載置された前記浸漬管移送架台を前記スライドテーブルから移送する工程と、
前記下部槽移送架台を前記スライドテーブル上にセットし、前記芯合わせ装置を前記真空脱ガス槽の下方に移動させた後、前記昇降架台を上昇させて、前記下部槽を前記下部槽移送架台上に載置させ、前記真空脱ガス槽の上部槽から前記下部槽を取り外し、次いで前記昇降架台を下降させ、前記芯合わせ装置を前記真空脱ガス槽から移動させた後、前記下部槽が載置された前記下部槽移送架台を前記吊り治具を用いて前記スライドテーブルから移送する工程と、
前記地金回収ボックスを前記昇降架台上に載置し、前記芯合わせ装置を前記真空脱ガス槽の下方に移動させた後、前記昇降架台を上昇させて、前記地金回収ボックス支持手段をセットし、前記上部槽に付着している地金及びスラグを前記地金回収ボックスに回収し、次いで、前記地金回収ボックス支持手段を格納して前記昇降架台を下降させ、前記芯合わせ装置を前記真空脱ガス槽から移動させた後、前記地金回収ボックスを前記昇降架台から移送する工程と、
新たな下部槽が載置された前記下部槽移送架台を前記吊り治具を用いて前記スライドテーブル上にセットし、前記芯合わせ装置を前記真空脱ガス槽の下方に移動させた後、前記昇降架台を上昇させて前記新たな下部槽を前記上部槽に接近させ、前記スライドテーブルを前後左右方向に移動させて前記新たな下部槽の位置決めを行って該新たな下部槽を前記上部槽に接続し、次いで前記昇降架台を下降させ、前記芯合わせ装置を前記真空脱ガス槽から移動させた後、前記下部槽移送架台を前記吊り治具を用いて前記スライドテーブルから移送する工程と、
新たな2基の浸漬管が載置された前記浸漬管移送架台を前記スライドテーブル上にセットし、前記芯合わせ装置を前記真空脱ガス槽の下方に移動させた後、前記昇降架台を上昇させて前記新たな浸漬管を前記新たな下部槽に接近させ、前記スライドテーブルを前後左右方向に移動させて前記新たな浸漬管の位置決めを行って該新たな浸漬管を前記新たな下部槽に接続し、次いで前記昇降架台を下降させ、前記芯合わせ装置を前記真空脱ガス槽から移動させる工程とを備えることを特徴とする下部槽交換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−1994(P2013−1994A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137624(P2011−137624)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000253226)濱田重工株式会社 (17)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】