説明

不可視且つ赤外可読な識別子を利用しコンピューティングデバイスを制御するシステム及び方法

【課題】複数のユーザが同時に使用できるソーシャルコンピューティングデバイスで、ディジタル識別子を用いたディジタル情報持ち込みを実現する。
【解決手段】赤外域での検知が可能なセンサ(群)112から、その連携先のプロセッサ106に検知結果を送る。その検知結果をプロセッサ106が調べて赤外可読情報を識別する。識別した赤外可読情報に基づきプロセッサ106がその赤外可読情報の印刷先物品110に係る電子版表現をコンピュータ用記憶装置(群)118から取得する。プロセッサ106がその電子版表現を連携先のユーザインタフェース(ソーシャルコンピューティングデバイス)102上に提示させる。そのマシンを構成するデバイス102上又はその付近に物品110が置かれたときに、その物品110に印刷されている赤外可読情報に基づき、その物品110に係る電子版表現を提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、識別子等の符号化情報を静電プリンタ、複写機等の画像出力装置(以下単に「プリンタ」)により不可視且つ赤外可読な形態で物品上に印刷し、その情報の読取結果に基づきその物品に係る電子版表現(electronic representation or version)を取得し、ユーザ等がその電子版表現を参照、操作等することができるようグラフィカルユーザインタフェース(GUI)等でその電子版表現を提示するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
文書等の物品にディジタル識別子を付す技術は、従来から情報空間・実空間間の情報伝達によく用いられている。分野によって違いはあるが、使用されるのは肉眼で捉え得ない不可視タイプのディジタル識別子(不可視識別子)であることが多い。これは、例えば目に見える識別子が文書上に付いていると、その内容を読み取りにくく、見た目が悪く、或いは十分に信頼できない文書になるためである。目に見える識別子では改竄も容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0285845号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0227099号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0294247号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0035540号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0041654号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/0046625号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2008/0198138号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2008/0312263号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした不可視識別子は、例えばソーシャルコンピューティングの分野で重宝しそうである。情報空間と実空間とのリンクに依拠するソーシャルコンピューティングの分野では、取り扱われる種々の有形物品(文書等)にディジタル識別子を付与すれば、昔ながらのコンピュータ用キーボードでは簡単に実現できないほど効率的に、その端末(ソーシャルコンピューティングデバイス)上にディジタル情報を持ち込めるようになるはずである。ここに、そのソーシャルコンピューティングデバイスとしては、従来から、ユーザ等の指の形や動きを赤外線カメラで捉えてユーザ等を識別することで、複数のユーザが同時に使用できるようにしたものが知られている(特許文献7参照)。本発明の目的は、ディジタル識別子を用いたディジタル情報持ち込みを、複数のユーザが同時に使用できるソーシャルコンピューティングデバイス上で実現すること、特にユーザ等の指の形や動きを捉えるための赤外線カメラ等赤外域での検知が可能なセンサを利用して統合的なシステム乃至装置を実現することにある。即ち、実体のある文書等の物品の表面又は内部に付与されているディジタル識別子を読み取ってそれに対応するディジタル情報を取得することができる装置、例えば不可視且つ赤外可読な形態で物品上に印刷されている符号乃至識別子を読み取りその物品に係るメタデータを取得することができるソーシャルコンピューティングデバイスを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここに、本発明の一実施形態に係る方法は、ユーザインタフェース上又はその付近の物品を赤外域で調べうる1個又は複数個のセンサからその連携先のプロセッサへとそのセンサによる検知結果を送るステップと、その検知結果をプロセッサが調べて赤外可読情報を識別するステップと、識別結果に基づきプロセッサがその赤外可読情報の印刷先物品に係る電子版表現を1個又は複数個のコンピュータ用記憶装置から取得するステップと、取得した電子版表現をプロセッサが連携先のユーザインタフェース上に提示させるステップと、を有し、そのマシンのユーザインタフェース上又はその付近に物品が置かれたときに、その物品に印刷されている赤外可読情報に基づき、その物品に係る電子版表現を提示(例えば表示)するものである。ユーザは、ユーザインタフェース上の電子版表現を参照乃至操作することができる。赤外可読情報としては、例えば情報を赤外可読形態で印刷可能なプリンタを使用し、ディジタル識別子等の符号化情報を対応する物品上に印刷しておく。センサは、例えば物品乃至その上の(符号化)赤外可読情報を検知可能な位置に配置しておく。更に、赤外可読情報の識別に応じた電子版表現の取得及び提示を(部分的に)省き、赤外可読情報の識別結果に基づき提示以外の動作をマシンに実行させるようにすること或いは何もさせないようにすることができる。加えて、識別した赤外可読情報の印刷先物品に係る電子版表現以外のものを提示させることや、識別した赤外可読情報に従いサーチを実行させて代わりの表現を見つけさせることもできる。例えば、識別した赤外可読情報に基づくサーチで、その赤外可読情報の印刷先物品とは本来関係がないけれども見かけ上はその物品とよく似ている画像を見つけ、その画像をその物品に係る電子版表現としてユーザ向けに提示させることもできる。
【0006】
また、本発明の一実施形態に係るシステムは、まず、ディスプレイ付のユーザインタフェースを備える。そのディスプレイとしては、例えばタッチスクリーンディスプレイを使用する。タッチスクリーンディスプレイだけでユーザインタフェースを形成する構成でも、タッチスクリーンディスプレイと共にキーボード、ポインティングデバイス、ボタン等の入力デバイスを使用してユーザインタフェースを形成する構成でも構わない。例えば、机やテーブルの表面を画面とする(タッチスクリーン)ディスプレイを使用すれば、その上又は付近に物品を置くことができるユーザインタフェースを、そのディスプレイだけで形成することができる。
【0007】
本システムは、更に、ユーザインタフェース上又はその付近の物品を赤外域で検知可能な位置にある1個又は複数個のセンサ、ユーザインタフェース及びセンサと連携(「機能的に結合」の意;本願中で同様)するプロセッサ、並びにそのプロセッサからアクセス可能なコンピュータ用記憶装置を備える。赤外可読形態での情報印刷が可能なプリンタを、そのプロセッサと連携するよう設けることもできる。コンピュータ用記憶装置としては、様々な種類のデータ記憶装置乃至媒体、例えば磁気記録媒体、光記録媒体、電子記録媒体等やそれにアクセスするための装置を使用することができる。プリンタとしては、インクジェットプリンタ、静電プリンタ、サーマルプリンタ等のプリンタのうち、赤外域で検知可能な形態で情報を印刷可能なものを使用することができる。また、それらプリンタ、ユーザインタフェース、センサ及びコンピュータ用記憶装置としては、プロセッサに直に接続されているものを使用してもよいし、そのプロセッサから離れた場所に配置されているものを使用してもよい。後者の場合、ネットワーク等の通信手段経由でそのプロセッサから接続することもできる。
【0008】
本システムでは、プリンタによって赤外可読情報が物品上に印刷されるとき、それと前後し、プロセッサがその物品を特定できる情報(例えば識別子)をコンピュータ用記憶装置(群)に格納する。プロセッサは、赤外可読情報印刷済の物品がユーザインタフェース上又はその付近に置かれたときに、赤外域での検知結果を示す信号をセンサから受領し、その信号を調べてユーザインタフェース上又はその付近にある物品上の印刷済赤外可読情報を識別し、識別した赤外可読情報に基づきその赤外可読情報の印刷先物品に係る電子版表現をコンピュータ用記憶装置(群)から取得し、取得した電子版表現をユーザインタフェース上で提示(例えば表示)させる。ユーザ等は、その電子版表現を参照・操作することができる。
【0009】
赤外可読情報として印刷されるのは、例えばその物品の名称、その物品に係る電子版表現の格納先コンピュータ用記憶装置の所在等を、表現又は示唆する情報である。その赤外可読情報は、例えば、赤外域電磁波(赤外線)検知用デバイス(赤外線センサ)なら検知できるが肉眼では捉えられないような形態で印刷する。そして、ユーザ等が取り扱える有形の物品ならば、大抵は本システムでも取り扱うことができる。該当する物品としては、文書、セキュリティカード、土産品、鍵、玩具、写真、道具、CD(compact disc)、DVD(digital versatile disc:登録商標)、フロッピー(登録商標)ディスク、フォルダ、ペーパクリップ、携帯電話、携帯情報端末(PDA)等がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係り、ユーザインタフェースの上又は付近に置かれた物品上の符号化赤外可読情報を識別するシステムを示す模式図である。
【図2】本実施形態で実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【図3A】不可視且つ赤外可読な識別子が付された物品の外観例を示す図である。
【図3B】その物品に隠されている赤外可読識別子を示す図である。
【図4A】不可視且つ赤外可読な識別子が付された物品の別の外観例を示す図である。
【図4B】その物品に隠されている赤外可読識別子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、別紙図面を参照し本発明の好適な実施形態について説明する。下記実施形態では、複数のユーザが同時に使用可能なタイプのソーシャルコンピューティングデバイスを使用している。この種のデバイスは、丸い床柱状デバイス、壁掛け型デバイス等の形態にすることも可能であるが、下記実施形態ではユーザ等がその周りに着座して操作できるようテーブル状の構成を採っている。また、ソーシャルコンピューティングデバイスの操作に使用可能な手段としては、前述の通り、赤外域での検知が可能なカメラでユーザ等の指等を検知する、という手段がある。下記実施形態では、それと同じカメラ(群)をセンサとして利用し、ソーシャルコンピューティングデバイスの上又は付近に配置された無生物乃至不動物、例えばモバイルデバイス、書籍、文書等を検知するようにしている。
【0012】
図1に、本発明の一実施形態に係るシステム100の構成を示す。本システム100は、まず、ディスプレイ104付のユーザインタフェース102を備えている。このインタフェース102はテーブル状の部材にテーブルトップディスプレイとしてディスプレイ104を組み込んだ構成のインタフェーステーブルであり、そのディスプレイ104上には図示の通り様々な物品110を置くことができる。また、この図には、インタフェース102を形成する部材としてディスプレイ104以外にキーボード114、ポインティングデバイス116、ボタン等種々の入力デバイスも示されているが、こうした入力デバイスが付随しない形態でもインタフェース102を実現することができる。例えば、図示例と同じく机状又はテーブル状の部材に、その部材の表面が画面となるようディスプレイ104としてタッチスクリーンディスプレイ等を組み込むことで、実質的にそのディスプレイ104だけでインタフェース102を形成させることができる。
【0013】
更に、この図のユーザインタフェース102はソーシャルコンピューティングデバイスとして使用することができる。ソーシャルコンピューティングデバイスとしての機能の一つは、その上又は付近に置かれた物品110、例えばそのディスプレイ104の画面上にあるものをスキャンして、その結果に基づきユーザ等や諸物品110の動きを判別することである。この機能を実現するため、本システム100には、ソーシャルコンピューティングデバイス102と連携するプロセッサ(図中「CPU」)106、並びにそのプロセッサ106と連携するセンサ112も設けられている。プロセッサ106としては、一例として一般的なコンピュータ乃至情報処理装置を使用している。センサ112は、デバイス102乃至ディスプレイ104の上又は付近に置かれた物品110を検知可能な位置に複数個配置されている。用途によってはセンサが1個で済む場合もある。
【0014】
プロセッサ106は、デバイス102の上又は付近、例えばディスプレイ104の画面上に置かれた物品110の姿を画像から検知するため、ディスプレイ104の画面上方等を捉えた画像をセンサ112から受け取っている。その画像を得るため、センサ112としては相応の撮像検知機構で作動するものを使用している。例えばCCD(電荷結合素子)アレイ、CMOS(相補型金属−酸化物−半導体)イメージセンサ等、赤外域内所定波長(域)の反射乃至輻射エネルギを捉えて物品110を撮像する機構である。可視域等、他種波長(域)に感度を持つものも使用することができる。また、図示例ではディスプレイ104の画面から見て上方にも下方にもセンサ112が配置されているが、そのうちの一方だけにセンサを配置する形態でも本発明を実施することができる。更に、この撮像検知機構による撮像の頻度は、ディスプレイ104の画面上等に置かれた物品110の動きを検知することができる程度に高頻度にしてある。ディスプレイ104の画面には、更に、静電容量式、電気抵抗式等、電磁タッチ式検知機構も組み込まれている。撮像検知機構及び電磁タッチ式検知機構のいずれか一方で済ませて他方を省略することもできる。
【0015】
更に、コンピュータ用記憶装置118や赤外印刷プリンタ108もプロセッサ106と連携している。この図には記憶装置118やプリンタ108を1個ずつしか示していないが、本件技術分野で習熟を積まれた方々(いわゆる当業者)には自明な通り、それらを複数個設けることも可能である。また、記憶装置118としては、様々な種類のデータ記憶装置乃至媒体、例えば磁気記録媒体、光記録媒体、電子記録媒体等を使用することができる。プリンタ108としては、特殊素材(専用のインク等)を用い情報を赤外可読形態で印刷する機能さえあれば、一般的なインクジェットプリンタ、静電プリンタ、サーマルプリンタ等と同じ中身のプリンタを使用することができる。具体的には、特別なソフトウェア指令に従い特別な画像処理を実行すること、カーボンベースのトナー乃至インクで印刷すること、それらを通じ識別子等の(符号化)情報を赤外可読形態で印刷すること等が相違するだけで、印刷プロセス自体は通常印刷時と同じでよいので、プリンタ108としては様々な種類のプリンタを使用することができる。赤外可読形態での印刷については特許文献8も参照されたい。
【0016】
なお、ここでは“情報を赤外可読形態で印刷”という表現を使用しているが、これは、赤外域でしか検知できないように情報を印刷する、という意味ではない。正しくは、赤外線カメラ等のセンサ112以外では他の情報から弁別できないように情報を印刷する、という意味である。実際、赤外可読形態で印刷された情報(赤外可読情報)を人間が視認できないのは、目に映った画像中に他にも様々な情報が含まれていて、その情報で赤外可読情報が隠されているためである。これに対し、赤外可読情報を赤外線カメラ等で検知することができるのは、人の目に映る画像中で赤外可読情報を覆い隠していた情報を、赤外線カメラ等では捉えることができず、その結果として赤外可読情報が“浮かび上がって”くるためである。言い換えれば、肉眼に映る画像上でマスキングされている赤外可読情報を赤外線カメラ等で捉えることができるのは、その赤外線カメラ等の検知可能帯域が赤外域(及びその周辺)に限られているためである。
【0017】
また、デバイス102(ディスプレイ104や諸入力デバイス)や、赤外印刷プリンタ108、センサ112、コンピュータ用記憶装置118等の部材は、プロセッサ106に直接接続することができる。プロセッサ106に内蔵させてもよい。更に、プロセッサ106から離れた場所に配置されている部材を活用することもできる。その場合、プロセッサ106から切り離された状態で稼働させてもよいし、何らかの通信手段(ネットワーク等)を介しプロセッサ106に接続された状態で稼働させてもよい。例えば、観光記念品製造業者やパンフレット印刷業者等、プロセッサ106から離れ第三者の許にある赤外印刷プリンタをプリンタ108として利用するのなら、多くの場合、プロセッサ106に接続されていない状態で利用することとなろう。勿論、図示の如く、プロセッサ106に接続されている状態でそのプリンタ108を使用することもできる。
【0018】
本システム100では、赤外印刷プリンタ(群)108によって物品110上に赤外可読情報が印刷されるときに、それと前後し、その又はそれらの物品110を特定できるディジタル識別子等の情報を、プロセッサ106が1個又は複数個のコンピュータ用記憶装置118に格納する。例えば、ユーザ等やベンダは、写真、文書、音楽、動画等のデータをネットワーク上の記憶装置118に随時アップロードすることができる。プロセッサ106は、そのアップロードの際に、そのデータを格納すべき記憶装置110のネットワークアドレスや、そのデータに関連付けるべきディジタル識別子を、そのユーザ乃至ベンダによるデバイス102の操作か、それに代わる自動処理によって取得する。プロセッサ106は、取得したディジタル識別子を、アップロード対象のデータ(対応する物品110に係る電子版表現)の保存先と同じもの等、適切な記憶装置118上に格納する。プリンタ108は、こうした格納動作に前後して、そのユーザ乃至ベンダからの指示に応じ又は自動的に、そのディジタル識別子を赤外可読形態で印刷する。印刷先は、アップロード対象のデータに基づく印刷物、そのデータが保存されている媒体等の物品110上である。そうした物品110上に直に印刷するのではなく、別のシート上に印刷してそれを物品110に貼り付けるか、そのシートから物品110へと転写させることで、対応する物品110上に間接的に印刷してもよい。いずれにせよ、こうして赤外可読形態のディジタル識別子(符号化赤外可読情報)が印刷された後は、ユーザ等は、アクセス所望時にその物品110上の赤外可読情報をデバイス102に認識させるだけで、ネットワーク上の記憶装置118にアップロードしてあるデータ(対応する物品110に係る電子版表現)に随時アクセスすることができる。
【0019】
また、本システム100では、赤外域での検知結果を示す信号がセンサ(群)112からプロセッサ106へと送られている。個々のセンサ112から延びる破線で図示した通り、これらのセンサ112は、ディスプレイ104の画面上方を検知可能範囲としており、且つ、ディスプレイ104の画面上等デバイス102の上又はその付近に配置された物品110上の赤外可読情報を少なくともそのうちの1個で検知できるような位置にある。
【0020】
プロセッサ106は、センサ(群)112から受領した信号(赤外域検知結果出力)を調べることで、その物品110上に印刷されている赤外可読情報を識別する。プロセッサ106は、識別した赤外可読情報に基づき、その赤外可読情報の印刷先物品118に係る電子版表現をコンピュータ用記憶装置(群)118から取得し、その電子版表現をデバイス102上で提示する。ユーザ等は、例えばディスプレイ104上に表示されている電子版表現を参照することや、その電子版表現を随意に操作することができる。
【0021】
なお、赤外可読情報としては、対応する物品110の名称、対応する電子版表現の格納先コンピュータ用記憶装置118の所在乃至アドレス等を特定できる情報を、赤外域に感度のあるセンサ112では検知できるが肉眼では見えないような形態で印刷しておく。印刷先の物品110は、実体があり人間が取り扱える物品ならば概ねどのような物品でもよいので、例えば文書、セキュリティカード、土産品、鍵、玩具、写真、道具、CD、DVD(登録商標)、フロッピー(登録商標)ディスク、フォルダ、ペーパクリップ、携帯電話、PDA等を、ここでいう物品110として扱うことができる。
【0022】
図2に、本システム100のマシン上で実行される処理の手順をフローチャートで示す。この手順では、まず、赤外印刷プリンタ108が物品110上に符号化赤外可読情報を印刷する(200)。その物品110がデバイス102の上かその付近に置かれたら(201)、その検知可能範囲内にその物品110を捉えている1個又は複数個のセンサ112、例えばその物品110の近くにあるセンサ112が、その物品110上に印刷されている符号化赤外可読情報を検知する(202)。
【0023】
プロセッサ106は、赤外域検知結果出力をセンサ112から受領し(204)調べることで(206)、その物品110上に印刷されている符号化赤外可読情報を識別する。識別した符号化赤外可読情報にセキュリティ情報が含まれている場合、プロセッサ106は、コンピュータ用記憶装置(群)118上に格納されている情報へのアクセス権を、その赤外可読情報に基づき確立する(208)。従って、例えばデータベース類に格納されている情報へのアクセスをデバイス102経由で要求する場合、そのユーザ等は、セキュリティカード、有形のキー、文書等のセキュリティデバイスであって真正な符号化赤外可読情報が付されているものを、まずデバイス102乃至ディスプレイ114に対し提示する必要がある。
【0024】
プロセッサ106は、次いで、識別した符号化赤外可読情報に基づき、1個又は複数個のコンピュータ用記憶装置118からその物品110に係る電子版表現を取得する(210)。その物品110に係る電子版表現を取得すると、プロセッサ106はその電子版表現をデバイス102上で提示する(212)。ユーザ等は、物品110に係る電子版表現がデバイス102上で提示(例えばディスプレイ104に表示)されているときに、それを参照しデバイス102で操作することができる。
【0025】
なお、赤外可読情報は、実体のある物品110を実空間(リアルワールド)から情報空間(バーチャルワールド)へと仮想的に持ち込む手段や、アクセスの際のセキュリティを確保する手段としてだけでなく、ディスプレイ104に対する人物の位置関係を識別する手段としても役立てることができる。例えば、物品110上の赤外可読情報を識別することで、その物品110がフォルダ、コーヒーカップ、PDA等といった個人持ちの品であることを知り、その物品110の所有者を特定し、更にはその物品110の所有者がディスプレイ104のそばに着座していることを知ることができる。これらのことが判れば、ディスプレイ104の画面のうちその人物の着座位置の真正面に当たる領域に、またその人物から正しい向きで見えるように、その人物向けの画像を表示させることができる。従って、ディスプレイ104を取り囲むように複数のユーザが着座して会合を行っているときに、その会合向けに各ユーザが銘々に準備した文書を、そのディスプレイ104の画面のうち、そのユーザ持ちの物品110が置かれている場所に最寄りの領域に、そのユーザ向けに表示させることも可能である。即ち、個々のユーザの個人持ち物品110、例えばそのユーザ用のコーヒーカップの底に印刷されている赤外可読情報からそのユーザの着座位置を推測することができるので、どのユーザに対しても、その着座位置の真正面に、そのユーザ専用の文書やそのユーザ向けの版の文書を表示させることができる。
【0026】
また、符号化赤外可読情報は、プレーンテキスト、番号、バーコード、グリフ等、様々な形態で記述することができる。図3A〜図4Bにその例を示す。図3Aはある物品110の外観を、図3Bはその物品110上に付されている不可視且つ赤外可読な識別子をそれぞれ示している。同様に、図4Aは別の物品110の外観を、図4Bはその物品110上に付されている不可視且つ赤外可読な識別子をそれぞれ示している。
【0027】
このように、本システム100では、不可視且つ赤外可読なディジタル識別子である符号化赤外可読情報を物品110に付与するようにしたため、ユーザ等は、その物品110をソーシャルコンピューティングデバイス102の上又は付近に配置することで、その識別子に基づきその物品110をそのデバイス102に認識させ、その電子版表現乃至ディジタル版表現をデバイス102上で提示させることができる。即ち、不可視且つ赤外可読なディジタル識別子(群)を用い、表示等を含めそのデバイス102でサポートしている様々な動作を制御することができる。その制御は、デバイス102やディスプレイ104に対するアクセスだけでなく、そのディジタル識別子の検知に関連付けられているより複雑な動作(群)に及ぼすことができるので、デバイス102の動作を全使用過程に亘り制御することも可能である。そのため、特筆すべきことに、コンピュータ用キーボードでの込み入った操作等、従来は余儀なくされていた面倒な手法で装置動作を制御する必要が減り又はなくなる。そして、その不可視且つ赤外可読なディジタル識別子を物品110上の他の情報と意図的に連携させること、例えば赤外可読形態で筆記可能な鉛筆等でユーザがその文書に記入した情報と組み合わせて使用することもできる。
【0028】
同様に、その物品110が印刷文書である場合、符号化赤外可読情報としてその文書110のメタデータを印刷しておくことができる。そうすれば、デバイス102にてその文書110上の符号化赤外可読情報を識別し、その結果に基づきその文書110の電子版表現をレポジトリ等のコンピュータ用記憶装置118から取得し、そしてその電子版表現を上述の如くユーザ等に提示することができる。ユーザ等は、その電子版表現を参照することやデバイス102で操作することができる。物品110が印刷文書以外の物品である場合も同様であり、その物品110の表面又は皮下に符号化赤外可読情報としてその物品110のメタデータを付与しておけば、デバイス102ではそれを上記同様の手段で認識してその物品110の電子版表現をユーザ等に提示することができ、ユーザ等はそのデバイス102に備わる入力機構、例えばジェスチャ認識機構を利用しその電子版表現を操作することができる。即ち、携帯電話、書籍、コーヒーカップ、セキュアアクセスバッジ、エッフェル塔観光記念品等の物品110も、このデバイス102を介し、実空間から情報空間へと仮想的に移動させることができる。
【0029】
更に、本システム100では、従来に比べかなり高水準のインタラクティブ性や楽しさをユーザ等にもたらすことができる。例えば、一方でネットワーク経由でアクセス可能なコンピュータ上に写真、音楽、文書等が保存されており、他方でハンディカメラ、PDA、携帯電話、MP3プレイヤ等の可搬型情報機器(但しデバイス102にて識別可能な符号化赤外可読情報が印刷されているもの)にもそれと同じ写真、音楽、文書等が保存されている場合、その可搬型情報機器のユーザは、その物品110即ち自分の可搬型情報機器をディスプレイ104の画面上等に置くだけで、その機器110上にあるものと同じ写真、音楽、文書等を、ネットワーク上のコンピュータからシステム100へと(自動的に)ダウンロードさせることができる。そのダウンロードが実行された後は、デバイス102のユーザなら誰でも、その機器110上にあるものと同じ写真、音楽、文書等を、そのデバイス102上で表示、再生等させることができる。その機器110からデバイス102へと写真、音楽、文書等を転送する必要はない。
【0030】
同様に、一方でネットワーク経由でアクセス可能なコンピュータ上に文書又は書籍のデータが保存されており、他方でそのデータに基づく印刷物110上に筆者又は出版業者の処置で符号化赤外可読情報が印刷されている場合、デバイス102のユーザは、その印刷物110をディスプレイ104の画面上等に置くだけで、そのデバイス102の個々のユーザ毎に、またそのユーザから見て正しい向きになるように、その文書又は書籍を表示等させることができる。そのデバイス102のユーザがその文書又は書籍のデータをそのデバイス102へとマニュアル操作でダウンロードさせる必要はない。
【0031】
そして、本システム100では、特徴的なことに、ユーザ等による入力の受付(ユーザの指の検知等)に使用されるものと同じ赤外線カメラを、不可視且つ赤外可読な形態で物品110上に印刷されているディジタル識別子(例えばメタデータ)の検知にも使用している。ディジタル識別子を不可視な形態で付与すること、またその識別子を符号化赤外可読情報の形態で印刷することには、前述の通り数多くの利点がある。第1に、この識別子は符号化赤外可読情報として印刷されているので、相応の赤外線利用機器がないと容易には改竄することができない。第2に、この符号化赤外可読情報はそれ相応の機器を使用しないと肉眼には映らないので、その印刷先物品110の美観がほとんど損なわれない。第2の点は、その物品110が感傷や思い出と結びついていて、メタデータが目立つとその感傷乃至思い出が損なわれるような場合に、とりわけ重要である。例えば、エッフェル塔、モナリザ、ジブラルタルロック等の姿を模した塑像や模型等、観光記念品を見て名所旧跡観光の思い出に浸りたいこともあろう。そうしたとき、目障りな識別子がその記念品に付いていると興を削がれるものである。その点、観光記念品に付いているのが不可視な符号化赤外可読情報であれば、興を削がれることなくそこの思い出に浸ることができる。
【0032】
なお、本願でいう“プリンタ”や“画像出力装置”にはディジタル複写機、製本機、ファクシミリ機、いわゆる多機能機等等の装置も包含されるものとする。目的はどうあれ、本発明の実施に適する印刷乃至出力機能が備わっていればよい。プリンタ等の詳細については特許文献8も参照されたい。取り扱われる画像データや印刷される画像はカラーでもモノクロでもよい。本発明は、とりわけ静電式又は電子写真式のマシン乃至プロセスで好適に実施することができる。
【符号の説明】
【0033】
100 システム、102 ユーザインタフェース(ソーシャルコンピューティングデバイス)、104 ディスプレイ、106 プロセッサ(CPU)、108 赤外印刷プリンタ、110 物品、112 センサ、114 キーボード、116 ポインティングデバイス、118 コンピュータ用記憶装置、200〜212 ステップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザインタフェース上又はその付近の物品を赤外域で調べうる1個又は複数個のセンサからその連携先のプロセッサへとそのセンサによる検知結果を送るステップと、
その検知結果をプロセッサが調べて赤外可読情報を識別するステップと、
識別結果に基づきプロセッサがその赤外可読情報の印刷先物品に係る電子版表現を1個又は複数個のコンピュータ用記憶装置から取得するステップと、
取得した電子版表現をプロセッサがその連携先のユーザインタフェース上に提示させるステップと、
を有し、そのマシンのユーザインタフェース上又はその付近に物品が置かれたときに、その物品に印刷されている赤外可読情報に基づき、その物品に係る電子版表現を提示する方法。
【請求項2】
赤外可読形態で情報を印刷できるプリンタで物品上に符号化赤外可読情報を印刷するステップと、
ユーザインタフェース上又はその付近の物品を赤外域で調べうるセンサでその物品上の赤外可読情報を検知するステップと、
その検知結果をプリンタ、ユーザインタフェース及びセンサと連携するプロセッサに送るステップと、
その検知結果をプロセッサで調べて物品上の符号化赤外可読情報を識別するステップと、
識別結果に基づきプロセッサがその符号化赤外可読情報の印刷先物品に係る電子版表現を1個又は複数個のコンピュータ用記憶装置から取得するステップと、
その電子版表現をプロセッサがその連携先のユーザインタフェース上で提示させるステップと、
を有し、そのマシンのユーザインタフェース上又はその付近に物品が置かれたときに、その物品に印刷されている符号化赤外可読情報に基づき、その物品に係る電子版表現を提示する方法。
【請求項3】
ディスプレイ付ユーザインタフェース、ユーザインタフェース上又はその付近の物品を赤外域で検知可能な位置にあるセンサ、それらユーザインタフェース及びセンサと連携するプロセッサ、並びにそのプロセッサからアクセス可能なコンピュータ用記憶装置を備え、
そのプロセッサが、センサでの検知結果を示す信号を受領して調べることで、ユーザインタフェース上又はその付近の物品に印刷されている赤外可読情報を識別し、識別した赤外可読情報に基づきその赤外可読情報の印刷先物品に係る電子版表現をコンピュータ用記憶装置から取得し、その電子版表現をユーザインタフェース上に表示させるソーシャルコンピューティングデバイス。
【請求項4】
赤外可読形態で情報を印刷できるプリンタ、ディスプレイ付ユーザインタフェース、ユーザインタフェース上又はその付近の物品を赤外域で検知可能な位置にあるセンサ、それらプリンタ、ユーザインタフェース及びセンサと連携するプロセッサ、並びにそのプロセッサからアクセス可能なコンピュータ用記憶装置を備え、
そのプロセッサが、プリンタで赤外可読情報が物品上に印刷されるときそれと前後しその物品を特定しうる情報をコンピュータ用記憶装置に格納する一方、赤外可読情報付の物品がユーザインタフェース上又はその付近に置かれたときには、センサでの検知結果を示す信号を受領して調べることでその物品上の赤外可読情報を識別し、識別した赤外可読情報に基づきその赤外可読情報の印刷先物品に係る電子版表現をコンピュータ用記憶装置から取得し、その電子版表現をユーザインタフェース上で提示させるシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2010−225147(P2010−225147A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56939(P2010−56939)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】