説明

不均一系オキシム化および転位によるアミドを生産する方法

不均一系オキシム化および転位によるアミドの生産する方法であり、本発明は、脂肪族や環状脂肪族を原料とし、オキシム化および転位によるアミドの生産する方法を提供する。当該方法には、不活性溶媒の存在の条件下、ケトン、過酸化水素水およびアンモニアは触媒反応によってケトキシム溶液を生成し、有機層の生成物は発煙硫酸の作用下、ベックマン転位反応を行い、加水分解および中和をした後、アミドが得られることが含まれる。本方法は、従来のヒドロキシルアミンのオキシム化またはアンモニアのオキシム化のプロセスを短縮することができ、シクロヘキサノンオキシムの転位反応の温度を低下させ、さらに硫酸の消費および副生成物を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミドの生産する方法に関し、より詳細には、ケトンを原料とし、不均一系アンモニアオキシム化および不均一系ベックマン転位によるアミドを生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミドはカルボン酸中のヒドロキシ基がアミノ基又はアミンで置換された化合物であり、例えば、アンモニア、第一級アミン又は第二級アミンのアシル誘導体などがあげられる。多数の炭素を有し、分子式RCONH2で表されるアミドは室温で結晶状態となり、良好な水溶性を有し、溶媒及び重合体の優良な原料になる。一般的に、アミドの生成にはアミンのアシル化、カルボン酸とアミンとの脱水縮合、ニトリルの加水分解及びケトキシムの転位などの方法がある。
【0003】
脂肪族ケトン又は芳香族ケトンと、例えばヒドロキシアミンといったアンモニア誘導体との縮合反応を行い、ケトキシムを生成する。高濃度硫酸又は五塩化燐などの酸化物質を触媒として、オキシム分子中の窒素上のヒドロキシ基が離脱し、炭素に置換している2つのアルキル基のうちの一つの窒素が転位して、アミドを生成する。このような反応がベックマン転位反応である。
【0004】
ケトンによってケトキシムを合成し、さらにベックマン転位反応を応用し、系列アミドを合成することができる。脂肪族のアミドは、工業的な用途は決して幅広くないが、シクロヘキサノンオキシムの転位によるカプロラクタムを製造するのは工業的に重要な意味を有する。
【0005】
カプロラクタムの学術名は、ε−カプロラクタムであり、重要な石油化学製品であり、ナイロンおよびエンジニアリングプラスチックに幅広く応用されている。カプロラクタムの工業的生産する方法には、シクロヘキサノン−ヒドロキシルアミン法、シクロヘキサンの光ニトロ化法およびフェニルメタン法などがある。そのうち前二種類の方法は、フェニルメタンが原料として、フェニルメタンに水素を添加することによって、シクロヘキサンを生成し、さらに酸化することによってシクロヘキサノンを生成し、シクロヘキサノンとヒドロキシルアミンとのオキシム化反応を行い、シクロヘキサノンオキシムが生成され、そして、転位および精製過程を通じて、カプロラクタム製品が得られた。製造されたヒドロキシルアミンのプロセスの層違によって、シクロヘキサノン−ヒドロキシルアミンのプロセスフローには、主に硫酸ヒドロキシルアミン法(HSO法)、一酸化窒素還元法(NO法)および燐酸ヒドロキシルアミン法(HPO法)の三種類の方法がある。
【0006】
上記の三種類の合成方法は、すべて工業化装置を備えるが、HSO法とNO法の使用割合は低く、HSO法にてヒドロキシルアミンを製造する過程は複雑で、環境に大きく影響する。NO法は純酸素を使用し、厳密なプロセス管理を行わねばならず、もっとも重要な問題は、この二つの方法とも低商品価値の硫酸アンモニウムが副生し、しかも市場の受け入れ能力の影響を受けていることである。HPO法は無機プロセス液の循環によって、硫酸アンモニウムが副生せず、工業廃水を排出せず、プロセスはより合理的であるが、非常に精密な制御が必要であるという問題点がある。
【0007】
シクロヘキサノンアンモニアオキシム化のプロセスはチタンシリコン分子篩が触媒として、シクロヘキサノンは直接にアンモニアおよび過酸化水素水との合成によって、シクロヘキサノンオキシムが得られ、当該方法は、プロセスフローが短く、複雑なヒドロキシルアミンの合成過程およびSOxまたはNOxの生成が避けられ、且つ硫酸アンモニアが副生しないで、環境に優しい。特許文献EP0208311には、チタンシリコン分子篩が触媒として用いられ、シクロヘキサノンアンモニアオキシム化の過程が開示されている。特許文献EP0496385およびEP0561040には、二段階または多段階のアンモニアオキシム化のプロセスによって反応の転化率と収率を向上させることが開示されている。アンモニアオキシム化過程における触媒の分離および効率などの問題を解決するため、特許文献CN02100227とCN02100228には、アンモニアオキシム化の生成物および触媒の連続沈殿分離方法が開示され、触媒の循環使用による過酸化水素水の利用率を向上した。
【0008】
過酸化水素とオキシムの製造コストを低減するため、特許文献EP0690045とUS5599987には、イソプロピルアルコールの酸化およびシクロヘキサノンのアンモニアオキシム化を併合するプロセスが開示されている。この時、チタンシリコン分子篩が触媒として、三級ブタノールを溶媒とし、過酸化水素、アンモニア液およびシクロヘキサノンを用いてアンモニアオキシム化反応を行い、得られたシクロヘキサノンは抽出、精製し、溶媒および過量のアンモニアは蒸留、分離によって循環使用した。
【0009】
前記アンモニアオキシム化の技術は共通の特徴を有し、反応過程では、親水性の低級アルコール(例えば三級ブタノール)が溶媒として添加すべきであり、反応系における生成物の溶解度を向上し、反応が行いやすくなった。但し、前述の溶媒は発煙硫酸系中に安定的に存在することが出来ず、転位反応の前に数回の蒸留および抽出などの分離過程を経過するので、下記の欠点を有する。
【0010】
(1)プロセスフローは複雑で、エネルギー消費が大きい。
(2)蒸留および抽出とも高温の下で行うため、オキシム溶液の安定性は比較的に悪く、後続の転位反応の中で微量の不純物を生成し、精製過程は困難になる。
(3)後続の転位反応に供給する物質は溶融状態のオキシムであり、製造中における管通路の保温とトレーシングが必要で、詰まりやすく、スイッチの開閉および生産操作には不便になる。
【0011】
一方、シクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応の過程では発煙硫酸を消費し、副生成物の硫酸アンモニウムは低商品価値の製品である。米国特許US4804754とUS5264571とには、高次転位反応技術が開示され、低温および高酸量のオキシムのモル比の条件下で発煙酸と大部分のオキシムとの反応を行い、低温の下で粘度はあまり高くならないよう保ち、副反応を抑制した。後続は前一次反応温度より少し高く、また、低酸量のオキシムのモル比の条件下で小部分のオキシムと反応し、完全な反応を保証し、酸の消費を低減させ、低硫酸消費と高品質製品の要求に満たしている。
【0012】
米国の特許US3991047とUS4081442とには、アンモニウム塩の複分解法を採用し、硫酸の消費と副生成物の硫酸アンモニウムの生成を避け、転位反応の生成物をアンモニア液中和する際に反応のpH値を制御し、硫酸水素アンモニアとカプロラクタムが得られることが開示された。カプロラクタムは抽出によって分離される。また、硫酸水素アンモニアは熱分解反応によって、二酸化硫黄、アンモニア液および水を生成し、再び二酸化硫黄を硫酸に生成させ循環使用する。米国特許US3912721には、硫酸循環法が提供され、アンモニア中和せず、さらに50%含有の水溶液に希釈し、アルキル化フェノールによってカプロラクタムを抽出し、アルカリ溶液の洗浄によって残留の硫酸を除去し、カプロラクタムの抽出率は99.5%以上である。有機不純物を含有した硫酸水溶液は濃縮および熱分解によって二酸化硫を生成し、脱水触媒反応した後に再び発煙硫酸の生成に使用されている。
【0013】
但し、現在反応および分離の面から硫酸の消費と副生成物を低減する方法は以下の問題点を有する。
(1)高次転位反応の副生成物の低減幅は小さく、低酸量および低温の条件下で、物質の粘度が大きく、質量移行および反応に不利である。
(2)アンモニウム塩の複分解法および硫酸循環プロセスのエネルギー消費は大きく、コストは高いので、不経済性である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、従来技術の問題点を着目し、プロセスはより簡単で、生産過程で詰まりにくく、反応の品質を改善し、硫酸の消費を低減し、副生成物の硫酸アンモニウムがより少ないアミドの生産する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は下記の方式によって達成できる。発煙硫酸系で、且つ不活性となる溶媒の存在の条件下、ケトン、過酸化水素水およびアンモニアを用いて不均一系触媒およびオキシム化反応を行い、ケトキシムを生成する。オキシム反応の水性層生成物は同様に不活性溶媒で抽出し、その抽出層をオキシム化反応の有機層生成物に混合した後、ケトキシムの不活性溶媒の溶液が得られ、当該溶液が発煙硫酸の作用下、不均一系ベックマン転位反応を行い、アミドを生成する。
【0016】
前記不活性溶媒はパラフィン炭化水素、またはシクロパラフィン、またはそれらの混合物である。
【0017】
前記ケトンは脂肪族ケトン、または環状脂肪族ケトン、または芳香族ケトンである。また、炭素数は3〜10であることが好ましい。
【0018】
前記チタンシリコン分子篩の存在の条件下、シクロヘキサノン、過酸化水素水およびアンモニアを原料とし、発煙硫酸系で不活性となる物質であるパラフィン炭化水素またはシクロパラフィン、またはそれらの混合物は不活性溶媒として、不均一系触媒反応によってシクロヘキサノンオキシムを生成する。生成物は不活性溶媒によって抽出した後、一定の遊離基SOを含んでいる発煙硫酸の作用下、ベックマン転位反応を行い、一定の時間を経過後、加水分解を行い、軽層と重層を生成した。軽層は不活性溶媒であり、重層はカプロラクタムと硫酸の溶液であり、アンモニアまたはアンモニア液で重層を中和し、硫酸アンモニウムが再結晶され、カプロラクタムが得られる。
【0019】
前記軽層の不活性溶媒は、オキシム化反応まで循環することができる。
【0020】
前記不活性溶媒は、炭素数4〜8のパラフィン炭化水素、またはシクロパラフィン、またはその混合物から選ばれる。
【0021】
本発明が提供されるオキシム化方法には、二層の生成物が得られ、軽層は溶媒であり、重層は水であり、シクロヘキサノンオキシムは一定の割合で両層に分布している。しかし、転位反応の過程は無水系の中で行うべきであるので、水性層のシクロヘキサノンオキシムはさらに分離を行うべきである。もっとも簡単且つ有効な方法は、反応の不活性溶媒によって水性層を抽出し、得られた抽出層はオキシム化反応の軽層と同じ組成分を有し、混合することができる。混合したシクロヘキサノンオキシム溶液の濃度は、5%〜80重量%が好ましく、10〜20%がより好ましい。これは、溶媒の種類などによって決定する。
【発明の効果】
【0022】
本発明は従来のプロセスに対して下記の重要な改善を行い、発明者は構想を転換し、本発明には二つの不均一系反応を集積したプロセスが採用され、ベックマン転位反応に使用される溶媒はオキシム化反応の溶媒と同じである。溶媒は発煙硫酸を含有する転位反応系で安定に存在でき、自身が一切の反応を行わないので、オキシム化の生成物は蒸留、抽出などの通常の分離方法によって純粋なオキシムを精製する必要はない。
【0023】
工業的では、シクロヘキサノンオキシムの転位反応はすべて発煙硫酸の中で行なっても、本発明が提供された方法は、主に以下の相違点を有する。
【0024】
(1)シクロヘキサノンオキシムは不活性溶媒に溶解し、溶液方式で供給する。
(2)溶媒は転位反応の過程中において、全て気化且つ凝縮によってすべて回収でき、または一部が気化し、反応した後に加水分解で得られた溶媒と凝縮液とを一緒に回収する。
(3)回収した溶媒はアンモニアオキシム化反応まで循環することができる。
【0025】
本発明に提供された不均一系アンモニアオキシム化と溶媒の転位反応とを併合したプロセスは、従来のプロセスに対する大きな改善を行った結果、簡略化され、且つ大幅にコストを節約し、より良い経済的な価値を提供した。具体的には下記の方法である。
【0026】
(1)低炭素アルコールを溶媒とするアンモニアオキシム化プロセスには、必要とするアルコールの蒸留、フェニルメタンの抽出およびフェニルメタンの蒸留などの過程を省略され、プロセスは簡単で、操作に便利である。
(2)アンモニアオキシム化反応から得られたシクロヘキサノンオキシムは、溶融方式ではなく溶液方式で後続の転位反応に供給し、従来のプロセスが詰まりやすい欠点を克服し、同時に、ベックマン転位反応の温度をさらに低下することが可能である。
(3)溶媒の転位反応には低温、低酸量の下で物質粘度の上昇に伴う質量移行の効果は良くないなどの問題が解決され、反応の品質を改善し、さらに硫酸の消費および副生成物を低減できる。
【0027】
本発明が提供される非均一系の反応過程には、下記のプロセスの範囲内において高転化率と高収率が得られる。
【0028】
不活性溶媒と原料のケトンを一回にまとめて投入する。
【0029】
過酸化水素水とアンモニア液はそれぞれ徐々に滴下する方式で、または混合して滴下する方式で、滴下時間は10分〜5時間が好ましく、30分〜2時間がより好ましい。原料添加を終了した後、反応を中止するか、または10分〜2時間延長してから反応を中止する。
【0030】
過酸化水素水とシクロヘキサノンのモル比は1.0〜5.0が好ましく、1.0〜1.2がより好ましい。アンモニアとケトンのモル比0.5〜10である。
【0031】
オキシム化反応においては、不活性溶媒の濃度は20〜80重量%であり、オキシム化反応の温度は10〜120℃が好ましく、60〜80℃がより好ましい。
【0032】
非均一系転位反応の過程においては、発煙硫酸とシクロヘキサノンオキシムのモル比(発煙硫酸中のSO3を硫酸に換算したもの)は0.5〜4.0が好ましく、1.0〜1.3がより好ましい。これは、従来の工業生産の比値より低く、対応する副生成物の量を低減する。使用される発煙硫酸中の遊離基SO3の濃度は2%〜65%が好ましく、5%〜20%がより好ましい。これは、総酸量の変化によって調整する。
【0033】
転位反応の温度は30〜150℃が好ましく、60〜80℃がより好ましい。これは、溶媒の種類および操作圧力によって決定される。反応滞在時間は1分〜2時間が好ましく、10〜30分がより好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)250mlのマグネットスターラ付きのガラス製反応釜の中に予めヘキサン45.0g、ブタノン15.2g、チタンシリコン分子篩1.5gを添加し、十分に混合してから65℃まで昇温し、徐々に27.5重量%の過酸化水素水28.0gおよび25重量%のアンモニア液30.0gを滴下した。等速で2.5時間かけて滴下し、継続的に1時間反応した。反応過程においては、攪拌しながら温度を65℃に制御した。冷却、静置によって重層を分離してから、ヘキサン45.0gを使用し、三回に分け抽出し、抽出層を反応で生成した軽層に混合させ、ブタノンオキシムとヘキサンの溶液105.6gが得られた。ガスクロマトグラフによって分析した結果、質量濃度は16.8%であり、ブタノンの転化率は99.5%であり、ブタノンオキシムの選択度は97.1%であった。もう一つ250ml反応釜の中にSO3の濃度が5%である発煙硫酸15.8gを添加し、徐々にブタノンオキシム溶液を滴下した。反応温度は68℃であり、気化されたヘキサンは全部凝縮して還流し、総反応時間は30分であった。加水分解を行い、水性層を中和し、液体クロマトグラフィによって分析した結果、N−メチルプロピオンアミド17.6gであり、転位の収率は99.2%であった。
【0036】
(実施例2)250mlのマグネットスターラ付きのガラス製反応釜の中に予めシクロヘキサン、シクロヘキサノンおよびチタンシリコン分子篩の触媒を添加し、シクロヘキサンの用量はシクロヘキサン:シクロヘキサノン=3.0:1(モル比、以下は同様)、チタンシリコン分子篩の重量パーセントは2.2%である。70〜71℃に昇温した際、過酸化水素水およびアンモニア液を滴下し、オキシム化反応を行い、過酸化水素水およびアンモニアの総用量は過酸化水素水:アンモニア:シクロヘキサノン=1.1:1.9:1であった。滴下時間は2時間であり、滴下終了後、継続的に1.1時間反応した。反応過程においては、攪拌しながら温度を71℃に制御した。反応で生成した水性層生成物は反応と等量のシクロヘキサンを用いて三回に分け抽出し、その抽出層を反応で生成した有機層生成物に混合させ、シクロヘキサノンオキシムのシクロヘキサン溶液が得られた。ガスクロマトグラフィによって当該のシクロヘキサノンとシクロヘキサノンオキシムの含有量を分析し、且つ転化率と選択度を計算した。シクロヘキサノンの転化率は99.4%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択度は98.3%であった。
【0037】
(比較例2)溶媒が三級ブタノールであること以外は実施例2と同様の反応を行った。アルコールと水とが層互溶解するので、実施例2の抽出過程を必要とせず、ガスクロマトグラフィによって直接に生成物を分析した反応の結果、シクロヘキサノンの転化率は98.9%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択度は98.2%であった。
【0038】
(実施例3)250mlのガラス製反応釜の中に予めシクロヘキサン39.2g、シクロヘキサノン15.1gおよびチタンシリコン分子篩の触媒3.8gを添加した。それぞれ濃度が27.5重量%であった過酸化水素水23.5gとアンモニア溶液33.2gを用いて、等速で反応釜に滴下し、原料投入の時間は2.1時間であった。磁力攪拌およびオイルバスによる温度制御を採用し、常圧下で反応温度は約72℃で反応を行った。原料投入終了後、継続的に1時間反応し、冷却、静置して、軽層が55.1g分離され、シクロヘキサン39.0gを三等分に分け重層を抽出し、抽出層を軽層に混合させ、シクロヘキサノンオキシム溶液95.3gが得られた。もう一つの250mlの反応釜の中にSO3の濃度が8%であった発煙硫酸15.8gを添加し、徐々にシクロヘキサノンオキシム溶液を滴下した。常圧の下でオイルバスによって80℃を温度制御し、機械攪拌で、気化したシクロヘキサンを部分凝縮して還流させた。このときの総反応時間は20分であった。反応を中止した後、氷水バスの中で水6.0gを滴下し、加水分解反応を行い、温度は30℃を超えないよう制御した。水性層を中和し、リクイッドクロマトグラフによって分析した結果、カプロラクタム16.9gであり、転位の収率は98.8%であり、換算した硫酸とカプロラクタムのモル比は1.10であった。
【0039】
(比較例3)溶媒が三級ブタノールであること以外は実施例3と同様に、オキシム化反応させた。得られたオキシムと三級ブタノールと水の溶液には、シクロヘキサノンオキシム15.8%、三級ブタノール35.5%、水46.5%が含有られ、蒸留によって三級ブタノールを除去し、オキシムの水溶液はフェニルメタン51.0gで三回に分け抽出を行い、抽出層は再び蒸留によってフェニルメタンを除去し、純粋なオキシム17.1gが得られた。もう一つ250mlの反応釜の中にSOの濃度が20%であった発煙硫酸20.9gを添加し、徐々に溶融状態のシクロヘキサノンオキシムを滴下した。オイルバスによって温度を120℃に制御し、機械攪拌で、総反応時間は20分であった。加水分解および中和などの過程は実施例3と同様であり、液体クロマトグラフィによって分析した結果、カプロラクタム16.8gであり、転位の収率は98.5%であり、換算した硫酸とカプロラクタムのモル比は1.50であった。
【0040】
(実施例4)溶媒がノーマルヘプタンであること以外は実施例3と同様にして、オキシム化および転位のステップを行った。対応する反応温度が98℃であった。オキシム化反応の結果、シクロヘキサノンの転化率は99.8%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択度は97.3%であり、転位の収率は99.0%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発煙硫酸系で、且つ不活性溶媒の存在下、ケトン、過酸化水素水およびアンモニアを用いて不均一系触媒およびオキシム化反応を行い、ケトキシムを生成することと、
オキシム反応の水性層生成物は同様に不活性溶媒で抽出し、その抽出層をオキシム化反応の有機層生成物に混合した後、ケトキシムの不活性溶媒の溶液が得られ、当該溶液が発煙硫酸の作用下、不均一系ベックマン転位反応を行い、アミドを生成することと、
を含む不均一系オキシム化および転位によるアミドを生産する方法。
【請求項2】
前記不活性溶媒はパラフィン炭化水素、またはシクロパラフィン、またはその混合物である、
請求項1記載の不均一系オキシム化および転位によるアミドを生産する方法。
【請求項3】
前記ケトンは脂肪族ケトン、または環状脂肪族ケトン、または芳香族ケトンである、
請求項1記載の不均一系オキシム化および転位によるアミドを生産する方法。
【請求項4】
チタンシリコン分子篩の存在下、シクロヘキサノン、過酸化水素水およびアンモニアを原料とし、発煙硫酸系で不活性となる物質であるパラフィン炭化水素、またはシクロパラフィン、またはその混合物が不活性溶媒として、不均一系触媒反応によってシクロヘキサノンオキシムを生成することと、
生成物は不活性溶媒によって抽出した後、一定の遊離基SOを含んでいる発煙硫酸の作用下、ベックマン転位反応を行い、一定の時間を経過して加水分解を行い、軽層と重層を生成することと、
軽層は不活性溶媒であり、重層はカプロラクタムと硫酸の溶液であり、アンモニアまたはアンモニア液で重層を中和し、硫酸アンモニウムが結晶分離され、カプロラクタムが得られることと、を含む、
請求項1記載の不均一系オキシム化および転位によるアミドを生産する方法。
【請求項5】
前記軽層の不活性溶媒は、オキシム化反応まで循環する、
請求項4記載の不均一系オキシム化および転位によるアミドを生産する方法。
【請求項6】
前記不活性溶媒は、炭素数4〜8のパラフィン炭化水素、またはシクロパラフィン、またはその混合物から選ばれる、
請求項4記載の不均一系オキシム化および転位によるアミドを生産する方法。
【請求項7】
オキシム化反応においては、不活性溶媒の濃度は20〜80重量%であり、過酸化水素水とシクロヘキサノンのモル比は1.0〜5.0であり、アンモニアとケトンのモル比0.5〜10である、
請求項4記載の不均一系オキシム化および転位によるアミドを生産する方法。
【請求項8】
オキシム化反応の温度は10〜120℃である、
請求項4記載の不均一系オキシム化および転位によるアミドを生産する方法。
【請求項9】
過酸化水素水とシクロヘキサノンのモル比は1.0〜1.2であり、オキシム化反応の温度60〜80℃である、
請求項4記載の不均一系オキシム化および転位によるアミドを生産する方法。
【請求項10】
不活性溶媒とシクロヘキサノンを一回にまとめて投入し、過酸化水素水とアンモニア液はそれぞれ徐々に滴下する方式又は混合して滴下する方式で、滴下時間は10分〜5時間で、原料添加を終了した後、反応を中止するか、または10分〜2時間延長してから中止する、
請求項4〜8のいずれか1項に記載の不均一系オキシム化および転位によるアミドを生産する方法。
【請求項11】
前記転位反応においては、発煙硫酸とシクロヘキサノンオキシムのモル比は0.5〜4.0であり、発煙硫酸中のSO3を硫酸に換算したもので、使用される発煙硫酸中の遊離基SO3の濃度は2%〜65%である、
請求項4記載の不均一系オキシム化および転位によるアミドを生産する方法。
【請求項12】
前記転位反応においては、発煙硫酸とシクロヘキサノンオキシムのモル比は1.0〜1.3であり、発煙硫酸中のSO3を硫酸に換算したもので、使用される発煙硫酸中の遊離基SO3の濃度は5%〜20%である、
請求項11記載の不均一系オキシム化および転位によるアミドを生産する方法。
【請求項13】
前記転位反応の温度は30〜150℃であり、反応滞在時間は1分〜2時間である、
請求項4記載の不均一系オキシム化および転位によるアミドを生産する方法。
【請求項14】
前記転位反応の温度は60〜80℃であり、前記反応滞在時間は10〜30分である、
請求項13記載の不均一系オキシム化および転位によるアミドを生産する方法。

【公表番号】特表2009−508884(P2009−508884A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531513(P2008−531513)
【出願日】平成18年9月18日(2006.9.18)
【国際出願番号】PCT/CN2006/002434
【国際公開番号】WO2007/033582
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(508085671)湘潭大学 (1)
【Fターム(参考)】