説明

不定形耐火物の吹付け施工装置及び施工方法

【課題】乾式不定形耐火組成物に添加する施工水の割合を、施工技術者によらず所定の範囲に入るようにして、吹付け開始時の材料ロスを低減した不定形耐火物の吹付け施工装置及び施工方法を提供する。
【解決手段】粉末状の不定形耐火組成物を、所定の固体/気体比率で気流に乗せて送り出すことができる気流搬送機2と、送り出された粉末状の不定形耐火組成物を、一端側から内部に受け入れ、気流搬送機からの気流によって、他端側まで搬送する搬送管3と、搬送管3内を搬送される粉末状の不定形耐火組成物へ施工水を添加する施工水添加手段4と、施工水添加手段4に設けられた施工水の添加量を搬送管内の内圧によって制御する差圧式の流量定値制御弁6と、搬送管3の他端に設けられ、施工水が添加された不定形耐火組成物を施工対象物に吹付ける吹付けノズル7と、を有する不定形耐火物の吹付け施工装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不定形耐火物の吹付け施工装置及び施工方法に係り、特に、不定形耐火物組成物と施工水との混合割合を容易に所定範囲とすることができる不定形耐火物の吹付け施工装置及び施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不定形耐火物の有力な施工方法として吹付け施工方法が知られている。この施工方法は流し込み工法に比べて流し込み用の型枠を必要とせず、また、形状が複雑で枠組みが困難な箇所にも容易に施工ができるため、近年ますます多くの分野で広範に使用されてきている。かかる吹付け施工方法には大別すると、ポンプ圧送方式の湿式吹付け施工方法と空気圧送方式の乾式吹付け施工方法がある。
【0003】
湿式吹付け施工方法は、吹付け用耐火材組成物と施工水とを予め充分に混練した「坏土」と称する混練物にしてから吹付けを行う施工方法である。かかる坏土は、ミキサーを用いてポンプ圧送が可能な流動性フロー値(JISコーン使用)が200mm前後になるまで混練し、これを圧送ポンプに供給して搬送管内を搬送する。そして、ノズル部で坏土を凝集させるための急結剤を添加し、圧縮空気を供給することにより、炉壁構築部に吹付け、比較的瞬間的に凝集させて炉壁等の耐火物を構築する。
【0004】
かかる湿式吹付け施工方法においては、上記のように圧送ポンプに吹付け材料を供給するにあたり、ミキサーを用いて充分な流動性が出るまで吹付け材料を混練する必要があるため、大型のミキサーと多くの人員を必要とする。また、ポンプで圧送するため適正な流動性を得るための混練水量の管理が難しく、例えば、流動性が小さいとポンプ中又は搬送管内で閉塞を起こしてしまう。流動性を大きくするために混練水を添加し過ぎると吹付け用耐火材に含まれる細粒の耐火骨材と微粉状の耐火粉末が分離し、材料の搬送が不可能となる。このように湿式吹付け施工方法は現場での施工時の不安定要素が多い。
【0005】
さらに、混練された坏土をポンプ圧送にて長距離搬送施工するには、坏土の粘度が大きいために大型のポンプが必要であり、搬送距離も乾式吹付け施工方法に比べて短く、水平距離で高々100m程度である。さらにポンプを用いた湿式吹付け施工方法においては施工完了時、搬送管内に混練された坏土が残るため、材料のロスが多く、その取り出しや清掃に多くの人員と時間を要するという問題もある。
【0006】
一方、乾式吹付け施工方法は、水との結合により硬化するアルミナセメント等の硬化剤と、吹付け時の付着性を良くするためのクレー等の耐火性粉末を含んだ粉末状の吹付け用耐火材を、空気圧送方式の吹付け機に供給し、搬送用配管内を空気圧送して行う。圧送された粉末状の吹付け用耐火材に吹付けノズル部で施工水を添加し、ノズル内で粉末状の吹付け用耐火組成物に施工水を含ませ粘性の高い付着性状態とし、これをノズルを通じて吹出させ、炉壁構築部に付着、硬化させ、耐火炉壁を構築する。
【0007】
かかる乾式吹付け施工方法は、吹付け用耐火組成物を粉末状で空気圧送するので、搬送配管の閉塞が起こらないために搬送が容易であり、長距離搬送が可能である。そのため、この方法は、吹付け機械や吹付け用耐火組成物を地上に設置した状態で遠く離れた場所や高所での施工が可能であるという利点があり、様々な作業現場での施工に適用することができるものである(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−213880号公報
【特許文献2】特開2002−220288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
乾式吹付け施工方法は、粉末状の吹付け用耐火材と施工水とをノズル近傍で混合させて粘性のある吹付け耐火組成物とするが、施工水の添加は、実際に吹付け施工を行う施工者が、ノズルから吹付けられる耐火組成物の状態を目視により判断し、施工水の添加水量を随時調整しながら、不定形耐火組成物と施工水とを好適な割合で混合し施工を行うものである。従って、施工者の熟練度等により構築される耐火壁の品質がばらついたり、また、熟練した施工者でも、吹付け開始直後は、吹付ける不定形耐火組成物の吐出状態に合わせて水量の調整を行わなければならなかったため、調整が難しいものとなっている。このような調整は、吹付け作業の停止、再開の作業ごとに行うことになるため、その都度、材料のロスや炉壁品質のばらつきが生じてしまうという問題があった。
【0010】
また、この乾式吹付け施工方法においては、粉末状の不定形耐火組成物を搬送する搬送管は現場の施工状況に応じて、ノズルを移動させながら作業を行うものであり、作業中にその搬送管も移動させるため、その這わせる径路や高さも変わることがある。このような搬送管の移動に伴い搬送管内の気圧が変化し、この圧力変化の影響により施工水の添加量が変化し、作業中に吹付ける不定形耐火組成物と水の混合割合が変動して、構築する耐火物の質が変動するという問題も有している。
【0011】
このような施工中における搬送管内の圧力変化に対しては、施工水の供給水量をポンプ等で設定するだけでは対応できず、やはり熟練した施工者による供給水量の微調整が随時必要となっていた。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上記したような、従来の乾式吹付け施工方法の有する難点を解消し、吹付け材料の混練作業が不要で、搬送管内での閉塞を伴わずに、長距離の搬送施工を可能にするという乾式吹付け施工方法の利点を有したまま、さらに、不定形耐火組成物に添加する施工水の割合を、施工者の経験、技量に頼ることなく所定の範囲に入るようにして、吹付け開始時の材料ロスを低減し、構築する耐火物の質を一定に維持することができる不定形耐火物の吹付け施工装置及び施工方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の課題を達成するために鋭意検討した結果、吹付け開始時や吹付け中の水量不安定の原因が、不定形耐火組成物の搬送管内の圧力変化による施工水供給の抵抗変化に起因するものであり、このような搬送管側の抵抗変化が生じた際にも、不定形耐火組成物に対して所定割合の施工水を供給、添加を可能とすることで、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成したものである。
【0014】
すなわち、本発明の不定形耐火物の吹付け施工装置は、粉末状の不定形耐火組成物を、所定の固体/気体比率で気流に乗せて送り出すことができる気流搬送機と、前記気流搬送機により送り出された粉末状の不定形耐火組成物を、一端側から内部に受け入れ、前記気流搬送機からの気流によって、他端側まで搬送する搬送管と、前記搬送管内を搬送される粉末状の不定形耐火組成物へ施工水を添加する施工水添加手段と、前記施工水添加手段に設けられた施工水の添加量を前記搬送管内の内圧によって制御する差圧式の流量定値制御弁と、前記搬送管の他端に設けられ、施工水が添加された不定形耐火組成物を施工対象物に吹付ける吹付けノズルと、を有することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の不定形耐火物の吹付け施工方法は、上記不定形耐火物の吹付け施工装置を用い、不定形耐火組成物を、所定の固体/気体比率で気流に乗せて搬送管の一端側から前記搬送管内に定量送り込み他端側へ搬送する搬送工程と、気流に乗せて搬送中の前記不定形耐火組成物に施工水を添加する施工水添加工程と、施工水が添加された不定形耐火組成物を、吹付けノズルから施工対象物に吹付ける吹付け工程とを有する不定形耐火物の気流搬送式吹付け施工方法であって、前記施工水添加工程において、施工水の供給流量を前記搬送管内の内圧によって制御される差圧式の流量定値制御弁により調節することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の吹付け施工装置及び施工方法によれば、吹き付け開始時及び吹付け中における施工水の添加量を不定形耐火組成物に対して所定の範囲とすることが容易にでき、これにより、吹き付け開始時の粉塵、埃等の発生を抑制し、施工壁面におけるリバウンドロスを少なくすることができるため、材料のロスを効果的に低減することができる。粉塵、埃等の発生を抑制することは、現場環境の悪化を防止することにもつながり、これにより現場作業員の健康被害を防止することもできる。
【0017】
また、施工途中において搬送管内の圧力変動が生じた場合においても、施工水の添加量を不定形耐火組成物に対して所定の範囲を保持することが容易にでき、これにより、吹付ける不定形耐火組成物の施工水添加量(組成物/水比)を安定させ、施工者の熟練度によらず所定の品質の耐火物を容易に構築することができる。
【0018】
このようにして得られた耐火壁によれば、施工開始後から、常に均一で強度の大きい優れた特性を有するため、耐火材料の有する特性を十全に発揮できる耐火壁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態である不定形耐火物の吹付け施工装置の概略構成図である。
【図2】本発明の不定形耐火物の吹付け施工方法を説明する図である。
【図3】本発明の他の実施形態である不定形耐火物の吹付け施工装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の不定形耐火物の吹付け施工装置及び施工方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態である吹付け施工装置の概略構成図である。この吹付け施工装置1は、図1に示したように、気流搬送機2と、搬送管3と、施工水添加手段4と、施工水添加部5と、流量定値制御弁6と、吹付けノズル7と、定量搬送機8と、コンプレッサー9と、から構成されるものである。
【0022】
まず、気流搬送機2は、不定形耐火組成物を粉末状態のまま搬送することができるように、搬送管3内に粉末状の不定形耐火組成物を供給し、この不定形耐火組成物を搬送させるために搬送管3内に送風により気流を生じさせることができるようになっている。搬送管3内に送風されて生じた気流は、所定の固体/気体比率で不定形耐火組成物を搬送管3内へ送り込み、送り込まれた不定形耐火組成物を搬送管3の一端側(気流搬送機側)から他端側(吹付けノズル7側)へ搬送するようになっている。
【0023】
気流搬送機2から送風する気体としては、不定形耐火組成物の特性を変化させないものであれば特に限定されるものではないが、一般的には空気が用いられ、例えば、後述するコンプレッサー等をこの気流搬送機2に接続することで付与される。
【0024】
また、ここで、気流搬送機2では、単位時間当たりの不定形耐火組成物の供給量と送風する気体の量を一定にすることで、常に所定の量(固体/気体比率)の不定形耐火組成物が搬送管3内を搬送されるようにすることが好ましい。この固体/気体比率は容積比で、通常、1/200〜1/400である。
【0025】
搬送管3は、粉末状の不定形耐火組成物を気流によって粉末状態で搬送させるものであり、途中で施工水が添加された場合にも湿潤状態の不定形耐火物を吹付けノズル7まで搬送するものである。すなわち、この搬送管3としては、気流搬送機2と吹付けノズル7を接続することができるものであって、粉末状の不定形耐火組成物を安定して搬送することができるものであればよい。
【0026】
この搬送管3としては、従来から用いられている、例えば、鋼等の金属製の配管やゴム製、ポリエチレン等の樹脂製のホースであることが好ましい。このとき、搬送管3の内径は、搬送する不定形耐火組成物の量や施工現場等により適宜選択すればよく、通常、65mm以下であることが好ましい。搬送管の内径が65mmを超えると単位時間当りの吹付け量が大きくなりすぎ、内径が、過度に小さいと圧損失が生じてしまう。なかでも、内径が25〜65mmであることがより好ましい。
【0027】
このとき、搬送管3の口径は、搬送する不定形耐火組成物の量や大きさ等によっても適宜選択することができ、用いる不定形耐火組成物中の最大粒子直径/搬送管の内径の比率が1/7〜1/3になるようにすることが好ましく、通常、38〜65mmの内径の搬送管を用いればよい。
【0028】
搬送管3の長さは気流搬送が安定して行うことができる長さであれば制限されず、例えば5〜200mとすることができ、また、その搬送管3の形状は上記のように樹脂製のように柔軟性を有する素材で形成することで現場の状況に合わせた配置、移動が容易に行うことができ好ましい。さらに、施工場所が高所である場合にも、本発明の搬送管3により不定形耐火組成物を高所まで吹き送り、吹付けノズル7を施工対象物の近くまでもっていくことができるため、施工を安定して行うことができる。
【0029】
施工水添加手段4は、粉末状の不定形耐火組成物が搬送されている搬送管3内に施工水を添加して不定形耐火組成物を湿潤状態とするものであり、このように湿潤状態となった不定形耐火組成物は、気流搬送機2による気流の力で吹付けノズル7まで搬送される。施工水添加手段4による搬送管3内への施工水の添加は、施工水添加手段4により送り込まれる施工水を、施工水添加部5で搬送管内に供給することで行われる。
【0030】
ここで、施工水添加手段4は、例えば、ステンレス等からなる金属製の配管、ゴム製、ポリエチレン等の樹脂製のホースであることが好ましい。このとき、施工水添加手段4の内径は、供給する施工水の量や施工現場の状況等により適宜選択すればよく、通常、9〜25mmであることが好ましい。
【0031】
そして、施工水添加手段4は、搬送管3内へ施工水を供給することができるように搬送管3の途中に設けられた水添加口と接続され、施工水添加部5が設けられる。この施工水添加部5は、吹付けノズル7の先端から0.3〜15mの位置に設けることが好ましい。0.3mより短いと不定形耐火組成物と施工水とが十分に混合されず、十分な特性を有する耐火物を構築することができず、15mより長いと搬送管3内に不定形耐火組成物が堆積しやすくなり、吹付け量が低下したり、搬送管3内が閉塞して吹付け自体ができなくなったりするおそれがある。
【0032】
流量定値制御弁6は、施工水添加手段4に設けられる差圧式の流量定値制御弁である。この流量定値制御弁6は、その入り側と出側における圧力差を検知し、その圧力差が設定された差分と乖離した場合には、施工水の供給流量を調節して一定の差分を維持するように働くものである。すなわち、この搬送管3の内圧の変動に応じて搬送管3に常に所定の量の施工水を供給しようとするものである。
【0033】
例えば、搬送管3内の気圧が高くなった場合には、施工水添加手段4における施工水の添加の際の抵抗が大きくなり、これにより添加水量は低下する。ところが、本発明の施工装置によれば、この抵抗変化により、流量定値制御弁6の出側で圧力が上昇し、入り側との圧力差が大きくなる。ここで、流量定置制御弁6は、入り側と出側との圧力差を設定された差分に維持するように、弁を開けて施工水添加手段4での施工水の添加量を増やすため、結局、施工水の添加量は維持されるようになる。これは、搬送管3内の気圧が減少した場合にも、働きが逆になるだけで、同様に施工水の添加量を維持するように働くものである。
【0034】
このような流量定値制御弁6としては、圧力検知式と流量検知式のものがあるが、共に圧力又は流量を検知するセンサーとセンサーによる検知結果に基づいて流量を定値制御するための制御部を必要とする。機器の大きさ、可搬性、コスト、汎用性等からは、可搬性を有する小型のもので、コストも低く、汎用性のあるものが好ましい。さらに、本発明のような粉じんが生じるような使用環境でも安定して使用可能であることがより好ましい。本発明に用いる流量定置制御弁6としては、具体的には、日本フローセル社製 フローマチック・バルブ、ユニコントロールズ社製 定量バルブ、東フロコーポレーション社製 電動比例制御バルブ等が挙げられる。
【0035】
吹付けノズル7は、搬送管3の先端に取り付けられており、施工水の添加された不定形耐火組成物を施工対象物へ吹付けるものである。この吹付けノズル7としては、従来から用いられている不定形耐火組成物を吹付けることができるノズルを用いればよい。
【0036】
定量搬送機8は、気流搬送機2へ不定形耐火組成物を任意の設定値で定量かつ連続的に供給することができるもので、例えば、日本プライブリコ社製のプライメイト−II(商品名)が挙げられる。
【0037】
コンプレッサー9は、圧縮気体を気流搬送機2へ供給するものである。ここで供給される圧縮された気体は、気流搬送機2において、定量搬送機8から供給される不定形耐火組成物を搬送管3へ導入し、不定形耐火組成物を粉末状態のまま搬送する。
【0038】
次に、本発明の吹付け施工方法について、図面を参照しながら説明する。図2は、図1の不定形耐火物の吹付け施工装置を用いた不定形耐火物の吹付け施工方法を説明する図である。
【0039】
この吹付け施工方法においては、まず、気流搬送機2において、定量搬送機8を介して供給される所定量の粉末状の不定形耐火組成物21をコンプレッサー9から送られてくる圧縮気体により、粉末状態のまま搬送管3内を搬送させる。気流搬送機2としては不定形耐火組成物21の粉末を気流により搬送できるものであれば特に制限はないが、例えば、日本プライブリコ社製のニードガン(商品名)等の吹付け機などが使用できる。
【0040】
なお、上記の粉末状の不定形耐火組成物21を搬送管3に送り込むにあたっては、不定形耐火組成物21の所定量を連続的に定量搬送機8により気流搬送機2に供給し、気流源としてはコンプレッサー9により、例えば、圧縮空気を供給することにより行うもので、このようにすることで時間当たりの不定形耐火組成物の搬送量を安定して定量にすることができる。
【0041】
そして、搬送管3内に送り込まれた不定形耐火組成物21は、気流搬送機2に供給される圧縮空気による気流により搬送管3内を吹付けノズル7方向に搬送されていく。このとき、搬送管3の長さは、気流搬送機2の能力にも関係するが、本発明では、粉末状での搬送が可能なため極めて長距離の施工ができることが特徴であり、従来の湿式吹付け施工方法では高々100m程度であった搬送距離が、本発明では200mもの長距離にすることができる。
【0042】
このように搬送管3内を搬送される不定形耐火組成物には、搬送管3の途中で施工水添加手段4により施工水が添加される。実際に施工水が供給される施工水添加部5の位置は、吹付けノズル7の先端から0.3〜15m上流に設けることが好ましく、水の添加が、0.3m未満の位置で行われたときには、不定形耐火組成物21と施工水とが十分に混合されず、十分な特性を有する耐火物を構築することができない。一方、15mを超えて遠い位置で水の添加が行なわれたときには、水の添加により圧送抵抗が大きくなり、圧縮空気での搬送力不足により搬送管が閉塞される傾向があるので好ましくない。水の添加位置は、吹付けノズル7先端部よりも0.3〜5m上流であることがより好ましい。
【0043】
本発明で不定形耐火組成物に添加される施工水の量は、耐火物の吹付け施工に必要な実質上全量の施工水が添加される。ここで、実質上とは、ほとんど全ての必要な量ということで、場合により少量の水を他の位置で加えることもできる。例えば、粉体の舞い上がりを防止するために少量の水を不定形耐火組成物に添加し、いわゆるプレモイスト状態としてもよい。
【0044】
例えば、粉体、水及び空気の分散系の構造における研究では、一般には、かかる3つの系は種々の構造を取り得るが、本発明の搬送管内での耐火組成物の湿潤状態は、粉体と水との連続した粒子に空気が閉じ込められた、いわゆる、「繊条(II)域」(梅屋:学振136委員会、不定形耐火物施工技術協議会研究会資料)を構成し、このために、本発明の湿潤状態の不定形耐火組成物は、搬送管内を浮遊しながら搬送されるものと思われる。しかし、これはメカニズムの推定であり、本発明の解釈を拘束するものではない。
【0045】
また、ここで添加される施工水は、上記施工水添加部5までは、施工水添加手段4により供給されるものであり、通常、施工水の供給源は気流搬送機2の近傍に配設されているため、施工水添加手段4は搬送管3と同程度の長さのものとなる。
【0046】
この施工水添加手段4には、流量定値制御弁6が設けられており、この流量定値制御弁6により所定量の施工水が定量供給されるように水量が調節されている。このとき、流量定値制御弁6は、その施工水の入り側の圧力と出側の圧力との一定の差分により施工水の供給流量を変化させて、一定の差分を維持するように働くものである。
【0047】
より詳しくは、流量定値制御弁6の出側の圧力が下がった場合には、搬送管3への水供給流量が増えているため、その増加分に応じて流量定値制御弁6のバルブ開度が閉まり、逆に、流量定値制御弁6の出側の圧力が上がった場合には、搬送管3への水供給流量が減っているため、その減少分に応じて流量定値制御弁6のバルブ開度が開くように、施工水の供給流量を圧力に応じて自動的に変動させるものである。
【0048】
このようにして、粉末状の不定形耐火組成物に所定の混合割合に当たる施工水を添加して湿潤状態とし、吹付けノズル7まで搬送し、そのまま施工対象物である施工壁面22に吹付けて、施工壁面22上に施工耐火物23を構築する。
【0049】
本実施形態では、例えば、搬送管3内の気圧は定圧に維持されていた場合であっても、施工作業を継続し続けることで、吹付けノズル7やその近傍の搬送管3では、その内部に微量ではあるが湿潤状態の材料が堆積していき、吹付けノズル7又は搬送管3の内径を狭められることによって、搬送管3内の圧力が高くなる場合も考えられ、そのような場合にも同様に施工水の供給量を維持し、粉末状の不定形耐火組成物へ所定の割合で施工水を供給して、一定の性質の不定形耐火物を構築することができる。
【0050】
さらに、本実施形態における最も特徴的な利点は、施工水の添加水量の調節を差圧式の流量定値制御弁6により行うことで、作業開始時及び吹付け中の水量を所定量とすることが容易にでき、材料ロスを低減できると共に、不定形耐火組成物と施工水とを迅速に所定の割合として混合することができるため、埃や粉塵等の発生を抑え、作業環境を改善することができる。
【0051】
なお、このとき用いる不定形耐火組成物は、従来と同様のものであり、例えば、耐火性骨材、耐火性粉末及び結合剤からなる粉末状のもので、さらに分散剤を含んでいてもよい。
【0052】
ここで、耐火性骨材としては、アルミナ、ボーキサイト、ダイアスポア、ムライト、カイヤナイト、バン土頁岩、シャモット、ケイ石、パイロフィライト、シリマナイト、アンダリュウサイト、クロム鉄鉱、スピネル、マグネシア、ジルコニア、ジルコン、クロミア、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、黒鉛などの炭素、ホウ化チタンおよびホウ化ジルコニウムから選ばれる1種以上の使用が好ましい。
【0053】
また、耐火組成物に含まれる耐火性粉末は、耐火性骨材の隙間を埋めて耐火性骨材を結合する結合部を形成するもので、平均粒子直径が150μm以下のものが用いられ、耐火性超微粉が好ましく使用される。耐火性超微粉としては、耐火粘土、ベントナイト、及びそれらの焼成物などの含水又は無水無定形けい酸、蒸発シリカなどのけい酸質原料、フライアッシュなどからのいずれか1種、又は2種以上を組み合わせ、耐火性骨材100質量部に対して、15〜50質量部配合する。
【0054】
耐火性粉末としては、上記の耐火性超微粉に加えて、耐火性超微粉よりも粒度は大きいが、平均粒子直径が30μm以下の他の材料を加えることができる。かかる材料としては、アルミナ、チタニア、ボーキサイト、ダイアスポア、ムライト、バン土頁岩、シャモット、パイロフィライト、シリマナイト、アンダリュウサイト、ケイ石、クロム鉄鉱、スピネル、マグネシア、ジルコニア、ジルコン、クロミア、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ベントナイトまたはシリカなどの無定形シリカ。これらは、単独または併用して使用される。
【0055】
耐火組成物に含まれる結合剤は、不定形耐火物の結合剤として機能するもので、好ましくは、アルミナセメントが使用される。アルミナセメントを結合剤として使用した場合には、施工体は常温から高温までの広い範囲で強度を維持できる。結合剤としては、リン酸、リン酸アルミニウムなどのリン酸塩、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムなどのケイ酸塩、リグニンスルホン酸塩、水溶性フェノールなどを使用することもできる。結合剤は、耐火性骨材100質量部に対して、好ましくは2.5〜30質量部、特には5〜25質量部含有させるのが好適である。
【0056】
本発明において耐火組成物に含まれる場合の分散剤は、テトラポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどの縮合リン酸塩、ポリカルボン酸塩、ポリアクリル酸塩などのカルボン酸塩、メラミンスルホン酸塩、及びβ−ナフタレンスルホン酸塩などのスルホン酸塩から選ばれる1種以上が好ましく、耐火組成物の耐火性骨材、耐火性粉末及び結合剤の合量100質量部に対して0.02〜1質量部添加することが好ましい。
【0057】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の他の実施形態である吹付け施工装置の概略構成図である。この吹付け施工装置11は、図3に示したように、気流搬送機2と、搬送管3と、施工水添加手段4と、施工水添加部5と、流量定値制御弁6と、吹付けノズル7と、定量供給機8と、コンプレッサー9と、急結剤添加手段12と、急結剤添加部13と、から構成されるものである。
【0058】
この不定形耐火物の吹付け施工装置11は、第1の実施形態で説明した吹付け施工装置とは、急結剤添加手段12及び急結剤添加部13を有しているか否かが異なるのみで、その他の構成は同一である。以下、異なる構成部分のみ説明する。
【0059】
急結剤添加手段12及び急結剤添加部13は、搬送管3において、施工水が添加された不定形耐火組成物に急結剤を供給、添加するものである。すなわち、湿潤状態の不定形耐火組成物には急結剤が急結剤添加部13で添加される。急結剤の搬送管3内への添加位置は、吹付けノズル7の先端から好ましくは0.3〜2.5mの上流にて行なわれる。急結剤の添加が、0.3mよりも近い位置で行なわれたときには、急結剤が不定形耐火組成物に充分均一に混合されないために凝集効果が発揮されない。一方、2.5mよりも遠い位置で急結剤が添加されるときには、搬送管3の途中で不定形耐火組成物が凝固してしまい、搬送管3及び吹付けノズル7を閉塞する恐れがある。
【0060】
そして、このときの施工水添加手段4の位置は、急結剤添加部13から1〜50mの上流であることが好ましい。施工水の添加が、1mよりも近い位置にて添加されたときには、不定形耐火組成物と施工水との混合が充分に行なわれる前に急結剤が添加されるため、不定形耐火組成物の凝固が早く始まってしまい好ましくない。一方、50mより遠い位置で施工水の添加が行なわれるときには、施工水の添加により圧送抵抗が大きくなり、圧縮空気での搬送力不足により搬送管が閉塞される傾向があるので好ましくない。施工水の添加は、なかでも、急結剤添加部13よりも3〜10m上流であるのが好適である。本実施形態では、かかる施工水の添加により湿潤状態になった後でも耐火組成物は、搬送管に付着するような粘性にはならない。
【0061】
このとき、急結剤としては、粉末または液体のものが使用可能である。吹付け施工する不定形耐火組成物中の水分量を必要最小限にとどめて良好な耐火物特性を確保するため、好ましくは粉末の急結剤が使用される。水溶液の急結剤を使用する場合、なるべく濃い水溶液を使用する方が吹付け後の施工体の緻密性が低下しにくいため好ましい。
【0062】
粉末の急結剤の添加には粉末の添加量を均一に制御できる装置が好ましく使用でき、通常は圧縮空気をキャリアーとして急結剤を添加する装置が使用される。また、液体の急結剤を使用する場合も供給量を均一に制御可能な液体ポンプが好ましく、使用する急結剤の種類に応じて適宜選定されるが、プランジャーポンプ、ダイヤフラムポンプ、回転容積型一軸偏心ネジポンプなどが好適とされる。
【0063】
本実施形態の吹付け施工方法においては、耐火組成物に対する急結剤の添加量を吹付け施工中に変化させることにより耐久性などの特性に優れた施工体を得ることができる。例えば、耐火炉壁の隙間を補修するような場合、施工開始時には急結剤を添加せず、施工の最終段階、好ましくは、終了直前に急結剤を注入する方法や施工開始時には、所定量の急結剤の数質量%〜数十質量%の急結剤を注入し、施工の経過とともに急結剤の量を増やしていき、最後に所定量の急結剤を注入する方法などが選ばれる。このような急結剤の注入法を採用することにより施工体の内部には急結剤が少ないかまたは含まれないため耐火特性に優れ、一方、表面付近は充分な急結剤があるため強度特性に優れる施工体が得られる。
【0064】
なお、本実施形態のように急結剤を用いる場合には、急結剤として、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムなどのケイ酸塩、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸カルシウムなどのアルミン酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウムなどの硫酸塩、CaO・Al23、12CaO・7Al23、CaO・2Al23、3CaO・Al23、3CaO・3Al23・CaF2、11CaO・7Al23・CaF2などのカルシウムアルミネート類、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウムおよびこれらの複合物または混合物から選ばれる1種以上が選ばれる。また、上記に限定されることなく、既知の急結剤及び凝集剤と呼ばれる物質も使用できる。
【0065】
急結剤の添加量は、急結剤の種類によっても変化するので、急結剤の種類と、急結剤を注入した後の吹付けノズル7までの長さなどによって注入量を調節するのが好ましい。また、液体の急結剤の場合は、希釈したり、また、粉体の急結剤の場合には、そのまま又は水などで媒体に分散または溶解した液状としても使用できる。
【0066】
上記急結剤のなかでも、入手が容易であり、また安価であり、かつその特性が優れていることから、アルミン酸ナトリウムの粉末または水溶液を使用するのが好ましい。アルミン酸ナトリウムはその融点が高いので耐火物の耐火度を低下させず、耐火組成物中に注入すると加水分解してNaOHの他にAl(OH)3のゲルを生じて耐火組成物を急速に硬化させる。
【0067】
急結剤の添加量は、分散剤、遅延剤などの添加材を除く耐火組成物100質量部に対して、乾量基準の質量で0.05〜3質量部とするのが好ましい。0.05質量部より少ないと、性能のよい急結剤であっても急結速度が不足して吹付け施工された耐火物が流れ落ちる恐れがあり、一方、3質量部を超えて多く注入すると急速に硬化して吹付け施工が難しくなったり、耐熱性や耐食性などの耐火物としての性能が低下したりすることになる。
【0068】
また、本吹付け施工方法においては、必要に応じて、耐火組成物100質量部に対して、好ましくは、0.002〜0.2質量部の遅延剤を添加することにより、凝集時間を制御でき、安定して耐火物を吹付け施工できる。遅延剤には、シュウ酸、ホウ酸、リンゴ酸、クエン酸、リグニンスルホン酸塩などの弱酸が好ましく使用できる。
【0069】
このようにして、急結剤が添加された湿潤状の不定形耐火組成物は、搬送用の空気とともに吹付けノズル7から吹付けされる。すなわち、湿潤状の不定形耐火物は吹付けの対象とされる炉壁構築部等に高圧で吹付けられる。なお、搬送用空気は炉壁構築部に吹付けられた時の衝撃により外気中に脱気する。吹付けされた不定形耐火物は脱気後、急結剤の効果で急速に凝集しその後硬化して施工体となり、強固な炉壁が構築される。なお、施工の際には必要に応じて型枠などを使用してもよい。
【0070】
なお、本実施形態においては、急結剤は後から添加するようにしているため、気流搬送機から搬送する不定形耐火組成物は、第1の実施形態で用いた不定形耐火組成物と同様の化学成分からなるものである。
【0071】
なお、この第2の実施形態では、急結剤を後から添加する形態で行っているが、急結剤を他の材料と予め混合して不定形耐火組成物とし、この不定形耐火組成物を気流搬送機2により気流搬送させてもよく、この場合にも本願発明の効果を得ることができ、かつ、十分な特性を有する耐火壁を構築することができる。このとき用いる不定形耐火組成物の吹付け装置としては、急結剤添加手段12及び急結剤添加部13が不要であるため、図1の装置と同一構成の装置で行えばよい。
【実施例】
【0072】
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はかかる実施例により何ら制限して解釈されるものではない。
【0073】
(実施例1)
図1の不定形耐火物の吹付け施工装置1を用い、不定形耐火組成物としては、表1に示した組成からなる急結剤も予め混合した粉末状の不定形耐火組成物を用いて、次のように乾式吹付け施工を行った。
【0074】
【表1】

【0075】
まず、気流搬送機2に、定量供給機8からかさ密度2.0g/cmの不定形耐火組成物を1m/hrの量で連続的に定量供給しながら、エアーコンプレッサーから5Nm/minの流量で圧縮空気を送り、不定形耐火組成物を搬送管3内に送り込んだ。なお、搬送管3として、気流搬送機2から吹付けノズル7までの長さは40m、内径38mmのゴム製ホースを用いた。
搬送管3内において、不定形耐火組成物を気流搬送しながら、吹付けノズル7の先端から0.8mの位置で水道水(施工水)を添加した。このとき、施工水をポンプで送出しながら、施工水供給手段の途中に最大流量500L/hrの差圧式の流量定値制御弁を設け、この流量定値制御弁における設定流量を200L/hrの流量として施工水を添加した。
【0076】
施工水の添加された湿潤状態の不定形耐火組成物を、吹付けノズル7まで搬送し、そのまま縦400mm×横400mm×厚み100mmの吹付けパネルに吹付けた。このとき、不定形耐火組成物の吐出量は2000kg/hr、吹付け圧力は0.3MPaであった。
【0077】
(比較例1)
この比較例1では、流量定値制御弁6を設けていないこと以外は、実施例1と同一の構成を有する不定形耐火組成物の吹付け施工装置を用い、同様に不定形耐火組成物を縦400mm×横400mm×厚み100mmの吹付けパネルに吹付けた。なお、比較例1においては、施工水はポンプにより200L/hrの流量で施工水添加手段まで送出し、その施工水の添加量を熟練の施工者が調整しながら吹付けを行った。
【0078】
(試験例)
実施例1及び比較例1において、吹付け時の埃、リバウンドロス、吹付けパネルに構築した耐火物の曲げ強度、圧縮強度、気孔率をそれぞれ調べ、その結果を表2にまとめて示した。なお、構築した耐火物は、パネルに吹付けてから、3日間養生した後のものを用いた。
【0079】
【表2】

【0080】
*1 吹付け時の埃:ほぼ密閉状態の空間で吹付けを行い、吹付け開始から1分後の空間内の粉じんを吸引し、粉じん量を計測した。このとき、比較例1を100としたときの質量比で評価した。
*2 リバウンドロス:不定形耐火組成物の吹付け時にはね落ちた質量を計測した。このとき、比較例1を100としたときの質量比で評価した。
*3 曲げ強度:JIS R 2553に準拠して測定した。
*4 圧縮強度:JIS R 2553に準拠して測定した。
*5 見かけ気孔率:JIS R 2205に準拠して測定した。
【0081】
この結果から、本発明の施工装置及び施工方法により施工時の粉じんが約40%減り、リバウンドロスも約36%減った。また、得られた耐火壁は気孔率が低く、曲げ強度、圧縮強度ともに従来よりも優れていた。このことから、本願発明が、材料ロス防止、環境汚染の防止に有用であり、不定形耐火組成物への施工水の添加割合を良好に保ち、得られる耐火物が均質で、その特性も優れたものとすることができることがわかった。
【0082】
(実施例2)
次に、表2に示したように、ホース全長及び高低差の組み合わせを変えた以外は実施例1と同様の条件で施工操作を行い、施工水の供給安定性を調べた。また、このとき搬送管のホース内径が38mmと45mmの2種類に対して実施した。その結果を表3に示した。なお、供給安定性は、不定形耐火物の吹付け開始から終了までの流量定置制御弁を通過する水量の変動が設定値の3%以内のとき○、それ以上のとき×として判定した。
【0083】
【表3】

【0084】
この結果から、本発明の施工装置及び施工方法によれば、吹付け施工時の条件変化による搬送管内の圧力変動が起こっても施工水の供給を安定して行うことができ、これにより不定形耐火組成物と施工水との混合割合を所定範囲で安定して行うことができることがわかった。
【0085】
また、不定形耐火組成物の組成として分散剤及び急結剤を含まない上記第1の実施形態、急結剤を施工水添加後に添加する上記第2の実施形態で説明した乾式吹付け方法でも、実施例1及び2と同様に、材料ロス防止、環境汚染の防止に有用であり、不定形耐火組成物への施工水の添加割合を良好に保ち、得られる耐火物が均質で、その特性も優れたものとすることができることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の不定形耐火物の吹付け施工装置及び施工方法は、乾式吹付けによる不定形耐火物の施工に利用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1…不定形耐火物の吹付け施工装置、2…気流搬送機、3…搬送管、4…施工水添加手段、5…施工水添加部、6…流量定値制御弁、7…吹付けノズル、8…定量供給機、9…コンプレッサー、12…急結剤添加手段、13…急結剤添加部、20…不定形耐火組成物収納袋、21…不定形耐火組成物、22…施工壁面、23…施工耐火物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状の不定形耐火組成物を、所定の固体/気体比率で気流に乗せて送り出すことができる気流搬送機と、
前記気流搬送機により送り出された粉末状の不定形耐火組成物を、一端側から内部に受け入れ、前記気流搬送機からの気流によって、他端側まで搬送する搬送管と、
前記搬送管内を搬送される粉末状の不定形耐火組成物へ施工水を添加する施工水添加手段と、
前記施工水添加手段に設けられた施工水の添加量を制御する差圧式の流量定値制御弁と、
前記搬送管の他端に設けられ、施工水が添加された不定形耐火組成物を施工対象物に吹付ける吹付けノズルと、
を有することを特徴とする不定形耐火物の吹付け施工装置。
【請求項2】
前記搬送管における前記吹付けノズルの上流であって、かつ、前記施工水添加手段の添加水供給口の開口部の下流に、前記搬送管内へ急結剤を添加する急結剤添加手段が配設されていることを特徴とする請求項1記載の不定形耐火物の吹付け施工装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の不定形耐火物の吹付け施工装置を用い、不定形耐火組成物を、所定の固体/気体比率で気流に乗せて搬送管の一端側から前記搬送管内に定量送り込み他端側へ搬送する搬送工程と、気流に乗せて搬送中の前記不定形耐火組成物に施工水を添加する施工水添加工程と、施工水が添加された不定形耐火組成物を、吹付けノズルから施工対象物に吹付ける吹付け工程と、を有する不定形耐火物の吹付け施工方法であって、
前記施工水添加工程において、施工水の供給流量を差圧式の流量定値制御弁により調節することを特徴とする不定形耐火物の吹付け施工方法。
【請求項4】
前記不定形耐火組成物が、耐火性骨材、耐火性粉末及び結合剤を含有してなることを特徴とする請求項3記載の不定形耐火物の吹付け施工方法。
【請求項5】
前記不定形耐火組成物が、耐火性骨材、耐火性粉末、結合剤、分散剤及び急結剤を含有してなることを特徴とする請求項3記載の不定形耐火物の吹付け施工方法。
【請求項6】
前記不定形耐火組成物が、耐火性骨材、耐火性粉末、結合剤及び分散剤を含有し、前記施工水の添加後、前記吹付け工程の前に前記吹付けノズルの上流にて、施工水の添加された不定形耐火組成物に急結剤を添加することを特徴とする請求項3記載の不定形耐火物の吹付け施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−208837(P2011−208837A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74883(P2010−74883)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(390001373)日本プライブリコ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】