説明

不正コピー判別システム

【課題】 従来は、仮想CDなどハードディスク上に不正にコピーされたデジタルデータとオリジナルCDのデジタルデータとを判別する手段がなかった。
【解決手段】デジタルデータを記録する記録媒体と、
前記記録媒体からデジタルデータの一部または全部を読み出す際に要する時間を時間TPとし、時間TPを測定する処理時間測定手段と、時間TPを記憶する処理時間記憶手段と、基準となる時間を時間TBとし、時間TBを記憶する基準時間記憶手段と、前記処理時間記憶手段に記憶されている時間TPと、前記基準時間記憶手段に記憶されている時間TBを比較して、前記記録媒体に記録されているデジタルデータが不正にコピーされたものであるかどうかを判定する比較演算手段と、前記記録媒体と前記処理時間測定手段と比較演算手段とを制御する制御手段とを有し、記録媒体ごとに読み出しに要する時間が異なる特徴を利用し、不正コピーされたものであるかどうかを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD−ROMやDVD、ハードディスクなどの情報記録媒体に記録されているデジタルデータの著作権を保護することを目的とし、デジタルデータが不正にコピーされたものであるか否かを判別する不正コピー判別システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
映像や音楽などのデジタルコンテンツや、コンピュータなどで起動する各種アプリケーションソフトウェアなど、これらデジタルデータは、産業の発展にとって重要である。これらのデジタルデータを流通させる方法の一つとしてCD−ROMに記録して配布する方法がある。しかし、近年のパーソナルコンピュータ(以下、パソコンと呼ぶ)の普及により、正規のCD−ROM(以下、オリジナルCDと呼ぶ)に記録されたデジタルデータを容易に不正コピーされてしまう。
【0003】
これらの不正コピーを防止することを目的として、意図的にオリジナルCDの一部に不良部分を具備し、容易には不正コピーができない対策を施されたオリジナルCD(以下、コピープロテクトCDと呼ぶ)も存在する。
【特許文献1】特開2000−348435
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年の不正コピーの技術の進歩により、これらプロテクトCDでさえも、デジタルデータを読み出し、パソコンのハードディスクに記録できてしまうようになってきている。
【0005】
また、これらの不正コピーされ、ハードディスクに記録されているデジタルデータを、仮想的にCD−ROMが存在しているのと同様にオペレーションシステム(以下、OSと呼ぶ)に取り扱わせる技術まで存在する。このような仮想的なCD−ROMを以下では仮想CDと呼ぶ。
【0006】
これら、仮想CDにおいては、プロテクトCD(オリジナルCD)の不良部分までも同じ値として再現しているものもあり、仮想CDとオリジナルCDのデジタルデータの値を単純に比較しただけでは区別がつかないという問題が発生する。
【0007】
以上のように、不正コピーそのものを防ぐこととはできないが、本発明の不正コピー判別システムでは、不正コピーされたものかどうかを判別することにより、不正コピーされたデジタルデータの活用の抑止に役立てることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の不正コピー判別システムでは、請求項1に記載の発明において、デジタルデータを記録する記録媒体と、前記記録媒体からデジタルデータの一部または全部を読み出す際に要する時間を時間TPとし、時間TPを測定する処理時間測定手段と、時間TPを記憶する処理時間記憶手段と、基準となる時間を時間TBとし、時間TBを記憶する基準時間記憶手段と、前記処理時間記憶手段に記憶されている時間TPと、前記基準時間記憶手段に記憶されている時間TBを比較して、前記記録媒体に記録されているデジタルデータが不正にコピーされたものであるかどうかを判定する比較演算手段と、前記記録媒体と前記処理時間測定手段と比較演算手段とを制御する制御手段とを有する構成とする。
【0009】
また、上記の課題を解決するために、本発明の不正コピー判別システムでは、請求項2に記載の発明において、デジタルデータを記録する記録媒体と、前記記録媒体からデジタルデータの一部または全部を読み出す際の速度を速度SPとし、速度SPを検知する処理速度検知手段と、速度SPを記憶する処理速度記憶手段と、基準となる速度を速度SBとし、速度SBを記憶する基準速度記憶手段と、前記処理速度検知手段に記憶されている速度SPと、前記基準速度記憶手段に記憶されている速度SBを比較して、前記記録媒体に記録されているデジタルデータが不正にコピーされたものであるかどうかを判定する比較演算手段と、前記記録媒体と前記処理速度検知手段と比較演算手段とを制御する制御手段を有する構成とする。
【0010】
また、上記の課題を解決するために、本発明の不正コピー判別システムでは、請求項3に記載の発明において、請求項1または請求項2の構成に加えて、正規のオリジナルデータの一部または全部を記憶するオリジナルデータ記憶手段と、記録媒体から読み出される一部または全部のデジタルデータを記憶する一時記憶手段を有し、前記オリジナルデータ記憶手段に記憶されているオリジナルデータの値と、前記一時記憶手段に記憶されているデジタルデータの値が一致しているかどうかの同値判定手段を有し、前記同値判定手段と比較演算手段の判定結果の両方を用いて、前記同値判定手段より値が一致していると判定され、かつ、前記比較演算手段が不正コピーではないと認める場合を、前記記録媒体に記録されているデジタルデータがオリジナルデータであると判別し、前記同値判定手段より値が一致していないと判定される、または、前記比較演算手段が不正コピーである、と認める場合は、前記記録媒体に記録されているデジタルデータがオリジナルデータではないと判別する構成とする。
【0011】
また、上記の課題を解決するために、本発明の不正コピー判別システムでは、請求項4に記載の発明において、請求項1または請求項2または請求項3の構成に加えて、記録媒体に記録されているデジタルデータが不正コピーされたものであるかどうかの判定結果をもとに、不正コピーでない場合は、アプリケーションを開始または継続し、不正コピーの場合は、アプリケーションを停止、または警告表示、または通信手段を用いて遠隔地への通知を行う対処手段を有する構成とする。
【発明の効果】
【0012】
上記した請求項1または請求項2または請求項目3または請求項4に記載の構成により、記録媒体ごとに記録されているデジタルデータの読み出しに要する時間(時間TP)またはデジタルデータの読み出し速度(速度SP)が異なる特徴を利用して、デジタルデータが不正コピーされて別の媒体に記録されたものなのかどうかを判別することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下の実施例では、不正コピーを判別するという目的を、最小の構成で実現した。
【実施例1】
【0014】
以下に、本発明の実施例1について説明する。
【0015】
図1に、本発明の実施例1の不正コピー判別システムの構成を示す。図1において、1は、デジタルデータを記録する記録媒体で、記録媒体1からデジタルデータの一部または全部を読み出す際に要する時間を時間TPとし、2は、時間TPを測定する処理時間測定手段で、3は、時間TPを記憶する処理時間記憶手段で、基準となる時間を時間TBとし、4は、時間TBを記憶する基準時間記憶手段で、5は、処理時間記憶手段3に記憶されている時間TPと、基準時間記憶手段4に記憶されている時間TBを比較して、記録媒体1に記録されているデジタルデータが不正にコピーされたものであるかどうかを判定する比較演算手段で、6は、記録媒体1と処理時間測定手段2と比較演算手段5を制御する制御手段で、7は、記録媒体1から読み出されるデジタルデータを記憶する一時記憶手段で、処理時間測定手段2の内部の、8は、時刻を示すタイマーで、9は、タイマー8より得られる記録媒体1からデジタルデータの読み出しが開始された時刻(以下、読み出し開始時刻と呼ぶ)を記憶する読み出し開始時刻記憶手段で、10は、タイマー8より得られる記録媒体1からデジタルデータの読み出しが終了された時刻(以下、読み出し終了時刻と呼ぶ)を記憶する読み出し終了時刻記憶手段で、11は、読み出し終了時刻記憶手段10に記憶されている読み出し終了時刻と、読み出し開始時刻記憶手段9に記憶されている読み出し開始時刻との差分を計算し、読み出しに要する時間(時間TP)を導く差分演算手段で、記録媒体1は、例えばCD−ROMやハードディスクで構成され、その他は、例としてパソコン上のソフトウェアプログラムとして実装されるものとする。
【0016】
なお、本発明の実施例1では、記録媒体1のデジタルデータの値が、正規のオリジナルデータと一致しているかどうかの判定(以下、同値判定と呼ぶ)を省略して説明する。それは、用途によるが、あらかじめ同値であることが分かっている場合や、もしくは、同値であることが重要ではなく、少なくとも正規のオリジナルデータではない、ということが判別できれば十分な用途も存在するからである。そのため本発明において不正コピーされたデジタルデータと呼ぶものは、少なくとも正規のオリジナルデータではない、という意味を含むものである。
【0017】
図2は、本発明の実施例1の不正コピー判別システムの動作を示すフローチャートである。以下、図1と図2を用いて本発明の実施例1の不正コピー判別システムの動作を説明する。
【0018】
まず、制御手段6からの指示により、処理時間測定手段2は、タイマー8より記録媒体1からデジタルデータの読み出し開始時刻を取得し、読み出し開始時刻記憶手段9に記憶する(図2のS001)。
【0019】
次に、制御手段6からの指示により、記録媒体1から所定量のデジタルデータを読み出し、一時記憶手段7に記憶する(図2のS002)。
【0020】
そして、制御手段6からの指示により、処理時間測定手段2は、タイマー8より記録媒体1からデジタルデータの読み出し終了時刻を取得し、読み出し終了時刻記憶手段10に記憶する(図2のS003)。
【0021】
次に、制御手段6からの指示により、処理時間測定手段2では、差分演算手段11により、読み出し終了時刻記憶手段10に記憶されている読み出し終了時刻と、読み出し開始時刻記憶手段9に記憶されている読み出し開始時刻との差分を計算し、デジタルデータの読み出しに要した時間TPを導き、この時間TPを処理時間記憶手段3に記憶する(図2のS004)。
【0022】
次に、制御手段6からの指示により、比較演算手段5は、処理時間記憶手段3に記憶されている時間TPと、基準時間記憶手段4に記憶されている時間TBを比較し(図2のS005)、時間TPの方が時間TBより大きければ記録媒体1は不正コピーされていない正規のオリジナルCDだと判定し(図2のS006)、時間TPが時間TB以下であれば
記録媒体1は不正コピーされてハードディスクなど別の媒体に記録された仮想CDであると判定する(図2のS007)。
【0023】
これは、媒体ごとに記録されているデジタルデータの読み出しに要する時間が異なることから判断することができる。一般的にハードディスクの方がCD−ROMよりも読み出し速度が速いことから、例えば、それぞれの読み出しに要する時間の中間くらいの時間を基準の時間(時間TB)として設定しておくことで判別が可能となる。
【0024】
なお、不正コピー判別システムの一部として、アプリケーションやサービスが起動している場合は、比較演算手段5の判定結果をもとに、不正コピーでないと判定された場合は、制御手段6からの指示によりアプリケーションやサービスを開始、または既に開始している場合は継続し(図2のS008)、不正コピーであると判定された場合は、制御手段6からの指示により、アプリケーションやサービスを開始しない、または既に開始している場合は中断するようにしてもよい(図2のS009)。また、アプリケーション側から比較演算手段5の判定結果を参照し、判定結果に応じて、アプリケーション自身が、アプリケーション自身もしくは連動して動くサービスを、継続または終了するようにしても良いし、警告を表示したり、通信手段を用いて遠隔地へ不正コピーであるかどうかの判定結果の通知を行ってもよい。
【0025】
ここでいうアプリケーションとは、例えばパソコン上で動作するソフトウェアプログラムであり、またサービスとは例えば、デジタルテレビ放送であり、正規のオリジナルCDを具備していない場合は、その放送の受信や映像の再生を中断させるようなシステムとして利用することができる。
【0026】
なお、本実施例1においては、CD−ROMを正規のオリジナルデータとした場合を想定したが、ハードディスクなど高速な記録媒体のほうが正規のデジタルデータである場合は、比較演算手段5における判定方法は、時間TPの方が時間TBより小さい場合を不正コピーされていない正規のオリジナルデータだと判定し、また、基準時間記憶手段4に記憶されている時間TBは1つとは限らず、例えば上限と下限のように複数個を設けて、時間TPが所定の範囲内であれば不正コピーではないと判定するなど、判定方法は、一律固定されるものではない。
【0027】
なお、上記では、読み出し時間を基準に判定したが、時間ではなく、速度を利用しても同様の効果が得られるのは言うまでもない。
【0028】
なお、上記では、記録媒体1のデジタルデータの値が、正規のオリジナルデータと一致していることが事前に分かっているケースなどを考慮し、記録媒体1のデジタルデータの値が、正規のオリジナルデータと一致しているかどうかの同値判定を省略して説明したが、正規のオリジナルデータの一部または全部を記憶するオリジナルデータ記憶手段を具備し、一時記憶手段7に記憶されているデジタルデータと値が一致しているかどうかの同値判定手段を具備し、同値でないと判定される場合は、記録媒体1のデジタルデータが当然オリジナルデータではないとし、同値であると判定される場合は、その結果と上記の図2のS006の結果とを総合して、記録媒体1のデジタルデータがオリジナルデータであることを、より確実に判定するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0029】
簡易な構成で、不正コピーを判別できるため、低コストで、デジタルデータなどの著作物の不正利用を抑止することができ、ソフトウェア開発や、コンテンツ開発などの産業の発展に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例1の不正コピー判別システムの構成を示した図である。
【図2】本発明の実施例1の不正コピー判別システムの動作を示した図である。
【符号の説明】
【0031】
1 記録媒体
2 処理時間測定手段
3 処理時間記憶手段
4 基準時間記憶手段
5 比較演算手段
6 制御手段
7 一時記憶手段
8 タイマー
9 読み出し開始時刻記憶手段
10 読み出し終了時刻記憶手段
11 差分演算手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルデータを記録する記録媒体と、前記記録媒体からデジタルデータの一部または全部を読み出す際に要する時間を時間TPとし、時間TPを測定する処理時間測定手段と、時間TPを記憶する処理時間記憶手段と、基準となる時間を時間TBとし、時間TBを記憶する基準時間記憶手段と、前記処理時間記憶手段に記憶されている時間TPと、前記基準時間記憶手段に記憶されている時間TBを比較して、前記記録媒体に記録されているデジタルデータが不正にコピーされたものであるかどうかを判定する比較演算手段と、前記記録媒体と前記処理時間測定手段と比較演算手段とを制御する制御手段とを有することを特徴とする不正コピー判別システム。
【請求項2】
デジタルデータを記録する記録媒体と、前記記録媒体からデジタルデータの一部または全部を読み出す際の速度を速度SPとし、速度SPを検知する処理速度検知手段と、速度SPを記憶する処理速度記憶手段と、基準となる速度を速度SBとし、速度SBを記憶する基準速度記憶手段と、前記処理速度検知手段に記憶されている速度SPと、前記基準速度記憶手段に記憶されている速度SBを比較して、前記記録媒体に記録されているデジタルデータが不正にコピーされたものであるかどうかを判定する比較演算手段と、前記記録媒体と前記処理速度検知手段と比較演算手段とを制御する制御手段とを有することを特徴とする不正コピー判別システム。
【請求項3】
正規のオリジナルデータの一部または全部を記憶するオリジナルデータ記憶手段と、記録媒体から読み出される一部または全部のデジタルデータを記憶する一時記憶手段を有し、前記オリジナルデータ記憶手段に記憶されているオリジナルデータの値と、前記一時記憶手段に記憶されているデジタルデータの値が一致しているかどうかの同値判定手段を有し、前記同値判定手段と比較演算手段の判定結果の両方を用いて、前記同値判定手段より値が一致していると判定され、かつ、前記比較演算手段が不正コピーではないと認める場合を、前記記録媒体に記録されているデジタルデータがオリジナルデータであると判別し、前記同値判定手段より値が一致していないと判定される、または、前記比較演算手段が不正コピーである、と認める場合は、前記記録媒体に記録されているデジタルデータがオリジナルデータではないと判別することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の不正コピー判別システム。
【請求項4】
記録媒体に記録されているデジタルデータが不正コピーされたものであるかどうかの判定結果をもとに、不正コピーでない場合は、アプリケーションを開始または継続し、不正コピーの場合は、アプリケーションを停止、または警告表示、または通信手段を用いて遠隔地への通知を行う対処手段を有することを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3に記載の不正コピー判別システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−172547(P2006−172547A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360783(P2004−360783)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(399022652)有限会社 ラムロック映像技術研究所 (2)
【Fターム(参考)】