説明

不正加熱履歴検知材

【課題】
剥離履歴表示ラベルの機能を損なわずに、それへの不正な加熱を正確に検知して明瞭な色調の変化で示すことができ、簡便で生産効率のよい不正加熱履歴検知材を提供する。
【解決手段】
不正加熱履歴検知材は、剥離履歴表示ラベルに付される熱軟化性粘着層への不正な加熱の履歴の検知材であって、該粘着層の熱軟化温度以下の融点を持つ粒状または粉末状の熱溶融性物質と、熱溶融した該物質への分散または溶解による拡散性がある粒状または粉末状の色素と、熱溶融した該物質の拡散性があるインキビヒクルとを含んでいる感温インキ層が、基材上に塗布されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離の履歴を表示するラベルへの不正な加熱を検知して、色調の変化で示す不正加熱履歴検知材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
封筒に密封された機密書類が不正に開封されて閲覧・改ざんが行なわれていないことや、包装されたソフトウエア記録媒体や電子機器等の商品が不正に解かれて複製・改ざんが行なわれていないことを確認するために、封筒等の封じ目に剥離履歴表示ラベルが、貼付されている。
【0003】
剥離履歴表示ラベルとして、それが剥離されると脆弱なラベル基材が破れて剥離の履歴を表示するものや、複製不能なホログラムが、知られている。
【0004】
また、特許文献1に、フィルム基材の片面で、部分的に剥離剤塗層を形成し、それを覆って全面的に蒸着膜さらに粘着剤塗膜を形成した剥離履歴表示ラベルが、開示されている。粘着剤塗膜を介して封筒に付されたこのラベルが剥離されると、部分的な剥離剤塗層が封筒に不均一に残存し、剥離の履歴が表示される。
【0005】
これらの剥離履歴表示ラベルは、不正に加熱されると、粘着剤が軟化してその粘着力を低下させるため、剥離の履歴を残すことなくきれいに剥離できてしまう。これが再度貼付されると、未だ剥離されていないと誤認する。
【0006】
特許文献2に、脆質性基材と、熱発泡剤を含有する接着剤層とを有するラベルが、開示されている。このラベルは、剥離されると脆質性基材が不均一に裂けて剥離の履歴を表示し、一方、加熱されると熱発泡剤から発生する無色の気泡により不正加熱の履歴を表示する。
【0007】
従来のラベルよりも一層簡便な構造で不正な加熱を正確に検知して、明瞭な色調の変化で表示でき、さらに剥離履歴の表示原理が相違する種々のラベルに対応できる不正加熱履歴検知材が望まれていた。
【0008】
【特許文献1】実開昭59−001077号公報
【特許文献2】特開2000−293108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、剥離履歴表示ラベルの機能を損なわずに、それへの不正な加熱を正確に検知して明瞭な色調の変化で示すことができ、簡便で生産効率のよい不正加熱履歴検知材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載の不正加熱履歴検知材は、剥離履歴表示ラベルに付される熱軟化性粘着層への不正な加熱の履歴の検知材であって、該粘着層の熱軟化温度以下の融点を持つ粒状または粉末状の熱溶融性物質と、熱溶融した該物質への分散または溶解による拡散性がある粒状または粉末状の色素と、熱溶融した該物質の拡散性があるインキビヒクルとを含んでいる感温インキ層が、基材上に塗布されていることを特徴とする。
【0011】
この不正加熱履歴検知材は、加熱されると、熱溶融した該物質が拡散し、不可逆的に明瞭に変色する。またそれが冷却されても変色したまま長期間脱色しない。
【0012】
請求項2に記載の不正加熱履歴検知材は、前記基材が、熱非剥離性接着層を有していることを特徴とする。
【0013】
不正加熱履歴検知材は、熱非剥離性接着層を介して剥離履歴表示ラベルの表側面または裏側面に接着させるものであってもよい。また、不正加熱履歴検知材は、熱非剥離性接着層を介して封筒の封じ目に接着され、その不正加熱履歴検知材を覆って剥離履歴表示ラベルが貼付されるものであってもよい。不正加熱履歴検知材の基材は、剥離履歴表示ラベル基材を兼ねていてもよい。
【0014】
熱非剥離性接着層が存在するので、剥離履歴表示ラベルまたは封筒の封じ目からこの検知材だけを剥ぎ取ることができない。そのため不正に加熱された後、不正加熱履歴を隠滅することができない。
【0015】
同じく請求項3に記載の剥離履歴表示ラベルは、剥離履歴表示ラベル基材に、それの剥離により破断する脆弱部若しくは不可逆的に転写させる着色層、ホログラム、蛍光インキ層、識別記号の少なくともいずれかと、請求項1に記載の不正加熱履歴検知材とが、付されていることを特徴とする。
【0016】
このようなラベルの剥離履歴表示箇所を避けて不正加熱履歴検知材を付すことにより、剥離履歴表示機能を損なうことなく、それへの不正な加熱を正確に検知できる。
【0017】
剥離履歴表示ラベルは、例えば、不正加熱履歴検知材を任意の形状、例えば直径0.1mm以上の円板状にして剥離履歴表示ラベル基材へ接着したものである。剥離履歴表示ラベルの剥ぎ取りを開始する剥離履歴表示ラベル基材周囲近傍へ、不正加熱履歴検知材が接着されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
この不正加熱履歴検知材は、加熱により不可逆的に変色し、変色したまま長期間保存できるので、剥離履歴表示ラベルへの不正な加熱の履歴の証拠として残すことができる。
【0019】
さらにこの不正加熱履歴検知材は、原理や構造が相違する種々の剥離履歴表示ラベルの任意な位置に自在に接着して用いることができるので、汎用性がある。
【0020】
不正加熱履歴検知材が接着された剥離履歴表示ラベルを、室温で剥ぎ取っても剥離の履歴が表示され、また加熱して剥ぎ取っても加熱の履歴が表示される。これにより、剥離履歴表示ラベルのいかなる剥離も検知できるので、不正な開封の有無を目視で正確かつ簡便に確認できる。
【0021】
そのため、不正加熱履歴検知材を付した剥離履歴表示ラベルは、密封された機密書類等のセキュリティー性を高めることができ、不正な開封を防止するのに役立つ。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。不正加熱履歴検知材およびそれを付した剥離履歴表示ラベルは、以下のようにして作製される。
【0023】
先ず、剥離履歴表示ラベルに付される熱軟化性粘着層の熱軟化温度以下の融点を持つ粒状または粉末状の熱溶融性物質、熱溶融した該物質への分散または溶解による拡散性がある粒状または粉末状の色素、熱溶融した該物質の拡散性があるインキビヒクル、および溶媒を、混練して、感温インキを調製する。不正加熱履歴検知材用の基材の裏側面上に、剥離履歴表示ラベルへ接着させる接着層を付す。この基材の表側面上に、感温インキで印刷する。この基材を必要に応じ適当な形状・大きさに切断し、不正加熱履歴検知材を得る。
【0024】
次いでミシン目のような脆弱部を有する剥離履歴表示ラベル基材の裏側面上に熱軟化性粘着層を付す。不正加熱履歴検知材を剥離履歴表示ラベル基材の表側面上の周辺近傍に接着すると、剥離履歴表示ラベルが得られる。
【0025】
剥離履歴表示ラベルの熱軟化性粘着層は、粘着剤として例えば熱可塑性樹脂を含むもので、その熱軟化温度が70〜150℃であることが好ましい。
【0026】
熱溶融性物質は、変色温度を決定する成分であって、該粘着層の熱軟化温度以下の融点を持ち、融点以上に加熱されると熱溶融されて、粒状または粉末状から液状に変化する物質である。この熱溶融性物質は、0.01μm〜5mmの径を有していることが好ましい。
【0027】
熱溶融性物質は、脂肪酸誘導体、アルコール誘導体、エーテル誘導体、アルデヒド誘導体、ケトン誘導体、アミン誘導体、アミド誘導体、ニトリル誘導体、炭化水素誘導体、チオール誘導体、またはスルフィド誘導体であることが好ましい。
【0028】
熱溶融性物質は、より具体的にはミリスチン酸、パルミチン酸、アジピン酸、オクタン酸、トリコサン酸、テトラトリアコンタン酸、2,3−ジメチルノナン酸、23−メチルテトラコサン酸、2−ヘキセン酸、ブラシン酸、2−メチル−2−ドデセン酸、β−エレオステアリン酸、ベヘノール酸、cis−9,10−メチレンオクタデカン酸、ショールムーグリン酸、3,3’−チオジプロピオン酸−n−ドデシル、トリラウリン、パルミチン酸アニリド、ステアリン酸アミド、ステアリン酸亜鉛、サリチル酸アニリド、N−アセチル−L−グルタミン酸、カプロン酸−β−ナフチルアミド、エナント酸フェニルヒドラジド、アラキン酸−p−クロルフェナシル、ギ酸コレステリル、1−アセト−2,3−ジステアリン、チオラウリン酸−n−ペンタデシル、ステアリン酸塩化物、無水パルミチン酸、ステアリン酸−酢酸無水物、コハク酸、セバシン酸ベンジルアンモニウム塩、2−ブロム吉草酸、α−スルホステアリン酸メチルナトリウム塩、2−フルオルアラキン酸が挙げられる脂肪酸誘導体;
オクタデシルアルコール、コレステリン、D−マンニット、ガラクチトール、ヘプタトリアコンタノール、ヘキサデカン−2−オール、1−trans−2−オクタデセノール、β−エレオステアリルアルコール、シクロエイコサノール、d(+)セロビオース、p,p’−ビフェノール、リボフラビン、4−クロロ−2−メチルフェノール、2−ブロモ−1−インダノールが挙げられるアルコール誘導体;
ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、シチジン、アデノシン、フェノキシ酢酸ナトリウム、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、アルミニウムトリエトキシドが挙げられるエーテル誘導体;
ステアリンアルデヒド、パララウリルアルデヒド、パラステアリンアルデヒド、ナフトアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、フタルアルデヒド、4−ニトロベンズアルデヒドが挙げられるアルデヒド誘導体;
ステアロン、ドコサン−2−オン、フェニルヘプタデシルケトン、シクロノナデカン、ビニルヘプタデシルケトン、4,4−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、ビス(2,4−ペンタンジオナイト)カルシウム、1−クロロアントラキノンが挙げられるケトン誘導体;
トリコシルアミン、ジオクタデシルアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、ヘプタデカメチレンイミン、ナフチルアミン、p−アミノ安息香酸エチル、o−トリチオ尿素、スルファメタジン、硝酸グアニジン、p−クロロアニリン、プロピルアミン塩酸塩が挙げられるアミン誘導体;
ヘキシルアミド、オクタコシルアミド、N−メチルドデシルアミド、N−メチルヘプタコシルアミド、α−シアノアセトアミド、サリチルアミド、ジシアンジアミド、2−ニトロベンズアミド、N−ブロモアセトアミドが挙げられるアミド誘導体;
ペンタデカンニトリル、マルガロニトリル、2−ナフトニトリル、o−ニトロフェノキシ酢酸、3−ブロモベンゾニトリル、3−シアンピリジン、4−シアノフェノールが挙げられるニトリル誘導体;
ヘキサデカン、1−ノナトリアコンテン、trans−n−2−オクタデセン、ヘキサトリアコンチルベンゼン、2−メチルナフタレン、ビセン、塩化シアヌル、1−フルオロノナデカン、1−クロロエイコサン、1−ヨードペンタデカン、1−ブロモヘプタデカン、1,2,4,5−テトラキス(ブロモメチル)ベンゼンが挙げられる炭化水素誘導体;
ペンタデカンチオール、エイコサンチオール、2−ナフタレンチオール、2−メルカプトエチルエーテル、2−ニトロベンゼンスルフェニルクロリドが挙げられるチオール誘導体;
1,3−ジアチン、2,11−ジチア[3,3]パラシクロファン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、4,4−ジピリジルスルフィド、4−メチルメルカプトフェノールが挙げられるスルフィド誘導体が用いられる。これらは単独で用いられてもよく複数混合して用いられてもよい。
【0029】
感熱インキ中に、熱溶融性物質が10〜70重量%含まれていることが好ましい。10重量%未満であると色調変化が不明瞭であり、一方70重量%より多いと固着力が低下し基材への塗布や印刷ができない。
【0030】
不正加熱履歴検知材の変色温度が40〜140℃となるように、融点がその範囲付近である熱溶融性物質を選択すると好ましい。熱軟化性粘着層の熱軟化温度が70〜150℃であるとき、不正加熱履歴検知材の変色温度が40〜70℃となるように熱溶融性物質が選択されると一層好ましい。
【0031】
色素は、感温インキ中に粒状または粉末状で含まれ、熱溶融した熱溶融性物質に分散または溶解することにより拡散するものである。また色素は、熱溶融したこの物質によって色素の粒表面や粉末表面が湿潤されるものであってもよい。色素として、直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散性染料、反応性染料、油溶性染料、バット染料、媒染染料、アゾイック染料、硫化染料の例示される染料、有機顔料や無機顔料の例示される顔料、着色体が挙げられ、広範囲のものが使用できる。これらの色素は、2種以上混合して用いてもよい。
【0032】
この色素は、0.001μm〜5mmの径を有していることが好ましい。感温インキ中、熱溶融性物質の100重量部に対して、この色素は0.001〜100重量部の比で含まれていることが好ましい。
【0033】
色素は、具体的には、C.I.ディレクト・オレンジ39、C.I.ディレクト・ブラウン2、C.I.アシッド・イエロー73、C.I.アシッド・レッド52、C.I.アシッド・バイオレット49、C.I.ベイシック・イエロー11、C.I.ベイシック・レッド38、カチオン・レッドSGLH、カチオン・レッドGTLH、カチオン・レッド4GH、カチオン・レッド7BNH(保土ヶ谷化学社製)、C.I.モルダント・レッド7、C.I.モルダント・ブラック38、C.I.アゾイック・ブルー9、C.I.アゾイック・ジアゾ・コンポーネント11、C.I.サルファー・ブラック1、C.I.サルファー・レッド5、C.I.バット・グリーン9、C.I.バット・バイオレット2、C.I.ディスパース・ブルー3、ディスチャージ・レッドBB(三井東圧染料社製)、C.I.リアクティブ・ブルー19、C.I.リアクティブ・ブルー15、レマゾールBrブルーR−KN(三菱社製)、C.I.ソルベント・オレンジ2、C.I.ソルベント・ブルー25、C.I.アシッド・グリーン1、フラビアニック・アジド・ジソジウム・ソールト、プリムリンスルホン酸が挙げられる染料;
4,10−ジブロムアントアントロン、ジベンゾアントロン、コチニールレーキ、C.I.ピグメント・イエロー1、C.I.ピグメント・レッド38、C.I.ピグメント・ブルー15、C.I.ピグメント・レッド209、C.I.ピグメント・イエロー109、C.I.ピグメント・グリーン10、C.I.ベイシック・レッド1−レーキ、C.I.アシッド・レッド87-レーキ、C.I.ピグメント・ブルー6、C.I.ピグメント・レッド179、C.I.ピグメント・レッド88、アリザリンレーキ、C.I.ピグメント・バイオレット23、C.I.ピグメント・グリーン8、C.I.ピグメント・レッド53、C.I.ピグメント・イエロー23−レーキ、タンニン酸・没食子酸・鉄レーキ、C.I.ピグメント・イエロー34、C.I.ピグメントイエロー35が挙げられる有機顔料;
カオリン、紺青、硫酸ストロンチウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、カーボンブラックが挙げられる無機顔料が用いられる。なお、前記C.I.は、カラー・インデックスの略字である。
【0034】
インキビヒクルは、常温でこの熱溶融性物質とこの色素とを溶解せず拡散させないが、熱溶融して色素の分散または溶解した熱溶融性物質を、拡散することができるものである。インキビヒクルは、例えばフェノール樹脂;ナイロン;エチルセルロース;ヒドロキシセルロース;ポリビニルアルコール;カルボキシメチルセルロース;シリカ系、エポキシ系、アミノ系、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、エーテルアクリレート系、アルキド系、ビニルアセタール系、アクリル系またはアクリルポリエステル系の紫外線硬化樹脂が挙げられる。市販のインキビヒクルであるPAS800メジウム(十条化工社製の商品名)、ハイセットマットメジウム(ミノグループ製の商品名)、ダイキュアAK(大日本インキ化学工業(株)製)、FDSニュー(東洋インキ製造(株)製)、レイキュアTU4400(十条ケミカル(株)製)、UVSPAクリヤー(帝国インキ製造(株)製)、UV8418((株)セイコーアドバンス製)であってもよい。
【0035】
感温インキには、熱溶融性物質と色素とを溶解しないがインキビヒクルを溶解する溶媒が含まれていてもよい。このような溶媒は、例えば水、エタノール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸イソアミル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、ジエチルベンゼン、トルエン、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ミネラルスピリット、さらにUV硬化樹脂を用いた場合には、感光性樹脂のモノマーが挙げられる。
【0036】
さらに、感温インキには、色素を分散させて色調変化が明瞭となるように、タルク、炭酸マグネシウム、シリカの例示される分散剤が含まれていてもよい。感温インキには、色調変化を増幅させるため、直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料、反応性染料、油溶性染料、建築染料、媒染染料、アゾイック染料、硫化染料の例示される染料、有機顔料、無機顔料のいずれかであって、色素の色調と対照色を示す色の助色剤が含まれていてもよい。また、感温インキには、インキの流動性や乾燥性を調整するワックスや界面活性剤が含まれていてもよい。
【0037】
基材は、普通紙、和紙、ケント紙で例示される紙;合成紙;檜材で例示される木材製片;ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂で例示されるプラスチック製片が挙げられる。
【0038】
この基材は、裏面に接着層を有していることが好ましく、カード状、シート状、棒状のようなラベルであってもよい。
【0039】
この基材への感熱インキの印刷は、例えばフレキソ印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、コーター印刷、刷毛塗りにより行われる。
【0040】
この感熱インキを印刷して形成されたインキ層は、透明または半透明のラミネート材で覆われていてもよい。ラミネート材には、例えばポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂の例示されるプラスチック製のフィルム;アクリル樹脂、ナイロン、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シリカの例示されるラミネート用印刷メジウムが挙げられる。
【0041】
インキビヒクルとして紫外線硬化硬化樹脂を用いると、ラミネート材で覆わなくても同等の耐環境性を有するインキ層を得ることができる。
【0042】
この不正加熱履歴検知材が接着されている剥離履歴表示ラベルは、以下のようにして使用される。
【0043】
剥離履歴表示ラベルは、その裏側面上の熱軟化性粘着層を介して、密封されている封筒の封じ目に、貼付される。
【0044】
このとき不正加熱履歴検知材は、粒状または粉末状の熱溶融性物質と粒状または粉末状の色素とが混合状態にあって、色素が熱溶融性物質で隠蔽されている。
【0045】
剥離履歴表示ラベルを不正に加熱すると、熱軟化性粘着層が軟化する。剥離履歴表示ラベルは脆弱部を破損することなく、きれいに剥ぎ取ることができる。
【0046】
不正加熱履歴検知材も同時に加熱され、熱溶融性物質は、その融点以上に加熱されて熱溶融する。熱溶融した熱溶融性物質に色素が分散または溶解して拡散したり、また熱溶融したこの物質で色素の粒状または粉末状の表面が湿潤したりすることにより、不正加熱履歴検知材は、剥離履歴表示ラベルに接着したまま、剥離履歴表示ラベルが不正に加熱されたことを不可逆的に変色して表示している。熱溶融性物質への色素の拡散等が不可逆的であるので、この不正加熱履歴検知材は、変色した後に温度が低下し、熱溶融性物質が凝固しても変色前の色調に戻らない。
【0047】
たとえこの剥離履歴表示ラベルを再び封筒の封じ目に貼付しても、不正に加熱されたことを検知することができる。
【0048】
一方、剥離履歴表示ラベルを室温で剥ぎ取ると、その脆弱部で不均一に破れ、不正に開封されたことを検知することができる。
【0049】
以下、感温インキを用いて本発明を適用する不正加熱履歴検知材を試作し、さらにそれを用いて剥離履歴表示ラベルを試作した例を実施例1に示す。また、本発明を適用外の剥離履歴表示ラベルの例を比較例1に示す。
【0050】
(実施例1)
ベヘン酸100重量部、エチルセルロース20重量部、キシレン200重量部およびC.I.リアクティブ・ブルー19の1重量部の組成物を3日間混練し、感温インキを調製した。裏側面にタックが付された上質紙の表側面に、感温インキを印刷し、数mm径のシール状の不正加熱履歴検知材を作製した。
【0051】
剥がすとマークが残る改ざん防止用剥離証明ラベル(日本ブレイディ株式会社製の商品名)を基材とし、それにこの不正加熱履歴検知材を貼付して、実施例1の剥離履歴表示ラベルの試験片を得た。
【0052】
(比較例1)
改ざん防止用剥離証明ラベル(日本ブレイディ株式会社製;商品名)を、比較例1の剥離履歴表示ラベルの試験片とした。
【0053】
(剥離履歴表示ラベルの評価試験)
実施例1の剥離履歴表示ラベルの試験片を、二つの封筒の封じ目に貼付した。室温で片方の封筒の剥離履歴表示ラベルを基材ごと剥離して、封筒の封じ目を開封したとき、封筒に剥離履歴表示ラベルのマークが残り、剥離履歴が表示された。他方の封筒をドライヤーで90℃に加熱し、剥離履歴表示ラベルを基材ごと剥離して、封筒の封じ目を開封したとき、剥離履歴表示ラベルの基材は破損しなかったが、それに貼付されている不正加熱履歴検知材が白色から青色に変色して、不正な加熱を経た履歴が検知され明瞭に表示された。
【0054】
一方、比較例1の剥離履歴表示ラベルの試験片を、二つの封筒の封じ目に貼付した。前記と同様に、室温で封筒の封じ目を開封したとき、封筒に剥離履歴表示ラベルのマークが残り剥離履歴が表示された。他方の封筒を前記と同様に加熱し、封筒の封じ目を開封したとき、剥離履歴表示ラベルの基材は破損しておらず、また不正な加熱を経た履歴が表示されなかった。これが、再度貼付されると当初と同様な外観のままであり、剥離履歴も不正加熱履歴も経ていないかのように誤認された。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の不正加熱履歴検知材は、種々の剥離履歴表示ラベルに付して、不正な開封の確認やそれの防止に用いることができる。熱溶融性物質を適宜選択することにより、低温から高温まで変色温度を自在に設定することができる。
【0056】
この不正加熱履歴検知材は、色調の変化が不可逆的であり、変色後の色調のまま退色することなく長期間保存できる。
【0057】
本発明の剥離履歴表示ラベルは、密封された機密書類や、包装された電子媒体等の商品の不正な開封を検知するために用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離履歴表示ラベルに付される熱軟化性粘着層への不正な加熱の履歴の検知材であって、該粘着層の熱軟化温度以下の融点を持つ粒状または粉末状の熱溶融性物質と、熱溶融した該物質への分散または溶解による拡散性がある粒状または粉末状の色素と、熱溶融した該物質の拡散性があるインキビヒクルとを含んでいる感温インキ層が、基材上に塗布されていることを特徴とする不正加熱履歴検知材。
【請求項2】
前記基材が、熱非剥離性接着層を有していることを特徴とする請求項1に記載の不正加熱履歴検知材。
【請求項3】
剥離履歴表示ラベル基材に、それの剥離により破断する脆弱部若しくは不可逆的に転写させる着色層、ホログラム、蛍光インキ層、識別記号の少なくともいずれかと、請求項1に記載の不正加熱履歴検知材とが、付されていることを特徴とする剥離履歴表示ラベル。

【公開番号】特開2006−276722(P2006−276722A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98822(P2005−98822)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000232922)日油技研工業株式会社 (67)
【Fターム(参考)】