説明

不死化フィーダー細胞

本発明は、不死化フィーダー細胞株に関する。不死化フィーダー細胞株は、胚性線維芽細胞から得ることができ、これはマウス胚性線維芽細胞であり得る。好適な培地中の本発明による不死化フィーダー細胞株の培養物、好適な担体又は希釈剤中に本発明による不死化フィーダー細胞株を含む組成物、及び本発明による不死化フィーダー細胞株の増殖により生じた条件培地も提供される。更に、本発明は、本発明による細胞株又は条件培地の使用を含む幹細胞の培養方法、及びそうして産生された細胞を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不死化フィーダー細胞株、その培地、並びに幹細胞、特にヒト胚性幹細胞の培養におけるこれらの細胞及び培地の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
着床前胚の内細胞塊からのヒト胚性幹細胞(hESC)の単離が成功したため、今では、未分化hESCをin vitroで無制限に培養し、それにより再生治療に使用すべき3つの胚性胚葉から細胞へ分化することができる材料の出発供給源を潜在的に提供することが可能である[1]。従来は、hESCは共培養物としてフィーダー層上に直接維持され、これらのフィーダーはマウス又はヒトの供給源から得ていた[2〜7]。つい最近では、hESCは無フィーダー条件下でうまく培養されている。ここでは、細胞をマトリゲルのような細胞外マトリックス上で増殖させ、フィーダー層由来の条件培地(CM)を添加する[8、9]。供給源にかかわらず、フィーダーは初代組織に由来するため、培養では寿命が限られている。例えば、初代フィーダーはおよそ7〜9継代しか培養できずに細胞が老化する。したがって、新鮮なフィーダーのバッチを定期的に調製する必要があり、これはバッチ間変動をもたらし得る。更に、フィーダーからhESCへ病原菌が伝達され得るという懸念もある。
【0003】
hESCを培養するため、特にスケールアップするための、持続可能で有効な、一貫したフィーダーの供給源を得るための可能な解決策の1つは、初代フィーダーの不死化である。不死化にはこれまでにいくつかの方法が用いられており、それらにはシミアンウイルス40(SV40)、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)、及びヒトパピローマウイルス(HPV)などのDNA腫瘍ウイルス由来の遺伝子による正常細胞の形質導入が含まれる[10〜14]。つい最近では、いくつかのグループが、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素hTERTの過剰発現も、体細胞又は分化細胞の寿命を延長できることを報告している[15、16]。
【非特許文献1】Thomson JA、Itskovitz−Eldor J、Shapiro SSら、ヒト胚盤胞由来胚性幹細胞株。Science 1998;282:1145−1147.
【非特許文献2】Richards M、Fong CY、Chan WKら、ヒトフィーダーはヒト内細胞塊及び胚性幹細胞の長期未分化増殖を支持する。Nat Biotechnol 2002;20:933−936.
【非特許文献3】Reubinoff BE、Pera MF、Fong CYら、ヒト胚盤胞由来胚性幹細胞株:in vitro体細胞分化。Nat Biotechnol 2000;18:399−404.
【非特許文献4】Choo AB、Padmanabhan J、Chin ACら、多能性ヒト胚性幹細胞のヒトフィーダー上での増殖。Biotechnol Bioeng 2004;88:321−331.
【非特許文献5】Amit M、Margulets V、Segev Hら、ヒト胚性幹細胞のためのヒトフィーダー層。Biol Reprod 2003;68:2150−2156.
【非特許文献6】Richards M、Tan S、Fong CYら、ヒト胚性幹細胞の長期未分化増殖のための各種ヒトフィーダーに関する比較評価。Stem Cells 2003;21:546−556.
【非特許文献7】Hovatta O、Mikkola M、Gertow Kら、ヒト包皮線維芽細胞をフィーダー細胞として用いる培養系はヒト胚性幹細胞の産生を可能にする。Hum Reprod 2003;18:1404−1409.
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【非特許文献9】Xu C、Inokuma MS、Denham Jら、未分化ヒト胚性幹細胞の無フィーダー増殖。Nat Biotechnol 2001;19:971−974.
【非特許文献10】Bryan TM、Reddel RR、SV40誘導性のヒト細胞の不死化。Crit Rev Oncog 1994;5:331−357.
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【非特許文献12】Jha KK、Banga S、Palejwala Vら、SV40介在性の不死化。Exp Cell Res 1998;245:1−7.
【非特許文献13】Sugimoto M、Ide T、Goto Mら、エプスタイン・バー・ウイルスで形質転換したヒトBリンパ芽細胞株の老化、不死化、及びテロメア維持に関する再考。Mech Ageing Dev 1999;107:51−60.
【非特許文献14】Yamamoto A、Kumakura S、Uchida Mら、ヒトパピローマウイルス16型のE6遺伝子又はE7遺伝子の単独導入による正常ヒト胚線維芽細胞の不死化、Int J Cancer 2003;106:301−309.
【非特許文献15】Bodnar AG、Ouellette M、Frolkis Mら、正常ヒト細胞へのテロメラーゼ導入による寿命延長。Science 1998;279:349−352.
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【非特許文献21】Robertson El編、『奇形癌腫と胚性幹細胞』、オックスフォード:IRL出版、Robertson,E.J.、胚由来幹細胞株。1987:71−112.
【非特許文献22】Wazer DE、Liu XL、Chu Qら、ヒトパピローマウイルス16型のE6又はE7による異なるヒト乳房上皮細胞種の不死化。Proc Natl Acad Sci USA 1995;92:3687−3691.
【非特許文献23】Cowan CA、Klimanskaya I、McMahon Iら、ヒト胚盤胞由来胚性幹細胞株の派生。N Engl J Med 2004;350:1353−1356.
【非特許文献24】Yeager TR、Reddel RR、不死化ヒト細胞株の構築。Curr Opin Biotechnol 1999;10:465−469.
【非特許文献25】Murvai M、Borbely AA、Konya Iら、ヒトパピローマウイルス16型のE6及びE7がん遺伝子のトランスフォーミング成長因子−β2(TGF−β2)プロモーター活性に対する効果。Arch Virol 2004;149:2379−2392.
【非特許文献26】Nees M、Geoghegan JM、Munson Pら、ヒトパピローマウイルス16型のE6及びE7タンパク質は頚部ケラチノサイトにおいてトランスフォーミング成長因子−β2の分化依存性発現を阻害する。Cancer Res 2000;60:4289−4298.
【非特許文献27】Dey A、Atcha IA、Bagchi S、HPV16のE6発癌タンパク質は線維芽細胞においてGCに富んだ特異配列を介してトランスフォーミング成長因子−β1プロモーターを刺激する。Virology 1997;228:190−199.
【発明の開示】
【0004】
発明の説明
第1の側面では、本発明は、不死化フィーダー細胞株を提供する。特に、本発明は、胚線維芽細胞由来の不死化フィーダー細胞株を提供する。より詳細には、不死化フィーダー細胞株はマウス胚線維芽細胞に由来する。より詳細には、不死化フィーダー細胞株は、p53腫瘍抑制タンパク質の分解、c−myc発現の増加、テロメラーゼの活性化、及びpRbの分解のうちの1つ以上によってマウス胚線維芽細胞から得る。より詳細には、不死化フィーダー細胞株は、HPV16由来のE6遺伝子及びE7遺伝子の導入によって胚線維芽細胞から得る。E6遺伝子及びE7遺伝子は形質導入によって導入されることが好ましい。胚線維芽細胞にHPV16由来のE6遺伝子及びE7遺伝子をコードするレトロウイルスベクターを感染させることが好ましい。大半の細胞は正常な寿命を越えて増殖し続け、レトロウイルスによる感染後のG418による抗生物質選択に耐性であることが好ましい。細胞株は不死化後腫瘍原性にならないことが好ましい。in vivoでSCIDへ細胞を筋肉注射しても蝕知可能な腫瘍を注射後16週目であっても生じないことが好ましい。
【0005】
本発明の細胞株は、7、8、又は9継代を越えて増殖する。本発明の好ましい細胞株は、in vitroで70継代を越えて増殖し、腫瘍原性の表現型を獲得しない。本発明の細胞株は、特徴的な未分化形態を共培養物においてもCM添加無フィーダー培養物においても>40継代維持し続け;多能性マーカーOct−4、SSEA−4、Tra−1−60、Tra−1−81、アルカリホスファターゼを発現し続け;正常な核型を維持し;そしてSCIDマウスに注射すると3つの胚性胚葉に代表的な組織を有する奇形腫を形成するhESCを支持する。
【0006】
本発明の細胞株は、未分化hESCの増殖を支持する。hESC株はこれらのフィーダーに容易に適応し、フィーダー培養物においても無フィーダー培養物においても未分化hESC培養物の典型的な形態を維持する。hESCは、Oct−4、SSEA−4、Tra−1−60、Tra−1−81、及びアルカリホスファターゼを含めた多能性マーカーも発現し続ける。25継代後、細胞は安定な核型を保持し、SCIDマウスにおいて分化して奇形腫を形成できることが好ましい。好ましくは、hESC無フィーダー培養物のmRNAのRT−PCR解析により、細胞はOct−4に対して陽性のままであるがE6抗原及びE7抗原に対して陰性であることを確認する。
【0007】
本発明は、E6抗原及びE7抗原の過剰発現により不死化した初代MEFを提供する。好ましい態様では、細胞株は本明細書に記載のΔE−MEFである。細胞株ΔE−MEFを、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の規定に基づくアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションに寄託した。2005年5月9日に寄託し、受託番号PTA−6705が付された。
【0008】
また、本発明は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションに受託番号PTA−6705で寄託した不死化フィーダー細胞株を提供する。
更に、本発明は、好適な培地中の第1の側面の不死化フィーダー細胞株の培養物、及び好適な担体又は希釈剤中に第1の側面の不死化フィーダー細胞株を含む組成物を提供する。
【0009】
第2の側面では、本発明は、第1の側面の不死化フィーダー細胞株の増殖から生ずる条件培地を提供する。
条件培地はマトリゲルのような細胞外マトリックスとともに用いてもよい。
【0010】
第3の側面では、本発明は、第1の側面の細胞株のフィーダー細胞としての使用を含む、幹細胞の培養方法を提供する。好ましくは、幹細胞はヒト幹細胞である。より好ましくは、幹細胞はヒト胚性幹細胞である。
【0011】
第4の側面では、本発明は、第2の側面の条件培地の使用を含む、幹細胞の培養方法を提供する。好ましくは、幹細胞はヒト幹細胞である。より好ましくは、幹細胞はヒト胚性幹細胞である。
【0012】
第3及び第4の側面の方法には、セルファクトリーのような培養容器中でスケールアップした量の未分化hESCが含まれる。スケールアップした量は>10細胞であり得る。
【0013】
第5の側面では、本発明は、本発明の第3又は第4の側面の方法によって培養される幹細胞を提供する。好ましくは、幹細胞はヒト幹細胞である。より好ましくは、幹細胞はヒト胚性幹細胞である。
【0014】
ヒト胚性幹細胞(hESC)は、培養で無制限に増殖する可能性を有し、広範な細胞への分化能を依然として保持する多能性細胞である。しかしながら、hESC培養物は、直接接触するフィーダーかフィーダー由来の条件培地(CM)を必要とする。最も一般的なフィーダーの供給源は、初代マウス胚線維芽細胞(MEF)である。
【0015】
本研究では、初代MEFの増殖能を、in vitroでHPV16由来のE6遺伝子及びE7遺伝子をコードするレトロウイルスベクターで感染後その正常な寿命を越えて延長できるかどうか調査した。E6タンパク質の過剰発現は、p53腫瘍抑制タンパク質の分解とともに、c−myc発現の増加及びテロメラーゼの活性化を引き起こす[17]。一方、発現したE7タンパク質は網膜芽細胞腫タンパク質pRbに結合し、pRbの分解をもたらす[18]。E6及びE7の発現により、正常ヒト線維芽細胞、乳房上皮細胞、及び包皮ケラチノサイトを効率的に不死化できることが以前に示されている[11、19、20]。本研究において、E6抗原及びE7抗原の過剰発現により初代MEFをうまく不死化させた。不死化MEFであるΔE−MEFは、in vitroで70継代を越えて増殖し続け、腫瘍原性の表現型を獲得する細胞は生じなかった。更に、初代MEF上で先に増殖させた3つのhESC株は、フィーダー条件又は無フィーダー条件でもΔE−MEFに容易に適応した。
【0016】
形態学的にhESCは未分化のままであり、多能性に特徴的な細胞内マーカー及び細胞外マーカーをともに発現し続けた。hESC培養物は正常な核型も保持し、SCIDマウスモデルにおいて奇形腫を形成した。
【0017】
本研究では、HPV16由来のE6遺伝子及びE7遺伝子をコードするレトロウイルスベクターを感染させることにより初代MEF株を不死化させた。初代細胞は老化するが、不死化株ΔE−MEFは7〜9継代を越えて増殖でき、寿命が70継代を越えて延長する。hESC増殖支持能を試験したところ、ΔE−MEFとの共培養物においてもΔE−MEF由来CMを添加した無フィーダー培養物においてもhESCは特徴的な未分化形態を>40継代維持し続けることがわかった。培養物は、多能性マーカーOct−4、SSEA−4、Tra−1−60、Tra−1−81、アルカリホスファターゼも発現し続け、正常な核型を維持する。更に、これらのhESCはSCIDマウスに注射すると3つの胚性胚葉に代表的な組織を有する奇形腫を形成した。最後に、顕著な量の未分化hESC(>10細胞)をセルファクトリーのような培養容器内でΔE−MEFを用いてスケールアップ可能であることも実証した。この研究の結果は、不死化フィーダーが、hESCの増殖及び研究のためのフィーダーの一貫した再現性のある供給源を提供することができ、したがって、初代フィーダーよりも有益であることを示唆している。
【0018】
形態学的にhESCは未分化のままであり、多能性に特徴的な細胞内マーカーと細胞外マーカーをともに発現し続けた。hESC培養物は正常な核型も保持し、SCIDマウスモデルにおいて奇形腫を形成した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
材料及び方法
細胞培養
ヒト胚性幹細胞株HES−2(46X,X)、HES−3(46X,X)、及びHES−4(46X,Y)をES Cell Internationalから入手した。細胞を、ゼラチンコーティングされた器官培養シャーレ内にてマイトマイシンCで不活化したフィーダー(〜4×10細胞/cm)上で(共培養物)、又はフィーダー由来CMを添加したマトリゲルコーティングされた器官培養シャーレ内で(無フィーダー培養物)、37℃/5%COにて培養した。hESCの培養に用いる培地は、15%KO血清代替物、1mM L−グルタミン、1%非必須アミノ酸、及び0.1mM 2−メルカプトエタノール、及び4〜8ng/mlの塩基性線維芽細胞成長因子(インビトロジェン)を添加した85%KO−DMEMを含有するノックアウト(KO)培地である。培地を毎日交換し、先に記載されたように培養物を毎週、酵素処理の後で継代した[4]。無フィーダー培養物の培養シャーレを、冷KO−DMEMで希釈した(1:30希釈)マトリゲル(ベクトン・ディッキンソン)とともに40℃で一晩インキュベーションした。
【0020】
MEF及びMEF条件培地(CM)の調製
初代MEFをRobertsonら[21]に記載の方法を用いて129X1/SvJマウス(交尾後13.5日目)の胎児から単離した。単層の初代MEF(継代4)をコンフルエントになるまで培養し、10μg/mlマイトマイシンCで2.5〜3時間処理した。処理後、0.25%トリプシン−EDTAで細胞を剥がし、F−DMEM培地の入った器官培養シャーレ上に上記のように蒔いた。この培地は、90%DMEM高グルコース、10%FBS、2mM L−グルタミン、25U/mlペニシリン、及び25μg/mlストレプトマイシン(インビトロジェン)から成る。播種後24時間に培地をKO培地に交換し、hESC又はMEF−CMの回収物を添加する前に更に24時間平衡化させた。MEF−CMについては、培養シャーレに1.4×10細胞/cmのマイトマイシンCで処理したMEFを蒔き、KO培地をシャーレに添加した後、CMを24時間毎に回収した。CMをろ過し(0.22μm)、更に8ng/mlの組換えヒト塩基性線維芽細胞成長因子(インビトロジェン)を添加した。
【0021】
不死化フィーダー株ΔE−MEFの確立
継代3の初代MEF(3×10細胞)を75cmのTフラスコに蒔き、F−DMEM培地中で一晩接着させた。次に細胞に、PA317 LXSN HPV16E6E7又はPA317 PXSVパッケージング細胞株(それぞれCRL−2203及びCRL−2202、ATCC)由来のレトロウイルスを含有する滅菌ろ過した上清を8μg/mlのポリブレン(シグマアルドリッチ)存在下で37℃にて8時間形質導入した[22]。その後、ウイルス含有培地を除去し、新鮮なF−DMEMに交換して更に3日間インキュベーションした。次に形質導入細胞を100μg/mlのG418(シグアルドリッチ)存在下で14日間選択した。確立したフィーダー株ΔE−MEFは抗生物質不含F−DMEM培地中で日常的に培養し、ストックは90%FBS及び10%DMSO中で凍結保存した。
【0022】
増殖速度及び倍加時間
0.25%トリプシン−EDTA(インビトロジェン)で処理後、MEF及びhESCの単一細胞懸濁液を毎日回収した(植菌後1〜6日)。トリパンブルー色素排除法を用いて各サンプルについて生存細胞数及び生存率を測定した。生存細胞数対時間のグラフをプロットして指数関数的増殖相における細胞の比増殖速度を概算した。これから、以下の等式:td=ln(2)/μ(式中、μは比増殖速度(hr−1)である)を用いて倍加時間(td)を計算した。
【0023】
Oct−4発現のフローサイトメトリー解析
hESC集団における細胞内転写因子Oct−4の発現レベルを、フローサイトメトリーを用いた免疫蛍光法にて評価した。細胞をトリプシンを用いて単一細胞懸濁液として回収し、固定し、透過性にし(カルタグラボラトリーズ)、1:20希釈した抗Oct−4マウスモノクローナル抗体(サンタクルーズ)とともにインキュベーションした。次に細胞を1%BSA/PBSで洗浄し、1:500希釈したFITC結合ヤギ抗マウス抗体(DAKO)とともに暗所にてインキュベーションした。インキュベーション後、細胞を再度洗浄し、FACScan(ベクトン・ディッキンソン、FACS Calibur)による解析のため1%BSA/PBSに再懸濁させた。全てのインキュベーションは室温で15分間行った。陰性対照として、細胞を適切なアイソタイプ対照で染色した。
【0024】
免疫細胞化学
細胞を4%パラホルムアルデヒドで室温にて45分間固定し、SSEA−4(原液、Developmental Studies Hybridoma Bank)、Tra−1−60及びTra−1−81(30μg/ml、ケミコン)に対する抗体とともに室温で1時間インキュベーションした。抗体の局在をFITC結合ヤギ抗マウス抗体(1:500希釈;DAKO)を用いて可視化した。
【0025】
アルカリホスファターゼ染色
ベクターレッドアルカリホスファターゼ基質キットI(ベクターラボラトリーズ)を用いて、製造者のプロトコールにしたがいアルカリホスファターゼ染色を行った。簡潔には、hESCをPBSで1回洗浄後、ベクターレッド基質作用液とともに暗所で45分間室温にてインキュベーションした。ローダミン励起フィルターと発光フィルターを用いて反応産物を可視化した。
【0026】
RNAの単離と逆転写PCR(RT−PCR)
Macherey Nagel製NucleoSpin RNAIIキットを用いてhESC及びMEFから全RNAを単離し、紫外線分光光度法にて定量した。オリゴdTプライマー及びImProm II逆転写酵素(プロメガ)を用いて、1μgの全RNAについて標準の逆転写反応を行った。Oct−4、β−アクチン、HPV−16 E6、及びHPV−16 E7に特異的なプライマーを用いてPCRを行った(表1)。増幅に用いたサイクリングパラメータは、95℃で1分間、55℃で1分間、及び72℃で1分間を30サイクルである。この後に72℃で10分間の最終伸長が続いた。増殖産物を1%アガロースゲル上で可視化し、エチジウムブロマイドで染色した。
【0027】
SCIDマウスモデル
ΔMEF及びhESCを酵素処理し、およそ4〜5×10細胞を滅菌22G針で4週齢雄性SCIDマウスの後肢筋肉に注射した。腫瘍を発症した動物(注射後およそ9〜10週)を屠殺し、腫瘍を切開し、10%ホルマリンで固定した。腫瘍をパラフィンに包埋し、切片を作製し、ヘマトキシリン・エオシン染色後、組織学的に試験した。
【0028】
核型分析
NUS又はKK女性及び小児病院の産婦人科の細胞遺伝学実験室で核型分析を行った。
hESC共培養物のスケールアップ
hESC量をスケールアップするため、共培養物を組織培養フラスコ(T75、75cm)、トリプルフラスコ(TF、500cm)、及びセルファクトリー(CF、632cm)(Nunc)で増殖させた。用いた培養条件は上記と同様であった。全ての表面に対し、マイトマイシンC不活化フィーダーをゼラチンコーティングした培養表面におよそ4×10細胞/cmで蒔いた。継代のため、細胞をリン酸緩衝食塩水+(PBS+)で洗浄し、次いで0.05%トリプシン(インビトロジェン)とともに室温で2〜3分間インキュベーションした。細胞をフラスコからタッピングにより剥がし、ピペッティングを穏やかに繰り返すことによってより小さな塊まで更に分離させた。その後、トリプシンを中和し、不活化フィーダーを蒔いた新たなゼラチンコーティングフラスコへ細胞塊を1:3の比で播種した。
【0029】
結果
不死化MEFの確立と特徴付け
継代3の初代MEFにHPV16−E6、HPV16−E7、及びネオマイシン耐性を同時にコードするレトロウイルスを感染させた(ΔE−MEF)。陰性対照として、ネオマイシン耐性のみを含有する対照レトロウイルスを細胞に感染させた(ΔC−MEF)。感染後4継代目に(感染後およそ12日、P7)、ΔE−MEFは19.7時間の適切な倍加時間で増殖し続けた(図1a)。更に、ΔE−MEFの増殖速度及び倍加時間は継代4の初代MEFに匹敵するものであった(表2)。対照的に、継代7の対照ウイルス感染細胞(ΔC−MEF)は、同一の6日間にわたって生存細胞数が顕著に増加しなかったため老化の徴候を示した(図1a)。45継代後(165集団倍加)、ΔE−MEFは、継代7に匹敵する類似の成長速度を維持し続け(図1a)、現在のところ70継代を越えて増殖能が低下することなく培養されている(データは示していない)。継代7のΔE−MEF及びΔC−MEFからRNAを単離し、レトロウイルス感染の結果として導入されたE6遺伝子及びE7遺伝子の発現に関し、RT−PCRで試験した。図1bから、ΔE−MEFはE6遺伝子及びE7遺伝子のmRNAを発現した(それぞれレーン2及び4)が、細胞に対照ウイルスを感染させたΔC−MEFでは発現が全く見られない(レーン1及び3)ことが明らかとなった。
【0030】
ΔE−MEFが、E6及びE7による不死化の後、腫瘍形成可能であるかどうか決定するために、5×10細胞をSCIDマウスに注射した。動物を定期的に試験したところ、蝕知可能な腫瘍は細胞の注射後16週目であっても全く見られなかった(データは示していない)。
【0031】
不死化MEFを用いたフィーダー条件及び無フィーダー条件におけるhESCの増殖及び形態
初代MEF上で直接(共培養物)又は初代MEF培養物由来条件培地を添加したマトリゲル上で(無フィーダー)ヒトES細胞株HES−3を日常的に培養した。不死化MEF株ΔE−MEFがhESCの未分化増殖を支持可能かどうか評価するために、代わりにΔE−MEFを用いてHES−3細胞をそれぞれの条件で蒔いた。
【0032】
共培養物の場合、ΔE−MEF上に蒔いたHES−3細胞塊は、フィーダーを脇へ押しやりながら増殖し、コロニーを形成した。これは、コロニー周辺の線維芽細胞の非常に目立つ境界をコロニーにもたらした(図2a及び2c)。形態学的に、コロニー内のhESCは密に集団化したままであり、高い核対細胞質比を維持した(図2e)。無フィーダー培養物の場合、フィーダーがないにもかかわらず、ΔE−MEF条件培地を添加されたマトリゲル上のhESCは、フィーダー上で培養されたhESCと同様の目立つ小型コロニーを形成し続けた(図2b及び2d)。興味深いことに、未分化コロニーの境界周返に分化した線維芽細胞様細胞が観察されたが、これらの細胞の密度はhESCと比較して顕著に少なかった(図2d)。フィーダー条件及び無フィーダー条件では、HES−3細胞は未分化hESCの形態を40連続継代(210集団倍加、PD)より長く維持し続けた。更に2つのhESC株HES−2及びHES−4についてもフィーダー培養物及び無フィーダー培養物において類似の形態が10継代より長く観察された(データは示していない)。更に、これら2つの培養条件におけるHES−3細胞の比増殖速度及び倍加時間は同程度のものであり(表2)、既刊文献に相当した[4、23]。
【0033】
未分化hESCに特有のマーカーの特徴付け
未分化hESCは、細胞内転写因子Oct−4、及びSSEA−4、Tra−1−60、Tra−1−81などの表面マーカーのような一連のマーカーの発現を特徴とする。フローサイトメトリーを用いて、3つのhESC株全てにおいて、フィーダー条件及び無フィーダー条件におけるOct−4の発現を比較した(図3)。初代MEF上で培養されたHES−3細胞と同様に(図3a)、ΔE−MEF上で培養されたHES−2、HES−3、及びHES−4細胞の>88%はOct−4に対して陽性に染色された(それぞれ図3c、3b、及び3d)。同様に、ΔE−MEF由来CMを添加して無フィーダー条件で維持したところ、>97%の細胞(3つのhESC株全て)はOct−4に対して陽性であった(図3e〜3g)。更に、ΔE−MEF(図4、上部パネル)又はΔE−MEF CM(図4、下部パネル)上で培養されたHES−3細胞は、SSEA−4(図4a、4e)、Tra−1−60(図4b、4f)、Tra−1−81(図4c、4g)に対して陽性に染色され、アルカリホスファターゼ活性が高かった(図4d、4h)。
【0034】
分化した組織をin vivoで形成する可能性を評価するために、ΔE−MEFを用いてフィーダー培養物又は無フィーダー培養物上で維持したHES−3細胞をSCIDマウスへ注射した。注射後10週目に、全ての条件で奇形腫が観察された。腫瘍から切片を作製し、組織学的に試験した。切片から、消化管様上皮(内肺葉、図5a)、神経上皮(外胚葉、図5b)、筋肉、軟骨、及び骨(中胚葉、図5c〜5e)を含めた3つの胚性胚葉に代表的な組織が同定された。更に、少なくとも25連続継代(130PD)後、フィーダー細胞集団及び無フィーダー細胞集団に由来するHES−3細胞について細胞遺伝学的試験を行った(それぞれ図6a及び6b)。解析の結果は、HES−3細胞がいずれの培養条件下においても正常な核型(46X,X)を維持し続けたことを示した。
【0035】
最後に、レトロウイルスを用いて初代MEFを不死化したため、hESCをE6抗原及びE7抗原で感染させ得るウイルスがΔE−MEFによって産生されていないことを立証することが重要であった。RT−PCRは40継代後のHES−3無フィーダー培養物においてE6抗原及びE7抗原の発現を検出しなかった(図7b)。代わりに、Oct−4の発現が検出され、hESCが未分化のままであることを確認した。対照として、ΔE−MEFについてもRT−PCRを行った(図7a)。ここで、フィーダーによるE6抗原及びF7抗原の発現は検出されたが、Oct−4は検出されなかった。
【0036】
ΔE−MEFを用いたHES−3共培養物のスケールアップ
ΔE−MEFが未分化hESCのスケールアップに使用できることを実証するために、共培養物を器官培養シャーレから組織培養フラスコへ増殖させた。次に組織培養フラスコの細胞を、トリプルフラスコ及びセルファクトリーへのhESCの増殖のための播種材料として用いた。表3から、これらの大きな培養容器において7日後に得た総細胞収率は、およそ2〜3×10細胞であった。器官培養シャーレと比較してトリプルフラスコ及びセルファクトリーの表面積がそれぞれ208倍及び263倍に増加したにもかかわらず、細胞密度はおよそ0.37〜0.47×10細胞/cmに維持されたことも明らかとなった。更に、トリプルフラスコ及びセルファクトリー内の89%〜96%の増殖hESC集団はOct−4に対して陽性に染色され続けた(それぞれ図8a及び8b)。総合すると、これらの結果は、未分化hESCをΔE−MEF共培養物上で顕著な量まで増殖可能であることを示唆している。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
考察
フィーダー細胞は、hESCの培養において必須成分である。マウス胚性幹細胞とは異なり、hESCは、フィーダーに直接接触する共培養物としても、フィーダー−CMを添加した無フィーダー培養物においても増殖する。これらの条件下では、hESCは未分化表現型を維持し続ける。しかしながら、hESCの研究に近年用いられたフィーダーは、マウス又はヒトの供給源の初代組織に由来することが主要な限界である。正常体細胞のように、培養におけるそれらの寿命は限られており、有限数の複製後に老化するであろう。HPV16 E6抗原及びE7抗原による初代細胞の形質導入は、ヒト線維芽細胞の寿命を200集団倍加を越えて延長させることを示している[19]。
【0041】
本研究では、HPV16 E6及びE7の感染により、初代MEFの寿命を7〜9継代から70継代(250集団倍加)を越えて延長させることができることを実証した。E6抗原及びE7抗原の発現をRT−PCRで確認した。SV40、E6/E7などの遺伝子を用いて不死化させた細胞は、大部分の細胞が老化する危機段階に入ることが先に報告されている。この集団から、分裂し続ける細胞は不死化細胞株を形成し続ける[24]。興味深いことに、これは、ΔE−MEFでは観察されなかった。大半の細胞は正常な寿命を越えて増殖し続け、レトロウイルス感染後のG418による抗生物質選択に耐性であった。in vivoでSCIDへΔE−MEFを筋肉注射しても、注射後16週目であっても蝕知可能な腫瘍を生じなかった。これは、ΔE−MEFが不死化後も腫瘍原性になっていないことを裏付けている。対照的に、等量のhESCを注射すると、注射後9〜10週目におよそ直径1〜2cmの奇形腫を形成した。
【0042】
細胞を不死化させるためにE6抗原及びE7抗原を使用することの主な懸念は、不死化はp53及び網膜芽細胞腫タンパク質の分解により達成できるが、E6及びE7は不死化細胞の他の経路や細胞機能にも影響を及ぼし得ることが報告されていることである。Murvaiら[25]は、HPV16 E7もトランスフォーミング成長因子−β2(TGF−β2)プロモーターの活性をNIH/3T3細胞において抑制したことを観察した。ヒトケラチノサイトでは、E6及びE7の過剰発現により、TGF−β2のmRNAの発現と生物学的に活性なTGF−β2の分泌が低下した[26]。一方、HPV16 E6はTGF−β1プロモーターの活性を6倍まで顕著に誘導したが、この効果は細胞種特異的であり、線維芽細胞でのみ観察されたが上皮細胞では観察されなかった[27]。
【0043】
本研究の状況では、E6とE7による不死化はΔE−MEFによる未分化hESCの増殖支持能を変化させない。3つのhESC株はこれらのフィーダーに容易に適応し、未分化hESC培養物の典型的な形態をフィーダー培養物においても無フィーダー培養物においても維持したことを観察した。hESCもOct−4、SSEA−4、Tra−1−60、Tra−1−81、及びアルカリホスファターゼを含めた多能性マーカーを発現し続けた。25継代後、細胞は安定な核型を保持し、SCIDマウスにおいて分化して奇形腫を形成できた。更に、HES−3無フィーダー培養物のmRNAのRT−PCR解析により、細胞はOct−4に対して陽性のままであるが、E6抗原及びE7抗原に対して陰性であることを確認した。後者の結果は、ΔE−MEFはhESCとともに使用しても安全であり、これらの抗原がフィーダーからhESCへ伝達される危険性がないことが証明されたため特筆すべきものである。顕著な量の未分化hESCを産生する試みでは、セルファクトリーのような大きな培養容器(およそ2〜3×10細胞)におけるHES−3細胞の共培養物のスケールアップがΔE−MEFを用いて実現可能であることを実証した。器官培養シャーレと比較して表面積が208〜263倍に増加したにもかかわらず、培養7日後も細胞の質を落とすことなく同程度hESC密度を得ることが可能であった。
【0044】
つい最近では、本発明者らは、本明細書に記載の方法を用いて、hESC増殖を支持することを以前に示した[4]3つのヒト包皮線維芽細胞(hF)株もうまく不死化させている。ΔE−MEFのように、不死化hF株ΔE−Hs68は、未分化HES−3細胞の増殖支持能をフィーダー共培養物(>26継代)においても無フィーダー培養物(>16継代)においても保持した。初代Hs68共培養物上のHES−3細胞の33.3時間と比較して、HES−3細胞の倍加時間はそれぞれ34.5時間及び36.4時間であった。hESCもOct−4、GCTM−2、SOX−2、SSEA−4、Tra−1−60、及びTra−1−81に対して陽性に染色され続けた(結果は示していない)。
【0045】
結論として、これらの結果は、E6及びE7を用いて細胞を不死化することはマウスフィーダーにもヒトフィーダーにも適用できる包括的戦略であることを示唆している。フィーダーの正常寿命を越える増殖能と、それにもかかわらずhESC増殖支持能を保持することは、初代フィーダーを頻繁に調製する必要性を排除するため有益である。この一貫したフィーダー供給源は、フィーダー条件においても無フィーダー条件においても、結果、特にhESCのスケールアップの再現性を容易にし、フィーダーの質のバッチ間変動に関連する問題も軽減させるであろう。更に、これらの不死化フィーダー細胞株をスクリーニングして、フィーダーからhESCへ移動し得る潜在的病原菌がないことを確実にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1a】初代MEFの不死化。(a):E6/E7を発現するレトロウイルスを感染させたMEF(ΔE−MEF)の継代7(□)及び継代45(△)の増殖曲線、又は対照レトロウイルスを感染させたMEF(ΔC−MEF)の継代7(■)の増殖曲線。培養サンプルを毎日回収し、トリパンブルー色素排除法により細胞数を測定した。
【図1b】初代MEFの不死化。(b):E6/E7感染細胞(ΔE−MEF、レーン2及び4)及び対照ウイルス感染細胞(ΔC−MEF、レーン1及び3)におけるHPV−E6遺伝子及びHPV−E7遺伝子の発現に関するRT−PCR解析。増殖産物を1%アガロースゲルで分離した。MW100bp DNAラダー(プロメガ)。
【図2】ΔE−MEF上で直接(左パネル)又はΔE−MEF由来条件培地を添加したマトリゲル上で(右パネル)培養したhESC株HES−3細胞の形態。実体顕微鏡を用いて40倍の拡大率(a及びb、スケールバー=400μm)、並びに位相差顕微鏡を用いて40倍(c及びd、スケールバー=300μm)及び100倍(e、スケールバー=100μm)の拡大率で撮影したコロニーの代表的画像。
【図3】フィーダー培養物(a〜d)又は無フィーダー培養物(e〜g)上のhESC株における細胞内Oct−4のフローサイトメトリー解析。hESCの単一細胞懸濁液を固定し、透過性にし、抗Oct−4モノクローナル抗体で染色した。FITC結合抗マウス抗体で標識細胞を検出した。網掛けヒストグラムは陰性対照染色を表し、オープンヒストグラムはOct−4モノクローナル抗体染色を表す。
【図4】ΔE−MEFと共培養した(上部パネル)又はΔE−MEF由来CMと培養した(下部パネル)HES−3上の細胞表面マーカーの発現。SSEA−4(a、e)、Tra−1−60(b、f)、Tra−1−81(c、g)、及びアルカリホスファターゼ(d、h)を有する細胞を染色。SSEA−4及びTra−1−60/81については、その後コロニーをPE結合2次抗体で染色した。APの場合、陽性の活性はローダミンフィルターにより蛍光を発する赤い沈殿物を特徴とした。スケールバー=100μm。
【図5】ΔE−MEF由来CMを添加した無フィーダー条件下で14継代(70PD)培養した、HES−3細胞由来の奇形腫の切片。消化管様上皮(a)、神経上皮(b)、筋肉(c)、軟骨(d)、及び骨(e)。スケールバー=20μm。
【図6】フィーダー条件(a)又は無フィーダー条件(b)で培養した未分化HES−3細胞の細胞遺伝学的解析。2つの培養物由来のhESCについて正常な雌性核型(46X,X)を観察した。
【図7】ΔE−MEF培養物(a)及びHES−3無フィーダー培養物(b)におけるHPV−E6、HPV−E7、Oct−4、及びβ−アクチンの発現に関するRT−PCR解析。RT−PCR後、増殖産物を1%アガロースゲルで分離した。
【図8】トリプルフラスコ(a)及びセルファクトリー(b)を用いてΔE−MEF上で増殖させたHES−3細胞における細胞内Oct−4のフローサイトメトリー解析。網掛けヒストグラムは陰性対照染色を表し、オープンヒストグラムOct−4モノクローナル抗体染色を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不死化フィーダー細胞株。
【請求項2】
胚線維芽細胞由来の不死化フィーダー細胞株。
【請求項3】
マウス胚線維芽細胞由来の不死化フィーダー細胞株。
【請求項4】
p53腫瘍抑制タンパク質の分解、c−myc発現の増加、テロメラーゼ活性化、及びpRbの分解のうちの1つ以上によってマウス胚線維芽細胞から得た不死化フィーダー細胞株。
【請求項5】
HPV16由来のE6遺伝子及びE7遺伝子を導入することによって胚線維芽細胞から得た不死化フィーダー細胞株。
【請求項6】
E6遺伝子及びE7遺伝子が形質導入によって導入される、請求項5に記載の不死化フィーダー細胞。
【請求項7】
胚線維芽細胞にHPV16由来のE6遺伝子及びE7遺伝子をコードするレトロウイルスベクターを感染させる、請求項6に記載の不死化フィーダー細胞。
【請求項8】
大半の細胞が正常な寿命を越えて増殖し続け、レトロウイルス感染後のG418による抗生物質選択に耐性である、請求項7に記載の不死化フィーダー細胞株。
【請求項9】
不死化後腫瘍原性にならない、請求項7に記載の不死化フィーダー細胞株。
【請求項10】
in vivoでSCIDへ細胞を筋肉注射しても、蝕知可能な腫瘍を注射後16週目であっても生じない、請求項9に記載の不死化フィーダー細胞株。
【請求項11】
7、8、又は9継代を越えて増殖する、請求項1に記載の不死化フィーダー細胞株。
【請求項12】
in vitroで70継代を越えて増殖し、腫瘍原性の表現型を獲得しない、請求項11に記載の不死化フィーダー細胞株。
【請求項13】
特徴的な未分化形態を共培養物においてもCMを添加した無フィーダー培養物においても>40継代維持し続け;多能性マーカーOct−4、SSEA−4、Tra−1−60、Tra−1−81、アルカリホスファターゼを発現し続け;正常な核型を維持し;そしてSCIDマウスに注射すると3つの胚性胚葉に代表的な組織を有する奇形腫を形成するhESCを支持する、請求項1に記載の不死化フィーダー細胞株。
【請求項14】
未分化hESCの増殖を支持する、請求項1に記載の不死化フィーダー細胞株。
【請求項15】
hESC株が容易に適応し、未分化hESC培養物の典型的な形態をフィーダー培養物においても無フィーダー培養物においても維持する、請求項1に記載の不死化フィーダー細胞株。
【請求項16】
hESCが、Oct−4、SSEA−4、Tra−1−60、Tra−1−81、及びアルカリホスファターゼを含めた多能性マーカーを発現し続ける、請求項15に記載の不死化フィーダー細胞株。
【請求項17】
25継代後、hESCが安定な核型を保持し、SCIDマウスにおいて分化して奇形腫を形成可能である、請求項15に記載の不死化フィーダー細胞株。
【請求項18】
HES無フィーダー培養物のmRNAのRT−PCR解析により、細胞はOct−4に対して陽性のままであるが、E6抗原及びE7抗原に対して陰性であることを確認する、請求項15に記載の不死化フィーダー細胞株。
【請求項19】
E6抗原及びE7抗原の過剰発現により不死化した初代MEF。
【請求項20】
本明細書に記載の細胞株ΔE−MEF。
【請求項21】
アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションに受託番号PTA−6705で寄託した不死化フィーダー細胞株。
【請求項22】
好適な培地中の、請求項1〜21のいずれか1項に記載の不死化フィーダー細胞株の培養物。
【請求項23】
好適な担体又は希釈剤中に請求項1〜21のいずれか1項に記載の不死化フィーダー細胞株を含む組成物。
【請求項24】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の不死化フィーダー細胞株の増殖から生ずる条件培地。
【請求項25】
マトリゲルなどの細胞外マトリックスとともに用いる、請求項24に記載の条件培地。
【請求項26】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の細胞株のフィーダー細胞としての使用を含む、幹細胞の培養方法。
【請求項27】
幹細胞がヒト幹細胞である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
幹細胞がヒト胚性幹細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項24又は25に記載の条件培地の使用を含む、幹細胞の培養方法。
【請求項30】
幹細胞がヒト幹細胞である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
幹細胞がヒト胚性幹細胞である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
スケールアップした量の未分化hESCをセルファクトリーなどの培養容器内で産生する、請求項26〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
スケールアップした量が>10細胞である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
クレーム26〜31のいずれか1項に記載の方法によって培養された幹細胞。
【請求項35】
請求項34に記載のヒト幹細胞。
【請求項36】
請求項32に記載のヒト胚性幹細胞。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図4】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−531001(P2008−531001A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556463(P2007−556463)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000220
【国際公開番号】WO2006/089353
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(507284466)エージェンシー・フォー・サイエンス・テクノロジー・アンド・リサーチ (5)
【Fターム(参考)】