説明

不活性ガスを用いたベンディングシステムによるホウ素化合物量を低減した多結晶シリコンの製造装置および製造方法

【課題】ホウ素化合物量を低減した多結晶シリコンの製造装置および製造方法を提供する。
【解決手段】本発明においては、トリクロロシラン(TCS)タンク2aと一連の蒸留ユニット4〜6とを接続するトリクロロシラン(TCS)ライン22においてArガスを供給する。蒸留ユニット4〜6は、圧力変換器4e〜6eと、蒸留ユニット4〜6からのベントガスを排出する排気ライン26上に位置づけられた圧力独立制御弁(PIC−V)4f〜6fとを有する。Arガスは、PIC−V4f〜6fを開放するよう設定された圧力より高い圧力を有するTCSライン22へと供給される。ベントガスを蒸留ユニット4〜6から連続的に排出しつつ、TCSは蒸留ユニット4〜6により蒸留される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホウ素化合物量を低減した多結晶シリコンの製造装置および製造方法に関する。特にホウ素化合物は、トリクロロシランを蒸留により精製されることで、多結晶シリコン製造プロセスにおいて除去される。
【背景技術】
【0002】
多結晶シリコンは、シーメンス法として知られているプロセスにおいて、トリクロロシランと水素ガスとの反応により生成される。シーメンス法において、高純度多結晶シリコンは、化学式(1)で示されたトリクロロシランの水素還元および化学式(2)で示されたトリクロロシランの熱分解により、多結晶シリコンのシードロッド上に析出される。
【0003】
SiHCl3+H2→Si+3HCl (1)
4SiHCl3→Si+3SiCl4+2H2 (2)
高純度多結晶シリコンを生成する原料として用いられるトリクロロシラン(SiHCl3、略称「TCS」、沸点:31.8℃)は、ホウ素不純物を含有する純度約98%の金属級シリコン顆粒(略称「Me−Si」)を塩化水素ガス(略称「HCl」)と反応させることにより生成する。反応においてはその他の反応物も生成されるため、TCSとHClとの反応に続いて蒸留処理が行われる。
【0004】
トリクロロシランは蒸留プロセスにより精製される。しかしながら、多くのホウ素化合物の沸点はTCSの沸点と近接するか、あるいは、TCSの沸点より低いため、反応において生成された、ジボラン(B26)(沸点:−92.5℃)、三塩化ホウ素(BCl3)(沸点:12.4℃)、テトラボラン(B410)(沸点:18℃)等のように沸点の低いホウ素化合物と、トリクロロシランとを工業用蒸留プロセスによって分離することは非常に困難である。ホウ素は、金属級シリコン顆粒中に不可避の不純物として含有される。TCSとHClとの反応においては、数種の異なるホウ素化合物が生成される。
【0005】
例えば、特許文献1には、ホウ素化合物を除去するための、トリクロロシランの製造方法が提案されている。当該文献においては、未精製トリクロロシランにエーテル基を付加し、未精製トリクロロシランを蒸留する方法が提案されている。さらに、ホウ素化合物で汚染された気相のトリクロロシランがシリカ層を通過するトリクロロシランの精製プロセスが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−67979号公報
【特許文献2】米国特許4,713,230号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に示された発明では、精製に先立ってエーテル基の回収が必要となる。また、上記特許文献2に示された発明では、シリカの清浄を維持するために、シリカの固定層が必要とされる。
【0008】
本発明の目的の1つは、ホウ素化合物量を低減した多結晶シリコンの製造装置および製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ホウ素化合物量を低減した多結晶シリコンの製造装置に関し、本装置は以下の構成要素を有する。(A)金属級シリコンを塩化水素ガスと反応させてTCSを生成する流動層反応炉(塩化反応炉)。(B)流動層反応炉から蒸留ユニットに延設されたTCSラインに、不活性ガスを供給する不活性ガス供給ユニット。(C)TCSを精製する蒸留ユニット。(D)蒸留ユニットから排出される排気ライン内に設けられた圧力独立制御弁。(E)シリコン芯棒の表面上へ多結晶シリコンを析出させる還元反応炉。
【0010】
本発明はまた、ホウ素化合物量を減じた多結晶シリコンの製造方法に関し、本方法は以下のステップを有する。(A)流動層反応炉内における、TCSを含有する反応ガスを生成するための金属級シリコンと塩化水素との反応。(B)流動層反応炉から蒸留ユニットに延設されたTCSラインへの不活性ガスの供給。(C)ベントガスを連続的に放出する処理における、TCS精製のための蒸留。(D)多結晶シリコンのシリコン芯棒上への析出。
【0011】
本発明の装置は、98重量%以上の純度を有する金属級シリコン顆粒を塩化水素と反応させる流動層反応炉を備える。未精製TCSは、流動層反応炉内において、約280℃(536°F)〜約320℃(608°F)での反応により生成される。この温度範囲は、金属級シリコン顆粒と塩化水素ガスとの間の反応を促進するのに有効であり、塩化水素ガスが流動層反応炉中に均一に分散される。未精製TCSはホウ素化合物を含有し、凝縮された後にTCSタンクへと供給される。
【0012】
TCSタンクは、TCSを回収するために設けられ、TCSを連続的に蒸留プロセスへと供給することができる。TCSタンクは、TCSラインを介して蒸留プロセスへと接続されている。本発明においては、例えばHe、N2、Arのような不活性ガスを不活性ガス供給ユニットを経由して、TCS1kg当り約1.7×10-4Nm3の流量(もしくはTCS1kg当り約1.0×10-5Nm3〜約3.3×10-4Nm3の範囲の流量)でTCSラインへ供給する。
【0013】
TCSは、TCSタンクから複数の蒸留ユニットを備えた蒸留プロセスへと供給される。各蒸留ユニットは、蒸留塔(もしくはカラム)、凝縮器、リボイラ、およびポンプを有する。通常、蒸留塔では連続的な分留が行われる。次に、第1蒸留プロセスにおいて、第1蒸留塔の塔頂部の蒸留温度を、およそトリクロロシランの沸点とおよそ四塩化ケイ素の沸点との間に設定することにより、トリクロロシランを蒸発し、蒸気留分として分離する。より具体的には、96kPa(ゲージ圧)における蒸留塔頂部の温度を、約46℃(115°F)〜約56℃(133°F)の間に設定する。蒸留プロセスにおいては、沸点の高いホウ素化合物、四塩化ケイ素(SiCl4、略称「STC」、沸点:57.6℃)、ポリマー、および「底部残留物」としての少量のTCSを分離する。プロセスからの蒸気蒸留物すなわち蒸気留分は、沸点すなわち沸騰温度の低いホウ素化合物、TCS、および少量のジクロロシラン(略称「DCS」、沸点:8.4℃)を含有する。
【0014】
蒸気留分は凝縮器に供給され、液体へと凝縮される。凝縮器は排気ラインを有し、圧力変換器および圧力独立制御弁(以降「PIC−V」と称する)が排気ライン内に設置される。圧力変換器は、凝縮器内の圧力を検出する。凝縮器内の圧力が所定の圧力を超過すると、PIC−Vが開放され、凝縮器内の圧力が一定圧力付近に維持される。本発明においては、不活性ガスがTCSラインに供給されることにより、PIC−Vが連続的に開放される。例えばジボラン(B26)、トリクロロボラン(BCl3)、テトラボラン(B410)のような沸点の低いホウ素化合物は、凝縮器内で気体状態に留まり、排気ラインを介してプロセスから排出される。凝縮されたTCSは、ポンプにより蒸留塔へと還流される。凝縮されたTCSの一部は、他の、あるいは次の蒸留塔へと供給され、次の蒸留ユニットにて蒸留が繰り返される。
【0015】
蒸留物が蒸留塔の底部からリボイラへと供給される。残留物は加熱され、蒸留塔へ還流される。ペンタボラン(B59)、ペンタボラン(B511)、テトラクロロジボラン(B2Cl4)、ヘキサボラン(B610)、デカボラン(B1014)のような沸点の高いホウ素化合物を含有した液体残留物が、リボイラから排出される。
【0016】
その後、第2蒸留プロセスにおいては、蒸留塔頂部の蒸留温度が、およそジクロロシランの沸点とおよそトリクロロシランの沸点との間に設定される。つまり、第2蒸留塔頂部の温度は、125kPa(ゲージ圧)にて、約50℃(122°F)〜約60℃(140°F)の間に設定されるのが好ましい。純粋なトリクロロシランが、蒸留により、第1蒸気留分より分離される。また沸点の低いホウ素化合物、DCS、および少量のTCSが第2蒸留プロセスでの蒸留物として分離される。
【0017】
以上のプロセスが、追加の蒸留塔内で繰り返される。
【0018】
TCSは、上述の蒸留プロセスにより精製される。精製されたTCSは、多結晶シリコンを多結晶シリコン芯棒上に析出させる還元反応炉に供給される。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、蒸留プロセスにおいてTCSからホウ素化合物を除去し、ホウ素量を低減した多結晶シリコンを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明実施形態の製造装置の概略及びプロセスフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本発明に係る製造装置の概略及びプロセスフローを示している。本発明においては、流動層反応炉1、TCSタンクユニット2、不活性ガス供給ユニット3、蒸留ユニット4〜6、気化器7、還元反応炉8、凝縮器9、水素回収プロセス10、および凝縮器9の凝縮物のための蒸留ユニット11を備える。
【0023】
流動層反応炉1は、反応式(3)に基づき、約98%の純度の金属級シリコン顆粒(Me−Si)20を塩化水素(HCl)ガス21と反応させるためのものである。
【0024】
Me−Si+3HCl→SiHCl3+H2 (3)
Me−SiとHClとの反応の結果、流動層反応炉1内には反応ガスが生成される。この反応ガスは、TCS、STC、DCS、およびホウ素化合物を含有する。流動層反応炉1における塩素化プロセス後の反応物としては、通常以下のものがおおよそ生成される。88重量%のTCS、11.5重量%のSTC、0.5重量%のDCS、3000〜6000ppbwtのホウ素。より具体的には、TCSは80重量%超含有される。本実施形態においては、流動層型の反応炉が使用される。また金属級シリコン顆粒20は、流動層反応炉1に連続的に供給される。塩化水素ガス21は、流動層反応炉1に供給され、金属級シリコン顆粒20を通過させることにより、金属級シリコン顆粒20と反応が行われる。また流動層反応炉1の層温度は、約280℃〜約320℃の間に設定される。この温度範囲は、TCSを効果的に生成するために選択されたものである。特に320℃(608°F)を超える温度は、一定の割合のTCSを生成するうえで好ましくない。そして反応ガスおよび未反応ガスが、流動層反応炉1より排出される。
【0025】
反応ガスは、TCSを含有した凝縮物を生成するために、未反応ガスとともに冷却器(図示せず)に供給される。未反応の塩化水素ガスおよび水素ガスは、本プロセスよりベントガスとして除去される。TCSを含有する凝縮物は、TCSタンクユニット2が備えるTCSタンク2aに供給される。本実施形態におけるTCSタンクユニット2の目的としては、約1.2×10-33/s〜約2.0×10-33/sの間の流量で、一定してTCSを蒸留プロセスへと供給することにある。TCSタンク2a内の雰囲気は、He、N2、Arガス等の不活性ガスにより変えられるが、圧力変換器2bに接続された圧力独立制御弁2cおよび圧力独立制御弁2dにより、一定の圧力に維持される。またTCSタンク2aは、TCSライン22を介して蒸留ユニット4に接続される。
【0026】
He、N2、Arガス等の不活性ガス供給ユニット3は、TCSライン22上に設置され、不活性ガス供給ユニット3は、TCS1kg当り約1.7×10-4Nm3の流量、もしくはTCS1kg当り約1.0×10-5Nm3〜約3.3×10-4Nm3の流量の範囲で、不活性ガスを供給する。この流量は、後に述べるPIC−V4f〜6fを連続的に開放させるために選択したものであり、沸点の低いホウ素化合物とともに不活性ガスが連続的に放出されるようにするものである。不活性ガスは、TCSもしくは他のクロロシランと反応せず、多結晶シリコンを生成する際の障害とならない。
【0027】
各蒸留ユニット4〜6は、蒸留塔4a〜6a、凝縮器4b〜6b、ポンプ4d〜6d、およびリボイラ4c〜6cを有する。蒸留塔4a〜6aにより、連続分留形式の蒸留が行われる。蒸留塔4a〜6aの塔頂部の蒸留温度が、およそTCSの沸点付近とテトラクロロシランの沸点付近との間に設定されることにより、TCSは蒸発され、蒸気留分として分離される。より具体的には、80kPa(ゲージ圧力)における第1蒸留塔頂部の温度は、約45℃(113°F)〜約55℃(131°F)の間に設定される。蒸留塔頂部の温度は、蒸気留分の還流率と、リボイラの温度とにより制御される。
【0028】
蒸気留分は、凝縮器4b〜6bに供給され、凝縮器4b〜6bにおいて液体へと凝縮される。凝縮器4b〜6bは、排気ライン26と圧力変換器4e〜6eを有し、PIC−V4f〜6fが、排気ライン26上に設置される。圧力変換器4e〜6eは、凝縮器4b〜6b内の圧力を測定する。凝縮器4b〜6b内の圧力は、圧力変換器4e〜6eによる実測に基づき、PIC−V4f〜6fにより均一に維持される。PIC−V4f〜6fは、例えばそれぞれ、4fは96kPaG、5fは125kPaG、6fは96kPaGのような圧力で弁を開放するよう設定される。凝縮器4b〜6b内の圧力が予め設定された圧力を超過すると、PIC−Vが開放されることにより、凝縮器4b〜6b内の圧力が一定に維持される。ベントガス24は、凝縮器4b〜6bよりプロセスから放出される。通常ベントガス24は、連続して排出される。これらのベントガスには、不活性ガスと、ジボラン(B26)、トリクロロボラン(BCl3)、テトラボラン(B410)のような沸点の低い種々のホウ素化合物とが含有される。そのため、沸点の低いホウ素化合物は、蒸留ユニット4〜6から不活性ガスとともに排出される。凝縮器4b〜6bおよび蒸留塔4a〜6a内部の圧力は、TCSライン22内に不活性ガスを加えることにより上昇するため、PIC−Vは開放されたままとなる。凝縮したTCSは、ポンプ4d〜6dにより蒸留塔へと還流される。凝縮したTCSの一部は、次の蒸留塔へと供給されてもよく、蒸留塔の数に応じて蒸留が繰り返される。最終的に精製され、凝縮したTCSが、ライン6gを経由して気化器7に供給される。
【0029】
図1において、凝縮器5bからの凝縮したTCSの一部は、次の蒸留塔6aに送られず、かわりにライン5gを経由して分離される。また、分離されないリボイラ5cの底部残留物が除去され、ライン5hを介して次の蒸留塔6aへと送られる。
【0030】
他の蒸留塔の場合、残留物が蒸留塔4aの底部からリボイラ4cへと除去される。蒸留塔4aの残留物は、80kPaG〜96kPaGにて、約77℃(170°F)〜約91℃(195°F)の範囲で加熱される。液体残留物は、ペンタボラン(B59)、ペンタボラン(B511)、テトラクロロジボラン(B2Cl4)、ヘキサボラン(B610)、およびデカボラン(B1014)のような沸点の高いホウ素化合物を含有し、リボイラ4cより底部残留物23として排出される。リボイラ6cの残留物は、TCSタンク2aを介して蒸留塔4aへ、還流される。蒸留プロセスにおいて、低沸点ホウ素化合物であるジボラン(B26)、トリクロロボラン(BCl3)、およびテトラボラン(B410)等もまた、蒸留塔5aから、排気流26および還流排出ガス流5gとして除去される。通常の精製TCSに含まれるホウ素化合物は、0.030ppbwtを超えないことが好ましい。
【0031】
図1に示す実施形態において、不活性ガスの供給が無い場合(換言するとTCS1kg当り0×10-4Nm3の流量である場合)に蒸留塔に与えられる条件の1例を表1に示す。
【0032】
【表1】

以上のような条件において、気化器7に送られた精製TCSには、約0.015ppbwtのホウ素化合物が含まれている。
【0033】
気化器7において、精製TCSが蒸発され、TCSガスおよび精製水素が多結晶シリコンの生成のための還元反応炉8に供給される。精製TCSと精製水素ガスとのモル比は、例えば約1:8となる。
【0034】
複数のシリコン芯棒(図示せず)が還元反応炉8内に立設される。これら複数のシリコン芯棒は、約1000℃(1832°F)〜約1200℃(2192°F)の間に抵抗加熱される。高純度の多結晶シリコンが、TCSの水素還元およびTCSの熱分解により、多結晶シリコン芯棒上に析出する。未反応TCSガス、未反応水素ガス、およびその他生成されたクロロシランガスが、還元反応炉8より排出され、凝縮器9へと供給される。未反応TCSガスおよび生成STCガスの混合物は、凝縮器9内で凝縮され、TCSおよびSTCを分離するため、蒸留ユニット11へと供給される。蒸留ユニット11は、蒸留塔11aと、凝縮器11bと、リボイラ11cと、ポンプ11dとを有する。凝縮器11b内において気体状態で残留した化合物は、排気ライン28を介してプロセスより排出される。凝縮したTCSの一部は、ポンプ11dにより蒸留塔11aへと還流され、分離されたTCSの一部は、再循環のため気化器7へと送り戻される。最後に、リボイラ11Cからの底部残留物の一部、特にSTCが分離され、排出ライン27を介してプロセスから排出される。
【0035】
未反応水素およびその他のクロロシランは、凝縮器9内において気体状態で留まり、水素ガス精製のため、水素回収プロセス10へと供給される。圧力スイング吸着法が水素回収プロセス10に適用される。精製水素ガスは還元反応炉8に送り戻される。
【0036】
図1はまた、不活性ガスの供給を除き、上記例と同じシステムを説明するためのプロセスフロー図であり、ここではArガスが供給される。本実施形態では、不活性ガス供給ユニット3から供給されるArガスは、TCS1kg当り約1.7×10-4Nm3の流量であり、TCSライン22へと供給される。
【0037】
本実施形態では、Arガスの供給に際して、表2により与えられる以下の条件が蒸留塔における条件例となる。
【0038】
【表2】

Arガスの供給下において、以上のような条件であると、気化器7に送られる精製TCS中のホウ素化合物濃度は約0.005ppbwtとなる。
【0039】
本実施形態において、蒸留プロセスは、3つの蒸留ユニット4〜6からなる。しかしながら蒸留ユニットの数はこれに限られるものでなく、本発明の範囲内で、蒸留ユニットの数および蒸留のタイプを変更することが可能である。
【0040】
本実施形態は、説明のために述べられたものであり、これに限定する目的のものでない。当業者により、添付の請求項に定義されるように、関連の保護範囲を超えることなく、変更および/または修正を加えることが可能である旨、理解されなければならない。
【符号の説明】
【0041】
1 流動層反応炉
2 トリクロロシラン(TCS)タンクユニット
2a トリクロロシラン(TCS)タンク
3 不活性ガス供給ユニット
4,5,6 蒸留ユニット
4e,5e,6e 圧力変換器
4f,5f,6f 圧力独立制御弁(PIC−V)
7 気化器
8 還元反応炉
22 トリクロロシラン(TCS)ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素化合物量を低減した多結晶シリコンの製造装置であって、
トリクロロシランを生成するために、金属級シリコンを塩化水素と反応させる流動層反応炉と、
前記流動層反応炉から蒸留ユニットへと延設されたトリクロロシランラインへ、不活性ガスを供給する不活性ガス供給ユニットと、
トリクロロシランを精製する蒸留ユニットと、
蒸留ユニットから排出する排気ライン上に設置された圧力独立制御弁と、
多結晶シリコンをシリコン芯棒の表面上に析出する還元反応炉とを備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記流動層反応炉と前記蒸留ユニットとの間に設置され、液体トリクロロシランを保持し、前記トリクロロシランを前記蒸留ユニットへと連続的に供給するトリクロロシランタンクと、
前記還元反応炉に供給されるトリクロロシランを蒸発させる気化器とをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の多結晶シリコンの製造装置。
【請求項3】
前記不活性ガスはArガスであることを特徴とする請求項1に記載の多結晶シリコンの製造装置。
【請求項4】
気化器に送られたトリクロロシランは、約0.030ppbwt未満のホウ素化合物に精製されていることを特徴とする請求項2に記載の多結晶シリコンの製造装置。
【請求項5】
ホウ素化合物量を低減した多結晶シリコンの製造方法であって、
流動層反応炉においてトリクロロシランを含有する反応ガスを生成するために、金属級シリコンを塩化水素と反応させるステップと、
前記流動層反応炉から蒸留ユニットへと延設されたトリクロロシランラインへ、不活性ガスを供給するステップと、
ベントガスを連続的に排出しつつ、精製のためにトリクロロシランを蒸留するステップと、
多結晶シリコンをシリコン芯棒上に析出するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項6】
前記不活性ガスはArガスであることを特徴とする請求項5に記載の多結晶シリコンの製造方法。
【請求項7】
蒸留後のトリクロロシランは、したがって約0.030ppbwt未満のホウ素化合物に精製されることを特徴とする請求項5に記載の多結晶シリコンの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−144427(P2012−144427A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−882(P2012−882)
【出願日】平成24年1月6日(2012.1.6)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】