説明

不燃化粧板

【課題】 表面にピンホールのない綺麗な仕上がりの不燃化粧板を得る。
【解決手段】 アミノ−ホルムアルデヒド樹脂からなる樹脂液を含浸、乾燥してなる樹脂含浸化粧紙と、無機繊維基材に、無機充填剤と熱硬化性樹脂からなるスラリーを含浸或いは塗布、乾燥したプリプレグとを積層し、熱圧成形してなる不燃化粧板であって、該樹脂含浸化粧紙の直下には、無機繊維基材に無機充填剤と熱硬化性樹脂からなる高粘度のスラリーを塗布し、無機充填剤と熱硬化性樹脂からなる低粘度のスラリーを塗布したコーテッド材を用いる。該高粘度スラリーは3.5〜4.5Pa・s/25℃、該低粘度スラリーは0.08〜0.12Pa・s/25℃とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不燃化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック製の化粧板として、メラミン樹脂化粧板が知られており、不燃性を必要とする店舗、事務所などには不燃化粧板が用いられている。
不燃化粧板には無機質系、金属系、有機樹脂系のものがあり、加工性、耐衝撃性に優れる有機樹脂系のものは一般に化粧層とコア層とからなり、化粧層には化粧板用の化粧紙に熱硬化性樹脂からなる樹脂液を含浸し、乾燥させた樹脂含浸化粧紙を用い、コア層にはガラス繊維不織布、ガラス繊維職布などの無機繊維基材にバインダー成分としての樹脂と無機充填剤からなるスラリーを含浸し、乾燥させたプリプレグを所望に厚み分だけ積層し、樹脂含浸化粧紙とともに熱圧成形することで得られる。
【0003】
【特許文献1】特開2004−76515
【特許文献2】特開2004−209864
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、仕上がった製品の表面を斜光で確認すると下地のコア層の影響、スラリー中の気泡の影響などから軽微なピンホールがあり、ミカンの表面のようであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は仕上がり外観を向上させ綺麗な表面にすることを目的に検討されたもので、以下のことを特徴とするものである。
すなわち、アミノーホルムアルデヒド樹脂からなる樹脂液を含浸、乾燥してなる樹脂含浸化粧紙と、無機繊維基材に、無機充填剤と熱硬化性樹脂からなるスラリーを含浸或いは塗布、乾燥したプリプレグとを積層し、熱圧成形してなる不燃化粧板であって、該樹脂含浸化粧紙の直下には、無機繊維基材に無機充填剤と熱硬化性樹脂からなる高粘度のスラリーを塗布し、更に無機充填剤と熱硬化性樹脂からなる低粘度のスラリーを塗布したコーテッド材を用いてなることを特徴とする不燃化粧板である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の不燃化粧板は、表面にピンホールがなく、綺麗な仕上がりとなる。
以下、本発明について詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
化粧紙に含浸するアミノ−ホルムアルデヒド樹脂としては通常のメラミン樹脂化粧板を得る際に用いるもので、アミノ化合物、例えばメラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンなどとホルムアルデヒドを反応させた初期縮合物のほか、メチルアルコール、ブチルアルコールなどの低級アルコ−ルによるエ−テル化、パラトルエンスルホンアミドなどの可塑化を促す反応性変性剤で変性されたものが適用でき、中でも耐久性に優れるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂が好ましい。
【0008】
プリプレグは、無機繊維基材に、無機充填剤とバインダーとしての熱硬化性樹脂からなるスラリーを含浸或いは塗布、乾燥したもので、無機繊維基材としては、ガラス繊維、ロックウール、炭素繊維などの無機繊維からなる不織布、織布などが挙げられ、無機繊維基材の坪量は、10〜200g/mの範囲が好適であり、とりわけ、耐熱性、耐炎性に優れ、スラリーの含浸性が優れるガラス繊維を用いるのが好ましい。
【0009】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、前述のアミノ−ホルムアルデヒド樹脂、或いはこれらを併用したものが挙げられる。とりわけ併用することにより、不燃性、強度、耐熱性などの物性が優れたものとなる。併用する際は、フェノール樹脂とアミノ−ホルムアルデヒド樹脂の配合割合は固形分比で、1:0.1〜5とするのが望ましく、フェノール樹脂に対してアミノ−ホルムアルデヒド樹脂が少ないと強度、密着性が劣りやすくなり、多いと反りが大きくなる。
【0010】
フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とをフェノール性水酸基1モルに対してアルデヒド類を1〜3モルの割合で塩基性触媒下或いは酸性触媒下にて反応させて得られるもので、フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、オクチルフェノール、フェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどが挙げられ、アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキザール、トリオキザールなどが挙げられる。
【0011】
また、必要に応じてパラトルエンスルフォンアミド、桐油、燐酸エステル類、グリコール類などの可塑化を促す変性剤で変性されたものも適用でき、塩基性触媒としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、及びマグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物、及びトリエチルアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類、アンモニアが挙げられ、酸性触媒としては、パラトルエンスルフォン酸、塩酸などが挙げられる。
【0012】
スラリー中に含まれる無機充填剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、シリカなどが挙げられ、平均粒子径が0.5〜200μmの範囲のものが無機性繊維不織布への含浸が可能であり、中でも、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなど結晶水を含むものは高温時に分解し、吸熱、結合水を放出するため不燃性の効果の点で最適である。
【0013】
熱硬化性樹脂と無機充填剤との配合割合は5〜20:95〜80とするのが望ましく、熱硬化性樹脂に対して無機充填剤が多くなると不燃性能が向上するものの密着性が低下し、また、無機充填剤が少くなると密着性が向上するものの不燃性能が低下する。
スラリー中の熱硬化性樹脂としてフェノール樹脂とアミノ−ホルムアルデヒド樹脂を併用する際の配合割合は固形分比で、1:0.1〜5とするのが望ましく、フェノール樹脂に対してアミノ−ホルムアルデヒド樹脂が少ないと強度、密着性が劣りやすくなり、多いと反りが大きくなる。
【0014】
樹脂含浸化粧紙の直下には前記同様の無機繊維基材に、前記同様のスラリーを3.5〜4.5Pa・s/25℃の高粘度スラリーを塗布した後、0.08〜0.12Pa・s/25℃の低粘度スラリーを塗布したコーテッド材が用いられ、気泡を含む高粘度スラリーの表面を、気泡を含まない低粘度スラリーで被覆することによりピンホールのない綺麗な仕上がり外観となる。
該高粘度スラリーの塗布量は、数1で示される算出方法で1000〜4500%、特に2500〜3000%が好ましく、該低粘度スラリーの塗布量は数2で示される算出方法で25〜50%が好ましく、この範囲であれば極めて良好な外観となる。
上限を超えると固形分の脱落が多くなり取り扱いにくく、また下限に満たないと層間剥離しやすくなる
【数1】


【数2】

【0015】
樹脂含浸化粧紙の直下以外に用いるプリプレグは、無機繊維基材にスラリーを含ませたもので固形分含有率(%)は、数3で示される算出方法で、500〜3000%の範囲が好ましい。
【数3】

【0016】
樹脂含浸化粧紙とプリプレグは積層された後、温度120〜150℃、圧力50〜100kg/cmで熱圧成形されると本発明の不燃化粧板が得られる。熱圧成形は平板プレス、連続プレスなどのプレス機でを用いればよい。
【実施例】
【0017】
以下、実施例、比較例を挙げて詳細に説明する。
実施例1
白色の120g/mの化粧紙にメラミン−ホルムアルデヒド樹脂からなる樹脂液を含浸、乾燥し、樹脂含浸化粧紙を得た。
プリプレグ
50g/mのガラス繊維不織布に、フェノール樹脂5部に対して、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂4部、水酸化アルミニウムを91部配合したスラリーを、数3に示すスラリー含有率が1600%となるように含浸してプリプレグを得た。
コーテッド材
50g/mのガラス繊維不織布に、フェノール樹脂5部に対して、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂4部、水酸化アルミニウムを91部配合し、4.0Pa・s/25℃に粘度調整したスラリー(高粘度スラリー)を、数1に示す算出方法で3000%塗布し、次いで、同様に配合し、0.1Pa・s/25℃に粘度調整したスラリー(低粘度スラリー)を、数2に示す算出方法で35%塗布してコーテッド材を得た。
不燃化粧板
下から順に、プリプレグを4枚、コーテッド材を1枚、樹脂含浸化粧紙を1枚積層して、フラット仕上げプレートを用いて130℃、70kg/cm、90分間の条件で熱圧成形して実施例1の不燃化粧板を得た。
【0018】
実施例2(高粘度スラリーの粘度が下限未満の場合)
実施例1において、高粘度スラリーの粘度を3.0Pa・s/25℃とした以外は同様に実施した。
【0019】
実施例3(高粘度スラリーの粘度が上限を超える場合)
実施例1において、高粘度スラリーの粘度を5.0Pa・s/25℃とした以外は同様に実施した。
【0020】
実施例4(低粘度スラリーの粘度が下限未満の場合)
実施例1において、低粘度スラリーの粘度を0.06Pa・s/25℃とした以外は同様に実施した。
【0021】
実施例5(低粘度スラリーの粘度が上限を超える場合)
実施例1において、低粘度スラリーの粘度を0.14Pa・s/25℃とした以外は同様に実施した。
【0022】
実施例6(高粘度スラリーの塗布率が下限未満の場合)
実施例1において、高粘度スラリーの塗布率を500%とした以外は同様に実施した。
【0023】
実施例7(高粘度スラリーの塗布率が上限を超える場合)
実施例1において、高粘度スラリーの塗布率を5000%とした以外は同様に実施した。
【0024】
実施例8(低粘度スラリーの塗布率が下限未満の場合)
実施例1において、低粘度スラリーの塗布率を20%とした以外は同様に実施した。
【0025】
実施例9(低粘度スラリーの塗布率が上限を超える場合)
実施例1において、高粘度スラリーの塗布率を55%とした以外は同様に実施した。
【0026】
比較例1(コーテッド材を用いない場合)
実施例1において、下から順に、プリプレグを5枚、樹脂含浸化粧紙を1枚積層した以外は同様に実施した。
【0027】
評価結果を表1に示す。
【表1】

【0028】
評価結果は以下の通りとした。
粘度:BM粘度計にて測定した。
外観:目視にてピンホール量およびツヤ、平滑性を判断した。
ピンホールなし、ツヤムラなし、極めて平滑なものを◎、
ピンホールなし、ツヤムラなし、平滑であるが実施例1
に比べるとやや劣るものを○、
軽微なピンホール有り、ツヤムラなし、平滑であるが実施
例1に比べるとやや劣るものを○〜△、
軽微なピンホール有り、ツヤムラなし、平滑性が実施例4,6
,8,9に比べると劣るものを×とあした。
不燃性: 不燃性:ISO5660準拠したコーンカロリーメーターによる20分試験の発熱性試験・評価方法において総発熱量が8MJ/m以下であり、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えない場合を○とする。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ−ホルムアルデヒド樹脂からなる樹脂液を含浸、乾燥してなる樹脂含浸化粧紙と、無機繊維基材に、無機充填剤と熱硬化性樹脂からなるスラリーを含浸或いは塗布、乾燥したプリプレグとを積層し、熱圧成形してなる不燃化粧板であって、該樹脂含浸化粧紙の直下には、無機繊維基材に無機充填剤と熱硬化性樹脂からなる高粘度のスラリーを塗布し、更に無機充填剤と熱硬化性樹脂からなる低粘度のスラリーを塗布したコーテッド材を用いてなることを特徴とする不燃化粧板。
【請求項2】
該高粘度が3.5〜4.5Pa・s/25℃で、該低粘度が0.08〜0.12Pa・s/25℃であることを特徴とする請求項1記載の不燃化粧板。
【請求項3】
該高粘度スラリーの塗布量が数1で示される算出方法で1000〜4500%、該低粘度スラリーの塗布量が数2で示される算出方法で25〜50%であることを特徴とする請求項1又は2記載の不燃化粧板。
【数1】


【数2】


【公開番号】特開2006−110932(P2006−110932A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302625(P2004−302625)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】