説明

不織布の製造に使用される帯電防止移送ベルト

不織ウェブ(12)、構造体または製品を製造するための装置において、望ましい空気浸透性を維持しながら静電気を除去するために、導電性材料(22)を含んでいる移送ベルト(18)を組み入れた不織布製造工程を使用すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布の製造に向けられており、特には、その製造における通気および静電気に関係する。
【背景技術】
【0002】
現在、不織布、例えば一般的に熱可塑性樹脂から作られているフィラメントまたは繊維から形成されたスパンボンド式のウェブ、構造体または製品を製造する装置は存在している。そのような装置は、1998年8月29日に公開された特許文献1に開示されており、該特許文献1は参照により本明細書に組み込まれる。それらには一般的に、糸をカーテン状に出す出糸部と、熱可塑性フィラメントを形成するためにカーテン状の糸を冷却するブロー工程に使用される加工エアー吹きつけ部と、が含まれる。熱可塑性フィラメントは、一般的には、空気力学的に引き伸ばされるように加工エアーによって空気力学的に引っ張られ、それから拡散器を通過した後、相互に絡まり合った状態で集められ、ウェブを形成するために連続する循環ふるいベルトの上に沈積される。そのようにして形成されたウェブ、構造体または製品は、それから移送され、さらに加工される。
【0003】
前述したタイプの装置、特に高速メルトボンドウェブ製品を作るための装置は、現在、ドイツのスピヒャー ストラーベ D―53839 トロイズドルト(Spicher Strabe D−53839 Troisdort)にある、ライフェンホイザー社の機械工場にて製造されており、それはライコフィル(登録商標)という名前で販売されている。そのような高速スパンボンドラインの最新のタイプは、ライコフィル(登録商標)3型システムとして知られている。
【0004】
そのような装置の別の製造業者としては、28601 クレメンスロード,ウェストレイク,オハイオ 44145(28601 Clemens Road,Westlake,Ohio 44145)にあるノードソン社がある。他の製造業者としては、STPインピアンティ社、リーター パフォジェット社(Rieter Perfojet)、コベルコ社、アーソン アンド NWT社がある。
【0005】
エアーレイド工程もまた、不織ウェブを形成するために使用されてよい。エアーレイド工程は、綿パルプを開くために繊維をほぐすシステムから始まる。通常のファイバライザーまたは他の切断装置は、繊維同士を分離するために使用されてもよい。それから、吸収剤(例えば、高吸収粉)、研磨剤または他の材料の粒子が、繊維に混ぜられてもよい。それから、その混合物は、形成装置内において空気の流れによって宙に浮かせられ、移動形成ワイヤ、スクリーンまたは回転穿孔シリンダに沈積される。それから、不規則な空気の流れによって不規則に配置された繊維は、ラテックス接着剤を加えられて乾燥させられ、ウェブの中で熱可塑性ステープル繊維と熱的に結合することによって、または水あるいはエンボス加工による結合、またはそれらの組み合わせによって結合される。
【0006】
加えて、不織ウェブは、選択的に上記の結合工程の前に圧縮されてもよい。圧縮は一般的に、結合の前に形成ワイヤによってなされる。圧縮の間、繊維の中に混ぜられている吸収剤、研磨剤または他の材料は形成ワイヤにダメージを与える。形成ワイヤにダメージが加わることを防ぐため、圧縮の間にフェルトが使用されてもよい。フェルトを用いることで、フェルトまたはワイヤにダメージを与えることなく、不織ウェブを圧縮することができる。
【0007】
エアーレイド式の不織ウェブを製造するために利用することが可能な、多くの商業用の処理工程がある。例えば、エアーレイド工程は、デンマークのリスコフ(Risskov)に会社を有するダンウェブ社や、デンマークのホルセンス(horsens)に会社を有するM&Jフォーミングテクノロジー社から利用することが可能である。
【特許文献1】米国特許第5814348号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0950744A1号明細書
【特許文献3】米国特許第4427736号明細書
【特許文献4】米国特許第4541895号明細書
【特許文献5】米国特許第6001749号明細書
【特許文献6】米国特許第6153124号明細書
【特許文献7】米国特許第5360656号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、不織布の製造に向けられており、特には、その製造における通気および静電気に関係する。
【0009】
不織布の製造工程においては、大量の静電気が発生する。本発明は、この問題の解決に関する。通常、負の電荷はフィラメントや繊維に、それらが加工されるにつれて蓄積する。繊維の連続する層は、同じ極性を有しているので、互いに反発し合う傾向を有する。帯電した繊維はプレスロールに密着する傾向を有する。また、帯電した繊維が加工されている間に、形成布はその繊維に電荷をさらに生じさせるので、帯電した繊維は形成布からはじかれる傾向も有する。この電荷は蓄積する傾向を有する。
【0010】
特許文献2には、繊維をはじく極性に帯電した、表面が誘電体であるプレスロールを使用することが提案されている。また、形成布は誘電体材料から作られており、および繊維とは反対の電荷が帯電されているので、したがって繊維を引きつける。
【0011】
本発明は、移送ベルトの浸透性を維持しながら、静電気の荷電をなくすことに関する。今まで、特許文献3におけるように、乾燥布によって蓄積された静電気をなくすこと、したがってある布から別の布へと紙が移送されるときに紙が布に接着するのを防ぐことが提案されている。
【0012】
特許文献4に記載されているのは、積層配置になるよう1つに結合された複数の不浸透性の不織シートから作られたPM布である。それぞれの層は、例えば静電気に対する抵抗性といった特定の役割を有している。加えて、耐静電気特性を付与するために、各層の間には糸が入れられている。
【0013】
特許文献5は、最後に布の選択された領域に導電性ポリマーコーティングの形成を妨ぐ部分を設けることによって、あるパターンを有する導電性織製品を提供するものである。
【0014】
特許文献6には、2―30重量パーセントが導電性の糸からなる導電性の編布が記載されている。導電性の糸は、5―30重量パーセントが亜鉛メッキされた鉄、70―95重量パーセントがポリエステル繊維からなっている。導電性は、糸の密度に比例している。
【0015】
しかしながら、先行技術のどれも、望ましい空気浸透性を維持しながら、導電性バット、発泡体または他の材料が加えられている、織られたまたはスパイラル形状の基礎部を有する不織布の製造において使用するための帯電防止移送ベルトを提供してはいない。
【0016】
したがって、本発明の主となる目的は、静電気を生じさせずに、不織ウェブ、構造体または製品を製造するために使われる移送ベルトを提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、帯電防止移送ベルトの空気浸透性を適切に維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
以上のおよび他の目的および利点は、本発明によって達成される。この点に関して、本発明は、不織ウェブ、構造体または製品の製造に使用するための移送ベルトに、大体は向けられている。静電気の問題を解決するために、移送ベルトは、ベルトの望ましい浸透性を維持しながら、ウェブに静電気がたまらないようにすることを可能とする導電材を含んでよい。
【0019】
したがって、本発明によって、その目的および利点は実現されるのであり、その詳細はこれより図面を参照しながら明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
これより、諸要素に番号が振られている図を詳細に見ていくが、図1は、織ること以外の加工法、例えばエアーレイド、ドライレイド、またはスパンレースといった加工によって、不織ウェブ12を製造するための装置10の一部分を概略的に示している。第1の位置14から第2の位置16へ移動される前においては、ウェブ12が移送されている間に大量の静電気がウェブ12および移送ベルト18に蓄積されており、望ましくない。この点に関連して、移送ベルト18を、ウェブ12の移送を補助するバキュームシステム19によって吸い込まれる空気が透過することが可能なようにすることが求められる。
【0021】
有利なことに、本発明は、望ましい空気浸透性を維持したまま、静電気をなくす不織布のための工程において使用される移送ベルトである。この点に関して、図2には、本発明において使用される帯電防止移送ベルト18の断面図が示されている。移送ベルト18は、織られたまたはスパイラル状の(それ自体が導電性を有している)ポリマー材料から作られた基礎基材または構造体20より、または、導電性バット、発泡体または10オーム/面積から10オーム/面積という低い抵抗率を有する一方、ベルトがコーティングされたときには、約20から200CFM、またはそれより高い空気浸透性を維持することが可能な他の材料22に覆われた目的に適合した他の構造体より構成される。
【0022】
基礎基材は、例えば、織られたまたはスパイラルリンク形の布といった、抄紙機用布の基部として使用される構造体の1つであってもよい。また、基礎基材は、複数の回転を有する螺旋状に曲げられた、織られた材料よりなるひもから組み立てられてもよく、前記それぞれの回転は、特許文献7において開示されている連続する縫い目によって、隣接するもの同士が結合されている。ここで、特許文献7の教示は参照によって本明細書に組み込まれている。さらに、基礎基部は、エンドレス形に織られてもよいし、または、平織りされてから縫われることでエンドレス形状にされてもよい。
【0023】
また、基礎基部は、2つ以上の基礎基材からなる積層構造体であってもよい。また、その基礎基材の層のそれぞれは、上述した構造体のいずれかであってもよい。基礎基材が積層される場合、基礎基材の構成要素のうちの1つが、オンマシーンシーマブル(on−machine−seamable)布であってよく、そうすることで、抄紙機に据え付ける間にベルトをエンドレス形状へと縫い合わせることができる。
【0024】
基礎基材は、抄紙機用布および工業加工用布の製造において使用される様々な糸から織られてよい、また他の方法においては組み立てられてもよい。すなわち、基礎基材は、モノフィラメント、パイルドモノフィラメント、マルチフィラメント、パイルドマルチフィラメント、または当業者によって使用されている合成重合樹脂のいずれかよりなるステープル繊維から紡がれた糸を含んでいる。
【0025】
図2で示されている例において、基材20はベルト18に寸法安定性と圧縮性を与える。導電性バット、発泡剤または他の材料22は、ウェブ12から地面へとベルト18を通して静電気を流す。基材20はバット、発泡剤または他の材料22に、ニードリング、熱接着、裁縫、化学処理、または他の目的に適した手段によって結合されてよいことを注意する。
【0026】
加えて、導電性材料22は、基礎基材または構造体20に塗布されていてよい。その塗布される導電性材料22は、噴霧また押出しによって、または、熱可溶材料の層となることで、基礎基材または構造体20に適用されてよい。
【0027】
さらなる利点として、大量の、一般的には高吸収粉またはSAPといわれているものを利用している不織製品には確実に生じる、閉塞または傷つきといった問題を避けるために、バット、発泡剤または他の材料22のウェブに面している面は滑らかにされている。例えば、塗布される導電性材料22は、圧縮または研磨によって望ましい表面形状または滑らかさにされてよい。
【0028】
したがって、本発明の帯電防止移送ベルト18は、バット、発泡剤または他の材料22からなる1つ以上の層を含む多層構造体であり、その一部は導電性である。そのような移送ベルト18は、ウェブ製造工程において望ましい空気浸透性をもたらしながらも、不織布を製造している間においては静電気の発生を減少させる。
【0029】
これまで好ましい実施形態が開示され、本明細書においてその詳細が記載されているが、その範囲はそれらの記載によって限定されるべきではない。むしろ、その範囲は付属の請求項によって決定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】不織ウェブ、構造体または製品を移送する装置の概略的な図である。
【図2】ベルトの機械方向に沿って設けられた本発明の移送ベルトの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0031】
10 装置
12 ウェブ
14 第1の位置
16 第2の位置
18 移送ベルト
19 バキュームシステム
20 基礎基材または構造体
22 導電性バット、発泡体または他の材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎基材と、
前記基材に結合された導電性材料と、
からなり、前記ベルトは、約20から200CFMの範囲の望ましい空気浸透性を維持しながら、静電気を除去するのに有効であることを特徴とする帯電防止移送ベルト。
【請求項2】
前記導電性材料は、主に前記静電気を除去することを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
前記導電性材料は、バットまたは発泡剤であることを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項4】
前記基材は、前記ベルトに寸法安定性および圧縮性を与えることを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項5】
前記基材は、導電性も有することを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項6】
前記基材は、織られたまたはスパイラル状の材料から作られることを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項7】
前記基材は、ポリマー材料から作られることを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項8】
10オーム/面積から10オーム/面積の抵抗率を有することを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項9】
導電性材料と基材は、ニードリング、熱接着、縫製、または化学処理によって結合されることを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項10】
ベルトは、エアーレイド、ドライレイド、スパンボンド、スパンレースといった工程、または前記工程の2つ以上を組み合わせたものから構成されるグループからなる製造工程の間において、不織ウェブを移送するために使用されることを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項11】
前記ベルトにおいては、前記不織ウェブの閉塞および傷つきを避けるために、ウェブに面している面は滑らかであることを特徴とする請求項10に記載のベルト。
【請求項12】
静電気は前記ウェブに蓄積され、そして前記ベルトは、ベルトを通して下の構成要素へと排出されることを特徴とする請求項10に記載のベルト。
【請求項13】
ベルトはエンドレス形、または縫われることでそのような形にされていることを特徴とする請求項10に記載のベルト。
【請求項14】
前記導電性材料は、前記基礎基材に塗布されることを特徴とする請求項1に記載のベルト。
【請求項15】
前記塗布は、噴霧または押出しによってなされることを特徴とする請求項14に記載のベルト。
【請求項16】
前記塗布は、熱可溶性材料の層であることを特徴とする請求項14に記載のベルト。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−511766(P2008−511766A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529971(P2007−529971)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/029366
【国際公開番号】WO2006/026176
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(591097414)アルバニー インターナショナル コーポレイション (110)
【氏名又は名称原語表記】ALBANY INTERNATIONAL CORPORATION
【Fターム(参考)】