説明

不織布

【課題】 製造から廃棄まで環境負荷が少なく、合成繊維と同等以上の力学的強力を有し、見た目にも天然物特有のやすらぎ感を有する特徴を生かし、各種包装材、壁紙、ルーフィング基布や防錆テープ、各ケーブルの補強材や押さえ巻き、摩耗板、コンクリート補強材の各種補強材、各種摩耗布、隔離膜、分離膜,セパレータ、衣料部材等の用途に用いることが出来る不織布を提供する。
【解決手段】 天然物由来の繊維の含有割合が50wt%以上であり、合成繊維及び又は再生繊維の含有割合が50%未満である繊維同士が3次元交絡しており、目付が5〜500g/m2、かつ貫通強力が4N以上であることを特徴とする不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然物由来の繊維を含有する繊維を用いた不織布とその製造方法に関するものである。更に詳しくは、製造から廃棄まで環境負荷が少ないにもかかわらず、合成繊維同等以上の力学特性を有し、見た目にも天然物特有のやすらぎ感を有する不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布は、織編物のように紡糸工程、加工工程を分けることなく、一段で布状態に付形できるために、その生産規模は高い生産増加率を示し、生活資材、医療衛生材、寝装具、衣料材等の様々な用途に利用されている。不織布に用いる原料繊維は、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維等の合成繊維とレーヨン等の再生繊維が主流となっている。しかしながら、合成繊維は原料が石油であること、廃棄が困難であることから、環境問題が大いに懸念される今日、その使用量は極力減らしたい、将来的には合成繊維を代替したいという要求は益々高まっている。また、再生繊維を用いた不織布は、その原料は、パルプ、竹などの天然物であるが、再生繊維化する段階で、回収が困難で毒性の高い二硫化炭素などの環境負荷の大きい薬剤を使用したり、繊維製造過程のエネルギー使用量が多いために、必ずしも環境に優しい不織布にならない。
【0003】
一方、合成繊維や再生繊維を用いた不織布が狙う分野としては、力学強度の高い不織布がある。特に、布としての役割を果たすために、貫通強力が高い不織布が必要となる。
従って、天然繊維を実質的に化学処理することなく、しかも限りなく使用エネルギー量を減らして、不織布とする技術ができれば、環境にやさしい、21世紀に適した不織布とすることができる。
【0004】
このような不織布を提案する試みはいくつかなされている。
例えば、木綿を用いた、水流交絡法による木綿不織布は、例えば非特許文献1に開示の如く、古くから使用されている。しかしながら、木綿不織布は、貫通強度が低く、品質にばらつきがあり、異物の混入を避けることが困難といった問題がある。また、ジュート、サイザイル麻等を原料にした不織布が、例えば特許文献1で提案されている。しかしながら、これらの不織布は繊維同志の交絡点間距離を短くすることができず、また構成する繊維が絡みにくいために、貫通強度が低いという問題がある。また、繊維が脱落しやすいとか、原料の不均一性からくる不織布の厚み斑といった問題も内在する。
以上のように、従来の技術では、天然繊維を用いた、貫通強力の優れる不織布は得られていないのが実状である。
【0005】
【非特許文献1】「不織布の基礎と応用」日本繊維機械学会、不織布研究会編 P156〜P160(平成5年8月25日発行)
【特許文献1】特表2002−514272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、製造から廃棄まで環境負荷が少ないにもかかわらず、合成繊維同等以上の力学特性を有し、見た目にも天然物特有のやすらぎ感を有する、貫通強力の優れる天然物繊維を用いた不織布の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、天然繊維の形状検
討と不織布加工方法を詳細に検討した結果、合成繊維や再生繊維と同等以上の貫通強力を有する天然物繊維からなる不織布の製造が可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち本発明は、天然物由来の繊維を含有する繊維が3次元交絡し、目付が5〜500g/m2、かつ貫通強力が4N以上であることを特徴とする不織布であり、その製造方法として、天然物由来の繊維を含む繊維のシートを形成した後に、流体流処理により繊維を3次元的に交絡させて繊維交絡点間距離を400μm以下とする工程を含むことを特徴とする不織布の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、天然物由来成分の繊維を原料そのまま、化学的な変性を実質的に加えることなく、例えば乾燥後粉砕等により作られたものを使用して不織布を構成しているため製造から廃棄まで非常に環境負荷が少ない。また、今までの天然物由来繊維により構成された不織布よりも品質や異物の混入等が少なく、貫通強力等の力学的強力が高いことから、使用時には不織布が破ける等といったようなことがないため、種々の産業用途、資材用途、衛材用途等に用いることができ、見た目にも天然物特有のやすらぎ感を有するものである。また、竹、檜等、用いる天然物由来成分の繊維の種類によっては、それ自体が抗菌性、制菌性を有しており、生理活性作用も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明について、以下に具体的に説明する。
本発明の不織布は、天然物由来の繊維を含有する繊維が3次元交絡し、目付が5〜500g/m2、かつ貫通強力が4N以上であることを特徴とする不織布である。
本発明の天然物由来の繊維は、植物性繊維、動物性繊維、鉱物繊維のいずれでもよいが、好ましくは、加工のしやすさ、入手の容易さから、植物性繊維が好ましく、特に、竹、杉、檜、ケナフ、さとうきび、パイナップルが好ましい。植物の利用部位としては、表皮、内部繊維のいずれでもよく、目的に応じて任意に選択することができる。本発明の不織布に含まれる天然物由来繊維の長さについては特に制限はなく、短繊維であっても長繊維であってもよい。
【0011】
天然物由来の繊維は、原料植物をそのまま、あるいは、乾燥後、粉砕して製造することができる。粉砕方法としては、機械的粉砕、爆砕、アルカリ等を用いた薬品粉砕などが使用できるが、機械的粉砕で製造することが好ましい。爆砕、アルカリ等を用いた薬品粉砕を用いると、天然物由来の繊維のセルロースの重合度が低下し、貫通強力が低下するからである。天然物由来の繊維を構成するセルロースの重合度としては、400〜1500が好ましく、特に好ましくは400〜1200である。
【0012】
本発明の不織布に含まれる天然物由来繊維の長さについては特に制限はなく、短繊維であっても長繊維であってもよい。繊維長が長すぎると不織布にした場合繊維同士が絡んで斑となって部分的にバリアー性が低下したり、抄造法によって得られるシートの目付の均一性が低下することがある。また、繊維長が短すぎると繊維同士の交絡が不十分で素抜けが起こりやすく十分な強度を発現出来ない場合がある。不織布の均一性及び成形性の観点から、繊維長が0.5〜75mmの短繊維であることが好ましく、より好ましい繊維長は1〜60mm、更に好ましくは5〜50mmである。
【0013】
本発明に用いる天然物由来の形状しては、単糸の直径が1μm〜2mmであり、繊維長Lと単糸の直径Dの比L/Dが50〜10000であることが好ましい。その理由は、この範囲で不織布にする時の交絡性がよく、貫通強度を高めることができるからである。単糸の直径は5μm未満になると、水流交絡する時に水中で均一に分散しにくくなる。特に
2mmを越えると、交絡がかかりにくくなる場合がある。好ましくは、10μm〜1mm、更に好ましくは10μm〜800μmである。L/Dは、100〜6000であることが好ましく、さらに300〜5000で有ることが好ましく、特に好ましい範囲は350〜4500である。10000を超える場合は繊維同士が絡み合いシートの均一性が悪化し、製造条件によっては目的とする不織布が得られない場合がある。
天然物由来繊維の比表面積は、0.05〜50m2/gが好ましい。0.05m2/g以下だと力学強度が下がり、50m2/g以上であると細かすぎて貫通強力が低下する場合がある。好ましくは0.05〜5m2/g、特に好ましくは0.05〜3m2/gである。
【0014】
また、本発明の不織布には、本発明の目的を達成できる範囲で、天然物由来の繊維以外の繊維を含有してもよい。とりわけ、天然物由来の繊維の交絡性が悪い場合や熱与形性を付与するために、天然物由来の繊維以外の繊維を混合することは好ましい。それらの例としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリ乳酸繊維、アクリル繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリル繊維、銅アンモニアレーヨン、レーヨン等の再生セルロース繊維、酢酸セルロース繊維、アラミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリベンザゾール繊維等の合成繊維等が挙げられる。これらの繊維の形状としては、特に制限はないが、繊維長が0.5〜75mmの短繊維、単糸繊度が0.1〜2dtex、L/Dが50〜10000が好ましい。不織布への混合比率としては、特に制限はないが、不織布重量の50wt%未満、好ましくは30wt%、特に好ましくは、20wt%未満である。
不織布内部では、上記の天然物由来の繊維あるいは、必要に応じて混合したそれら以外の繊維は、互いに3次元的に交絡している必要がある。このような交絡は、目付や貫通強力の向上、取り扱い性、繊維の脱落防止に有効となる。
【0015】
本発明の不織布には、必要に応じて、接着剤や添加剤、表面塗布剤、撥水剤、親水剤等の表面改質剤、樹脂、ゴム、フィルム等の繊維以外の成分を含んでいてもよい。
本発明の不織布の目付は5〜500g/m2 であることが必要である。目付が5g/m2未満の場合、も貫通強力の高い不織布を得ることが困難となる問題、形態保持性が劣り、結果としてシワ発生などの不具合が生じる。目付の上限については特に制限はないが、不織布内部の交絡の均一性、不織布厚みの均一性、表面平滑性等の観点から500g/m2以下であることが好ましい。目付のより好ましい範囲は20〜250g/m2 であり、更に好ましい範囲は20〜100g/m2 である。
【0016】
本発明の不織布は貫通強力が4N以上であることが必要である。貫通強力が4N未満では、加工時や加工後には衝撃や突き当て等の外力に対して不織布が破損したり、孔が空く等の不具合が起こりやすい。好ましくは5N以上、より好ましくは7N以上、さらに好ましくは9N以上である。
天然物由来の繊維の繊維交絡点間距離の平均値は400μm以下であることが好ましい。交絡点間距離の平均値が400μmを超えると繊維が3次元的な交絡が不十分で引張強度が不足し、シート作製時や加工時に破れる等トラブルの原因となる場合がある。繊維交絡点間距離として好ましくは350μm以下であり、より好ましくは300μm以下である。
【0017】
本発明の不織布は、例えば、天然物由来の繊維を含有する繊維のシートを形成した後に、流体流処理により繊維を3次元的に交絡させて繊維交絡点間距離の平均値を400μm以下とする工程を含むことを特徴とする不織布の製造方法により製造できる。
本発明の不織布を作成するため繊維のシート化方法は、通常湿式法が用いられる。
本発明の不織布は、下記の製造方法によって得られるものであるが、製造方法は特に限定される物ではない。
【0018】
湿式法を用いる場合、短繊維の長さが20mm以下であることが好ましく、短繊維の長さ(L)と短繊維の単糸の直径(D)の比L/Dが300〜2000を満たす特定形状の短繊維を0.1〜3%濃度になるよう水に分散し、スラリーを調合する。この際少量の分散剤を加えることが好ましい。このスラリーを長網型、丸網型などの抄造機で抄造シートを作成する。乾式法の場合は、繊維長が20mm以上であることが好ましく、L/Dが1000〜5000を満たす繊維を、カード法やクロスラッパー法、両者を組み合わせた方法等でシート化される。
次いで得られたシートを高速流体流処理やニードルパンチ、ステッチボンド等公知の方法によって短繊維を相互に三次元交絡させる。
【0019】
以下、高速流体処理法について詳細に説明する。
高速流体処理を行う場合、流体には、液体もしくは気体を用いることが出来るが、取り扱い易さ、コスト、衝突エネルギーの大きさなどの点から、水が最も好ましい。水を用いる場合、水圧は用いる繊維の種類、シートの目付量、処理速度によって異なるが、充分に交絡させるには1〜25MPaに設定するのが好ましい。さらに好ましくは2〜20MPaである。水流を噴出するノズルの径は0.05〜0.5mmが好ましい。ノズルの孔の間隔は0.2〜10mmに成るよう配置することが好ましい。交絡を効果的に行い交絡点間距離を小さくするには、シートに噴き当てられた水を除去することも重要である。
【0020】
方法としては、シートの下に目の細かい金網などの支持体を置き、その下から吸引脱水するのが良い。水流の軌跡形状は、シートの進行方向に対し、平行な直線状であってもよいし、ノズルを取り付けたヘッダーを回転運動させたり、或いはシートの進行方向に対して直角に往復運動させることによって得られる曲線状であってもよいが、ヘッダーの回転運動や往復運動によって得られる曲線状軌跡の方が、ノズル1錘当たりのシートに対する水の噴射面積が大きくなり、繊維間距離を小さくするには効果的であると同時に、シートの優れた均一性を損なうことなく、水流軌跡が見えにくい点でも曲線状軌跡の方が好ましい。またこの場合、水圧を変化させても良い、最初は弱い水圧で徐々に高くする方法をとると、シートを形成している糸の前後左右への動きが少なくなり均一な不織布を得ることが出来る。初期水圧は工程最高水圧の80%以下であることが好ましく、より好ましくは70%以下である。
【0021】
水流をシートに当てる順序は、表裏交互に当てる方法でも、片面だけに当てる方法でもよいが、繊維間距離を小さくし、且つ表裏共に均一な表面を得ようとする場合は、表裏交互に処理するのがよい。水圧を段階的に変化させるのも、繊維間距離を小さくすると同時に水流軌跡を見え難くし、フラットで均一な表面を得るには有効である。このようにして交絡して得られたシートや不織布を、接着剤や樹脂によって繊維同士を接着せしめたり、混合された天然物由来の繊維以外の熱可塑性繊維のガラス転移温度以上、融点以下の温度に加熱し繊維同士を融着せしめてもよい。接着剤、接着用樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、ホルマリン、グリオキザール等公知のものが使用できる。上記熱可塑性繊維を加熱融着せしめる場合には、100℃〜熱可塑性繊維の融点に加熱することが好ましく、熱可塑性繊維の(融点―30℃)〜(熱可塑性繊維の融点−10℃がより好ましい。
【0022】
また、得られた不織布をさらに必要に応じて表面改質や後加工処理をしてもよい。表面改質では、例えば天然物由来の繊維と反応性の化合物を接触させて化学的変性を施したり、電子線やプラズマ処理によって物理的改質を施す等公知の方法を採用できる。具体的に例えば、アンモニアやジエチルアミン、エチレンジアミン、エチルアミン、ポリアルキルアミン、アミノピリジン、アミノアルキルピリジン、アルキルアニリン、アルキルアミノ
ベンゾエート、エポキシアミン等のアミン化合物、エチレンオキサイド、エチレンオキサイドグリシジルエーテル等のオキシム化合物、硫酸、亜硫酸等の硫酸化合物等の化合物と反応させる方法、電子線照射後に酢酸ビニル、アリルスルホン酸、スチレン、スチレンスルホン酸等のビニル化合物やオキシム化合物と反応させる方法、水素化ホウ素ナトリウムやルテニウム化合物等を触媒として水素と接触させて水添する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0023】
実施例などによって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例などにより何等限定されるものではない。
本発明に用いられる各測定値の測定方法は次の通りである。
(1)比表面積: 島津製作所(株)製のトライスター3000を用い、吸着ガスを窒素とした、BET吸着法で測定した。
(2)目付: JIS−L−1096に準じて測定した。
【0024】
(3)厚み: 試験片の4ヶ所を一定の測定面積(直径10mmの円面積)で一定の圧力(5kPa)がかかる厚み計(ピーコック社製:モデルH)にて測定、その平均値を厚みとした。
(4)引張強度: JIS−L−1096のストリップ法に基づいて、タテ(シートの進行方向)、ヨコ(シートの幅方向)それぞれの引張強度を測定した。
【0025】
(5)引裂強度: JIS−L−1096のストリップ法に基づいて、タテ、ヨコそれぞれの引裂強度を測定した。
(6)貫通強力: 20cm×2.5cmの試験片1枚をハンディー圧縮試験機(カトーテック製、KES−G5)に取り付けられたステンレス製冶具(刃厚み0.3mmのOLFA社製スクレーバーカッター刃を幅5.0mmに切断したもの)を25mm/secの速度で垂直に突き刺し、不織布を切断するのに要する力(貫通強力)を測定した。
【0026】
(7)交絡点間距離: 走査型電子顕微鏡で100倍の倍率で測定し、50個の平均値をとった。ここでいう交絡点間距離とは、特公昭58−191280号公報に記載の公知の方法で測定した値であり、繊維相互の交絡密度を示す1つの尺度である。この数値が小さいほど交絡が緻密であることを示すものである。第1図は、本発明による不織布シートにおける構成繊維を表面から観察した時の拡大模式図である。構成繊維をf1、f2、f3・・・とし、そのうち任意の2本の繊維f1、f2が交絡する点をa1で、上になっている繊維f2が他の繊維の下になる形で交差する点までたどっていき、その交差した点をa2とする。同様に、a3、a4・・・とする。次に、この様にして求めた交絡点間の直線水平距離a1〜a2,a2〜a3・・・を測定し、これら多数の測定値の平均値を求め、これを交絡点間距離とする。
【0027】
(参考例1)
本発明の実施例1〜11に示す不織布原料の天然物由来の繊維は、いずれも特願2003−435317号に記載の粗解繊と精解繊を組合せた製造方法に準じて作製した。すなわち、実施例1、3および実施例9〜11の竹繊維は、竹材を常温下で圧縮・開裂した後、同常温下で粗解繊、次いで精解繊したものを使用した。一方、実施例2の竹繊維は、竹材を予め高温高圧水蒸気で蒸煮し、常圧下で常温より高い温度下で粗解繊、次いで精解繊したものを使用した。また、実施例4〜8の杉、檜、松、ケナフ、さとうきび、パイナツプル繊維については、実施例2の竹繊維と同じ製造方法により作製した。
【0028】
[実施例1]
参考例1で得た竹繊維の短繊維(長さ10mm、短糸直径0.3mm、比表面積0.7m2/g、重合度450)とし、水中に分散させ1wt%濃度のスラリーとした。このス
ラリーを傾斜長網抄造機で抄造し、目付45g/m2のシートを得た。
このシートを80メッシュの金網に載せ、ノズル径0.15mm、ノズル間ピッチ5mm、列数5列のノズルを装着したヘッダーを140rpmで円運動させながら、初期水圧5MPaで処理し、次いで水圧10MPaで噴射水をシートに衝突させることにより、短繊維を交絡させた。この処理を表裏共各3回繰り返した。引き続き、水圧を4MPaに設定し表裏各1回処理した。その後、100℃で乾燥して不織布を得た。得られた不織布の特性を表1に示す。
こうして得られた不織布は、優れた力学特性を示し、大腸菌に抗菌性を示した。
【0029】
[実施例2]
形状を変えた竹短繊維を長さ5mm、短糸直径0.03mmの短繊維とする以外は、実施例1と同じ方法で目付46g/m2のシートを得た。
このシートから、他は実施例1と同じ方法で処理して不織布を得た。不織布の物性を表1に示した。
[実施例3]
竹繊維の80重量%と単糸繊度0.3cN/dtexの繊維長3mmのポリエチレンテレフタレート繊維(PET繊維)20重量%を混合し、実施例1を繰り返した。力学物性の向上が認められた。得られた不織布の特性を表1に示す。
【0030】
[実施例4〜8]
竹繊維の代わりに、他の天然物由来の繊維を用いて、実施例1を繰り返した。得られた不織布の特性を表1にまとめて示す。
[実施例9]
実施例1の不織布の製造工程において、乾燥前に自己架橋型アクリル樹脂とメラミン樹脂からなる接着剤水溶液に浸漬した後に、ニップロールを通し、110℃で乾燥した後に、引き続き200℃で熱硬化処理を行い、不織布を得た。得られた不織布の特性を表1に示す。
【0031】
[実施例10]
実施例1の不織布を250℃、15分、加熱処理した。得られた不織布は、やや黒味を帯び、枯れた印象の趣のある色を呈した。
[実施例11]
実施例1の不織布を1000℃、12時間で焼成し、竹炭不織布を得た。得られた不織布は、脱臭効果、水道水の臭み取りに有用であった。
【0032】
[比較例1]
爆砕処理した竹繊維(長さ10mm、短糸直径0.3mm、比表面積0.7m2/g、重合度350)を実施例1と同様に不織布化した。貫通強力は不十分なものであった(表1)。
[比較例2]
長さ2mm、短糸直径0.05mm、比表面積0.7m2/g、重合度350の短繊維長(L/D=40)を用いた以外は、実施例1と同様にして目付41g/m2の不織布を得た。この不織布は、貫通強力は不十分なものであった(表1)。また、擦ると竹繊維の脱落が起こった。
【0033】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明による不織布は、合成繊維同等以上の力学特性を有し、見た目にも天然物特有のやすらぎ感を有する特徴を生かし、各種包装材、壁紙、ルーフィング基布や防錆テープ、各ケーブルの補強材や押さえ巻、摩耗板、コンクリート補強材の各種補強材、各種摩耗布、隔離膜、分離膜、セパレータ衣料部材、ディスポ衣料、靴部材等の衣料用途、保護衣、防護用品等の防護用途、手術着、マスク、ハップ材基布等の医療用途、ルーフィング、タフト・カーペット基布、結露防止シート、補強材、保護材、地中埋設管の補修材等の土木用途、自動車内装、自動車部品等の車両用途、救急用品、洗浄用品、おしぼり、カーペット、家具部材、壁紙等の家具・インテリア用途、ウェットワイパー、クリーニング材、空気フィルター、バグフィルター、エレクトレットフィルター、水処理用フィルター用途、布団、布団袋、枕カバー等の寝装用途、べた掛けシート、防草シート、園芸プランター、収納用品、包装資材、台所用品等の生活資材用途、電気材料、製品材料、機器部材等の用途に用ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による不織布シートにおける構成繊維を表面から観察した時の拡大模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然物由来の繊維を含有する繊維同士が3次元交絡しており、目付が5〜500g/m2、かつ貫通強力が4N以上であることを特徴とする不織布。
【請求項2】
天然物由来の繊維の比表面積が0.05〜50m2/gであることを特徴とする請求項1記載の不織布。
【請求項3】
天然物由来の繊維の含有割合が50wt%以上であり、合成繊維及び又は再生繊維の含有割合が50%未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の不織布。
【請求項4】
不織布を構成する繊維が互いに3次元交絡していて、繊維交絡点間距離の平均値が400μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項5】
3次元交絡した繊維が接着剤または熱融着性樹脂で結合されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項6】
請求項1〜5記載の不織布を加熱し、部分的にあるいは完全に炭化させたことを特徴とする不織布。
【請求項7】
天然物由来の繊維が、竹、杉、檜、松、ケナフ、さとうきび、パイナップルから選ばれた少なくとも1種の繊維であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項8】
天然物由来の繊維の単糸直径が1μm〜2mmであり、繊維長Lと単糸の直径Dの比L/Dが50〜10000であり、かつ繊維表面に繊維の直径の0.001〜0.2倍に相当するフィブリルの剥がれが存在することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項9】
天然物由来の繊維を含む繊維のシートを形成した後に、流体流処理により繊維を3次元的に交絡させて繊維交絡点間距離の平均値が400μm以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の不織布の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−348438(P2006−348438A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178673(P2005−178673)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【出願人】(592075884)清本鐵工株式会社 (10)
【Fターム(参考)】