説明

不織布

【課題】容易に折れ曲がりやすく、折れ曲がり部分に皺等の発生が起こりにくい不織布を提供すること。
【解決手段】不織布10は、多数の凸部23が列状に間欠的に配されて形成された、一方向に畝状に延びる多数の畝部20と、隣り合う畝部20間に位置し、かつ畝部20と同方向に延びる多数の溝部30と有する。溝部30には開孔が形成されている。畝部20は、その延びる方向において隣り合う凸部23間に、該凸部23よりも高さの低い凹部22を有する。畝部20においては、凹部22における繊維密度と、凸部23の底部24における繊維密度とが実質的に等しくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畝溝構造を有し、溝部に開孔を有する不織布に関するものである。この不織布は、特に吸収性物品の表面シートとして好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
畝溝構造を有する不織布に関する従来の技術としては、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。同文献には、受液側に向く谷部と山部とが、長手方向に延び、かつ長手方向と直交する方向である幅方向へ波状に形成されている吸収性物品の表面シートが記載されている。この表面シートは不織布製のものであり、山部には、表面シートを構成する繊維の密度が低い粗部と密度が高い密部とが長手方向に向かって交互に形成されている。特許文献1には、同文献に記載の技術によれば、山部における各粗部において表面シートが湾曲形成するので、粗部以外の密部において表面シートが無理に折れ曲がることが防止されると記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の技術とは別に、本出願人は先に、畝溝構造を有する不織布に関して、互いに非連続である無数の帯状の頂部と、該頂部間の空間にそれぞれ帯状に凹んで形成された無数の帯状の底部と、頂部及び底部をそれぞれ連結する帯状の壁部とから形成されている吸収性物品の表面シートを提案した(特許文献2参照)。同文献に記載の表面シートは不織布製のものである。この表面シートにおいては、底部に開孔部が設けられている。また、この表面シートにおける頂部は、その帯状の頂面の両側縁がジグザグ状の凹凸形状に形成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−137284号公報
【特許文献2】特開平5−317358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、前述した従来技術の不織布よりも各種の性能、特に吸収性物品の表面シートとしての性能が向上した不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、多数の凸部が列状に間欠的に配されて形成された、一方向に畝状に延びる多数の畝部と、隣り合う畝部間に位置し、かつ畝部と同方向に延びる多数の溝部とを有し、溝部に開孔が形成された不織布であって、
畝部は、その延びる方向において隣り合う凸部間に、該凸部よりも高さの低い凹部を有し、かつ
畝部においては、凹部における繊維密度と、凸部の底部における繊維密度とが実質的に等しくなっている不織布を提供するものである。
【0007】
また本発明は、多数の凸部が列状に間欠的に配されて形成された、一方向に畝状に延びる多数の畝部と、隣り合う畝部間に位置し、かつ畝部と同方向に延びる多数の溝部とを有し、溝部に開孔が形成された不織布であって、
畝部は、その延びる方向において隣り合う凸部間に、該凸部よりも高さの低い凹部を有し、
畝部がジグザグ状に延びており、ジグザグの屈曲点に凹部が位置している不織布を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の不織布によれば、これを例えば吸収性物品の表面シートとして用いると、畝部と溝部との厚み差に起因して、該表面シートが着用者の肌と接触する面積が低減し、蒸れの発生やそれに起因する肌トラブルの発生が効果的に防止される。特に、畝部を窪ませて該畝部に多数の凹部を形成することで、接触面積が一層低下する。また、この凹部は、表面シートの円滑な折れ曲がりにも寄与し、表面シートの折れ曲がりに起因する皺の発生が起こりづらくなる。更に、この凹部は、表面シートの面方向に沿った空気の流通性の向上にも寄与するので、このことによっても、蒸れの発生やそれに起因する肌トラブルの発生が効果的に防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1(a)には、本発明の不織布の第1の実施形態の平面視における要部拡大図が示されている。図1(b)及び図1(c)は、図1(a)におけるb−b線断面図及びc−c線断面図である。本実施形態の不織布は、主に吸収性物品の表面シートとしての使用を想定したものである。したがって、以下の説明では、本実施形態の不織布を「表面シート」とも言う。
【0010】
図1(a)〜(c)表面シート10は、第1の面10aと、これに対向する第2の面10bとを有する。第1の面10aは、表面シート10が、生理用ナプキンや使い捨ておむつ等の吸収性物品に組み込まれたときに、着用者の肌側を向く面である。第2の面10bは、吸収性物品の吸収体側を向く面である。表面シート10は、一方向Yに延びる多数の畝部20を有する。また表面シート10は、隣り合う畝部20の間に、畝部20と同方向Yに延びる多数の溝部30を有する。畝部20及び溝部30は、それらの延びる方向Yと直交する方向Xにわたって交互に配列されている。畝部20は、表面シート10における相対的に厚みの大きな部位から構成されており、溝部30は、表面シート10における相対的に厚みの小さな部位から構成されている。その結果、畝部20の実質厚みは、溝部30の厚みよりも大きい。ここで実質厚みとは、表面シート10の裏面から各々の最上部までの長さ(見掛け厚み)ではなく、表面シート10の繊維が存在する部分の長さを意味する。
【0011】
図1(a)に示すように、畝部20は、多数の凸部23が列状に間欠的に配されて、一方向(図1(a)中Yで示す方向)に畝状に延びることで形成されている。各凸部23は、幅及び幅よりも大きな長さを有する細長い形状をしている。そして畝部20は、畝部20の延びる方向(図1(a)中Yで示す方向)において隣り合う凸部23間に、凸部23よりも高さの低い凹部22を有している。したがって、各畝部20においては、その延びる方向(図1(a)中Yで示す方向)に沿って凸部23と凹部22とが交互に位置することになる。
【0012】
図1(c)に示すように、畝部20は凸部23の位置において、該畝部20の延びる方向と直交する方向(同図中、Xで示す方向)での断面が、第1の面10aの側において、上に凸の滑らかな曲線を描く輪郭となっている。第2の面10bの側は、図1(c)に示すように実質的に平坦になっているか、又は下に凸の滑らかでかつ緩やかな曲線を描く輪郭となっている。凸部23の位置における第1の面10aの側は、第2の面10bの側よりも高く盛り上がっており、これが周期的に連続している。これによって凸部23の位置における第1の面10aの側は、X方向に沿って波形形状になっている。一方、図1(b)に示すように、畝部20は凹部22の位置において、X方向での断面が、第1の面10aの側において概ね平坦になっている。したがって、表面シート10の第1の面10a側が着用者の肌と接する場合には、凸部23の頂部21及びその近傍の領域が部分的に接触することになり、全面接触に起因する蒸れによるべたつき感や、こすれに起因する刺激感が低減される。また、着用者から排泄された液が、着用者の肌に付着しづらくなる。
【0013】
畝部20における凸部23及び凹部22は、表面シート10の構成繊維で満たされている。つまり凸部23及び凹部22内には空洞は存在していない。同様に、溝部30のうち、後述する開孔31が形成されていない部位は、表面シート10の構成繊維で満たされている。ただし、後述するように、畝部20の繊維量と、溝部30の繊維量とは相違している。
【0014】
図1(c)に示すように、畝部20の凸部23は、X方向での断面において、第1の面10a側に頂部21を有し、この部位において実質厚みが最も大きくなっている。そして、X方向に関し、頂部21から離れるに連れ実質厚みが漸減している。したがって、表面シート10は、畝部20の凸部23において、X方向に沿ってみたときに、実質厚みが周期的に変化したものとなっている。本実施形態の表面シート10において、畝部20と溝部30との間に明確な境界部は存在せず、一般に、X方向に関して隣り合う2つの頂部21間に位置する最も実質厚みの小さい部位及びその近傍の部位が溝部30となる。畝部20と溝部30との境界を明確に定義する場合には、畝部20の頂部21における見掛け厚みの1/2の厚みの位置を、畝部20と溝部30との境界部とする。
【0015】
畝部20における凸部23の見掛け厚みD1(図1(c)参照)は、表面シート10の肌触りを良好にする観点から、好ましくは0.3〜5mmであり、更に好ましくは0.5〜2.5mmである。凸部23と溝部30との高低差D2(図1(c)参照)は、表面シート10のクッション性及び通気性を高め、更に液の拡散を制御する観点から、0.1〜3mmが好ましく、0.3〜2mmがより好ましい。畝部20及び溝部30の厚みや高低差Dは、マイクロスコープVH−8000(キーエンス製)を用い、表面シート10の断面を50倍〜200倍に拡大観察して測定する。断面は、フェザー剃刀(品番FAS‐10、フェザー安全剃刀(株)製)を用い、表面シート10を切断して得る。
【0016】
表面シート10のX方向における畝部20の幅は、肌触りと吸収性の観点から、1〜10mmが好ましく、2〜5mmがより好ましい。同様の観点から、表面シート10のX方向における溝部30の幅は、0.5〜7mmが好ましく、1〜3mmが好ましい。本実施形態においては、畝部20と溝部30は概ね同じ幅で形成されているが、これに限られず例えば表面シート10のX方向の中央域における畝部20の幅を、側部域における畝部20の幅よりも広くしてもよい。あるいは、畝部20及び溝部30の幅をランダムにするなど、所望の形態とすることができる。
【0017】
表面シート10のX方向における凸部23の幅は、上述した畝部20の幅と同じなっている。一方、表面シート10のY方向における凸部23の長さは5〜30mmであることが好ましく、10〜25mmであることが更に好ましい。これに関連して、凸部23の長さと幅との比(長さ/幅)は0.5〜25、特に1〜10であることが好ましい。
【0018】
畝部20の凸部23における実質厚みは、見掛け厚みの60〜100%、特に70〜100%であることが好ましい。凸部23における実質厚みそれ自体は、最も大きい部位(頂部21)において0.2〜4mm、特に0.3〜3mmであることが好ましい。畝部20の凸部23がこのような厚みであると、凸部23が倒れにくくなり、表面シート10のクッション性が良くなり、更に液の吸収性(液通過性)が良好となる。また、凸部23の実質厚みが、見掛け厚みより薄い場合、具体的には90%以下の場合には、表面シート10を有する吸収性物品の使用時に、該吸収性物品が湾曲形状に変形しても、表面シート10と吸収体との間に生じる隙間が大きくなることが防止される。また表面シート10が着用者の肌に柔軟にフィットする。なお、溝部30の実質厚みは、0.1〜1mmであることが好ましい。
【0019】
畝部20における凹部22は、図1(a)中Xで示す方向に沿ってみたときに、各畝部20における凹部22が直線状に連なって凹部列22Aが形成され、かつ該凹部列22Aが表面シート10のY方向に沿って所定間隔を置いて形成されるように配置されている。図1(b)に示すように、凹部22における畝部20の厚みは、溝部30の厚みと概ね等しくなっている。したがって、凹部列22Aに沿う表面シート10の第1の面10a側は、概ね平坦になっている。
【0020】
畝部20の長手方向に沿う凹部22の長さ、換言すればY方向において隣り合う凸部23間の距離は、0.5〜5mm、特に1〜3mmであることが、凸部23の最頂部高さを維持することでクッション性や柔軟性を保ちながら、凹部22による接触面積の低下によるべたつき感低減の効果を高める点、及び表面シート10の第1の面10a側における平面方向の通気性を高める点から好ましい。また、凹部列22AのY方向に沿うピッチP1は一定になっており、1〜10mm、特に2〜5mmであることが、装着時の圧力による表面シート10の厚みの減少量(畝部20の潰れ量)を一定とし、クッション性や柔軟性、更には吸収性を安定化させる観点、及び製造制御の容易さの観点から好ましい。
【0021】
以上のとおりの凸部23及び凹部22を有する畝部20が形成されていることで、表面シート10は凹部列22Aを可撓軸として折り曲がりやすくなる。したがって、表面シート10を備えた吸収性物品は、これをその側面からみたときに、吸収性物品が長手方向にわたって表面シート10の側へ向けて容易に凹状に湾曲する(折れ曲がる)ようになる。その結果、表面シートに不規則に発生する皺による違和感や液流れの発生が抑制され、吸収性物品と着用者の身体がフィットし易くなり、表面シート10と吸収体との間も離間しづらくなる。それによって、排泄された液の透過性や、表面シート10から吸収体への液の移行性が良好になる。また、吸収性物品が着用者の身体の湾曲形状に適合するときに、表面シート10の肌対向面側に凹部22が形成され、該凹部22が可撓軸(域)として働くことによって、凹部22で吸収性物品が屈曲し凹部22を挟んで吸収性物品の長手方向両側に形成される畝部20の頂部同士が近接する。その結果、凹部22の隙間が埋められるようになるので、液をより取り込み易くなる。一方、吸収性物品における着用者の排泄部に対向する部位では、個人差はあるが凹部22による隙間が維持又は若干広がるように湾曲するため、通気性を高い状態で保つことができる。なお、吸収性物品の前方部及び後方部においては、これらの部位が着用者の身体の湾曲形状に沿った場合でも、表面シート10の移動量は凸部23の頂部に近い部分ほど大きいため、凹部22に近い部分は空間が残されており、幅方向の通気性が無くなる訳ではない。
【0022】
また、畝部20においては、凹部22における繊維密度と、凸部23の底部24(図1(c)参照)における繊維密度とが実質的に等しくなっている。これによって、表面シート10の液透過性が向上し、また表面シート10に液残りが起こりづらくなる。本明細書において、繊維密度とは、単位体積中に存在する繊維の量のことである。また、凸部23の底部24とは、凸部23のうち、厚さ方向における位置が凹部22に対応する部位のことである。つまり、凸部23のうち、凹部22の上面から上方へ突出した部位を除いた部位のことである。凹部22における繊維密度と、凸部23の底部24における繊維密度とを実質的に等しくするためには、例えば後述する図2に示す装置100を用いた表面シート10の製造過程において、流体吹き出し部130を用いた流体の吹き付けの程度を適宜調整すればよい。
【0023】
凸部23に関しては、その底部24の繊維密度と上部25(図1(c)参照)の繊維密度の大小関係に特に制限はない。柔らかい感触が得られる観点や、表面シートと肌との間の液を取り込んで上部25から底部24へ液を移動させドライ感を高めたり皮膚トラブルを防止したりする観点から、上部25の繊維密度の方が低い方が好ましい。
【0024】
凹部22における繊維密度、及び凸部23の底部24における繊維密度の値は、表面シート10の具体的な用途にもよるが、一般に0.01〜0.08g/cm3、特に0.015〜0.06g/cm3であれば、上述した有利な効果が効果的に奏される。また、凸部23の上部25における繊維密度は、0.01〜0.07g/cm3、特に0.01〜0.05g/cm3であることが好ましい。
【0025】
凹部22における繊維密度、並びに凸部23の底部24及び上部25における繊維密度の測定方法は次のとおりである。重量ε、長さ及び幅を計測した表面シート10の凸部23、凹部22、溝部30の体積を以下のように測定、算出し、表面シート全体の平均繊維密度を求めて、各部の繊維密度を算出する。具体的には、先ず、開孔31の開孔面積及び凸部23の平面(上面)面積を画像解析装置によって計測する。計測には、表面シート自体を使用することも可能であるが、開孔31、凸部23及び凹部22をマーキングした拡大写真を使用することも可能である。先ず、各部各々50〜100個の累算数より開孔31、凸部23及び凹部22の平均平面面積を計測する。計測された各平均平面面積に、開孔31、凸部23及び凹部22の個数(小数点以下一位までの値)を乗ずることで、表面シート10における開孔31、凸部23及び凹部22の平面面積が算出される。そして、表面シートの見かけ面積からこれらの各平面面積の総和を差し引くことで溝部の平面面積を算出する。次いで、凸部23の上部25の体積V1、凸部23の底部24の体積V2、凹部22の体積V3、開孔31を除いた溝部30の体積V4を算出するために、前記の拡大写真を用いて凸部23の長手方向長さL1、凹部22の長手方向長さL3を計測する。そして画像解析装置によって、断面写真から各々の部位の断面積Snを計測する。ここで、nは整数であり、凸部23の上部25は1、凸部23の底部24は2、凹部22は3、溝部30は4とする。各々の部位の体積Vnは長手方向長さと断面積を乗ずることで算出できる。凸部23の上部25の体積V1については、立体形状によって体積の修正を行う必要があり、長手方向中央で半分に切断して底部24側の面を互いに重ねることによってできる形状が、円柱・円錐・円錐台・半球と円錐台の組み合わせ(あるいは多角柱)のいずれの形状に近いか判断して体積を算出する。
【0026】
表面シートの平均繊維密度ρMは、ρM=ε/(V1+V2+V3+V4)より求められ、各々の部位における繊維密度ρnは、ρn=kn・ρMより算出できる。ここで、knは、kn=(Δ1+Δ2+Δ3+Δ4)/4Δnより求められる繊維密度係数である。繊維密度係数knは、凸部23の上部25、底部24、凹部22及び溝部30における繊維配向と略直交する断面写真(電子顕微鏡等による300〜500倍であり、底部24と上部25は同じ写真であることが好ましい)各々10枚から、10本の繊維により作られる空間面積Δn(繊維と繊維の間が最短となるよう繊維の中心を結び、なるべく多くの繊維を線で結び得られる)を計測し算出する。なお、各々の単位に関し、重量εはg、Sn及びΔnはcm2、Vnはcm3、ρM及びρnはg/cm3とする。また、凹部22の長手方向長さL3が0であっても、ρ3は算出する。
【0027】
図1(a)及び(c)に示すように、溝部30には開孔31が多数形成されている。開孔31は、表面シート10の構成繊維が寄り分けられて形成されている。開孔31は溝部30の長手方向に沿って一定の間隔をおいて規則的に、かつ間欠的に形成されている。したがって、表面シート10には、そのY方向に沿って一定の間隔をおいて配置された多数の開孔31からなる開孔列が、表面シート10のX方向にわたって多列に形成された状態になっている。すべての開孔列における開孔31の配置のピッチは同じになっている。隣り合う2つの開孔列においては、表面シート10のX方向に関して開孔31が同位置に位置している。そして、表面シート10のX方向に沿ってシート全域を見たときに、必ず開孔31が形成されていない部位が存在するように該開孔31は配置されている。更に表面シート10全体で見ると、開孔31は、シート10のX方向において多列の列をなし、かつY方向においても多列の列をなすように分散配置されている。開孔31がこのように配置されていることで、開孔31が例えば千鳥格子状に配置されている場合に比較して、繊維の寄り分けによる開孔31の形成を効率的に行うことができる。
【0028】
開孔31は、表面シート10の平面視において種々の形状をとり得る。例えば円形、長円形、楕円形、三角形、四角形、六角形等の形状、又はこれらの組み合わせの形状が挙げられる。開孔31の形状や大きさは、表面シート10の具体的な用途に応じて適宜決定すればよい。一例として、開孔31の大きさは、表面シート10の平面視における投影面積で表して、0.5〜5mm2程度であることが、液の透過性及び表面シート10の強度維持の観点から好ましい。開孔31の大きさは、画像解析システムを使用して計測する。具体的には、光源〔サンライト SL−230K2;LPL(株)社製〕、スタンド〔コピースタンドCS−5;LPL(株)社製〕、レンズ〔24mm/F2.8Dニッコールレンズ〕、CCDカメラ〔(HV−37;日立電子(株)社製)Fマウントによるレンズとの接続〕及びビデオボード〔スペクトラ3200;カノープス(株)社製〕を用いて、表面シート10の第2の面10b側の画像を取り込む。取り込まれた画像をNEXUS社製の画像解析ソフトNEW QUBE(ver.4.20)によって開孔31の部分を二値化処理する。二値化処理された画像から得られる個々の面積の平均値を開孔の大きさとする。
【0029】
開孔31はその端部が、表面シート10の第2の面10b側に突出して、突出部からなる導液管を形成していてもよい。かかる突出部を形成することで、表面シート10のクッション性が一層高くなる。また、突出部を形成することで、表面シート10の下側に位置する吸収体の構造によらず、表面シート10と吸収体との接触を維持できることから、着用者から排泄された液が、表面シート10から吸収体へ効率よく伝達される。
【0030】
開孔31と、上述した畝部20に形成された凹部22との位置関係に関して、図1(a)に示すように、畝部20の延びる方向Yにおいて隣り合う凹部22,22間の位置に隣接して、溝部30に開孔31が形成されている。換言すれば、表面シート10のX方向に沿ってみたときに、凹部22は、溝部30の延びる方向Yにおいて前後隣り合う開孔31の間に位置している。したがって、表面シート10のX方向に沿ってみたときに、開孔31は、畝部20における凹部22が形成されていない部位と隣接し、かつ溝部30における開孔31が形成されていない部位は、畝部20の凹部22と隣接している。開孔31と凹部22とがこのような位置関係になっていることで、本実施形態のナプキン1によれば、凹部22と溝部30の非開孔部とが表面シート10のX方向において隣り合うことになる。その結果、凸部23と開孔31が隣り合うことで、開孔31が着用者の肌に直接接触することが防止されるという有利な効果が奏される。
【0031】
表面シート10においては畝部20の凸部23と溝部30(ただし、開孔31を除く)では、実質的な坪量が異なっている。換言すれば、凸部23と溝部30では繊維量が異なっている。具体的には、溝部30に比べて凸部23の方が、繊維量が実質的に多くなっている。繊維量とは、表面シート10を平面視したときに、単位面積当たりに存在する繊維の量である。凸部23及び溝部30がこのように形成されていることで、凸部23を潰れにくくしつつ、柔軟に変形させることが可能となっている。凸部23及び溝部30の繊維量を坪量で表すと、凸部23の坪量は、30〜150g/m2、特に40〜100g/m2であることが好ましい。一方、溝部30の坪量は、10〜70g/m2、特に15〜50g/m2であることが好ましい。表面シート10の全体としての坪量(凹部22及び開孔31も含む)は、20〜80g/m2、特に30〜80g/m2であることが柔軟性と不織布強度の観点から好ましい。凸部23の坪量は、上述した各々の体積及び繊維密度から、重量ε、長さ及び幅を計測した表面シートにおける凸部の上部の重量ρ1・V1及び凸部の底部の重量ρ2・V2を算出し、(ρ1・V1+ρ2・V2)/S1から求める(ここでS1は、凸部23の平面(上面)面積を表す)。
【0032】
表面シート10を構成する繊維としては、天然繊維、半天然繊維、合成繊維等、当該技術分野において従来用いられている繊維を特に制限なく用いることができる。繊維間の詰まりすぎを起こさず、表面シート10に柔軟性を付与する観点から、合成繊維を用いることが好ましい。合成繊維の配合量は、表面シート全体の50重量%以上が好ましく、70%重量以上がより好ましい。もちろん、合成繊維100%から表面シート10を構成してもよい。表面シート10が合成繊維100%からなる場合、着用者の体圧が加わった状態下でも畝溝構造が潰れ難くなるので、表面シート10の第1の面10a側における平面方向の通気性が良好となる。
【0033】
使用する合成繊維としては、例えば自己融着性繊維である芯鞘構造繊維やサイドバイサイド型繊維が挙げられる。この他に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の単繊維や複合繊維を用いることができる。畝溝構造及び開孔形状の成形性や、橋渡しの結合形の成による柔軟性の向上の観点から、ポリエチレンを鞘成分に有する芯鞘構造繊維や、ポリエチレン部分を有するサイドバイサイド型繊維を用いることが好ましい。繊維の(平均)繊度は、1〜6dtexの範囲が好ましい。
【0034】
合成繊維として捲縮繊維を用いると、表面シート10のクッション性が一層向上するので好ましい。捲縮繊維としては、二次元に捲縮した繊維及びコイル状の三次元に捲縮した繊維のいずれも用いることができる。特に熱の付与によってコイル状に三次元捲縮した繊維を表面シート10に含まれていることが好ましい。このような繊維は、潜在捲縮繊維を原料として用いることで、表面シート10に含ませることができる。潜在捲縮繊維は、例えば収縮率の異なる2種類の熱可塑性樹脂を成分とする偏心芯鞘型複合繊維又はサイドバイサイド型複合繊維からなる。その例としては、特開平9−296325号公報や特許2759331号明細書に記載のものが挙げられる。
【0035】
合成繊維として、熱の付与によって伸長する繊維を用いても表面シート10のクッション性が一層高まるので好ましい。この理由は、表面シート10の製造中に付与された熱に起因する繊維間の詰まりが防止されるからである。そのような繊維としては、例えば本出願人の先の出願に係るWO2007/66599が挙げられる。
【0036】
上述の捲縮繊維及び熱伸長性繊維のいずれを用いる場合にも、それらの繊維は、表面シート10中に合計で30〜70重量%配合されていることが好ましい。
【0037】
表面シート10の構成繊維は、その繊維長に特に制限はなく、表面シート10の製造方法に応じてステープルファイバ及び連続フィラメントのいずれも用いることができる。2種以上の繊維を用いる場合、それらの繊維の繊維長は同じでもよく、又は異なっていてもよい。
【0038】
表面シート10は親水化されていることが好ましい。親水化の方法としては、例えば疎水性不織布を親水化剤で処理する方法が挙げられる。また、親水化剤を練り込んだ繊維から不織布を製造する方法が挙げられる。更に、本来的に親水性を有する繊維、例えば天然系や半天然系の繊維を使用する方法が挙げられる。不織布の製造後に、界面活性剤を塗工することでも親水化を行うことができる。
【0039】
図1(a)〜(c)に示す表面シート10は、単層の構造のものであったが、これに代えて表面シート10を2層以上の多層構造とすることもできる。表面シート10が、例えば第1の面10aを含む上層及び第2の面10bを含む下層からなる2層構造のものである場合、上層に比べ下層の毛管勾配を高めることが好ましい。これによって、第1の面10a側から第2の面10b側への液の引き込み性が促進される。毛管勾配を高める方法としては、例えば上層よりも下層の繊維の繊維径を小さくする方法が挙げられる。この場合、上層の繊維を2〜8dtexとし、下層の繊維を0.1〜6dtexとすることが好ましい。また、上層よりも下層の親水性を高めることでも、毛管勾配を高めることができる。あるいは、これら両方の手段を採用してもよい。
【0040】
次に、本実施形態の表面シート10の好適な製造方法について説明する。図2には、表面シート10の製造に好適に用いられる装置の一例が模式的に示されている。図2に示す装置100は、立体賦形部120、流体吹き出し部130、熱風吹き出し部140を備えている。
【0041】
立体賦形部120は円筒形状のものであり、図2中、矢印で示す方向に回転する。立体賦形部120の内部には空洞(図示せず)が設けられており、その空洞は吸引装置(図示せず)に接続されている。吸引装置を作動させることで、立体賦形部120は、その周面を通じて、外側から内部へ向けて流体を吸引できるようになっている。立体賦形部120はその周面に立体賦形部材121を備えている。立体賦形部材121の詳細については後述する。流体吹き出し部130は流体の吹き出しノズルを備えている。該ノズルは、立体賦形部120の軸線方向の全域にわたって流体を吹き付けることが可能な構造になっている。本実施形態において使用し得る流体の種類については後述する。熱風吹き出し部140は、熱風の吹き出しノズルを備えている。該ノズルは、立体賦形部120の軸線方向の全域にわたって熱風を吹き付けることが可能な構造になっている。なお、図2においては、流体吹き出し部130及び熱風吹き出し部140は、それぞれ一段のノズルで構成されているように表されているが、必要に応じ、流体吹き出し部130及び/又は熱風吹き出し部140を、立体賦形部120の回転方向に沿って設置された多段のノズルで構成してもよい。
【0042】
図3及び図4には、立体賦形部120における立体賦形部材121の斜視図及び平面図が示されている。図3及び図4は、図2に示す立体賦形部材121を平面に展開した状態でのものである。立体賦形部材121は、波形をしたシート状の支持体122を備えている。支持体122は、図3中、符号Xで示される方向に波状を有し、X方向と直交する方向であるY方向に沿って凸条と凹条とが交互に配置されている。凸条と凹条はX方向に延びている。Y方向は、立体賦形部120における周方向、すなわち回転方向と一致している。支持体122は、波形をなす方向Xと直交する方向Yに網目構造(ネット)をなしている。尤も、支持体122の形状はこれに限られず、例えばX、Y方向に棒状物で連結されていたり、細長い平たい板状物に穴が設けられたりしてもよい。つまり支持体122は、一方向に延びる凹凸形状をしていればよい。支持体120は、立体賦形部120の周面の曲率と同じ曲率を有するリング状の形状である。各支持体122は、等間隔で、同一の周面上に位置するように配置されている。
【0043】
支持体122の個々の網目の面積は、立体賦形部材121に十分な強度を与え、また繊維の絡み付きを防止する観点から、1.8〜30.0mm2、特に3.0〜25.0mm2であることが好ましい。
【0044】
図3に示すように立体賦形部材121は、支持体122に加えて支持体122の凸条の頂部に形成された複数の板状凸部123と凹条に配された連結部128を備えている。板状凸部123は、凸条の延びる方向と同方向に、所定間隔をおいて配置されている。連結部125は、凹条の横断面形状と概ね同形状をした板状体であり、同図中、X方向に列状に配置されている。各板状凸部123はすべて同形である。連結部128についても同様である。板状凸部123は、相対向する平行な2つの幅広面部124を有する板状の形状を有している。幅広面部124は、支持体122の延びる方向Xと直交している。すなわち、板状凸部123は、支持体122の延びる方向Xに直交する幅広面部124を有するように配置されている。また、板状凸部123は、その幅が下端から上端に向かうに連れ漸減している。板状凸部123は、先端が丸みを帯び、かつ斜辺が外方に向けて凸の緩やかな曲線を描く二等辺三角形の形状をしている。板状凸部123は、その下端において支持体122に結合している。また連結部128は、凸条の頂部とほぼ同じ高さで形成されている。本実施形態において各板状凸部123及び連結部128はすべて同形であるが、これに代えて形状の異なる(例えば高さが異なる等)板状凸部や連結部128を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
図4に示すように、複数の板状凸部123は、幅広面部124を支持体122の延びる方向Xと直交する方向Yに向け、該方向Yに沿って直列に配置されて、板状凸部群列125をなしている。板状凸部群列125は、支持体122の延びる方向Xに沿って多列に配置されている。X方向において隣り合う板状凸部群列125間は等ピッチP2になっている。また、連結部128は、その相対向する板面部が、互いに外方へ向けて緩やかに膨らんだ凸状の曲面をなしている。
【0046】
支持体122の延びる方向Xに沿って前後する板状凸部群列125間のピッチP2は、本製造方法にしたがって得られる立体賦形不織布の嵩高さや風合いに影響を与える。嵩高で風合いの良好な不織布を得る観点からは、前後する板状凸部群列125間のピッチは2.0〜20.0mm、特に5.0〜15.0mmが好ましい。また、連結部材12の高さは、支持体122の折れ曲がりやすさに影響を与えるので、凹条の深さの50〜100%に設定されることが好ましい。
【0047】
図4に示すように、立体賦形部材121においては、支持体122と、X方向に関して前後隣り合う2つの板状凸部123及びY方向に関して左右隣り合う連結部128とで取り囲まれて矩形の開口部126が形成されている。そして、複数の開口部126は、支持体122の延びる方向Xに沿って等間隔で直列に配置されている。この開口部列が、支持体122の延びる方向Xと直交する方向Yに沿って多列に配置されている。それによって、立体賦形部材121全体で見ると、開口部126は格子状に配置されている。各開口部126は、先に述べた立体賦形部120の内部に設けられた空洞に通じている。この空洞は、先に述べたとおり吸引装置に接続されているので、吸引装置を作動させると、開口部126を通じて、立体賦形部120の外側から内部へ向けて流体が吸引される。
【0048】
個々の開口部126の大きさは、本製造方法にしたがって得られる表面シート10の嵩高さに影響を与える。嵩高な表面シート10を得る観点からは、開口部126の面積は平面視において2〜170mm2、特に10〜170mm2であることが好ましい。
【0049】
立体賦形部材121は、樹脂や金属材料の適度な穴を有する網状成形体からなり支持体122と板状凸部123とが一体的になっている。したがって、立体賦形部材121における支持体122と板状凸部123との間には繊維が入り込む隙間が存在せず、網状成形体にも絡みにくくされている。その結果、立体賦形部材121を用い、後述する方法で繊維ウエブを立体賦形して得られた表面シート10を、該立体賦形部材121から取り外すときに、その操作を円滑に行うことができる。このことは、表面シート10の連続生産の点から有利である。表面シート10の取り外しが首尾良く行われないと、製造装置100を停止しなければならないことがあるからである。表面シート10の取り外しが円滑に行われることは、取り外された表面シート10に毛羽立ちが生じづらい点からも有利である。
【0050】
板状凸部123の高さH(図3参照)は、支持体122への適合性又は離間性の点から本製造方法にしたがって得られる表面シート10の嵩高さに影響を与える。嵩高な表面シート10を得る観点からは、板状凸部123の高さHは2〜30mm、特に5〜10mmであることが好ましい。同様に、板状凸部123の幅W(図4参照)も、表面シート10布の嵩高さに影響を与える。この観点から、板状凸部123の幅Wは1〜20mm、特に2〜10mmであることが好ましい。なお板状凸部123は、先に述べたとおり、凸条の頂部に結合しているので、板状凸部123の幅Wは、隣り合う支持体122の間のピッチとほぼ一致している。
【0051】
立体賦形部材121は、樹脂や金属材料から構成されていることが、支持体122と板状凸部123との一体成形の観点から好ましい。用いることのできる樹脂としては、各種熱可塑性樹脂、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド6やポリアミド66等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン等のビニル系樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。立体賦形部材21に弾性が要求される場合には、熱可塑性エラストマーを用いることができる。また、樹脂成形のしかたによっては、熱硬化性樹脂を用いることもできる。なお、立体賦形部材121に耐久性が要求される場合には、樹脂に代えて金属材料を用いてもよい。金属材料を用いる場合には、例えば鋳造や削りだしによって立体賦形部材121を製造することができる。
【0052】
以上の構成を有する立体賦形部材121を備えた立体賦形部120を有する装置100を用いた表面シート10の製造方法を、図2を参照しながら説明すると、先ず熱接着性繊維を含む繊維材料を原料として、繊維ウエブ10’を製造する。繊維ウエブ10’は、例えば原料である繊維材料をカード機によって開繊することで製造される。繊維ウエブ10’の坪量は、目的とする表面シート10の坪量と同じである。したがって繊維ウエブ10’の坪量は、目的とする表面シート10の具体的な用途に応じて適切な値が選択される。
【0053】
製造された繊維ウエブ10’は、図2に示すようにガイドロール101を介して表面シート10の製造装置100に導入される。装置100に導入された繊維ウエブ10’は、同図中、矢印で示す方向に回転する立体賦形部120の周面に配される。この状態を図5(a)に示す。この時点では、図5(a)に示すように、繊維ウエブ10’は、立体賦形部120の立体賦形部材121上に載置された状態になっている。
【0054】
繊維ウエブ10’は、立体賦形部材121の上に載置された状態で搬送され、図2に示す流体吹き出し部130の位置に到達する。流体吹き出し部130と対向する繊維ウエブ10’には、流体吹き出し部130から吹き出された流体が吹き付けられる。吹き付けられた流体は、吹き付け面の反対側の面から吸引される。すなわち、図示しない吸引装置の作動によって、立体賦形部材121に形成された開口部126(図4参照)を通じて、立体賦形部120の外側から内部へ向けて流体が吸引される。流体の吹き付け圧力によって、繊維ウエブ10’の構成繊維は、図5(b)に示すように、立体賦形部材121における板状凸部123の間に沈み込んでいく。また繊維ウエブ10’の構成繊維のうち、立体賦形部材121の板状凸部123の上に位置するものは、該板状凸部123によって繊維が寄り分けられる。
【0055】
流体吹き出し部130からの流体の吹き付け圧や、流体の種類によっては、繊維ウエブ10’は、図5(b)に示す状態から図5(c)に示す状態に変化する。図5(c)に示す状態の繊維ウエブ10’は、板状凸部123間に位置する構成繊維が、板状凸部123間に大きく沈み込んでいる。これによって、目的とする表面シートにおける凸部23が形成される。この沈み込みは、支持体122によって規制される。この規制によって、凹部22が形成される。また繊維ウエブ10’の構成繊維のうち、立体賦形部材121の板状凸部123の上に位置するものは、該板状凸部123による繊維の寄り分けが一層進行する。これによって、目的とする表面シートにおける開孔31が形成される。ウエブ10’の沈み込みの程度を適切に制御することで、凹部22における繊維密度と、凸部23の底部24における繊維密度とを実質的に等しくすることができる。
【0056】
流体吹き出し部130から吹き出される流体としては、繊維ウエブ10’への凹凸賦形の程度に応じて、例えば空気、水蒸気、水などを適宜選択して用いることができる。空気を用いる場合、これを加熱せずに用いてもよく、あるいは加熱して用いてもよい。加熱された空気を用いる場合には、繊維ウエブ10’に含まれる熱融着性繊維の融着開始温度以下に加熱しておく。加熱されているか、されていないかを問わず、流体として空気を用いる場合には、その吹き付け条件は、10m/sec以上であることが好ましく、20〜60m/secであることが更に好ましい。
【0057】
流体として水蒸気を用いる場合には、その温度は繊維ウエブ10’に含まれる熱融着性繊維の融着開始温度以下とする。また、繊維ウエブ10’への吹き付けの間に水蒸気が結露しないようにする観点から、製造装置100の雰囲気の温度を露点よりも高くしておくことが好ましい。水蒸気の吹き付けの条件は、蒸気圧0.3〜0.8MPa、蒸気温度140〜200℃とすることが好ましい。
【0058】
流体として水を用いる場合には、その吹き付けの条件は、圧力を5〜50kg/cm2とし、流量を1〜20l/m2とすることが好ましい。
【0059】
図2に戻ると、流体吹き出し部130と対向する位置を通過した繊維ウエブ10’は、立体賦形部材121と対向するように配置された押し込みロール102と立体賦形部材121との間に挿入される。押し込みロール102は、その周面が平滑になっている。押し込みロール102の周面は、例えば金属材料やゴム材料で構成されている。押し込みロール102と立体賦形部材121との間に挿入された繊維ウエブ10’は、押し込みロール102の押し込みによって、構成繊維が板状凸部123の間に更に沈み込んでいく。また、繊維ウエブ10’の構成繊維のうち、立体賦形部材121の板状凸部123の上に位置するものは、該板状凸部123によって繊維が更に寄り分けられる。
【0060】
押し込みロール102と立体賦形部材121との間を通過してきた繊維ウエブ10’は更に搬送されて、図2に示す熱風吹き出し部140の位置に到達する。熱風吹き出し部140と対向する繊維ウエブ10’には、熱風吹き出し部140から吹き出された熱風が吹き付けられる。吹き付けられた熱風は、吹き付け面と反対側の面から吸引される。この操作によって、立体賦形された繊維ウエブ10’に含まれる熱融着性繊維がそれらの交点で融着し、該繊維ウエブ10’が不織布化される。それによって、目的とする表面シート10が得られる。
【0061】
吹き付ける熱風の温度は、繊維ウエブ10’に含まれる熱融着性繊維の融着開始温度に応じて適切な値が選択される。一般に、熱融着性繊維の融着開始温度T以上で、かつT+30℃以下、特にT+5℃以上で、かつT+20℃以下の温度の熱風を用いることが、熱融着性繊維の繊維構造を保ちつつ、融着を確実に行う観点から好ましい。
【0062】
このようにして目的とする表面シート10が得られる。得られた表面シート10においては、立体賦形部材121と対向していた面に凹凸の立体形状及び開孔が賦与されている。凸部は、立体賦形部材121の板状凸部123間に沈み込んだ繊維に由来して形成されたものである。凹部は、支持体122による繊維の沈み込みの規制に由来して形成されたものである。開孔は、板状凸部123上に位置する繊維の寄り分けに由来して形成されたものである。
【0063】
得られた表面シート10は、装置100における剥離ロール103によって立体賦形部材121上から取り外される。この場合、先に述べたとおり、立体賦形部材121における支持体122と板状凸部123との間には繊維が入り込む隙間が存在していないので、立体賦形不織布1の取り外しは円滑に行われ、かつ表面シート10の表面に毛羽立ちが生じづらい。
【0064】
このようにして、目的とする不織布(表面シート)が得られる。この表面シートは、典型的には液不透過性又は撥水性の裏面シートとともに用いられ、両シート間に液保持性の吸収体を挟持して吸収性物品となされる。そのような吸収性物品としては、例えば生理用ナプキンや使い捨ておむつなど当該技術分野において知られている種々の製品が挙げられる。また、上述の方法で製造された不織布は、吸収性物品の表面シート以外の用途にももちろん使用することができる。そのような用途としては、例えば清掃用シート等が挙げられる。
【0065】
次に、本発明の第2〜第4の実施形態を、図6〜図10を参照しながら説明する。第2〜第4の実施形態に関しては、先に説明した第1の実施形態と異なる点について説明し、特に説明しない点については、先に述べた実施形態に関する説明が適宜適用される。また図6〜図10において、図1ないし図5と同じ部材に同じ符号を付してある。
【0066】
図6(a)〜(c)に示す第2の実施形態の表面シート10は、畝部20における凹部22の形状が、第1の実施形態と相違している。詳細には、第1の実施形態においては、凹部22の高さと溝部30の高さは概ね等しかったが、本実施形態においては、図6(b)から明らかなように、凹部22の方が、溝部30よりも高くなっている。
【0067】
また、本実施形態においては、第1の実施形態と同様に、畝部20の繊維量の方が溝部30の繊維量よりも多くなっており、これに加えて畝部20のみに着目すると、凹部22の繊維量よりも、凸部23の繊維量の方が多くなっている。したがって、畝部20及び溝部30全体で比較すると、(イ)凸部23での繊維量、(ロ)凹部22での繊維量、及び(ハ)溝部30(ただし開孔31を除く)での繊維量が、(イ)>(ロ)>(ハ)の順に少なくなっている。繊維量をこのように制御することで、表面シート10が、凹部列22Aを可撓軸として折れ曲げられたときに、その折り曲げ部分に皺が発生しづらくなるという利点がある。
【0068】
本実施形態の表面シート10は、第1の実施形態の表面シート10の製造に用いられる装置(図2〜図4参照)を用いて製造することができる。この場合、流体吹き出し部130(図2参照)による流体の種類や流体の吹き付け圧を適切に調整することで、図6(a)〜(c)に示す表面シート10を首尾良く製造することができる。この場合、凸部23での繊維量、凹部22での繊維量、及び溝部30での繊維量をこの順で少なくするためには、図2に示す装置100を用いた表面シート10の製造過程において、流体吹き出し部130を用いた流体の吹き付けの程度を適宜調整すればよい。
【0069】
図7(a)〜(c)に示す第3の実施形態の表面シート10は、各畝部20がジグザグ状(三角波状)に一方向(図7(a)中、Y方向)に延びている。このジグザグの屈曲点には、畝部20の凹部22が位置している。そして、ジグザグの屈曲点以外の部位が凸部23から構成されている。各畝部20がジグザグ状になっていることから、畝部20間に位置する溝部30もジグザグ状になっている。各畝部20におけるジグザグ(三角波)の振幅及び周期は同じになっている。更に位相も同じになっている。畝部20及び溝部30がこのような構成になっていることで、畝部20及び溝部30の延びる方向(図7(a)中Y方向)に沿っての液の拡散が、畝部20及び溝部30が直線状の場合に比較して妨げられやすいので、その分だけ表面シート10の厚み方向への液の透過性が優先して生じるようになる。その結果、表面シート10の表面での液流れが起こりづらくなり、液漏れが生じにくくなる。また、畝部20における凸部23の耐圧縮性が高くなり、圧力が加わった場合の凸部23の潰れや倒れが起こりにくくなる。また、表面シート10における第1の面10a側の形態安定性が高まる。
【0070】
上述の効果を一層顕著なものとする観点から、各畝部20におけるジグザグの周期は10〜50mm、特に15〜30mmであることが好ましく、振幅は3〜30mm、特に5〜15mmであることが好ましい。
【0071】
本実施形態の表面シート10は、図6(a)〜(c)に示す第2の実施形態と同様に、畝部20の凹部22の方が、溝部30よりも高さが高くなっている。ただし、第2の実施形態では、凹部22は、X方向の断面形状が一つの頂点を有する山形であるのに対し、本実施形態では二つの頂点を有する山形である点が相違する。また、本実施形態においては第2の実施形態と同様に、畝部20に着目すると、凹部22の繊維量よりも、凸部23の繊維量の方が多くなっている。したがって、畝部20及び溝部30全体で比較すると、(イ)凸部23の底部24での繊維量、(ロ)凹部22での繊維量、及び(ハ)溝部30(ただし開孔31を除く)での繊維量が、(イ)>(ロ)>(ハ)の順に少なくなっている。その結果、第2の実施形態と同様に、表面シート10が、凹部列22Aを可撓軸として折れ曲げられたときに、その折り曲げ部分に皺が発生しづらくなるという利点が生じる。
【0072】
また、本実施形態の表面シート10は、第1及び第2の実施形態と同様に、畝部20の延びる方向において隣り合う凹部22間の位置に隣接して、溝部30に開孔31が形成されている。このことによって、第1及び第2の実施形態で奏される効果と同様の効果が奏される。
【0073】
本実施形態の表面シート10は、第1及び第2の実施形態の表面シート10の製造に用いられる装置(図2〜図4参照)を用いて製造することができる。ただし、立体賦形部120における立体賦形部材121として、板状凸部123が図8に示す配置状態となっているものを用いる。同図に示す立体賦形部材121においては、板状凸部123が、支持体121の延びる方向Xに対し、90度よりも小さい角度で交差する方向に幅広面部124を有している。この交差角度θは45度以上90度未満であることが好ましい。
【0074】
図9(a)〜(c)に示す第4の実施形態の表面シート10は、図7(a)〜(c)に示す第3の実施形態と同様に、各畝部20がジグザグ状(三角波状)に一方向(図9(a)中、Y方向)に延びている。また、各畝部20におけるジグザグ(三角波)の振幅及び周期は同じになっている点も第3の実施形態と同様である。ただし、本実施形態が第3の実施形態と相違する点は、各畝部20におけるジグザグ(三角波)の位相がずれていることである。詳細には、隣り合う畝部20においては、ジグザグ(三角波)の位相が1/2波長ずれている。
【0075】
畝部20が上述のとおりジグザグの形状となっているのに対して、溝部30はジグザグの形状とはなっていない。図9(a)に示すように、溝部30は、4つの凸部23で取り囲まれた菱形の形状をした部位30aがY方向に直列に、かつ連結して配置された形状となっている。そして、各部位30aの中央に、開孔31が形成されている。したがって、本実施形態の表面シート10においては、畝部20における凹部22に隣接して、溝部30に開孔31が形成されていることになる。その結果、表面シート10が、凹部列22Aを可撓軸として折れ曲げられたときに、その可撓軸が開孔31において分断されるので、折り曲げに起因して発生する可撓軸に沿う皺が連続したものにならないという利点がある。
【0076】
本実施形態の表面シート10は、第1ないし第3の実施形態の表面シート10の製造に用いられる装置(図2〜図4参照)を用いて製造することができる。ただし、立体賦形部120における立体賦形部材121として、図10に示す形状のものを用いる。これらの図に示す立体賦形部材121においては、これまでの実施形態で用いた立体賦形部材と異なり、板状凸部に代えて四角錐状凸部127が用いられている。四角錐状凸部127はその底面が菱形であり、その菱形の短軸の対角線がX方向を向き、長軸の対角線がY方向を向くように配置されている。そして、支持体122の延びる方向Xと直交する方向Yに沿って、複数の四角錐状凸部127が、底面の菱形部分における長軸の対角線の端部を接するように直線状に配置されている。立体賦形部材121の全体の平面視では、複数の四角錐状凸部127が、千鳥格子状に配置されている。
【0077】
この支持体122では、四角錐状凸部127が位置していない部分で凹条が方向Yに沿って形成されている。四角錐状凸部127のX方向長さW2と、それ隣接する凹条のX方向長さW1は、W1がW2の0.5以下、好ましくは−0.3〜0.5である場合と、ウエブが支持体122に接し難いので、窪みを形成しなくても、得られるシートに凹部22が形成され易い。一方W1が0.5を超える場合、好ましくは0.5〜1.2では、凹部22を形成しやすくなるので、窪みを形成する。窪みの深さは、W1の30〜70%であることが好ましい。
【0078】
図10に示す立体賦形部材121を用いると、四角錐状凸部127に対応する部位に開孔31が形成される。また、4つの四角錐状凸部127で囲まれた開口部126に対応する部位に凸部23が形成される。更にY方向において前後隣り合う2つの四角錐状凸部127の間に凹部22が形成される。
【0079】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記形態に制限されない。例えば前記の各実施形態を適宜組み合わせて他の実施形態を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1(a)は、本発明の不織布の第1の実施形態の平面視における要部拡大図であり、図1(b)及び図1(c)はそれぞれ、図1(a)におけるb−b線断面図及びc−c線断面図である。
【図2】図2は、図1に示す不織布の製造に好適に用いられる装置の一例を示す模式図である。
【図3】図3は、図2に示す装置の立体賦形部における立体賦形部材を示す斜視図である。
【図4】図4は、図2に示す装置の立体賦形部における立体賦形部材を示す平面図である。
【図5】図5(a)ないし(c)は、図2に示す装置を用いた不織布の製造過程を順次示す模式図である。
【図6】図6(a)は、本発明の不織布の第2の実施形態の平面視における要部拡大図であり、図6(b)及び図6(c)はそれぞれ、図6(a)におけるb−b線断面図及びc−c線断面図である。
【図7】図7(a)は、本発明の不織布の第3の実施形態の平面視における要部拡大図であり、図7(b)及び図7(c)はそれぞれ、図7(a)におけるb−b線断面図及びc−c線断面図である。
【図8】図8は、図7(a)ないし(c)に示す不織布の製造に好適に用いられる立体賦形部材を示す平面図(図4相当図)である。
【図9】図9(a)は、本発明の不織布の第4の実施形態の平面視における要部拡大図であり、図9(b)及び図9(c)はそれぞれ、図9(a)におけるb−b線断面図及びc−c線断面図である。
【図10】図10は、図9(a)ないし(c)に示す不織布の製造に好適に用いられる立体賦形部材を示す斜視図(図3相当図)である。
【符号の説明】
【0081】
10 不織布(表面シート)
20 畝部
21 頂部
22 凹部
23 凸部
24 凸部の底部
25 凸部の上部
30 溝部
31 開孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の凸部が列状に間欠的に配されて形成された、一方向に畝状に延びる多数の畝部と、隣り合う畝部間に位置し、かつ畝部と同方向に延びる多数の溝部とを有し、溝部に開孔が形成された不織布であって、
畝部は、その延びる方向において隣り合う凸部間に、該凸部よりも高さの低い凹部を有し、かつ
畝部においては、凹部における繊維密度と、凸部の底部における繊維密度とが実質的に等しくなっている不織布。
【請求項2】
(イ)凸部での繊維量、(ロ)凹部での繊維量、及び(ハ)溝部(ただし開孔を除く)での繊維量が、(イ)>(ロ)>(ハ)の順に少なくなっている請求項1記載の不織布。
【請求項3】
畝部がジグザグ状に延びており、該畝部における凹部が、ジグザグの屈曲点に位置している請求項1又は2記載の不織布。
【請求項4】
畝部における凹部に隣接して、溝部に開孔が形成されている請求項3記載の不織布。
【請求項5】
多数の凸部が列状に間欠的に配されて形成された、一方向に畝状に延びる多数の畝部と、隣り合う畝部間に位置し、かつ畝部と同方向に延びる多数の溝部とを有し、溝部に開孔が形成された不織布であって、
畝部は、その延びる方向において隣り合う凸部間に、該凸部よりも高さの低い凹部を有し、
畝部がジグザグ状に延びており、ジグザグの屈曲点に凹部が位置している不織布。
【請求項6】
畝部の延びる方向において隣り合う凹部間の位置に隣接して、溝部に開孔が形成されている請求項5記載の不織布。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−24573(P2010−24573A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186398(P2008−186398)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】