説明

不織状の組織支持骨格

【課題】生体適合性の半月板修復装置を提供する。
【解決手段】この組織修復装置は、半月板の中の欠損部分に接触して配置されるように構成されている支持骨格を含み、この支持骨格は、高密度で乾式レイ処理された不織状の高分子材料、および、生体適合性の発泡体を含む。さらに、この支持骨格は、増加された縫合糸引出強さを賦与する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔関連出願に対するクロス・リファレンス〕
本出願は、2004年4月20日に出願されている、同時係属の米国特許出願第10/828,838号の、一部継続出願である。
〔発明の背景〕
【0002】
本発明は、全般的に、半月板の欠損(meniscal defects)を修復するための方法および装置に関連しており、特に、改善された特性を有する組織修復用の支持骨格装置(tissue repair scaffold devices)に関連している。
【0003】
半月板は、関節の骨の間に見られる、特徴づけられた組織、である。例えば、膝では、半月板は、脛骨と大腿骨との間の関節の周辺部分に存在している繊維軟骨の、C字形状の部分である。この組織は、関節の安定性を付加して、衝撃を吸収し、関節に対して潤滑性および栄養を送達することを含む、関節の健康において重要な機能、を果たしている。この結果、半月板の傷害は、変形性関節症等のような、衰弱性の疾患、を引き起こす可能性がある。
【0004】
半月板の傷害、特に断裂は、比較的に一般的な傷害である。このような傷害は、転倒、仕事に関連する行動中、競技大会の途中、または、他の多くの状況および/または活動の何らかの一つにおける、過剰動作等のような、急なねじれの種類の傷害により生じる可能性がある。加えて、断裂は、年齢と共に、徐々に進展する可能性がある。いずれの場合においても、断裂は、半月板の外側の厚い部分の中、または、内側の薄い部分の中のいずれにも、生じる可能性がある。また、断裂が半月板の小さな部分のみを含む場合もあるが、ほとんど全体の半月板に影響する場合もあり得る。
【0005】
不都合にも、損傷した半月板は、身体の他の部分において生じる正常な治癒の過程を受けることができない。半月板と滑膜との連結部分における半月板の周縁部分は、かなり脈管が多いが(赤色領域)、半月板の内側の2/3の部分は完全に脈管が存在しておらず(白色領域)、これら2つの領域の間にわずかな遷移部分(赤色−白色領域)を伴っている。機能の部分的なまたは完全な損失を結果として生じる、半月板に対する変形性のまたは外傷性の断裂は、組織が再生能をほとんど有さないこの白色領域の中で生じる場合が多い。このような断裂は、重度の関節の痛みおよびかみ合いを生じ、長期間には、変形性関節症を引き起こす、半月板の機能の損失を生じる。
【0006】
幾つかの治療方法が、現在において、半月板の傷害のために存在しているが、これらの治療の選択肢は、半月板の修復または再生のための機会をほとんど与えない。半月板の傷害の大部分は、部分的な半月板切除術中に、その不安定な組織を除去することにより、治療されている。この組織が除去された後に、さらに治療が行なわれることは全く無い。たいていの患者は、短期間では、このような治療に対して満足な応答を示すが、その手術の数年後に(すなわち、約10年以上の後に)おいて、変形性の関節の病気を発現する場合が多い。すなわち、除去された組織の量が、変形の程度および速度に、関連している。半月板の組織の大部分が傷害に関連している場合に、全体的な半月板切除術が行なわれる。その後、その患者が、著しい関節の変性を伴わずに、全体的な半月板切除術の後に、痛みを経験すれば、半月板の同種移植片(allograft)の二次的な治療が可能である。このような同種移植片の使用は、組織の入手の可能性、および、狭い適応範囲(indication)により、限られている。
【0007】
半月板の脈管のある領域内で安定化できる半月板断裂の場合に、これらの断裂は、ラピッドロック(RapidLoc)(デピュイ・マイテック社(DePuy Mitek))およびファスト・フィックス(FasT Fix)(スミス・アンド・ネフュー社(Smith & Nephew))等のような、縫合糸または同等の半月板修復装置により、修復できる。これらの修復は、それぞれの場合の約60〜80%において成功するが、修復される基準を満たす傷害の割合は15%またはそれ以下である。なお、この修復の基準は、血管の分布および断裂の種類だけでなく、半月板の安定性および完全性と、膝の安定性、および、年齢や活動等のような患者の要因とにも、基づいている。この修復が失敗すれば、その次の治療の可能な過程は、部分的か、または、全体的な半月板切除になる。
【0008】
既存の技法に関わらず、半月板組織の再生を促進できる新規な組織修復装置、ならびに、これらの組織修復装置を使用するための方法、に対する要望が、当業界に存在し続けている。
〔発明の概要〕
【0009】
本発明は、半月板の中における欠損部分に、接触した状態で、配置されるように構成されている、生体適合性の組織修復用の支持骨格(biocompatible tissue repair scaffold)を含む、生体適合性の半月板修復装置、を提供している。この支持骨格は、不織材料により形成されており、この支持骨格は、発泡体の部品を付加的に含むことができる。一態様では、この材料は、高密度の不織材料である。
【0010】
好ましくは、本発明の支持骨格の不織材料は、グリコリド、ラクチド、カプロラクトン、トリメチレンカーボネート(trimethylene carbonate)、ポリビニルアルコール、およびジオキサノン、からなる群、から選択される1種類以上のモノマー、から誘導されている少なくとも1種類のポリマー、を含む1種類以上の生体適合性のポリマーにより、形成されている。一実施形態では、この支持骨格は、生体吸収性のポリマーにより、構成されている。
【0011】
この支持骨格を形成している不織材料は、合成ポリマー繊維を用いる乾式レイ処理(dry lay process)により形成された材料、を含む。好ましくは、この不織材料は、連続状のフィラメント糸を捲縮糸(crimped yarn)に加工した後に、その捲縮糸を均一な長さの短繊維に切断することにより、製造されている。その後、好ましくは、この短繊維は、針で穴あけされた、バットまたはウエブ、に梳かれる。さらに好ましくは、この結果として得られる不織材料は、等方性の繊維配向(fiber orientation)、を有している。
【0012】
支持骨格を形成しているこの不織材料は、好ましくは、半月板修復装置として、その効力を高める望ましい材料特性を有している。本発明の一態様では、支持骨格の不織材料は、約0.1MPaよりも高い、さらに好ましくは、約1.5MPaよりも高い、弾性率と、約6Nよりも高い縫合糸引出強さ(suture pull-out strength)と、かつ/または、約0.2MPaよりも高い、さらに好ましくは、2MPaよりも高い、最大応力と、を有している。さらに、これらの特性の好ましい範囲は、約2MPa〜40MPaの範囲内の弾性率と、約6N〜45Nの範囲内の縫合糸引出強さと、約2MPa〜14MPaの範囲内の最大応力と、を含む。加えて、支持骨格の厚さは、好ましくは、約0.5mm〜1.5mmの範囲内である。
【0013】
本発明の別の態様では、修復装置は、細胞増殖を刺激するための、少なくとも1種類の生物活性物質、をさらに含んでいる。好ましくは、この生物活性物質は、多血小板血漿、軟骨由来形態形成タンパク質、増殖因子、および、これらの組み合わせ物、からなる群、から選択される。さらに好ましくは、この生物活性物質は、組換え増殖因子、特に、組換えヒト増殖因子である。また、別の実施形態では、修復装置は、生育可能な組織サンプルであって、組織修復用の支持骨格の上に配置され、その組織修復用の支持骨格の近くの天然の組織に一体化するために有効な、生育可能な組織サンプル、を含む。
【0014】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、以下の添付図面と共に検討される詳細な説明により、さらに完全に理解されるであろう。
【0015】
本発明は、半月板の中の欠損部分に接触した状態で配置されるように構成されている生体適合性の組織修復用の支持骨格、を有する半月板修復装置、を提供している。この支持骨格は、好ましくは、約1.5MPaよりも高い弾性率と、約2MPaよりも大きい最大応力と、約6Nよりも高い縫合糸保持強度と、を含む有利な機械特性を伴う、高密度で不織状の高分子材料、を含む。さらに、この支持骨格は、生体適合性の発泡体、を含んでいてよい。
【0016】
半月板の断裂等のような、小寸法の半月板の欠損は、その組織の欠損部分の中か、または、その近くに位置付け(positioning)するための、同様に小さな修復装置、を必要とする。残念ながら、このような欠損部分を修復するための従来の装置を構成するために用いられている材料の多くは、その修復装置を半月板の組織の中で無傷の状態で維持することを可能にしながら、一方で膝の関節が受ける応力に耐えるために必要とされる強度に欠けている。この結果、半月板の欠損部分を治療するための多くの試みは、植え込まれた装置が、植え込み後に、欠損部位から移動するか分解するために、失敗していた。本発明は、このような欠点を解消しており、半月板の修復のための寸法に作られていて、かつ、断裂および不所望の劣化に耐えるために十分な物理的特性を有している、支持骨格、を提供している。
【0017】
本発明の修復装置は、不織材料を含む支持骨格を含む。好ましいと考えられる不織材料は、繊維、フィラメント、または、フィルム様のフィラメント構造の、相互に組み合っている層(interlocking layers)または網状構造により作られている、柔軟で多孔質の構造を含む。このような不織材料は、既に調製または形成されている繊維のウエブ、フィラメント、または、所望の構造の配列された網状構造に加工されているフィルムにより、形成できる。
【0018】
一般に、不織材料は、形成用または搬送用の表面の上に、その構成成分(通常は繊維)を付着させることにより、形成されている。これらの成分は、乾燥状態、湿潤状態、急冷状態(quenched)、または、溶融状態、にすることが可能である。従って、この不織材料は、乾式、湿式、または、押出方式(extrusion-based)の材料、の形態にすることができ、あるいは、これらの種類の不織材料の混成物も形成可能である。このような不織材料を作成できる繊維またはその他の材料は、典型的に、合成または天然に存在するポリマーである。
【0019】
当業者は、乾式レイの支持骨格(dry laid scaffold)は、乾燥状態で、乾燥した繊維を反毛し、梳毛し、かつ/または、空気力学的に操作することにより、形成される、これらの不織材料を含むことを、認識するであろう。加えて、湿式レイの不織材料(wet laid nonwoven)は、移動しているコンベヤ等のような、所与の表面の上に堆積された、繊維を含有しているスラリーにより、形成されることが良く知られている。さらに、不織ウエブは、その水性の成分を除去して、繊維を乾燥した後に、形成される。また、押出方式の不織材料は、スパンボンド繊維(spun bond fibers)、メルト・ブロー処理した繊維(melt blown fibers)、および、多孔質フィルムの組織、により形成されている材料、を含む。さらに、これらの不織材料の混成物は、多様な積層技法により、異なる種類の不織材料の一つ以上の層を組み合わせることにより、形成できる。
【0020】
用語「不織(材料)("nonwoven")」は、本発明において用いられる場合に、さらに、当業界における熟練者において理解されているように、織り状、編み状、または、メッシュ状の、布地を含まない。加えて、本発明の不織材料は、好ましくは、半月板の修復を増進させるために理想的である機械特性を得るように設計された、所与の密度を有している。一実施形態では、この不織材料の密度は、約120mg/cc〜360mg/ccの範囲内である。
【0021】
本発明の支持骨格は、好ましくは、生体適合性のポリマーにより形成されている。さらに、さまざまな生体適合性のポリマーが、本発明による生体適合性の不織材料および/または生体適合性の発泡材料、を形成するために使用できる。これらの生体適合性のポリマーは、合成ポリマー、天然ポリマー、または、これらの組み合わせ物とすることができる。なお、本明細書においては、用語「合成ポリマー("synthetic polymer")」は、そのポリマーが天然に存在している生物材料により作られている場合でも、天然においては見られないポリマー、を意味する。また、用語「天然ポリマー("natural polymer")」は、天然に存在しているポリマー、を意味する。
【0022】
支持骨格が少なくとも1種類の合成ポリマーを含む場合の実施形態では、適当な生体適合性の合成ポリマーは、脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリアミド、チロシン誘導型ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルソエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミン基を含むポリオキサエステル、ポリ(酸無水物)、ポリホスファゼン、ポリ(プロピレンフマレート)(poly(propylene fumarate))、ポリウレタン、ポリ(エステルウレタン)(poly(ester urethane))、ポリ(エーテルウレタン)(poly(ether urethane))、ならびに、これらの混合物およびコポリマーからなる群から選択される、ポリマー、を含むことができる。さらに、本発明において使用するための適当な合成ポリマーは、コラーゲン、ラミニン、グリコサミノグリカン、エラスチン、トロンビン、フィブロネクチン、デンプン、ポリ(アミノ酸)、ゼラチン、アルギネート、ペクチン、フィブリン、酸化セルロース、キチン、キトサン、トロポエラスチン、ヒアルロン酸、シルク、リボ核酸、デオキシリボ核酸、ポリペプチド、タンパク質、多糖類、ポリヌクレオチド、および、これらの組み合わせ物において見られるシーケンスに基づく、生体合成ポリマー、も含むことができる。
【0023】
本発明の目的において、脂肪族ポリエステルは、ラクチド(D−、L−およびメソ型のラクチドを含む)、グリコリド(グリコール酸を含む)、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)(p-dioxanone (1,4-dioxan-2-one))、トリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)(trimethylene carbonate (1,3-dioxan-2-one))、トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、1,4−ジオキセパン−2−オン(1,4-dioxepan-2-one)(この二量体の1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオン(1,5,8,12-tetraoxacyclotetradecane-7,14-dione))、1,5−ジオキセパン−2−オン(1,5-dioxepan-2-one)、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン(6,6-dimethyl-1,4-dioxan-2-one)、2,5−ジケトモルホリン(2,5-diketomorpholine)、ピバロラクトン(pivalolactone)、α,αジエチルプロピオラクトン(α, α diethylpropiolactone)、エチレンカーボネート、エチレンオキサレート、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン(3-methyl-1,4-dioxane-2,5-dione)、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン(3,3-diethyl-1,4-dioxan-2,5-dione)、6,6−ジメチル−ジオキサン−2−オン(6,6-dimethyl-dioxepan-2-one)、6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オン(6,8-dioxabicycloctane-7-one)、および、これらの混合物の、ホモポリマーおよびコポリマー、を含むが、これらに限定されない。さらに、本発明において用いられる脂肪族ポリエステルは、直鎖、枝分かれ、または、星形の構造、を有するホモポリマーおよびコポリマー(ランダム型、ブロック型、セグメント型、テーパー状のブロック型、グラフト型、トリブロック型等)、とすることができる。別の有用なポリマーは、L−ラクチド、D,L−ラクチド、乳酸、グリコリド、グリコール酸、パラ−ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、および、ε−カプロラクトンにより作られている、ポリホスファゼン、コモノマー(co-monomer)、ターモノマー(ter-monomer)、および、さらに高次の混合モノマーに基くポリマー、を含む。
【0024】
支持骨格が少なくとも1種類の天然のポリマーを含む実施形態では、これらの天然ポリマーの適当な例は、フィブリン基材型の材料、コラーゲン基材型の材料、ヒアルロン酸基材型の材料、糖タンパク質基材型の材料、セルロース基材型の材料、シルク、および、これらの組み合わせ物、を含むが、これらに限定されない。さらに、非限定的な例として、生体適合性の支持骨格は、コラーゲン基材型で小形の腸粘膜下組織、を含むことができる。
【0025】
当業者は、本発明の生体適合性の支持骨格を形成するための適当な材料の選択が幾つかの要因により決まること、を認識できるであろう。これらの要因は、生体内の機械的な性能、すなわち、細胞接着、増殖、移動、および、分化に関する物質、に対する細胞応答と、生体適合性と、任意に、生体吸収(または生体分解)速度と、を含む。別の関連する要因は、ポリマーの化学的な組成、その成分の立体的な分布、ポリマーの分子量、および、結晶化の程度、を含む。
【0026】
図1Aおよび図1Bは、本発明の修復装置として有用な、例示的な不織状の支持骨格の、走査電子顕微鏡写真、を示している。図1Aは、275.5mg/ccの密度を伴う、ポリジオキサノン(「PDS」)の不織材料の上面図であり、一方で、図1Bは、同一の不織材料の断面図を示している。また、図2Aおよび図2Bは、236.6mg/ccの密度を伴う50/50PDS/ビクリル(VICRYL)(「ビクリル(VICRYL)」はポリグリコール酸およびポリ乳酸のコポリマー)のポリマー、を含む別の例示的な不織材料の、上面図および断面図、をそれぞれ示している。
【0027】
一実施形態では、本発明の支持骨格は、不織材料に結合している生体適合性の発泡体の成分、を含む。一態様では、この発泡材料は、不織材料の片面または両面の上の層として、形成されている。あるいは、この発泡材料および不織材料は、この発泡体の成分がこの不織材料の中に一体化されて、その発泡体の気孔が不織材料の中に浸透することにより、その不織材料の成分に対して相互に連結するように、相互に連結できる。好ましい発泡材料は、連続気泡型の気孔構造を有する材料を含む。
【0028】
図3A〜図3Dは、240mg/ccの密度のPDSの不織材料、および、この不織材料に相互に連結している、65/35のポリグリコール酸(「PGA」)/ポリカプロラクトン(「PCL」)の発泡体、を含む複合体の、発泡体/不織材料の支持骨格、を示している。図3Aおよび図3Bは、上面図および下面図をそれぞれ示している。図3Cおよび図3Dは、90倍および250倍の倍率における断面図をそれぞれ示している。これらの断面図により示されているように、上記不織材料の各繊維は、発泡体の中に広がっていて、この発泡体に相互に連結している。
【0029】
本発明の一実施形態では、この発泡材料は、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)中における、ポリマーの0.1グラム/デシリットル(g/dL)の溶液中において、25℃で決定される場合に、約1.2dL/g〜4dL/g、さらに好ましくは約1.2dL/g〜2dL/g、最も好ましくは約1.4dL/g〜2dL/gの範囲内の、固有粘度を有するポリマー等のような、弾性コポリマー、を含む。また、適当なエラストマーは、好ましくは、高い割合の伸び率と低い弾性率とを示すと共に、良好な引張強さと良好な回復特性とを有している。本発明の好ましい実施形態では、このエラストマーは、約200パーセントよりも高い、好ましくは約500パーセントよりも高い、伸び率を示す。さらに、これらの伸び率および弾性の特性に加えて、このエラストマーは、約3.45×106 Pa(約500psi)よりも大きい、好ましくは、約6.9×106 Pa(1,000psi)よりも大きい、引張強さ、および、約8.93kg/cm(約50ポンド/インチ)よりも大きい、好ましくは、約14.29kg/cm(約80ポンド/インチ)よりも大きい、引裂強さも有する必要がある。
【0030】
例示的な生体適合性のエラストマーは、約35:65〜約65:35、さらに好ましくは、45:55〜35:65の、グリコリドに対するε−カプロラクトンのモル比率を有する、ε−カプロラクトンおよびグリコリドの弾性コポリマーと、ラクチドに対するε−カプロラクトンのモル比率が、約95:5〜約30:70、さらに好ましくは45:55〜30:70または約95:5〜約85:15である、ε−カプロラクトンおよびラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、これらの混合物、ならびに、乳酸のポリマーおよびコポリマーを含む)の、弾性コポリマーと、ラクチドに対するp−ジオキサノンのモル比率が、約40:60〜約60:40である、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)(p-dioxanone(1,4-dioxan-2-one))およびラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、これらの混合物、ならびに、乳酸のポリマーおよびコポリマーを含む)の、弾性コポリマーと、p−ジオキサノンに対するε−カプロラクトンのモル比率が、約30:70〜約70:30である、ε−カプロラクトンおよびp−ジオキサノンの、弾性コポリマーと、トリメチレンカーボネートに対するp−ジオキサノンのモル比率が、約30:70〜約70:30である、p−ジオキサノンおよびトリメチレンカーボネートの、弾性コポリマーと、グリコリドに対するトリメチレンカーボネートのモル比率が、約30:70〜約70:30である、トリメチレンカーボネートおよびグリコリド(ポリグリコール酸を含む)の、弾性コポリマーと、ラクチドに対するトリメチレンカーボネートのモル比率が、約30:70〜約70:30である、トリメチレンカーボネートおよびラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、これらの混合物、ならびに、乳酸のさまざまなポリマーおよびコポリマーを含む)の、弾性コポリマーと、これらの混合物と、を含むが、これらに限定されない。さらに、別の適当な生体適合性のエラストマーの例が、米国特許第5,468,253号に記載されている。
【0031】
生体適合性の発泡材料はまた、組織の内部成長を可能にするための、気孔(pores)または孔(perforations)を伴う、薄いエラストマーのシート、も含むことができる。このようなシートは、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、および、ポリジオキサノン(PDS)の混合物またはコポリマーにより、形成することが可能である。
【0032】
別の実施形態では、発泡体の成分は、35:65の、ε−カプロラクトンとグリコリドとのコポリマーである、エラストマーを含む。さらに別の実施形態では、組織支持骨格で用いる発泡体は、40:60の、ε−カプロラクトンとラクチドとのコポリマーとすることができる。さらに別の実施形態では、発泡体の成分は、35:65のε−カプロラクトンおよびグリコリドのコポリマーと、40:60のε−カプロラクトンおよびラクチドのコポリマーとの50:50の混合物である。
【0033】
また、所与の勾配様の構造で、一つの組成から別の組成に遷移している、ポリマー混合物を使用することも、望ましい場合がある。このような勾配様の構造を有する支持骨格は、軟骨等のような、天然に存在する組織の構造を修復または再生するための組織工学の用途で、特に有利である。例えば、ε−カプロラクトン−コ−グリコリド(ε-caprolactone-co-glycolide)とε−カプロラクトン−コ−ラクチド(ε-caprolactone-co-lactide)との、エラストマー、を(例えば、約5:95のモル比率において)混合することにより、例えば、軟骨から骨に到る遷移に類似している様式で、比較的に軟質のスポンジ状の物質から比較的に硬質の剛性の物質に遷移している、支持骨格が形成できる。明らかに、当業者であれば、この勾配の作用を調節するために、または、異なる勾配(例えば、異なる吸収特性、応力応答特性、または、異なる弾性の程度)を与えるために、別のポリマーの混合物が使用可能であることを認識するであろう。
【0034】
前述したように、本発明の支持骨格は、多数の望ましい特性を有している。一実施形態では、本発明の装置は、6Nよりも大きい、好ましくは、約6N〜45Nの範囲内の縫合糸引出強さ、を有している。支持骨格は、好ましくは、0.1MPaよりも大きい、さらに好ましくは、2.0MPaよりも大きく、一実施形態では、約2MPa〜40MPaの範囲内である、弾性率を有している。さらに、支持骨格の別の望ましい特性は、最大応力および剛性を含む。好ましくは、この最大応力は、0.2MPaよりも大きく、さらに好ましくは、2MPaよりも大きく、一実施形態では、約2MPa〜14MPaの範囲内である。また、この支持骨格の剛性は、0.5N/mmよりも大きいこと、が好ましい。従来の半月板移植装置に比べて、これらの特性は、本発明の支持骨格を、膝関節内において望まれる諸条件に対して、比較的に良好に適合させ、インプラントの移動および分解の、危険性、を比較的に少なくしながら、その位置を固定できる。
【0035】
本発明の不織材料は、モノフィラメント、より糸、糸、組み糸(braids)、または、これらの束または組み合わせ物、等のような、多様な繊維、を含むこともできる。これらの繊維は、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDS)、トリメチレンカーボネート(TMC)、および、これらのコポリマー、または、混合物等のような、生体吸収性の材料を含む、前述した生体適合性の材料のうちの任意の物により、構成できる。これらの繊維はまた、シルクおよびコラーゲン基材の材料を含む、天然ポリマーに基づく任意の生体適合性の材料により、作ることも可能である。また、これらの繊維は、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、および、ポリ(ビニルアルコール)等のような、非吸収性である任意の生体適合性の繊維により、作ることも可能である。一例の好ましい実施形態では、これらの繊維は、ポリジオキサノンにより形成されている。
【0036】
また、別の実施形態では、前述した生体適合性のポリマーは、連続気泡型の気孔構造を伴う気孔を有する高分子の発泡体の成分、を形成するために用いられている。この気孔寸法は、変更可能であるが、好ましくは、これらの気孔は、組織の内部成長を可能にする大きさに、作られている。さらに好ましくは、の気孔寸法は、約25〜1000μmの範囲内、さらに好ましくは、約50〜500μmの範囲内である。
【0037】
生育可能な組織もまた、本発明の支持骨格の中に含むことができる。この供給源は、変更可能であり、その組織は、多様な形態を採ることができるが、一実施形態では、この組織は、微細に切り刻んだ組織の断片の形態であり、このような断片は、組織の再成長の効果を高めて、治癒性の応答を助長する。また、別の実施形態では、この生育可能な組織は、組織の再生および/または再造形が可能な生育可能な細胞を含む健康な組織から採集した、組織の断片または細片の形態、にすることができる。
【0038】
前述のような生育可能な組織を得るために使用できる適当な組織は、例えば、軟骨組織、半月板組織、靭帯組織、腱組織、皮膚組織、骨組織、筋肉組織、骨膜組織、心膜組織、滑膜組織、神経組織、脂肪組織、腎組織、骨髄、肝組織、膀胱組織、膵臓組織、脾臓組織、椎間板組織、胎芽組織、歯根膜組織、脈管組織、血液、および、これらの組み合わせ物、を含む。また、このような組織インプラントを構成するために用いられる組織は、自家組織、同種異系組織、または、異種組織、とすることができる。さらに、好ましい実施形態では、この生育可能な組織は、半月板組織である。
【0039】
この生育可能な組織は、任意に、ゲル様キャリアまたは接着剤等のようなキャリアを含む、多様な別の材料と共に、組み合わせることも可能である。非限定的な例として、このゲル様キャリアは、ヒアルロン酸、フィブリン接着剤、フィブリン凝固物、コラーゲン・ゲル、コラーゲン基材型接着剤、アルギネート・ゲル、架橋アルギネート、キトサン、合成アクリレート基材型ゲル、多血小板血漿(PRP)、乏血小板血漿(PPP)、PRP凝固物、PPP凝固物、血液、血液凝固物、血液成分、血液成分凝固物、マトリゲル(Matrigel)、アガロース、キチン、キトサン、多糖類、ポリ(オキシアルキレン)、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)のコポリマー(copolymer of poly(ethylene oxide)-poly(propylene oxide))、ポリ(ビニルアルコール)、ラミニン、エラスチン(elasti)、プロテオグリカン、可溶化基底膜、または、これらのさまざまな組み合わせ物、等のような、生物学的なまたは合成の、ヒドロゲル、とすることができる。また、適当な接着剤は、ヒアルロン酸、フィブリン接着剤、フィブリン凝固物、コラーゲン・ゲル、コラーゲン基材型接着剤、アルギネート・ゲル、架橋アルギネート、ゼラチン−レゾルシン−ホルマリン基材型接着剤、イガイ基材型接着剤(mussel-based adhesive)、ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)基材型接着剤、キトサン、トランスグルタミナーゼ、ポリ(アミノ酸)基材型接着剤、セルロース基材型接着剤、多糖類基材型接着剤、合成アクリレート基材型接着剤、多血小板血漿(PRP)、乏血小板血漿(PPP)、PRP凝固物、PPP凝固物、血液、血液凝固物、血液成分、血液成分凝固物、ポリエチレングリコール基材型接着剤、マトリゲル、モノステアロイルグリセロールコ−スクシネート(Monostearoyl Glycerol co-Succinate)(MGSA)、モノステアロイルグリセロールコ−スクシネート/ポリエチレングリコール(MGSA/PEG)、のコポリマー、ラミニン、エラスチン、プロテオグリカン、および、これらの組み合わせ物、を含むが、これらに限定されない。
【0040】
この生育可能な組織はまた、この生育可能な組織の周囲の細胞外基質からの組織の移動を容易にするために、基質消化酵素に接触させることも可能である。すなわち、これらの酵素は、細胞基質からの、組織欠損部分または傷害部分、あるいは支持骨格材料の中への、細胞の移動の速度を高めるために、使用できる。本発明において使用可能である適当な基質消化酵素は、コラーゲナーゼ、コンドロイチナーゼ、トリプシン、エラスターゼ、ヒアルロニダーゼ、ペプチダーゼ、サーモリシン、基質メタロプロテイナーゼ、ゼラチナーゼ、および、プロテアーゼ、を含むが、これらに限定されない。好ましくは、ゲル様キャリア中での切り刻んだ組織粒子の濃度は、およそ1〜1000mg/cm3の範囲内、さらに好ましくは、約1〜200mg/cm3の範囲内である。
【0041】
本発明の別の実施形態では、生物活性物質を、組織の支持骨格の中に組み込むか、これに対して適用することも可能であり、かつ/または、この物質を上記の生育可能な組織に対して適用できる。好ましくは、この生物活性物質は、この生育可能な組織を支持骨格に添加する前に、その支持骨格の中に組み込むか、その上に塗布される。この生物活性物質は、傷害の部位に存在する場合に、その影響を受けている組織の治癒および/または再生を助長する、多様なエフェクターの中から、選択できる。さらに、治癒を実際に助長して促進させる配合物または物質であることに加えて、このエフェクターは、感染を予防する配合物または物質(例えば、抗菌剤および抗生物質)、炎症を減少させる配合物または物質(例えば、抗炎症剤)、酸化再生セルロース(例えば、エシコン・インコーポレイテッド(Ethicon, Inc.)から入手可能な、インターシード(INTERCEED)(登録商標)およびサージセル(SURGICEL)(登録商標))、等のような、接着の形成を防ぐか最小限にする配合物、ヒアルロン酸、および、免疫系統を抑制する配合物または物質(例えば、免疫抑制剤)、を含んでいてもよい。
【0042】
非限定的な例として、本発明のインプラントの中に存在している別の種類のエフェクターは、異種または自己の増殖因子、タンパク質(基質タンパク質を含む)、ペプチド、抗体、酵素、血小板、多血小板血漿、糖タンパク質、ホルモン、サイトカイン、グリコサミノグリカン、核酸、鎮痛薬、ウイルス、ウイルス粒子、および、細胞型、を含むことができる。さらに、同一か、または、異なる機能の1種類以上のエフェクターがこのインプラントの中に組み込まれていてもよいことが理解されるであろう。また、前述のエフェクターは、ヒトまたはヒト以外(例えば、ウシ、ネコ、イヌ、ブタ等)の由来とすることが可能であることも、当然に、理解されるであろう。さらに、本発明のインプラントの中に存在しているエフェクターは、天然に存在しているか、組換え(すなわち、遺伝子工学技法を用いて作られている)であってよいことも、当然に、理解されるであろう。
【0043】
適当なエフェクターの例は、傷害を受けたまたは損傷した組織の、治癒および/または再生を助長することが知られている複数の異種または自己の増殖因子、を含む。これらの増殖因子は、支持骨格の中に直接的に組み込むことができ、あるいは、この支持骨格は、例えば、血小板等のような、増殖因子の供給源、を含むことができる。「生物活性物質("bioactive agents")」は、本明細書において用いられる場合に、以下の、すなわち、走化性の物質、治療剤(例えば、抗生物質、ステロイド系および非ステロイド系の鎮痛薬および抗炎症薬、免疫抑制剤および抗癌薬、等のような、抗拒絶薬)、さまざまなタンパク質(例えば、短期間ペプチド、骨形態発生タンパク質、糖タンパク質およびリポタンパク質)、細胞接着媒体、生物学的に活性なリガンド、インテグリン結合性シーケンス、リガンド、さまざまな増殖用および/または分化用の物質およびそのフラグメント(例えば、表皮増殖因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、脈管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(例えば、bFGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン由来増殖因子(例えば、IGF−I、IGF−II)および形質転換増殖因子(例えば、TGF−βI−III)、副甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモン関連ペプチド、骨形態発生タンパク質(例えば、BMP−2、BMP−4、BMP−6、BMP−12)、ソニックヘッジホッグ(sonic hedgehog)、増殖分化因子(例えば、GDF5、GDF6、GDF8)、組換ヒト増殖因子(例えば、MP52)、軟骨由来形態発生タンパク質(CDMP−1)、特異的な増殖因子のアップレギュレーションに影響する小分子、テネイシン−C、ヒアルロン酸、硫酸コンドロイチン、フィブロネクチン、デコリン、トロンボエラスチン、トロンビン由来ペプチド、ヘパリン結合性ドメイン、ヘパリン、硫酸ヘパラン、DNAフラグメントおよびDNAプラスミド、の内の1種類以上、を含むことができる。同様に、適当なエフェクターは、前述の物質の、アゴニストおよび拮抗物質も含む。さらに、増殖因子は、前述の増殖因子の組み合わせ物、も含むことができる。加えて、これらの増殖因子は、血液中の血小板により供給される自己の増殖因子とすることができる。この場合に、この血小板からの増殖因子はさまざまな増殖因子の不確定な混合物になる。さらに、上記の生物活性物質はヒトまたはヒト以外(例えば、ウシ、ネコ、イヌ、ブタ等)の由来とすることが可能である。さらに、これらの生物活性物質は天然または組換え由来であってよい。好ましい実施形態では、この生物活性物質は、組換えのヒトタンパク質(例えば、rhEGF、rhIGF−1、rhBMP、および、rhGDF5)、である。また、他の上記のような物質が整形外科の分野で治療的価値を有する場合には、それらの物質の少なくとも一部が本発明において有用性を有することが予想され、これらの物質は、他に明らかに限定されていない限りにおいて、「単一の生物活性物質("bioactive agent")」、または、「複数の生物活性物質("bioactive agents")」の意味に、当然に含まれるであろう。
【0044】
エフェクターとして使用するために適当な、生物学的に誘導されている物質は、以下の、すなわち、骨(自己移植片、同種移植片および異種移植片)および骨の誘導体、例えば、半月板組織を含む軟骨(自己移植片、同種移植片および異種移植片)およびその誘導体、靭帯(自己移植片、同種移植片および異種移植片)およびその誘導体、例えば、粘膜を含む腸管組織の誘導体(自己移植片、同種移植片および異種移植片)、例えば、粘膜を含む胃の組織の誘導体(自己移植片、同種移植片および異種移植片)、例えば、粘膜を含む膀胱組織の誘導体(自己移植片、同種移植片および異種移植片)、例えば、粘膜を含む消化組織(alimentary tissue)の誘導体(自己移植片、同種移植片および異種移植片)、例えば、粘膜を含む呼吸組織の誘導体(自己移植片、同種移植片および異種移植片)、例えば、粘膜を含む生殖組織の誘導体(自己移植片、同種移植片および異種移植片)、例えば、肝臓の基底膜を含む肝組織の誘導体(自己移植片、同種移植片および異種移植片)、皮膚組織の誘導体、多血小板血漿(PRP)、乏血小板血漿、骨髄穿刺液、鉱物質除去した骨の基質、インスリン誘導型の増殖因子、全血、フィブリン、および、血液凝固物、の1種類以上、を含む。また、精製されたECMおよびその他のコラーゲンの供給源も、適当な生物学的に誘導された物質、である。さらに、他の上記のような物質がこの整形外科の分野で治療的価値を有していれば、これらの物質の少なくとも一部が本発明において有用性を有することになり、このような物質は、他に明らかに限定されていない限りにおいて、「単一の生物学的に誘導されている物質("biologically derived agent")」、および、「複数の生物学的に誘導されている物質("biologically derived agents")」の意味に、当然に含まれるであろう。
【0045】
生物学的に誘導された物質はまた、生体再造形可能なコラーゲン質の組織基質、も含む。これらの用語「生体再造形可能なコラーゲン質の組織基質("bioremodelable collageneous tissue matrix")」および「天然に存在している生体再造形可能なコラーゲン質の組織基質("naturally occurring bioremodelable collageneous tissue matrix")」は、皮膚、動脈、静脈、心膜、心臓弁、硬膜、靭帯、骨、軟骨、膀胱、肝臓、胃、筋膜、および、腸管、ならびに、その他の任意の供給源からなる群から選択される、天然組織から誘導された基質、を含む。なお、用語「天然に存在している生体再造形可能なコラーゲン質の組織基質」は、浄化、加工処理、滅菌処理、および、任意に架橋処理されている基質材料を意味すること、を意図しているが、天然の繊維を精製してその精製された天然の繊維から基質材料を再生するための、天然に存在している生体再造形可能なコラーゲン質の組織基質、の定義の範囲の中には、含まれない。
【0046】
インプラントの中に存在することのできるタンパク質は、例えば、そのインプラントの中に収容されている血小板、ならびに、単離されている形態でそのインプラントの中に存在している血小板等のような、細胞またはその他の生物学的な供給源から分泌されるタンパク質を含む。このタンパク質の単離された形態は、典型的に、純度が約55%またはそれ以上であり、すなわち、他の細胞の、タンパク質、分子、破片等から、単離されている形態である。さらに好ましくは、この単離されたタンパク質は、少なくとも65%の純度のタンパク質であり、最も好ましくは、少なくとも約75〜95%の純度のタンパク質である。なお、前述のことにかかわらず、当業者は、約55%よりも低い純度を有するタンパク質も、依然として本発明の範囲内であると考えられること、を認識するであろう。本明細書においては、用語「タンパク質("proteins")」は、糖タンパク質、リポタンパク質、プロテオグリカン、ペプチド、および、これらのフラグメント、を含む。さらに、上記のエフェクターとして有用なタンパク質の例は、プレイオトロフィン、エンドセリン、テネイシン、フィブロネクチン、フィブリノゲン、ビトロネクチン、V−CAM、I−CAM、N−CAM、セレクチン、カドヘリン、インテグリン、ラミニン、アクチン、ミオシン、コラーゲン、マイクロフィラメント、中間フィラメント、抗体、エラスチン、フィブリリン、および、これらのさまざまなフラグメント、を含むが、これらに限定されない。
【0047】
細胞接着では、所与の役割を果たす高度に荷電した多糖類である、グリコサミノグリカンもまた、本発明によるエフェクターとして、役立つことができる。このような、エフェクターとして有用である、例示的なグリコサミノグリカンは、硫酸ヘパラン、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヒアルロナン(ヒアルロン酸として知られている)、および、これらの組み合わせ物、を含むが、これらに限定されない。
【0048】
本発明の組織支持骨格はまた、その中に含まれている細胞、も有することができる。本発明によるエフェクターとして役立つことのできる、適当な細胞型は、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、線維芽細胞、幹細胞、多能性細胞、軟骨前駆細胞(chondrocyte progenitors)、軟骨細胞、内皮細胞、マクロファージ、白血球、脂肪細胞、単核細胞、プラスマ細胞、マスト細胞、臍帯細胞、間質細胞、間葉系幹細胞、内皮細胞、筋芽細胞、腱細胞、靭帯線維芽細胞、神経、骨髄細胞、滑膜細胞、胎芽幹細胞、脂肪組織から誘導された前駆体細胞、抹消血液前駆細胞、成人組織から単離された幹細胞、遺伝的に形質転換された細胞、軟骨細胞とその他の細胞との組み合わせ物、骨細胞とその他の細胞との組み合わせ物、滑膜細胞とその他の細胞との組み合わせ物、骨髄細胞とその他の細胞との組み合わせ物、間葉細胞とその他の細胞との組み合わせ物、間質細胞とその他の細胞との組み合わせ物、幹細胞とその他の細胞との組み合わせ物、胎芽幹細胞とその他の細胞との組み合わせ物、成人組織から単離された前駆体細胞とその他の細胞との組み合わせ物、抹消血液前駆細胞とその他の細胞との組み合わせ物、成人組織から単離された幹細胞とその他の細胞との組み合わせ物、および、遺伝的に形質転換された細胞とその他の細胞との組み合わせ物、を含むが、これらに限定されない。さらに、別の細胞がこの整形外科の分野で治療的価値を有することが分かった場合には、それらの細胞の少なくとも一部が本発明において有用性を有することが予想され、これらの細胞は、他に明らかに限定されていない限りにおいて、「単一の細胞("cell")」または「複数の細胞("cells")」の意味に、当然に含まれるであろう。
【0049】
細胞は、典型的に、それぞれの表面レセプター分子を有しており、これらの分子は、同先祖のリガンド(例えば、所与の刺激因子)に対して、応答する。さらに、刺激因子は、その同先祖のレセプターに接触すると、特異的な生物学的作用を生じるレセプターを有する細胞、を誘発する。例えば、所与の刺激因子(リガンド)に応答して、所与の細胞はCa+2のような、かなりの量の二次的なメッセンジャー、を生じる可能性があり、これらのメッセンジャーは、さらに、プロテインキナーゼC(本発明者らの実施例に相応している)、等のような、タンパク質のリン酸化等の、細胞過程、に後の影響を及ぼすことになる。一部の例では、一定の細胞が適当な刺激因子により刺激されると、その細胞は、通常は、所与のタンパク質(糖タンパク質、プロテオグリカン、および、リポタンパク質)の形態で、細胞メッセンジャー、を分泌する。このような細胞メッセンジャーは、所与の抗体(例えば、プラスマ細胞から分泌される)、所与のホルモン(例えば、所与のパラクライン、オートクライン、または、外分泌ホルモン)、所与のサイトカイン、または、これらの天然または合成のフラグメント、とすることができる。
【0050】
本発明の組織支持骨格はまた、核酸、ウイルス、またはウイルス粒子が関連の遺伝子を送達する遺伝子療法の技法で、使用することも可能であり、この遺伝子は、関連の少なくとも1種類の遺伝子産物を、特定の細胞または細胞型に、コード化する。従って、この生物学的なエフェクターは、所与の核酸(例えば、DNA、RNA、または、所与のオリゴヌクレオチド)、ウイルス、ウイルス粒子、または、非ウイルスベクター、とすることができる。これらのウイルスおよびウイルス粒子は、DNAまたはRNA、のウイルス、であってよく、あるいは、これらのウイルスから誘導することも可能である。好ましくは、関連の遺伝子産物は、タンパク質、ポリペプチド、干渉リボ核酸(interference ribonucleic acid)(iRNA)、および、これらの組み合わせ物からなる群から、選択される。
【0051】
適用可能な核酸および/またはウイルス性の物質(すなわち、ウイルスまたはウイルス粒子)が組織修復装置の生体適合性の支持骨格の中に組み込まれると、その装置は、生物学的な応答を導き出すために、特定の部位の中に、植え込むことが可能になる。核酸またはウイルス性の物質は、細胞により採取することが可能であり、これらの細胞がコード化するいずれのタンパク質も、これらの細胞により、局所的に生成できる。一実施形態では、核酸またはウイルス性の物質は、切り刻んだ組織の懸濁液の組織フラグメントの中の細胞により、採取することができ、あるいは、他の実施形態では、核酸またはウイルス性の物質は、傷害を受けた組織の部位の周囲の組織の中における細胞により、採取できる。当業者であれば、生成されるタンパク質が、前述した種類のタンパク質、または、傷害または病気を治癒して、感染を抑制し、あるいは、炎症応答を減少させるための、高められた組織の能力を助長する、類似のタンパク質となることが可能であることを認識するであろう。核酸はまた、組織修復の過程またはその他の正常な生物学的な過程に、否定的に影響する可能性のある望ましくない遺伝子産物の発現を阻止するために、使用することもできる。すなわち、DNA、RNA、および、ウイルス性の物質は、遺伝子発現ノックアウト機能としても知られている、このような発現阻止機能、を達成するために、用いられる場合が多い。
【0052】
また、当業者であれば、生物活性物質の確認は、医療科学の原理および適用可能な治療目的に基づいて、医者により決定できること、を認識するであろう。また、生物活性物質または組織修復装置のエフェクターが、その組織支持骨格の製造の前、その途中、または、その後に、あるいは、その装置の外科的な配置の前、その途中、または、その後に、その組織支持骨格の中に組み込むことが可能であることも、理解されるであろう。
【0053】
外科的な配置の前に、組織支持骨格は、生物活性物質を含む適当な容器の中に、配置できる。その後、適当な時間の経過後および適当な条件下で、この支持骨格は、生物活性物質で含浸される。あるいは、この生物活性物質は、例えば、この生物活性物質を上記の支持骨格の中に注入するための、適当なゲージの注射器を用いることにより、その支持骨格の中に組み込むことができる。また、別の実施形態では、生物活性物質は、凍結乾燥処理中に、支持骨格中に組み込むことができる。さらに、生物活性物質を支持骨格に対して混合する処理、加圧する処理、塗布する処理、遠心させる処理(centrifuging)、および、配置する処理(placing)、等のような、当業者に良く知られている別の方法も、所与の支持骨格に適当な生物活性物質を装填するために、適用できる。あるいは、この生物活性物質は、支持骨格の中に注入する前に、ゲル様キャリアと共に、混合することも可能である。
【0054】
外科的な配置に続いて、生体適合性の支持骨格では、生物活性物質が全く存在していない場合の装置に、生物学的な物質を浸み込ませることも可能であり、あるいは、支持骨格が少なくとも1種類の生物活性物質を含んでいる場合の装置に、補給量の生物活性物質を増加することも可能である。外科的に備えられている装置の中に生物活性物質を組み込む一つの方法は、適当なゲージの注射器を用いて注入することによる方法である。
【0055】
生体適合性の支持骨格に含まれる生物活性物質の量は、その支持骨格の大きさ、支持骨格を作っている材料、支持骨格の多孔度、生物学的な成分の性質、その組織修復装置の目的用途、を含む、さまざまな要因に応じて、変化する。当業者であれば、組織の治癒を容易にし、さらにまたは、促進させるために、所与の適用では、生体適合性の支持骨格の中に含むための、生物活性物質の適当な量、を容易に決定できる。なお、この生物活性物質の量は、もちろん、その生物活性物質の性質およびその所与の適用に応じて、変化する。
【0056】
以下の非限定的な実施例は、本発明の原理および実施の例証、である。さらに、本発明の範囲および精神の中にある多数の別の実施形態も、当業者には、明らかになるであろう。
【0057】
実施例1
本発明により作成した支持骨格は、以下に説明されているように、一連の縫合糸の保持および剛性の試験の間に、それぞれ調査され、かつ、従来のインプラントに対して、比較されている。シリーズ1では、テーパー状の針を伴う3−0ポリプロピレン縫合糸(エシコン社(Ethicon),8665H)を、5mm×11mmの長方形の支持骨格の中に、入れた。図4に示されているように、縫合糸20は、1.5mmのバイト距離(Bite-Distance)22を有しており、クランプ24は、その下部に沿って配置されている。この支持骨格の長方形の部分の半分を、即時に機械的に試験し、その残りの半分を、DPBS(ギブコ(Gibco),カタログ番号:34190−136)の中に置いて、試験前2週間にわたり、37℃で培養した。
【0058】
さらに、シリーズ2および3では、2−0エシボンド(Ethibond)縫合糸を、図5に示されている、7mm×11mmの長方形の支持骨格、の中に配置した。その後、シリーズ1に類似している実験装置では、縫合糸20を、1.5mmのバイト距離に配置して、クランプ24を、支持骨格の下部に沿って配置した。この場合でも、支持骨格の長方形の部分の半分を、即時に機械的に試験し、その残りの半分を、DPBS(ギブコ(Gibco),カタログ番号:34190−136)の中に置いて、試験前に2週間にわたり、37℃で培養した。
【0059】
次に、MTS・スプリング動作グリップを備えている短軸インストロン装置(100−039−837A)を用いて、機械的な試験を行なった。5mm/分のひずみ速度を加えて、その力および変位を記録した。
【0060】
シリーズ1では、支持骨格は、60mg/ccの密度および1mmの厚さを有するPDS不織材料、と結合されている、65/35のPGA/PCL、の発泡体部品である。この支持骨格は、従来の編み状で発泡体のインプラントに対して、比較されている。これらの縫合糸の保持試験の結果が、図6Aおよび図6Bにそれぞれ示されていて、縫合糸の引き出しにおける最大の負荷が図6Aに示されており、その剛性が図6Bに示されている。
【0061】
この結果は、本発明の不織状の支持骨格が、0日目では、編み状で発泡体のインプラントよりも、大きな縫合糸の引出強さを有しており、14日目では、同様の結果を有すること、を示している。また、剛性試験は、初期の試験では、それぞれ匹敵する結果と、14日目では、編み状/発泡体のインプラントにおけるわずかな有利さと、を示している。
【0062】
シリーズ2および3では、12個のサンプルが試験されており、これらの内の3個は、発泡体を伴う二重編み状の材料(double knit)、発泡体を伴う編み状の材料、および、発泡体を伴うポリプロピレンのメッシュ、を含む、従来の材料により、構成されている。この場合に、半月板の組織のサンプルも試験されている。他の8個のサンプルは、4種類の支持骨格により、本発明に従って構成されている修復装置であり、それぞれ、発泡体部品を伴う状態と伴わない状態とで、試験されている。4種類の支持骨格は、それぞれ、PDS、または、PDS/VICRYL、のいずれかの繊維、を含み、120mg/cc、236.6mg/cc、275.5mg/cc、および、240mg/cc、の密度、を有する、不織材料である。また、これらの支持骨格の厚さは、0.5mmまたは1mm、のいずれかである。この場合の、縫合糸の保持試験の結果が図7に示されており、縫合糸の引き出しにおける最大の負荷を示している。また、図8は、剛性試験の結果を示している。
【0063】
95%の信頼区間を伴う2種類のファクターのアノーバ(ANOVA)により、サンプルの幾つかの縫合糸の引出強さの間の統計的な有意差が、0日目および14日目における、それぞれの実験に、見られた。すなわち、0日目における縫合糸の引出試験は、発泡体を伴うPDS/VICRYLの不織材料、および、発泡体を伴うPDSの275.5mg/ccの不織材料が、別のサンプルよりも、縫合糸を引き出すために大きな負荷を必要とすることを示している。また、半月板に比べた場合に、他のサンプルは統計的に同等であった。初期の試験はまた、不織材料の支持骨格に対する発泡体の付加が、全ての場合で、最大の負荷を高めていることも示している。
【0064】
14日目では、PDS/VICRYLの不織材料は、全ての他のサンプルよりも、大きな引出負荷を有しており、発泡体を伴うPDS/VICRYLの不織材料、および、PDSの275.5mg/ccの不織材料は、これに近接して続いている。また、発泡体を伴うPDSの120mg/ccの不織材料、および、発泡体を伴う両面編みの材料は、天然の半月板よりも、小さい最大の引出負荷を必要としている。また、全ての他のサンプルは統計的に同等であった。さらに、14日目の試験は、発泡体を伴う全てのサンプルが、2週間後に、比較的に小さい最大の負荷を有すること、も示している。
【0065】
0日目の剛性試験では、発泡体を伴うPDS/VICRYLの不織材料、および、発泡体を伴うPDSの275.5mg/ccの不織材料は、他のサンプルよりも、統計的に大きな剛性を有している。この場合でも、発泡体の負荷は、0日目で改善された結果を、示している。一方、14日目では、剛性の結果は、PDS/VICRYLのサンプルが、他のサンプルよりも優れている剛性の特性を有していることと、発泡体を伴うPDSの275.5mg/ccの不織材料、および、発泡体を伴わないPDSの275.5mg/ccの不織材料も、同様であることとを示している。この結果はまた、0日目の結果に対して比べた場合に、発泡体を伴うサンプルが、一般に、発泡体部品を伴わないサンプルよりも、14日目における剛性に、さらに劇的な低下を示すこと、も示している。
【0066】
240mg/ccの不織材料(発泡体を伴うものおよび発泡体を伴わないもの)を除いて、比較的に高い密度の不織材料は、一般に、比較的に低い密度の不織材料よりも、良好な性能を示し、かつ、従来のインプラントよりも、良好な性能を示している。また、240mg/ccの不織材料サンプルにおける試験結果は、サンプルの減少された厚さにより、説明することができる。すなわち、240mg/ccの不織材料は、1mmの厚さの他のサンプルに比べて、0.5mmの厚さだけしか有していない。
【0067】
実施例2
本発明の支持骨格の引張強さの特性が、調べられ、従来の半月板のインプラント装置に対して、比べられた。発泡体部品を伴う状態および発泡体部品を伴わない状態の、さまざまな密度の不織材料の支持骨格が、PDSおよびPDS/VICRYLの繊維により、それぞれ構成された。さらに、発泡体により補強されている、従来のPDSのメッシュ材料も、比較のために用いられた。また、各実験は、アメリカン・ソサイエティ・フォー・テスティング・アンド・マテリアルズ(American Society for Testing and Materials)(D638−02,テスト・メソッド・フォー・テンシル・プロパティーズ・オブ・プラスチックス、および、D1708−02a,スタンダード・テスト・メソッド・フォー・テンシル・プロパティーズ・オブ・プラスチックス・バイ・ユース・オブ・マイクロテンシル・スペシメンズ(D638-02, Test Method for Tensile Properties of Plastics and D1708-02a, Standard Test Method for Tensile Properties of Plastics By Use of Microtensile Specimens)、の基準に従って、行なわれた。
【0068】
このサンプルは、それぞれの材料のシートをダイカットすることにより、犬の骨の形状で、調製されている。この結果として得られたサンプルは、5mmの幅、および、さまざまな厚さを有していた。これらのサンプルを、インストロン(INSTRON)装置(モデル4210)の中に配置して、一定の速度のクロスヘッド運動を行なった。その後、ビデオ式伸び計(video extensometer)を用いて、伸びた状態の試料における2点間の距離を測定した。
【0069】
上記の結果に基づいて、以下の計算を行なった。先ず、最大の負荷を、試料の元の断面積で割ることにより、極限の引張強さを計算した。また、最大負荷における長さと、初期の長さとの間の差を、その初期の長さで割り、さらに、100を掛けることにより、最大応力におけるひずみを計算した。さらに、最大の変位と初期の長さとの間の差を割った後に、100を掛けることにより、最大ひずみを計算した。また、応力−ひずみ曲線の初期の線形部分の任意の部分における応力の差を、対応するひずみにおける差で割ることにより、弾性率を計算した。この場合に、材料の複合的な性質により、弾性率の曲線では、関連する二つ以上の線形の部分が存在する可能性もある。
【0070】
さまざまなサンプルにおける引張試験の結果は、図9(この図は最大応力のグラフを示している)、図10(この図は先端領域(toe region)内の弾性率のグラフを示している)、および、図11(この図は第2の領域内の弾性率のグラフを示している)に、それぞれ示されている。
【0071】
上記最大応力試験の結果は、発泡体により補強されている従来のPDSメッシュ材料よりも、発泡体を伴う240mg/ccの密度におけるPDSの不織材料、および、発泡体を伴う240mg/ccの密度を有するPDS/VICRYL材料では、かなり高い負荷、を示している。さらに、発泡体を伴う120mg/ccの密度におけるPDS不織材料もまた、従来のインプラントよりも、良好な性能を示している。
【0072】
また、弾性率試験の結果は、先端領域では、不織材料および発泡体のそれぞれの支持骨格が、発泡体を伴うPDSメッシュ材料よりも、著しく良好であることを示している。加えて、比較的に厚く密度の高い不織材料ほど、他のサンプルよりも、良好な性能を示している。また、第2の領域では、さまざまな不織材料および発泡体の支持骨格の弾性率も、このPDSのメッシュおよび発泡体のサンプルよりも、優れた性能を示している。
【0073】
実施例3
本発明の支持骨格の引張強さの特性が、異なる厚さおよび材料組成の支持骨格について、調べられた。第1の支持骨格および第2の支持骨格は、PDSとVICRYLとの50/50の混合物により構成され、1mmおよび0.5mmの厚さを、それぞれ、有した。第3の支持骨格は、PDSとVICRYLとの40/60の混合物により構成され、0.7mmの厚さを有した。さらに、これらの不織材料の支持骨格は、全て、240mg/ccの密度、を有し、発泡体成分を含まなかった。それぞれの実験は、アメリカン・ソサイエティ・フォー・テスティング・アンド・マテリアルズ(American Society for Testing and Materials)(D638−02,テスト・メソッド・フォー・テンシル・プロパティーズ・オブ・プラスチックス、および、D1708−02a,スタンダード・テスト・メソッド・フォー・テンシル・プロパティーズ・オブ・プラスチックス・バイ・ユース・オブ・マイクロテンシル・スペシメンズ(D638-02, Test Method for Tensile Properties of Plastics and D1708-02a, Standard Test Method for Tensile Properties of Plastics By Use of Microtensile Specimens)、の基準に従って、行なわれた。
【0074】
実施例2と同様に、各サンプルは、それぞれの材料のシートをダイカットすることにより、犬の骨の形状で、調製されている。この結果として得られたサンプルは、5mmの幅、および、さまざまな厚さを有していた。これらのサンプルを、インストロン(INSTRON)装置(モデル4210)の中に配置して、一定の速度のクロスヘッド運動を行なった。その後、ビデオ式伸び計を用いて、伸びた状態の試料における2点間の距離を測定した。
【0075】
この結果に基づいて、最大の負荷を、それぞれの支持骨格について、計算した。加えて、この最大の付加を、試料の元の断面積で割ることにより、最大の引張強さ(ultimate tensile strength)を計算した。最大負荷における長さと、初期の長さとの間の差を、その初期の長さで割り、さらに、100を掛けることにより、最大応力におけるひずみを計算した。最大の変位と初期の長さとの間の差を割った後に、100を掛けることにより、最大ひずみを計算した。応力−ひずみ曲線の初期の線形部分の任意の部分における応力の差を、対応するひずみにおける差で割ることにより、弾性率を計算した。実施例3からの結果では、弾性率の曲線に、関連する線形の部分が一つだけ存在していた。
【0076】
さまざまなサンプルにおける引張試験の結果は、図12(この図は最大負荷のグラフを示している)、図13(この図は最大応力のグラフを示している)、図14(この図は最大応力におけるひずみのグラフを示している)、および、図15(この図は弾性率のグラフを示している)に、それぞれ、示されている。
【0077】
引張試験の結果は、特に、比較的に厚い不織材料の支持骨格では、望ましい支持骨格の特性、を示している。特に、50/50のPDS/VICRYLの、1mmの支持骨格は、40Nを超える最大負荷と、10MPaを超える最大応力と、約11MPaを超える弾性率と、を有していた。
【0078】
実施例4
PRP単独に比較した場合の、PRPを伴う、50/50のPDS/VICRYLの、不織材料、の治癒能力が調査された。12体の成熟した動物体が、それぞれ、不織材料の支持骨格および多血小板血漿(「PRP」)、または、PRP単独の、いずれかによる、修復に対応して、4体の動物体の三つのグループに分けられた。グループ1は、35%/65%のPGA/PCLのコポリマーの発泡体、および、0.5mLのPRPを伴う、50%/50%のPDS/VICRYLの不織材料の支持骨格(236.6mg/cc)(1mmの厚さ)が、植え込まれ、グループ2は、0.5mLのPRPを伴う、50%/50%のPDS/VICRYLの不織材料の支持骨格(236.6mg/cc)(1mmの厚さ)が、植え込まれ、グループ3は、0.5mLのPRPが、植え込まれた。植え込みの6週間後に、治癒応答を、全体的に、かつ、組織学的に、評価した。
【0079】
この調査で用いた動物体は、ヌビア産のヤギであり、61.3kg(135ポンド)から86.3kg(190ポンド)の間の体重であった。この場合に、後膝関節に対する医療処置を行なった。すなわち、内側側副靭帯の両側の関節包を切除した。次に、その内側側副靭帯を分離して、中央部分を切断した。その後、生検パンチを用いて、中央半月板の脈管の無い部分の中に、全層の欠損部分(長さ10mm)を作成した(バケツ柄状断裂に対応するモデル)。さらに、それぞれの動物体について、約55mLの血液を手術の前に採取した。この血液の中の血小板を濃縮してPRPを形成し、凝固物を、PRPの単独によるかPDS/VICRYLの不織材料上でかのいずれかで、形成した。その後、PRPは、PDS/VICRYLの不織材料と共に欠損部分の中に配置されたか、あるいは、PRPは、この不織材料を伴わずに欠損部分の中に配置された。不織材料を伴うPRPの凝固物、および、伴わないPRPの凝固物は、改良されたインサイド−アウト技法を用いて、2本のポリプロピレンの水平なマットレス縫合糸により、安定化された。内側側副靭帯は、係止用ループの縫合糸パタンにより、2本の縫合糸アンカー(suture anchor)(スーパー・クイックアンカー・プラス・ウイズ・エシボンド#2(Super QuickAnchor Plus with Ethibond #2),マイテック・ワールドワイド社(Mitek Worldwide),マサチューセッツ州ノーウッド所在(Norwood, MA))により、安定化された。次に、関節包は、連続的な縫合糸パタンにより、閉じられた。さらに、皮膚を閉じた後に、その足部は、改良されたシュレーダー−トーマス副子(Schroeder-Thomas splint)の中に、配置された。これらの副子は、手術後の約28日に、それぞれの動物体から、除去された。
【0080】
全体的な分析および組織病理学的な調査のために、これらのヤギを、手術後の6週間目に、犠牲にした。次に、半月板を除去して、10%の中性の、緩衝剤により処理した、ホルマリンの中に、固定した。その後、これらのサンプルを、パラフィン中に加工して、断片に切断し、ヘマトキシリン・エオシンおよびトリクロームにより、染色した。
【0081】
この調査による結果は、動物体の大部分で、PDS/VICRYLの不織材料の支持骨格のほとんど完全な保持状態が存在していること、を示した。この場合に、支持骨格における脈管の侵入は、主に、軸から離れている表面から(半月板の「付着した("attached")」周縁に向かって)、軸方向の表面に対して(自由な縁に向かって)、生じている。脈管は、軸方向の縁に沿って、時々見られた(固定用の縫合糸の経路に沿うことのできる脈管を含む、支持骨格の中を通して成長している脈管からによるか、あるいは、各縁から軸方向の表面に侵入している、大腿骨または頸骨の、表面のパンヌス、のいずれかに、連結している脈管からによる)。
【0082】
治癒している半月板の欠損部分の組織におけるコラーゲンと、天然の半月板組織との「一体化("integration")」は、6週間目の部位のいずれでも、進行していなかったが、この特徴は、全体的に、グループ1におけるよりも、グループ2で、比較的に多く進行していた。さらに、この一体化は、治癒している組織がそれぞれの欠損部分を充填している、3個のグループ3(PRP)の部位の内の、2個でも、進行していた。さらに、修復組織の中における炎症は、グループ1および2の中のすべての部位にわたり、痕跡の程度からわずかな量の範囲であったが、発泡体の付加的な存在のために予想されたように、グループ1の部位の中の組織の反応は、わずかに、比較的に多かった。さらに、発泡体における複屈折性のフラグメントは、生体内における存在の6週間目では、この材料に対して予想されたように、偏光下に、全ての部位では、依然として見ることができた。さらに、6週間目で予想されたように、このポリマーの支持骨格は依然として存在していた。また、それぞれの部位のいずれでも、感染の証拠は全く存在しなかった。
【0083】
実験の結果は、この動物体モデルにおける支持骨格による、これまでの努力に対して、有意差の有る支持骨格の保持性を示した。さらに、グループ2(PRPを伴う不織材料の支持骨格)で特に見られる別の有望な特徴は、その支持骨格の隙間の中への線維脈管組織の内部成長の量であった。
【0084】
さらに、各グループの組織充填特性も、それぞれの半月板の欠損部分における3個の部分の画像を撮影することにより、調査された。この場合に、欠損部分の中心を通る狭い領域の中への組織の充填の割合が、それぞれの領域について、計算されている。これら3つの領域の平均値は、組織充填特性、として報告されている。図16〜図23は、グループ1〜3における、サンプルにした半月板の欠損部分の顕微鏡写真である。
【0085】
これらの結果は、不織材料の支持骨格(グループ1およびグループ2)が、PRPを安定化して、比較的に一貫している組織の充填を行なうために、役立つこと、を示している。一方、PRP単独の場合(グループ3)の組織充填特性は、図16における10%(不十分)の状態、および、図17における70%(良好)の状態を含む、混ざった結果、を示した。これに対して、グループ2における不織材料とPRPは、PRPを安定化して、図18〜図20に示されているように、良好かまたは極めて良好な結果を、一貫して生じた。さらに、グループ1の、不織材料と発泡体およびPRPとは、一例の線外値を伴うが、概して、良好な組織充填を生じた。このグループ1の結果は、図21〜図23に、示されている。
【0086】
実施例5
生物活性物質、すなわち、組換えヒト増殖分化因子5(recombinant human growth differentiation factor 5)(「rhGDF5」)、を組み込んでいる、本発明の支持骨格、を構成して、試験した。
【0087】
rhGDF−5をコーティングした縫合糸の調製
A3−0・エシボンド・エクセル(ETHIBOND EXCEL)(ポリエステル)縫合糸(エシコン社(Ethicon)、ニュージャージー州サマービル所在(Somerville, NJ))を、rhGDF−5およびゼラチンにより、コーティングした。このコーティング溶液は、1mLのゼラチン溶液、および、0.5mLのrhGDF−5増殖因子の溶液により、構成されている。このゼラチン成分は、医療品級の可溶性のウシ・コラーゲンの10重量%の溶液(セメド−S(Semed-S)、ケンゼイ−ナッシュ社(Kensey-Nash)、ペンシルバニア州エクストン所在(Exton, PA))を、10分間にわたり、80℃に加熱した後に、37℃で培養することにより、調製されている。また、rhGDF−5(バイオファーム社(Biopharm GmbH)、ドイツ、ハイデルベルグ所在(Heiderberg, Germany))は、10mMの塩酸により再構成されていて、30mg/mLの濃度に、遠心分離フィルター装置(セントリプラスYM−10(Centriplus YM-10))により、濃縮されている。このコーティング溶液の結果として得られた濃度は10mg/mLであった。これらのコーティング溶液を、使用まで、37℃に維持した。
【0088】
コーティングの前に、この縫合糸を30cmの長さに切り、10分間にわたり、70%のエタノール溶液の槽により前処理してから、塩水による洗浄を行なった。この縫合糸を、その後、上記のコーティング溶液の中に入れて、穏やかな攪拌を伴って、30分間にわたり、37℃で、培養した。この縫合糸を、その後、溶液から取り出してから、一晩にわたり、空気乾燥した。
【0089】
この縫合糸におけるrhGDF−5の濃度は、ELISA法により、定量されている。すなわち、この増殖因子は、1時間にわたり、37℃で、2mLの6Mの尿素溶液(75mMのNaH2 PO4 、pH2.7)の中で、縫合糸の4cmのセグメントから、まず、溶出されている。次に、これらの溶出液は、rhGDF−5を検出するサンドイッチELISA(バイオファーム社(Biopharm GmbH)、ドイツ、ハイデルベルグ所在)により、分析された。この結果、この縫合糸におけるrhGDF−5の濃度は、2.71μ/cmであった。
【0090】
rhGDF−5を装填した、コラーゲン・コーティングした不織状支持骨格の調製
乾式レイ処理された、不織状の、針で穴あけされた、補強用の繊維質構造を、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLA/PGA)繊維、および、ポリジオキサノン(PDS)繊維により、作成した。これらの、10:90の、グリコリドに対するラクチドの重量比率(すなわち、10:90のPLA/PGA)を伴う、ラクチドとグリコリドとのコポリマーにより形成されている繊維は、商品名をビクリル(VICRYL)(エシコン・インコーポレイテッド(Ethicon, Inc.)、ニュージャージー州サマービル所在)として、販売されている。この不織状の補強用の構造は、240ミリグラム/立方センチメートルの標準の密度、および、1ミリメートルの厚さを有していた。また、この不織状の支持骨格は、約10センチメートル×10センチメートルの最終的な寸法に切断された。
【0091】
可溶性のI型コラーゲン(ケンゼイ−ナッシュ・コーポレイション(Kensey-Nash Corporation)、ペンシルバニア州エクストン所在)を、5ミリグラム/ミリリットルの濃度で、10ミリモルのリン酸ナトリウム溶液(pH10.6)の中に、溶解させた。次に、不織状の補強材料を、テフロン・コーティングした金型の中に入れて、上記の塩基性のコラーゲン溶液に、完全に浸した。この塩基性のコラーゲン溶液に浸された不織状の構造は、その後、1000分間にわたり、1.33×101 パスカル(100ミリトル)の真空で、−25%Cで、デュラストップμP(DurastopμP)フリーズ・ドライヤー(FTSシステムズ(FTS Systems)、ニューヨーク州ストーン・リッジ所在(Stone Ridge, NY))の中で、凍結乾燥された。この結果として、補強された塩基性のコラーゲンの支持骨格が得られたが、この場合に、補強用の不織繊維の上に装填されたI型コラーゲンの量は、高分子の繊維質の構造の1立方センチメートル当たりに、5マイクログラムである。次に、このコラーゲンを、1時間にわたり、37パーセントのホルムアルデヒド溶液から発生されるホルムアルデヒドの蒸気を用いて、密閉されたデシケータの中で架橋させることにより、安定化させた。さらに、一晩にわたり、この支持骨格を室温に設定された真空オーブンの中に入れることにより、残留ホルムアルデヒドを除去した。
【0092】
この補強された塩基性のコラーゲンの支持骨格を、11mm×7mmのセグメントに、切断した。次に、rhGDF−5を、0.4mg/mLおよび4mg/mLの濃度に、10mMの塩酸により、再構成した。この増殖因子の溶液の100マイクロリットルの分量を、この補強された塩基性のコラーゲンの支持骨格のセグメントに加えてから、180分間にわたり、1.33×101 パスカル(100ミリトル)の真空で、−25℃で、デュラストップμP(DurastopμP)フリーズ・ドライヤー(FTSシステムズ(FTS Systems)、ニューヨーク州ストーン・リッジ所在)の中で、凍結乾燥した。これらの支持骨格は、その後、使用まで、−20℃で、保管した。
【0093】
半月板細胞におけるrhGDF−5の効果
ウシ半月板細胞モデル
ウシ半月板細胞を、組織培養プラスチック皿の上の切り刻んだ半月板組織からの細胞の移動により、ウシ半月板から、単離した。その後、細胞を、10%FCSおよびペニシリン/ストレプトマイシン(それぞれ、100U/100mg)により補充されている、DMEMの中で、5%のCO2を伴って、37℃で、培養した。
【0094】
次に、細胞の移動を、既に公開されているプロトコルに従って、三次元移行アッセイを用いて、評価した。要するに、コラーゲン・ゲルを、1.8×105個の細胞/構造で、ウシ半月板細胞を収容している、24ウエル型のロー・クラスター培養皿の中で、調製した。このゲルの収縮に続いて、そのコラーゲン・ゲルの中心から、4mmのパンチ生検を取り出して、支持骨格ごとに凍結乾燥されている、500ngまたは3μgのrhGDF−5を含有している、5mmの支持骨格(ポリカプロラクトン−コ−グリコリドのランダムコポリマー)により置き換えた。なお、対照の支持骨格は、ビヒクルだけを受容している。次に、これらの構造を、2%の熱不活性化漿液を含有している培地の中で、2週間にわたって、培養した。この生体外の培養に続いて、上記の構造から支持骨格を取り出して、細胞の数を、製造者の説明書に従って、サイクオント(CyQuant)アッセイを用いる、DNAの定量により、推定した。このDNA含有量の推定により、対照の空の支持骨格に比べて、rhGDF−5を含有していた支持骨格の中では、その含有量が高いことが分かった(表1)。これらの結果は、rhGDF−5が、半月板細胞の、支持骨格の中への移動を助長することを示している。
【表1】

【0095】
SCID・マウス・モデル
半月板様修復組織を助長するrhGDF−5の効果を、SCID・マウスの調査で、評価した。ポリグラクチン(Polygractin)910およびポリジオキサノンにより作られた不織状の支持骨格に、rhGDF−5(6.5マイクログラム/5mmのパンチ)またはビヒクルを装填して、凍結乾燥した。さらに、ウシ半月板の赤色−白色領域により、5mmのパンチ、を作成した。次に、増殖因子を装填した支持骨格を、2個の上記半月板パンチの間に、サンドイッチの状態で、配置した。これらの構造を、SCIDマウスの両側に、皮下移植した。これらの支持骨格は、6週間にわたり、移植されてから、集められて、ヘマトキシリン/イオシン(H/E)およびサフラニンO(SO)により染色することにより、組織学分析のために、処理されている。これらの結果は、増殖因子を伴わない合成の生体吸収性の支持骨格は、トリクロームにより染色されているコラーゲン基材を伴う繊維質の修復組織(図24A)を含んでいること、を示している。しかしながら、6.5マイクログラムで、rhGDF−5を装填されている、支持骨格は、新しい軟骨の形成の広い領域の存在、を示している(図24B)。なお、半月板の白色−白色領域は、比較的に多くの軟骨様の表現型を有しているので、これらの結果は、rhGDF−5が、半月板の修復のための潜在的な治療剤となり得ることを示唆している。
【0096】
当業者は、の実施形態に基づいて、本発明のさらに別の特徴および利点を認識するであろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲により示されている内容を除いて、本明細書において、特定的に図示および説明されている内容により限定されない。また、本明細書に引用されている全ての刊行物および参考文献は、それぞれの内容全体において、明確に、参照により本明細書に組み込まれている。
【0097】
〔実施の態様〕
(1)生体適合性の半月板修復装置において、
半月板の中の欠損部分に接触して配置されるように構成されている、生体適合性の組織修復用の支持骨格(biocompatible tissue repair scaffold)であって、
不織状の高分子材料、を含み、
約1.5MPAよりも大きい弾性率、および、約6Nよりも大きい縫合糸引出強さ、を有する、
組織修復用の支持骨格、
を含む、修復装置。
(2)実施態様1に記載の修復装置において、
前記組織修復用の支持骨格は、約2MPaよりも大きい最大応力、を有する、修復装置。
(3)実施態様1に記載の修復装置において、
前記組織修復用の支持骨格は、約45Nよりも小さい縫合糸引出強さ、を有している、修復装置。
(4)実施態様1に記載の修復装置において、
前記組織修復用の支持骨格は、約40MPaよりも小さい弾性率、を有している、修復装置。
(5)実施態様1に記載の修復装置において、
前記組織修復用の支持骨格は、約0.5mm〜1.5mmの範囲内の厚さ、を有している、修復装置。
【0098】
(6)実施態様1に記載の修復装置において、
前記組織修復用の支持骨格は、前記不織状の高分子材料に接合されている生体適合性の発泡体材料、をさらに含む、修復装置。
(7)実施態様1に記載の修復装置において、
前記不織状の高分子材料は、合成ポリマーを含む、修復装置。
(8)実施態様1に記載の修復装置において、
前記組織修復用の支持骨格は、生体吸収性である、修復装置。
(9)実施態様1に記載の修復装置において、
前記不織状の高分子材料は、乾式レイ処理(dry lay process)により形成されている材料、を含む、修復装置。
(10)実施態様1に記載の修復装置において、
前記不織状の高分子材料は、グリコリド、ラクチド、カプロラクトン、トリメチレンカーボネート(trimethylene carbonate)、ポリビニルアルコール、および、ジオキサノンからなる群から選択される、モノマー、から誘導されている、少なくとも1種類のポリマーにより、形成されている、修復装置。
【0099】
(11)実施態様10に記載の修復装置において、
前記不織状の高分子材料は、ポリジオキサノンを含む、修復装置。
(12)実施態様10に記載の修復装置において、
前記不織状の高分子材料は、ポリグリコール酸とポリ乳酸とのコポリマーを含む、修復材料。
(13)実施態様1に記載の修復装置において、
細胞の成長を刺激するために有効な、少なくとも1種類の生物活性物質、
をさらに含む、修復装置。
(14)実施態様13に記載の修復装置において、
前記生物活性物質は、多血小板血漿、軟骨由来形態発生タンパク質、組換えヒト増殖因子、および、これらの組み合わせ物からなる群から選択される、修復装置。
(15)実施態様14に記載の修復装置において、
前記生物活性物質は、rhGDFである、修復装置。
【0100】
(16)実施態様15に記載の修復装置において、
前記生物活性物質は、rhGDF−5である、修復装置。
(17)実施態様1に記載の修復装置において、
生育可能な組織サンプルであって、前記組織修復用の支持骨格の上に配置され、この組織修復用の支持骨格の近くの天然の組織に一体化するために有効な、生育可能な組織サンプル、
をさらに含む、修復装置。
(18)実施態様1に記載の修復装置において、
前記不織状の高分子材料は、捲縮された(crimped)、合成のポリマー繊維、を含む、修復装置。
(19)実施態様1に記載の修復装置において、
前記不織状の高分子材料は、ヒートセット型である、修復装置。
(20)実施態様1に記載の修復装置において、
前記不織状の高分子材料の繊維配向(fiber orientation)は、等方性である、修復装置。
【0101】
(21)生体適合性の半月板修復装置において、
半月板の中の欠損部分に接触して配置されるように構成されている、生体適合性の組織修復用の支持骨格であって、
前記支持骨格は、
(a)高密度で、乾式レイ処理された不織状の高分子材料、および、
(b)生体適合性の発泡体、
を含み、
前記支持骨格は、増加された縫合糸引出強さを賦与する、
組織修復用の支持骨格、
を含む、修復装置。
(22)実施態様21に記載の修復装置において、
前記組織修復用の支持骨格は、約2MPa〜14MPaの範囲内の最大応力、を有する、修復装置。
(23)実施態様21に記載の修復装置において、
前記組織修復用の支持骨格は、約6N〜45Nの範囲内の縫合糸引出強さ、を有する、修復装置。
(24)実施態様21に記載の修復装置において、
前記組織修復用の支持骨格は、約1.5MPa〜40MPaの範囲内の弾性率、を有する、修復装置。
(25)実施態様21に記載の修復装置において、
前記組織修復用の支持骨格は、約0.5mm〜1.5mmの範囲内の厚さ、を有する、修復装置。
【0102】
(26)実施態様21に記載の修復装置において、
前記不織状の高分子材料は、合成ポリマーを含む、修復装置。
(27)実施態様21に記載の修復装置において、
前記組織修復用の支持骨格は、生体吸収性である、修復装置。
(28)実施態様21に記載の修復装置において、
細胞の成長を刺激するために有効な、少なくとも1種類の生物活性物質、
をさらに含有する、修復装置。
(29)実施態様28に記載の修復装置において、
前記生物活性物質は、多血小板血漿、軟骨由来形態発生タンパク質、組換えヒト増殖因子、および、これらの組み合わせ物からなる群、から選択される、修復装置。
(30)実施態様29に記載の修復装置において、
前記生物活性物質は、rhGDFである、修復装置。
【0103】
(31)実施態様30に記載の修復装置において、
前記生物活性物質は、rhGDF−5である、修復装置。
(32)実施態様21に記載の修復装置において、
生育可能な組織サンプルであって、前記組織修復用の支持骨格の上に配置され、この組織修復用の支持骨格の近くの天然の組織に一体化するために有効な、生育可能な組織サンプル、
をさらに含む、修復装置。
(33)半月板の欠損部分を外科的に修復する方法において、
約1.5MPAよりも大きい弾性率、および、約6Nよりも大きい縫合糸引出強さを有する、生体適合性の組織修復用の支持骨格、を供給するステップと、
半月板の中の組織の欠損部分に接触するように、前記組織修復用の支持骨格を位置付けするステップと、
縫合糸により、前記組織修復用の支持骨格の位置を固定するステップと、
を含み、
前記修復用の支持骨格は、増加された縫合糸引出強さを賦与し、これにより、半月板の治癒を助長する、
方法。
(34)実施態様33に記載の方法において、
前記細胞の成長を刺激するために有効な少なくとも1種類の生物活性物質は、前記組織修復用の支持骨格と共に、植え込まれる、方法。
(35)実施態様34に記載の方法において、
前記生物活性物質は、多血小板血漿、軟骨由来形態発生タンパク質、組換えヒト増殖因子、および、これらの組み合わせ物からなる群から選択される、方法。
【0104】
(36)実施態様35に記載の方法において、
前記生物活性物質は、rhGDFである、方法。
(37)実施態様36に記載の方法において、
前記生物活性物質は、rhGDF−5である、方法。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1A】本発明に従って構成されている組織修復装置の、顕微鏡写真(100倍)である。
【図1B】図1Aに示されている組織修復装置の、断面の顕微鏡写真(100倍)である。
【図2A】本発明に従って構成されている組織修復装置の別の実施形態の、上面の顕微鏡写真(100倍)である。
【図2B】図2Aに示されている組織修復装置の、断面の顕微鏡写真(100倍)である。
【図3A】本発明の組織修復装置のさらに別の実施形態の、上面の顕微鏡写真(25倍)である。
【図3B】図3Aに示されている組織修復装置の下面の顕微鏡写真(25倍)である。
【図3C】図3Aに示されている組織修復装置の断面の顕微鏡写真(90倍)である。
【図3D】図3Aに示されている組織修復装置の断面のさらに別の顕微鏡写真(25倍)である。
【図4】実施例1のシリーズ1に対応する実験構成の概略図である。
【図5】実施例1のシリーズ2および3に対応する実験構成の概略図である。
【図6A】実施例1のシリーズ1の縫合糸の保持の結果を示しているグラフである。
【図6B】実施例1のシリーズ1の剛性の結果を示しているグラフである。
【図7】実施例1からのシリーズ2および3の縫合糸の保持の結果を示しているグラフである。
【図8】実施例1からのシリーズ2および3の剛性の結果を示しているグラフである。
【図9】実施例2からの最大応力の結果を示しているグラフである。
【図10】実施例2からの先端領域内の弾性率の結果を示しているグラフである。
【図11】実施例2からの第2の領域内の弾性率の結果を示しているグラフである。
【図12】実施例3の支持骨格に対する最大負荷を示しているグラフである。
【図13】実施例3の支持骨格に対する最大応力を示しているグラフである。
【図14】実施例3の支持骨格に対する最大応力におけるひずみを示しているグラフである。
【図15】実施例3の支持骨格に対する弾性率を示しているグラフである。
【図16】実施例4からのグループ3の結果の顕微鏡写真である。
【図17】実施例4からのグループ3の結果の別の顕微鏡写真である。
【図18】実施例4からのグループ2の結果の顕微鏡写真である。
【図19】実施例4からのグループ2の結果の別の顕微鏡写真である。
【図20】実施例4からのグループ2の結果のさらに別の顕微鏡写真である。
【図21】実施例4からのグループ1の結果の顕微鏡写真である。
【図22】実施例4からのグループ1の結果の別の顕微鏡写真である。
【図23】実施例4からのグループ1の結果のさらに別の顕微鏡写真である。
【図24A】実施例5からのSCIDマウス調査の結果の顕微鏡写真である。
【図24B】実施例5からのSCIDマウス調査の結果の顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性の半月板修復装置において、
半月板の中の欠損部分に接触して配置されるように構成されている、生体適合性の組織修復用の支持骨格であって、
不織状の高分子材料、を含み、
約1.5MPAよりも大きい弾性率、および、約6Nよりも大きい縫合糸引出強さ、を有する、
組織修復用の支持骨格、
を含む、修復装置。
【請求項2】
請求項1に記載の修復装置において、
前記組織修復用の支持骨格は、約2MPaよりも大きい最大応力、を有する、修復装置。
【請求項3】
請求項1に記載の修復装置において、
前記組織修復用の支持骨格は、約45Nよりも小さい縫合糸引出強さ、を有している、修復装置。
【請求項4】
請求項1に記載の修復装置において、
前記組織修復用の支持骨格は、約40MPaよりも小さい弾性率、を有している、修復装置。
【請求項5】
請求項1に記載の修復装置において、
前記組織修復用の支持骨格は、約0.5mm〜1.5mmの範囲内の厚さ、を有している、修復装置。
【請求項6】
請求項1に記載の修復装置において、
前記組織修復用の支持骨格は、前記不織状の高分子材料に接合されている生体適合性の発泡体材料、をさらに含む、修復装置。
【請求項7】
請求項1に記載の修復装置において、
前記不織状の高分子材料は、合成ポリマーを含む、修復装置。
【請求項8】
請求項1に記載の修復装置において、
前記組織修復用の支持骨格は、生体吸収性である、修復装置。
【請求項9】
請求項1に記載の修復装置において、
前記不織状の高分子材料は、乾式レイ処理により形成されている材料、を含む、修復装置。
【請求項10】
請求項1に記載の修復装置において、
前記不織状の高分子材料は、グリコリド、ラクチド、カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、ポリビニルアルコール、および、ジオキサノンからなる群から選択される、モノマー、から誘導されている、少なくとも1種類のポリマーにより、形成されている、修復装置。
【請求項11】
請求項10に記載の修復装置において、
前記不織状の高分子材料は、ポリジオキサノンを含む、修復装置。
【請求項12】
請求項10に記載の修復装置において、
前記不織状の高分子材料は、ポリグリコール酸とポリ乳酸とのコポリマーを含む、修復材料。
【請求項13】
請求項1に記載の修復装置において、
細胞の成長を刺激するために有効な、少なくとも1種類の生物活性物質、
をさらに含む、修復装置。
【請求項14】
請求項13に記載の修復装置において、
前記生物活性物質は、多血小板血漿、軟骨由来形態発生タンパク質、組換えヒト増殖因子、および、これらの組み合わせ物からなる群から選択される、修復装置。
【請求項15】
請求項14に記載の修復装置において、
前記生物活性物質は、rhGDFである、修復装置。
【請求項16】
請求項15に記載の修復装置において、
前記生物活性物質は、rhGDF−5である、修復装置。
【請求項17】
請求項1に記載の修復装置において、
生育可能な組織サンプルであって、前記組織修復用の支持骨格の上に配置され、この組織修復用の支持骨格の近くの天然の組織に一体化するために有効な、生育可能な組織サンプル、
をさらに含む、修復装置。
【請求項18】
請求項1に記載の修復装置において、
前記不織状の高分子材料は、捲縮された、合成のポリマー繊維、を含む、修復装置。
【請求項19】
請求項1に記載の修復装置において、
前記不織状の高分子材料は、ヒートセット型である、修復装置。
【請求項20】
請求項1に記載の修復装置において、
前記不織状の高分子材料の繊維配向は、等方性である、修復装置。
【請求項21】
生体適合性の半月板修復装置において、
半月板の中の欠損部分に接触して配置されるように構成されている、生体適合性の組織修復用の支持骨格であって、
前記支持骨格は、
(a)高密度で、乾式レイ処理された不織状の高分子材料、および、
(b)生体適合性の発泡体、
を含み、
前記支持骨格は、増加された縫合糸引出強さを賦与する、
組織修復用の支持骨格、
を含む、修復装置。
【請求項22】
請求項21に記載の修復装置において、
前記組織修復用の支持骨格は、約2MPa〜14MPaの範囲内の最大応力、を有する、修復装置。
【請求項23】
請求項21に記載の修復装置において、
前記組織修復用の支持骨格は、約6N〜45Nの範囲内の縫合糸引出強さ、を有する、修復装置。
【請求項24】
請求項21に記載の修復装置において、
前記組織修復用の支持骨格は、約1.5MPa〜40MPaの範囲内の弾性率、を有する、修復装置。
【請求項25】
請求項21に記載の修復装置において、
前記組織修復用の支持骨格は、約0.5mm〜1.5mmの範囲内の厚さ、を有する、修復装置。
【請求項26】
請求項21に記載の修復装置において、
前記不織状の高分子材料は、合成ポリマーを含む、修復装置。
【請求項27】
請求項21に記載の修復装置において、
前記組織修復用の支持骨格は、生体吸収性である、修復装置。
【請求項28】
請求項21に記載の修復装置において、
細胞の成長を刺激するために有効な、少なくとも1種類の生物活性物質、
をさらに含有する、修復装置。
【請求項29】
請求項28に記載の修復装置において、
前記生物活性物質は、多血小板血漿、軟骨由来形態発生タンパク質、組換えヒト増殖因子、および、これらの組み合わせ物からなる群、から選択される、修復装置。
【請求項30】
請求項29に記載の修復装置において、
前記生物活性物質は、rhGDFである、修復装置。
【請求項31】
請求項30に記載の修復装置において、
前記生物活性物質は、rhGDF−5である、修復装置。
【請求項32】
請求項21に記載の修復装置において、
生育可能な組織サンプルであって、前記組織修復用の支持骨格の上に配置され、この組織修復用の支持骨格の近くの天然の組織に一体化するために有効な、生育可能な組織サンプル、
をさらに含む、修復装置。
【請求項33】
半月板の欠損部分を外科的に修復する方法において、
約1.5MPAよりも大きい弾性率、および、約6Nよりも大きい縫合糸引出強さを有する、生体適合性の組織修復用の支持骨格、を供給するステップと、
半月板の中の組織の欠損部分に接触するように、前記組織修復用の支持骨格を位置付けするステップと、
縫合糸により、前記組織修復用の支持骨格の位置を固定するステップと、
を含み、
前記修復用の支持骨格は、増加された縫合糸引出強さを賦与し、これにより、半月板の治癒を助長する、
方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【公開番号】特開2008−55144(P2008−55144A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−171032(P2007−171032)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(507083478)デピュイ・ミテック・インコーポレイテッド (47)
【氏名又は名称原語表記】DePuy Mitek,Inc.
【住所又は居所原語表記】325 Paramount Drive,Raynham,Massachusetts 02767 United States of America
【Fターム(参考)】