説明

不透水性及び水解性を有するシート

【課題】不透水性及び水解性を有するシートを提供すること。
【解決手段】疎水性微粒子層(A)と、水溶性樹脂層(B)と、生分解性非水溶層(C)とを含む、不透水性及び水解性を有するシートであって、水溶性樹脂層(B)は、疎水性微粒子層(A)と、生分解性非水溶層(C)との間にあり且つ生分解性非水溶層(C)に接着されており、疎水性微粒子層(A)は、疎水性微粒子層(A)の水溶性樹脂層(B)と反対側の表面に、疎水性微粒子が積層されることにより形成された微細な凹凸構造を有することにより、90°超の水接触角を有し、そして水流に揉まれることにより崩壊する層であり、そして生分解性非水溶層(C)は、非水溶性であり且つ水溶性樹脂層(B)の水への溶解に伴い、少なくとも2つの断片に分断される層であることを特徴とするシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性微粒子層(A)と、水溶性樹脂層(B)と、生分解性非水溶層(C)とを含む、不透水性及び水解性を有するシートに関する。
【背景技術】
【0002】
現行の生理用ナプキン、おりもの吸収パッド、失禁者用パッド等の吸収性物品は、水解性を有しない材料を含むので、使用後は、トイレに設置された収納箱に廃棄し、回収の上処分される必要がある。しかし、使用済みの吸収性物品を、廃棄する際に、誤って水洗トイレに流してしまうと、水洗トイレの配管を詰まらせる場合がある。従って、使用後にそのまま水洗トイレに流すことができる、水解性材料から成る吸収性物品の検討が行われている。
【0003】
特許文献1には、水溶性を有するポリビニルアルコール(以下、「PVA」と称する場合がある)系フィルムと、当該PVA系フィルムの少なくとも片面に積層された生分解性防水層とを備える水溶性防水フィルムであって、上記生分解性防水層が、セラック樹脂誘導体と硬化剤とを含有することを特徴とするフィルムが開示されている。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の水溶性防水フィルムは、セラック樹脂を含む生分解性防水層側は不透水性を有するが、水溶性を有するPVA系フィルム層側は、不透水性を有しない。従って、PVA系フィルム層側を濡れた手で触った場合、及びPVA系フィルム層側に汗等が侵入してきた場合等に、不透水性に問題が生じる場合がある。
【0005】
さらに、特許文献1では、[0058]において、PVA系フィルム層の両側に生分解性防水層を積層し、不透水性を向上させた水溶性防水フィルムの態様が言及されているが、本願発明者が実験(後述の比較例2)を行ったところ、当該態様は、確かに、不透水性に優れるが、水解性が顕著に低下するものであることが分かった。
また、水溶性を有するPVA系フィルムは吸湿性が高いので、当該PVA系フィルムが露出されている水溶性防水フィルムでは、十分に湿度を制御しないと、カール、ベタツキ等が発生し、生産性が低下する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−142426
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、特許文献1に記載の水溶性防水フィルムは、水解性と、不透水性とを有するものではなかった。
従って、本発明は、不透水性及び水解性を有するシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、疎水性微粒子層(A)と、水溶性樹脂層(B)と、生分解性非水溶層(C)とを含む、不透水性及び水解性を有するシートであって、水溶性樹脂層(B)は、疎水性微粒子層(A)と、生分解性非水溶層(C)との間にあり且つ生分解性非水溶層(C)に接着されており、疎水性微粒子層(A)は、疎水性微粒子層(A)の水溶性樹脂層(B)と反対側の表面に、疎水性微粒子が積層されることにより形成された微細な凹凸構造を有することにより、90°超の水接触角を有し、そして水流に揉まれることにより崩壊する層であり、そして生分解性非水溶層(C)は、非水溶性であり且つ水溶性樹脂層(B)の水への溶解に伴い、少なくとも2つの断片に分断される層であることを特徴とするシートにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
具体的には、本発明は以下の態様に関する。
[態様1]
疎水性微粒子層(A)と、水溶性樹脂層(B)と、生分解性非水溶層(C)とを含む、不透水性及び水解性を有するシートであって、
水溶性樹脂層(B)は、疎水性微粒子層(A)と、生分解性非水溶層(C)との間にあり且つ生分解性非水溶層(C)に接着されており、
疎水性微粒子層(A)は、疎水性微粒子層(A)の水溶性樹脂層(B)と反対側の表面に、疎水性微粒子が積層されることにより形成された微細な凹凸構造を有することにより、90°超の水接触角を有し、そして水流に揉まれることにより崩壊する層であり、そして
生分解性非水溶層(C)は、非水溶性であり且つ水溶性樹脂層(B)の水への溶解に伴い、少なくとも2つの断片に分断される層である、
ことを特徴とするシート。
【0010】
[態様2]
上記疎水性微粒子が、無機系微粒子を含む、態様1に記載のシート。
[態様3]
上記疎水性微粒子が、1〜100nmの平均粒径を有する、態様1又は2に記載のシート。
【0011】
[態様4]
疎水性微粒子層(A)が、0.1〜3g/m2の坪量を有する、態様1〜3のいずれか一つに記載のシート。
[態様5]
疎水性微粒子層(A)と、水溶性樹脂層(B)との間に、水解性基材層(D)をさらに含む、態様1〜4のいずれか一つに記載のシート。
【0012】
[態様6]
水解性基材層(D)が、水解紙及び水解性不織布から成る群から選択される材料を含む、態様5に記載のシート。
[態様7]
生分解性非水溶層(C)が、セラック、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、蜜蝋、パラフィンワックス、カルナバロウ、ライスワックス、キチン、疎水性デンプン及びポリブチレンサクシネートから成る群から選択される材料を含む、態様1〜6のいずれか一つに記載のシート。
【0013】
[態様8]
水溶性樹脂層(B)が、水溶性ウレタン、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリエチレンオキシド、ビニルエーテル系ポリマー、スルホ変性ポリエステル、ポリウレタン誘導体及び多糖類から成る群から選択される材料を含む、態様1〜7のいずれか一つに記載のシート。
[態様9]
疎水性微粒子層(A)の、水溶性樹脂層(B)と反対側の表面が、30〜300mmの耐水圧を有する、態様1〜8のいずれか一つに記載のシート。
【0014】
[態様10]
生分解性非水溶層(C)の、水溶性樹脂層(B)と反対側の表面が、400mm以上の耐水圧を有する、態様1〜9のいずれか一つに記載のシート。
[態様11]
シェイクフラスコ法試験後の分散率(%)が、50質量%以上である、態様1〜10のいずれか一つに記載のシート。
【0015】
[態様12]
生分解性非水溶層(C)の上に、追加の層としての水溶性樹脂層(B)をさらに含む、態様1〜11のいずれか一つに記載のシート。
[態様13]
水溶性樹脂層(B)を準備するステップ;
疎水性微粒子層(A)を、水溶性樹脂層(B)に積層するステップ;及び
生分解性非水溶層(C)を、水溶性樹脂層(B)に積層するステップ:
を含む、態様1に記載のシートの製造方法。
【0016】
[態様14]
水溶性樹脂層(B)を、水解性基材層(D)に積層するステップ;
疎水性微粒子層(A)を、水解性基材層(D)に積層するステップ;及び
生分解性非水溶層(C)を、水溶性樹脂層(B)に積層するステップ:
を含む、態様5に記載のシートの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の不透水性及び水解性を有するシートは、一方の面に、所定の不透水性を有する疎水性微粒子層(A)を有し、且つもう一方の面に、所定の不透水性を有する生分解性非水溶層(C)を有するので、使用時に不透水性を有する。
また、本発明の不透水性及び水解性を有するシートは、水中で揉まれると、疎水性微粒子層(A)の疎水性微粒子の微細な凹凸構造が崩壊して不透水性を失うことにより、残りの層が水溶するか又は水解することができるので、水中に廃棄後に水解性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の不透水性及び水解性を有するシートの態様の一つの断面の模式図である。
【図2】図2は、本発明の不透水性及び水解性を有するシートの別の態様の断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の不透水性及び水解性を有するシートについて、以下、詳細に説明する。
[疎水性微粒子層(A)]
疎水性微粒子層(A)は、疎水性微粒子層(A)の水溶性樹脂層(B)と反対側の表面に、疎水性微粒子を積層することにより形成された微細な凹凸構造を有することにより、90°超の水接触角を有し、そして水流に揉まれることにより崩壊する層である。疎水性微粒子層(A)は、本発明の不透水性及び水解性を有するシートにおいて、使用時には不透水性を発揮し、そして廃棄後には水解の起点となる。疎水性微粒子層(A)はまた、水溶性樹脂層(B)の、吸湿によるカール、ベタつき等を軽減することができる。
上記疎水性微粒子は、水溶性樹脂層(B)、水解性基材層(D)等に、ファンデルワールス力により付着しているので、疎水性微粒子層(A)が廃棄後に水流で揉まれることにより、簡易に崩壊する。
【0020】
本明細書において、「疎水性微粒子」は、当該疎水性微粒子が積層することにより形成された、微細な凹凸構造を有する疎水性微粒子層(A)が、後述の撥水性の要件を満たすような微粒子を意味する。
上記疎水性微粒子としては、特に制限されず、例えば、無機系微粒子、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、窒化ホウ素、SnO2、シリカ、Cr23、Al23、Fe23、SiC、酸化セリウム等が挙げられる。上記疎水性微粒子としては、その表面の特性、例えば、極性が特に重要であり、疎水性微粒子層(A)が後述の撥水性の要件を満たすように、必要に応じて、表面処理、表面修飾等が施されたものであってもよい。
【0021】
本発明に用いることができる疎水性微粒子としては、特に安全性の観点から、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛が好ましい。市販の上記疎水性微粒子としては、日華化学(株)のアデッソWRシリーズが挙げられる。
【0022】
微細な凹凸構造を有する疎水性微粒子層(A)は、平坦な表面を有するものよりも、液体、例えば、水の接触角が大きくなる。その理由は、以下の通りである。
特定の、平坦な表面を有する基材において、液体の接触角をθとし、そして当該材料の表面積をr倍に大きくした場合の液体の接触角をθrとすると、次の式(1):
cosθr=rcosθ (1)
が成立する。
式(1)において、1<rであることから、90°<θの場合には、rが大きくなるほどθrはより大きくなる、すなわち、液体の接触角がより大きくなる。
なお、θ<90°の場合には、rが大きくなるほど、θrは小さくなる、すなわち、液体の接触角はより小さくなる。
【0023】
以上のように、微細な凹凸構造を有する疎水性微粒子層(A)は、上記r値が1より大きくなるので、平坦構造を有するものよりも、液体、例えば、水の接触角が大きくなる。
より大きなr値を有する微細な凹凸構造としては、例えば、フラクタル構造、例えば、微細突起状のフラクタル構造が挙げられる。
本明細書において、「液体」としては、水を含む溶液、例えば、体液、例えば、経血、及び排泄物、例えば、尿が挙げられる。
【0024】
疎水性微粒子層(A)の、水溶性樹脂層(B)と反対側の表面の撥水性は、水接触角により評価することができる。疎水性微粒子層(A)の、水溶性樹脂層(B)と反対側の表面の水接触角は、約90°超であり、約120°以上であることが好ましく、約140°以上であることがより好ましく、そして約160°以上であることがさらに好ましい。水接触角が大きいほど、疎水性微粒子層(A)内に液体を侵入させにくく、ひいては本発明のシートが漏れにくくなることに繋がるからである。
上記水接触角は、例えば、協和界面科学(株)製 自動接触角計 CA−V型により測定することができる。
【0025】
疎水性微粒子層(A)の、水溶性樹脂層(B)と反対側の表面は、用いられる用途に応じた一定の耐水性を有することが好ましい。上記耐水性は、耐水圧により評価することができる。上記耐水圧の範囲は、用いられる用途によって変わるものではあるが、一般的には、疎水性微粒子層(A)の、水溶性樹脂層(B)と反対側の表面が、約30〜約300mmの耐水圧を有することが好ましく、約50〜約250mmの耐水圧を有することがより好ましく、そして約50〜約200mmの耐水圧を有することがさらに好ましい。耐水圧が約30mmを下回ると、使用時に、体圧等により圧力が加わると漏れが生ずる場合があり、そして耐水圧が約300mmを超えると、水洗トイレ等に流した際の水圧により、疎水性微粒子層(A)が崩壊しにくく、本発明の不透水性及び水解性を有するシートが水解しにくい場合がある。
なお、本明細書において用いられる耐水圧は、JIS L 1092 耐水度試験A法(低水圧法)に準じて測定することができる。
【0026】
上記疎水性微粒子の平均粒径は、本発明の効果を奏する範囲内であれば特に制限されないが、約1nm〜約100nmであることが好ましく、約10nm〜約80nmであることがより好ましく、そして約20nm〜約60nmであることがさらに好ましい。上記平均粒径を有する疎水性微粒子を用いることで、凝集を防止でき且つ分散安定性を向上させることができる。また、上記平均粒径が約1nm未満になると、製造コストが高くなる、疎水性微粒子層(A)の厚さが薄くなる、そして撥水性が確保しにくくなる傾向がある。さらに、上記平均粒径が約100nmを超えると、粒子間に隙間ができやすくなる、撥水性が確保しにくくなる、疎水性微粒子が基材から脱離しやすくなる、着用時の触感が硬くなりやすくなる等の傾向がある。
なお、本明細書において、「平均粒径」は、電子顕微鏡により撮影した画像から、約300個の粒子をランダムにピックアップし、それらの粒径を測定し、そして相加平均することにより得られた値を意味する。
【0027】
本発明の不透水性及び水解性を有するシートにおいて、疎水性微粒子層(A)は、約0.1〜約3g/m2の坪量を有することが好ましく、そして約0.1〜約2g/m2以下の坪量を有することがより好ましい。坪量が約0.1g/m2未満の場合には、疎水性微粒子のムラが発生し、撥水性が得られない場所が生ずる場合がある。坪量が約3g/m2を超えると、経済的に不利になる傾向を有する。
疎水性微粒子層(A)の厚さは、約1μm以下であることが好ましい。
【0028】
[水溶性樹脂層(B)]
水溶性樹脂層(B)は、水溶性を有する樹脂を含む層であり、生分解性非水溶層(C)に接着されている。水溶性樹脂層(B)は、本発明の不透水性及び水解性を有するシートが、トイレ等の大量の水中に廃棄された場合に、疎水性微粒子層(A)の崩壊及び所望による水解性基材層(D)の水解に次いで水中に溶解し、隣接する生分解性非水溶層(C)が少なくとも2つの断片に分断することを補助する役割を有する。また、本発明の不透水性及び水解性を有するシートが、水解性基材層(D)を有する場合には、水溶性樹脂層(B)は、水解性基材(D)の目止めの役割をも有することができる。
【0029】
水溶性樹脂層(B)は、常温、例えば、25℃において、水流で揉まれることにより水に溶解するような水溶性を有することが好ましい。
水溶性樹脂層(B)及び生分解性非水溶層(C)との間の接着は、接着剤を用いたものであってもよく、又は接着剤を用いずに、水溶性樹脂層(B)及び/又は生分解性非水溶層(C)自体の接着性により、相互に接着されたものであってもよい。
【0030】
水溶性樹脂層(B)は上記特性を有する材料から形成される限り、特に制限されないが、水溶性樹脂層(B)を構成する材料としては、例えば、水溶性ウレタン、ポリビニルアルコール系ポリマー、例えば、ポリビニルアルコール及びその変性体、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸系ポリマー、例えば、ポリアクリル酸、及びアクリル酸含有アクリルポリマー、ポリエチレンオキシド、ビニルエーテル系ポリマー、スルホ変性ポリエステル、ポリウレタン誘導体、並びに多糖類、例えば、カルボキシメチルセルロース塩及びアルギン酸塩が挙げられる。
【0031】
本発明の不透水性及び水解性を有するシートにおいて、水溶性樹脂層(B)は、約10〜約40g/m2の坪量を有することが好ましく、そして約15〜約30g/m2以下の坪量を有することがより好ましい。坪量が約10g/m2未満の場合には、生分解性非水溶層(C)を少なくとも2つの断片に分断させることができない場合があり、また水解性基材(D)の目止めが不十分になる場合がある。坪量が約40g/m2を超えると、シートが硬くなり触感が悪くなることと、本発明の不透水性及び水解性を有するシートが水解するために時間がかかり、下水道の配管を詰まらせる場合がある。
【0032】
[生分解性非水溶層(C)]
生分解性非水溶層(C)は、非水溶性であり且つ水溶性樹脂層(B)の水への溶解に伴い、少なくとも2つの断片に分断される層である。生分解性非水溶層(C)は、本発明の不透水性及び水解性を有するシートにおいて、使用時には生分解性非水溶層(C)側の不透水性を発揮し、そして水中への廃棄後に水溶性樹脂層(B)の溶解に伴って、少なくとも2つの断片に分断され、好ましくは小片に分断される。
【0033】
生分解性非水溶層(C)は、水溶性樹脂層(B)の溶解に伴って、少なくとも2つの断片に分断されるべきであるので、架橋されていないことが好ましい。
上記非水溶性としては、使用時の液体との接触の際に、液体に溶解しないものであることが好ましい。
【0034】
生分解性非水溶層(C)は、耐水圧が高いことが好ましく、具体的には、生分解性非水溶層(C)の、水溶性樹脂層(B)と反対側の表面が、約400mm以上の耐水圧を有することが好ましく、約600mm以上の耐水圧を有することが好ましく、そして約1000mm以上の耐水圧を有することが最も好ましい。上記耐水圧が約400mm未満であると、使用時に体圧等の圧力がかかった場合等に、漏れが生ずる場合がある。なお、生分解性非水溶層(C)は、生分解性等の性能を有するものであれば、耐水圧の値に特に上限はない。
【0035】
生分解性非水溶層(C)の耐水圧は、用いられる製品によっても異なり、パンティライナーの場合には、耐水圧が約400mm以上であることが好ましく、生理用ナプキンの場合には、耐水圧が約800mm以上であることが好ましく、そして紙オムツの場合には、耐水圧が約1000mm以上であることが好ましい。
生分解性非水溶層(C)側の耐水圧は、生分解性非水溶層(C)の組成、層の厚さ等により制御することができる。
【0036】
また、生分解性非水溶層(C)は、透湿度が低いことが好ましく、具体的には、約50g/m2・24Hr以下の透湿度を有することが好ましい。湿気が透過することにより、中にある水溶性樹脂層(B)が溶解し、生分解性非水溶層(C)が上記耐水圧を保持することができなくなる場合があるからである。
上記透湿度は、JIS Z 0208 防湿包装材料の透湿度試験方法に従って測定することができる。
【0037】
また、上記透湿性と同様の観点から、生分解性非水溶層(C)は、通気性が低いことが好ましく、具体的には、カトーテック株式会社の試験器 KES F8−AP1を用いて測定した通気抵抗値が、計測範囲を超える大きさを有することが好ましい。
【0038】
生分解性非水溶層(C)としては、上記特性を有するものであれば、特に制限されないが、例えば、セラック、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、蜜蝋、パラフィンワックス、カルナバロウ、ライスワックス、キチン、疎水性デンプン、ポリブチレンサクシネート等が挙げられる。生分解性非水溶層(C)としては、セラックが好ましい。
【0039】
セラックは、ある種の植物に寄生するラック虫(インド産ラックカイガラムシ)が分泌した樹脂を精製することにより得られる天然樹脂である。上記セラックは、上記天然樹脂を変性したもの、例えば、メタクルリレート変性セラック、アクリレート変性セラック、エポキシ変性セラック、ウレタン変性セラック、エステル変性セラック、アセチル変性セラック、フェノール変性セラック等が含まれ、特にアルコールとの反応により得られるエステル変性セラック、アセチル変性セラック及びメタクリレート変性セラックが特に好ましい。
【0040】
上記蜜蝋は、蜜蜂の巣を加熱及び圧搾して採取された蝋であり、主成分はパルミチン酸ミリシルである。上記カルナバロウは、ナルナバヤシから採取される植物性ワックスである。上記ライスワックスは、米ヌカから抽出された米油を精製する際に分離された蝋油である。上記疎水性デンプンとしては、例えば、脂肪酸エステルデンプン、酢酸エステルデンプンが挙げられる。
【0041】
生分解性非水溶層(C)の、水溶性樹脂層(B)と反対側の表面は、液体の侵入を寄り防ぐ観点からは、撥水性を有していてもよい。当該撥水性としては、疎水性微粒子層(A)の項で説明したのと同様の水接触角を有するものであることが好ましい。
【0042】
本発明の不透水性及び水解性を有するシートにおいて、生分解性非水溶層(C)は、約3〜約15g/m2の坪量を有することが好ましく、そして約5〜約10g/m2以下の坪量を有することがより好ましい。坪量が約3g/m2未満の場合には、使用時に体圧等の圧力が加わった場合等に漏れが生ずる場合があり、坪量が約15g/m2を超えると、生分解性非水溶層(C)の耐水圧は向上するものの、シートが硬くなり触感が悪くなることと、廃棄後に生分解性非水溶層(C)が少なくとも2つの断片に分断されない場合等がある。
【0043】
[水解性基材層(D)]
水解性基材層(D)は、疎水性微粒子層(A)と水溶性樹脂層(B)との間に所望により配置される、水解性を有する基材の層である。水解性基材層(D)は、疎水性微粒子層(A)との接着力が高いので、疎水性微粒子層(A)の、水溶性樹脂層(B)と反対側の表面の耐水圧を向上させることができる。
なお、「水解性」の意味は、後述の「不透水性及び水解性を有するシート」の項で説明するとおりである。
【0044】
水解性基材層(D)としては、水解性を有するものであれば、特に制限されないが、例えば、繊維長20mm以下の水分散可能な繊維でシート状に構成された水解紙及び水解性不織布を挙げることができる。上記水解紙としては、例えば、トイレットペーパー等のパルプを湿式抄紙した水解ティッシュが挙げられる。上記水解性不織布としては、例えば、湿式抄紙をウォータージェット処理することにより軽度に繊維を交絡させた水解スパンレース不織布が挙げられる。
【0045】
上記水解性不織布に用いられる繊維としては、例えば、パルプ、レーヨン、キュプラ、綿、麻、羊毛、絹、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン及びビニロンが挙げられる。
【0046】
本発明の不透水性及び水解性を有するシートにおいて、水解性基材層(D)は、約15〜約50g/m2の坪量を有することが好ましく、そして約20〜約40g/m2以下の坪量を有することがより好ましい。坪量が約15g/m2未満の場合には、水解性基材(D)の強度が弱く、水溶性樹脂層(B)と一体化することが難しい場合がある。坪量が約50g/m2を超えると、シートが硬くなり触感が悪くなる場合があり、また、本発明の不透水性及び水解性を有するシートが水解するために時間がかかるので、浄化槽内でろ材を閉塞させ、そして/又はポンプ、下水道等の配管を詰まらせる場合がある。
【0047】
[不透水性及び水解性を有するシート]
本発明の不透水性及び水解性を有するシートの2つの態様の断面の模式図を、図1及び図2に示す。図1では、不透水性及び水解性を有するシート1は、上から順に、疎水性微粒子層(A)2、水溶性樹脂層(B)3及び生分解性非水溶層(C)4を含む。符号5及び6は、それぞれ、疎水性微粒子層(A)の、水溶性樹脂層(B)と反対側の表面、及び生分解性非水溶層(C)の、水溶性樹脂層(B)と反対側の表面である。
【0048】
本発明の不透水性及び水解性を有するシートは、生分解性非水溶層(C)側の方が、疎水性微粒子層(A)側よりも高い不透水性を有するので、本発明の不透水性及び水解性を有するシートは、通常は、生分解性非水溶層(C)側を、液体と接する頻度がより高い人体側に向けて用いられる。
【0049】
図2では、不透水性及び水解性を有するシート1は、上から順に、疎水性微粒子層(A)2、水解性基材層(D)7、水溶性樹脂層(B)3及び生分解性非水溶層(C)4を含む。符号5及び6は、それぞれ、疎水性微粒子層(A)の、水溶性樹脂層(B)と反対側の表面、及び生分解性非水溶層(C)の、水溶性樹脂層(B)と反対側の表面である。
【0050】
本発明の不透水性及び水解性を有するシートにおいて、「不透水性」は、疎水性微粒子層(A)側の不透水性と、生分解性非水溶層(C)側の不透水性との両方を意味する。
上記「水解性」は、水洗トイレに流した場合等に、水中で崩壊する性質を意味する。本発明の不透水性及び水解性を有するシートの水解性を、下記のシェイクフラスコ法及び分散率に従って評価することができる。
【0051】
シェイクフラスコ法の手順は、以下の通りである。
800mLの蒸留水が入っている1000mLのフラスコ内に、10cm×10cmの正方形の試料を入れ、振とう速度240rpmで、60分間シェーカー(IWAKI社製 SHKV−200)を振とうし、振とう後の試料の状態を目視で評価する。
評価基準は、以下の通りである。
A:原形を留めないレベルまで分散している。
B:一部原形を留めるが、3つ以上に分散している。
C:原形を留めている。
本発明の不透水性及び水解性を有するシートとしては、評価Aであることが最も好ましく、そして評価Bであることが好ましい。
【0052】
分散率の測定手順は、以下の通りである。
シェイクフラスコ法試験後のサンプルを、2メッシュ(線径:1.5mm、目開き:11.2mm、空間率:77.8%)の金網にて濾し取り、試験前のシート乾燥質量をAとし、そして金網上に残ったシート繊維の乾燥質量をBとして、以下の式:
分散率(%)=100×(A−B)/A
に基づいて計算する。
【0053】
本発明の不透水性及び水解性を有するシートは、上記分散率が、約50質量%以上であることが好ましく、約60質量%以上であることがより好ましく、約90質量%以上であることがさらに好ましく、そして約100質量%であることが最も好ましい。上記分散率が低いと、浄化槽内の機器に絡み付きやすくなり、浄化槽の正常な機能を妨げる障害原因となるからである。
【0054】
本発明の不透水性及び水解性を有するシートが、使用時に不透水性を有する一方で、水中への廃棄後に水解性を有するメカニズムは、以下の通りである。
−使用時−
(1)本発明の不透水性及び水解性を有するシートの、生分解性非水溶層(C)側に、液体が触れた場合には、生分解性非水溶層(C)の不透水性により、液体の侵入を防止する。
【0055】
(2)本発明不透水性及び水解性を有するシートの、シートの疎水性微粒子層(A)側が、濡れた手、汗、不測の事態により漏れた液体等に暴露された場合には、疎水性微粒子層(A)の不透水性により、液体の侵入を防止する。
【0056】
−廃棄後−
(1)本発明の不透水性及び水解性を有するシートは、使用後、水中に廃棄されると、水流で揉まれることにより、疎水性微粒子層(A)内の微細な凹凸構造が崩壊し、その撥水性が低下し、次いで不透水性が失われる。疎水性微粒子層(A)内の疎水性微粒子は、ファンデルワールス力により、水溶性樹脂層(B)、水解性基材層(D)等に付着しているので、水流で揉まれることにより、簡易に崩壊する。
(2)疎水性微粒子層(A)の不透水性が失われることにより、水が内部に侵入し、水解性基材層(D)を有する場合には、水解性基材層(D)が、水解する。
(3)次いで、水溶性樹脂層(B)が水に溶解し、そして水溶性樹脂層(B)の溶解に伴い、生分解性非水溶層(C)が少なくとも2つの断片に分断され、そして水解する。水解した生分解性非水溶層(C)は、水流と共に運搬され、浄化槽、下水等の中で、速やかに、通常は、3ヶ月以内に生分解する。
本発明の不透水性及び水解性を有するシートでは、疎水性微粒子層(A)側と、生分解性非水溶層(C)側とで異なるメカニズムを採用することにより、不透水性と、水解性との機能を両立する。
【0057】
本発明の不透水性及び水解性を有するシートの製造方法は、特に制限されないが、例えば、態様の1つとして、下記;
水溶性樹脂層(B)を準備するステップ;
疎水性微粒子層(A)を、水溶性樹脂層(B)に積層するステップ;及び
生分解性非水溶層(C)を、水溶性樹脂層(B)に積層するステップ:
を挙げることができる。
【0058】
水溶性樹脂層(B)を準備するために、例えば、水溶性樹脂層(B)を構成する樹脂の溶液、例えば、水溶液を、支持基材の上に、例えば、スリットコーターによりコーティングすることができ、又は水溶性樹脂層(B)を構成する樹脂の溶融物を、フィルム状に成形することができ、あるいはフィルム状で市販される水溶性樹脂層(B)をそのまま用いることができる。
【0059】
疎水性微粒子層(A)は、上記疎水性微粒子が溶媒に分散された溶液を、スプレーコーティング、カーテンコーティング、グラビアコーティング、フォームコーティング等の方法によりコーティングすることにより、水溶性樹脂層(B)に積層することができる。
疎水性微粒子層(A)は、一定の水圧まで撥水性を保持し、一定の水圧を超えると崩壊する必要があるため、膜状の連続皮膜ではなく、多孔状の不連続皮膜であることが好ましい。
【0060】
疎水性微粒子層(A)を分散させる溶媒としては、水溶性樹脂層(B)及び、所望による水解性基材層(D)への影響を考慮すると、水以外であることが好ましく、例えば、脂肪族アルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール;ケトン、例えば、アセトン、エチルメチルケトン;エステル、例えば、酢酸エチル;エーテル、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル;脂肪族系炭化水素、例えば、パラフィン;脂環式系炭化水素、例えば、シクロヘキサン;芳香族系炭化水素、例えば、トルエンを挙げることができる。
【0061】
生分解性非水溶層(C)は、例えば、生分解性非水溶層(C)を構成する樹脂を含む溶液を、例えば、ロールコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、リップコーティング等の方法によりコーティングすることにより、水溶性樹脂層(B)に積層することができる。
なお、疎水性微粒子層(A)を水溶性樹脂層(B)に積層するステップと、生分解性非水溶層(C)を水溶性樹脂層(B)に積層するステップとは、順不同であり、どちらを先に実施してもよい。
【0062】
本発明の不透水性及び水解性を有するシートの製造方法の別の態様として、下記;
水溶性樹脂層(B)を、水解性基材層(D)に積層するステップ;
疎水性微粒子層(A)を、水解性基材層(D)に積層するステップ;及び
生分解性非水溶層(C)を、水溶性樹脂層(B)に積層するステップ:
を挙げることができる。
【0063】
水溶性樹脂層(B)は、例えば、水溶性樹脂層(B)を構成する樹脂の溶液、例えば、水溶液を、例えば、スリットコーターでコーティングすることにより、水解性基材層(D)に積層することができる。
疎水性微粒子層(A)は、上記疎水性微粒子が溶媒に分散された上述の溶液を、上述の方法により水解性基材層(D)にコーティングすることにより、積層することができる。
生分解性非水溶層(C)を水溶性樹脂層(B)に積層する方法は、上述の通りである。
なお、水溶性樹脂層(B)を、水解性基材層(D)に積層するステップと、疎水性微粒子層(A)を、水解性基材層(D)に積層するステップと、生分解性非水溶層(C)を、水溶性樹脂層(B)に積層するステップとは、順不同である。
【0064】
本発明の不透水性及び水解性を有するシートにおいて、その坪量は、用途によって変化するものではあるが、一般的には、約15〜約100g/m2であることが好ましく、約15〜約75g/m2であることがより好ましく、そして、約30〜約75g/m2であることがさらに好ましい。上記坪量が、約15g/m2未満であると、不透水性が劣る場合があり、そして、約100g/m2を超えると、シートが硬くなり触感が悪くなる場合、及び/又は水解性が劣る場合がある。
【0065】
本発明の不透水性及び水解性を有するシートは、本発明の効果を阻害しない範囲で、疎水性微粒子層(A)、水溶性樹脂層(B)、生分解性非水溶層(C)及び所望による水解性基材層(D)の、3層及び4層以外に、追加の層をさらに含むことができる。そのような追加の層として、例えば、生分解性非水溶層(C)の上の、さらなる疎水性微粒子層(A)、及びさらなる水溶性樹脂層(B)を挙げることができる。
生分解性非水溶層(C)の上に、疎水性微粒子層(A)をさらに積層することにより、生分解性非水溶層(C)側の撥水性を向上させ、ひいては不透水性を向上させることができる。また、生分解性非水溶層(C)の上に、水溶性樹脂層(B’)をさらに積層することにより、使用前の保管中に生分解性非水溶層(C)が経時劣化するのを防止することができ、そして液体を吸収した際に水溶性樹脂(B’)が液体に溶解し、液体を増粘させて、防漏効果を高めることができる。
【0066】
本発明の不透水性及び水解性を有するシートは、生理用品、例えば、生理用ナプキン及びパンティライナー、衛生用品、例えば、使い捨ておむつ、尿漏れ防止用シート、失禁患者用の尿取りパッド等に用いることができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の製造例、実施例及び比較例で用いた材料を、それらの中で用いられる略称と共に示す。
−疎水性微粒子層(A)−
ナノシリカ粒子:日華化学(株)製,アデッソWR1
−水溶性樹脂層(B)−
PVAフィルム:日本合成化学(株)製,ハイセロン MS−25,坪量:25g/m2
水溶性ウレタン:大原パラヂウム化学(株)製,AF36
スルホ変性ポリエステル:Eastman Chemical Company製,AQ29D
−生分解性非水溶層(C)−
セラック:東日本塗料(株)製,赤レッテル漂白セラックニス
−水解性基材層(D)−
水解紙:NBKP 100%,坪量:35g/m2
【0068】
[製造例1]
PVAフィルムの一方の面に、ナノシリカ粒子を、坪量が1.0g/m2となるように、スプレーコーティングし、そして乾燥した。次いで、上記PVAフィルムの、ナノシリカ粒子をコーティングしたのと反対の面に、セラックを、坪量が7.0g/m2となるようにグラビアコーティングし、そして乾燥し、シート1を製造した。
【0069】
[製造例2]
水解紙に、ナノシリカ粒子を、坪量が1.0g/m2となるようにスプレーコーティングし、そして乾燥した。ここで、ナノシリカ粒子がコーティングされた水解紙の通気抵抗値を測定したところ、0.289kPa・S/mであり、通気性を有することが確認された。次いで、水溶性ウレタンを、水解紙の、ナノシリカ粒子がコーティングされた面と反対の面に、坪量が20.0g/m2となるようにスリットコーターによりコーティングし、そして乾燥した。ここで、水溶性ウレタンがコーティングされた水解紙の通気抵抗値を測定したところ、計測範囲を超える大きさを有していた。次いで、セラックを、上記水溶性ウレタンの層の上に、坪量が7.0g/m2となるようにグラビアコーティングし、そして乾燥し、シート2を製造した。
【0070】
[製造例3]
セラックの坪量を3.0g/m2に変更した以外は製造例2に従って、シート3を製造した。
[製造例4]
セラックの坪量を15.0g/m2に変更した以外は製造例2に従って、シート4を製造した。
【0071】
[製造例5]
水溶性ウレタンの代わりにスルホ変性ポリエステルを用いた以外は製造例2に従って、シート5を製造した。
なお、スルホ変性ポリエステルは、イオン感応性樹脂の一種であり、体液中のようなイオン濃度が高い状況下では不溶性を示すが、トイレ等の大量の水の存在下のように、イオン濃度が低い状況下では溶解性を示す樹脂である。
【0072】
[製造例6]
製造例2の方法に従って製造したシートのセラック層の上に、追加の層として、水溶性ウレタンを、坪量が5.0g/m2となるようにスリットコーターによりコーティングし、そして乾燥し、シート6を製造した。
製造例1〜6で製造されたシート1〜6の概要を、表1にまとめる。
【0073】
[比較製造例1]
PVAフィルムの一面に、セラックを、坪量が7.0g/m2となるようにグラビアコーティングし、そして乾燥し、シート7を製造した。
吸湿により、カール、ベタツキ等が発生するため、湿度制御が必要であった。
[比較製造例2]
PVAフィルムの一面に、セラックを、坪量が7.0g/m2となるようにグラビアコーティングし、そして乾燥させ、次いで、PVAフィルムの、セラックをコーティングした面と反対側の面に、セラックを、坪量が7.0g/m2となるようにグラビアコーティングし、そして乾燥し、シート8を製造した。
【0074】
[比較製造例3]
水解紙の一面に、水溶性ウレタンを、坪量が20.0g/m2となるようにスリットコーターによりコーティングし、そして乾燥させた。次いで、セラックを、上記水溶性ウレタンの層の上に、坪量が7.0g/m2となるようにグラビアコーティングし、そして乾燥し、シート9を製造した。
[比較製造例4]
水解紙の一面に、セラックを、坪量が7.0g/m2となるようにグラビアコーティングし、そして乾燥し、シート10を製造した。
比較製造例1〜4で製造されたシート7〜10の概要を、表1にまとめる。
【0075】
[実施例1〜6、及び比較例1〜4]
製造例1〜6及び比較製造例1〜4で製造されたシート1〜10に関して、下記試験を行った。
試験項目及び試験手順を以下に列挙し、そして結果を、表1に併せて示す。
−水解性−
上述のシェイクフラスコ法及び分散率に従って評価した。
なお、シェイクフラスコ法の目視評価に関しては、3回試験した結果を、総合的に判断した。
【0076】
−恒温高湿試験−
40℃及び相対湿度90%の条件下でシートを24時間保持し、シートの吸湿性に起因する反りを、目視で評価した。シートが、吸湿性を有する場合には、製造の際に、カール、ベタツキ等が発生し、生産性が低下する原因となり得るので、湿度を厳格に制御する必要が生じうる。
評価基準は、以下の通りである。
A:吸湿によるカール、ベタツキ発生なし
B:吸湿によるカール、ベタツキが若干あるが、加工には影響がない
C:吸湿によるカール、ベタツキが著しく、加工に影響がある
【0077】
−接触角−
疎水性微粒子層(A)の、水溶性樹脂層(B)と反対側の表面の水接触角を、協和界面科学(株)製 自動接触角計 CA−V型を用いて測定した。5回測定した結果の平均値を、接触角の値として採用する。
−耐水圧−
疎水性微粒子層(A)側の耐水圧と、生分解性非水溶層(C)側との耐水圧を、それぞれ評価する。
JIS L 1092に準じて、10回試験した結果の平均値を、耐水圧の値として採用する。
【0078】
【表1】

【0079】
実施例1のシート1では、生分解性非水溶層(C)が、1000mm以上の耐水圧を有し、生分解性非水溶層(C)として十分な不透水性を有する。また、シート1において、疎水性微粒子層(A)が、157°の接触角と、42mmの耐水圧とを有し、疎水性微粒子層(A)として十分な不透水性を有する。さらに、実施例1のシート1は、シェイクフラスコ法による目視評価がAであり且つ分散率が100%であるので、十分な水解性をも有することが確認された。
【0080】
実施例2のシート2では、シート1と比較して、疎水性微粒子層(A)の耐水性が向上している。これは、ナノシリカ粒子と水解紙との間の結合が、ナノシリカ粒子とPVAフィルムとの間の結合よりも高いことに起因すると思われる。
【0081】
実施例3から、セラックの量を3.0g/m2に減少させると、水解性が向上し、生分解性非水溶層(C)の耐水圧が若干低下することが分かり、そして実施例4から、セラックの量を15.0g/m2に増加させると、シェイクフラスコ法及び分散率により示される水解性が若干劣るが、耐水性が大きく向上することが分かる。従って、セラックの量は、本発明の不透水性及び水解性を有するシートが用いられる用途に応じて、適宜増減されうる。
実施例5から、水溶性樹脂層(B)を、PVAから、スルホ変性ポリエステルに変更した場合も、同様の効果を有することが分かる。また、実施例6から、生分解性非水溶層(C)の上に、追加の層として水溶性ウレタンをさらに積層しても、水解性はそれほど低下しないことが分かる。
【0082】
特許文献1に記載の水溶性防水フィルムに相当する比較例1では、PVAフィルム面が、0°の接触角且つ3mmの耐水圧を有し、不透水性をほとんど有しないことが分かる。さらに、比較例1のシート7は、恒温高湿試験におけるシートの反りが顕著であった。
また、特許文献1の[0058]に記載される、PVAフィルム層の両側に、生分解性非水溶層を積層する態様に相当する比較例2では、不透水性に優れるものの、水解性をほとんど有しないことが分かる。
【0083】
比較例3から、疎水性微粒子層(A)を有しないと、疎水性微粒子層(A)を有しない面が、不透水性に劣ることが分かる。比較例4から、水溶性樹脂層(B)を有しない場合には、シェイクフラスコ法による評価C且つ5%の分散率からも明らかであるように、水解性に劣る。これは、生分解性非水溶層(C)を少なくとも2つの断片に分断する役割を担う水溶性樹脂層(B)が、存在しないためであると思われる。
【符号の説明】
【0084】
1 不透水性及び水解性を有するシート
2 疎水性微粒子層(A)
3 水溶性樹脂層(B)
4 生分解性非水溶層(C)
5 疎水性微粒子層(A)の、水溶性樹脂層(B)と反対側の表面
6 生分解性非水溶層(C)の、水溶性樹脂層(B)と反対側の表面
7 水解性基材層(D)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性微粒子層(A)と、水溶性樹脂層(B)と、生分解性非水溶層(C)とを含む、不透水性及び水解性を有するシートであって、
水溶性樹脂層(B)は、疎水性微粒子層(A)と、生分解性非水溶層(C)との間にあり且つ生分解性非水溶層(C)に接着されており、
疎水性微粒子層(A)は、疎水性微粒子層(A)の水溶性樹脂層(B)と反対側の表面に、疎水性微粒子が積層されることにより形成された微細な凹凸構造を有することにより、90°超の水接触角を有し、そして水流に揉まれることにより崩壊する層であり、そして
生分解性非水溶層(C)は、非水溶性であり且つ水溶性樹脂層(B)の水への溶解に伴い、少なくとも2つの断片に分断される層である、
ことを特徴とするシート。
【請求項2】
前記疎水性微粒子が、無機系微粒子を含む、請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記疎水性微粒子が、1〜100nmの平均粒径を有する、請求項1又は2に記載のシート。
【請求項4】
疎水性微粒子層(A)が、0.1〜3g/m2の坪量を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシート。
【請求項5】
疎水性微粒子層(A)と、水溶性樹脂層(B)との間に、水解性基材層(D)をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシート。
【請求項6】
水解性基材層(D)が、水解紙及び水解性不織布から成る群から選択される材料を含む、請求項5に記載のシート。
【請求項7】
生分解性非水溶層(C)が、セラック、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、蜜蝋、パラフィンワックス、カルナバロウ、ライスワックス、キチン、疎水性デンプン及びポリブチレンサクシネートから成る群から選択される材料を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のシート。
【請求項8】
水溶性樹脂層(B)が、水溶性ウレタン、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリエチレンオキシド、ビニルエーテル系ポリマー、スルホ変性ポリエステル、ポリウレタン誘導体及び多糖類から成る群から選択される材料を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシート。
【請求項9】
疎水性微粒子層(A)の、水溶性樹脂層(B)と反対側の表面が、30〜300mmの耐水圧を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシート。
【請求項10】
生分解性非水溶層(C)の、水溶性樹脂層(B)と反対側の表面が、400mm以上の耐水圧を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のシート。
【請求項11】
シェイクフラスコ法試験後の分散率(%)が、50質量%以上である、請求項1〜10のいずれか一項に記載のシート。
【請求項12】
生分解性非水溶層(C)の上に、追加の層としての水溶性樹脂層(B)をさらに含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート。
【請求項13】
水溶性樹脂層(B)を準備するステップ;
疎水性微粒子層(A)を、水溶性樹脂層(B)に積層するステップ;及び
生分解性非水溶層(C)を、水溶性樹脂層(B)に積層するステップ:
を含む、請求項1に記載のシートの製造方法。
【請求項14】
水溶性樹脂層(B)を、水解性基材層(D)に積層するステップ;
疎水性微粒子層(A)を、水解性基材層(D)に積層するステップ;及び
生分解性非水溶層(C)を、水溶性樹脂層(B)に積層するステップ:
を含む、請求項5に記載のシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−183613(P2011−183613A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49682(P2010−49682)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】