説明

不飽和ポリエステル

本発明は、(a)少なくとも750ダルトン、最大で5000ダルトンの分子量Mを有する不飽和ポリエステル樹脂、および(b)反応性希釈剤、を含む樹脂組成物であって、不飽和ポリエステル樹脂が、C5〜C10不飽和二酸構成単位およびイソソルビド構成単位を含む、樹脂組成物に関する。好ましくは、イソソルビドの少なくとも一部が非化石資源から誘導されている。好ましくは、イタコン酸または無水物が、C5不飽和ジカルボン酸として使用される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、(a)少なくとも750ダルトン、最大で5000ダルトンの分子量Mを有する不飽和ポリエステル樹脂、および(b)反応性希釈剤を含む、構造部品の製造で使用するのに適した樹脂組成物に関する。
【0002】
不飽和ポリエステル樹脂は、多くの構造用途に適していることがよく知られているが、樹脂組成物の取扱性を考慮すると、樹脂の粘度が高すぎないことが望ましい。例えば、裏装は、樹脂組成物での繊維の含浸を含む。したがって、樹脂組成物の粘度は、取り扱いおよび含浸の時間を考慮して高すぎないほうがよい。粘度が非常に重要であるというこの事実は、他の多くの用途、例えば、化学的定着、注入、真空注入にも当てはまるが、低粘度樹脂でかなり滑らかに行われる開放成形用途のような単純な積層プロセスにも当てはまる。その結果、硬化樹脂の特性、特にHDTによって示される熱安定性にマイナスの影響を与えることなく、樹脂組成物の粘度を低減する方法が非常に必要とされている。粘度を下げる1つの方法は、より多くの反応性希釈剤を添加することであるが、樹脂組成物中の樹脂の含有量が低くなるため、この結果、一般に硬化樹脂組成物の機械的性質が低下し、これによって、熱安定性が低下する可能性があり、従って一般に適用することはできない。
【0003】
さらにエコロジカル・フットプリント(ecological footprint)を考慮して、バイオベースの構成単位を含む構造部品の製造に使用することができる不飽和ポリエステルを製造することが非常に望まれる。
【0004】
消費者製品の製造における石油ベースのモノマーの使用は、石油価格の連続的な上昇および既知の石油埋蔵の枯渇速度の高さから、将来減少すると考えられる。これは、汚染に対する環境保護に対しての世界中の政府の厳しい規制と共に、石油ベースのモノマーの可能性のある代替物としての再生可能資源の調査を駆り立てている。限られた石油資源の減少に関して、工業用途用の化学物質としての再生可能資源の使用は非常に興味深い。不飽和ポリエステルのバイオベース構成単位の非常に適している例は、それがトウモロコシから得られることから、イソソルビドである。
【0005】
しかしながら、無水マレイン酸と組み合わせてイソソルビドを使用した結果、HDTの増加は予想どおりであったが、希釈樹脂の粘度が激しく増加することが判明した。
【0006】
本発明の目的は、硬化物の熱安定性(HDTで表される)が維持されるか、または高められると同時に、相対的に低い粘度を有する樹脂組成物を得ることである。
【0007】
本発明者らは驚くべきことに、イソソルビドおよびC5〜C10不飽和二酸構成単位を含む不飽和ポリエステル樹脂でこの目的を達成することができることを見出した。本発明の好ましい実施形態において、イタコン酸または無水物が、C5〜C10不飽和二酸構成単位に使用される。これは、イタコン酸または無水物が、例えばトウモロコシなどの非化石資源から誘導される場合に特に好ましい。
【0008】
イタコン酸および1,2−プロピレングリコールから製造された樹脂によって、粘度は予想どおりわずかに低下するが、熱安定性が低い硬化物が得られることから、HDTが向上するという事実は、さらに驚くべきことである。
【0009】
本発明の好ましい実施形態において、本発明による樹脂組成物中に存在する不飽和ポリエステルを得るために使用することが好ましい、イソソルビドの少なくとも一部および/またはイタコン酸もしくはイタコン酸無水物の少なくとも一部は、非化石資源から誘導される。本発明のさらに好ましい実施形態において、本発明による樹脂組成物中に存在する不飽和ポリエステルを得るために使用される、イソソルビドの少なくとも一部およびイタコン酸もしくはイタコン酸無水物の少なくとも一部は、非化石資源から誘導される。
【0010】
本発明による樹脂組成物中に存在する不飽和ポリエステルは、イソソルビドおよびC5〜C10不飽和ジカルボン酸構成単位を含む。分子量(Mn)は、ポリスチレン標準物質および分子量の決定用に設計された適切なカラムを用いて、ISO 13885−1に従って、GPCによってテトラヒドロフラン中で決定される。
【0011】
本発明による樹脂組成物中に存在する不飽和ポリエステルは、ポリオールとしての少なくともイソソルビドと不飽和ジカルボン酸としての少なくともC5〜C10不飽和ジカルボン酸との重縮合によって製造することができる。反応性不飽和を含有する他のジカルボン酸、例えばマレイン酸または無水物およびフマル酸などの存在下にて、かつ/または飽和脂肪族ジカルボン酸または無水物、例えばシュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などの存在下にて、かつ/または芳香族飽和ジカルボン酸または無水物、例えばフタル酸または無水物およびイソフタル酸などの存在下にて、重縮合を行うこともできる。重合において、更なる二官能性または多官能性アルコールを使用することができる。好ましくは、例えば1,2−プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールAまたはエトキシ化/プロポキシル化ビスフェノールAなどのジオールが使用される。
【0012】
好ましい実施形態に従って、不飽和ポリエステル樹脂におけるジオールの分子量は、60〜250ダルトンの範囲である。
【0013】
本発明による樹脂組成物中に存在する不飽和ポリエステル樹脂において、イソソルビドのモル量は、好ましくは少なくとも2.5%、さらに好ましくは少なくとも5%、またさらに好ましくは少なくとも7.5%(ジオールの総量に対して)である。イソソルビドのモル量は、好ましくは最大で50%、さらに好ましくは最大で40%、またさらに好ましくは最大で30%(ジオールの総量に対して)である。好ましい実施形態において、不飽和ポリエステル樹脂におけるイソソルビドのモル量は、少なくとも2.5%、最大で50%(ジオールの総量に対して)である。
【0014】
本発明による樹脂組成物中に存在する不飽和ポリエステル樹脂において、好ましくは、ジカルボン酸構成単位の少なくとも25重量%がイタコン酸構成単位である。さらに好ましくは、本発明による樹脂組成物中に存在する不飽和ポリエステルにおけるジカルボン酸構成単位の少なくとも55重量%がイタコン酸構成単位である。
【0015】
不飽和ジカルボン酸構成単位の好ましくは少なくとも25重量%、さらに好ましくは少なくとも55重量%がイタコン酸構成単位である。
【0016】
本発明による樹脂組成物中に存在する不飽和ポリエステル樹脂の酸価は、好ましくは25〜125mgKOH/g(樹脂)の範囲であり、さらに好ましくは30〜100mgKOH/g(樹脂)の範囲であり、さらに好ましくは35〜75mgKOH/g(樹脂)の範囲である。本明細書で使用される、樹脂の酸価は、ISO 2114−2000に従って滴定で決定される。
【0017】
本発明による樹脂組成物中に存在する不飽和ポリエステル樹脂におけるヒドロキシル末端基とカルボン酸末端基のモル比は、好ましくは0.33〜3の範囲、さらに好ましくは0.33〜0.9の範囲、さらに好ましくは1.1〜3の範囲である。不飽和ポリエステル樹脂におけるヒドロキシル末端基とカルボン酸末端基のモル比は、ヒドロキシル価を酸価で割ることによって計算される。
【0018】
本発明による樹脂組成中に存在する不飽和ポリエステル樹脂のヒドロキシル価は、好ましくは25mgKOH/g(樹脂)より高く、さらに好ましくは40mgKOH/g(樹脂)より高い。本明細書で使用される、ポリエステルのヒドロキシル価はISO 4629−1996に従って決定される。
【0019】
不飽和ポリエステルのガラス転移温度Tは、好ましくは少なくとも−70℃、最大で100℃である。不飽和ポリエステルが建築用途に適用される場合には、本発明による樹脂組成物中に存在する不飽和ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tは、好ましくは少なくとも−70℃、さらに好ましくは少なくとも−50℃、またさらに好ましくは少なくとも−30℃である。本発明による樹脂組成物中に存在する不飽和ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tは、好ましくは最大で70℃、さらに好ましくは最大で50℃、またさらに好ましくは最大で30℃である。本明細書で用いられる、Tは、DSC(加熱速度5℃/分)を用いて決定される。
【0020】
本発明による樹脂組成物中に存在する不飽和ポリエステル樹脂は、カルボン酸銅、ベンゾキノン、アルキル置換ベンゾキノン、ヒドロキノンおよび/またはメチル置換ヒドロキノンから選択される少なくとも1種類のラジカル抑制剤の存在下にて有利に製造することができる。好ましい実施形態において、本発明による樹脂組成物中に存在する不飽和ポリエステルは、(i)C5〜C10ジカルボン酸および/または無水物、任意に他の二酸、イソソルビド、任意に他のジオール、およびカルボン酸銅、ベンゾキノン、アルキル置換ベンゾキノン、ヒドロキノンおよび/またはメチル化ヒドロキノンから選択される少なくとも1種類のラジカル抑制剤を反応器に装入し、
(ii)形成された不飽和ポリエステルの酸価が60未満になるまで、反応器を温度180〜200℃まで加熱し、
(iii)形成された樹脂を好ましくは温度20〜120℃に冷却し、
(iv)任意に樹脂を反応性希釈剤で希釈する、
ことによって製造される。
【0021】
好ましくは、本発明による樹脂組成物中に存在する不飽和ポリエステル樹脂は、抑制剤としてのヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、ベンゾキノンまたは2−メチルベンゾキノンの存在下で、さらに好ましくは抑制剤としての2−メチルヒドロキノンの存在下で、またさらに好ましくは抑制剤としてのヒドロキノンおよび2−メチルヒドロキノンの存在下で製造される。
【0022】
一実施形態において、本発明による樹脂組成物樹脂は、粉体塗料組成物として適用することができる。粉体塗料組成物の製造は、Misevによって、Powder Coatings,Chemistry and Technology(pp.224〜300;1991,John Wiley)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。したがって、本発明は、イソソルビド構成単位およびC5〜C10不飽和ジカルボン酸構成単位を含む不飽和ポリエステルを含む粉体塗料組成物にも関する。本発明による不飽和ポリエステルが粉体塗料組成物で使用される場合、不飽和ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tは、好ましくは少なくとも20℃、さらに好ましくは少なくとも25℃、またさらに好ましくは少なくとも30℃、最大で100℃、さらに好ましくは最大で80℃、またさらに好ましくは最大で60℃である。
【0023】
粉体塗料組成物を製造する一般的な方法は、計量した成分をプレミキサーで別々に混合し、得られたプレミックスを例えばニーダー、好ましくは押出機において加熱して、押出し物を得て、得られた押出し物をそれが固化するまで冷却し、顆粒またはフレークに粉砕し、それをさらに粉砕して粒径を低減し、続いて適切に分級して、適切な粒径の粉体塗料組成物を得る方法である。したがって、本発明は、
a.粉体塗料組成物の成分を混合して、プレミックスを得る工程、
b.得られたプレミックスを好ましくは押出機において加熱し、押出し物を得る工程、
c.得られた押出し物を冷却し、固化押出し物を得る工程、
d.得られた固化押出し物を小さな粒子に粉砕し、粉体塗料組成物を得る工程、
を含み、好ましくは、このように製造された粉末粒子をふるいにより分級し、粒径90μm未満のふるい分級物を収集する更なる工程を含む、本発明による粉体塗料組成物を製造する方法にも関する。
【0024】
本発明の粉体塗料組成物は任意に、例えば充填剤/顔料、脱ガス剤、流れ調整剤、または(光)安定剤などの通常の添加剤を含有する。流れ調整剤の例としては、Byk361Nが挙げられる。適切な充填剤/顔料の例としては、金属酸化物、ケイ酸塩、炭酸塩または硫酸塩が挙げられる。適切な安定剤の例としては、例えば、ホスホナイト、チオエーテルまたはHALS(ヒンダードアミン光安定剤)などの紫外線安定剤が挙げられる。脱ガス剤の例としては、ベンゾインおよびシクロヘキサンメタノールジビスベンゾアートが挙げられる。摩擦帯電性を改善する添加剤などの他の添加剤も添加することができる。
【0025】
他の態様において、本発明は、以下の工程:
1)基材がコーティングで一部または完全にコーティングされるように、不飽和ポリエステルを含む粉体塗料組成物を基材に塗布する工程;
2)そのコーティングが少なくとも一部硬化するような時間、かつ温度に、一部または完全にコーティングされた得られた基材を加熱する工程;
を含む、基材をコーティングする方法に関する。
【0026】
本発明の粉体塗料組成物は、当業者に公知の技術を用いて、例えば静電吹付けまたは静電流動床を用いて塗布することができる。
【0027】
本発明による不飽和ポリエステル樹脂組成物は、1種または複数種の反応性希釈剤を含む。
【0028】
本発明による樹脂組成物中のかかる反応性希釈剤の量は通常、5〜75重量%、好ましくは20〜60重量%の範囲、最も好ましくは30〜50重量%の範囲(樹脂組成物中に存在する不飽和ポリエステルと反応性希釈剤の総量に対して)である。希釈剤は例えば、より容易にそれを取り扱うことができるようにするために、樹脂組成物の粘度を下げるため、適用される。明確にするために、反応性希釈剤は、不飽和ポリエステル樹脂と共重合することができる希釈剤である。エチレン性不飽和化合物を反応性希釈剤として有利に使用することができる。好ましくは、樹脂組成物は、スチレン、イタコン酸ジメチルおよび/またはメタクリレート含有化合物を反応性希釈剤として含む。本発明の一実施形態において、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドンおよび/またはN−ビニルカプロラクタムが、反応性希釈剤として使用される。この実施形態において、スチレンおよび/または(メタ)アクリレート含有化合物が好ましくは、反応性希釈剤として使用され、さらに好ましくは、(メタ)アクリレート含有化合物が反応性希釈剤として使用される。他の実施形態において、イタコン酸またはイタコン酸のエステルが反応性希釈剤として使用される。さらに好ましい実施形態において、反応性希釈剤は、イタコン酸のエステルおよび少なくとももう1つのエチレン性不飽和化合物、例えばスチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドンおよび/またはN−ビニルカプロラクタムなどを含む。この実施形態において、樹脂組成物は好ましくは、反応性希釈剤としてのイタコン酸のエステルおよび反応性希釈剤としてのスチレンまたは反応性希釈剤としてのメタクリレート含有化合物を含む。好ましいイタコン酸のエステルはイタコン酸ジメチルである。
【0029】
樹脂組成物は好ましくは、樹脂組成物をラジカル硬化するための共開始剤を0.00001〜10重量%(樹脂組成物中に存在する不飽和ポリエステルと反応性希釈剤の総量に対する)の量でさらに含む。好ましい共開始剤は、アミンまたは遷移金属化合物である。
【0030】
組成物中に存在するアミン共開始剤は好ましくは、芳香族アミン、さらに好ましくは第3級芳香族アミンである。適切な促進剤としては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン;トルイジンおよびキシリジン、例えばN,N−ジイソプロパノール−パラ−トルイジン;N,N−ジメチル−p−トルイジン;N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)キシリジンおよび−トルイジンが挙げられる。樹脂組成物中のアミンの量(樹脂組成物中に存在する不飽和ポリエステルと反応性希釈剤の総量に対する)は、一般に少なくとも0.00001重量%、好ましくは少なくとも0.01重量%、さらに好ましくは少なくとも0.1重量%である。一般に、樹脂組成物中のアミンの量は、最大で10重量%、好ましくは最大で5重量%である。
【0031】
共開始剤としての適切な遷移金属化合物の例は、範囲22〜29の原子番号または範囲38〜49の原子番号、または範囲57〜79の原子番号を有する遷移金属の化合物、バナジウム、鉄、マンガン、銅、ニッケル、モリブデン、タングステン、コバルト、クロム化合物などである。好ましい遷移金属はV、Cu、Co、MnおよびFeである。
【0032】
本発明による樹脂組成物中に存在する不飽和ポリエステルを反応性希釈剤で希釈した後に、更なるラジカル抑制剤が添加される。これらのラジカル抑制剤は好ましくは、フェノール化合物、ベンゾキノン、ヒドロキノン、カテコール、安定性ラジカルおよび/またはフェノチアジンの群から選択される。添加することができるラジカル抑制剤の量は、かなり広い範囲内で変動し、達成が望まれるとおりに、ゲル化時間の第1の指標として選択される。
【0033】
本発明による樹脂組成物で使用することができるラジカル抑制剤の適切な例は、例えば、2−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4,6−トリメチル−フェノール、2,4,6−トリス−ジメチルアミノメチルフェノール、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、6,6’−ジ−t−ブチル−2,2’−メチレンジ−p−クレゾール、ヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,6−ジメチルヒドロキノン、2,3,5−トリメチルヒドロキノン、カテコール、4−t−ブチルカテコール、4,6−ジ−t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、2,3,5,6−テトラクロロ−1,4−ベンゾキノン、メチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、ナフトキノン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オール(TEMPOLとも呼ばれる化合物)、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オン(TEMPONとも呼ばれる化合物)、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−カルボキシル−ピペリジン(4−カルボキシ−TEMPOとも呼ばれる化合物)、1−オキシル−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン、1−オキシル−2,2,5,5−テトラメチル−3−カルボキシルピロリジン(3−カルボキシ−PROXYLとも呼ばれる)、ガルビノキシル、アルミニウム−N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、フェノチアジンおよび/またはこれらの化合物のいずれかの誘導体または組み合わせである。
【0034】
有利なことに、本発明による樹脂組成物中のラジカル抑制剤の量(樹脂組成物中に存在する飽和ポリエステルと反応性希釈剤の総量に対して)は、0.0001〜10重量%の範囲である。さらに好ましくは、樹脂組成物における抑制剤の量は、0.001〜1重量%の範囲である。当業者であれば、本発明に従って、選択される抑制剤の種類に応じて、良い結果をもたらすその量をかなり容易に推定することができる。
【0035】
本発明はさらに、樹脂組成物を硬化するための開始剤をさらに含む、本発明による樹脂組成物に関する。本発明はさらに、本発明による樹脂組成物からなる成分と、樹脂組成物を硬化するための開始剤を含む成分と、を含む多成分樹脂組成物に関する。本発明はさらに、本発明による樹脂組成物をラジカル硬化する方法であって、その硬化が、上述のように開始剤を樹脂組成物に添加することによって行われる方法に関する。好ましくは、硬化は、−20〜+200℃の範囲、好ましくは−20〜+100℃の範囲、最も好ましくは−10〜+60℃の範囲の温度で行われる(いわゆる低温硬化)。開始剤は光開始剤、熱開始剤および/または酸化還元開始剤である。
【0036】
本明細書で意味される、光開始剤は、照射されると硬化を開始することができる。光開始は、適切な波長の光の照射(光照射)を用いて硬化することであると理解される。これは、光硬化とも呼ばれる。
【0037】
光開始システムは、光開始剤自体からなるか、または光開始剤と増感剤の組み合わせであるか、または任意に1種または複数種の増感剤と組み合わせられた光開始剤の混合物であることができる。
【0038】
本発明の文脈で用いられる光開始システムは、当業者に公知の光開始システムの大きな群から選択することができる。膨大な数の適切な光開始システムが、例えば、K.DietlikerおよびJ.V.Crivelloによる「Chemistry and Technology of UV and EB Formulations」,2nd Edition(SITA Technology,London;1998)の第3巻に記載されている。
【0039】
熱開始剤は、例えばアゾイソブチロニトリル(AIBN)などのアゾ化合物、例えばベンゾピナコールなどのC−C不安定性化合物、過酸化物およびその混合物から選択することができる。熱開始剤は好ましくは、1種類の有機過酸化物、または2種類以上の有機過酸化物の組み合わせである。
【0040】
酸化還元開始剤は好ましくは、上記の共開始剤のうちの少なくとも1つと組み合わされた有機過酸化物である。適切な過酸化物の例は、例えば、ヒドロペルオキシド、ペルオキシカーボネート(式−OC(O)OO−)、ペルオキシエステル(式−C(O)OO−)、ジアシルペルオキシド(式−C(O)OOC(O)−)、ジアルキルペルオキシド(式−OO−)等である。
【0041】
本発明はさらに、上述のように開始剤を用いて硬化することによって、上述の不飽和ポリエステル樹脂組成物から製造される物および部品にも関する。本明細書で使用される、構造樹脂組成物は、構造部品を提供することができる。一般に、かかる樹脂組成物は非水性システムである。それらは、主に樹脂製造中の反応から生じる水を最大で5重量%含有する。本明細書で意味される、構造部品は、少なくとも0.5mmの厚さおよび適切な機械的性質を有すると考えられる。本発明による樹脂組成物が塗布される最後のセグメントは、例えば自動車部品、ボート、化学的定着、屋根ふき材、構造物、容器、裏装、パイプ、タンク、床張り材、風車のブレードである。
【0042】
本発明は特に、本発明による樹脂組成物を、好ましくは過酸化物を含む開始剤で硬化することによって得られる硬化物または構造部品に関する。一実施形態に従って、硬化は好ましくは、成形によって行われ、さらに好ましくは、硬化は圧縮成形によって行われ、特にSMCまたはBMC部品が得られる。成形は好ましくは、少なくとも130℃の温度、さらに好ましくは少なくとも140℃の温度で;最大で170℃、さらに好ましくは最大で160℃の温度で行われる。
【0043】
本発明は、一連の実施例および比較実験によって実証される。すべての実施例は、特許請求の範囲の支えとなる。しかしながら、本発明は、実施例で示される特定の実施形態に制限されない。
【0044】
[標準的な樹脂の合成]
充填カラム、温度測定器および不活性ガス入口を備えた反応器に、ジオール、二酸および/または無水物、任意に抑制剤および触媒を装入した。通常の方法で混合物をゆっくりと200℃に加熱した。水の蒸留が止まるまで、反応器中の混合物を200℃に維持した。充填カラムを除去し、酸価が50mgKOH/g(樹脂)未満の値に達するまで混合物を減圧下で維持した。次いで、真空を不活性ガスで開放し、混合物を130℃以下に冷却した。このようにして、固形UP樹脂が得られた。次に、固形樹脂を温度80℃未満の温度で反応性希釈剤に溶解した。
【0045】
[硬化のモニタリング]
標準ゲル化時間装置を用いて、硬化をモニターした。これは、示されるように過酸化物で樹脂を硬化する場合、ゲル化時間(TgelまたはT25−>35℃)とピーク時間(TpeakまたはT25−>peak)の両方が、DIN 16945の方法に従って発熱測定によって決定されたことを意味することが意図される。
【0046】
[機械的性質の決定]
機械的性質を決定するために、4mmの鋳型成型品を製造した。16時間後に、金型から鋳型成型品を取り出し、60℃で24時間に続いて80℃で24時間、後硬化した。
【0047】
ISO 527−2に従って、硬化物の機械的性質を決定した。ISO 75−Aに従って、加熱撓み温度(HDT)を測定した。
【0048】
粘度は、物理的装置を使用して23℃で決定された。Tgは、Mettler−Toledo DSC821を使用してDSC(加熱速度5°C/分)によって決定された。
【0049】
バーコル硬さはDIN EN59に従って決定された。
【0050】
[材料]
トウモロコシから得られたバイオベースのイタコン酸をQuingdao Langyatai社から商業的に入手した。
【0051】
トウモロコシから発酵プロセスにより得られたバイオベースの1,3−プロパンジオールをDuPont Tate & LyIe社から商業的に入手した。
【0052】
トウモロコシから得られたバイオベースのイソソルビドをロケット(Roquette)社から商業的に入手した。
【0053】
プロピレングリコールをBASF社から商業的に入手した。
【0054】
無水マレイン酸をDSM Fine Chemicals社から商業的に入手した。
【0055】
[実施例1および比較実験A〜C]
表1に示す成分を用いて、標準合成手順によって、いくつかの樹脂を製造した。コバルト溶液(NL−49P)0.5重量%に続いて、過酸化物としてトリゴノックス(Trigonox)44B 2重量%を使用して、樹脂を硬化させた。ゲル化時間装置を用いて、硬化をモニターした。
【0056】
【表1】



【0057】
比較実験と組み合わせられた実施例から、不飽和ポリエステル樹脂におけるイタコン酸とイソソルビドの両方の予想外の相乗効果がはっきりと実証されている。この組み合わせを用いることによって、工業基準と比較した場合に、樹脂の粘度に影響を及ぼすことなく、他の機械的性質を維持するか、または増加すると同時に、HDTで決定される熱安定性を向上させることができる。これは、イソソルビドのみを適用すると、粘度が劇的に高くなり、機械的性質がほぼ同じままであるのに対して、イタコン酸のみを使用することによって、粘度ならびに機械的性質の多くが低下するため、これは注目すべきことである。したがって、予想外の相乗効果は、好都合な特性の組み合わせをもたらす。
【0058】
[実施例2]
イタコン酸429.3g、1,2−プロピレングリコール117.4g、1,3−プロパンジオール117.4gおよびイソソルビド79.6gを使用して、標準合成手順によって樹脂を製造した。スチレン中で固形分65%に希釈した後、コバルト溶液(NL−49P)0.5重量%に続いて、過酸化物としてトリゴノックス44B 2重量%を使用して、樹脂を硬化させた。ゲル化時間装置を用いて、硬化をモニターした。得られた硬化特性は:ゲル化時間32分、ピーク時間40分、ピーク発熱153℃である。
【0059】
この実施例から、本発明に従って、イソソルビドおよびイタコン酸と組み合わせて、他のジオールも用いることができることがはっきりと示されている。
【0060】
[実施例3〜6]
表1に示す成分を用いて、標準合成手順によって、いくつかの樹脂を製造した。コバルト溶液(NL−49P)0.5重量%に続いて、過酸化物としてトリゴノックス44B 1.5重量%を使用して、樹脂を硬化させた。ゲル化時間装置を用いて、硬化をモニターした。
【0061】
【表2】



【0062】
これらの実施例から、様々な量のイソソルビドを本発明に従って使用することができることが分かる。さらに、これらの実施例は、他の不飽和二酸およびまたは無水物、例えば無水マレイン酸等と組み合わせてイタコン酸を使用することができることも実証している。
【0063】
[実施例7および8]
スチレンとイタコン酸ジメチルの混合物(比25/10)およびブタンジオールジメタクリレートそれぞれで、実施例5の合成手順に従って製造された樹脂を希釈した。銅溶液(NL−49P)0.5重量%およびトリゴノックス44B 2重量%を使用しての、硬化の結果は以下のとおりである:
スチレン/イタコン酸ジメチル混合物:ゲル化時間=20分、ピーク時間31分およびピーク温度132℃
ブタンジオールジメタクリレート:ゲル化時間=40分、ピーク時間60分およびピーク温度90℃。
【0064】
これらの実施例から、本発明による樹脂と組み合わせて、様々な反応性希釈剤を使用することができることが実証されている。さらに、メタクリレートでの希釈によって、スチレン不含樹脂組成物を本発明に従って製造することができることも示されている。
【0065】
[実施例9]
イタコン酸429.3g、1,3−プロパンジオール234.8gおよびイソソルビド79.6gを使用して、標準合成手順によって樹脂を製造した。スチレン中で固形分65%に希釈した後、コバルト溶液(NL−49P)0.5重量%に続いて、過酸化物としてトリゴノックス44B 2重量%を使用して、樹脂を硬化させた。ゲル化時間装置を用いて、硬化をモニターした。得られた硬化特性は:ゲル化時間292分、ピーク時間305分、ピーク発熱135℃である。
【0066】
この実施例から、本発明に従って、生物学的に再生可能な材料を完全にベースとすることができる不飽和ポリエステルも製造することができることがはっきりと示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも750ダルトン、最大で5000ダルトンの分子量Mを有する不飽和ポリエステル樹脂、および(b)反応性希釈剤、を含む樹脂組成物であって、前記不飽和ポリエステル樹脂が、C5〜C10不飽和二酸構成単位およびイソソルビド構成単位を含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記イソソルビドの少なくとも一部が、非化石資源から誘導されている、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
イタコン酸または無水物が、前記C5〜C10不飽和ジカルボン酸構成単位として使用される、請求項1または2に記載の樹脂。
【請求項4】
前記イタコン酸または無水物の少なくとも一部が、非化石資源から誘導されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
イソソルビドのモル量が少なくとも2.5%かつ最大で50%(ジオールの総量に対して)である、請求項1から4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記不飽和ポリエステルの前記不飽和ジカルボン酸構成単位の少なくとも25重量%が、イタコン酸構成単位である、請求項1から5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記不飽和ポリエステルのTgが、少なくとも−70℃かつ最大で100℃である、請求項1から6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記不飽和ポリエステル樹脂におけるヒドロキシル末端基とカルボン酸末端基のモル比が、0.33〜3の範囲である、請求項1から7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記不飽和ポリエステル樹脂におけるヒドロキシル末端基とカルボン酸末端基のモル比が、1.1〜3の範囲である、請求項1から7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
反応性希釈剤として、スチレン、イタコン酸ジメチルおよび/またはメタクリレートを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記樹脂組成物を硬化するための開始剤をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1から8のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなる成分と、前記樹脂組成物を硬化するための開始剤を含む成分と、を含む多成分樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の樹脂組成物を開始剤を用いて硬化することによって得られる、硬化物または構造部品。
【請求項14】
自動車部品、ボート、化学的定着、屋根ふき材、構造物、容器、裏装、パイプ、タンク、床張り材、または風車のブレードにおける、請求項13に記載の硬化物または構造部品の使用。
【請求項15】
請求項1から9のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、粉体塗料組成物。

【公表番号】特表2012−521468(P2012−521468A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501299(P2012−501299)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053849
【国際公開番号】WO2010/108964
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】