説明

両親媒性粒子の特性を改良する方法

本発明は、改善された相挙動、粒径分布及び/又は貯蔵安定性を示す非ラメラ両親媒性粒子を含む分散を形成する方法であって、ラメラ粒子の分散及び任意で非ラメラ粒子の分散であって少なくとも1つの構造化剤を含む分散を形成すること、前記粒子を高温に加熱すること、続いて冷却することを含み、前記加熱が、冷却後に測定可能な相挙動、粒径分布及び/又は貯蔵安定性の改善をもたらすのに十分な時間と温度への加熱である方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性物質の送達(デリバリー)に適した粒子の生産方法に関する。さらに具体的には、本発明は、非ラメラ両親媒性物質系粒子の生産方法、及び、その粒径分布の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
両親媒性物質系製剤は、多くの物質の送達、とりわけヒト又は動物体内へのインビボ送達において相当の潜在能力を示す。両親媒性物質は、一団となって極性領域及び非極性領域を形成する極性基及び非極性基の両方を有するため、極性及び非極性化合物の両方を効率的に可溶化できる。さらに、極性及び/又は非極性溶媒中で両親媒性物質/構造化剤により形成される構造の多くは、非常に多量の極性/非極性境界領域を有し、この領域に、その他の両親媒性化合物が吸収され安定化されうる。
【0003】
両親媒性物質/水、両親媒性物質/油、及び、両親媒性物質/油/水の相図における非ラメラ領域の形成は、よく知られた現象である。そのような相には、例えば、キュービックP、キュービックD、キュービックG及びヘキサゴナル相などの分子レベルでは流動体だが著しい長距離秩序を示す液晶相が含まれ、さらに、液晶相の長距離秩序を欠く多重に相互接続した三次元の二分子層バイコンティニュアス(両連続)ネットワークを含むL3“スポンジ”相を含む。その曲率に応じて、これらの相は、正(平均曲率が非極性領域を指向する)又は逆(平均曲率が極性領域を指向する)とされる。脂質系の自然曲率がゼロに近い場合、その構造は、一般にラメラであり、例えば、単一又はマルチラメラベシクル/リポソームなどである。自然曲率が負又は正であるほど、キュービック、ヘキサゴナル及びミセル相が一般に大半を占める。
【0004】
非ラメラ液晶及びL3相は、熱力学的に安定な系である。換言すると、これらは、単に、層やラメラ相などに分離及び/又はリフォームする準安定状態ではなく、混合物の熱力学的に安定な形態である。
【0005】
ラメラ及び非ラメラ系のどちらも、規定食、化粧品、栄養物、診断剤及び医薬品の担体及び/又は賦形剤としての特性について研究されてきた。しかし、非ラメラ系は、極性と非極性領域間の高度な内部表面積という点において、相当な利点を有すると考えられる。よって、非ラメラ相は、特に製剤の制御放出や比較的低溶解度の化合物の可溶化について、かなり研究されている。
【0006】
上述のとおり、バルクな非ラメラ相は、一般に、熱力学的に安定な系である。加えて、このバルクな相は、極性又は非極性溶媒中で分散し、バルクな溶媒中で非ラメラ相(特に、液晶相)の粒子を形成することができる。これにより、バルクな非ミシブル(非混和性)相の使用が問題となる場合、例えば、非経口投与などの場合であっても、バルクな非ラメラ相の利点が適用可能となる。このような非ラメラ粒子の分散により、化合物の輸送特性及び放出特性の更なる制御が達成できる。
【0007】
液晶又はL3相は、過剰溶媒中で熱力学的に平衡状態又は平衡近傍状態となることができ、分散してコロイド状の安定した非ラメラ粒子の分散となることができる。そのような粒子は、完全に(つまり、熱力学的に)安定であるか又は次第に分解し、これにより、この粒子とともに配合される活性因子の放出特性の制御がもたらされる。分散は、自然発生で形成され、又は、せん断若しくは超音波などの機械力の結果として形成されうる。これらの非ラメラ粒子は、活性因子の送達において相当に重要であり、多くのそのような活性因子のための担体として提案されている。
【0008】
水などの溶媒における非ラメラ相の分散粒子の形成方法は、US 5,531,925(特許文献1)に開示される。そのような粒子は、非ラメラ液晶又はL3内部相及びラメラ又はL3表面相を有し、さらに、活性成分を含有しうる。
【0009】
公知の液晶又はL3内部相の粒子は、この相に表面相形成剤を添加し、撹拌して粗い分散を形成し、得られた混合物をフラグメンテーションするというような方法により形成できる。
【0010】
液晶相の存在を査定するため、予想液晶物質を、低角X線回折法(SAX)、低温透過型電子顕微鏡法(cryo−TEM)、又は、核磁気共鳴(NMR)分光分析法観察により検査することができる。分散粒子の粒径及び粒径分布は、光散乱により検査でき、とりわけ、レーザー光散乱計器を用いて検査できる。
【特許文献1】米国特許第5,531,925号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
活性成分を含有する分散は、とりわけ、ヒト又は動物の体内へ静脈内投与する場合には、コロイド状であることが望ましい。つまり、その粒径が、10μmを超えないこと、特に、5μm、とりわけ、1μmを超えないことが望ましい。分散中の粒子がこのサイズを超えると、この分散はコロイドで安定ではなく、分散から沈殿したり浮遊したりする場合がある。また、その製剤が静脈内投与された場合には、塞栓症を引き起こすという考慮すべきリスクがある。さらに、任意の活性因子の放出制御を最大とするため、粒径分布は狭幅(narrow;狭分布)であることが望ましい。粒子組成物が静脈内投与以外の方法により投与される場合(例えば、筋肉内、皮下、直腸投与、又は、吸入による投与の場合)、その粒子は必ずしもコロイドである必要はないが、粒子のインビボの輸送及び分解速度、及び/又は、活性因子の放出の制御のためには、よく特徴付けされた再現性のある粒径分布を提供することは、依然として利点がある。
【0012】
粒子組成物の粒径は、また、相当の長期間の保存に安定であるべきである。粒径分布が著しく変化する場合、(例えば、任意の活性因子の分散及び放出速度に起因して)組成物の効率的な輸送速度が悪影響を受けうる。静脈内投与のコロイド分散における粒径の安定性は、一層大きな懸案事項である。そのような分散の粒径分布が(例えば、貯蔵や分布に対して)安定ではない場合、大きい粒子が時間とともに形成され、投与時に危険なことがある。たとえ直接的に危険でなくても、貯蔵の不安定性は、薬物動態学、ダイナミクス及び/又は有効性において著しいばらつきを引き起こしうる。
【0013】
粒径の制御に加えて、所望の非ラメラ相の粒子の割合を最大とすることが望ましい。装填容量、保護カプセル化、制御放出、再現性などの点についての非ラメラ相の有益な効果を最大とするためである。それゆえ、単一又はマルチラメラベシクルのようなラメラ粒子の割合は、最小とすべきである。
【0014】
非ラメラ相の所望の粒子を形成するための公知の方法は高効率である。しかし、概して、比較的広範な粒径分布と、相当な割合の“混入物質”であるラメラベシクル粒子を産生する。製剤におけるフラグメンテーション剤及び/又は安定化剤(例えば、界面活性剤、コポリマー及び/又はタンパク質)の割合の増加、又は、ホモジナイズ(均一化)処理のエネルギー導入量の増加は、粒径分布を狭幅化するために使用することができるが、ラメラ粒子の割合の増加という犠牲を払う。それゆえ、好ましくはコロイドの、狭い粒径分布を有し、高い割合の非ラメラ粒子を含む非ラメラ粒子分散を形成しうる方法が、相当に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、適当な組成のラメラ及び/非ラメラ粒子を室温に冷却する前に短時間高温に熱することにより、粒径分布を狭くすることができ、粒径分布の安定性を改善でき、及び/又は、非ラメラ粒子の割合を増加できることを、予想外に証明した。
【0016】
本発明は、その第1の態様として、改善された相挙動、粒径分布及び/又は貯蔵安定性を示す非ラメラ両親媒性粒子を含む分散を形成する方法であって、少なくとも1つの構造化剤を含むラメラ粒子の分散及び任意で非ラメラ粒子の分散を形成すること、前記粒子を高温に加熱すること、続いて冷却することを含み、前記加熱が、冷却後に測定可能な相挙動、粒径分布及び/又は貯蔵安定性の改善をもたらすのに十分な時間と温度への加熱である方法を提供する。本発明のこの方法及びこれに類似する方法において、前記熱処理は、極性溶媒中の分散形態の両親媒性粒子を用いて行われることがより好都合である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
粒子特性におけるこの改善の1つの特徴は、相特性における“改善”であって、ここでは、より高い割合の非ラメラ相粒子の提供を示す。
【0018】
よって、本発明は、1つの態様として、(好ましくはコロイドの)非ラメラ粒子を生産する方法であって、ラメラ粒子の分散及び任意で非ラメラ粒子の分散であって少なくとも1つの構造化剤を含む分散を形成すること、前記粒子を高温に加熱すること、続いて冷却、好ましくは室温まで冷却することを含み、前記加熱が、冷却後に少なくとも50%の前記ラメラ粒子の非ラメラ形態への変換をもたらす方法を提供する。この加熱冷却方法は、1回、又は、2、3、4、若しくはそれ以上の加熱と冷却の連続サイクルとして行うことができる。
【0019】
本発明は、さらなる態様として、少なくとも1つの構造化剤を含むラメラ粒子及び/又は非ラメラ粒子試料の粒径分布(例えば、光散乱により示される粒径分布)を狭幅化(narrowing)する方法であって、前記粒子を高温に加熱すること、続いて冷却、好ましくは室温まで冷却することを含み、前記加熱が、冷却後に前記粒径分布の狭幅化をもたらすのに十分な時間と温度への加熱である方法を提供する。この加熱冷却方法は、1回、又は、2、3、4、若しくはそれ以上の加熱と冷却の連続サイクルとして行うことができる。
【0020】
ラメラ粒子及び非ラメラ粒子は自己組織化系であるから、分散の粒子は、衝突して融合し、それにより、前記分散が貯蔵される場合にその粒径分布が広幅化(broadening)する。オストワルト熟成もまた、貯蔵中の分布の広幅化に寄与しうる。注目すべきことに、前記熱サイクル方法が、ラメラ粒子及び/又は非ラメラ粒子の分散における粒径分布を長期にわたりより安定にならしめることが確立された。
【0021】
よって、本発明は、さらなる態様として、少なくとも1つの構造化剤を含むラメラ粒子及び/又は非ラメラ粒子試料の粒径分布(例えば、光散乱により示される粒径分布)を安定化する方法であって、前記粒子を高温に加熱すること、続いて冷却、好ましくは室温まで冷却することを含み、前記加熱が、冷却後に前記粒径分布の安定化をもたらすのに十分な時間と温度への加熱である方法を提供する。この加熱冷却方法は、1回、又は、2、3、4、若しくはそれ以上の加熱と冷却の連続サイクルとして行うことができる。
【0022】
驚くべきことに、本発明の熱サイクル方法は、一般的に適用でき、多くの分散脂質製剤、特に、室温における組成物の熱力学的状態が非ラメラである場合の分散脂質製剤の相、粒径分布、及び/又は、安定性の制御に適している。
【0023】
本発明は、さらなる態様として、少なくとも1つの構造化剤を含む非ラメラ粒子であって、少なくとも1つの構造化剤を含むラメラ粒子及び任意で非ラメラ粒子を形成すること、非ラメラ粒子への変換が起きる温度及び少なくとも50%の前記ラメラ粒子の非ラメラ形態への変換をもたらすのに十分な時間で前記粒子を加熱すること、続いて冷却、好ましくは室温まで冷却することにより形成された、又は、形成可能な非ラメラ粒子を提供する。例えば、非静脈内使用に適した製剤の場合、前記粒子は、非コロイド粒子(例えば、10〜200μm)であってもよいが、コロイド粒子であることが好ましい。
【0024】
本発明のさらなる実施態様において、本発明者らは、さらに、本発明で用いる少なくとも1つの構造化剤を含む製剤の粒径分布が、制御されたイオン強度の水媒体において本発明の熱処理を行うことにより制御できることを確立した。具体的には、小粒子(例えば、コロイド粒子、とりわけ、小コロイド粒子(<0.3μm))は、低イオン強度、例えば、水中のNaClが約0.1mM若しくはそれ未満のような低イオン強度において、とても容易に形成することができる。非ラメラ粒子(すなわち、ここで記載するような非ラメラコアを有する粒子)の割合は、ここで記載する熱サイクル方法を用いて増加される。粒径分布は、制御されたイオン強度の媒体(一般的には水溶液)中での前記熱処理により制御できる。平均粒径は、概して、高イオン強度の媒体の使用により増加する。典型的には、使用する組成物に依存して0.1mMから100mMの範囲のNaClのイオン強度(又は、同等のイオン強度)で前記熱処理工程を行うことにより、安定な非ラメラ粒子の分散を形成することができる。粒径分布は、組成物に依存し、適した条件は、ここで記載する方法を参照することにより迅速に確立されうる。しかしながら、概して、低イオン強度ではサブミクロンの粒子が形成され、より増加したイオン強度において、より大きなコロイド非ラメラ粒子が形成される。
【0025】
比較的高塩濃度(例えば、注入用の0.9%NaCl)の溶液中で小粒子が必要な場合、前記粒子は、低イオン強度で本発明の熱処理をし、冷却後、さらに塩を加えて所望の浸透圧を与えることにより形成することができる。
【0026】
さらに、組成物の両親媒性構成成分にある割合の荷電両親媒性物質が含まれる場合、約0.1mM〜約20mMのNaCl、又は、等価濃度のその他の塩のイオン強度で熱処理工程を行うことが望ましい。最も望ましい範囲は、組成物の特定の構成成分に依存し、一般的には、0.1〜15mMであって、好ましくは、0.2〜10mMである。このようにすることで、粒径を所望の粒径範囲に維持するとともに、非ラメラ形態へ変換される粒子の割合が増加する。
【0027】
本発明のさらなる実施態様において、本発明者らは、さらに、本発明で用いる少なくとも1つの構造化剤を含む製剤の粒径分布が、制御された両親媒性物質濃度の水媒体において本発明の方法を行うことにより制御できることを確立した。具体的には、小粒子(例えば、コロイド粒子、とりわけ、小コロイド粒子(<0.3μm))は、低両親媒性物質濃度、例えば、水溶液中の総両親媒性物質が約10wt%若しくはそれ未満のような低両親媒性物質濃度において、とても容易に形成することができる。非ラメラ粒子(すなわち、ここで記載するような非ラメラコアを有する粒子)の割合は、ここで記載する熱サイクル方法を用いて増加され、及び/又は、粒径分布は、同様に記載のように、狭幅化されうる。
【0028】
粒径分布は、既知の制御された濃度(一般には水溶液中)で処理することにより制御できる。平均粒径は、一般に、より高い総両親媒性濃度を使用することにより増加する。典型的には、安定な非ラメラ粒子分散は、(例えば、実施例のいずれかに記載のように)水溶液中の両親媒性物質濃度が0.5〜20wt%、好ましくは、1〜15wt%で本発明の方法を行うことにより形成することができる。粒径分布は、組成物に依存し、適した条件は、ここで記載する方法を参照することにより迅速に確立されうる。概して、高希釈ではサブミクロンの粒子が形成され、より増加した両親媒性物質濃度において、より大きなコロイド非ラメラ粒子が形成される。希釈の効果は、(ここに記載するような)両親媒性物質系の平均粒径、粒径分布及び/又は相挙動を制御するために、ここで考慮するその他の因子(特に、加熱‐冷却サイクルのサイクル数、サイクル時間、イオン強度など)の任意の因子と組み合わせて使用できる。下記実施例を参照して、当業者は所望の両親媒性混合物に適した条件を不自由なく確立できる。
【0029】
(例えば、注射する総容積を最小にするために)比較的高濃度の両親媒性物質で小粒子が必要な場合、粒子は、高希釈で本発明の方法を行い、冷却後、蒸発、限外ろ過などにより濃縮して形成することができる。反対に、(例えば、対象への注入のため)より大きな粒子が高希釈で必要な場合、これらは、高濃度でここに記載される製法を行い、一旦冷却し、さらに希釈することにより形成できる。
【0030】
ここで使用される場合、“非ラメラ”の用語は、正(normal)若しくは逆の液晶相(例えば、キュービック相若しくはヘキサゴナル相)又はL3相、又は、これらの任意の組み合わせを示し、リポソームのラメラ相に見られるようなラメラ構造と対立するものとして使用される。粒子が非ラメラ相又は非ラメラ形態を有するものとして記載される場合、これは、少なくとも粒子の内部領域がこの形態であることを示す。粒子は、一般的に、2つの異なる領域、内部領域及び周囲の表面領域を有する。前記表面領域は、たとえ“非ラメラ”粒子であっても、しばしば、ラメラ又は結晶性である。前記表面領域は、高度に秩序だった結晶又は液晶相から実質的に無秩序な流体層の範囲の任意の相であってよい。対照的に、“ラメラ”粒子は、ここで記載する場合、非ラメラよりはむしろ溶媒のコア領域を有する粒子である。
【0031】
“ラメラ粒子”の用語は、ここでは、内部の溶媒コンパートメントを取り囲む1つ以上の両親媒性物質のラメラ二分子層の外層を含むことを特徴とするベシクル粒子を示すために使用される。
【0032】
本発明の効果をもたらすために粒子を加熱すべき温度は、当業者により容易に確立できる。例えば、ラメラ粒子の試料を、特定の温度で4時間加熱し、続いて室温まで冷却する。熱処理の前後で試料のSAX散乱パターンを比較し、その結果を、例えば、逆キュービック又はヘキサゴナル相に対応するピークの存在について比較する。同様に、任意の特定温度における変換に必要な時間の長さは、設定時間試料を加熱し、任意の変化をSAX散乱で調べることにより査定することができる。同等の加熱実験は、また、光散乱や低温透過電子顕微鏡法などの分析ツールを使用して、粒径分布及び貯蔵安定性に対する効果を測定できる。
【0033】
一般的に、試料を、75℃〜200℃、好ましくは85℃〜150℃、より好ましくは96℃〜140℃の範囲の温度まで加熱する。最も好ましい温度範囲は、100℃〜130℃である。熱は、任意の適当な方法、例えば、オートクレーブ、オーブンでのベーキング、電磁波照射(例えば、赤外線又はマイクロ派照射)、及び/又は、当該技術分野で公知の代替手段により供給することができる。
【0034】
驚くべきことに、本発明の温度サイクル方法は、高温での組成物の平衡形態が非ラメラであることを必要とすることなく機能することが確立された。例えば、キュービック相は、室温から90℃までの温度での組成物の平衡状態であり、100℃が高温である。この高温では、組成物の平衡状態は非ラメラではない。例えば、高温での組成物の平衡状態は、ラメラ、ミセル(例えば、L1やL2)又は等方性であり、特にL2である。
【0035】
あるいは、高温での組成物の平衡形態は、冷却により産生されるものとは異なる非ラメラ相であってもよい。したがって、組成物を、例えば、ヘキサゴナル液晶相が平衡形態である高温まで加熱し、その後、粒子がリフォームしてバイコンティニュアスキュービック相の粒子となる温度まで冷却することができる。
【0036】
よって、本発明は、また、(好ましくはコロイドの)非ラメラ粒子を生産する方法であって、少なくとも1つの構造化剤を含むラメラ粒子及び任意で非ラメラ粒子を形成すること、前記粒子の平衡形態が非ラメラでない温度(例えば、液晶でなく、好ましくは、ラメラ、ミセル(例えば、L1やL2)又は等方性である温度)の高温まで加熱すること、続いて冷却、好ましくは室温まで冷却することを含み、前記加熱が、冷却後に(粒子数で)少なくとも50%の前記ラメラ粒子の非ラメラ(とりわけ液晶)形態への変換をもたらす方法を提供する。この加熱冷却方法は、1回、又は、2、3、4、若しくはそれ以上の加熱と冷却の連続サイクルとして行うことができる。
【0037】
一般的に、高温の加熱時間は比較的短く、概して、1分から4時間の間であり、より一般的には、2分から1時間の間である。2分から30分の時間が好ましく、特に、5分から20分の間である。前記時間は、任意で、温度平衡の時間、一般的には、1〜10分を含んでもよい。
【0038】
本発明の製剤の構成成分は、少なくとも1つの構造化剤(典型的には、両親媒性物質)を含み、概して、さらに、フラグメンテーション剤(これもまた、例えば、界面活性剤、コポリマー及び/又はタンパク質のような両親媒性物質である)を含む。さらに、本発明の製剤は、非ラメラ相がもはや形成されないような方法でその組成物の相挙動を崩壊させることがなく効果的であるのに十分な濃度で、タンパク質、薬剤、栄養物、化粧品、診断剤、調合薬、ビタミン、又は、ダイエット剤を含んでもよい。これらは、ここで、“活性因子”と呼ぶ。ある状況下では、前記構造化剤又はフラグメンテーション剤もまた活性因子となりうる。室温での本発明の製剤の構成成分混合物の熱力学的平衡状態は、任意で(水などの)溶媒存在下で、非ラメラ相、例えば、正又は逆のキュービック若しくはヘキサゴナル相、又は、L3相であることが好ましい。
【0039】
活性因子が本発明の組成物又は本発明の方法に使用する組成物に配合される場合、前記活性因子は、高い頻度で前記構造化剤の相挙動に影響を与える。例えば、一定の活性因子(例えば、シクロスポリンA)は、いくつかの構造化剤よりも大きな負曲率をもたらし、高濃度の場合には、キュービック又はヘキサゴナル液晶相よりはむしろ、例えば、逆ミセルL2相のような高度に負に曲がった相を引き起こす。それにもかかわらず、そのような活性因子は、例えば、構造化剤又はそれらのブレンドとともに配合されることにより、より負の度合いが少ない自然曲率を有する逆ヘキサゴナル相に配合することができる。このような方法により、全体の混合物が、適当な負曲率をもたらし、本発明の方法における使用又は本発明の組成物を可能とする。
【0040】
当業者は、任意の特定構造化剤(若しくはその混合物)の自然曲率度、又は、活性因子を含むことによる効果を査定するために標準的方法を使用できる。これは、例えば、各構造化剤の水中におけるバルクの相挙動の調査、及び、それに続くさまざまな濃度の活性因子を含ませた調査によって行うことができる。相は、ここに示す任意の方法(例えば、偏光、SAXS、cryo−TEMなど)及び各ケースで選択された適当なブレンドの構造化剤により調べることができる。ある状況下では、活性因子による混合物の相挙動への影響が著しい場合、選択された構造化剤は(自然曲率が小さすぎるか大きすぎて)それ自体では所望の非ラメラ相をもたらさず、活性因子と配合された場合のみ前記相を生ずる。同様に、平衡相は、活性因子の添加により、例えば、キュービックからヘキサゴナル液晶相へ変化しうる。
【0041】
ここで参照する極性溶媒は、一般的には、水性溶媒であって、例えば、純水、生理食塩水、バッファー、塩、糖及び/又は水溶性ポリマーの水溶液、並びに同種のものなどである。そのような溶媒は、また、ある割合の水溶性有機溶媒、例えば、アルコール(例えば、エタノール又はイソプロピルアルコール)、エステル(例えば、エチルアセテート)及び同種のものなどを含んでもよい。
【0042】
構造化剤の用語は、本発明の方法及び組成物で使用される場合、必要に応じて両親媒性物質及び/又はフラグメンテーション剤などのその他の試薬の存在下で、非ラメラ相を形成できる任意の試薬である。構造化剤は、概して、少なくとも1つの極性親水基、及び少なくとも1つの非極性疎水基を有する。広範囲の構造化剤が、構造化剤の構成成分の全て又は一部としての使用に適用できる。
【0043】
極性基の例は公知であって(例えば、米国出願公開番号20020153509参照)、カルボン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩及びスルホン酸塩などのような陰性基、アルコール、ポリオール(例えば、糖、グリセロールなど)及びエステルなどのような非イオン基、第4アンモニウム化合物、ピリジニウム塩及び第4級塩などのような陽性基、並びに、リン脂質頭部基(例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、ホスホコリン、ホスホエタノールアミン、ホスホグリセロール、ホスホセリン、それらのPEG化(PEGylated)又はmPEG化(mPEGylated)誘導体など)、アンモニオアセテート、アンモニオアルカンスルホン酸塩及びトリアルキルアミノアルキルリン酸塩などのような両性イオン基を含む。
【0044】
非極性基の例は、C6−C32アルキル及びアルケニル基を含み、これらは、一般に、長鎖カルボン酸のエステルとして存在する。これらは、しばしば、炭素原子数及び炭素鎖中の不飽和数を参照することにより記載される。すなわち、CX:Yは、X個の炭素原子とY個の不飽和数を有する炭化水素鎖を示す。非極性基の例としては、とりわけ、カプロイル基(C6:0)、カプリルオイル基(C8:0)、カプリル基(C10:0)、ラウロイル基(C12:0)、ミリストリル基(C14:0)、パルミトイル基(C16:0)、フィタノイル基(C16:0)、パルミトレオイル基(C16:1)、ステアロイル基(C18:0)、オレオイル基(C18:1)、エライドイル基(C18:1)、リノレオイル基(C18:2)、リノレノイル基(C18:3)、アラキドノイル基(C20:4)、ベヘノイル基(C22:0)及びリグノセロイル基(C24:9)を含む。両親媒性物質は、典型的には、1つ又は2つの非極性“尾部”基(それぞれ、モノアシル及びジアシル脂質)を有するが、3つ、4つ又はそれ以上の疎水基を有してもよい。
【0045】
本発明における使用に適した構造化剤の例は、天然脂質、合成脂質、界面活性剤、コポリマー、ペプチド、タンパク質、ヒドロトロープ、アルコール、及び、非ラメラ構造を形成する又は形成を促進するその他の添加剤を含む。好ましい剤は、グリセリド(例えば、モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリド)、グリセリドのジ−及びポリグリセロールエステル(例えば、ジグリセロールモノオレエート、ジグレセロールモノカプレート)、天然油脂(例えば、大豆油、ココナッツ油、コーン油、ヒマシ油、ヒマワリ油)、分留油(例えば、分留ココナッツ油、Miglyol(商標、Condea社製))、エステル転移化油(例えば、Maizine(商標))、油及びPEGのエステル転移化産物(例えば、エトキシル化ヒマシ油(例えば、Cremophor(商標)EL(BASF社製))、エトキシル化水素化ヒマシ油(例えば、Cremophor(商標)RH−40(BASF社製))、エトキシル化コーン油(例えば、Labrafil(商標)M2125CS(Gattefosse社製))、アセチル化モノグリセリド、脂肪酸(例えば、C6−C26飽和及び不飽和脂肪酸)、脂肪アルコール(例えば、フィタントリオール(3,7,11,15-テトラメチル‐1,2,3-ヘキサデカントリオール))、エーテル脂質(例えば、モノオレイルグリセリルエーテル)、天然及び合成リン脂質(例えば、卵レクチン、大豆レクチン、水素化レクチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸)、リゾリン脂質(例えば、リゾレクチン、リゾホスファチジルコリン、リゾオレイルホスファチジルコリン)、ホスホリン脂質類似化合物(US6344576に記載のもの)、ステロール及びステロール誘導体(例えば、コレステロール、シトステロール、レーンステロール及びそれらのエステル、特にPEG又は脂肪酸とのエステル)、ガラクトリピド(例えば、ジガラクトシルジアシルグリセロール、モノガラクトシルジアシルグリセロール)、スフィンゴ脂質(例えば、スフィンゴミエリン);非イオン性界面活性剤、とりわけ、PEG脂肪酸モノ及びジエステルなどのエトキシル化界面活性剤(例えば、Crodet(商標、Croda社製)、Cithrol(商標、Croda社製)、Nikkol(商標、Nikko社製)、Myrj(商標)シリーズ(ICI社製)、Solutol(商標)HS15(BASF社製))、PEGグリセロール脂肪酸エステル(例えば、Tagat(商標)L及びO(Goldschmidt社製)、Glycerox(商標)Lシリーズ(Croda社製)、Capmul(商標)EMG(Abitec社製))、油及びPEGのエステル転移化産物(例えば、Labrafil(商標、Gattefosse社製)、Cremophor(商標、BASF社製)、Crovol(商標、Croda社製)及びNikkol(商標)HCOシリーズ(Nikko社製)のもの)、PEGソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Tween(商標)20、Tween(商標)80及びその他のTween(商標)シリーズのポリソルベート(ICI社製))、PEGアルキルエステル(例えば、Brij(商標、ICI社製)及びVolpo(商標)シリーズ(Croda社製)のもの)、PEGアルキルフェノール界面活性剤(例えば、TritonX及びNシリーズ(Rohm&Haas社製);ポリグリセル化脂肪酸(例えば、Nikkol(商標)Decaglyn(Nikko社製)、Plurol(商標)Oleique(Gattefosse社製)のもの)、プロピレングリコール脂肪酸エステル(例えば、Caproyol(商標)90(Gattefosse社製)、Lutrol(商標)OP2000(BASF社製)、Captex(商標)(Abitec社製))、グリセロール/プロピレングリコール脂肪酸エステル(例えば、Arlacel(商標)186(ICI社製))、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Span(商標、ICI社製)及びCrill(商標)シリーズ(Croda社製)のもの)、糖エステル(例えば、SUCROESTER(商標、Gattefosse社製)、Ryoto(商標、三菱化学社製)及びCrodesta(商標)シリーズ(Croda社製))、ポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(いわゆるポロキサマー(poloxamer)、例えば、Pluronic(商標、BASF社製)、Synperonic(商標、ICI社製)及びLutrol(商標)シリーズ(BASF社製))、エチレンオキシド及びブチレンオキシドのコポリマー;脂肪酸塩、胆汁塩(例えば、コール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム)、エステルカルボン酸塩などのようなカルボン酸塩、スクシニル化モノクリセリド、モノ及びジグリセリドのモノ/ジアセチル化酒石酸エステル、モノ及びジグリセリドのクエン酸エステル、脂肪酸のグリセリル‐ラクトエステル、アシルラクチレート、アルギン酸塩、プロピレングリコールアルギン酸塩を含む陰イオン界面活性剤;エトキシル化アミン(例えば、ポリオキシエチレン‐15ココナッツアミン)、ベタイン(例えば、N‐ラウリル‐N,N‐ジメチルグリシン)、アルキルピリジニウム塩、ヘキサデシルトリアンモニウムブロマイドなどのような第4アンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウムブロマイドなどを含む陽イオン性界面活性剤;トリメチルアンモニオエチルアルキルホスホン酸塩(例えば、US6344576に記載される実施例)を含む両性イオン性界面活性剤;これらの全ての混合物である。最も好ましい構造化剤は、グリセロールモノオレエート(GMO)、グリセロールモノリノレエート、ジグリセロールモノオレエート(DGMO)、ジグリセロールモノリノレエート、グリセロールジオレエート、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)及びフィタントリオール、並びに、50%までの脂肪酸、とりわけ、オレイン酸及びリノール酸を含むこれらの混合物、ポリソルベート80(Tween(商標)80)、ポリエチレングリコール660 12−ヒドロキシステレート(Solutol(商標)HS15)、又は、リゾリン脂質、特に、リゾオレイルホスファチジルコリン(LOPC)である。
【0046】
しばしば、構造形成剤の構成成分は、抽出され精製された天然産物の形態で構成成分を含み、関連する化合物の混合物を含む。大豆ホスファチジルコリンは、例えば、約60〜75%のC18:2アシル基、約12〜16%のC16:0及び残りのその他のものを有する化合物の混合物である。同様に、市販のグリセロールモノオレエートは、一般には、少なくとも90%のモノグリセリドであるが、少量のジグリセリド及び遊離脂肪酸であって、60〜90%以上のC18:1アシル基、5〜10%の飽和アシル基及び残りの大部分がさらに高度の不飽和アシル基であるものを含む。異なる市販製剤は、また、下記実施例に示すとおり、わずかに異なる。
【0047】
本発明における使用で高度に好ましい構造化剤は、市販のグリセロールモノオレエート(GMO)である。上述のとおり、これは、大半がオレオイル(C18:1)アシル鎖を有するモノグリセリドであるが、一定量の他の化合物を含む。これらは、ここで使用する“グリセロールモノオレエート”又は“GMO”の用語に含まれる。市販製剤のGMOには、GMOrphic−80及びMyverol18−99(Eastman Kodak社製)、RyloMG19及びDimondan蒸留GMO(Danisco社製)を含む。任意の構造化剤が、単独又は1つ以上のその他の構造化剤との組み合わせで使用できる。
【0048】
両親媒性構造化剤の構成成分に加え、本発明の組成物は、とりわけ、少なくとも1つの脂肪酸又は脂肪酸塩の構成成分を含んでもよい。好ましい脂肪酸は、炭素原子6〜24を有するものであって、とりわけ、天然脂質の脂肪酸に対応するものであり、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、フィタン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、若しくは、リグノセリン酸、これらの塩又は混合物を含む。前記脂肪酸は、飽和でもよいが、不飽和が好ましい。最も好ましい脂肪酸は、オレイン酸である。脂肪酸の塩は、一般的に、生理学的に許容でき、薬学的適用についても同様である。好ましい塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、又は、マグネシウム塩などのアルカリ及びアルカリ土類金属塩、及び、アンモニウム及びアルキルアンモニウム塩を含む。一般的には、前記脂肪酸又は脂肪酸塩は、総両親媒性物質構成成分の0〜10wt%存在し、好ましくは、重量で3〜7%である。
【0049】
本発明の方法で使用するフラグメンテーション剤は、非ラメラ相の粒子への分散を助ける又はそのような粒子を安定化させる少なくとも1つの試薬である。一般的には、フラグメンテーション剤は、例えば、両親媒性ブロックコポリマーなどの界面活性剤である。多くの界面活性剤及びコポリマーが、本発明において使用するフラグメンテーション剤の全て又は一部としての使用に適する。
【0050】
重要なフラグメンテーション剤は、天然脂質、合成脂質、界面活性剤、コポリマー、タンパク質(特に、カゼイン及びアルブミン)、ヒドロトロープ、アルコール、及び、それ自体でフラグメンテーションを促進し又は外部から加えられる力又は圧力によりフラグメンテーションを促進して安定化に寄与するその他の添加剤を含む。これは、また、ナノ粒子、及びポリマーとナノ粒子との組み合わせを含む(WO99/12640参照)。
【0051】
フラグメンテーション剤として使用する好ましいコポリマーは、ポリオキシアルキレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアミド及び/又はポリアルケンを含むブロックを有する。前記ブロックコポリマーは、少なくとも2つの異なる親水性度のポリマーブロックを含む。ある種のタンパク質(例えば、カゼイン)は、また、両親媒性の特徴を有し、フラグメンテーション剤として使用できる。活性化因子が両親媒性タンパク質の場合、これは、活性化因子及びフラグメンテーション剤の両方として作用することができ、又は、その他の活性因子及び/又はフラグメンテーション剤に加えて含ませることができる。
【0052】
両親媒性ブロックコポリマーの好ましい例としては、少なくも1つのポリオキシエチレンのブロック及び少なくとも1つのポリオキシプロピレンを含むポロキサマーである。最も好ましいフラグメンテーション剤は、ポロキサマー407(例えば、Pluronic(商標)F127(BASF社製))、ポロキサマー188(例えば、Pluronic(商標)F68(BASF社製))、ポロキサマー124(例えば、Pluronic(商標)L44(BASF社製))、及び、ポリソルベート20、60及び/又は80(ここでは、それぞれ、P20、P60及びP80という。例えば、Tween(商標)80(ICI社製))である。その他の適した界面活性化及びコポリマーは、“Handbook of Pharmaceutical Excipients” (2nd Ed., the American Pharmaceutical Association and The Pharmaceutical Press, Royal Pharmaceutical Society of Great Britain)に見出すことができる。
【0053】
その他の好ましいフラグメンテーション剤は、ポリエチレングリコール脂質複合体(PEG化又はmPEG化リン脂質)、並びに、長鎖アルコール及び脂肪酸を含む。
【0054】
本発明の好ましい実施態様としては、本発明の方法により使用され、形成され、及び/又は、形成可能な組成物は、三成分の両親媒性組成を有し、少なくとも1つの構造形成両親媒性物質(構成成分a)、少なくとも1つの“構造膨張”剤(構成成分b)及び少なくとも1つの分散安定化“ポリマー”剤(構成成分c)を含む。構成成分b及びcは、また、フラグメンテーション剤としても作用する。この実施態様において、総両親媒性構成成分(a+b+c)の少なくとも重量で50%は、構成成分aである。好ましくは、これは、60〜95%であって、より好ましくは、70〜90%である。これに対して、構成成分bは、重量でa+b+cの40%未満であり、好ましくは、5〜30%であり、より好ましくは、10〜25%である。構成成分cは、a+b+cの総重量の20%未満、好ましくは、1〜15%、より好ましくは、2〜10%存在する。
【0055】
ここで記載するような構成成分a、b及びcを含む組成物は、それらが一般的に適当な水媒体中で熱力学的に安定なラメラ状態である点で、本発明の方法における使用に高度に適している。さらに、前記組成物は、例えば、低溶血作用及び低急性毒性などの好ましいインビボ特性を有し、それにより、例えば、薬剤及び/又は栄養素などの活性因子(ここに示される活性因子参照)の担体としての拡張された実用性をもたらす。
【0056】
前記三成分両親媒性組成物において、構造形成構成成分“a”は、好ましくは、少なくも1つの脂質構成成分、例えば、糖脂質、ジグリセリド及び/又はリン脂質(例えば、ホスファチジルエタノールアミン)などを含む。天然に生じる脂質は、特に適しているが、非天然に生じる変形、例えば、エステル脂質(エステル結合により結合された頭部及び尾部基を有する)も同様に適している。ジアシルホスファチジルエタノールアミン並びにジアシルグリセロール及びジアシルホスファチジルコリンなどのような脂質が高度に適している。
【0057】
この実施態様において、構成成分aは、少なくとも1つの荷電した両親媒性物質、とりわけ、陰イオン性脂質(例えば、アシル又はジアシルホスファチジルグリセロールなど)又は脂肪酸(上記参照)を、最高10%まで(例えば、この構成成分の1〜10重量%)含んでもよい。これに対して、構成成分aの90%以上、好ましくは少なくとも95%は、天然及び/又は生理学的条件化で実効電荷(ネットチャージ)を有さないことが好ましい。構成成分aは、過剰水において単独で配合された場合、逆非ラメラ相、好ましくは、逆ヘキサゴナル相を形成するものである。
【0058】
構造膨張構成成分“b”は、一般的に、両親媒性構造の格子を膨張させ、より容易に粒子形態へ分散させるものである。この構成成分は、また、例えば、逆キュービック相構造からヘキサゴナル相構造へなどのような構造転移を促進する。構造膨張剤は、一般に、比較的低分子量(例えば、2000以下)であって、好ましくは、オリゴエチレンオキシドを基礎とした界面活性剤などのような構成成分である。オリゴエチレンオキシドを基礎とした界面活性剤の好ましい例は、5〜40のエチレンオキシド単位が結合した非極性“尾部”基を有するもの(例えば、ここで記載した任意の脂肪酸とのエステル、又は、対応する脂肪アルコールとのエステルのようなもの)である。好ましい例は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート)、ポリオキシエチルステラート、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレン脂質誘導体を含む。最も好ましい例は、TMGO−15(Nikko社製)、SolutolH15(BASF社製)及びポリソルベート80である。
【0059】
ポリマー構成成分“c”は、概して、分散の安定性、とりわけ、コロイド粒子としての安定性を向上させる構成成分である。ポリマー構成成分は、一般的に、比較的大きな分子量(例えば、2000以上)を有し、その分子構造において少なくとも1つのポリマー又はコポリマー部分を有する。好ましいポリマー構成成分は、ポリエチレンオキシドコポリマー及びポリエチレンオキシドで誘導体化された脂質、疎水的に修飾された多糖、並びに、両親媒性タンパク質である。ここに記載されるポロキサマーは、例えば、PEG−グリセロールジオレエート、PEG−ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(とりわけ、DOPE−PEG2000及びDOPE−PEG5000)、又は、PEGジオレイルホスファチジルセリンなどのようなPEG置換脂質であり、とりわけポリマー構成成分として適している。適したポリマー剤は、また、PEG−ソルビトールオレエート(Nikko社製)、コレステロールプルラン(NOF社製)、2−メタクリルオイルオキシエチルホスホリルコリンn−ブチルメタクリレートコブロックポリマー(PUREBRIGHT MB−37−50T及びPUREBRIGHT MB−37−100T、NOF社製)を含む。ポリマー構成成分“c”としての使用に適したすべての両親媒性物質は、また、好ましいポリマーフラグメンテーション剤を形成する。
【0060】
ポリエチレンオキシドコポリマーの好ましい例は、少なくも1つのポリオキシエチレンのブロック及び少なくとも1つのポリオキシプロピレンのブロックを含むポロキサマーである。最も好ましいこれらの剤は、ポロキサマー407(例えば、Pluronic(商標)F127(BASF社製))、ポロキサマー188(例えば、Pluronic(商標)F68(BASF社製))、ポロキサマー124(例えば、Pluronic(商標)L44(BASF社製))である。
【0061】
フラグメンテーション剤は、構造化剤のフラグメンテーション及び/又はフラグメンテーションした非ラメラ相粒子を安定化させるに十分な程度存在させる。そのようなフラグメンテーションは、自然発生でもよく、又は、例えば、せん断及び/又は超音波などによる物理的フラグメンテーションでよい。非ラメラ粒子が物理的に安定となるに十分なフラグメンテーション剤が存在することが好ましい。
【0062】
構造化剤とフラグメンテーション剤の好ましい組み合わせは、GMO、GDO及び/又はDOPEと、少なくとも1つのポロキサマー407、ポロキサマー188、TMGO−15/DOPE−PEG(5000)及び/又はP80との組み合わせを含む。
【0063】
好ましい実施態様の1つとして、本発明の組成物又は本発明において使用する組成物は、必要に応じて任意の活性因子及び/又は水性構成成分とともに、GMO及び1つ以上のフラグメンテーション剤(例えば、ポロキサマー)からなる。その他の実施態様として、本発明は広範囲の組成物に適用されるため、前記組成物は、その他の構造化剤及び/又はフラグメンテーション剤(例えば、その他の脂質、界面活性剤及び/又は脂肪酸)を、GMO及び/又はポロキサマー、必要に応じて存在する任意の活性因子及び/又は水性構成成分などの構成成分とともに含む。
【0064】
本発明の方法及び製剤に含まれるのに適した活性因子は、ヒト及び獣医用の薬剤及びワクチン、診断剤、植物性揮発油、抽出物又は芳香などの“代替”活性因子、化粧剤、栄養素、栄養補助食品などである。適した薬剤の例は、βラクタム又は大環状ペプチド抗生物質などの抗菌剤、ポリエンマクロライド(例えば、アンフォテリシンB)又はアゾール系抗真菌薬などの抗真菌剤、ヌクレオシド抗生物質、パクリタキセル及びそれらの誘導体などの抗がん剤及び/又は抗ウイルス剤、非ステロイド抗炎症薬などの抗炎症剤、コレステロール低下剤及び血圧低下剤を含む心臓血管薬、鎮痛薬、セロトニン取り込み阻害薬を含む抗うつ剤、ワクチン、並びに、骨調節剤である。診断剤は、X線、超音波及びMRI造影促進剤を含む放射性核種標識化合物並びに造影剤を含む。栄養素は、ビタミン、補酵素、食品補助食品などを含む。本発明において使用する活性因子は、概して、ポロキサマー又はアシルグリセロールではない。
【0065】
好ましい活性因子は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)及びその断片、アンギオテンシン及びその関連ペプチド、抗体及びその断片、抗原及びその断片、心房性ナトリウム利用ペプチド、生体接着性ペプチド、ブラジキニン及びその関連ペプチド、ペプチドT及びその関連ペプチド、カルシトニン及びその関連ペプチド、細胞表面受容体タンパク質断片、走化性ペプチド、シクロスポリン、サイトカイン、ダイノルィン及びその関連ペプチド、エンドルフィン及びP−リドトロピン断片、エンケファリン及びその関連タンパク質、酵素阻害剤、フィブロネクチン断片及びその関連ペプチド、胃腸ペプチド、成長ホルモン放出ペプチド、免疫刺激ペプチド、インシュリン及びインシュリン様成長因子、インターロイキン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)及びその関連ペプチド、メラニン細胞刺激ホルモン及びその関連ペプチド、核局在化シグナル関連ペプチド、ニューロテンシン及びその関連ペプチド、神経伝達物質、オピオイドペプチド、オキシトシン、バソプレシン及びその関連ペプチド、副甲状腺ホルモン及びその断片、プロテインキナーゼ及びその関連ペプチド、ソマトスタチン及びその関連ペプチド(例えば、オクトレオチド)、サブスタンスP及びその関連ペプチド、トランスフォーミング成長因子(TGF)及びその関連ペプチド、腫瘍壊死因子断片、毒素及びトキソイドなどのようなペプチド、並びに、アンギオスタチン、血圧降下剤ペプチド、抗血液凝固ペプチド及び抗微生物ペプチドを含む抗がんペプチドなどのような機能性ペプチドからなる群から選択されるヒト及び獣医用の薬剤;免疫グロブリン、アンギオジェニン、骨形態形成タンパク質、ケモカイン、コロニー刺激因子(CSF)、サイトカイン、成長因子、インターフェロン、インターロイキン、レプチン、白血病抑制因子、幹細胞因子、トランスフォーミング成長因子及び腫瘍壊死因子などのようなタンパク質からなる群から選択されるヒト及び獣医用の薬剤;抗ウイルス剤、ステロイド抗炎症薬(SAID)、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、ビタミン、ホルモン、レチノイン酸、プロスタグランジン、プロスタサイクリン、抗がん薬、代謝拮抗薬、縮瞳薬、コリン作動薬、アドレナリン拮抗薬、抗けいれん薬、抗不安薬、トランキライザー、抗うつ薬、麻酔薬、鎮痛剤、アナボリックステロイド、エストロゲン、プロゲステロン、グリコサミノグリカン、ポリヌクレオチド、免疫抑制剤及び免疫賦活剤、脂質低下剤及び血圧低下剤を含む心臓血管薬、骨調整剤からなる群から選択されるヒト及び獣医用の薬剤;ワクチン、ワクチンアジュバント、免疫グロブリン及び抗血清;診断剤;化粧剤、日焼け防止剤及びセルフタンニング剤;栄養素;栄養補助食品;除草剤、殺虫剤及び防虫剤である。活性因子のさらなる例は、Martindale, The Extra Pharmacopoeiaに見出すことができる。
【0066】
本発明の方法において、構造化剤を含む粒子は、1つ以上の熱処理サイクル前に形成される。このプレ製剤は、一般的に、分散の形態であり、確立された方法により調製される。例えば、それらは、本発明の実施例並びにUS5,531,925、WO02/02716、WO02/068561、WO02/066914、及び、WO02/068562において示される。これらの開示及びここで引用する全ての文献は、参照によりここに取り込まれる。そのような方法は、両親媒性物質/水液晶相をフラグメンテーション剤及び必要に応じて脂質(例えば、PC)の水溶液に添加すること、並びに、前記混合物を自然にフラグメンテーションさせること、又は、例えば、機械的撹拌、ボルテックス、ロト‐ステータ混合、高圧ホモジナイゼーション(均一化)、マイクロ流動化及び/又は超音波などにより処理を促進することを含む。
【0067】
本発明の方法はラメラ粒子を非ラメラ粒子形態に変換するために使用されるため、プレ調製粒子が非ラメラであることは必須ではない。よって、脂質をベシクルに製剤する任意の公知方法が、本発明の熱処理方法において使用するプレ製剤の生成に使用できる。適した方法は、例えば、超音波処理又は(例えば、ポリカーボネート膜を通した)押出しを含む。そのような方法は、適切な技術分野における当業者に公知である。
【0068】
プレ製剤は、室温で熱力学的安定状態が非ラメラであるように製剤されることが好ましい。あるいは、前記非ラメラ形態は、熱力学的準安定状態であってもよい。活性因子が存在する場合、活性因子は熱サイクルの前及び/又は後に前記粒子に取り込ませることができる。1を超える熱処理が使用される場合、前記活性因子はサイクル間に取り込ませてもよい。前記活性因子が熱に弱い場合(例えば、ペプチド又はタンパク質の場合)、前記活性因子は、熱サイクル完了後に取り込ませることが好ましい。
【0069】
さらに驚くべきことに、本発明者らは、ここに記載する熱処理サイクルを1サイクル以上することにより、活性因子の両親媒性組成物への装填を促進できることを確立した。熱サイクルにより活性因子を装填する方法及びそれにより形成された産物は、本発明のさらなる態様を形成する。
【0070】
本発明のこの態様において、前記活性因子は前記熱サイクルの条件に安定でなければならない。それゆえ、前記活性因子は、ここに記載する熱及び継続時間の条件下の水性の環境で化学的に安定である。本発明のこの態様ための任意の活性因子の適当性は、ここに記載する熱サイクル条件下のルーチン試験により確立される。この点において好ましい活性因子は、プロゲステロン、副腎皮質刺激ホルモン、生殖腺ホルモン、心臓アグリコン、胆汁酸腹部ステロールなどのようなステロールを含む。プロゲステロンが特に好ましい。
【0071】
熱耐性活性因子の存在下で本発明の方法による熱処理において、室温における装填により達成されるものの数倍の装填レベルが生み出される。つまり、室温の平衡により取り込まれうるものの少なくとも2倍量の活性因子が熱処理によりここに記載する両親媒性組成物に取り込ませることができる。この割合は、3、4又は5倍とすることができ、一定の活性因子では最大6以上とすることができる。さらに、この方法により可溶化した活性因子が準安定状態又は真に安定な分散又は溶液であるか否かを問わず、室温平衡レベルの最大6倍までの活性因子(特にステロイド)が装填された組成物は、少なくとも2週間安定に貯蔵されることが観察された。このことは、小容積及び低濃度の担体を対象へ投与するとともに高薬剤装填度をもたらすことができるという点で、相当かつ明白な利点を提供する。
【0072】
熱サイクルの前及び/又は後において、粒子を、(例えば、限外ろ過又は透析により)濃縮し、及び/又は、例えば、スプレー乾燥、流動床乾燥若しくは凍結乾燥により乾燥させてもよい。乾燥粒子の場合、乾燥処理は、一回又は複数回の凝集化及び粒状化工程による粒径拡張の後に行ってもよい。このように形成される濃縮、乾燥及び/又は凝集された粒子製剤は、そのようなものとして、又は、水和及び/又は分散したものとして使用され、活性物質の送達、特にインビボの送達における使用に適した非ラメラ粒子分散をもたらす。そのような濃縮、乾燥及び/又は凝集された粒子製剤、並びに、それらを再懸濁/水和して得られた分散は、本発明のさらなる態様を形成する。そのような乾燥は、両親媒性粒子から全ての溶媒を除去するために必要であるが、固形、好ましくは、取り扱いを可能とするに十分に“乾燥”したパウダーをもたらす。このようなパウダーは、粒子を製剤してゲル及びクリーム及びそのようなものに製剤するのに用いる都合のよい中間製剤である。
【0073】
本発明の好ましい態様において、熱処理前の最初のプレ製剤は、好ましくは、粒子が小型コロイド粒子、例えば、0.02〜0.2μmの範囲となるように形成する。このプレ製剤において、前記小型コロイド粒子の平均粒径は、好ましくは、0.05〜0.15μmである。この小型粒径は、上述のとおり、公知の方法により達成できる。しかしながら、そのような方法は、比較的大きな割合のラメラ相粒子をもたらす。少なくとも1回の熱処理サイクルが前記プレ製剤に適用されると、ラメラ粒子のバルクを非ラメラ形態に変換するとともに、さらに好ましくは、粒径分布を狭幅化することができる。この処理において、一般的に、平均粒径は増加するが、粒径分布は減少する。この方法において、少なくとも(粒子数で)50%のラメラ粒子が、非ラメラ形態に変換される。好ましくは、少なくとも75%のラメラ粒子が変換され、より好ましくは少なくとも85%(例えば、90%)である。最もこのましくは、前記処理方法は、99%以上のラメラ粒子を非ラメラ形態に変換する。
【0074】
非ラメラ形態における粒子の存在は、好ましくは、一揃いの低温透過型電子顕微鏡法による粒子像から検査できる。そのような像は、一般的に、少なくとも30粒子を示し、好ましくは、50以上のサンプルを示し、最も好ましくは、100粒子以上を示す。実施例の像を、図3及び4に示す。非ラメラ粒子の存在は、また、X線散乱実験により検査できる。
【0075】
1以上の加熱及び冷却サイクルによる処理後、最終粒子は、コロイドの粒径範囲である。これらは、一般的に、0.05〜1μmの範囲、好ましくは、0.1〜0.8μm(例えば、0.2〜0.8μm)の範囲、より好ましくは、0.2〜0.6μm(例えば、0.3〜0.6μm)の範囲の平均粒径(mode又は好ましくはmean)を有する。静脈内投与に使用する調製品は、非コロイド範囲の一定の粒子(例えば、ここに示すように、>1μm、又は、とりわけ、>5μm、特に、>10μm)を含まない。静脈内投与に好ましい粒径範囲は、0.05〜0.3μmである。これは、上述のとおり、小型コロイド粒子から始める本発明の方法を使用して達成できる。あるいは、又は、さらに、前記粒子は、好ましくは熱サイクル後に、より大きな(例えば、非コロイド)粒子を除去するためフィルターを通してもよい。
【0076】
本発明により形成された粒子の試料は、従来の方法により達成されるものよりも大きな割合の非ラメラ粒子、狭幅の(特にコロイドの)粒径分布、及び/又は、大きな粒径安定性を示す。それゆえ、そのような粒子及びその分散は、本発明のさらなる態様を形成する。本発明の方法により形成される又は形成可能な粒子は、従来の担体、賦形剤及びその他の成分を使用した従来の方法による栄養、ダイエット、化粧、診断獣医、又は、医薬の組成物の製造に使用することができる。医薬組成物の場合、前記粒子は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤とともに配合され、タブレット剤、カプセル剤などへ形成することができる。前記粒子は、また、水のような許容される液体におけるプレ調製分散として製剤し、又は、(例えば、スプレー乾燥又は凍結乾燥などで)乾燥し、投与前の再懸濁のために滅菌容器に密封することができる。
【0077】
本発明の方法により形成される又は形成可能な製剤において、少なくとも(容量で)75%の粒子は、好ましくは、非ラメラである。製剤において、容量で測定して、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも95%の粒子が、非ラメラである。この測定は、例えば、レーザー回析、好ましくは、(非ラメラ粒子創造を確かめるため)cryo−TEM又はSAXSと組み合わせることにより行うことができる。
【0078】
よって、さらなる態様において、本発明は、少なくとも1つの構造化剤を含む粒子(好ましくはコロイド粒子)の製剤であって、前記製剤において(容量で測定して)少なくとも75%の粒子、好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも95%の粒子が(例えば、cryo−TEM又はSAXSと組み合わせたレーザー回折により判断した場合)非ラメラである製剤を提供する。コロイド製剤において、平均粒径(mode又は好ましくはmean)は、一般的に、例えば、光散乱法(例えば、レーザー回折)により測定した場合、0.1〜1μm(例えば、0.3〜0.6μm)の範囲である。好ましくは、1%以下の粒子が0.05〜1.5μmの範囲をはずれ、より好ましくは、0.1%以下がこの範囲をはずれ、最も好ましくは、この範囲を外れる(レーザー回折による)検出可能な粒子の部分を含まない。非コロイド製剤において、平均粒径は、一般的には、10〜200μmである。
【0079】
さらに、本発明の方法により調製されるコロイド製剤は、室温における長時間の貯蔵に対して物理的に安定である。そのような製剤は、相挙動及び粒径の点において、室温で少なくとも10日、より一般的には少なくとも3ヶ月、好ましくは6ヶ月、より好ましくは12ヶ月以上の期間、本質的に安定である。対照的に、同様の平均粒径の分散であっても、本発明の方法における処理を経てないものは、室温で粒径安定性を示すのは、10日未満である。
【0080】
粒径分布は、貯蔵期間中における平均粒径(mode又は好ましくはmean)の増加が2倍以下であれば、本質的に貯蔵に安定であると認めることができる。好ましくは、貯蔵期間中の前記平均粒径の増加は50%以下であって、より好ましくは20%以下である。同様に、貯蔵期間中の前記粒径分布の半値幅の増加は、好ましくは50%以下であって、より好ましくは20%以下、最も好ましくは10%以下である。分布がモノモードである場合、貯蔵期間中もモノモードであることが好ましい。高度に好ましい実施態様において、本発明の方法により形成される又は形成可能な組成物の粒径分布は、平均粒径及び粒径分布の半値幅の変化が10%以下であり、上述の期間の貯蔵においてモノモードのままである。
【0081】
静脈内投与又は動脈内投与に使用するコロイド分散の場合、粒径分布が貯蔵に対して安定であることが特に重要である。比較的小型の非コロイド粒子の構成成分を含む組成物であっても、直接血流に投与した場合、塞栓症、又は、少なくとも予想外の放出速度を引き起こしうる。同様に、活性因子の制御放出は、任意のその他の経路による投与用の組成物において、確実な粒径分布に依存する。医薬、診断及び獣医薬の産物は、また、数ヶ月の貯蔵に対して安定であることが望ましく、さもなければ、前記産物のコスト及びアベイラビリティは、著しく悪い影響を受ける。したがって、本発明の方法は、非ラメラ粒子の分散中に配合された活性因子が安全で利用可能な産物となる可能性を著しく改善する。
【0082】
分散中の粒子の相構造が貯蔵に対して安定であり、任意の活性因子の放出速度が効果的に予測できることが、さらに重要である。好ましい実施態様において、本発明の粒子及び本発明の方法により形成された粒子は、上述の期間の貯蔵中、非ラメラのままである。“非ラメラのまま”とは、10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下の非ラメラ粒子が貯蔵中にラメラ又はミセル相構造となることを示す。
【0083】
さらに、最も驚くべきことに、本発明の熱処理方法により生み出された分散は、一般の場合よりも著しく高濃度の両親媒性物質の分散において安定であることが見出された。とりわけ、従来、水性溶媒中で総両親媒性物質が1%を超える濃度において、分散中の非ラメラ粒子(好ましくはコロイド非ラメラ粒子)の安定性が観察されることはなかった。対照的に、本発明の両親媒性粒子は、総両親媒性物質が少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも4重量%、さらに好ましくは少なくとも6重量%の濃度で、(上記で示した)貯蔵に対して安定であることが観察される。安定性は、また、水中で両親媒性物質が少なくとも10重量%までの濃度で発揮される。
【0084】
下記の制限されない実施例及び添付の図面により本発明を説明する。
【0085】
〔実施例〕
下記実施例に使用した材料は以下のとおりである。
GMOrphic−80 (Eastman Kodak社製)
Myverol 18−99 (Eastman Kodak社製)
Rylo MG 19 (Danisco社製)
Dimodan 蒸留GMO (Danisco)
poloxamer 407 (Pluronic(商標)F127、BASF社製)
poloxamer 188 (Pluronic(商標)F68、BASF社製)
polysorbate 80 (Tween(商標)80、ICI社製)
ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)(Avanti Polar Lipids 又は Lipoid社製)
ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)(Avanti Polar Lipids社製)
グリセロールモノオレエート‐PEG(660)(TMGO−15)(NikkoChemicals社製)
ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン‐PEG(5000)(DOPE−PEG(5000))((Avanti Polar Lipids社製)
オレイン酸(OA)(Apoteket社製)
使用したバッチのおおよその組成を、下記表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
以下の実施例において使用した略語は下記のとおりである。
GMO グリセロールモノオレエート
LD レーザー回折粒径測定
LM 光学顕微鏡法
LS 光散乱粒径測定
P407 ポロキサマー407
P188 ポロキサマー188
PCS 光子相関分光法
PIDS 偏光強度回折散乱
PSD 粒径分布
SAXS 低角X線散乱
TEM 透過型電子顕微鏡法
【実施例1】
【0088】
プレ製剤の形成
主にキュービック粒子の粗い分散を、GMOrphic-80(1.84g)をポロキサマー407(0.16g)とともに融解し、この融解混合物1.25gを、脱イオン水(23.75g)(保存剤として0.01%のチオマーサルを含む)へ、室温で撹拌しながら滴状で加えて形成した。その結果得られた粗い分散を、少なくとも約1日平衡状態におき、40℃、15分、高圧(350バール)で、マイクロ流動化装置において均一化した。
【0089】
以下の実施例において使用したすべての分散は、この標準手順(マイクロ流動化装置、40℃、350バール、15分)で、規定する組成(ポロキサマー/モノオレイン比率及び含有量、並びに、ポロキサマー/モノオレインの種類)を変化させることにより調製した。特定のポロキサマーの指定がない場合、ポロキサマー407を使用した。
【0090】
この方法で調製される組成の一般的な例は、以下のとおりである。
【0091】
【表2】

【実施例2】
【0092】
熱処理をしない分散の相分析
RyloMG19及び12%ポロキサマー407により分散を調製した(モノオレインとポロキサマーの総量を参照する)。得られた系は、わずかに半透明の均一な分散であり、粒径は主に約0.09μm(加えて、少量の約0.3μmの粒子)であり、著しく弱く割当てできないSAXS反射のみを示した。cryo−TEMにより、主に小型のラメラ粒子が、小割合の非ラメラ粒子とともに観察された(図3参照)。最も小型の粒子はすべてラメラであった。しかし、より大型の粒子の中には、内部構造(おそらくはキュービック)を示すものもあれば、示さないものもあった。
【実施例3】
【0093】
熱処理の効果
モノオレインとしてのRyloMG19、及び、12%ポロキサマーP407を含む新たに調製された分散を2つのフラクションに分けた。1つのフラクションをオートクレーブし(121℃、15分(さらに平衡時間5分、以下、適用する場合には“(+5分)”と示す))、非オートクレーブフラクションと比較した。非オートクレーブフラクションは、実施例2に相当する。すなわち、粒径が主に約0.09μm(さらに、約0.3μmの少数の粒子)(図1)であり、SAXS反射を示さない、わずかに半透明な均一な分散である。熱処理フラクションは、乳白色(不透明)であり、LS+PIDS分析(図1)は、狭幅なモノモードの粒径分布(約0.27μm、より小型の粒径フラクションはない)を示す。
【0094】
熱処理試料では明確なSAXS反射を観察することができ、キュービックP相の存在が示された。このことは、0.1μmの範囲の小型非キュービック粒子が、オートクレーブ処理の間に中型粒径の範囲(約0.3μm)のより大きなキュービック粒子を形成することを示す。
【0095】
cryo−TEMをオートクレーブフラクションについて行い、実施例2と比較した。わずかな小型非キュービック粒子を熱処理後に検出できた。検出できた粒子のほとんどが、キュービックであり、約200〜300nmの範囲であった(図4)。この結果は、これら分散のSAXS及びLD+PIDSの結果と一致する。非オートクレーブ分散の場合は、キュービック反射がなく、最大粒径が約0.09μmであり、オートクレーブ分散の場合は、キュービック相P型の反射を示し、最大粒径が約0.27μmである。
【0096】
同様の挙動が、8%ポロキサマーを含む分散でも観察された。この場合、非オートクレーブ分散は、既に乳白色であり、SAXS反射(キュービックP)を示す。主な粒径は、0.5μmの範囲で、加えて、少ない量の0.1μm及び1.5μmの範囲のよりものを含む。12%のポロキサマーの分散と同様に、オートクレーブ後、凝集体がLMにより観察され、LS+PIDS分析では、小型粒子が消え、中型範囲の粒子量が増加した(図2)。
【実施例4】
【0097】
ろ過の効果
12%ポロキサマーを用いて4つの分散を調製し、そのうち2つにGMOrphic−80を使用し、その他にRyloGM19を使用した。GMOrphicの場合、Ryloを使用した前記実施例と同様に、高圧均一化によりわずかに半透明の分散となった。これらの分散のフラクションを0.45μm膜フィルターでろ過したところ(ろ過は、シリンジを使用して容易に手動で行える)、肉眼的外観の変化はなかった。LMで検出される最大粒径がわずかに減少した。LD+PIDSは、ろ過分散及び非ろ過分散で同じ結果を示した。また、SAXS反射はいずれの分散においても検出できなかった。
【0098】
ろ過及び非ろ過フラクションの試料をオートクレーブした(121℃、15(+5)分)。ろ過及び非ろ過の場合で、肉眼で視認可能な粒子の乳白色分散が得られた。非オートクレーブ分散と同様に、オートクレーブ後のろ過及び非ろ過分散の間で明確な差異は検出されなかった。
【実施例5】
【0099】
熱処理時間の効果
モノオレインとしてのMyverol18−99、及び、12%ポロキサマーを含む分散を4つのフラクションに分けた。3つのフラクションを121℃で異なる時間(5分、15分(+5分)、30分(+5分))オートクレーブし、4番目の非オートクレーブフラクションと比較した。オートクレーブの間に、わずかに半透明の分散は、乳白色となり、視認可能な凝集体が現れた。SAXSにおいて、オートクレーブ分散は、キュービックP相に一致する回折パターンを示した。非オートクレーブ分散の場合、反射は検出されず、シンクロトロン放射を使用しても同様であった。LD+PIDSは、全ての分散でモノモードの粒径分布を示し、オートクレーブ分散では約360〜390nmのモードであり、非オートクレーブ分散では、約88nmのモードであった(図5)。オートクレーブ分散間では、適用した方法による検出可能な相違はなかった。よって、オートクレーブの時間は、この温度の5〜30(+5)分の範囲では、得られる分散の特性に有意な効果を及ぼさない。
【実施例6】
【0100】
温度の影響
モノオレインとしてのDimodan蒸留GMOを含む分散を4つのフラクションに分けた。2つのフラクションを80℃で異なる時間(20分及び60分)加熱し、1つのフラクションをオートクレーブ処理し(121℃/15(+5分))、そして、1つのフラクションは変化させなかった。オートクレーブは、わずかに不透明な分散を乳白色に変化させ、80℃加熱は、どちらの場合も、ほぼ乳白色の(極めてわずかに不透明な)分散に変化させた。LD+PIDSの結果は、80℃加熱の間に粒径分布がわずかにより大きな粒子の方向へシフトしたことを示す(図6)。2つの80℃分散(20分及び60分)間で違いはなかった。異なる容器(コンテナ2、同一バッチ)のDimodanを用いた第2の分散は、非加熱の場合、ほぼ同一の粒径分布を示し(コンテナ1の分散の約0.35μmの小さなピークは、5回の中の1回の測定におけるより大きなピークを平均した結果であり、その他の測定では、コンテナ2の分散と同一の粒径分布である)、オートクレーブ後、粒径が増加した。121℃のオートクレーブと比較して、分散の80℃への加熱は、粒径分布に小さな変化をもたらした(LD+PIDSによる)。よって、この場合、より大きな割合の非ラメラ粒子を形成するには、80℃よりも高温が必要であると考えられる。
【実施例7】
【0101】
モノオレインの種類の影響
12%ポロキサマーとともに、GMOrphic−80又はMyverol18−99をそれぞれモノオレインとして含むオートクレーブ分散(121℃、15分(+5分))は、同様な範囲の粒径分布をもたらす。また、対応する非オートクレーブ分散の粒径分布も互いに同程度である。Dimodan蒸留GMOの使用は、同様な非オートクレーブ分散をもたらすけれども、これらの分散のオートクレーブは、異なった小型の粒径をもたらす。
【実施例8】
【0102】
SAXS実験
前記の実施例の分散に対してSAXS実験を行った。12%ポロキサマーを含む非加熱/非オートクレーブ分散は、X線反射を示さず、少数例のみにおいて著しく弱く割当てできない反射が観察された。加熱分散(80℃、20分及び60分)は、キュービックP相に起因する非常に弱い反射を示す。オートクレーブ分散(121℃、5分、15分及び30分)の場合、Dimodan分散では弱い反射が、GMOrphic及びMyverol分散では明確な分散が得られ、全てが、キュービックP相を示した。
【実施例9】
【0103】
温度のさらなる影響
均一化後の加熱処理の間に適用される温度の影響をさらに調べるため、モノオレイン(MO)としてのGMOrphic−80及び12%P407を含む分散(MO及びP407の総量に基づく)を、標準手順(実施例1)に従って調製した。均一化された分散のフラクションを、90℃、100℃、110℃及び121℃で、それぞれ、20分間加熱し、非加熱フラクションと比較した(図7)。温度の上昇とともに平均粒径が上昇し、PSDが狭幅化する。110℃及び121℃の加熱後に得られる結果には、わずかな差異しかない。このことにより、121℃を超える温度への加熱は、PSDのさらなる狭幅化という結果にはならないという推定がもたらされる。90℃への加熱後は、約50%の粒子が0.2μmを超えていた。また、明確なSAXS反射(キュービックP)が観察された。粒子の90%以上が0.2μmよりも小型であり、非常に弱いSAXS反射(おそらくキュービックP)のみが検出された80℃への加熱後の結果(実施例6参照)とは対照的である。非加熱フラクション及び121℃/15(+5)分フラクションは、先に得られた通常の結果を示す。この場合、PSDの狭幅化及び非ラメラ粒子への変換に必要な最低温度は、90℃の領域であると結論した。
【実施例10】
【0104】
ポロキサマー濃度の影響
濃度が12%を超えるポロキサマー407の濃度の、オートクレーブの効果に対する影響を調べるため、12%、14%及び16%のP407を含む分散を前記標準手順により調製した。これらの分散のフラクションをオートクレーブし(121℃、15(+5)分)、非オートクレーブフラクションと比較した(図8)。
【0105】
両方(オートクレーブ及び非オートクレーブ)の場合において、12%分散とそれを超える濃度のP407の分散との間の差異は、目視検査、光学顕微鏡観察、及び、SAXSによって検出することはできない。すべての非オートクレーブ分散は、わずかに半透明であり、SAXS反射を示さなかった。オートクレーブ後、それらは、大きな凝集体をともなう乳白色分散となり、ほぼ同一の格子定数のキュービックPに相当する明確なSAXS反射を示した。
【0106】
LD+PIDSの結果は、P407濃度の12%から14%への増加は、非オートクレーブ分散において、0.2〜0.5μmの範囲の粒子フラクションのわずかな減少をもたらすことを示す。P407濃度のさらなる増加は、LD+PIDSの結果には影響を及ぼさなかった。オートクレーブ分散のPSDの最頻値及び幅は、同一オートクレーブ処理により一緒にオートクレーブしたのにもかかわらず、異なるP407濃度でわずかに異なっていた。P407濃度とPSD最頻値又はPSD幅との間には、相関関係はみられなかった。
【実施例11】
【0107】
ポロキサマーの種類の影響
得られる分散の特性に対するポロキサマーの種類の影響を調べるため、P407に替えてポロキサマー188(P188)を使用した。8.75重量%のP188の濃度の分散(MO及びP188の総量の基づく)を、標準手順(実施例1)に従って調製した。このP188の濃度は、(mol%として計算した場合、)P407の通常濃度(12重量%)と同等である。この分散のフラクションをオートクレーブした(121℃、15(+5)分)。その分散を、非オートクレーブ及び12%P407オートクレーブ分散と比較した(図9)。
【0108】
8.75%の均一化(非オートクレーブ)分散は、均一でほぼ乳白色であった。SAXS反射は検出されず、LD+PIDSは、12%P407非オートクレーブ分散と比較して、約0.2〜0.5μmの範囲の粒径の粒子量がわずかに多いPSDを示した。この分散のオートクレーブフラクションは、12%P407オートクレーブ分散と同様に(図10参照)、大きな凝集体をともなう乳白色であり、明確なキュービックPのSAXS反射を示した。8.75%P188オートクレーブ分散の第1及び第2キュービックP反射間の非常に弱いピークは、キュービックD相の第1反射が予測される領域であり、この分散における少量のキュービックD相の存在を示す。8.75%P188を含む分散の場合の(キュービックP相の)格子定数(約13.5nm)は、12%P407を含む分散のそれ(約14.4nm)よりも小さかった。PSD(LD+PIDS)は、12%P407のオートクレーブ分散のそれとほぼ同一であった。
【実施例12】
【0109】
長期貯蔵の影響
12%P407非オートクレーブ分散のラメラ粒子が、熱処理しなくても経時的に非ラメラ粒子に変換するかどうか、又は、12%P407分散をオートクレーブして製造されたキュービック粒子が、経時的に元のラメラ粒子に変換し直すのかどうかという疑問に回答するため、分散(12%P407、非オートクレーブ及びオートクレーブ)を、調製後6ヶ月貯蔵した後(23℃、“貯蔵分散”という)、SAXSにより調べた。その結果を、調製後20日の分散(23℃貯蔵、“非貯蔵分散”という)で得られたSAXSの結果と比較した(図11)。
【0110】
オートクレーブ分散の場合、両方(貯蔵及び非貯蔵)分散の回折グラムは、明らかにキュービックP反射を示し、格子定数は同一であった(14.4nm)。貯蔵後に付加的な反射は生じなかった(おそらくは例えばモノオレインの加水分解により生じるキュービックD又はヘキサゴナルへの経時的な相変化は、付加的な反射となる)。非オートクレーブ分散の場合、どちらの系の回折グラムにおいても反射が検出されない。非オートクレーブ分散(12%P407)において、経時的に検出可能なキュービックP相が形成されないという結果は、第2の独立したバッチ(調製7日後及び6ヶ月後)の実験により確認された。
【実施例13】
【0111】
薬剤装填の影響
5つの異なる薬剤(ユビデカレノン、酢酸トコフェロール、ミコナゾール、ベタメタゾン‐17−バレレート、クロラムフェニコール)を、非装填状態では(ラメラベシクル分散である)12%P407で安定化されたモノオレイン(GMOrphic)分散へ、“標準”調製手順(実施例1参照)における60℃(5%薬剤濃度の場合、80℃)のMO/P407溶融物へ薬剤を添加することにより取り込ませた。すべての薬剤濃度は、モノグリセリド及びポロキサマーの総量に対して示される。薬剤フリー分散を調製し、リファレンスとして使用した。
【0112】
すべての分散は、121℃で15+5分間オートクレーブし(オートクレーブ内で温度平衡を可能とした)、それらの特性を対応する非オートクレーブ分散のものと比較した。
【0113】
ユビデカレノン及び酢酸トコフェロールは、0.3%の濃度では、結果として得られる分散の特性に影響を及ぼさなかった。オートクレーブによるラメラベシクルの非ラメラ(キュービック)粒子への変換は、薬剤フリー分散と同様に処理された。さらに高濃度のこれらの薬剤については、調べなかった。
【0114】
0.3、1、又は、2%のベタメタゾン‐17−バレレートを含む分散も同様に、分散の一般的挙動に影響を与えなかった。この物質の5%薬剤装填は実現できなかった。この濃度では、MO/P407溶融物に溶解できないからである。
【0115】
0.3、1及び2%のクロラムフェニコール、並びに、0.3及び1%のミコナゾールは、非オートクレーブ分散に対して影響を与えなかった。しかしながら、オートクレーブ分散において、濃度依存の影響が観察された。クロラムフェニコール装填分散では、薬剤濃度ともにはっきりと粒径が増加し、キュービック相の格子定数のわずかな増加が観察された。5%クロラムフェニコールは、MO分散に取り込ませることができる。しかし、均一化及びオートクレーブは、薬剤フリー分散及び最大2%薬剤を含む分散と比較して明確により大きな粒径の分散をもたらす。
【0116】
5%クロラムフェニコール試料は、低角X線散乱にいてキュービック反射がオートクレーブ前でも観察された。5%の(非オートクレーブ及びオートクレーブ)試料におけるキュービック相の格子定数は、オートクレーブ薬剤フリー分散又は最大2%クロラムフェニコールを含む(オートクレーブされた)分散よりも大きい。
【0117】
ミコナゾールは、0.3及び1%の濃度で取り込ませることができた。これらの分散の均一化は、すべての場合で、キュービックX線反射を示さない不透明な分散をもたらす。オートクレーブは、薬剤取り込みをしない分散と比較してわずかに大きな(0.3%)及び明確に大きな(1%)粒径をもたらす。格子定数は、わずかに減少した。
【実施例14】
【0118】
リポソーム分散のオートクレーブ
室温でラメラ平衡形態を示す標準リポソーム分散が加熱により非ラメラ粒子に変換するかどうか調査するため、リポソーム分散に対して前記方法を試した。
【0119】
リポソーム分散の調製のため、5%の卵リン脂質(LipoidE80)を水(0.01%チオサーマルを防腐剤として含む)中、室温で1日撹拌し、続いて、100nmポリカーボネートフィルターを通して10回押し出しをした(AvestinEmulsiflex−C5)。結果として得られた分散は、PCSのz平均直径117nm、多分散性インデックス0.08を示した。
【0120】
前記分散の1フラクションを121℃、15+5分オートクレーブし、得られた分散の特性を非オートクレーブのものと比較した。視覚外観におけるわずかな差異を除き、下記の方法における2つの試料の間で差異は見られなかった。両方の試料は、肉眼的に検出可能な粒子がなく視覚的に均一で黄色がかった不透明の外観を示し、オートクレーブ後にはわずかにより色が強くなる。レーザー回折+PIDSを用いた粒径測定は、両方の分散について、106nmのモードのモノモード粒径分布を示す(図12)。両方の分散は、検出可能な鋭い反射がなく、分散した低角X線散乱を示し、熱処理の前(図13a)及び後(図13b)でラメラ粒子のみが存在することを示す。
【実施例15】
【0121】
脂肪酸を含む組成物
配合に脂肪酸オレイン酸を含む実施例1に記載の標準方法を使用してプレ製剤を調製した。
【0122】
a)GMO(85.5%)、オレイン酸(4.5%)、及び、LutrolF127(10%)を含む最初の溶融物を調製した。機械的に撹拌した9gの水に1gの前記溶融混合物を添加し、粗い分散を形成した。この相構造を検査したところ、主に平均直径100μmを超えるキュービック液晶粒子を含んでいた。前記粗い分散の粒径分布を、図14及び15の“a”として示す。
【0123】
b)前記粗い分散を2つの部分に分けた。第1の部分はマイクロ流動化装置を用いて345バールで均一化し、第2の部分はマイクロ流動化装置を用いて172バールで均一化した。2つの得られた分散の粒径分布をそれぞれ図14及び15の“b”として示す。より高圧の均一化が、比較的小型の粒子のモノモードの粒径分布をもたらすこと、及び、より低圧の均一化が、2モードのより大きな粒子をもたらすことがわかる。
【0124】
c)パートb)で調製した2つの分散をそれぞれ120℃で20分加熱し、粒子の相と粒径分布を再度検査した。その結果は、主に図14及び15の“c”として示すような粒径分布のキュービック液晶粒子であることを示した。最大粒径は、本質的に動きがないままであったが、分布の幅は、低圧均一化の場合、明白に減少し(図15)、高圧均一化の場合、著しく減少した(図14)。熱サイクルの後、両方を組成物は、コロイド粒子であり、鋭く狭幅の粒径分布を示した。よって、そのような分散は、静脈内投与及び任意の適した投与経路による制御放出の適用の両方に極めて適している。
【実施例16】
【0125】
貯蔵安定性
実施例15の高圧均一化により得られたパート(b)で調製した分散(熱処理前)及びパート(c)で調製した分散(熱処理後)を室温で11日貯蔵した。貯蔵後粒径分布を再度測定し、その結果を図16に示す。
【0126】
粒径に対する貯蔵の効果は、図14と図16とを比較することで見出すことができる。非加熱処理試料(図16の“a”)は、貯蔵後にモード粒径がいくらか増加し、2モードの分布を示し、第2の粒子部分は、直径1μmを超えていた。対照的に、熱処理試料(図16の“b”)は、貯蔵前の粒径分布(図14の“C”)と区別がつかない分布を示した。よって、熱処理サイクルは、試料の粒径分布を狭幅化しただけではなく、該試料に貯蔵安定性を与えた。
【実施例17】
【0127】
三成分非ラメラ粒子
17.1―非ラメラ分散の調製
DOPE(Avanti Polar Lipids、米国、0.75g)、TMGO−15(Nikko、日本、0.2g)及びDOPE−PEG(5000)(Avanti Polar Lipids、米国、0.05g)を脱イオン水(49.0g)中で混合して、キュービック及びラメラ粒子の粗い分散を形成した。前記混合物を、−85℃に凍結すること及び室温での激しい撹拌及び振とうにより解凍することを含む凍結融解を3回した。その後に得られた粗い分散を、マイクロ流動化装置において、高圧(350バール)、10分(8パス)、室温で均一化した。
【0128】
均一化後、レーザー回折(CoulterLS230)を使用して粒径を測定した。
【0129】
前記均一化試料は、キュービック相粒子及びベシクルからなる粒径が0.05〜1ミクロンの範囲の混濁状の青みがかったコロイド分散であった。
【0130】
17.2―熱処理
実施例17.1で調製した分散に対して熱処理サイクルを施した。実施例17.1で作り出した分散の試料をオートクレーブし(120℃、20分)、室温に冷却した。cryo−TEMで測定したところ、前記分散において、より大部分の粒子が、非ラメラの特徴を示した。熱処理前の分散と比較して、粒径分布はいくらか狭幅化し、より良好な貯蔵安定性を示した。
【0131】
組成:
a DOPE
b TMGO−15(グリセリルモノオレエート‐PEG(15)、Nikko、日本)
c DOPE−PEG(5000)
【0132】
【表3】

【0133】
熱処理前及び後の前記組成物の粒径分布を図17に示す。
【実施例18】
【0134】
制御されたイオン強度の効果
熱処理の間のイオン強度の効果を実施例17.1及び17.2の方法による第2の組成物を調製することにより考察した。熱処理工程のため、同じ構成成分a、b及びcを異なる重量比で使用し、水に換えて3mM NaClを使用した。
【0135】
【表4】

【0136】
熱処理前及び後の粒径分布を図18に示す。この場合、高イオン強度の効果は、モード粒径を約4倍増加させ、狭幅な粒径分布を維持した。粒子は、また、実質的に100%キュービック相粒子に変換された。
【実施例19】
【0137】
さらなる三成分組成物
実施例17.1及び17.2の方法により、DOPE(0.80g)、ポリソルベート80(0.134g)及びPluronic(商標)F127(0.10g)の分散を脱イオン水(49.0g)中で調製した。熱処理前及び後で測定した粒径分布を図19に示す。熱処理は、広幅なマルチモードの粒径分布の元の粒子を、モノモードの狭幅な粒径分布の粒子に変換することがわかる。分散中のキュービック相粒子の割合は、熱処理後にほぼ100%へ増加した。
【0138】
組成:
a DOPE
b ポリソルベート80
c Pluronic(商標)F127
【0139】
【表5】

【実施例20】
【0140】
荷電した三成分/四成分組成物
荷電した両親媒性物質を構成成分に含む組成物を調製した。
【0141】
実施例17.1及び17.2の方法により、DOPE(0.90g)、DOPG(0.036g)、TMGO−15(0.207g)及びDOPE−PEG(5000)(0.06g)の分散を脱イオン水(58.8g)中で調製した。熱処理は、5mM NaCl中で行われ、モノモードの狭幅な粒径分布をもたらした。熱処理前及び後で測定した粒径分布を図20に示す。熱処理は、また、試料の濁度の増加を伴い、このことは、分散の粒子の大部分が非ラメラの特性であることを示していた。
【0142】
組成:
a1 DOPE
a2 DOPG
b TMGO−15
c DOPE−PEG(5000)
【0143】
【表6】

【実施例21】
【0144】
さらなる荷電組成物
実施例17.1及び17.2の方法により、DOPE(0.90g)、DOPG(0.036g)、ポリソルベート80(0.212g)及びDOPE−PEG(5000)(0.06g)の分散を脱イオン水(58.8g)中で調製した。熱処理は、5mM NaCl中で行われ、モノモードの狭幅な粒径分布をもたらした。熱処理前及び後で測定した粒径分布を図21に示す。熱処理後、分散の粒子の大部分が非ラメラの特性を示した。
【0145】
組成:
a1 DOPE
a2 DOPG
b ポリソルベート80
c DOPE−PEG(5000)
【0146】
【表7】

【実施例22】
【0147】
活性因子の装填
水及び食塩溶液中のさまざまな構成成分の非ラメラ分散は、実施例17.1の方法で調製し、実施例17.2の熱処理方法で処理して得た。
【0148】
前記分散に、カチオン性ペプチドデスモプレシンを1mg/mlの濃度で添加した。前記分散を室温で60分間平衡化させ、粒径及び必要に応じて相挙動を再分析した。レーザー回折を使用して測定したところ、粒径は影響されなかった。
【実施例23】
【0149】
毒性試験
23.1 溶血
下記の構成成分を使用して実施例17.1及び17.2の方法によりキュービック相分散を調製した。
a) DOPE
b) TMGO−15
c) DOPE−PEG5000
重量比a:b:cを、76:20:4とし、水中で分散させ、総両親媒性物質濃度を2重量%とした。この溶液を水で希釈してさまざまな最終濃度とした。この分散のcryo−TEM像を図22に示す。
【0150】
さまざまな濃度のキュービック相分散の溶血効果を測定した。その結果、最大1wt%までの総両親媒性物質の濃度では、前記分散は非溶血性であることがわかった。
【0151】
23.2 発熱性
DOPEベースの製剤を実施例23.1に記載のように調製し、ラビットモデルにおいて発熱試験を行った。前記組成物は、少なくとも5ml/kg(総両親媒性物質5重量%)の用量まで非発熱性であることがわかった。
【0152】
23.3 急性毒性
DOPEベースの製剤を実施例23.1に記載のように調製し、ラビットモデルにおいて急性毒性試験を行った。
【0153】
DOPEベースキュービック相分散は、用量依存研究において、最大10ml/kg(総両親媒性物質10重量%)の用量まで非急性毒性を示した。
【実施例24】
【0154】
濃度による粒径制御
GMO/F−127(90:10)及びGMO/OA/F127(84.5:4.5:9)の分散を、上記実施例(特に、実施例1〜3及び15参照)のように調製した。ただし、水中におけるマイクロ流動化装置による均一化(345バールで6パス)及び120℃20分の熱処理、それに続く室温でのアニーリングの前に、規定濃度に希釈した。両方の場合で、キュービック粒子の分散が形成された。
【0155】
得られた分散の粒径分布と平均粒径を上述のように分析した。
【0156】
図23aは、水中の総混合物1〜5重量%の希釈で処理されたGMO/F−127(90:10)の粒径分布を示す。対応する平均粒径を図23bに示す。
【0157】
図24aは、水中の総混合物1〜5重量%の希釈で処理されたGMO/OA/F127(84.5:4.5:9)の粒径分布を示す。対応する平均粒径を図24bに示す。
【0158】
処理後の平均粒径は、処理濃度に直接的に依存することがわかる。
【実施例25】
【0159】
プロゲステロンの熱処理に対する安定性
ステロイドホルモンであるプロゲステロンを水中の1重量%の濃度で溶解した。この溶液を引き続きオートクレーブで120℃、20分間加熱し、室温に冷却した。前記溶液を凍結乾燥により濃縮し、その残りをガスクロマトグラフィー質量分析法により崩壊産物の分析をした。
【実施例26】
【0160】
熱処理による高度装填
実施例24と同様にしてGMO/OA/F127(84.5:4.5:9)の配合のキュービック粒子の分散を調製した。ステロイドホルモンプロゲステロンを、実施例22のデスモプレシンの例と同様に、前記キュービック粒子とともに室温でインキュベーションした。平衡装填濃度は、3重量%であった。
【0161】
活性因子プロゲステロンを均一化及び熱処理工程の前の水相に含ませて上記の方法を繰り返した。装填濃度を再度測定したところ、18重量%となった。粒径分布に対する影響は最小であった。
【0162】
上述のように生成された18重量%プロゲステロンを含む組成物を14日間室温で貯蔵した。この期間後に、組成物の分解、又は、装填濃度の減少は見られなかった。
【0163】
図14のレジェンド:液晶(キュービック相)分散のa)機械的アジテーション後、b)345バール(6パス)で行ったマイクロ流動化装置による均一化後、及び、c)さらに120℃、20分の加熱後の粒径分布。
【0164】
図15のレジェンド:液晶(キュービック相)分散のa)機械的アジテーション後、b)172バール(6パス)で行ったマイクロ流動化装置による均一化後、及び、c)さらに120℃、20分のオートクレーブ後の粒径分布。
【0165】
図16のレジェンド:11日間貯蔵した液晶(キュービック相)分散のa)機械的アジテーション後、345バール(6パス)で行ったマイクロ流動化装置による均一化後、及び、b)さらに120℃、20分の加熱後の粒径分布。
【0166】
図22のレジェンド:DOPE/TGMO−15/DOPE−PEG(5000)(76/20/4)の均一化物を熱処理して得られた非ラメラ粒子のcryo−TEM像である。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】図1は、12%ポロキサマーを含むGMO試料の熱処理前後の粒径分布を示す。
【図2】図2は、8%ポロキサマーを含むGMOの試料の熱処理前後の粒径分布を示す。
【図3】図3は、熱処理をしていない試料の低温透過型顕微鏡写真を示す。
【図4】図4は、熱処理後の試料の低温透過型顕微鏡写真を示す。
【図5】図5は、さまざまな時間の熱処理の前後の試料の粒径を示す。
【図6】図6は、80℃及び121℃まで加熱した前後の粒径分布を示す。
【図7】図7は、さまざまな温度の熱処理の前後の試料の粒径分布を示す。
【図8】図8は、変化するポロキサマー濃度での熱処理の効果を示す。
【図9】図9は、2つの異なる種類のポロキサマーを含む組成物の熱処理の効果を示す。
【図10】図10は、2つの異なる種類のポロキサマーを含む、熱処理後の2つの試料の低角X線散乱法(SAXS)パターンを示す。
【図11】図11は、熱処理をした試料及びしない試料に対するSAXSにおける貯蔵の効果を示す(20日後及び6ヶ月後のカーブは同じスケールではない)。
【図12】図12は、リポソーム試料の粒径分布における熱処理の比較効果を示す。
【図13】図13は、リポソーム試料のSAXパターンにおける熱処理の比較効果を示す。
【図14】図14は、GMO、ポロキサマー及びオレイン酸の試料の熱サイクルの前後の粒径分布を示す。
【図15】図15は、GMO、ポロキサマー及びオレイン酸のさらなる試料の熱サイクルの前後の粒径分布を示す。
【図16】図16は、GMO、ポロキサマー及びオレイン酸の熱サイクルをした試料及びしない試料の11日の貯蔵後の粒径分布を示す。
【図17】図17は、DOPE/TMGO−15/DOPE−PEG(5000)三成分組成物の粒径分布に対する熱処理の効果を示す。
【図18】図18は、3mM NaCl中のDOPE/TMGO−15/DOPE−PEG(5000)三成分組成物の粒径分布に対する熱処理の効果を示す。
【図19】図19は、DOPE/P80/PluronicF127三成分組成物の粒径分布に対する熱処理の効果を示す。
【図20】図20は、DOPE:DOPG/TMGO−15/DOPE−PEG(5000)四成分組成物の粒径分布に対する熱処理の効果を示す。
【図21】図21は、DOPE:DOPG/P80/DOPE−PEG(5000)四成分組成物の粒径分布に対する熱処理の効果を示す。
【図22】図22は、粒子の非ラメラ構造を示すDOPE/TMGO−15/DOPE−PEG(5000)組成物のcryo−TEM像を示す。
【図23a】図23aは、異なる濃度で熱処理されたGMO/F127分散の粒径分布を示す。
【図23b】図23bは、異なる濃度で熱処理されたGMO/F127分散の平均粒径を示す。
【図24a】図24aは、異なる濃度で熱処理されたGMO/OA/F127分散の粒径分布を示す。
【図24b】図24bは、異なる濃度で熱処理されたGMO/OA/F127分散の平均粒径を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改善された相挙動、粒径分布及び/又は貯蔵安定性を示す非ラメラ両親媒性粒子を含む分散を形成する方法であって、ラメラ粒子及び任意で非ラメラ粒子の分散であって少なくとも1つの構造化剤を含む分散を形成すること、前記粒子を高温に加熱すること、続いて冷却することを含み、前記加熱が、冷却後に測定可能な相挙動、粒径分布及び/又は貯蔵安定性の改善をもたらすのに十分な時間と温度への加熱である方法。
【請求項2】
非ラメラ粒子(好ましくは、コロイド非ラメラ粒子)を生産する方法であって、ラメラ粒子及び任意で非ラメラ粒子の分散であって少なくとも1つの構造化剤を含む分散を極性溶媒中で形成すること、前記粒子を高温に加熱すること、続いて冷却、好ましくは室温まで冷却することを含み、前記加熱が、冷却後に少なくとも50%の前記ラメラ粒子を非ラメラ形態へ変換するのに十分な時間と温度への加熱である方法。
【請求項3】
少なくとも1つの構造化剤を含むラメラ粒子及び/又は非ラメラ粒子試料の粒径分布を極性溶媒中で狭幅化(narrowing)する方法であって、前記粒子を高温に加熱すること、続いて冷却、好ましくは室温まで冷却することを含み、前記加熱が、冷却後に前記粒径分布の狭幅化をもたらすのに十分な時間と温度への加熱である方法。
【請求項4】
少なくとも1つの構造化剤を含むラメラ粒子及び/又は非ラメラ粒子試料の粒径分布(例えば、光散乱により示される粒径分布)を極性溶媒中で安定化する方法であって、前記粒子を高温に加熱すること、続いて冷却、好ましくは室温まで冷却することを含み、前記加熱が、冷却後に前記粒径分布の安定化をもたらすのに十分な時間と温度への加熱である方法。
【請求項5】
少なくとも1つの構造化剤を含むラメラ粒子及び/又は非ラメラ粒子試料の粒径及び/又は粒径分布を極性溶媒中で制御する方法であって、前記粒子を高温に加熱すること、続いて冷却、好ましくは室温まで冷却することを含み、前記加熱が、冷却後に前記粒径及び/又は粒径分布の制御をもたらすのに十分な時間と温度への加熱である方法。
【請求項6】
前記極性溶媒が、0.1〜100mMのNaClのイオン強度又は同等のイオン強度の水溶液である請求項5記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの構造化剤を含むラメラ粒子及び/又は非ラメラ粒子試料の粒径及び/又は粒径分布を極性溶媒中で制御する方法であって、前記粒子を高温に加熱すること、続いて冷却、好ましくは室温まで冷却することを含み、前記加熱が、冷却後に前記粒径及び/又は粒径分布の制御をもたらすのに十分な時間と温度への加熱である方法。
【請求項8】
前記極性溶媒が、水溶液である請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記粒子が、コロイドである請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記粒子が、a+b+cの総重量に対する重量で、少なくとも50%の構造形成両親媒性構成成分“a”、最大40%の少なくとも1つの構造膨張剤“b”、及び、最大20%の分散安定化ポリマー剤“c”を含む請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記加熱が、75℃から200℃の温度への加熱である請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記加熱が、粒子の平衡形態が非ラメラでない高温への加熱である請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記加熱が、粒子の平衡形態が液晶でない高温への加熱である請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記加熱が、粒子の平衡形態がL2相である温度への加熱である請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記加熱が、1分から4時間の加熱である請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ラメラ及び/又は非ラメラ粒子の前記分散が、超音波処理及び/又は押出しにより形成される請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
さらに、前記粒子を乾燥することを含む請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の方法により形成される両親媒性粒子。
【請求項19】
少なくとも1つの構造化剤を含む両親媒性粒子であって、少なくとも75%の粒子が非ラメラである両親媒性粒子。
【請求項20】
前記粒子の粒径分布が、極性溶媒中の室温における分散状態で少なくとも10日間の貯蔵に対して本質的に安定である請求項18又は19に記載の両親媒性粒子。
【請求項21】
前記粒子の粒径分布が、極性溶媒中の総両親媒性物質濃度が2%の室温における分散状態で少なくとも10日間の貯蔵に対して本質的に安定である請求項18又は19に記載の両親媒性粒子。
【請求項22】
さらに、少なくとも1つの活性因子を含む請求項18から21のいずれかに記載の両親媒性粒子。
【請求項23】
前記活性因子が、ヒト及び獣医用の薬剤及びワクチン、診断剤、植物性揮発油、植物抽出物、芳香剤、化粧剤、栄養素、並びに、栄養補助食品からなる群から選択される活性因子である請求項22記載の両親媒性粒子。
【請求項24】
前記粒子がコロイドである請求項18から23のいずれか一項に記載の両親媒性粒子。
【請求項25】
前記構造化剤が、天然脂質、合成脂質、界面活性剤及びコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つである請求項18から24のいずれか一項に記載の両親媒性粒子。
【請求項26】
前記構造化剤が、グリセロールモノオレエート(GMO)、グリセロールモノリノレエート、ジグリセロールモノオレエート(DGMO)、ジグリセロールモノリノレエート、グリセリルジオレエート、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)、フィタントリオール、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つである請求項18から25のいずれか一項に記載の両親媒性粒子。
【請求項27】
前記粒子が、さらに、少なくとも1つの脂肪酸又は脂肪酸塩を含む請求項18から26のいずれか一項に記載の両親媒性粒子。
【請求項28】
さらに、フラグメンテーション剤を含む請求項18から27のいずれか一項に記載の両親媒性粒子。
【請求項29】
前記フラグメンテーション剤が、ポリエチレンオキシドコポリマー、ポリエチレンオキシドで誘導体化された脂質、疎水的に修飾された多糖、両親媒性タンパク質、又はこれらの混合物である請求項28に記載の両親媒性粒子。
【請求項30】
グリセロールモノオレエート(GMO)、ジグリセロールモノオレエート(DGMO)、グリセロールジオレエート、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及びこれらの混合物からなる群から選択される構造化剤、並びに、さらに、ポロキサマー407、ポロキサマー188、TMGO−15、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン‐ポリエチレングリコール(5000)、ポリソルベート80、及びこれらの混合物からなる群から選択されるフラグメンテーション剤を含む請求項18から29のいずれか一項に記載の両親媒性粒子。
【請求項31】
前記粒子が、a+b+cの総重量に対する重量で、少なくとも50%の構造形成両親媒性構成成分“a”、最大40%の少なくとも1つの構造膨張剤“b”、及び、最大20%の分散安定化ポリマー剤“c”を含む請求項18から29のいずれか一項に記載の両親媒性粒子。
【請求項32】
粒子の平衡形態が、室温で非ラメラである請求項18から31のいずれか一項に記載の両親媒性粒子。
【請求項33】
請求項17から32のいずれか一項に記載の両親媒性粒子を含む乾燥粉末剤。
【請求項34】
請求項17から32のいずれか一項に記載の両親媒性粒子を含むゲル剤又はクリーム剤。
【請求項35】
請求項17から32のいずれか一項に記載の両親媒性粒子を含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23a】
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【図23b】
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【図24a】
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【図24b】
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【公表番号】特表2007−501115(P2007−501115A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522405(P2006−522405)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003387
【国際公開番号】WO2005/014162
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(505345749)カムルス エービー (17)
【Fターム(参考)】