両面パネル外壁構造
【課題】 表裏両面が外壁面となる外壁構造において、表側の外壁面および裏側の外壁面をそれぞれパネル化する。
【解決手段】 表側外壁パネル1および裏側外壁パネル2を設ける。表側外壁パネル1は、側辺が基礎6上に立てられた柱7に接合され、かつ上辺が梁8に接合される。裏側外壁パネル2は、上辺が梁8に接合される。仮支持手段17、位置決め手段15、およびパネル下端拘束手段21を設ける。仮支持手段17は、裏側外壁パネル2の上辺が梁8に接合されていない状態で、この裏側外壁パネル2を柱7または表側外壁パネル1に支持させる。位置決め手段15は、仮支持手段17による支持状態で裏側外壁パネル2の基礎6に対する水平位置を位置決めする。パネル下端拘束手段21は、裏側外壁パネル2の上辺が梁8に接合された状態でこの裏側外壁パネル2の下端の動きを拘束する。
【解決手段】 表側外壁パネル1および裏側外壁パネル2を設ける。表側外壁パネル1は、側辺が基礎6上に立てられた柱7に接合され、かつ上辺が梁8に接合される。裏側外壁パネル2は、上辺が梁8に接合される。仮支持手段17、位置決め手段15、およびパネル下端拘束手段21を設ける。仮支持手段17は、裏側外壁パネル2の上辺が梁8に接合されていない状態で、この裏側外壁パネル2を柱7または表側外壁パネル1に支持させる。位置決め手段15は、仮支持手段17による支持状態で裏側外壁パネル2の基礎6に対する水平位置を位置決めする。パネル下端拘束手段21は、裏側外壁パネル2の上辺が梁8に接合された状態でこの裏側外壁パネル2の下端の動きを拘束する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、袖壁等において、表裏両面が外壁面となり、表側の外壁面および裏側の外壁面のそれぞれを外壁パネルで構成した両面パネル外壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば図11に住宅1階部分の平面図を示すように、建物本体30の入り込み玄関30aの脇から張り出す袖壁31では、表裏両面が外壁面となっている。従来、このような外壁を建てる場合、一方の面(表面)の外壁面については、予めパネルフレームの片面に外壁面材が取付けられた外壁パネルを、基礎、柱、梁等の躯体にボルト等で固定し、もう一方の面(裏面)の外壁面については、木や金属製の下地桟を前記躯体に固定し、この下地桟に外壁面材を直接ビス等で固定していた。裏面側の外壁面を外壁パネルとしない理由は、外壁パネルとした場合、それを躯体に固定するための施工スペースがなく、施工が困難であるからである。
【特許文献1】特開平06−081426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のように裏面側の外壁面が現場施工であると、完成した外壁面の精度が現場作業者の熟練度により左右される。また、現場施工で取付けた外壁面材は、この外壁面材の外面側から挿入したビスにより下地桟に固定されるため、後でビス止め箇所の補修を行なう必要があり、その補修跡が見栄えを悪くすることがある。さらに、裏面側の外壁面が現場施工であると、現場での施工時間が長くかかるし、また重量の大きな外壁面材を現場で人力により取付けなければならず作業が重労働であることも問題である。
【0004】
上記各問題を解決するために、表裏両面が外壁面となる壁構造において、表側の外壁面および裏側の外壁面のそれぞれをパネル化することを試みた。表側の外壁パネルは、基礎上に立てられた柱に側辺を接合した後、上辺を梁に接合して吊り下げ支持するものとし、かつ裏側の外壁パネルは、前記柱または表側の外壁パネルに仮固定した後、上辺を前記梁に接合して吊り下げ支持するようにした。また、図12に示すように、基礎6と外壁パネル1との間に溝形鋼からなる土台32を設置し、この土台32で外壁パネル1の下端を下から支えるようにした。
【0005】
しかし、外壁パネル1の下端支持部が図12に示す構造であると、基礎6と土台32、および土台32と外壁パネル1の2箇所をボルト等の固着具33で固定しなければならず、その作業が面倒である。また、土台32に溝形鋼を用いるためコスト高となると共に、土台32の外側を覆うカバー等(図示せず)も大きなものが必要となり、そのことも全体コストアップにつながる。
【0006】
この発明の目的は、表裏両面が外壁面となる外壁構造において、表側の外壁面および裏側の外壁面のそれぞれをパネル化することであり、しかも施工が容易で、かつコストを低く抑えられる構造とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の両面パネル外壁構造は、表裏両面が外壁面となる外壁構造において、表側の外壁面および裏側の外壁面をそれぞれ構成する表側外壁パネルおよび裏側外壁パネルを設け、これら表側外壁パネルおよび裏側外壁パネルは、共にパネルフレームの片面に外壁面材が取付けられたものであり、前記表側外壁パネルは、側辺が基礎上に立てられた柱に接合され、かつ上辺が梁に接合されものであり、前記裏側外壁パネルは上辺が前記梁に接合され、前記裏側外壁パネルの上辺が前記梁に接合されていない状態で、この裏側外壁パネルを前記柱または前記表側外壁パネルに支持させる仮支持手段と、この仮支持手段による支持状態で前記裏側外壁パネルの前記基礎に対する水平位置を位置決めする位置決め手段と、前記裏側外壁パネルの上辺が前記梁に接合された状態でこの裏側外壁パネルの下端の動きを拘束するパネル下端拘束手段とを設けたことを特徴とする。
【0008】
表側外壁パネルおよび裏側外壁パネルは、予め工場等で組立てられる。現場では、例えば以下に示す順で施工する。まず、基礎上に柱を立て、この柱に表側外壁パネルの側辺を接合して、柱に表側外壁パネルを取付ける。次に、仮支持手段により、柱または表側外壁パネルに裏側外壁パネルを支持させる。その際、位置決め手段により、裏側外壁パネルの基礎に対する水平位置を位置決めする。この裏側外壁パネルの支持は、柱に梁が設置されるまでの仮支持である。梁が設置されると、この梁に表側外壁パネルおよび裏側外壁パネルの上辺を接合して、両外壁パネルを吊り下げ状態に支持する。さらに、パネル下端拘束手段により、裏側外壁パネルの下端の動きを拘束することで、両面パネル外壁構造が完成する。
【0009】
このように、仮支持手段により、裏側外壁パネルを柱または表側外壁パネルに仮支持させてから、後で正式に裏側外壁パネルを梁に吊り下げ状態に支持させることにより、両外壁パネル間に手等を差し入れるスペースが無くても、裏側外壁パネルを取付けることができる。また、裏側外壁パネルを柱または表側外壁パネルに仮支持する際に、位置決め手段により、裏側外壁パネルの基礎に対する水平位置を位置決めしておくことにより、裏側外壁パネルを正確な水平位置に取付けることができる。位置決め手段による位置決めだけでは、裏側外壁パネル下端の位置ずれが生じる可能性があるが、裏面側外壁パネルを梁に吊り下げ状態に支持した後、パネル下端拘束手段により、裏側外壁パネルの下端の動きを拘束することにより、上記裏側外壁パネル下端の位置ずれを防ぐことができる。
【0010】
表裏の外壁面が外壁パネルからなる構造としたことにより、完成した外壁面の精度が現場作業者の熟練度に左右されることをなくせる。後でビス止め箇所等の補修を行なう必要がなくなり、見栄えが良好である。表側外壁パネルおよび裏側外壁パネルは工場等で組立てられるので、現場での施工時間を短縮できる。組立てられた表側外壁パネルおよび裏側外壁パネルは施工時にクレーン等の重機を使って運搬および保持できるので、重量の重い外壁面材を現場で人力により取付ける必要がなくなり、現場作業が楽になる。また、この両面パネル外壁構造は、簡易な構造であり、特殊な部材を使用するものではないため、施工が容易で、かつコストを低く抑えることができる。
【0011】
この発明において、前記位置決め手段を、前記基礎上に固定されて上面に位置決め孔を有するプレートと、前記裏側外壁パネルの下端から下向きに突出して前記位置決め孔に嵌合する位置決めピンとで構成することができる。
位置決め手段を上記プレートと位置決めピンとで構成すると、簡略な構成でありながら、裏側外壁パネルの基礎に対する水平位置の位置決めが確実である。
【0012】
また、前記パネル下端拘束手段を、前記裏側外壁パネルのパネルフレームの下端に設けられた雌ねじ部材と、この雌ねじ部材に螺着され下端が前記基礎に押付けられる調整ボルトとで構成することができる。
パネル下端拘束手段を上記雌ねじ部材と調整ボルトとで構成すると、簡易な構成でありながら、裏側外壁パネルの下端の動きを確実に拘束することができる。
【0013】
さらに、前記仮支持手段を、前記柱に取付けられて上向きの切欠溝を有する仮支持金具と、前記裏側外壁パネルのパネルフレームの側辺から突出して前記仮支持金具の前記切欠溝に受けられる被支持片とで構成することができる。
仮支持手段を上記仮支持金具と被支持片とで構成すると、簡易な構成でありながら、裏側外壁パネルを柱に確実に支持させることができる。
【0014】
前記仮支持手段は、前記裏側外壁パネルに取付けられて前記表側外壁パネルのパネルフレームに係合する仮支持金物としてもよい。
仮支持手段が上記仮支持金物である場合は、簡易な構成でありながら、裏側外壁パネルを表側外壁パネルに確実に支持させることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明の両面パネル外壁構造は、表裏両面が外壁面となる外壁構造において、表側の外壁面および裏側の外壁面をそれぞれ構成する表側外壁パネルおよび裏側外壁パネルを設け、これら表側外壁パネルおよび裏側外壁パネルは、共にパネルフレームの片面に外壁面材が取付けられたものであり、前記表側外壁パネルは、側辺が基礎上に立てられた柱に接合され、かつ上辺が梁に接合され、前記裏側外壁パネルは上辺が前記梁に接合されものであり、前記裏側外壁パネルの上辺が前記梁に接合されていない状態で、この裏側外壁パネルを前記柱または前記表側外壁パネルに支持させる仮支持手段と、この仮支持手段による支持状態で前記裏側外壁パネルの前記基礎に対する水平位置を位置決めする位置決め手段と、前記裏側外壁パネルの上辺が前記梁に接合された状態でこの裏側外壁パネルの下端の動きを拘束するパネル下端拘束手段とを設けたことにより、表側の外壁面および裏側の外壁面のそれぞれをパネル化することが可能となり、しかも施工が容易で、かつコストを低く抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明の実施形態を図1ないし図6と共に説明する。この両面パネル外壁構造は、住宅等の建物における袖壁等の表裏両面が外壁面となる外壁構造に適用されるものであり、表側の外壁面および裏側の外壁面をそれぞれ構成する表側外壁パネル1および裏側外壁パネル2を備える。これら表側外壁パネル1および裏側外壁パネル2は、図4および図5に示すように、共にパネルフレーム3の片面に下地桟4を取付け、この下地桟4に外壁面材5を取付けたものである。外壁面材5は、GRC(ガラス繊維強化セメント)等からなる。パネルフレーム3は、軽量鉄骨からなる縦フレーム材3a、横フレーム材3b、および中桟3cを枠組状に組み合わせて構成されている。図4および図5は裏側外壁パネル2を示しているが、若干の違いはあるものの、基本的には表側外壁パネル1も同様の構成である。なお、表側外壁パネル1の縦フレーム材3aは溝形鋼とされ、裏側外壁パネル2の縦フレーム材3aは角パイプとされている。これらの表側外壁パネル1および裏側外壁パネル2は、工場等で組立てられる。
【0017】
図1(A)に示すように、この両面パネル外壁構造の完成状態では、基礎6上に柱7を垂直に立て、この柱7上に梁8が水平に設置される。柱7を通し柱として、柱7の側面に梁8を接合してもよい。表側外壁パネル1は、側辺を柱7に接合させ、かつ上辺を梁8に接合させることで支持される。また、裏側外壁パネル2は、仮支持手段17により柱7に対して仮支持させ、後に上辺を梁8に接合させることで支持される。
詳しくは、図2に示すように、柱7は軽量形鋼におけるリップ付きの溝形鋼からなり、上下方向の複数箇所で両側のリップ部7a間を補強板7bで連結したものである。この柱7のフランジ部7cと表側外壁パネル1のパネルフレーム縦フレーム材3aとが、ボルト10およびナット11により接合される。また、図1(A)に示すように、梁8はH形鋼からなり、この梁8の下側フランジ部8aと表側外壁パネル1および裏側外壁パネル2のパネルフレーム3とが、ボルト10およびナット(図示せず)により接合される。仮支持手段17については、後で説明する。
【0018】
柱7および表側外壁パネル1の下側には、これらを載せる台となる厚肉鋼板からなるプレート12が、基礎6の天端面上に設けられている。基礎6は、布基礎等からなる。図3に示すように、上記プレート12は、柱7を挟んで隣合う一対の表側外壁パネル1の対向する端部間に配置されており、アンカーボルト13により、柱7と共に基礎6に固定されている。
プレート12には表側外壁パネル位置決め孔14a(図1(B))が設けられ、この位置決め孔14aに、表側外壁パネル1の下端から下向きに突出する位置決めピン14bを嵌合させることで、表側外壁パネル1の水平位置が位置決めされている。位置決め孔14aを有するプレート12と位置決めピン14bとで、表側外壁パネル1の基礎6に対する水平位置を位置決めする表側外壁パネル位置決め手段14を構成している。この表側外壁パネル位置決め手段14による位置決めに代えて、アンカーボルトにより表側外壁パネル1を基礎6に固定してもよい。
また、プレート12は、裏側外壁パネル2の下方に張り出す張出部12a(図3)を有し、この張出部12aに裏側外壁パネル位置決め孔15a(図1(B))が設けられ、この位置決め孔15aに、裏側外壁パネル2の下端から下向きに突出する位置決めピン15bを嵌合させることで、裏側外壁パネル1の水平位置が位置決めされる。位置決め孔15aを有するプレート12と位置決めピン15bとで、裏側外壁パネル2の基礎6に対する水平位置を位置決めする裏側外壁パネル位置決め手段15を構成している。
【0019】
この両面パネル外壁構造には、梁8が設置されるまでの間、裏側外壁パネル2を柱7に仮支持しておくための仮支持手段17が設けられている。図6に示すように、仮支持手段17は、柱7の上端のリップ部7a側の面に取付けられた仮支持金具18と、裏側外壁パネル2のパネルフレーム3に設けた被支持片19とでなる。なお、柱7上端の仮支持金具18が取付けられる箇所は、側面視で長方形に切り欠かれた形状となっている。仮支持金具18は、平面視コ字形の金具であり、その中央部で溶接により柱7に取付けられている。仮支持金具18の両側部には、上向きの切欠溝18aがそれぞれ形成されている。この実施形態では、概略形状が上側に開くV字状で、下端部は円弧状とされている。両側部の各切欠溝18aは、隣合う一対の裏側外壁パネル2の被支持片19にそれぞれ対応する。なお、仮支持金具18の中央部には、柱7と梁8を接合する際に柱7内に手や工具を入れるための切欠部18bが形成されている。被支持片19は、前記切欠溝18aに受けられる形状のものであり、例えばボルトを軸部が露出する状態でパネルフレーム3にねじ込んだものとされている。
【0020】
また、図1(C)に示すように、裏側外壁パネル2の下端には、裏側外壁パネル2の上辺が梁8に接合された状態でこの裏側外壁パネル2の下端の動きを拘束するパネル下端拘束手段21が設けられている。パネル下端拘束手段21は、裏側外壁パネル2のパネルフレーム3の下端に設けられた雌ねじ部材22と、この雌ねじ部材22に螺着された調整ボルト23と、この調整ボルト23に螺着したロックナット24とでなる。調整ボルト23は、頭部23aを下側にして雌ねじ部材22に螺着されている。
【0021】
この両面パネル外壁構造の建て方を説明する。表側外壁パネル1および裏側外壁パネル2は、予め工場等で組立てられて、現場に搬入される。現場では、以下に示す順で施工する。まず、基礎6上に柱7を立て、この柱7に表側外壁パネル1の側辺を接合して、柱7に表側外壁パネル1を取付ける。その際、表側外壁パネル位置決め手段14により、表側外壁パネル1の基礎6に対する水平位置を位置決めする。
【0022】
次に、仮支持手段17により、柱7に裏側外壁パネル2を仮支持させる。図7はそのときの動作を示す図であり、裏側外壁パネル2を柱7よりも高く持ち上げ、柱7の仮支持金具18の切欠溝18aの上方に裏側外壁パネル2の被支持片19が位置する状態で裏側外壁パネル2を下ろすことにより、被支持片19を切欠溝18aに嵌まり込ませる。切欠溝18aは上側に開くV字状であるため、切欠溝18aに嵌まり込んだ被支持片19は切欠溝18aの斜面に沿って底部へと導かれる。この際、裏側外壁パネル位置決め手段15により、裏側外壁パネル2の基礎6に対する水平位置を位置決めする。これにより、裏側外壁パネル2が、梁8が設置されるまでの仮支持状態となる。
【0023】
梁8が設置されたなら、この梁8に表側外壁パネル1および裏側外壁パネル2の上辺を接合する。裏側外壁パネル2は梁8に吊り下げられた状態となる。このままでは、裏側外壁パネル位置決め手段15であるプレート12の位置決め孔15aと位置決めピン15bとの遊びの分だけ裏側外壁パネル2の下端が動く可能性があるため、パネル下端拘束手段21により裏側外壁パネル2の下端の動きを拘束する。具体的には、図8に示すように、頭部23aが基礎6から浮き上がった状態にある調整ボルト23を、雌ねじ部材22に対する締め込みを緩めて下側へ移動させ、ロックナット24を締め付けることで、図1(C)に示されているように、調整ボルト23の頭部23aが基礎6に接触した状態とする。最後に、隣合う表側外壁パネル1間および裏側外壁パネル2間に水密部材28(図2、図3)を装着することにより、両面パネル外壁構造が完成する。
【0024】
このように、この両面パネル外壁構造は、仮支持手段17により裏側外壁パネル2を柱7に仮支持させてから、後で正式に裏側外壁パネル2を梁8に吊り下げ状態に支持させることにより、両外壁パネル1,2間に手や工具を差し入れるスペースが無くても、裏側外壁パネル2を取付けることができる。また、裏側外壁パネル2を柱7に仮支持する際に、裏側外壁パネル位置決め手段15により、裏側外壁パネル2の基礎6に対する水平位置を位置決めしておくことにより、裏側外壁パネル2を正確な水平位置に取付けることができる。裏側外壁パネル位置決め手段15による位置決めだけでは、位置決め孔15aと位置決めピン15bとの遊びの分だけ裏側外壁パネル2の下端が動く可能性があるが、裏面側外壁パネル2を梁に吊り下げ状態に支持した後、パネル下端拘束手段21により、裏側外壁パネル2の下端の動きを拘束することにより、裏側外壁パネル2の下端の動きが拘束された安定した外壁構造となる。
【0025】
また、表裏の外壁面が外壁パネル1,2からなる構造としたことにより、完成した外壁面の精度が現場作業者の熟練度に左右されることをなくせる。後でビス止め箇所等の補修を行なう必要がなくなり、見栄えが良好である。表側外壁パネル1および裏側外壁パネル2は、工場等で組立てられるため、現場での施工時間を短縮できる。組立てられた表側外壁パネル1および裏側外壁パネル2は施工時にクレーン等の重機を使って運搬および保持できるので、重量の大きな外壁面材5を現場で人力により取付ける必要がなくなり、現場作業が楽になる。また、この両面パネル外壁構造は、簡易な構造であり、特別な部材を使用するものではないため、施工が容易で、かつコストを低く抑えることができる。
【0026】
図9および図10は、この発明の異なる実施形態を示す。この両面パネル外壁構造は、仮支持手段17が前記実施形態のものと異なる。他の構成は前記実施形態と同様である。この実施形態の仮支持手段17は、裏側外壁パネル2を前側外壁パネル1に仮支持させる構成であり、裏側外壁パネル2に取付けられて表側外壁パネル1のパネルフレーム3に係合する仮支持金物25からなる。詳しくは、仮支持金物25は、水平部25aと、その先端から上向きに延びる係合部25bとでなり、水平部25aの係合部25bとは反対側の端部で、ボルト10およびナット11により、裏側外壁パネル2のパネルフレーム3の上側横フレーム材3bに固定の取付金物26に取付けられている。仮支持金物25の係合部25bを表側外壁パネル1のパネルフレーム3の上側横フレーム材3bに係合させることにより、裏側外壁パネル2の上辺を梁8に接合するまでの間に裏側外壁パネル2が外側に倒れるのが防止される。この仮支持手段17は、前記実施形態の仮支持手段17よりも、簡素な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(A)はこの発明の実施形態にかかる両面パネル外壁構造の側面図、(B)はその一部の一断面を示す断面図、(C)はその一部の異なる断面を示す断面図である。
【図2】図1(A)のII−II断面図である。
【図3】図1(A)のIII−III断面図である。
【図4】同両面パネル外壁構造の裏側外壁パネルの正面である。
【図5】同裏側外壁パネルの側面断面図である。
【図6】同両面パネル外壁構造の一部の分解斜視図である。
【図7】同裏側外壁パネルの仮支持動作を示す説明図である。
【図8】同両面パネル外壁構造のパネル下端拘束手段の動作を示す説明図である。
【図9】この発明の異なる実施形態にかかる両面パネル外壁構造の一部の側面図である。
【図10】同両面パネル外壁構造の一部の斜視図である。
【図11】住宅1階部分の平面図である。
【図12】外壁パネルの下端支持部を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1…表側外壁パネル
2…裏面側外壁パネル
3…パネルフレーム
4…下地桟
5…外壁面材
6…基礎
7…柱
8…梁
12…プレート
14,15…位置決め手段
14a,15a…位置決め孔
14b,15b…位置決めピン
17…仮支持手段
18…仮支持金具
18a…案内溝
19…被支持片
21…パネル下端拘束手段
22…雌ねじ部材
23…調整ねじ
25…仮支持金物
【技術分野】
【0001】
この発明は、袖壁等において、表裏両面が外壁面となり、表側の外壁面および裏側の外壁面のそれぞれを外壁パネルで構成した両面パネル外壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば図11に住宅1階部分の平面図を示すように、建物本体30の入り込み玄関30aの脇から張り出す袖壁31では、表裏両面が外壁面となっている。従来、このような外壁を建てる場合、一方の面(表面)の外壁面については、予めパネルフレームの片面に外壁面材が取付けられた外壁パネルを、基礎、柱、梁等の躯体にボルト等で固定し、もう一方の面(裏面)の外壁面については、木や金属製の下地桟を前記躯体に固定し、この下地桟に外壁面材を直接ビス等で固定していた。裏面側の外壁面を外壁パネルとしない理由は、外壁パネルとした場合、それを躯体に固定するための施工スペースがなく、施工が困難であるからである。
【特許文献1】特開平06−081426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のように裏面側の外壁面が現場施工であると、完成した外壁面の精度が現場作業者の熟練度により左右される。また、現場施工で取付けた外壁面材は、この外壁面材の外面側から挿入したビスにより下地桟に固定されるため、後でビス止め箇所の補修を行なう必要があり、その補修跡が見栄えを悪くすることがある。さらに、裏面側の外壁面が現場施工であると、現場での施工時間が長くかかるし、また重量の大きな外壁面材を現場で人力により取付けなければならず作業が重労働であることも問題である。
【0004】
上記各問題を解決するために、表裏両面が外壁面となる壁構造において、表側の外壁面および裏側の外壁面のそれぞれをパネル化することを試みた。表側の外壁パネルは、基礎上に立てられた柱に側辺を接合した後、上辺を梁に接合して吊り下げ支持するものとし、かつ裏側の外壁パネルは、前記柱または表側の外壁パネルに仮固定した後、上辺を前記梁に接合して吊り下げ支持するようにした。また、図12に示すように、基礎6と外壁パネル1との間に溝形鋼からなる土台32を設置し、この土台32で外壁パネル1の下端を下から支えるようにした。
【0005】
しかし、外壁パネル1の下端支持部が図12に示す構造であると、基礎6と土台32、および土台32と外壁パネル1の2箇所をボルト等の固着具33で固定しなければならず、その作業が面倒である。また、土台32に溝形鋼を用いるためコスト高となると共に、土台32の外側を覆うカバー等(図示せず)も大きなものが必要となり、そのことも全体コストアップにつながる。
【0006】
この発明の目的は、表裏両面が外壁面となる外壁構造において、表側の外壁面および裏側の外壁面のそれぞれをパネル化することであり、しかも施工が容易で、かつコストを低く抑えられる構造とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の両面パネル外壁構造は、表裏両面が外壁面となる外壁構造において、表側の外壁面および裏側の外壁面をそれぞれ構成する表側外壁パネルおよび裏側外壁パネルを設け、これら表側外壁パネルおよび裏側外壁パネルは、共にパネルフレームの片面に外壁面材が取付けられたものであり、前記表側外壁パネルは、側辺が基礎上に立てられた柱に接合され、かつ上辺が梁に接合されものであり、前記裏側外壁パネルは上辺が前記梁に接合され、前記裏側外壁パネルの上辺が前記梁に接合されていない状態で、この裏側外壁パネルを前記柱または前記表側外壁パネルに支持させる仮支持手段と、この仮支持手段による支持状態で前記裏側外壁パネルの前記基礎に対する水平位置を位置決めする位置決め手段と、前記裏側外壁パネルの上辺が前記梁に接合された状態でこの裏側外壁パネルの下端の動きを拘束するパネル下端拘束手段とを設けたことを特徴とする。
【0008】
表側外壁パネルおよび裏側外壁パネルは、予め工場等で組立てられる。現場では、例えば以下に示す順で施工する。まず、基礎上に柱を立て、この柱に表側外壁パネルの側辺を接合して、柱に表側外壁パネルを取付ける。次に、仮支持手段により、柱または表側外壁パネルに裏側外壁パネルを支持させる。その際、位置決め手段により、裏側外壁パネルの基礎に対する水平位置を位置決めする。この裏側外壁パネルの支持は、柱に梁が設置されるまでの仮支持である。梁が設置されると、この梁に表側外壁パネルおよび裏側外壁パネルの上辺を接合して、両外壁パネルを吊り下げ状態に支持する。さらに、パネル下端拘束手段により、裏側外壁パネルの下端の動きを拘束することで、両面パネル外壁構造が完成する。
【0009】
このように、仮支持手段により、裏側外壁パネルを柱または表側外壁パネルに仮支持させてから、後で正式に裏側外壁パネルを梁に吊り下げ状態に支持させることにより、両外壁パネル間に手等を差し入れるスペースが無くても、裏側外壁パネルを取付けることができる。また、裏側外壁パネルを柱または表側外壁パネルに仮支持する際に、位置決め手段により、裏側外壁パネルの基礎に対する水平位置を位置決めしておくことにより、裏側外壁パネルを正確な水平位置に取付けることができる。位置決め手段による位置決めだけでは、裏側外壁パネル下端の位置ずれが生じる可能性があるが、裏面側外壁パネルを梁に吊り下げ状態に支持した後、パネル下端拘束手段により、裏側外壁パネルの下端の動きを拘束することにより、上記裏側外壁パネル下端の位置ずれを防ぐことができる。
【0010】
表裏の外壁面が外壁パネルからなる構造としたことにより、完成した外壁面の精度が現場作業者の熟練度に左右されることをなくせる。後でビス止め箇所等の補修を行なう必要がなくなり、見栄えが良好である。表側外壁パネルおよび裏側外壁パネルは工場等で組立てられるので、現場での施工時間を短縮できる。組立てられた表側外壁パネルおよび裏側外壁パネルは施工時にクレーン等の重機を使って運搬および保持できるので、重量の重い外壁面材を現場で人力により取付ける必要がなくなり、現場作業が楽になる。また、この両面パネル外壁構造は、簡易な構造であり、特殊な部材を使用するものではないため、施工が容易で、かつコストを低く抑えることができる。
【0011】
この発明において、前記位置決め手段を、前記基礎上に固定されて上面に位置決め孔を有するプレートと、前記裏側外壁パネルの下端から下向きに突出して前記位置決め孔に嵌合する位置決めピンとで構成することができる。
位置決め手段を上記プレートと位置決めピンとで構成すると、簡略な構成でありながら、裏側外壁パネルの基礎に対する水平位置の位置決めが確実である。
【0012】
また、前記パネル下端拘束手段を、前記裏側外壁パネルのパネルフレームの下端に設けられた雌ねじ部材と、この雌ねじ部材に螺着され下端が前記基礎に押付けられる調整ボルトとで構成することができる。
パネル下端拘束手段を上記雌ねじ部材と調整ボルトとで構成すると、簡易な構成でありながら、裏側外壁パネルの下端の動きを確実に拘束することができる。
【0013】
さらに、前記仮支持手段を、前記柱に取付けられて上向きの切欠溝を有する仮支持金具と、前記裏側外壁パネルのパネルフレームの側辺から突出して前記仮支持金具の前記切欠溝に受けられる被支持片とで構成することができる。
仮支持手段を上記仮支持金具と被支持片とで構成すると、簡易な構成でありながら、裏側外壁パネルを柱に確実に支持させることができる。
【0014】
前記仮支持手段は、前記裏側外壁パネルに取付けられて前記表側外壁パネルのパネルフレームに係合する仮支持金物としてもよい。
仮支持手段が上記仮支持金物である場合は、簡易な構成でありながら、裏側外壁パネルを表側外壁パネルに確実に支持させることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明の両面パネル外壁構造は、表裏両面が外壁面となる外壁構造において、表側の外壁面および裏側の外壁面をそれぞれ構成する表側外壁パネルおよび裏側外壁パネルを設け、これら表側外壁パネルおよび裏側外壁パネルは、共にパネルフレームの片面に外壁面材が取付けられたものであり、前記表側外壁パネルは、側辺が基礎上に立てられた柱に接合され、かつ上辺が梁に接合され、前記裏側外壁パネルは上辺が前記梁に接合されものであり、前記裏側外壁パネルの上辺が前記梁に接合されていない状態で、この裏側外壁パネルを前記柱または前記表側外壁パネルに支持させる仮支持手段と、この仮支持手段による支持状態で前記裏側外壁パネルの前記基礎に対する水平位置を位置決めする位置決め手段と、前記裏側外壁パネルの上辺が前記梁に接合された状態でこの裏側外壁パネルの下端の動きを拘束するパネル下端拘束手段とを設けたことにより、表側の外壁面および裏側の外壁面のそれぞれをパネル化することが可能となり、しかも施工が容易で、かつコストを低く抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明の実施形態を図1ないし図6と共に説明する。この両面パネル外壁構造は、住宅等の建物における袖壁等の表裏両面が外壁面となる外壁構造に適用されるものであり、表側の外壁面および裏側の外壁面をそれぞれ構成する表側外壁パネル1および裏側外壁パネル2を備える。これら表側外壁パネル1および裏側外壁パネル2は、図4および図5に示すように、共にパネルフレーム3の片面に下地桟4を取付け、この下地桟4に外壁面材5を取付けたものである。外壁面材5は、GRC(ガラス繊維強化セメント)等からなる。パネルフレーム3は、軽量鉄骨からなる縦フレーム材3a、横フレーム材3b、および中桟3cを枠組状に組み合わせて構成されている。図4および図5は裏側外壁パネル2を示しているが、若干の違いはあるものの、基本的には表側外壁パネル1も同様の構成である。なお、表側外壁パネル1の縦フレーム材3aは溝形鋼とされ、裏側外壁パネル2の縦フレーム材3aは角パイプとされている。これらの表側外壁パネル1および裏側外壁パネル2は、工場等で組立てられる。
【0017】
図1(A)に示すように、この両面パネル外壁構造の完成状態では、基礎6上に柱7を垂直に立て、この柱7上に梁8が水平に設置される。柱7を通し柱として、柱7の側面に梁8を接合してもよい。表側外壁パネル1は、側辺を柱7に接合させ、かつ上辺を梁8に接合させることで支持される。また、裏側外壁パネル2は、仮支持手段17により柱7に対して仮支持させ、後に上辺を梁8に接合させることで支持される。
詳しくは、図2に示すように、柱7は軽量形鋼におけるリップ付きの溝形鋼からなり、上下方向の複数箇所で両側のリップ部7a間を補強板7bで連結したものである。この柱7のフランジ部7cと表側外壁パネル1のパネルフレーム縦フレーム材3aとが、ボルト10およびナット11により接合される。また、図1(A)に示すように、梁8はH形鋼からなり、この梁8の下側フランジ部8aと表側外壁パネル1および裏側外壁パネル2のパネルフレーム3とが、ボルト10およびナット(図示せず)により接合される。仮支持手段17については、後で説明する。
【0018】
柱7および表側外壁パネル1の下側には、これらを載せる台となる厚肉鋼板からなるプレート12が、基礎6の天端面上に設けられている。基礎6は、布基礎等からなる。図3に示すように、上記プレート12は、柱7を挟んで隣合う一対の表側外壁パネル1の対向する端部間に配置されており、アンカーボルト13により、柱7と共に基礎6に固定されている。
プレート12には表側外壁パネル位置決め孔14a(図1(B))が設けられ、この位置決め孔14aに、表側外壁パネル1の下端から下向きに突出する位置決めピン14bを嵌合させることで、表側外壁パネル1の水平位置が位置決めされている。位置決め孔14aを有するプレート12と位置決めピン14bとで、表側外壁パネル1の基礎6に対する水平位置を位置決めする表側外壁パネル位置決め手段14を構成している。この表側外壁パネル位置決め手段14による位置決めに代えて、アンカーボルトにより表側外壁パネル1を基礎6に固定してもよい。
また、プレート12は、裏側外壁パネル2の下方に張り出す張出部12a(図3)を有し、この張出部12aに裏側外壁パネル位置決め孔15a(図1(B))が設けられ、この位置決め孔15aに、裏側外壁パネル2の下端から下向きに突出する位置決めピン15bを嵌合させることで、裏側外壁パネル1の水平位置が位置決めされる。位置決め孔15aを有するプレート12と位置決めピン15bとで、裏側外壁パネル2の基礎6に対する水平位置を位置決めする裏側外壁パネル位置決め手段15を構成している。
【0019】
この両面パネル外壁構造には、梁8が設置されるまでの間、裏側外壁パネル2を柱7に仮支持しておくための仮支持手段17が設けられている。図6に示すように、仮支持手段17は、柱7の上端のリップ部7a側の面に取付けられた仮支持金具18と、裏側外壁パネル2のパネルフレーム3に設けた被支持片19とでなる。なお、柱7上端の仮支持金具18が取付けられる箇所は、側面視で長方形に切り欠かれた形状となっている。仮支持金具18は、平面視コ字形の金具であり、その中央部で溶接により柱7に取付けられている。仮支持金具18の両側部には、上向きの切欠溝18aがそれぞれ形成されている。この実施形態では、概略形状が上側に開くV字状で、下端部は円弧状とされている。両側部の各切欠溝18aは、隣合う一対の裏側外壁パネル2の被支持片19にそれぞれ対応する。なお、仮支持金具18の中央部には、柱7と梁8を接合する際に柱7内に手や工具を入れるための切欠部18bが形成されている。被支持片19は、前記切欠溝18aに受けられる形状のものであり、例えばボルトを軸部が露出する状態でパネルフレーム3にねじ込んだものとされている。
【0020】
また、図1(C)に示すように、裏側外壁パネル2の下端には、裏側外壁パネル2の上辺が梁8に接合された状態でこの裏側外壁パネル2の下端の動きを拘束するパネル下端拘束手段21が設けられている。パネル下端拘束手段21は、裏側外壁パネル2のパネルフレーム3の下端に設けられた雌ねじ部材22と、この雌ねじ部材22に螺着された調整ボルト23と、この調整ボルト23に螺着したロックナット24とでなる。調整ボルト23は、頭部23aを下側にして雌ねじ部材22に螺着されている。
【0021】
この両面パネル外壁構造の建て方を説明する。表側外壁パネル1および裏側外壁パネル2は、予め工場等で組立てられて、現場に搬入される。現場では、以下に示す順で施工する。まず、基礎6上に柱7を立て、この柱7に表側外壁パネル1の側辺を接合して、柱7に表側外壁パネル1を取付ける。その際、表側外壁パネル位置決め手段14により、表側外壁パネル1の基礎6に対する水平位置を位置決めする。
【0022】
次に、仮支持手段17により、柱7に裏側外壁パネル2を仮支持させる。図7はそのときの動作を示す図であり、裏側外壁パネル2を柱7よりも高く持ち上げ、柱7の仮支持金具18の切欠溝18aの上方に裏側外壁パネル2の被支持片19が位置する状態で裏側外壁パネル2を下ろすことにより、被支持片19を切欠溝18aに嵌まり込ませる。切欠溝18aは上側に開くV字状であるため、切欠溝18aに嵌まり込んだ被支持片19は切欠溝18aの斜面に沿って底部へと導かれる。この際、裏側外壁パネル位置決め手段15により、裏側外壁パネル2の基礎6に対する水平位置を位置決めする。これにより、裏側外壁パネル2が、梁8が設置されるまでの仮支持状態となる。
【0023】
梁8が設置されたなら、この梁8に表側外壁パネル1および裏側外壁パネル2の上辺を接合する。裏側外壁パネル2は梁8に吊り下げられた状態となる。このままでは、裏側外壁パネル位置決め手段15であるプレート12の位置決め孔15aと位置決めピン15bとの遊びの分だけ裏側外壁パネル2の下端が動く可能性があるため、パネル下端拘束手段21により裏側外壁パネル2の下端の動きを拘束する。具体的には、図8に示すように、頭部23aが基礎6から浮き上がった状態にある調整ボルト23を、雌ねじ部材22に対する締め込みを緩めて下側へ移動させ、ロックナット24を締め付けることで、図1(C)に示されているように、調整ボルト23の頭部23aが基礎6に接触した状態とする。最後に、隣合う表側外壁パネル1間および裏側外壁パネル2間に水密部材28(図2、図3)を装着することにより、両面パネル外壁構造が完成する。
【0024】
このように、この両面パネル外壁構造は、仮支持手段17により裏側外壁パネル2を柱7に仮支持させてから、後で正式に裏側外壁パネル2を梁8に吊り下げ状態に支持させることにより、両外壁パネル1,2間に手や工具を差し入れるスペースが無くても、裏側外壁パネル2を取付けることができる。また、裏側外壁パネル2を柱7に仮支持する際に、裏側外壁パネル位置決め手段15により、裏側外壁パネル2の基礎6に対する水平位置を位置決めしておくことにより、裏側外壁パネル2を正確な水平位置に取付けることができる。裏側外壁パネル位置決め手段15による位置決めだけでは、位置決め孔15aと位置決めピン15bとの遊びの分だけ裏側外壁パネル2の下端が動く可能性があるが、裏面側外壁パネル2を梁に吊り下げ状態に支持した後、パネル下端拘束手段21により、裏側外壁パネル2の下端の動きを拘束することにより、裏側外壁パネル2の下端の動きが拘束された安定した外壁構造となる。
【0025】
また、表裏の外壁面が外壁パネル1,2からなる構造としたことにより、完成した外壁面の精度が現場作業者の熟練度に左右されることをなくせる。後でビス止め箇所等の補修を行なう必要がなくなり、見栄えが良好である。表側外壁パネル1および裏側外壁パネル2は、工場等で組立てられるため、現場での施工時間を短縮できる。組立てられた表側外壁パネル1および裏側外壁パネル2は施工時にクレーン等の重機を使って運搬および保持できるので、重量の大きな外壁面材5を現場で人力により取付ける必要がなくなり、現場作業が楽になる。また、この両面パネル外壁構造は、簡易な構造であり、特別な部材を使用するものではないため、施工が容易で、かつコストを低く抑えることができる。
【0026】
図9および図10は、この発明の異なる実施形態を示す。この両面パネル外壁構造は、仮支持手段17が前記実施形態のものと異なる。他の構成は前記実施形態と同様である。この実施形態の仮支持手段17は、裏側外壁パネル2を前側外壁パネル1に仮支持させる構成であり、裏側外壁パネル2に取付けられて表側外壁パネル1のパネルフレーム3に係合する仮支持金物25からなる。詳しくは、仮支持金物25は、水平部25aと、その先端から上向きに延びる係合部25bとでなり、水平部25aの係合部25bとは反対側の端部で、ボルト10およびナット11により、裏側外壁パネル2のパネルフレーム3の上側横フレーム材3bに固定の取付金物26に取付けられている。仮支持金物25の係合部25bを表側外壁パネル1のパネルフレーム3の上側横フレーム材3bに係合させることにより、裏側外壁パネル2の上辺を梁8に接合するまでの間に裏側外壁パネル2が外側に倒れるのが防止される。この仮支持手段17は、前記実施形態の仮支持手段17よりも、簡素な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(A)はこの発明の実施形態にかかる両面パネル外壁構造の側面図、(B)はその一部の一断面を示す断面図、(C)はその一部の異なる断面を示す断面図である。
【図2】図1(A)のII−II断面図である。
【図3】図1(A)のIII−III断面図である。
【図4】同両面パネル外壁構造の裏側外壁パネルの正面である。
【図5】同裏側外壁パネルの側面断面図である。
【図6】同両面パネル外壁構造の一部の分解斜視図である。
【図7】同裏側外壁パネルの仮支持動作を示す説明図である。
【図8】同両面パネル外壁構造のパネル下端拘束手段の動作を示す説明図である。
【図9】この発明の異なる実施形態にかかる両面パネル外壁構造の一部の側面図である。
【図10】同両面パネル外壁構造の一部の斜視図である。
【図11】住宅1階部分の平面図である。
【図12】外壁パネルの下端支持部を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1…表側外壁パネル
2…裏面側外壁パネル
3…パネルフレーム
4…下地桟
5…外壁面材
6…基礎
7…柱
8…梁
12…プレート
14,15…位置決め手段
14a,15a…位置決め孔
14b,15b…位置決めピン
17…仮支持手段
18…仮支持金具
18a…案内溝
19…被支持片
21…パネル下端拘束手段
22…雌ねじ部材
23…調整ねじ
25…仮支持金物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏両面が外壁面となる外壁構造において、表側の外壁面および裏側の外壁面をそれぞれ構成する表側外壁パネルおよび裏側外壁パネルを設け、これら表側外壁パネルおよび裏側外壁パネルは、共にパネルフレームの片面に外壁面材が取付けられたものであり、前記表側外壁パネルは、側辺が基礎上に立てられた柱に接合され、かつ上辺が梁に接合され、前記裏側外壁パネルは上辺が前記梁に接合されるものであり、前記裏側外壁パネルの上辺が前記梁に接合されていない状態で、この裏側外壁パネルを前記柱または前記表側外壁パネルに支持させる仮支持手段と、この仮支持手段による支持状態で前記裏側外壁パネルの前記基礎に対する水平位置を位置決めする位置決め手段と、前記裏側外壁パネルの上辺が前記梁に接合された状態でこの裏側外壁パネルの下端の動きを拘束するパネル下端拘束手段とを設けたことを特徴とする両面パネル外壁構造。
【請求項2】
請求項1において、前記位置決め手段は、前記基礎上に固定されて上面に位置決め孔を有するプレートと、前記裏側外壁パネルの下端から下向きに突出して前記位置決め孔に嵌合する位置決めピンとでなる両面パネル外壁構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記パネル下端拘束手段は、前記裏側外壁パネルのパネルフレームの下端に設けられた雌ねじ部材と、この雌ねじ部材に螺着され下端が前記基礎に押付けられる調整ボルトとでなる両面パネル外壁構造。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記仮支持手段は、前記柱に取付けられて上向きの切欠溝を有する仮支持金具と、前記裏側外壁パネルのパネルフレームの側辺から突出して前記仮支持金具の前記切欠溝に受けられる被支持片とでなる両面パネル外壁構造。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記仮支持手段は、前記裏側外壁パネルに取付けられて前記表側外壁パネルのパネルフレームに係合する仮支持金物である両面パネル外壁構造。
【請求項1】
表裏両面が外壁面となる外壁構造において、表側の外壁面および裏側の外壁面をそれぞれ構成する表側外壁パネルおよび裏側外壁パネルを設け、これら表側外壁パネルおよび裏側外壁パネルは、共にパネルフレームの片面に外壁面材が取付けられたものであり、前記表側外壁パネルは、側辺が基礎上に立てられた柱に接合され、かつ上辺が梁に接合され、前記裏側外壁パネルは上辺が前記梁に接合されるものであり、前記裏側外壁パネルの上辺が前記梁に接合されていない状態で、この裏側外壁パネルを前記柱または前記表側外壁パネルに支持させる仮支持手段と、この仮支持手段による支持状態で前記裏側外壁パネルの前記基礎に対する水平位置を位置決めする位置決め手段と、前記裏側外壁パネルの上辺が前記梁に接合された状態でこの裏側外壁パネルの下端の動きを拘束するパネル下端拘束手段とを設けたことを特徴とする両面パネル外壁構造。
【請求項2】
請求項1において、前記位置決め手段は、前記基礎上に固定されて上面に位置決め孔を有するプレートと、前記裏側外壁パネルの下端から下向きに突出して前記位置決め孔に嵌合する位置決めピンとでなる両面パネル外壁構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記パネル下端拘束手段は、前記裏側外壁パネルのパネルフレームの下端に設けられた雌ねじ部材と、この雌ねじ部材に螺着され下端が前記基礎に押付けられる調整ボルトとでなる両面パネル外壁構造。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記仮支持手段は、前記柱に取付けられて上向きの切欠溝を有する仮支持金具と、前記裏側外壁パネルのパネルフレームの側辺から突出して前記仮支持金具の前記切欠溝に受けられる被支持片とでなる両面パネル外壁構造。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記仮支持手段は、前記裏側外壁パネルに取付けられて前記表側外壁パネルのパネルフレームに係合する仮支持金物である両面パネル外壁構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−221689(P2009−221689A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65271(P2008−65271)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】
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