説明

両面画像形成装置

【課題】記録材返送に伴う光沢ムラを生じにくくする。
【解決手段】画像形成部にて片面に画像が形成され加熱定着された記録材の他面にも画像を形成すべく記録材を再び画像形成部へ返送する返送路17と,返送路17において記録材の幅方向に関して部分的に設けられた搬送ローラ対74,75とを備え,返送路17が記録材の搬送方向に流れる気流の流路を構成している両面画像形成装置であって,返送路17内において記録材の幅方向に関し搬送ローラ対74,75が設けられていない部位に,搬送ローラ対74,75が設けられていない部位における気流を乱すための気流乱し部材79を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電子写真技術を用いて用紙等,シート状の記録材(以下単に用紙ともいう)の両面にトナー像を形成することができるプリンター、ファクシミリ、複写機等の両面画像形成装置に関する。特に,記録材返送に伴うグロス(光沢)ムラ対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来,画像形成部にて片面に画像が形成され加熱定着された記録材の他面にも画像を形成すべく当該記録材を再び画像形成部へ返送する返送路を備えた両面画像形成装置が知られている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−244357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記返送路を備えた両面画像形成装置にあっては,当該返送路を,通気路(例えば排気等の気流の流路)として構成することが装置全体の小型化を図る上で望ましい。
返送路を通気路として構成する場合には,気流の流れを確保すべく,当該返送路に配置される記録材搬送ローラ対は,記録材の幅方向に関して部分的に設けて,搬送ローラ対が設けられている部位以外の部位において気流の流れを確保する必要がある。
しかしながら,このような構成とすると,次のような問題生じることが分かった。
すなわち,画像形成部にて片面に画像が形成され加熱定着された後に返送路を搬送ローラ対で搬送される記録材は,搬送ローラ対と接触する(ローラ対で挟まれて搬送される)部分はローラに熱が奪われて低温となるが,搬送ローラ対と接触しない部分は高温状態に維持される。
このため,記録材における低温部分と高温部分とで,記録材表面に定着されたトナー像すなわち画像に光沢ムラが生じるということが分かった。
本発明の目的は,以上のような問題を解決し,記録材返送に伴う光沢ムラを生じにくくすることができる両面画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために本発明の両面画像形成装置は,画像形成部にて片面に画像が形成され加熱定着された記録材の他面にも画像を形成すべく当該記録材を再び画像形成部へ返送する返送路と,この返送路において記録材の幅方向に関して部分的に設けられた搬送ローラ対とを備え,前記返送路が前記記録材の搬送方向に流れる気流の流路を構成している両面画像形成装置であって,
前記返送路内において前記記録材の幅方向に関し前記搬送ローラ対が設けられていない部位に,当該搬送ローラ対が設けられていない部位における前記気流を乱すための気流乱し部材を設けたことを特徴とする。
このような構成によれば,前記返送路内において前記記録材の幅方向に関し前記搬送ローラ対が設けられていない部位を通過しようとする気流が,気流乱し部材によって乱されることで,記録材における,前記搬送ローラ対が設けられていない部位に対応する部分すなわち搬送ローラ対と接触しない部分に対して,気流が強く(あるいは相対的に多量に)接触することとなる。
したがって,記録材における搬送ローラ対と接触しない部分も低温下が促されることとなり,結果として,光沢ムラが生じにくくなる。
望ましくは,前記気流乱し部材を,前記記録材に接触する,対をなさないローラで構成する。
このように構成すると,記録材における搬送ローラ対と接触しない部分が,上記気流が乱されることによる低温化促進に加え,前記対をなさいローラとの接触によっても低温化が促進されることとなる。
したがって,光沢ムラが一層生じにくくなる。
なお,前記気流乱し部材を,対をなさないローラによってではなく,ローラ対で構成すると,返送路の通気路としての機能自体が著しく阻害されることとなるので,望ましくない。
また,望ましくは,前記搬送ローラ対のうちの一方のローラが,記録材をガイドするガイド部材に回転可能に設けられたローラである場合には,前記ガイド部材における前記ローラの両側に,通気窓を設ける。
このように構成すると,記録材における搬送ローラ対と接触しない部分が,上記気流が乱されることによる低温化促進に加え,前記通気窓を通る気流によっても冷却されることとなる。
したがって,光沢ムラが一層生じにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
以下,本発明に係る両面画像形成装置の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は,本発明に係る両面画像形成装置の一実施の形態の内部構造を示す概略正面図である。
この両面画像形成装置は,A4サイズの用紙(レターサイズ含む)を縦送りしてその両面にフルカラー画像を形成することのできるカラー画像形成装置であり,ケース11と,このケース11内に収容された,像担持体ユニット20と,露光手段としての露光ユニット30と,現像手段としての現像器(現像装置)40と,中間転写体ユニット50と,定着手段としての定着ユニット(定着器)60とを備えている。
ケース11には装置本体10の図示しないフレームが設けられており,このフレームに各ユニット等が取り付けられている。
【0006】
像担持体ユニット20は,外周面に感光層を有する感光体21と,この感光体21の外周面を一様に帯電させる帯電手段としてのコロナ帯電器(スコロトロン帯電器)22とを有しており,このコロナ帯電器22により一様に帯電させられた感光体21の外周面を露光ユニット30からのレーザー光Lで選択的に露光して静電潜像を形成し,この静電潜像に現像器40で現像剤であるトナーを付与して可視像(トナー像)とし,このトナー像を中間転写体ユニット50の中間転写ベルト51に一次転写部T1で一次転写し,さらに,二次転写部T2で,転写対象である用紙に二次転写させるようになっている。
【0007】
ケース11内には,上記二次転写部T2により片面に画像が形成された用紙をケース11上面の用紙排出部(排紙トレイ部)15に向けて搬送する搬送路16と,この搬送路16により用紙排出部15に向けて搬送された用紙をスイッチバックさせて他面にも画像を形成すべく前記画像形成部(この場合二次転写部T2)に向けて返送する返送路17とが設けられている。
70は,装置本体に対して着脱可能に構成された両面ユニットであり,この両面ユニット70が装着されることによって前記返送路17が完成される。
ケース11の下部には,複数枚の用紙を積層保持する給紙カセット18が設けられており,その用紙を一枚ずつ上記二次転写部T2に向けて給送する給紙ローラ19が設けられている。
【0008】
上記両面ユニット70の下方には,手差し給紙部80をなすマルチパーパーストレイ100が設けられており,このマルチパーパーストレイ100にセットされた用紙を一枚ずつ給送する給紙ローラ90が装置本体に設けられている。
【0009】
現像器40はロータリ現像器(ロータリ現像装置)であり,回転体本体41に対して,イエロートナー,シアントナー,マゼンタトナー,ブラックトナーが収容された各色用の現像器カートリッジ(図示せず)が着脱可能に装着されている。回転体本体41が矢印R方向に90度ピッチで回転することによって,各現像器カートリッジが備えている現像ローラ(図示せず)を感光体21に選択的に当接させ,感光体21の表面を選択的に現像することが可能となっている。
【0010】
露光ユニット30は,上記レーザー光Lを感光体21に向けて照射する。
中間転写体ユニット50は,図示しないユニットフレームと,このフレームで回転可能に支持された駆動ローラ54と複数本の従動ローラに掛け回されて張架された前記中間転写ベルト51とを備えており,中間転写ベルト51が図示矢印方向に循環駆動される。感光体21と中間転写ベルト51との当接部において前記一次転写部T1が形成されており,駆動ローラと本体側に設けられた二次転写ローラ10bとの圧接部において前記二次転写部T2が形成される。
二次転写ローラ10bは,前記駆動ローラ54に対して(したがって中間転写ベルト51に対して)接離可能であり,接触した際に二次転写部T2が形成される。
したがって,カラー画像を形成する際には,二次転写ローラ10bが中間転写ベルト51から離間している状態で中間転写ベルト51上において複数色のトナー像が重ね合わされてカラー画像が形成され,その後,二次転写ローラ10bが中間転写ベルト51に当接し,その当接部(二次転写部T2)に用紙が供給されることによって中間転写ベルト51上から用紙上にカラー画像(トナー像)が転写(二次転写)されることとなる。
トナー像が転写された用紙は,定着ユニット60を通ることでトナー像が加熱溶融定着され,上記排紙トレイ部15に向けて排出される。
【0011】
画像形成部への用紙の給送は,上述した給紙カセット18,マルチパーパーストレイ100のうちの1つから選択的になされる。
通常,給紙カセット18には,普通紙等が定常的にセットされるが,マルチパーパーストレイ100には,必要に応じて,種々の用紙がセットされる。すなわち,マルチパーパーストレイ100には,ユーザーの必要に応じて,普通紙,厚紙,葉書,封筒,OHPシート,その他の記録材が適宜セットされる。
【0012】
装置本体10の側面には,軸12でカバー(この実施の形態では側面カバー)13が開閉可能に取り付けられており,この側面カバー13に対して上記手差し給紙部80が設けられている(図4参照)。
手差し給紙部80は,給紙ローラ90と,この給紙ローラ90により給送されるべき用紙を支持するマルチパーパーストレイ100とを有している。
【0013】
図2は両面ユニット70を示す図で,(a)は正面図,(b)は右側面図,(c)は左側面図,(d)は平面図,(e)は底面図,(f)は斜視図である。また,図3(a)は図2(c)の拡大図,図3(b)は図3(a)におけるb−b断面図,図4(a)は図3(a)の紙ガイド73を取り除いた状態の図,図4(b)は図4(a)におけるb−b断面図である。
両面ユニット70は,図1,図2に示すように,前述した装置本体10に設けられた返送路17に連接されて返送路を完成させる返送路17aと,この返送路17aを形成する紙ガイド71,72,73と,返送路17aに設けられた紙搬送駆動ローラ74(図1,図3(b)参照)と,この紙搬送駆動ローラ74に当接して回転する従動ローラ75と,紙搬送駆動ローラ74を,駆動機構76を介して駆動するモータ77(図1参照)と,これら各部を覆うケース78とを有している。駆動ローラ74と従動ローラ75とで,記録材を返送する際の搬送ローラ対が構成されている。
【0014】
図2(a)に示すように、駆動機構76はモータ77で図示しない伝達機構を介して紙搬送駆動ローラ74を駆動する。駆動機構76は,紙搬送駆動ローラ74と同軸上にギヤ76eを有し、このギヤ76eと噛み合い従動するギヤ76dと同軸上に固定されたタイミングプーリ76cは、タイミングベルト72bを介して従動するタイミングプーリ76aを駆動する。タイミングプーリ76aと同軸上に固定されたギヤ76bは本体10の排紙ローラを駆動するギヤ(図示せず)に連結される。
従動ローラ75は紙ガイド73に回転可能に設けられている。
以上のような両面ユニット70は,ユーザーによって選択的に装置本体10に着脱可能に取り付けられる。
【0015】
図1に示すように,返送路17の上部には,返送路17に連通する排気ダクトDが設けられており,この排気ダクトDの背面側には,図示しない排気ファンが設けられている。
したがって,返送路17は,記録材の搬送方向に流れる気流(この場合排気)の流路を構成しており,図2〜図4に示すように,その流路Aを確保すべく,上記搬送ローラ対74,75は返送路17において記録材の幅方向に関して部分的に設けられている。
また,図2〜図4に示すように,上記紙ガイド71,72,73における記録材の案内面には,記録材の搬送方向に伸びていて記録材を案内するリブ71a,72a,73aが設けられており,これらリブ71a,72a,73aは,上記気流の整流板としての役割も果たす。
【0016】
上述したように,このような返送路17を備えた両面画像形成装置にあっては,画像形成部にて片面に画像が形成され定着部60で加熱定着された後に返送路17を搬送ローラ対74,75で搬送される記録材は,搬送ローラ対74,75と接触する(ローラ対74,75で挟まれて搬送される)部分はローラ74,75に熱が奪われて低温となるが,仮に何らの方策も講じないとすると,搬送ローラ対74,75と接触しない部分は高温状態に維持される。
このため,記録材における低温部分と高温部分とで,記録材表面に定着されたトナー像すなわち画像に光沢ムラが生じる。
【0017】
そこで,この実施の形態では,図4に示すように,返送路17内において記録材の幅方向に関し搬送ローラ対74,75が設けられていない部位に,搬送ローラ対74,75が設けられていない部位における気流を乱すための気流乱し部材79を設けてある。
この気流乱し部材79は,上記リブ71a,72a,73aと直交し,気流の流れを邪魔する邪魔板で構成してある。
この実施の形態では,気流乱し部材79は,2対の搬送ローラ対の間に設けてあるが,搬送ローラ対の外側にも設けることができる。
また,気流乱し部材79は,図5に示すように,記録材に接触する,対をなさないローラ79a(この場合駆動ローラのみ)で構成することもできる。
なお,気流乱し部材を,対をなさないローラ79aによってではなく,ローラ対(上記ローラ対74,75と同様なローラ対)で構成すると,返送路17の通気路としての機能自体が著しく阻害されることとなるので,望ましくない。
【0018】
図2,図3に示すように,前記搬送ローラ対74,75のうちの一方のローラ75は,記録材をガイドするガイド部材73に回転可能に設けられたローラであり,図3に示すように,ガイド部材73における前記ローラ75の両側には,通気窓73bが設けられている。
【0019】
以上のような両面画像形成装置は,画像形成部にて片面に画像が形成され加熱定着された記録材の他面にも画像を形成すべく当該記録材を再び画像形成部へ返送する返送路17と,この返送路17において記録材の幅方向に関して部分的に設けられた搬送ローラ対74,75とを備え,返送路17が記録材の搬送方向に流れる気流Aの流路を構成している両面画像形成装置であって,返送路17内において記録材の幅方向に関し搬送ローラ対74,75が設けられていない部位に,当該搬送ローラ対74,75が設けられていない部位における気流Aを乱すための気流乱し部材79を設けた構成となっているので,返送路17内において記録材の幅方向に関し搬送ローラ対74,75が設けられていない部位を通過しようとする気流が,気流乱し部材79によって乱されることで,記録材における,搬送ローラ対74,75が設けられていない部位に対応する部分すなわち搬送ローラ対74,75と接触しない部分に対して,気流が強く(あるいは相対的に多量に)接触することとなる。
したがって,記録材における搬送ローラ対と接触しない部分も低温下が促されることとなり,結果として,光沢ムラが生じにくくなる。
気流乱し部材を,記録材に接触する,対をなさないローラ79aで構成すると,記録材における搬送ローラ対と接触しない部分が,上記気流が乱されることによる低温化促進に加え,対をなさいローラ79aとの接触によっても低温化が促進されることとなる。
したがって,光沢ムラが一層生じにくくなる。
また,搬送ローラ対74,75のうちの一方のローラ75は,記録材をガイドするガイド部材73に回転可能に設けられたローラでり,ガイド部材73におけるローラ75の両側に,通気窓73bを設けた構成としてあるので,記録材における搬送ローラ対74,75と接触しない部分が,上記気流が乱されることによる低温化促進に加え,前記通気窓73bを通る気流によっても冷却されることとなる。
したがって,光沢ムラが一層生じにくくなる。
【0020】
以上,本発明の実施の形態について説明したが,本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく,本発明の要旨の範囲内において適宜変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る両面画像形成装置の一実施の形態の内部構造を示す概略正面図。
【図2】両面ユニットを示す図で,(a)は正面図,(b)は右側面図,(c)は左側面図,(d)は平面図,(e)は底面図,(f)は斜視図。
【図3】(a)は図2(c)の拡大図,(b)は図(a)におけるb−b断面図。
【図4】(a)は図3(a)の紙ガイド73を取り除いた状態の図,(b)は図(a)におけるb−b断面図。
【図5】他の実施の形態を示す図。
【符号の説明】
【0022】
17:返送路,73:ガイド部材,73b:通気窓74,75:搬送ローラ対,79,79a:気流乱し部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成部にて片面に画像が形成され加熱定着された記録材の他面にも画像を形成すべく当該記録材を再び画像形成部へ返送する返送路と,この返送路において記録材の幅方向に関して部分的に設けられた搬送ローラ対とを備え,前記返送路が前記記録材の搬送方向に流れる気流の流路を構成している両面画像形成装置であって,
前記返送路内において前記記録材の幅方向に関し前記搬送ローラ対が設けられていない部位に,当該搬送ローラ対が設けられていない部位における前記気流を乱すための気流乱し部材を設けたことを特徴とする両面画像形成装置。
【請求項2】
前記気流乱し部材を,前記記録材に接触する,対をなさないローラとしたことを特徴とする請求項1記載の両面画像形成装置。
【請求項3】
前記搬送ローラ対のうちの一方のローラは,記録材をガイドするガイド部材に回転可能に設けられたローラであり,前記ガイド部材における前記ローラの両側には,通気窓が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の両面画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−208620(P2006−208620A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19070(P2005−19070)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】