説明

両面粘着テープ

【課題】必要な粘着力が確保されると共に薄肉化が促進され、且つ、取り扱い易く実装作業性を低下させることのない両面粘着シートを提供する。
【解決手段】ポリエチレンテレフタレートからなる基材シート1の表裏両側主面に、複数の円柱形をなす凹部11a、11bが、それぞれ、表側の凹部11aと裏側の凹部011bとが、基材シート1の面方向において表側の凹部11aとは異なる位置に互い違いの配置で配設され、これらの凹部11a、11bが配設された両主面には、アクリル樹脂からなる粘着剤層2a、2bがそれぞれ被設され、更に、これら粘着剤層2a、2bを覆って剥離紙3a、3bがそれぞれ設置され、各粘着剤層2a、2bが層厚t2 に薄層化されても、必要な粘着剤量が確保される構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型化が要求される精密実装用の両面粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
薄型化が要求される液晶表示モジュール等の精密機器の実装においては、部材同士を接着固定する両面粘着シートに対しても薄肉化が厳しく要求される。両面粘着シートは、通常、基材シートの両主面にそれぞれ粘着剤層が被設されてなるため、両面粘着シートの肉厚を薄くするには、基材シートよりも両主面に設けられる粘着剤層を薄くすることがより有効である。しかし、粘着剤層を薄くすると、粘着剤の絶対量が少なくなり、接着力が低下するという問題が発生する。
【0003】
そこで、必要な粘着剤の量を確保して薄肉化を促進できる両面粘着シートとして、基材シートに特許文献1等に示されるように貫通孔を穿設したものや、特許文献2に示されるように、基材シートを省略したものが提案されている。
【特許文献1】特開2005−290089号公報
【特許文献2】特開2006− 22256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然るに、前者の基材シートに貫通孔を設けた両面粘着シートの場合は基材シートの剛性の低下により、後者の基材シートを省略した両面粘着シートの場合は過度に変形し易くなるため、共に実装作業性を低下させて作業工数を増加させる原因となる。
【0005】
本発明の目的は、粘着剤の必要量が確保されて所期の粘着力が得られると共に薄肉化が促進され、且つ、取り扱い易く実装作業性を低下させることのない両面粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の両面粘着シートは、基材シートの両主面に粘着剤層が被設されてなる両面粘着シートであって、前記基材シートの少なくとも一方の主面に凹凸が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の両面粘着シートによれば、基材シートの粘着剤を被着する表面に凹部を形成したから、基材シートの表面上に積層される粘着剤層の層厚を薄くしても、凹部内に粘着剤が充填保持されることにより所期の粘着力を得るために必要な粘着剤量が確保される。また、必要な量の粘着剤を保持する凹部は基材シートを貫通する孔でないから、実装作業において必要とされる基材シートの剛性も確保される。その結果、薄肉化が促進されると共に必要な粘着力が確保され、且つ、取り扱い易く実装作業性を低下させることのない両面粘着シートが得られる。
【0008】
本発明の両面粘着シートにおいては、前記基材シートの両主面に凹凸が形成され、一方の主面の凹部が他方の主面の凹部に重ならない位置に配設されている構成とすることが好ましく、これにより、両面粘着シートに必要な剛性が充分に確保される。
【0009】
また、本発明の両面粘着シートにおいては、凹部が半球状に形成され、その配設されている主面に対する面積占有率が43%〜87%に設定されている構成とすることが好ましく、これにより、必要な粘着力が充分に確保されるとともに、両面粘着シートに必要な剛性も充分に確保される。
【0010】
さらに、本発明の両面粘着シートにおいては、前記凹部が断面が矩形をなし互いに平行に凹設された複数の溝であることが好ましく、これにより、湾曲面の同士の場合でも柔軟に対応して充分な粘着力で接合することができる。
【0011】
またさらに、本発明の両面粘着シートにおいては、前記凹部が角錐台に形成されていることが好ましく、これにより、より一層充分な粘着力を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態としての両面粘着シートを示す斜視図で、図2はその断面構造を示す模式的部分拡大断面図、図3はそのうちの一主要部材を示す平面図である。
【0013】
図1に示されるように、本実施形態の両面粘着シートは、基材シート1を挟んでその両主面にそれぞれ粘着剤層2a、2bが被設され、これら各粘着剤層2a、2bにそれぞれ剥離紙3a、3bが被覆されてなる。
【0014】
基材シート1の材料としては、ポリ塩化ビニール(PVC)、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリエチレンテレフタレート(PET)等の種々の樹脂材料が好適に用いられる。また、その厚さt1 は、30〜300μmが通常であり、この範囲内で用途に応じて最適に設定される。
【0015】
粘着剤層2a、2bの材料は、所望の粘着力を得ることができれば特に限定されず、例えば、ゴム系、アクリル系、ビニールエーテル系、ウレタン系、シリコーン系等の材料から、用途に応じて好適に選択される。これらのうちでも、アクリル系粘着剤は、対候性、透明性に優れ、広範な用途に使用できる。アクリル系粘着剤としては、エマルジョン型、溶剤型、ホットメルト型等の種類があるが、これらのうちでも、エマルジョン型が安全面、品質面、コスト面においてより好ましい。
【0016】
粘着剤層2a、2bの厚さt2 は、3〜100μm程度が通常であり、そのうちでも、10〜50μm程度が好ましく、その範囲内で用途に応じて最適に設定される。
【0017】
本実施形態の両面粘着シートは、液晶表示モジュール等の精密機器の実装用であるために薄肉化が厳しく要求されており、したがって、基材シートとして、厚さt1 が80μmのポリエチレンテレフタレートからなるシートを用い、粘着剤層2a、2bとしては、エマルジョン型アクリル系粘着剤を用い、その厚さt2 は13μmに設定されている。
【0018】
ここで、本実施形態の両面粘着シートでは、図2に示されるように、基材シート1の両主面に、複数の円柱状の凹部11が所定の配置でそれぞれ形成されている。各凹部11の大きさは、直径Dが60μmで、深さHが50μmに設定されている。
【0019】
そして、各凹部11は、図3に示されるように、配設されている。すなわち、基材シート1の一方の主面(これを表側主面とする)には、凹部11aが千鳥格子の配置で配設され、その裏側の主面には、同様の千鳥格子の配置ではあるが、凹部11bが表側の凹部11aに重ならない配置で、つまり基材シート1の面方向において表側の凹部11aとは異なる位置に互い違いの配置で、配設されている。
【0020】
この場合の凹部11a、11bの各主面における面積占有率Pは、
20%≦P≦39%
に設定されることが好ましい。これは、図4(a)に示した配設構成の面積占有率Pmin は、
Pmin=πa2/b2=πa2/(4a)2=π/16≒0.196
で、これ以下の場合は、凹部11内に充填保持される粘着剤の量が不足して必要な粘着力が確保されない虞があり、図4(b)に示した配設構成の面積占有率Pmax は、
Pmax=πa2/b2=πa2/8a2=π/8≒0.393
で、これ以上の場合は、表側と裏側の各凹部11a、11bが重なり、基材シート1に極薄肉となる部分が生じるか或いは各凹部11a、11b同士が貫通してしまい、基材シート1の剛性が極度に低下するからである。
【0021】
両粘着剤層2a、2bに被着される剥離紙3a、3bの材質としては、紙又は樹脂が好適であり、紙の場合は、粘着剤層2a、2bに接触させる表面をポリエチレン等の樹脂材料でラミネート処理する。また、樹脂材料としては、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等が好適である。
【0022】
以上のように、本実施形態の両面粘着シートは、基材シート1の表裏両側の主面それぞれに、円柱形の凹部11a、11bを、表側と裏側とで互いに重ならないように千鳥格子の配置で、面積占有率を20%より大きく39%より小さい範囲内に設定して配設したから、粘着剤層2a、2bの層厚が13μm程度に薄層化されても、粘着剤が凹部11a、11b内に充填されているために所期の粘着力を得るのに必要な粘着剤の量が充分に確保される。また、凹部11a、11bを、表側と裏側とで互いに重ならないように千鳥格子の配置で配設したから、凹部11a、11bを設けることによる基材シート1の剛性の低下が有効に抑制され、また、凹部11a、11bを表裏両主面に設けても両面粘着シート全体の剛性の均一性が保たれる。その結果、必要な粘着力が確保されると共に薄肉化が促進され、且つ、必要な剛性が確保されているために取り扱い易く実装作業性を低下させることのない両面粘着シートが得られる。
【0023】
なお、図5(a)、(b)に示すように、円柱形の凹部11c、11dを、表側と裏側とで互いに重なるように配設してもよい。この場合、凹部11c、11dの深さHは基材シート1の厚さt1 に対し、
H<(t1)/2
に制限されるが、面積占有率は上記実施形態の最大面積占有率Pmax よりも大きく確保することが可能である。したがって、この両面粘着シートは、全面にわたり均等により強力な粘着力が必要とされる用途により好適である。
【0024】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、図6(a)、(b)及び図7に基づき説明する。なお、以下の実施形態においては、上記第1実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0025】
本実施形態の両面粘着シートは、基材シート4に設ける複数の凹部41を、断面が矩形をなす溝状に形成した点で、上記実施形態と構成が異なっている。
【0026】
基材シート4の表裏両側の主面それぞれに、複数の断面が同じ矩形をなす溝状凹部(以下、矩形溝という)41a、41bが互いに平行に等間隔で凹設されている。そして、本実施形態の場合も、上記実施形態と同様に、基材シート4の表側主面に設けられる複数の矩形溝41aと、裏側主面に設けられる矩形溝41bとは、互いに重ならない配置で互い違いに配設されている。
【0027】
各矩形溝41a、41bの大きさやその配設密度は、両面粘着シートの用途等に応じて最適に設定されるべきものであり、本実施形態の両面粘着シートでは、厚さt1 が100μmの基材シートに、深さHが35μmで幅Wが50μmの溝を間隔Lが70μmの密度で配設してある。
【0028】
以上のように構成された本実施形態の両面粘着シートは、湾曲面同士の接合に好適に用いられる。この場合、両面粘着シートは、各矩形溝41a、41bの延在方向を湾曲面の周方向とは直角方向の幅方向に平行に延在させて配置される。矩形溝41a、41bの間隔L及び溝の幅Wと深さHの各寸法は、接合作業に際して両面粘着シートを湾曲面に柔軟に沿わせて容易に配置できるように、湾曲面の曲率に応じて最適に設定される。
【0029】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について、図7に基づき説明する。
本実施形態の両面粘着シートでは、基板シート5に設ける複数の凹部51が、角錐台に形成されている。その他の構成は第1実施形態等と同様である。
【0030】
すなわち、図2示した第1実施形態の円柱形凹部11a、11bと同様に、基材シート5の表裏両側の主面にそれぞれ、複数の角錐台形凹部51a、51bが、千鳥格子の配置で互いに重ならない位置に互い違いに配設されている。そして、各角錐台形凹部51a、51bの深さHは、基材シートの厚さt1 の1/2に設定されている。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0031】
上述のように構成された両面粘着シートを製造する際は、まず、基材シート5を厚さ方向に2等分に分割した構造の半分割基材シート5a、5bを製作し、それら半分割基材シート5a、5bを貼り合わせることにより、開口511が底面512よりも小さい凹部51a、51bを備える本実施形態の両面粘着シートも、容易に製作することができる。
【0032】
以上のように、本実施形態の両面粘着シートは、基材シート5の表裏両側の主面に開口511が底面512よりも小さい角錐台形凹部51a、51bが配設されているから、被接着部材を強制剥離する際に粘着剤層が引き伸ばされる際の抵抗力がより大きく作用する。その結果、充分に大きい粘着力が確保されると共に薄肉化が促進され、且つ、必要な剛性が確保されているために取り扱い易く実装作業性を低下させることのない両面粘着シートが得られる。
【0033】
なお、本発明は、上記第1乃至第3実施形態に限定されるものではない。
例えば、基材シートに設ける複数の凹部は、上記実施形態のように同じ形を基材シートの表裏両側の主面に規則的に配設するのではなく、図8に示すように、基材シート6の片側主面にだけ凹部61a、61bを配設し、それらの位置や形状は被接着面7の形状に応じて設定してもよい。すなわち、基材シートに設ける凹部の配設構成は、両面粘着シートの用途や被接着面の形状等の諸条件に応じて最適に設定されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態としての両面粘着シートを示す斜視図である。
【図2】上記両面粘着シートの断面構造を部分的に拡大して示した模式的部分拡大断面図である。
【図3】上記両面粘着シートにおける一主要部材としての基材シートを示した平面図である。
【図4】上記両面粘着シートにおける主要構成要素である凹部の配置と面積占有率の関係を示す説明図で、(a)は最小面積占有率の配置を、(b)は最大面積占有率の配置を、それぞれ示している。
【図5】(a)は上記第1実施形態の変形例を示す部分平面図で、(b)はそのB−B線断面図である。
【図6】(a)は本発明の第2実施形態としての両面粘着シートを示す部分平面図で、(b)はそのB−B線断面図である。
【図7】(a)は本発明の第3実施形態としての両面粘着シートを示す部分平面図で、(b)はそのB−B線断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態としての両面粘着シートを示す部分平面図である。
【符号の説明】
【0035】
1、4、5、6 基材シート
11、11a、11b
11c、11d
41a、41b
51a、51b
61a、61b 凹部
2a、2b 粘着剤層
3a、3b 剥離紙
7 被接着面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの両主面に粘着剤層が被設されてなる両面粘着シートであって、
前記基材シートの少なくとも一方の主面に凹凸が形成されていることを特徴とする両面粘着シート。
【請求項2】
前記基材シートの両主面に凹凸が形成され、一方の主面の凹部が他方の主面の凹部に重ならない位置に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の両面粘着シート。
【請求項3】
前記凹部は、円柱形に形成され、配設されている主面における面積占有率が20%〜39%に設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の両面粘着シート。
【請求項4】
前記凹部は、断面が矩形をなし互いに平行に凹設された複数の溝であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の両面粘着シート。
【請求項5】
前記凹部は、角錐台に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の両面粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−262172(P2007−262172A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86984(P2006−86984)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】