説明

中国薬草抽出物

【課題】本発明は、防風、疾藜子、委陵菜、川木通、懐慶地黄、甘草、赤芍、白鮮皮、淡竹葉および荊芥穂を含む混合物の凍結乾燥煎じ汁から、抽出して得られる、アトピー性疾患、非アトピー性湿疹または乾癬の処置に適した物質を提供する。
【解決手段】アトピー性疾患、非アトピー性湿疹または乾癬の処置に適した物質で、これは、下記の中国薬草を含む混合物の凍結乾燥煎じ汁から抽出され得る:
防風、疾藜子、委陵菜、川木通、懐慶地黄、甘草、赤芍、白鮮皮、淡竹葉および荊芥穂、
この物質は、該凍結乾燥煎じ汁を水溶液に希釈し、ブルタール、エタノールおよび水の比が4:1:1の溶媒混合物を用いて、10時間 Whatman 2cm x 55cm 3MM セルロースストリップのクロマトグラフィーにかけると、Rf値が 0.00 - 0.100、0.167 - 0.300、0.400 - 0.533、0.700 - 0.833 または 0.900 - 0.967 の範囲にある凍結乾燥煎じ汁中に存在する1種またはそれ以上の成分を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝統的な中国薬草およびそれを含有する医薬組成物に関し、この組成物は、アトピー性疾患の処置、特にアトピー湿疹、および非アトピー性湿疹および乾癬などの他の皮膚疾患の処置に有用である。
【0002】
中国薬草なる用語は、伝統的医術を行っている者が用いるいかなる薬草をも意味し、中国産に限られるものでないと理解されるべきである。
【背景技術】
【0003】
伝統的中国医師は、欧米とまったく異なる解剖および診断系を用いて、疾患を処置する。処方される療法は常に複数の中国薬草からなっており、それは服用のために伝統的な煎じる方法、すなわち水で薬草を煮る事により製造される。薬草は取り除かれ、液が患者に適切に経口、非経口または局所投与すべく用いられる。
【0004】
この種の療法でなされる処方には、十種以上の薬草を要することがあり、伝統的中国医術では、このすべての薬草がバランスのとれた処方をつくるために必要とされている。処方は、疾患の種々の証および症状を処置する際に様々な機能をもたらす薬草のヒエラルキーからなるバランスのとれた全体であるとみられる。
【0005】
特定のヒトの疾患に受け入れられる臨床効果を有し、同時に毒性が低い薬草の検証は長年、観察と試行錯誤でなされてきた。ある症例においては、伝統的な中国薬草の処方は、西洋医学が適切に対処できなかった疾患を効果的に治療できる。
【0006】
複数の中国薬草の使用に適応するとみられる疾患は、あいまいで複雑な病変がある疾患である。典型例はアトピー性湿疹であり、多くの種々のメディエータ、そのいくつかのみが知られている、により引き起こされ、維持される皮膚の慢性炎症が存在する。あるものは、抗原−抗体反応に関する。他の多くは疑われているが、はっきりしていない。単一の治療剤、例えば、プロスタグランジンなどの特別の炎症メディエータと相互作用を起こす非ステロイド抗炎症剤は、重いアトピー性湿疹に効かない。他方、コルチコステロイドは、多様な薬力学的作用を有し、湿疹に有効である。それ故に、重いアトピー性湿疹の治療の処置は、おそらく細胞および体液内で免疫過程に関係するであろう多くの病理的変化を同時に攻撃することを要する。コルチコステロイドおよびいくつかの免疫抑制剤は、かかる攻撃に要する広い活性領域を有しているが、その毒性のために使用は限られている。湿疹の治療に知られている伝統的中国薬草療法は、コルチコステロイドと免疫抑制剤の必要とする活性を有し、毒性がない。
【0007】
下記の薬草およびそのピンイン(Pin yin)等価物またはその薬物学に名称があがっているもの:防風(Radix Lebebouriella)、疾藜子(Fructus Tribuli)、委陵菜(Herba Potentilla Chinensis)、川木通(Caulis Clematis armandii)、懐慶地黄(Radix Rehmannia)、甘草(Radix Glycyrrhiza)、赤芍(Radix Paeonia rubra)、白鮮皮(Cortex Dictamni radicis)、淡竹葉(Herba Lopatheri)および荊芥穂(Spika Schizonepetae)のいずれかより選択された一つとの中国薬草の処方は、アトピー性湿疹および乾癬を効果的に処置するのに用いられて来た。アトピー性湿疹の小児におけるかかる処方の臨床効果は、シーハン等(Sheehan et al)により British Journal of Dermatorogy (1992) 126 pp179-184に、成人についてもシーハン等が The Lancet (1992) July 4th pp13-17に、記載している。アトピー性湿疹および他の皮膚炎症疾患に使用するこれら10種の薬草の抽出物の特定の製法は、GB−A−2254783に記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の10種の薬草の煎じ汁は有効であることが知られているが、複数の薬草を含む複合処方の使用は高価であり、それゆえに、もし効力および安全性を損なわないのであれば、処方を単純化することが望まれる。また、処方を、中国から輸入するよりイギリスまたはヨーロッパで産する薬草に限るのが、望ましい。伝統的な中国医学の処方における活性原理を確認するため、多くの試みがなされている。しかし、湿疹の場合、薬草からつくられた分画または純物質における臨床効力を確認するために用いることのできる有益な動物またはin vitroモデルがないので、困難である。
【0009】
しかし、ここにおいて、アトピー性湿疹および他のアトピー性疾患の臨床効力を予測できるようなin vitro検定法が開発され、それにより本発明者らは、上記の10種の薬草の凍結乾燥煎じ汁(以下、PSE222という)中の活性成分を検出することができた。
【0010】
伝統的な中国の学識は、複数の薬草を必要とすることを述べているが、このin vitro法の使用およびin vivo臨床試験による確認は、望ましい臨床作用がこの10種の薬草のサブセットおよびその中での個々の成分により再現されることを示している。さらに、この方法により、PSE222の中でアトピーの状態を悪化せしめることがあり、薬学的使用の抽出物から除かれるのが望ましい成分を確認できる。
【0011】
効力に関するin vitro試験は、アトピー性疾患および特にアトピー性湿疹において、皮膚細胞およびヒト末梢血からの単核球が細胞表面マーカー抗体CD23を発現すること、およびCD23の発現は湿疹の成功的な処置においては阻害されるか、減少していることに基づいている。(参照 Takigawa et al, Clin. Exp. Immunol. (1991) 84 pp275-282)。CD23発現もサイトカイン インターロイキン4(IL4)にさらされることによりヒト単核球におけるin vitroで誘発され得、そして上記Takigawa記載のin vitroの状態と平行して、この誘発がアトピー性疾患に有用と知られている化合物により阻害される。したがって、これらの観察は簡単なin vitro検定の基礎を提供し、そこではヒト末梢血からつくられた単核球がIL4および試験対象の活性薬剤と同時に接触するようにされる。CD23発現の量は、CD23に対する標識モノクローナル抗体を用いて測定され、いかなる作用も試験物質を生理食塩水または薬草のプラセボ製剤で置き換えた対照と比較したCD23発現の阻害率として示される。このin vitro試験におけるCD23の有意な阻害が臨床効力の予測になるということは、アトピー性湿疹に対し成功裡に臨床的に用いられている上記10種の薬草から製造された抽出物PSE222が検定CD23発現の50から60%の阻害を示すという事実により明らかにされる。
【0012】
上記の検定を用い、本発明者らは、一般的にアトピー性疾患に、および非アトピー性湿疹および乾癬などの特定の皮膚疾患の処置に対する臨床使用に適したPSE222中の成分を確定した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第一点では、アトピー性疾患、非アトピー性湿疹または乾癬の処置に適した物質を提供し、これは、下記中国薬草を含む混合物の凍結乾燥煎じ汁から抽出される。
防風
疾藜子
委陵菜
川木通
懐慶地黄
甘草
赤芍
白鮮皮
淡竹葉
荊芥穂
【0014】
この物質は、この凍結乾燥煎じ汁を水に溶かし、ブタノール、エタノールおよび水の4:1:1比率の溶媒混合物を用いて、10時間、Whatman 2cm x 55cm 3MM セルロースストリップのクロマトグラフィーに、かけると、Rf値が 0.00 - 0.100、0.167 - 0.300、0.400 - 0.533、0.700 - 0.833 または 0.900 - 0.967 の範囲にある1またはそれ以上の成分を含む。
【0015】
望ましい物質は、Rf値が 0.00 - 0.100 にある凍結乾燥煎じ汁に存在する1またはそれ以上の成分を含む。
【0016】
溶媒先端が大体30cmに達した後にセルロースストリップを水で抽出すると、上記範囲のRfを大略有する水抽出成分は、IL4でin vitro処理したヒト単核球でのCD23抗原の有意な減少をもたらす。セルロースストリップをその後エタノールで抽出すると、0.700 - 0.833 または 0.900 - 0.967 の範囲のRf値を大略有する成分のメタノール抽出物がin vitroでのCD23発現の有意な減少をもたらす。
【0017】
さらに、そして驚くべきことに、セルロースストリップの水抽出および続くメタノール抽出の後に、Rf値が0.067 - 0.333 および 0.533 - 0.700 の範囲にある成分のメタノール抽出物は、CD23検定において対照に比してCD23抗原の発現を増進あるいは増加する。アトピー性または非アトピー性湿疹または他のアトピー性疾患に対する製剤における”増進”効力の存在は明らかに望ましくなく、増進される臨床効果はその除去において期待される。有意な量の”増進”効果がヘキサンなどの非極性溶媒で処理したPSE222の抽出または上記10種の薬草の他の調製により除去され得る。
【0018】
従って、本発明の第二の点として、アトピー性湿疹、非アトピー性湿疹または乾癬の処置のための物質が提供され、それは、ヘキサンまたは他の非極性溶媒で抽出され得る成分が除去された上記10種の中国薬草を含む煎じ汁すなわち抽出混合物からなる。このように処理された煎じ汁すなわち抽出物は、その潜在的臨床効力の指標である、上記in vitro検定におけるヒト単核球のCD23発現を有意に阻害することを示す。
【0019】
上記10種からの個々の薬草の煎じ汁について、in vitroCD23発現を阻害するその効力が試験され、そしてこれは優れた臨床効力を有すると予測される薬草のサブセットを示唆する。
【0020】
本発明の第三点では、アトピー性疾患、非アトピー性湿疹または乾癬の処置のための、中国薬草の下記組み合わせの1またはそれ以上の煎じ汁すなわち抽出物からなる物質を提供する。
(a)赤芍
甘草
懐慶地黄
(b)白鮮皮
赤芍
甘草
懐慶地黄
防風
疾藜子
または
(c)赤芍
甘草
荊芥穂
これらは、実質的に他の中国薬草を含まない。望ましくは、この煎じ汁すなわち抽出物はヘキサンまたは他の非極性溶媒で抽出される成分が除去されるように処理される。上記(a)および(c)で特定される薬草の組み合わせは、このすべての薬草がヨーロッパで生育可能であるという利点を有する。
【0021】
本発明の第四点では、アトピー性疾患、非アトピー性湿疹または乾癬の処置のための、白鮮皮、赤芍、懐慶地黄、甘草または荊芥穂の1またはそれ以上の煎じ汁すなわち抽出物からなり、実質的に他の中国薬草を含まない物質を提供する。さらに、望ましくは、これらの抽出物すなわち煎じ汁は、ヘキサンなどの非極性溶媒での抽出に供するのが好ましい。
【0022】
商業的規模でのPSE222の活性成分の生産は、凍結乾燥煎じ汁を繊維性セルロースに接触さすことによりなされ、市販使用に適した品質については、上記ブタノール/エタノール/水の混合物またはブタノール/IMS/水の比率4:1:1の混合物などの適当な溶媒と混合して、バルクおよび不活性物質が除かれる。混合物の遠心分離で沈殿が得られ、これを乾燥および水と混合する前に数回、上記溶媒混合物で再抽出し、医薬製剤の製造のための活性成分を抽出する。 本発明の第一、第二、第三および第四点の物質は、上記商業的方法で製造しようが、しなかろうが、適当な薬学的基材または希釈剤、その大部分は既知のものであるが、と混合することにより医薬組成物として適切に製造される。一般的にはアトピー性疾患、特定的にはアトピー性湿疹または非アトピー性湿疹または乾癬の処置に適した組成物は、経口、局所、非経口投与のために製剤され得る。経口用製剤は、単位用量形態、例えば、錠剤、粉末または顆粒としてつくられ、飲用する液剤でもあり得る。
【0023】
上記in vitro検定は、アトピー性湿疹および地理的または植物学的起源に関係のない皮膚炎に対して臨床的に有効であろう化合物または製剤の指標として用い得ることが評価されるであろう。
【0024】
本発明の第五点では、アトピー性湿疹または皮膚炎に対する化合物または製剤の臨床活性を表示する方法を提供する。それは次の工程を含む。
(a) 末梢血単核球をin vitroで、インターロイキン4(IL4)および効力試験をする化合物または製剤を同時にあるいは順次に添加し、これらと共にインキュベートし、
(b) この単核球における細胞表面マーカーCD23の発現を測定し、
(c) 試験化合物または製剤の存在または不存在における単核球のIL4誘導CD23発現の程度を比較して、工程(b)で得た測定値をアトピー性湿疹または皮膚炎に対する該化合物または製剤の潜在的臨床効力の指標として用いる。
【0025】
25%以上のCD23の阻害は、統計学的に有意であり、臨床的に有用であろう化合物および製剤を示す。
【0026】
下記の実施例および図面を引用して、本発明を説明する。
【実施例】
【0027】
実施例1
以下の薬草の全重量38.8gを、水300ml中で1時間半煎じた:−
防風
疾藜子
委陵菜
川木通
懐慶地黄
甘草
赤芍
白鮮皮
淡竹葉
荊芥穂
【0028】
薬草を除去し、煎じ汁を沸騰させることにより最終量50mlまで濃縮し、次いで凍結乾燥した。凍結乾燥抽出物PSE222中に、約5gの薬草から抽出した1gの乾燥抽出物が水中に含まれる。
【0029】
アトピー性湿疹に対する既知の効果がない“プラセボ”薬草の煎じ汁を、上記と同じ方法で製造した。
【0030】
PSE222およびプラセボ煎じ汁の活性を、下記のように行ったCD23阻害検定で試験した。
【0031】
血液をボランティアから採血し、ヘパリン処理し、フィコール勾配で分離し、末梢血単核細胞(単核球)を単離した。次いで、単核球を一晩、IL4添加RPMIで、PSE222またはプラセボ製剤存在下または非存在下に一晩培養した。その後、単核球を洗浄し、単核球抗原CD14およびCD23に対するフルオレッセイン標識モノクローナル抗体を使用して2重染色した。存在する場合、単核球の存在を確認するCD14は有用なマーカーである。フルオレッセインのレベルを、FACScan分析を使用して測定し、単核球によるCD23発現のレベルの表示を得た。
【0032】
結果は図1aからdに示す。図1aおよび1cに見られるように、PSE222は、アトピー性湿疹患者(1a)および正常人(1c)の単核球の両方でIL4誘発のCD23発現を阻害した。更に、効果は用量依存的であり、PSE222およびプラセボ処置の間に統計的に有意な差異(P<0.001)があった。図1bおよび1dは、約25から30%の統計的に有意なCD23の阻害が、アトピー性湿疹の患者由来の単核球で、0.125mg/mlほど低いPSE222濃度で起こることを確認する。正常患者由来の単核球の場合、PSE222濃度が0.25mg/mlになるまで統計的に有意な阻害は起こらなかった。
【0033】
上記結果を基本にして、25から30%の間のCD23発現の阻害パーセントを、別の試験製剤の臨床的活性を評価および予測する基準として使用する。
【0034】
重症アトピー性湿疹の患者で行った臨床試験において、PSE222製剤では、2/3から3/4の患者で湿疹の重症度が減少したが、プラセボでは減少しなかった。この結果は統計的に有意である(P=0.01)。
【0035】
実施例2
表1に列記した個々の薬草の煎じ汁を実施例1の記載の方法により製造し、乾燥抽出物を各薬草について製造した。各抽出物の1mg量(5mgの生薬草と同等およびPSE222製剤と同等の濃度まで希釈)を、また、実施例1の記載のようにin vitroでのCD23発現阻害について試験した。結果を下記表1に示し、示した各値は5回の実験の平均である。
【0036】
【表1】

【0037】
表Iに列記の薬草(c)から(l)のあるサブセットについての臨床効果を試験し、結果を表IIに示す。
【表2】

【0038】
薬草(e)、甘草について、成分は、局所投与した場合にある臨床活性があることが知られているが、ステロイド様副作用のため(例えば、それは電解質障害物である)、単独で、経口で多量を投与できない。
【0039】
表Iおよび表IIに記載の結果は、in vitroでのCD23阻害は、アトピー性湿疹における臨床効果を非常に予測することを確認する。
実施例3
【0040】
PSE222 75mgをRPMI1640インキュベーション培地に添加し、最終量10mlにし、37℃で時々撹拌しながらインキュベートし、遠心して細かい物および他の破片を除去した。得られた溶液の1:10希釈500μlをWhatman 3MM 2cm×55cmセルロースストリップに掛けた。ストリップの充填末端を、4:4:1の比率のブタノール/エタノール/水の中に置き、溶媒を毛細管現象により10時間動かし、その時間の後、溶媒先端は約30cm動いた。ストリップを一晩乾燥させ、次いで2×1cm片に切った。これらの切片を、各々20μl/cmの水で溶出し、溶出液を蒸発乾固し、RPMI1640インキュベーション培地500μlに再懸濁し、CD23検定を試験した。全29フラクションを製造し、図2は、各および完全PSE222およびプラセボ薬草のCD23阻害活性を示す。溶媒先端に対応するストリップ30をCD23発現の内部対照として使用した。
【0041】
図2から見ることができるように、阻害活性のピークは、特にフラクションA0(基点)および、次いでフラクション1、3、6、7、8、14、15、21、24および29で見られた(フラクション番号は基点からのcmに対応)。これらのフラクションは、Rf値0.00、0.033、0.100、0.200、0.233、0.267、0.467、0.500、0.700、0.833および0.967にそれぞれ対応する。
【0042】
上記のように2×1cm片を水で抽出し溶出液を試験後、切片を乾燥させ、次いで20μl/cm2のメタノールで溶出した。溶出物を再び蒸発乾固し、CD23検定のためにRPMI1640インキュベーション培地500μlに再懸濁した。メタノール抽出に続く各フラクションCD23阻害活性のレベルを図3に示す。Rf値0.833、0.900および0.967に対応する25、27および29に阻害活性の明白なピークが見られた。
【0043】
図2および3に示す活性フラクションの組成は、アトピー性湿疹および他のアトピー性疾患および乾癬の処置のための医薬組成物への使用に好適である。
【0044】
興味深いことに、上記のように、水および続くメタノール抽出後、Rf範囲それぞれ0.067から0.300および0.533から0.700に対応するフラクション2から9および16から21は、CD23検定で試験した場合、阻害よりむしろ著しくCD23発現を促進した。
【0045】
実施例4
実施例1に記載のように製造したPSE222の溶液をヘキサンで抽出した。ヘキサンでフラクションを上記のように蒸発乾固し、再懸濁し、CD23検定で試験した。ヘキサン抽出物は、著しくCD23発現を対照よりも増加させた。しかしながら、ヘキサン抽出PSE222の続く水抽出は、CD23発現の予期された阻害を示した。結果を図4に示す。
【0046】
本実施例は、可能な医薬組成物から望ましくない成分を除去するために非極性溶媒でのPSE222の10種の薬草の抽出が有用であることを確認する。
【0047】
実施例5
実施例1に記載のような最終粉末凍結乾燥抽出物1gを、繊維状セルロース10gとよく混合した。シグマセルロース#6663が好適なグレードである。4:4:1の割合のブタノール:工業用メチル化スピリット:水(BIW)の混合物70mlをセルロース混合物に添加し、10分撹拌した。混合物を遠心した(5分、6,000rpm)。沈殿をBIW30mlに再懸濁し、再遠心した。この操作を繰り返し、沈殿を真空オーブンで60−70℃で乾燥した。
【0048】
次いで、乾燥セルロース混合物を蒸留水に再懸濁し、10分撹拌し、遠心した。次いで、沈殿を更に3用量の水で洗浄し、遠心し、上清をプールした。合わせた上清を蒸発乾固し、茶色固体約20mgを得た。
【0049】
この物質は、賦形剤と調剤し、カプセルに満たし、錠剤に成形するかまたは薬学的に許容可能な溶媒に溶解した場合、重症アトピー性湿疹の患者の処置に好適である。上記実施例は、商業的規模でのPSE222の活性成分の薬学的製剤の製造法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1aは、アトピー性湿疹の患者からの単核球を用いて、PSE222の検定に使用する試験物質(●)およびプラセボ薬草の混合物(○)の濃度に対するCD14+23+単核球の百分率のプロットである。図1bは、図1aと同じデータを示し、CD23発現の阻害百分率をヒストグラムとしてy軸方向に示す。斜線棒グラフはPSE222を、白棒グラフはプラセボ対照を示す。図1cは、正常人からの単核球のCD23発現におけるPSE222の効果を示す、図1aと同様のプロットである。図1dは、図1cと同じデータを、図1bと同様のヒストグラムで示す。
【図2】図2は、水でセルロースクロマトグラフィーストリップから抽出した30フラクションのそれぞれのヒト単核球におけるin vitroでのCD23発現の阻害パーセントを示す。
【図3】図3は、メタノールでセルロースクロマトグラフィーストリップから抽出した30フラクションのそれぞれのヒト単核球におけるin vitroでのCD23発現の阻害パーセントを示す。
【図4】図4は、PSE222のヘキサン抽出物のin vitroでのCD23発現における効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の中国薬草:
防風
疾藜子
委陵菜
川木通
懐慶地黄
甘草
赤芍
白鮮皮
淡竹葉
荊芥穂
を含む混合物の凍結乾燥煎じ汁から抽出でき、凍結乾燥煎じ汁を水性溶液で希釈し、ブタノール、エタノールおよび水の4:1:1比率の溶媒混合物を用いて、10時間、Whatman 2cm×55cm 3MMセルロースストリップのクロマトグラフィーにかけた場合、Rf値が0.00から0.100、0.167から0.300、0.400から0.533、0.700から0.833または0.900から0.967の範囲にある凍結乾燥煎じ汁に存在する1種またはそれ以上の成分を含む物質である、アトピー性疾患、非アトピー性湿疹または乾癬の処置に好適な物質。
【請求項2】
Rf値が0.00から0.100の範囲にある凍結乾燥煎じ汁に存在する1種またはそれ以上の成分を含む、請求項1記載の物質。
【請求項3】
クロマトグラフィーストリップから水で抽出され得るRf値が0.00から0.100、0.167から0.300、0.400から0.533、0.700から0.833または0.900から0.967の範囲である1種またはそれ以上の成分を含む、請求項1記載の物質。
【請求項4】
クロマトグラフィーストリップから水で抽出され得るRf値が0.700から0.833または0.900から0.967の範囲である1種またはそれ以上の成分を含む、請求項1または3に記載の物質。
【請求項5】
凍結乾燥煎じ汁が、ヘキサンまたは他の非極性溶媒で抽出可能な成分を除去したものである、請求項1から4のいずれかに記載の物質。
【請求項6】
クロマトグラフィーストリップからRf値0.00から0.100、0.167から0.300、0.400から0.533、0.700から0.833または0.900から0.967の範囲である成分がインターロイキン4で刺激したヒト単核球上のCD23抗原のin vitro発現を阻害する、請求項1から5のいずれかに記載の物質。
【請求項7】
物質がアトピー性または非アトピー性湿疹の処置に好適である、請求項1から6のいずれかに記載の物質。
【請求項8】
アトピー性疾患、非アトピー性湿疹または乾癬の処置用医薬を製造するための請求項1から7のいずれかに記載の物質の使用。
【請求項9】
医薬がアトピー性または非アトピー性湿疹の処置用である、請求項8記載の使用。
【請求項10】
請求項1から7のいずれかに記載の物質および薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む、アトピー性疾患、非アトピー性湿疹または乾癬の処置のための医薬組成物。
【請求項11】
経口、非経口または局所投与のために調剤された、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
中国薬草:
防風
疾藜子
委陵菜
川木通
懐慶地黄
甘草
赤芍
白鮮皮
淡竹葉
荊芥穂
の混合物の煎じ汁または抽出物を含み、ヘキサンまたは他の非極性溶媒で抽出可能な成分を除去したものである、アトピー性湿疹、非アトピー性湿疹または乾癬の処置用物質。
【請求項13】
実質的に他の中国薬草不存在下で、
中国薬草:
白鮮皮
赤芍
懐慶地黄
荊芥穂
甘草
の1種またはそれ以上の煎じ汁または抽出物を含む、アトピー性疾患、非アトピー性湿疹または乾癬の処置用物質。
【請求項14】
実質的に他の中国薬草不存在下で、中国薬草:
(a) 赤芍
甘草
懐慶地黄
(b) 白鮮皮
赤芍
甘草
懐慶地黄
防風
疾藜子
または
(c) 赤芍
甘草
荊芥穂
の1種またはそれ以上の煎じ汁または抽出物を含む、アトピー性疾患、非アトピー性湿疹または乾癬の処置用物質。
【請求項15】
ヘキサンまたは他の非極性溶媒で抽出可能な成分を除去したものである、請求項13または14のいずれかに記載の物質。
【請求項16】
インターロイキン4で刺激したヒト単核球上のCD23抗原のin vitro発現を阻害する、請求項13から15のいずれかに記載の物質。
【請求項17】
アトピー性疾患、非アトピー性湿疹または乾癬の処置用医薬を製造するための請求項12から16のいずれかに記載の物質の使用。
【請求項18】
請求項12から16のいずれかに記載の物質および薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む、アトピー性疾患、非アトピー性湿疹または乾癬の処置のための医薬組成物。
【請求項19】
経口、非経口または局所投与のために調剤された、請求項18記載の医薬組成物。
【請求項20】
(a)末梢血単核球の、in vitroでの、インターロイキン4(IL4)およびその活性を試験すべき化合物または製剤の同時または連続した添加およびそれと共にインキュベート、
(b)単核球の細胞表面マーカーCD23の発現の測定、および
(c)化合物または製剤の存在下または非存在下での単核球のIL−4 CD23発現レベルと比較した、工程(b)で得られた測定値の、化合物または製剤のアトピー性湿疹または皮膚炎に対する潜在的臨床効力の指標としての使用
の工程を含む、アトピー性湿疹または皮膚炎に対する化合物または製剤の臨床活性を示唆する方法。
【請求項21】
単核球のCD23発現レベルを、CD23に対する標識モノクローナル抗体を使用して測定する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
細胞表面マーカーCD14の発現をまたはCD14に対する標識モノクローナル抗体を使用して測定する、請求項20または21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
末梢血単核球がヒトのものである、請求項20から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
CD23発現阻害の25%またはそれ以上を、アトピー性湿疹または皮膚炎に対する化合物または製剤の臨床的活性の指標として取る、請求項20から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
請求項20から24のいずれかに記載の方法で臨床的に活性であると測定された化合物または製剤および薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む、アトピー性湿疹または皮膚炎の処置用医薬組成物。
【請求項26】
(a)凍結乾燥煎じ汁を繊維状セルロースと接触させ、本混合物を、無機溶媒および25%以下の水を含む溶媒混合物で、望ましくは1回以上抽出する
(b)凍結乾燥煎じ汁/繊維状セルロース混合物を水で抽出する
(c)水抽出物を、医薬組成物に成形するために蒸発乾固する
工程を含む、請求項1記載のアトピー性疾患、非アトピー性湿疹または乾癬の処置に好適な物質の製造方法。
【請求項27】
工程(b)の前に凍結乾燥煎じ汁/繊維状セルロース混合物をヘキサンで抽出する、請求項26記載の方法。
【請求項28】
溶媒混合物がブタノール、IMSおよび水を4:1:1の比で含む、請求項26または27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
工程(a)において、抽出溶媒添加後に、混合物を遠心し、沈殿を更なる抽出のために単離する、請求項26から28のいずれかに記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−106774(P2007−106774A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−2521(P2007−2521)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【分割の表示】特願平8−502912の分割
【原出願日】平成7年6月23日(1995.6.23)
【出願人】(506410671)フィトテック・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】PHYTOTECH LTD.
【Fターム(参考)】