中心孔を取り囲んだ多孔ノズルによる噴射装置を使用した地盤改良工法および地盤改良装置
【課題】高強度の改良体造成を可能とする地盤改良工法を提供する。
【解決手段】ボーリングマシンにて所定の深度まで削孔し、噴射装置の中心孔の周囲に配置された多孔ノズルからセメントスラリーを高圧(40MPa、毎分200リットル)にて噴射する。中心孔からは、地盤硬化材としてモルタルもしくは現場で発生した泥土を吐出(1MPa、毎分200リットル)する。ボーリングマシンにて噴射装置を回転もしくは揺動させながら計画速度で引き上げる。
【解決手段】ボーリングマシンにて所定の深度まで削孔し、噴射装置の中心孔の周囲に配置された多孔ノズルからセメントスラリーを高圧(40MPa、毎分200リットル)にて噴射する。中心孔からは、地盤硬化材としてモルタルもしくは現場で発生した泥土を吐出(1MPa、毎分200リットル)する。ボーリングマシンにて噴射装置を回転もしくは揺動させながら計画速度で引き上げる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良工法および地盤改良装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、核ノズルとこれを囲む囲周ノズルによって構成される重合噴射ノズルにより噴射エネルギーを強化する地盤改良工法が開示されている。従来の高圧噴射工法は、中心孔より水セメント比100パーセント程度の地盤硬化材を高圧(20〜40MPa)にて噴射し、その外側に圧縮空気を沿わせることにより、噴射エネルギーの到達距離を伸張させて、地盤を切削・混合することにより直径2.0〜5.0メートル程度の円柱状の改良体を造成する。噴射装置は、中心孔として直径2.0〜4.0mm程度のノズルとその周囲に圧縮空気を噴射するスリットを設置した重合ノズルを使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−56477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の高圧噴射工法に使用される地盤改良体の造成装置は、中心孔より地盤硬化材を高圧(20〜40MPa)にて噴射し、その周囲に圧縮空気を沿わせた構造になっている。
中心孔より高圧にて地盤硬化材を噴射し、地盤を切削・混合するため、中心孔の大きさは2.0から4.0mmとい小口径のノズルを使用していることから、硬化材も粒径の小さなセメントスラリーに限定されるために、改良体強度は砂質土の場合にてσ28=1.0〜3.0MN/m2に限定され、高強度の改良体造成は不可能である。ここで、σ28は、地盤改良体造成の28日後に測定した圧縮強度である。また、Mはメガを意味し、N/m2は、物理量としてはPa(パスカル)と同じである。本明細書では、改良体強度を表すのに、MN/m2を用い、噴射圧力を表すのに、MPaを用いる。
また、高圧噴射工法により発生する泥土は産業廃棄物であり、社会情勢から削減や再利用の促進が望まれている。
本発明が解決しようとする課題は、高強度の改良体造成を可能とする地盤改良工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく本発明に係る地盤改良工法においては、中心孔周辺に多孔ノズル(中心孔周辺の多孔ノズル数が4から12個)を設置した噴射装置をロッド下端に取り付け、ボーリングマシンにて所定の深度まで削孔する。噴射装置が計画深度に到達すると、多孔ノズルよりセメントスラリーを高圧(20〜40MPa)にて噴射する(噴射総量10〜200リットル/分)。中心孔からはモルタルもしくは現場で発生した泥土を吐出する(吐出圧力1〜5MPa、吐出量50〜300リットル/分)。ボーリングマシンにて噴射装置を回転、もしくは揺動させながら計画速度で引き上げる。計画範囲にて噴射装置を引き上げるとロッド全体を引き抜き、ボーリングマシンを次の施工箇所に移動させる。
【発明の効果】
【0006】
中心孔の周囲の多孔ノズルから高圧噴流体を噴射させることにより、各孔からの噴射エネルギーが拡散することなく遠方まで到達する。したがって、単独孔からの噴射と比較すると小さな動力にて地盤を切削・混合できる。
【0007】
中心孔から吐出する地盤硬化材は、周囲の多孔ノズルからの高圧噴流体により発生する負圧にて、搬送できる。したがって、中心孔にてノズル径の制限がなくなり、硬化材としてモルタルや流動化材等を使用できる。これにより、高強度の改良体造成が可能となった。
【0008】
また、中心孔から吐出する地盤硬化材は、ノズル径の制限がないことから、現場にて発生する泥土も再利用が可能である。現場にて発生する泥土を再利用することで、産業廃棄物の搬出量の削減ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明に係る地盤改良工法を示す図である。図1(a)は、削孔段階を示す。図1(b)は、造成段階を示す。図1(c)は、造成完了段階を示す。
【図2】図2は、本発明に係る地盤改良工法に用いる地盤改良装置の全体像を示す図である。
【図3】図3は、中心孔を取り囲んだ多孔ノズルの形状を示す図である。
【図4】図4は、本発明に係る工法と、在来技術とにおける改良体強度及び排泥発生量を比較する表である。
【図5】図5は、本発明に係る工法と、特許文献1の先行技術とにおける噴射装置の構造、使用材料、使用機械を比較する表である。
【図6】図6は、中心孔を取り囲んだ多孔ノズルの形状を示すべく、比較的低圧噴射する様子を近くからみた図面代用写真である。
【図7】図7は、中心孔を取り囲んだ多孔ノズルから高圧噴射する様子を近くから見た図面代用写真である。
【図8】図8は、中心孔を取り囲んだ多孔ノズルからの高圧噴射により遠くまでエネルギーを到達させる地上実験の様子を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る工法の実施形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明に係る地盤改良工法を示す図である。図1(a)は、削孔段階を示す。削孔段階にあっては、噴射装置3を下端に設けたロッド2をボーリングマシン8により所定の深度まで削孔する。図1(b)は、造成段階を示す。ロッド2の下端に設けた噴射装置3が計画深度に達したところで、削孔をやめて、多孔ノズル4からセメントスラリー6を高圧にて噴射する。中心孔5からはモルタルもしくは現場で発生した泥土を低圧にて吐出する。ボーリングマシン8にて噴射装置3を回転もしくは揺動させながら計画速度で引き上げる。図1(c)は、造成完了段階を示す。計画範囲における造成作業を終えた後、噴射装置3を引き上げて、ロッド2全体を引き抜いてボーリングマシンを次の施工箇所に移動させる。
【0012】
図2は、本発明に係る地盤改良工法に用いる地盤改良装置の全体像を示す図である。噴射装置3を下端部に有するロッド3、該ロッド3を地中の所定の深度まで削孔するボーリングマシン8を有するのは、従前の地盤改良装置と共通である。また、ボーリングマシン8が、ロッド3を引き上げつつ、揺動又は回転する機能を有すること、そして、その際に噴射装置3から地盤改良材料を噴射することも従前と同様である。本発明の地盤改良工法の特徴は、噴射装置のノズル形状、大きさ、及び、高圧噴射か、低圧吐出か、噴射材料が何か、の違いにある。
【0013】
図3を参照しつつ、後述するように、本発明の噴射装置は、中心孔5とそれを取り囲む多孔ノズル4を有している。そして、ロッド2の内部には、図示するのを省略したが、中心孔への供給管と多孔ノズルへの供給管とがそれぞれ設けられており、スイベル1を介して、それぞれ中心孔への吐出材料供給ホース11、多孔ノズルへの噴射材料供給ホース12へと接続している。さらに、中心孔への吐出材料供給ホース11は、モルタルポンプ20(図示を省略)につながり、多孔ノズルへの噴射材料供給ホース12は、高圧ポンプ30(図示を省略)につながる。モルタルポンプ20は、1MPa(メガパスカル)程度の吐出圧力にて泥土、モルタル、流動化材またはこれらの混合物を1分間に200リットル程度吐出する能力を有するものを用いる。高圧ポンプ30は、40MPa程度の噴射圧力にて、1分間に80リットル程度のセメントスラリーを噴射する能力を有するものを用いる。
【0014】
図3は、中心孔を取り囲んだ多孔ノズルの形状を示す図である。図3に示す面は、ロッド2の長手方向に対して平行な面であり、中心孔5、多孔ノズル4のいずれも、ロッド2が垂直に地中に立てられるとき、水平方向に向かって開口する向きとなる。中心孔5は、直径5ミリメートルから10ミリメートルの大口径であり、粒度の比較的大きい材料であっても、低圧吐出可能となっている。
【0015】
多孔ノズル4は、直径1ミリメートル程度のノズルであり、中心孔4を取り囲むようにして、複数(ここでは8つ)、等間隔、同心円状に設けてある。多孔ノズル4の個数は、4から12個が望ましい。
【0016】
図4は、本発明に係る工法と、在来技術とにおける改良体強度及び排泥発生量を比較する表である。
【0017】
ここで、在来技術として取り上げたのは、水セメント比100パーセント程度のセメントスラリーを中心孔から噴射圧力40MPa、吐出量300リットル/分で噴射し、外周孔(中心孔を取り巻くリング形状のスリット)から圧縮空気を圧力1.05MPa、空気量3〜7m3
とした例である。ロッドを地中の予定深度まで削孔し、その後、噴射しつつロッドを揺動又は回転させながら引き上げるという工法を用いることは本発明と共通である。できあがった改良体強度は、砂質土の場合で、1.0〜3.0MN/m2、粘性土の場合で、0.7〜1.0MN/m2であった。排泥発生量は、使用材料量の1.5〜2.5倍であった。
【0018】
それに対し、本願発明に係る工法においては、使用材料を泥土、モルタル、流動化材を混合したものとした。中心孔から泥土、モルタル、流動化材の混合物を吐出圧力1MPa、吐出量200リットル/分で吐出し、多孔ノズルからセメントスラリーを噴射圧力40MPa、噴射総量80リットル/分にて高圧噴射した。なお、図4、図5の表においては、本願発明の多孔ノズルを従来の外周孔に対比させる必要上、便宜的に「外周孔」の表現を用いている。できあがった改良体強度は、砂質土の場合で、1.0〜10.0MN/m2、粘性土の場合で、1.0〜5.0MN/m2であった。排泥発生量は、使用材料量の0.5〜1.0倍であった。
【0019】
図4の比較によると、本発明に係る工法によれば、在来技術の3倍から5倍の改良体強度が得られることがわかる。また、排泥発生量が在来技術の3分の1程度であることがわかる。
【0020】
図5は、本発明に係る工法と、特許文献1の先行技術とにおける噴射装置の構造、使用材料、使用機械を比較する表である。ここで、特許文献1としたのは、図4の在来技術の技術資料として適切なものが、この特許文献に該当すると考えられるので、採用したものである。
【0021】
まず、噴射装置の構造を比較すると、先行技術では、中心孔が直径2〜4ミリメートルの小口径であり、この中心孔から高圧噴射をしていたのに対し、本発明に係る中心孔は、直径5〜10ミリメートルの大口径としており、この中心孔から低圧吐出を行う。この径の大きさの違いにより、排泥のような粒度の大きいものを含む材料をも扱うことが可能となっている。
【0022】
噴射装置の構造の違いがもう一つある。先行技術では、外周孔は、中心孔を取り囲んで、同心円状にリング形状として広がる幅1ミリメートル以下のスリットであった。それに対し、本発明においては、直径が1ミリメートル程度のノズルを複数設けた多孔ノズルである。先行技術では、全周にわたって広がるリング状のスリットであったが、全周について均一に噴射されないという問題があった。本発明では、一つ一つが直径1ミリメートルのノズルを複数(4から12個)、中心孔を取り囲む同心円上に等間隔に設けたことで、地盤を切るエネルギーを均一に提供し、中心孔部分に適切に負圧を生ぜしめることで、中心孔から供給される材料を遠方まで運ぶ効果を実現した。
【0023】
使用材料を比較すると、先行技術では、中心孔から供給する材料は、セメントスラリーであったのに対し、本発明では、泥土、モルタル、流動化材、またはこれらの混合物である。外周孔から供給する材料は、先行技術では、水であったの対し、本発明では、セメントスラリー(もしくは水)とする。
【0024】
使用する機械(ポンプ)について比較すると、先行技術では、中心孔への供給、外周孔への供給のいずれについても高圧ポンプを用いていた。それに対し、本発明では、中心孔に供給するためのポンプは、モルタルポンプでよく、外周孔への供給のみ高圧ポンプを用いればよい。高圧ポンプは高価であるので、費用の節減につながる。
【0025】
図6は、中心孔を取り囲んだ多孔ノズルの形状を示すべく、比較的低圧噴射する様子を近くからみた図面代用写真である。中心孔が大口径であること、多孔ノズルがここでは8個、中心孔を取り囲む同心円上にほぼ等間隔で設けられていること、ロッドの長手方向に対して垂直(ロッドを地中に立てたときに水平になる方向)の向きに噴射されることが見て取れる。
【0026】
図7は、中心孔を取り囲んだ多孔ノズルから高圧噴射する様子を近くから見た図面代用写真である。高圧噴射による直進性がよいことが見て取れる。
【0027】
図8は、中心孔を取り囲んだ多孔ノズルからの高圧噴射により遠くまでエネルギーを到達させる地上実験の様子を示す図面代用写真である。改良体造成に必要な距離まで材料を運ぶべく遠くまでエネルギーを到達させることが見て取れる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
軟弱地盤の改良、構造物基礎の造成、耐震補強工事等を目的とした地盤改良工法に利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 スイベル
2 ロッド
3 噴射装置
4 多孔ノズル
5 中心孔
6 セメントスラリー
7 モルタル(もしくは泥土)
8 ボーリングマシン
11 中心孔への吐出材料供給ホース
12 多孔ノズルへの噴射材料供給ホース
20 モルタルポンプ
30 高圧ポンプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良工法および地盤改良装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、核ノズルとこれを囲む囲周ノズルによって構成される重合噴射ノズルにより噴射エネルギーを強化する地盤改良工法が開示されている。従来の高圧噴射工法は、中心孔より水セメント比100パーセント程度の地盤硬化材を高圧(20〜40MPa)にて噴射し、その外側に圧縮空気を沿わせることにより、噴射エネルギーの到達距離を伸張させて、地盤を切削・混合することにより直径2.0〜5.0メートル程度の円柱状の改良体を造成する。噴射装置は、中心孔として直径2.0〜4.0mm程度のノズルとその周囲に圧縮空気を噴射するスリットを設置した重合ノズルを使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−56477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の高圧噴射工法に使用される地盤改良体の造成装置は、中心孔より地盤硬化材を高圧(20〜40MPa)にて噴射し、その周囲に圧縮空気を沿わせた構造になっている。
中心孔より高圧にて地盤硬化材を噴射し、地盤を切削・混合するため、中心孔の大きさは2.0から4.0mmとい小口径のノズルを使用していることから、硬化材も粒径の小さなセメントスラリーに限定されるために、改良体強度は砂質土の場合にてσ28=1.0〜3.0MN/m2に限定され、高強度の改良体造成は不可能である。ここで、σ28は、地盤改良体造成の28日後に測定した圧縮強度である。また、Mはメガを意味し、N/m2は、物理量としてはPa(パスカル)と同じである。本明細書では、改良体強度を表すのに、MN/m2を用い、噴射圧力を表すのに、MPaを用いる。
また、高圧噴射工法により発生する泥土は産業廃棄物であり、社会情勢から削減や再利用の促進が望まれている。
本発明が解決しようとする課題は、高強度の改良体造成を可能とする地盤改良工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく本発明に係る地盤改良工法においては、中心孔周辺に多孔ノズル(中心孔周辺の多孔ノズル数が4から12個)を設置した噴射装置をロッド下端に取り付け、ボーリングマシンにて所定の深度まで削孔する。噴射装置が計画深度に到達すると、多孔ノズルよりセメントスラリーを高圧(20〜40MPa)にて噴射する(噴射総量10〜200リットル/分)。中心孔からはモルタルもしくは現場で発生した泥土を吐出する(吐出圧力1〜5MPa、吐出量50〜300リットル/分)。ボーリングマシンにて噴射装置を回転、もしくは揺動させながら計画速度で引き上げる。計画範囲にて噴射装置を引き上げるとロッド全体を引き抜き、ボーリングマシンを次の施工箇所に移動させる。
【発明の効果】
【0006】
中心孔の周囲の多孔ノズルから高圧噴流体を噴射させることにより、各孔からの噴射エネルギーが拡散することなく遠方まで到達する。したがって、単独孔からの噴射と比較すると小さな動力にて地盤を切削・混合できる。
【0007】
中心孔から吐出する地盤硬化材は、周囲の多孔ノズルからの高圧噴流体により発生する負圧にて、搬送できる。したがって、中心孔にてノズル径の制限がなくなり、硬化材としてモルタルや流動化材等を使用できる。これにより、高強度の改良体造成が可能となった。
【0008】
また、中心孔から吐出する地盤硬化材は、ノズル径の制限がないことから、現場にて発生する泥土も再利用が可能である。現場にて発生する泥土を再利用することで、産業廃棄物の搬出量の削減ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明に係る地盤改良工法を示す図である。図1(a)は、削孔段階を示す。図1(b)は、造成段階を示す。図1(c)は、造成完了段階を示す。
【図2】図2は、本発明に係る地盤改良工法に用いる地盤改良装置の全体像を示す図である。
【図3】図3は、中心孔を取り囲んだ多孔ノズルの形状を示す図である。
【図4】図4は、本発明に係る工法と、在来技術とにおける改良体強度及び排泥発生量を比較する表である。
【図5】図5は、本発明に係る工法と、特許文献1の先行技術とにおける噴射装置の構造、使用材料、使用機械を比較する表である。
【図6】図6は、中心孔を取り囲んだ多孔ノズルの形状を示すべく、比較的低圧噴射する様子を近くからみた図面代用写真である。
【図7】図7は、中心孔を取り囲んだ多孔ノズルから高圧噴射する様子を近くから見た図面代用写真である。
【図8】図8は、中心孔を取り囲んだ多孔ノズルからの高圧噴射により遠くまでエネルギーを到達させる地上実験の様子を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る工法の実施形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明に係る地盤改良工法を示す図である。図1(a)は、削孔段階を示す。削孔段階にあっては、噴射装置3を下端に設けたロッド2をボーリングマシン8により所定の深度まで削孔する。図1(b)は、造成段階を示す。ロッド2の下端に設けた噴射装置3が計画深度に達したところで、削孔をやめて、多孔ノズル4からセメントスラリー6を高圧にて噴射する。中心孔5からはモルタルもしくは現場で発生した泥土を低圧にて吐出する。ボーリングマシン8にて噴射装置3を回転もしくは揺動させながら計画速度で引き上げる。図1(c)は、造成完了段階を示す。計画範囲における造成作業を終えた後、噴射装置3を引き上げて、ロッド2全体を引き抜いてボーリングマシンを次の施工箇所に移動させる。
【0012】
図2は、本発明に係る地盤改良工法に用いる地盤改良装置の全体像を示す図である。噴射装置3を下端部に有するロッド3、該ロッド3を地中の所定の深度まで削孔するボーリングマシン8を有するのは、従前の地盤改良装置と共通である。また、ボーリングマシン8が、ロッド3を引き上げつつ、揺動又は回転する機能を有すること、そして、その際に噴射装置3から地盤改良材料を噴射することも従前と同様である。本発明の地盤改良工法の特徴は、噴射装置のノズル形状、大きさ、及び、高圧噴射か、低圧吐出か、噴射材料が何か、の違いにある。
【0013】
図3を参照しつつ、後述するように、本発明の噴射装置は、中心孔5とそれを取り囲む多孔ノズル4を有している。そして、ロッド2の内部には、図示するのを省略したが、中心孔への供給管と多孔ノズルへの供給管とがそれぞれ設けられており、スイベル1を介して、それぞれ中心孔への吐出材料供給ホース11、多孔ノズルへの噴射材料供給ホース12へと接続している。さらに、中心孔への吐出材料供給ホース11は、モルタルポンプ20(図示を省略)につながり、多孔ノズルへの噴射材料供給ホース12は、高圧ポンプ30(図示を省略)につながる。モルタルポンプ20は、1MPa(メガパスカル)程度の吐出圧力にて泥土、モルタル、流動化材またはこれらの混合物を1分間に200リットル程度吐出する能力を有するものを用いる。高圧ポンプ30は、40MPa程度の噴射圧力にて、1分間に80リットル程度のセメントスラリーを噴射する能力を有するものを用いる。
【0014】
図3は、中心孔を取り囲んだ多孔ノズルの形状を示す図である。図3に示す面は、ロッド2の長手方向に対して平行な面であり、中心孔5、多孔ノズル4のいずれも、ロッド2が垂直に地中に立てられるとき、水平方向に向かって開口する向きとなる。中心孔5は、直径5ミリメートルから10ミリメートルの大口径であり、粒度の比較的大きい材料であっても、低圧吐出可能となっている。
【0015】
多孔ノズル4は、直径1ミリメートル程度のノズルであり、中心孔4を取り囲むようにして、複数(ここでは8つ)、等間隔、同心円状に設けてある。多孔ノズル4の個数は、4から12個が望ましい。
【0016】
図4は、本発明に係る工法と、在来技術とにおける改良体強度及び排泥発生量を比較する表である。
【0017】
ここで、在来技術として取り上げたのは、水セメント比100パーセント程度のセメントスラリーを中心孔から噴射圧力40MPa、吐出量300リットル/分で噴射し、外周孔(中心孔を取り巻くリング形状のスリット)から圧縮空気を圧力1.05MPa、空気量3〜7m3
とした例である。ロッドを地中の予定深度まで削孔し、その後、噴射しつつロッドを揺動又は回転させながら引き上げるという工法を用いることは本発明と共通である。できあがった改良体強度は、砂質土の場合で、1.0〜3.0MN/m2、粘性土の場合で、0.7〜1.0MN/m2であった。排泥発生量は、使用材料量の1.5〜2.5倍であった。
【0018】
それに対し、本願発明に係る工法においては、使用材料を泥土、モルタル、流動化材を混合したものとした。中心孔から泥土、モルタル、流動化材の混合物を吐出圧力1MPa、吐出量200リットル/分で吐出し、多孔ノズルからセメントスラリーを噴射圧力40MPa、噴射総量80リットル/分にて高圧噴射した。なお、図4、図5の表においては、本願発明の多孔ノズルを従来の外周孔に対比させる必要上、便宜的に「外周孔」の表現を用いている。できあがった改良体強度は、砂質土の場合で、1.0〜10.0MN/m2、粘性土の場合で、1.0〜5.0MN/m2であった。排泥発生量は、使用材料量の0.5〜1.0倍であった。
【0019】
図4の比較によると、本発明に係る工法によれば、在来技術の3倍から5倍の改良体強度が得られることがわかる。また、排泥発生量が在来技術の3分の1程度であることがわかる。
【0020】
図5は、本発明に係る工法と、特許文献1の先行技術とにおける噴射装置の構造、使用材料、使用機械を比較する表である。ここで、特許文献1としたのは、図4の在来技術の技術資料として適切なものが、この特許文献に該当すると考えられるので、採用したものである。
【0021】
まず、噴射装置の構造を比較すると、先行技術では、中心孔が直径2〜4ミリメートルの小口径であり、この中心孔から高圧噴射をしていたのに対し、本発明に係る中心孔は、直径5〜10ミリメートルの大口径としており、この中心孔から低圧吐出を行う。この径の大きさの違いにより、排泥のような粒度の大きいものを含む材料をも扱うことが可能となっている。
【0022】
噴射装置の構造の違いがもう一つある。先行技術では、外周孔は、中心孔を取り囲んで、同心円状にリング形状として広がる幅1ミリメートル以下のスリットであった。それに対し、本発明においては、直径が1ミリメートル程度のノズルを複数設けた多孔ノズルである。先行技術では、全周にわたって広がるリング状のスリットであったが、全周について均一に噴射されないという問題があった。本発明では、一つ一つが直径1ミリメートルのノズルを複数(4から12個)、中心孔を取り囲む同心円上に等間隔に設けたことで、地盤を切るエネルギーを均一に提供し、中心孔部分に適切に負圧を生ぜしめることで、中心孔から供給される材料を遠方まで運ぶ効果を実現した。
【0023】
使用材料を比較すると、先行技術では、中心孔から供給する材料は、セメントスラリーであったのに対し、本発明では、泥土、モルタル、流動化材、またはこれらの混合物である。外周孔から供給する材料は、先行技術では、水であったの対し、本発明では、セメントスラリー(もしくは水)とする。
【0024】
使用する機械(ポンプ)について比較すると、先行技術では、中心孔への供給、外周孔への供給のいずれについても高圧ポンプを用いていた。それに対し、本発明では、中心孔に供給するためのポンプは、モルタルポンプでよく、外周孔への供給のみ高圧ポンプを用いればよい。高圧ポンプは高価であるので、費用の節減につながる。
【0025】
図6は、中心孔を取り囲んだ多孔ノズルの形状を示すべく、比較的低圧噴射する様子を近くからみた図面代用写真である。中心孔が大口径であること、多孔ノズルがここでは8個、中心孔を取り囲む同心円上にほぼ等間隔で設けられていること、ロッドの長手方向に対して垂直(ロッドを地中に立てたときに水平になる方向)の向きに噴射されることが見て取れる。
【0026】
図7は、中心孔を取り囲んだ多孔ノズルから高圧噴射する様子を近くから見た図面代用写真である。高圧噴射による直進性がよいことが見て取れる。
【0027】
図8は、中心孔を取り囲んだ多孔ノズルからの高圧噴射により遠くまでエネルギーを到達させる地上実験の様子を示す図面代用写真である。改良体造成に必要な距離まで材料を運ぶべく遠くまでエネルギーを到達させることが見て取れる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
軟弱地盤の改良、構造物基礎の造成、耐震補強工事等を目的とした地盤改良工法に利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 スイベル
2 ロッド
3 噴射装置
4 多孔ノズル
5 中心孔
6 セメントスラリー
7 モルタル(もしくは泥土)
8 ボーリングマシン
11 中心孔への吐出材料供給ホース
12 多孔ノズルへの噴射材料供給ホース
20 モルタルポンプ
30 高圧ポンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射装置を下端部に有するロッドをボーリングマシンにて所定の深度まで削孔し、前記噴射装置から地盤改良材料を噴射させるとともに前記ロッドを計画速度で引き上げつつ該ロッドを揺動又は回転させて地盤改良体を造成する地盤改良工法であって、
前記噴射装置が、
中心孔の外周に複数の多孔ノズルを配置した構造を有するものであって、
中心孔からは低圧にて地盤改良材料を吐出し、外周の多孔ノズルからは、超高圧にて地盤改良材料を噴射する
ことを特徴とする地盤改良工法。
【請求項2】
請求項1に記載の地盤改良工法であって、
前記中心孔周辺の多孔ノズル数が4個から12個の多孔ノズルである
ことを特徴とする地盤改良工法。
【請求項3】
請求項1に記載の地盤改良工法であって、
前記中心孔から吐出する地盤改良材料の吐出圧力P=1〜5MPa、吐出量Q=50〜300リットル/minで、
前記多孔ノズルからの噴射圧力P=20〜40MPa、噴射総量Q=10〜200リットル/minとする
ことを特徴とする地盤改良工法。
【請求項4】
請求項1に記載の地盤改良工法であって、
前記中心孔から吐出する地盤改良材として、現地で発生した泥土を使用する
ことを特徴とする地盤改良工法。
【請求項5】
噴射装置を下端部に有するロッドと、該ロッドを地中に所定の深度まで削孔した後、前記噴射装置を作動させ前記ロッドを計画速度で引き上げつつ該ロッドを揺動又は回転させるボーリングマシンと、前記ロッドの上端部に設けたスイベルとを有する地盤改良装置であって、
前記噴射装置は、
水平方向に開口する中心孔と、その中心孔の外周に配置された複数の多孔ノズルと
を有し、
前記スイベルには、
前記中心孔への吐出材料供給ホースと、
前記多孔ノズルへの噴射材料供給ホースと
が連結され、
前記吐出材料供給ホースに材料が低圧供給するモルタルポンプと、
前記噴射材料供給ホースに材料を高圧供給する高圧ポンプと
を有する地盤改良装置。
【請求項1】
噴射装置を下端部に有するロッドをボーリングマシンにて所定の深度まで削孔し、前記噴射装置から地盤改良材料を噴射させるとともに前記ロッドを計画速度で引き上げつつ該ロッドを揺動又は回転させて地盤改良体を造成する地盤改良工法であって、
前記噴射装置が、
中心孔の外周に複数の多孔ノズルを配置した構造を有するものであって、
中心孔からは低圧にて地盤改良材料を吐出し、外周の多孔ノズルからは、超高圧にて地盤改良材料を噴射する
ことを特徴とする地盤改良工法。
【請求項2】
請求項1に記載の地盤改良工法であって、
前記中心孔周辺の多孔ノズル数が4個から12個の多孔ノズルである
ことを特徴とする地盤改良工法。
【請求項3】
請求項1に記載の地盤改良工法であって、
前記中心孔から吐出する地盤改良材料の吐出圧力P=1〜5MPa、吐出量Q=50〜300リットル/minで、
前記多孔ノズルからの噴射圧力P=20〜40MPa、噴射総量Q=10〜200リットル/minとする
ことを特徴とする地盤改良工法。
【請求項4】
請求項1に記載の地盤改良工法であって、
前記中心孔から吐出する地盤改良材として、現地で発生した泥土を使用する
ことを特徴とする地盤改良工法。
【請求項5】
噴射装置を下端部に有するロッドと、該ロッドを地中に所定の深度まで削孔した後、前記噴射装置を作動させ前記ロッドを計画速度で引き上げつつ該ロッドを揺動又は回転させるボーリングマシンと、前記ロッドの上端部に設けたスイベルとを有する地盤改良装置であって、
前記噴射装置は、
水平方向に開口する中心孔と、その中心孔の外周に配置された複数の多孔ノズルと
を有し、
前記スイベルには、
前記中心孔への吐出材料供給ホースと、
前記多孔ノズルへの噴射材料供給ホースと
が連結され、
前記吐出材料供給ホースに材料が低圧供給するモルタルポンプと、
前記噴射材料供給ホースに材料を高圧供給する高圧ポンプと
を有する地盤改良装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2011−241538(P2011−241538A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111881(P2010−111881)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(392012261)東興ジオテック株式会社 (28)
【出願人】(599038075)有限会社タック (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(392012261)東興ジオテック株式会社 (28)
【出願人】(599038075)有限会社タック (4)
【Fターム(参考)】
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