説明

中性脂質を含有する両性リポソームの改良または該両性リポソームに関連する改良

中性脂質を含有する両性リポソームであって、該中性脂質が、コレステロールまたはコレステロールと少なくとも1つの中性もしくは双性イオン性脂質の混合物からなる群から選択され、該混合物のκ(中性)が0.3またはそれ未満である両性リポソーム。該両性リポソームは、活性物質、例えば核酸治療物質を封入することができる。また開示されているのは、該両性リポソームを活性物質または成分の供給または標的化供給のための担体として含有する医薬組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性脂質を含有する両性リポソームの改良または該両性リポソームに関連する改良に関する。
【背景技術】
【0002】
両性リポソームは、動物において優れた生体内分布を示し、十分に許容されることがわかった。これらは、活性物質(核酸分子を含む)を高効率で封入することができる。
【0003】
双性イオン性の構造とは対照的に、両性リポソームは有利な等電点を有し、比較的高いpH値において負に荷電し、比較的低いpH値において正に荷電している。両性リポソームは、Straubingerら(非特許文献1)によって導入されたpH感受性リポソームの比較的大きい群に属する。pH感受性リポソームにおける典型的なpH応答性要素は、コレステロールヘミスクシネート(CHEMS)、パルミトイルホモシステイン、ジオレオイルグリセロールヘミスクシネート(DOG-Succ)などである。CHEMSは、10℃を超える温度において逆六角形相を優先的に採る脂質であるジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)を、pH7.4においてラメラ相に安定化することができる。ラメラCHEMS/DOPE系は、中性またはわずかにアルカリ性のpHにおいて調製することができるが、これらの系は、酸性pHにおいて不安定になり、溶解する(非特許文献2)。
【0004】
融合性リポソームは、医薬用途において、特に、薬物(例えば核酸、例えばプラスミドおよびオリゴヌクレオチドなど)の細胞内供給のために非常に重要である。エンドサイトーシスによる細胞へのリポソームの取込みの後、エンドソームからの薬物の放出が、細胞サイトゾルへの薬物の供給のための重要な工程である。エンドソーム内のpHはわずかに酸性であり、従って、pH感受性リポソームはエンドソーム膜と融合することができ、これにより、エンドソームからの薬物の放出を可能にする。このことは、脂質相の不安定化(例えば、高い融合性による)が、エンドソーム脱出および細胞内供給を容易にすることを意味する。また、他の低pH環境(例えば、腫瘍または炎症部位において見られる低pH)が、そのようなリポソームの融合を開始させることができる。
【0005】
Hafezら(非特許文献3)は、そのような融合が起こるpHの制限された制御に満足せず、カチオン性脂質の添加によって融合点を微調整するための合理的アプローチを示した。このような混合物は、真の両性特性を有し、低pHにおいてはカチオン状態で存在し、比較的高いpH(典型的には生理学的pH)においてはアニオン粒子として存在する。Hafezらによれば、融合は、粒子の正味電荷がゼロであるpH値(該粒子の等電点)において始まり、一旦、該等電点を交差する(pHがある程度低下する)と、融合は連続過程である。この見解は、数学モデルを用いて両性脂質混合物の融合傾向を分析しているLiおよびSchick(非特許文献4)と同見解である。
【0006】
1975年にIsraelachviliおよびMitchell(非特許文献5)は、脂質分子の全体の形が水和した脂質膜の構造を決定すると仮定する分子形状コンセプトを導入した。これは、脂質の幾何、より具体的には、極性頭部基と疎水性膜アンカーの間のサイズ比が、脂質相を決定する重要なパラメーターであることを意味する(非特許文献6)。しかし、最初の理論は、極性頭部基の立体部分である対イオンを考慮しておらず、これがLiおよびSchick(非特許文献4)により提供された。彼等のDODAC/CHEMS系の記載において、ナトリウムイオンは、中性pHにおいてCHEMSの頭部基を大きくするが、pH低下につれて解離し、こうして頭部基体積を最小化し、六角形相を促進する(強カチオンとしてのDODACは、pHとは無関係にそのそれぞれの対イオンと一定の関係にあると仮定される。このモデルは、あるpHおよびそれ以下のpHにおける融合を予測する。
【0007】
分子形状コンセプトに従う脂質相(非特許文献7):
【表1】

【0008】
両性脂質混合物への中性脂質の添加は、両性リポソームの等電点にわずかの影響しか持たないことがわかっている。特許文献1(Panznerら)は、低pHおよび中性pHの両方において安定なサイズを有する、中性脂質を含有するある種の両性リポソームを開示している。また、特許文献1は、低pHから出発して、そのような粒子に核酸を装填する方法を記載している。
【0009】
特許文献2(Endertら)は、中性脂質としてホスファチジルコリンとコレステロールの混合物を含有し、コレステロールのモル量が35〜40モル%である両性リポソーム配合物を開示している。
特許文献3(Panznerら)は、中性脂質としてホスファチジルコリンとホスファチジルエタノールアミンの混合物を含有する両性リポソームを開示している。
【0010】
両性リポソームは、複雑な構造であり、少なくとも相補的な一対の荷電した脂質を含有する。1つまたはそれ以上のそのような中性もしくは双性イオン性脂質の含有は、特に、成分の個々の量が変化することができるので、混合物の複雑性を大きく増加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第02/066012号パンフレット
【特許文献2】国際公開第05/094783号パンフレット
【特許文献3】国際公開第07/031333号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Straubingerら、FEBS Lett.、1985、179(1)、148-154
【非特許文献2】HafezおよびCullis、Biochim. Biophys. Acta、2000、1463、107-114
【非特許文献3】Hafezら、Biophys. J.、2000、79(3)、1438-1446
【非特許文献4】LiおよびSchick、Biophys. J.、2001、80、1703-1711
【非特許文献5】IsraelachviliおよびMitchell、Biochim. Biophys. Acta、1975、389、13-19
【非特許文献6】Israelachviliら、Biochim Biophys Acta、1977、17; 470(2): 185-201
【非特許文献7】Israelachviliら、1980、Q. Rev. Biophys.、13(2)、121-200
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、中性脂質を含有する両性リポソームの改良された配合物を提供することである。
本発明の別の目的は、細胞のトランスフェクションを可能にする両性リポソームの改良された配合物を提供することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、そのようなリポソームを、活性物質または成分(薬物、例えば核酸薬物、例えばオリゴヌクレオチドおよびプラスミドを含む)を細胞または組織に供給するための担体として含有する医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
即ち、本発明の1つの側面によれば、中性脂質を含有する両性リポソームであって、該中性脂質が、コレステロールまたはコレステロールと少なくとも1つの中性もしくは双性イオン性脂質の混合物からなる群から選択され、該混合物のκ(中性)が0.3またはそれ未満である両性リポソームが提供される。
【0016】
好ましくは、コレステロールと少なくとも1つの中性もしくは双性イオン性脂質の混合物のκ(中性)は、0.25未満、好ましくは0.2未満、最も好ましくは0.15未満である。
【0017】
ある種の態様において、コレステロールと少なくとも1つの中性もしくは双性イオン性脂質の混合物は、以下からなる群から選択される:
a.コレステロール/ホスファチジルコリン、
b.コレステロール/ホスファチジルエタノールアミン、
c.コレステロール/ホスファチジルエタノールアミン/ホスファチジルコリン、
d.コレステリン/スフィンゴミエリン、
e.コレステロール/ホスファチジルエタノールアミン/スフィンゴミエリン。
【0018】
適するホスファチジルエタノールアミンは、DOPE、POPE、DPhyPE、DLinPE、DMPE、DPPE、DSPEまたはこれらの天然等価物からなる群から選択することができ、ここで、DOPEが最も好ましい。
【0019】
ホスファチジルコリンは、POPC、DOPC、DMPC、DPPC、DSPCまたはこれらの天然等価物、例えば大豆PCまたは卵PCからなる群から選択することができ、ここで、POPCまたはDOPCが好ましい。
【0020】
本発明の両性リポソームは、1つまたはそれ以上または複数の荷電した両親媒性物質を含有し、該物質は互いと組合せて両性の性質を有する。
【0021】
本発明の1つの側面において、荷電した両親媒性物質は両性脂質である。
適する両性脂質は、HistChol、HistDG、isoHistSuccDG、アシルカルノシンおよびHCCHolからなる群から選択することができる。
【0022】
別法によれば、本発明の両性リポソームは、両性の特性を有する脂質成分の混合物を含有し、該脂質成分の混合物は、少なくとも1つのpH応答性成分を含有する。
【0023】
該脂質成分の混合物は、
(i)安定なカチオン性脂質および荷電可能なアニオン性脂質(Amphoter I混合物と称する)、
(ii)荷電可能なカチオン性脂質および荷電可能なアニオン性脂質(Amphoter II混合物と称する)、または
(iii)安定なアニオン性脂質および荷電可能なカチオン性脂質(Amphoter III混合物と称する)、
を含有することができる。
【0024】
本発明の1つの態様において、両性リポソームの等電点は、4〜7、好ましくは4.5〜6.5、最も好ましくは5〜6である。
【0025】
アニオン性脂質は、以下からなる群から選択することができるが、これらに限定はされない:ジアシルグリセロールヘミスクシネート、例えば、DOGS、DMGS、POGS、DPGS、DSGS;ジアシルグリセロールヘミマロネート、例えば、DOGMまたはDMGM;ジアシルグリセロールヘミグルタレート、例えば、DOGG、DMGG;ジアシルグリセロールヘミアジペート、例えば、DOGA、DMGA;ジアシルグリセロールヘミシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、例えば、DO-cHA、DM-cHA;(2,3-ジアシル-プロピル)アミノ}-オキソアルカン酸、例えば、DOAS、DOAM、DOAG、DOAA、DMAS、DMAM、DMAG、DMAA;ジアシル-アルカン酸、例えば、DOP、DOB、DOS、DOM、DOG、DOA、DMP、DOB、DMS、DMM、DMG、DMA;Chemsおよびその誘導体、例えば、Chol-C2、Chol-C3、Chol-C5、Chol-C6、Chol-C7またはChol-C8;Chol-C1、CholC3Nまたはコレステロールヘミジカルボン酸およびコレステリルオキシカルボニルアミノカルボン酸、例えば、Chol-C12またはCholC13N、脂肪酸、例えば、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ネルボン酸、ベヘン酸;DOPA、DMPA、DPPA、POPA、DSPA、Chol-SO4、DOPG、DMPG、DPPG、POPG、DSPGまたはDOPS、DMPS、DPPS、POPS、DSPSまたはセチル-ホスフェート。
【0026】
カチオン性脂質は、以下からなる群から選択することができるが、これらに限定はされない:DOTAP、DMTAP、DPTAP、DSTAP、POTAP、DODAP、PODAP、DMDAP、DPDAP、DSDAP、DODMHEAPまたはDORI、PODMHEAPまたはPORI、DMDMHEAPまたはDMRI、DPDMHEAPまたはDPRI、DSDMHEAPまたはDSRI、DOMDHEAP、POMDHEAP、DMMDHEAP、DPMDHEAP、DSMDHEAP、DOMHEAP、POMHEAP、DMMHEAP、DPMHEAP、DSMHEAP、DODHEAP、PODHEAP、DMDHEAP、DPDHEAP、DSDHEAP、DDAB、DODAC、DOEPC、DMEPC、DPEPC、DSEPC、POEPC、DORIE、DMRIE、DOMCAP、DOMGME、DOP5P、DOP6P、DC-Chol、TC-Chol、DAC-Chol、Chol-ベタイン、N-メチル-PipChol、CTAB、DOTMA、MoChol、HisChol、Chim、MoC3Chol、Chol-C3N-Mo3、Chol-C3N-Mo2、Chol-C4N-Mo2、Chol-DMC3N-Mo2、CholC4Hex-Mo2、DmC4Mo2、DmC3Mo2、C3Mo2、C3Mo3、C5Mo2、C6Mo2、C8Mo2、C4Mo4、PipC2-Chol、MoC2Chol、PyrroC2Chol、ImC3Chol、PyC2Chol、MoDO、MoDP、DOIMまたはDPIM。
【0027】
さらに、または別法として、本発明の両性リポソームは、本明細書の表60および表61に挙げた化合物番号1〜97を有する1つまたはそれ以上の化合物を含有することができる。
【0028】
本発明の1つの態様において、両性リポソームはAmphoter I混合物であり、該混合物のκ(min)が0.07〜0.22、好ましくは0.09〜0.15である。
【0029】
本発明の別の態様において、両性リポソームはAmphoter II混合物であり、該混合物のκ(min)が0.23未満、好ましくは0.18未満である。
【0030】
本発明の別の側面において、本リポソームは、両親媒性物質の以下の特定の組合せを有するもの以外の脂質混合物を含有することができる:DC-Chol/DOPA/Cholが40:20:40(モル比)。
【0031】
本発明のさらに他の側面において、両性リポソームは、50モル%またはそれ以上のモル量でコレステロールとホスファチジルコリンの混合物を含有するもの以外であることができる。
【0032】
本発明の別の特定の側面において、両性リポソームは、少なくとも1つの活性物質を封入している。該活性物質は薬物を含有することができる。ある種の態様において、該活性物質は核酸を含有することができる。
【0033】
そのような使用に限定されるものではないが、本発明において記載される両性リポソームは、核酸に基づく薬物、例えば、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドおよびDNAプラスミドなどのための担体として使用するのに非常に適している。これらの薬物は、タンパク質、ポリペプチドまたはRNAのための1つまたはそれ以上の特定の配列をコードする核酸、ならびに、タンパク質発現レベルを特異的に調節しうるか、または特にスプライシングおよび人工切断への介入によってタンパク質構造に影響を与えうるオリゴヌクレオチドに分類される。
【0034】
即ち、本発明のある種の態様において、核酸に基づく治療物質は、脊椎動物細胞において1つまたはそれ以上のRNAに転写されうる核酸を含有することができ、該RNAはmRNA、shRNA、miRNAまたはリボザイムであってよく、該mRNAは1つまたはそれ以上のタンパク質またはポリペプチドをコードしている。このような核酸治療物質は、環状DNAプラスミド、線状DNA構築物、例えば、MIDGEベクター(Minimalistic Immunogenically Defined Gene Expression)(国際公開第98/21322号または独国特許第19753182号に開示)、または翻訳準備ができたmRNA(例えば、欧州特許第1392341号)であってよい。
【0035】
本発明の別の態様において、既存の細胞内核酸またはタンパク質を標的化しうるオリゴヌクレオチドを使用することができる。このような核酸は、特定の遺伝子をコードすることができ、該オリゴヌクレオチドを、転写を弱めるかまたは調節するように、転写体のプロセッシングを修飾するように、あるいはタンパク質の発現に介入するように適合させる。用語「標的核酸」は、特定の遺伝子をコードするDNA、ならびに、該DNAに由来する全てのRNA、プレ-mRNAまたはmRNAを包含する。標的核酸と該配列に指向する1つまたはそれ以上のオリゴヌクレオチドの間の特異的なハイブリダイゼーションは、タンパク質発現を阻害または調節する結果になるであろう。このような特異的な標的化を達成するために、オリゴヌクレオチドは、標的核酸の配列に実質的に相補性であるヌクレオチドの連続ストレッチを適切に含有しているはずである。
【0036】
上記した基準を満たすオリゴヌクレオチドは、多数の異なる化学およびトポロジーを用いて構築することができる。オリゴヌクレオチドは、天然または修飾ヌクレオシドを含有することができ、これには、DNA、RNA、ロックされた核酸(LNA)、2'O-メチルRNA(2'Ome)、2'O-メトキシエチルRNA(2'MOE)(そのホスフェートまたはホスホチオエート形態にある)あるいはモルホリノまたはペプチド核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定はされない。
オリゴヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であることができる。
【0037】
オリゴヌクレオチドは、8〜60の電荷を有するポリアニオン性構造体である。ほとんどの場合、これらの構造体は、ヌクレオチドを含有するポリマーである。本発明は、オリゴヌクレオチドの特定の作用メカニズムに限定されず、該メカニズムの理解は、本発明の実施に必要ではない。
オリゴヌクレオチドの作用メカニズムは、変化することができ、特に、スプライシング、転写、核-細胞質輸送および翻訳に対する効果を含むであろう。
【0038】
本発明の好ましい態様において、一本鎖オリゴヌクレオチドを使用することができ、これには、DNAに基づくオリゴヌクレオチド、ロックされた核酸、2'-修飾オリゴヌクレオチド、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドとして普通に知られるその他のものが含まれるが、これらに限定はされない。骨格または塩基または糖の修飾には、ホスホチオエートDNA(PTO)、2'O-メチルRNA(2'Ome)、2'フルオロRNA(2'F)、2'O-メトキシエチル-RNA(2'MOE)、ペプチド核酸(PNA)、N3'-P5'ホスホアミデート(NP)、2'フルオロアラビノ核酸(FANA)、ロックされた核酸(LNA)、モルホリンホスホアミデート(モルホリノ)、シクロヘキセン核酸(CeNA)、トリシクロ-DNA(tcDNA)などが含まれるが、これらに限定はされない。さらに、混合化学が当分野で知られており、コポリマー、ブロック-コポリマーまたはギャップマー(gapmer)として、あるいは他の配置で、単一ヌクレオチド種を超える種から構築される。
【0039】
上記したオリゴヌクレオチドに加えて、相補性配列モチーフを含む二本鎖RNA分子を用いて、タンパク質発現を阻害することもできる。このようなRNA分子は、当分野においてsiRNA分子として知られている(例えば、国際公開第99/32619号または国際公開第02/055693号)。他のsiRNAは、一本鎖siRNAまたは二本鎖siRNA(1つの不連続鎖を有する)を含有する。ここでも、この群のオリゴヌクレオチドに様々な化学を適合させる。また、DNA/RNAハイブリッド系も当分野で知られている。
【0040】
本発明の別の態様において、デコイオリゴヌクレオチドを使用することができる。これらの二本鎖DNA分子およびその化学的修飾体は、核酸を標的とせず、転写因子を標的とする。これは、デコイオリゴヌクレオチドが配列特異的DNA結合性タンパク質に結合し、転写に介入することを意味する(例えば、Cho-Chungら、Curr. Opin. Mol. Ther.、1999)。
【0041】
本発明のさらなる態様において、生理学的条件下で遺伝子のプロモーター領域にハイブリダイズすることによって転写に影響を与えうるオリゴヌクレオチドを使用することができる。ここでも、この群のオリゴヌクレオチドに様々な化学を適合させることができる。
【0042】
本発明のなおさらなる態様において、DNAザイムを使用することができる。DNAザイムは、酵素活性を有する一本鎖オリゴヌクレオチドおよびその化学的修飾体である。典型的なDNAザイム(「10−23」モデルとして知られる)は、生理学的条件で特定部位において一本鎖RNAを切断することができる。DNAザイムの「10−23」モデルは、RNA上の標的配列に相補的な2つの基質認識ドメインによって挟まれた15個の高保存性デオキシリボヌクレオチドからなる触媒ドメインを有する。標的mRNAの切断は、その破壊およびDNAザイムのリサイクルの結果になり、複数の基質を切断することができる。
【0043】
本発明のさらに別の態様において、リボザイムを使用することができる。リボザイムは、酵素活性を有する一本鎖オリゴリボヌクレオチドおよびその化学的修飾体である。これらは、機能的に次の2つの成分に分けることができる:保存性の幹−触媒コアおよび隣接配列(所与のRNA転写体中の標的部位を囲む配列に逆相補性である)を形成するループ構造。隣接配列は、特異性を付与することができ、通常は合計して14〜16ヌクレオチドからなることができ、選択した標的部位の両側に伸びている。
【0044】
本発明のなおさらなる態様において、アプタマーを用いてタンパク質を標的にすることができる。アプタマーは、通常は15〜60ヌクレオチド長さであり、特定の分子標的に緊密に結合する核酸(例えば、RNAまたはDNA)およびその化学的修飾体からなる巨大分子である。そのヌクレオチド鎖は、分子を複雑な3次元形状に折り畳む分子内相互作用を生じることができる。アプタマーの形状は、その標的分子(酸性タンパク質、塩基性タンパク質、膜タンパク質、転写因子および酵素を含むが、これらに限定はされない)の表面に緊密に結合することを可能にする。アプタマー分子の結合は、標的分子の機能に影響を与えることができる。
【0045】
上記したオリゴヌクレオチドの全ては、鎖あたりに、少なければ5または10、好ましくは15、より好ましくは18ヌクレオチドと、50、好ましくは30、より好ましくは25ヌクレオチドの間の長さで変化することができる。より具体的には、オリゴヌクレオチドは、その標的配列のRNAseH媒介分解を触媒するか、または翻訳をブロックするか、またはスプライシングを再指向するか、またはアントゴミアー(antogomirs)として働く8〜50ヌクレオチド長さのアンチセンスオリゴヌクレオチドであることができる。これらは、15〜30塩基対長さのsiRNAであることができ、さらに15〜30塩基対長さのデコイオリゴヌクレオチドであることができ、15〜30ヌクレオチド長さのゲノムDNAの転写に影響を与える相補性オリゴヌクレオチドであることができる。さらにこれらは、25〜50ヌクレオチド長さのDNAザイム、または25〜50ヌクレオチド長さのリボザイム、または15〜60ヌクレオチド長さのアプタマーであることもできる。
【0046】
このような下位群のオリゴヌクレオチドは、機能的に規定されることが多く、同一または異なることができるか、またはその化学的性質または構造の一部の(全てではない)特徴を、本発明の教示に実質的に影響することなく共有することができる。オリゴヌクレオチドと標的配列の間の適合は、好ましくは完全であり、オリゴヌクレオチドの各塩基は、標的核酸上の相補性塩基と、上記した数のオリゴヌクレオチドの連続ストレッチにわたって塩基対を形成する。配列の対は、塩基対の連続ストレッチ中に1つまたはそれ以上のミスマッチを含むことができるが、これは好ましさが低い。一般に、そのような核酸の種類および化学的組成は、生体内または試験管内でビヒクルとして本発明のリポソームの性能にわずかの影響しか持たず、当業者は、本発明の両性リポソームと組合せるのに適する他の種類のオリゴヌクレオチドまたは核酸を見つけることができる。
【0047】
1つの側面において、本発明の両性リポソームは、試験管内、生体内または生体外で細胞をトランスフェクトするのに有用である。
【0048】
本発明の別の側面において、本発明の両性リポソームは、その表面に、細胞表面の標的受容体に結合する細胞標的化リガンドを含有することができる。リガンドには、抗体またはそのフラグメント、糖、ホルモン、ビタミン、ペプチド、例えばarg-gly-asp(RGD)、成長因子、ビリルビン、トランスフェリン、葉酸塩あるいは他の成分が含まれるが、これらに限定はされない。
【0049】
本発明のさらに他の側面において、両性リポソームは、膜形成する分子または膜配置分子(これは粒子を立体的に安定化する)を含有することができる。このような分子は当分野で知られており、これには、両親媒性デキストラン、ポリシアル酸、ヒドロキシエチルデンプン、ヒアルロン酸、ポリエチレングリコール、ツイーン(Tween)80またはGM1ガングリオシドが含まれるが[例えば、Woodleら、Biochim. Biophys. Acta、1113(2)、171-179、(1992);Allenら、Biochim. Biophys. Acta、981(1)、27-35、(1989)]、これらの物質に限定はされない。上記した分子は、両親媒性の性質を有し、上記した部分から選択することができる少なくとも1つの親水性ドメインを含有し、少なくとも1つの疎水性ドメイン(これは脂質であることが非常に多い)、12個またはそれ以上の炭素原子を含む1つまたはそれ以上のアルキル鎖あるいは12個またはそれ以上の炭素原子を含む1つまたはそれ以上のアシル鎖をさらに含有する。最も多く使用される両親媒性分子には、DSPE-mPEG、DMPE-mPEGおよび8〜24個の炭素原子のN-アシル鎖長を有するセラミドに結合したポリエチレングリコールが含まれる。
【0050】
疎水性部分のサイズが、これらの立体的シールド部分の拡散時間に関係していることが当業者に知られている[例えば、Mok,K.W.ら、(1999)、Biochim. Biophys. Acta 1419、137-150;Silvius,J.R.およびZuckermann,M.J.、(1993)、Biochemistry 32、3153-3161;Webb,M.S.ら、(1998)、Biochim. Biophys. Acta 1372、272-282;Wheeler,J.J.ら、(1999)、Gene Ther. 6、271-281;Zhang,Y.P.ら、(1999)、Gene Ther. 6、1438-1447に示されている]。即ち、立体シールドは、脊椎動物または哺乳動物におけるそのような粒子の循環時間の範囲内で、一定または一時的な性質であろう。また、立体的安定化ポリマーを、脂質二重層の外表面および内表面の両側にグラフト化することができるか、または外表面側のみに限定することもできる。これを、該部分挿入の異なる方法によって達成することができる[例えば、Shi Fら、(2002)、Biochemical Journal 366、333-341に示されている]。
【0051】
他の効果の中で、立体安定剤は、血流中に粒子を注入したときに、RES(細網内皮系)による粒子の取込みを最小にする。
【0052】
また、細胞標的化リガンドおよび粒子を立体的に安定化する分子を含有する両性リポソームも、本発明の範囲内である。リガンドおよび立体的に安定化する分子の両方を含有する薬物供給系が当分野で知られている[例えば、Hu-Lieskovanら、Cancer Res.、65(19)、8984-8992、(2005)またはSchiffelersら、Nucleic Acid Research、32(19)、(2004)]。
【0053】
本発明のさらなる側面は、活性物質または成分(薬物、例えば核酸薬物、例えばオリゴヌクレオチドおよびプラスミドを含む)の供給または標的化供給のための担体として、本発明の両性リポソームを含有する医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は、適当な薬理学的に許容しうるビヒクル中に配合することができる。この目的のために、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水などのビヒクルが当業者によく知られている。
【0054】
ある種の態様において、該医薬組成物を、ヒトまたは非ヒト動物の炎症性、免疫性または自己免疫性疾患、癌および/または代謝性疾患の治療または予防に使用することができる。
【0055】
本発明のなおさらなる側面は、ヒトまたは非ヒト動物を治療するための方法であって、活性物質または成分のための担体として本発明の両性リポソームを含有する医薬組成物を、特定の器官もしくは複数の器官、腫瘍、または感染もしくは炎症部位に標的化する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、Amphoter I系におけるアニオン性およびカチオン性モデル脂質の間の異なる比率について、κを計算した結果をグラフで示すものである。左パネル:pHおよびアニオン性脂質の割合(%)に応答したκの表面プロット。右パネル:選択した量のアニオン性脂質に対するpH応答の詳細分析。
【0057】
【図2】図2は、Amphoter II系におけるアニオン性およびカチオン性モデル脂質の間の異なる比率について、κを計算した結果をグラフで示すものである。左パネル:pHおよびアニオン性脂質の割合(%)に応答したκの表面プロット。右パネル:選択した量のアニオン性脂質に対するpH応答の詳細分析。
【0058】
【図3】図3は、Amphoter III系におけるアニオン性およびカチオン性モデル脂質の間の異なる比率について、κを計算した結果をグラフで示すものである。左パネル:pHおよびアニオン性脂質の割合(%)に応答したκの表面プロット。右パネル:選択した量のアニオン性脂質に対するpH応答の詳細分析。
【0059】
【図4】図4は、様々な対イオンサイズによるAmphoter II混合物のアニオン性またはカチオン性状態の安定化を示す。左パネル:等しい対イオンサイズの分析。右パネル:比較的大きいカチオン性対イオンによるアニオン性状態の排他的な安定化。CA:対アニオン;CC:対カチオン;記号説明中の数字は分子体積をÅ3で示す。
【0060】
【図5】図5は、様々な対アニオンによるカチオン性Amphoter II脂質相の非対称安定化を示す。製造中に、カチオン性脂質相を比較的大きいアニオン(CA120)で安定化する。リポソームを中性pHに調整し、緩衝組成物を比較的小さい対アニオン(CA21)と交換する。ここで酸性pHに遭遇したリポソームは、脂質相がさらに低いκ値を有するので、融合しがちになる。CA:対アニオン;CC:対カチオン;記号説明中の数字は分子体積をÅ3で示す。
【0061】
【図6】図6は、中性脂質をさらに含有するAmphoter II系における外部pHに応答したκの計算をグラフで示すものである。50%の中性脂質を、図の記号説明中に示したκ値を有する系に添加した。
【0062】
【図7】図7は、CiP緩衝液におけるpHジャンプ後のDOTAP/CHEMSリポソームのサイズを示す。66モル%CHEMS(クロス)、75モル%CHEMS(アステリスク)または100モル%CHEMS(ドット)を含有するDOTAPリポソームを、pH8において製造し、表示したpHにジャンプさせ、比較的低いpHにおける1時間インキュベートの後に中和した。サイズを、サイクルの終点で測定した。
【0063】
【図8】図8は、MoCHolおよびCHEMSを含有するAmphoter II系の融合挙動を示す。左:系のκ値の計算。右:CiP緩衝液中のCHEMSおよびMoCholの異なる混合物のpHジャンプ後の実験融合結果。記号説明中の割合(%)は混合物中のCHEMSの量を表す。
【0064】
【図9】図9は、モノアルキル脂質を含有するAmphoter II系の融合挙動を示す。左:系のκ値の計算。右:CiP緩衝液中のオレイン酸およびMoCholの異なる混合物のpHジャンプ後の実験融合結果。記号説明中の割合(%)は、混合物中のオレイン酸の量を表す。
【0065】
【図10】図10aおよび10bは、0%〜50%のPOPCを含む混合物のκ(min)に対するDOTAP/DMGSまたはMoChol/DOGSからのリポソームの融合強度[マトリックスC/A=0.17〜0.75(DOTAP/DMGS);C/A=0.33〜3(MoChol/DOGS)-対-pHにおける%ΣFRETとして表す]のプロットを示す。参照κ(min)は、C/A=0.66(DOTAP/DMGS)またはC/A=1(MoChol/DOGS)についてモデル化した。0%POPCの%ΣFRETを100に設定した。
【0066】
【図11】図11aおよび11bは、0%〜50%のDOPEを含む混合物のκ(min)に対するDOTAP/DMGSまたはMoChol/DOGSからのリポソームの融合強度[マトリックスC/A=0.17〜0.75(DOTAP/DMGS);C/A=0.33〜3(MoChol/DOGS)-対-pHにおける%ΣFRETとして表す]のプロットを示す。参照κ(min)は、C/A=0.66(DOTAP/DMGS)またはC/A=1(MoChol/DOGS)についてモデル化した。0%DOPEの%ΣFRETを100に設定した。
【0067】
【図12】図12aおよび12bは、0%〜50%のコレステロールを含む混合物のκ(min)に対するDOTAP/DMGSまたはMoChol/DOGSからのリポソームの融合強度[マトリックスC/A=0.17〜0.75(DOTAP/DMGS);C/A=0.33〜3(MoChol/DOGS)-対-pHにおける%ΣFRETとして表す]のプロットを示す。参照κ(min)は、C/A=0.66(DOTAP/DMGS)またはC/A=1(MoChol/DOGS)についてモデル化した。0%コレステロールの%ΣFRETを100に設定した。
【0068】
【図13】図13aおよび13bは、0%〜50%のPOPC/コレステロール混合物(1:1)を含む混合物のκ(min)に対するDOTAP/DMGSまたはMoChol/DOGSからのリポソームの融合強度[マトリックスC/A=0.17〜0.75(DOTAP/DMGS);C/A=0.33〜3(MoChol/DOGS)-対-pHにおける%ΣFRETとして表す]のプロットを示す。参照κ(min)は、C/A=0.66(DOTAP/DMGS)またはC/A=1(MoChol/DOGS)についてモデル化した。0%POPC/コレステロールの%ΣFRETを100に設定した。
【0069】
【図14】図14は、MoChol/DOGSおよび10%〜50%の異なる中性もしくは双性イオン性脂質を含有するリポソームの融合強度(マトリックスC/A=0.33〜3-対-pHにおけるΣFRETとして表す)を示す。点線は、0%の中性もしくは双性イオン性脂質を含むリポソームの融合強度を示す。
【0070】
【図15】図15は、MoChol/DOGSおよび10%〜50%の異なるPOPC/Chol混合物を含有するリポソームの融合強度(マトリックスC/A=0.33〜3-対-pHにおけるΣFRETとして表す)を示す。点線は、0%の中性もしくは双性イオン性脂質を含むリポソームの融合強度を示す。
【0071】
【図16】図16は、DC-Chol/Chemsを含有するリポソームの融合ゾーンと等電点の間の相関を示す。d(pH-IP)は、FRETを測定したpHと、適切なC/A比に対する等電点の間の差である。
【0072】
【図17】図17は、siRNA標的化Plk-1を封入した、表77からの中性および/または双性イオン性脂質を含有する全てのAmphoter IリポソームのIC50値-対-κ(min)値のプロットを示す(IC50値は、実施例8に記載したHela細胞の試験管内トランスフェクションから導いた)。
【0073】
【図18】図18は、siRNA標的化Plk-1を封入した、表78からの中性および/または双性イオン性脂質を含有する全てのAmphoter IIリポソームのIC50値-対-κ(min)値のプロットを示す(IC50値は、実施例8に記載したHela細胞の試験管内トランスフェクションから導いた)。
【0074】
【図19】図19は、表77および表78からの中性および/または双性イオン性脂質を含有する全ての両性リポソームのサイズ-対-dκ(pH8)のプロットを示す。
【0075】
【図20】図20は、siRNA標的化Plk-1(黒棒)または非標的化スクランブルsiRNA(白棒)を封入し、かつ、中性および/または双性イオン性脂質を含有しないか、または異なる中性および/または双性イオン性脂質を表示したモル量で含有する、異なるDODAP/DMGS(C/A=0.5)両性リポソームでトランスフェクションしたHela細胞の%細胞生存性(偽処理細胞に対して正規化した)を示す。
【0076】
【図21】図21は、siRNA標的化Plk-1(黒棒)または非標的化スクランブルsiRNA(白棒)を封入し、かつ、中性および/または双性イオン性脂質を含有しないか、または異なる中性および/または双性イオン性脂質を表示したモル量で含有する、異なるHisChol/DMGS(C/A=0.5)両性リポソームでトランスフェクションしたHela細胞の%細胞生存性(偽処理細胞に対して正規化した)を示す。
【0077】
【図22】図22は、siRNA標的化Plk-1(黒棒)または非標的化スクランブルsiRNA(白棒)を封入し、かつ、中性もしくは双性イオン性脂質として漸増モル量のPOPC/Chol混合物(モル比0.5)を含有する、異なるChim/DMGS(C/A=0.5)両性リポソームでトランスフェクションしたHela細胞の%細胞生存性(偽処理細胞に対して正規化した)を示す。
【0078】
【図23】図23は、siRNA標的化Plk-1(黒棒)または非標的化スクランブルsiRNA(白棒)を封入し、かつ、中性もしくは双性イオン性脂質として漸増モル量のPOPC/Chol混合物(モル比0.5)を含有する、異なるDC-Chol/DMGS(C/A=0.5)両性リポソームでトランスフェクションしたHela細胞の%細胞生存性(偽処理細胞に対して正規化した)を示す。
【0079】
【図24】図24は、異なる中性および/または双性イオン性脂質を表示したモル量で含有し、かつ、siRNA標的化Plk-1を封入した、異なるIPを有する2種類の異なる両性脂質混合物(HisChol/DMGSおよびDODAP/DMGS)からの異なるIC50値-対-IP値のプロットを示す。
【0080】
【図25】図25は、siRNA標的化ApoB100または非標的化スクランブル(scr)siRNAをそれぞれ封入したDOTAP/DOGS/Chol(15:45:40)両性リポソーム配合物でトランスフェクションした初代マウス肝細胞の相対的ApoB発現を%で示す(未処理細胞と比較)。
【0081】
【図26】図26は、siRNA標的化ApoB100または非標的化スクランブル(scr)siRNAをそれぞれ封入したDODAP/DMGS/Chol(24:36:40)両性リポソーム配合物でトランスフェクションした初代マウス肝細胞の相対的ApoB発現を%で示す(未処理細胞と比較)。
【0082】
【図27】図27は、リポソーム配合物F5、F7およびF8の尾静脈注射の2時間後の、マウスの肝臓および脾臓からの低温切開片のCy5.5ラベル化siRNAのシグナルを示す(平均強度として)。
【発明を実施するための形態】
【0083】
「荷電可能」とは、両親媒性物質が、pH4〜pH8の範囲内のpKを有することを意味する。従って、荷電可能な両親媒性物質は、弱い酸または塩基であることができる。「安定」な両親媒性物質は、強い酸または塩基であり、pH4〜pH8の範囲で実質的に安定な電荷を有する。
【0084】
本明細書中で「両性」とは、アニオン性およびカチオン性の両方の荷電した基を含有する物質、物質混合物または超分子複合体(例えば、リポソーム)を意味し、ここで、
(1)少なくとも1つの、所望により両方の、カチオン性およびアニオン性両親媒性物質は荷電可能であり、pK4〜8の少なくとも1つの荷電した基を有し、
(2)pH4においてカチオン電荷が主であり、そして
(3)pH8においてアニオン電荷が主である。
【0085】
結果として、該物質または物質混合物は、pH4〜pH8の間で中性正味電荷の等電点を有する。この定義により、両性の性質は双性イオン性の性質とは異なる(双性イオンは、上記した範囲のpKを持たないため)。その結果、双性イオンは、広範なpH値にわたり本質的に中性に荷電している(ホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミンは、双性イオン性の性質を有する中性脂質である)。
【0086】
本明細書において、「C/A」または「C/A比」または「C/Aモル比」とは、両親媒性物質の混合物中のカチオン性両親媒性物質/アニオン性両親媒性物質のモル比を意味する。
【0087】
本明細書において、「κ(min)」とは、関数κtotal(pH)の最小値を意味する。
本明細書において、「κ(中性)」とは、中性もしくは双性イオン性脂質またはその混合物のκ値を意味する。
【0088】
本明細書において、「IC50」とは、標的mRNAの50%ノックダウンまたは増殖アッセイの場合には細胞生存性の50%阻害を導くオリゴヌクレオチドの阻害濃度を意味する。
【0089】
以下に挙げる脂質のリストには、中性、双性イオン性、アニオン性、カチオン性または両性の脂質の具体例が含まれる。この脂質リストは、決して本開示の範囲を限定するものではない。
脂質の省略形を本明細書中で使用する。これら省略形の多くは、文献において標準的に使用されているものである。
【0090】
中性もしくは双性イオン性脂質
PC:ホスファチジルコリン(未特定の膜アンカー);
PE:ホスファチジルエタノールアミン(未特定の膜アンカー);
SM:スフィンゴミエリン(未特定の膜アンカー);
DMPC:ジミリストイルホスファチジルコリン;
DPPC:ジパルミトイルホスファチジルコリン;
DSPC:ジステアロイルホスファチジルコリン;
POPC:1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルコリン;
DOPC:ジオレオイルホスファチジルコリン;
DOPE:ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン;
DMPE:ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン;
DPPE:ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン;
DphyPE:ジフィタノイルホスファチジルエタノールアミン;
DlinPE:ジリノレオイルホスファチジルエタノールアミン;
Chol:コレステロール。
【0091】
また、上に挙げたジアシル基を含む中性もしくは双性イオン性脂質のあらゆるジアルキル誘導体も、本発明の範囲内である。
【0092】
アニオン性脂質
CHEMS:コレステロールヘミスクシネート;
Chol-COOHまたはChol-C1:コレステリル-3-カルボン酸;
Chol-C2:コレステロールヘミオキサレート;
Chol-C3:コレステロールヘミマロネート;
Chol-C3N:N-(コレステリル-オキシカルボニル)グリシン;
Chol-C5:コレステロールヘミグルタレート;
Chol-C6:コレステロールヘミアジペート;
Chol-C7:コレステロールヘミピメレート;
Chol-C8:コレステロールヘミスベレート;
Chol-C12:コレステロールヘミドデカンジカルボン酸;
Chol-C13N:12-コレステリルオキシカルボニルアミノドデカン酸;
【0093】
以下の一般式で示されるコレステロールヘミジカルボン酸およびコレステリルオキシカルボニルアミノカルボン酸:
【化1】

[式中、ZはCまたは-NH-であり、nは1〜29のいずれかである];
【0094】
DGSまたはDG-Succ:ジアシルグリセロールヘミスクシネート(未特定の膜アンカー);
DOGSまたはDOG-Succ:ジオレオイルグリセロールヘミスクシネート;
DMGSまたはDMG-Succ:ジミリストイルグリセロールヘミスクシネート;
DPGSまたはDPG-Succ:ジパルミトイルグリセロールヘミスクシネート;
DSGSまたはDSG-Succ:ジステアロイルグリセロールヘミスクシネート;
POGSまたはPOG-Succ:1-パルミトイル-2-オレオイルグリセロール-ヘミスクシネート;
DOGM:ジオレオイルグリセロールヘミマロネート;
DOGG:ジオレオイルグリセロールヘミグルタレート;
DOGA:ジオレオイルグリセロールヘミアジペート;
DMGM:ジミリストイルグリセロールヘミマロネート;
DMGG:ジミリストイルグリセロールヘミグルタレート;
DMGA:ジミリストイルグリセロールヘミアジペート;
DOAS:4-{(2,3-ジオレオイル-プロピル)アミノ}-4-オキソブタン酸;
DOAM:3-{(2,3-ジオレオイル-プロピル)アミノ}-3-オキソプロパン酸;
DOAG:5-{(2,3-ジオレオイル-プロピル)アミノ}-5-オキソペンタン酸;
DOAA:6-{(2,3-ジオレオイル-プロピル)アミノ}-6-オキソヘキサン酸;
DMAS:4-{(2,3-ジミリストイル-プロピル)アミノ}-4-オキソブタン酸;
DMAM:3-{(2,3-ジミリストイル-プロピル)アミノ}-3-オキソプロパン酸;
DMAG:5-{(2,3-ジミリストイル-プロピル)アミノ}-5-オキソペンタン酸;
DMAA:6-{(2,3-ジミリストイル-プロピル)アミノ}-6-オキソヘキサン酸;
DOP:2,3-ジオレオイル-プロパン酸;
DOB:3,4-ジオレオイル-ブタン酸;
DOS:5,6-ジオレオイル-ヘキサン酸;
DOM:4,5-ジオレオイル-ペンタン酸;
DOG:6,7-ジオレオイル-ヘプタン酸;
DOA:7,8-ジオレオイル-オクタン酸;
DMP:2,3-ジミリストイル-プロパン酸;
DMB:3,4-ジミリストイル-ブタン酸;
DMS:5,6-ジミリストイル-ヘキサン酸;
DMM:4,5-ジミリストイル-ペンタン酸;
DMG:6,7-ジミリストイル-ヘプタン酸;
DMA:7,8-ジミリストイル-オクタン酸;
【0095】
DOG-GluA:ジオレオイルグリセロール-グルコロン酸(1-または4-結合);
DMG-GluA:ジミリストイルグリセロール-グルコロン酸(1-または4-結合);
DO-cHA:ジオレオイルグリセロールヘミシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸;
DM-cHA:ジミリストイルグリセロールヘミシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸;
PS:ホスファチジルセリン(未特定の膜アンカー);
DOPS:ジオレオイルホスファチジルセリン;
DPPS:ジパルミトイルホスファチジルセリン;
PG:ホスファチジルグリセロール(未特定の膜アンカー);
DOPG:ジオレオイルホスファチジルグリセロール;
DPPG:ジパルミトイルホスファチジルグリセロール;
Chol-SO4:コレステロールスルフェート;
PA:ホスファチジン酸(未特定の膜アンカー);
DOPA:ジオレオイルホスファチジン酸;
SDS:ドデシル硫酸ナトリウム;
Cet-P:セチルホスフェート;
MA:ミリスチン酸;
PA:パルミチン酸;
OA:オレイン酸;
LA:リノール酸;
SA:ステアリン酸;
NA:ネルボン酸;
BA:ベヘン酸。
【0096】
また、上に挙げたジアシル基を含むアニオン性脂質のあらゆるジアルキル誘導体も、本発明の範囲内である。
【0097】
カチオン性脂質
MoChol:4-(2-アミノエチル)-モルホリノ-コレステロールヘミスクシネート;
HisChol:ヒスタミニル-コレステロールヘミスクシネート;
CHIM:コレステロール-(3-イミダゾール-1-イルプロピル)カルバメート;
DmC4Mo2:4-(2-アミノエチル)-モルホリノ-コレステロール-2,3-ジメチルヘミスクシネート;
DmC3Mo2:4-(2-アミノエチル)-モルホリノ-コレステロール-2,2-ジメチルヘミマロネート;
C3Mo2:4-(2-アミノエチル)-モルホリノ-コレステロール-ヘミマロネート;
C3Mo3:4-(2-アミノプロピル)-モルホリノ-コレステロール-ヘミマロネート;
C4Mo4:4-(2-アミノブチル)-モルホリノ-コレステロール-ヘミスクシネート;
C5Mo2:4-(2-アミノエチル)-モルホリノ-コレステロール-ヘミグルタレート;
C6Mo2:4-(2-アミノエチル)-モルホリノ-コレステロール-ヘミアジペート;
C8Mo2:4-(2-アミノエチル)-モルホリノ-コレステロール-ヘミアジペート;
Chol-C3N-Mo3:[(3-モルホリン-4-イル-プロピルカルバモイル)-メチル]-カルバミン酸コレステリルエステル;
Chol-C3N-Mo2:[(2-モルホリン-4-イル-エチルカルバモイル)メチル]-カルバミン酸コレステリルエステル;
Chol-C4N-Mo2:[(2-モルホリン-4-イル-エチルカルバモイル)エチル]-カルバミン酸コレステリルエステル;
Chol-DMC3N-Mo2:[1-メチル-2-(2-モルホリン-4-イル-エチルカルバモイル)プロピル]-カルバミン酸コレステリルエステル;
Chol-C4Hex-Mo2:2-(2-モルホリン-4-イル-エチルカルバモイル)-シクロヘキサンカルボン酸コレステリルエステル;
Chol-ベタイン:コレステリル-オキシカルボニル-メチル-トリメチルアンモニウムクロリド;
DDAB:ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド;
【0098】
1,2-ジアシル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン、例えば、
DOTAP:1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン;
DMTAP:1,2-ジミリストイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン;
DPTAP:1,2-ジパルミトイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン;
DSTAP:1,2-ジステアロイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン;
POTAP:パルミトイルオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン;
【0099】
1,2-ジアシル-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム-プロパン、例えば、
DODMHEAPまたはDORI:1,2-ジオレオイル-3-ジメチルヒドロキシエチル-アンモニウム-プロパン;
DMDMHEAPまたはDMRI:1,2-ジミリストイル-3-ジメチルヒドロキシエチル-アンモニウム-プロパン;
DPDMHEAPまたはDPRI:1,2-ジパルミトイル-3-ジメチルヒドロキシエチル-アンモニウム-プロパン;
DSDMHEAPまたはDSRI:1,2-ジステアロイル-3-ジメチルヒドロキシエチル-アンモニウム-プロパン;
PODMHEAPまたはPORI:パルミトイルオレオイル-3-ジメチルヒドロキシエチル-アンモニウム-プロパン;
【0100】
1,2-ジアシル-3-メチルジヒドロキシエチルアンモニウム-プロパン、例えば、
DOMDHEAP:1,2-ジオレオイル-3-メチルジヒドロキシエチルアンモニウム-プロパン;
DMMDHEAP:1,2-ジミリストイル-3-メチルジヒドロキシエチルアンモニウム-プロパン;
DPMDHEAP:1,2-ジパルミトイル-3-メチルジヒドロキシエチルアンモニウム-プロパン;
DSMDHEAP:1,2-ジステアロイル-3-メチルジヒドロキシエチルアンモニウム-プロパン;
POMDHEAP:パルミトイルオレオイル-3-メチルジヒドロキシエチル-アンモニウム-プロパン;
【0101】
1,2-ジアシル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン、例えば、
DODAP:1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン;
DMDAP:1,2-ジミリストイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン;
DPDAP:1,2-ジパルミトイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン;
DSDAP:1,2-ジステアロイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン;
PODAP:パルミトイルオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン;
【0102】
1,2-ジアシル-3-メチルヒドロキシエチルアンモニウム-プロパン、例えば、
DOMHEAP:1,2-ジオレオイル-3-メチルヒドロキシエチルアンモニウム-プロパン;
DMMHEAP:1,2-ジミリストイル-3-メチルヒドロキシエチルアンモニウム-プロパン;
DPMHEAP:1,2-ジパルミトイル-3-メチルヒドロキシエチルアンモニウム-プロパン;
DSMHEAP:1,2-ジステアロイル-3-メチルヒドロキシエチルアンモニウム-プロパン;
POMHEAP:パルミトイルオレオイル-3-メチルヒドロキシエチルアンモニウム-プロパン;
【0103】
1,2-ジアシル-3-ジヒドロキシエチルアンモニウム-プロパン、例えば、
DODHEAP:1,2-ジオレオイル-3-ジヒドロキシエチルアンモニウム-プロパン;
DMDHEAP:1,2-ジミリストイル-3-ジヒドロキシエチルアンモニウム-プロパン;
DPDHEAP:1,2-ジパルミトイル-3-ジヒドロキシエチルアンモニウム-プロパン;
DSDHEAP:1,2-ジステアロイル-3-ジヒドロキシエチルアンモニウム-プロパン;
PODHEAP:パルミトイルオレオイル-3-ジヒドロキシエチルアンモニウム-プロパン;
【0104】
1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン、例えば、
DOEPC:1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン;
DMEPC:1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン;
DPEPC:1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン;
DSEPC:1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン;
POEPC:パルミトイルオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン;
【0105】
DOTMA:N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド;
DOTIM:1-[2-(オレオイルオキシ)エチル]-2-オレイル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリニウムクロリド;
TMAG:N-(a-トリメチルアンモニオアセチル)-ジドデシル-D−グルタミン酸クロリド;
BCAT:O-(2R-1,2-ジ-O-(19Z,99Z-オクタデカジエニル)-グリセロール)-N-(ビス-2-アミノエチル)カルバメート;
DODAC:ジオレイルジメチルアンモニウムクロリド;
DORIE:1,2-ジオレイル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムプロパン;
DMRIE:1,2-ジミリスチル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムプロパン;
DOSC:1,2-ジオレオイル-3-スクシニル-sn-グリセロールコリンエステル;
DHMHAC:N,N-ジ-n-ヘキサデシル-N,N-ジヒドロキシエチルアンモニウムブロミド;
DHDEAB:N,N-ジ-n-ヘキサデシル-N-メチル,N-(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムクロリド;
DMHMAC:N,N-ミリスチル-N-(1-ヒドロキシプロパ-2-イル)-N-メチルアンモニウムクロリド;
DOTB:1,2-ジオレオイル-3-(4'-トリメチルアンモニオ)ブタノイル-sn-グリセロール;
DOSPA:2,3-ジオレイルオキシ-N-[2-(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオロアセテート;
DOGS*:ジオクタデシルアミド-グリシルスペルミン;
DOGSDSO:1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-スクシニル-2-ヒドロキシエチルジスルフィドオルニチン;
【0106】
SAINT脂質:合成両親媒性物質(学際的);
DPIM、DOIM:4,(2,3-ビス-アシルオキシ-プロピル)-1-メチル-1H-イミダゾール(未特定の膜アンカー);
MoDP:1,2-ジパルミトイル-3-N-モルホリン-プロパン;
MoDO:1,2-ジオレオイル-3-N-モルホリン-プロパン;
DPAPy:2,3-ビス-パルミトイル-プロピル-ピリジン-4-イル-アミン;
DC-Chol:3b-[N-(N9,N9-ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール;
TC-Chol:3b-[N-(N9,N9-トリメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール;
DAC-Chol:3b-(N-(N,N'-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール;
PipC2Chol:4{N-2-エチルアミノ[(3'-β-コレステリル)カルバモイル]}ピペラジン;
MoC2Chol:{N-2-エチルアミノ[(3'-β-コレステリル)カルバモイル]}モルホリン;
MoC3Chol:{N-2-プロピルアミノ[(3'-β-コレステリル)カルバモイル]}モルホリン;
N-メチル-PipChol:N-メチル{4-N-アミノ[(3'-β-コレステリル)カルバモイル]}ピペラジン;
PyrroC2Chol:{N-2-エチルアミノ[(3'-β-コレステリル)カルバモイル]}ピロリジン;
PipeC2Chol:{N-2-エチルアミノ[(3'-β-コレステリル)カルバモイル]}ピペリジン;
ImC3Chol:{N-2-プロピルアミノ[(3'-β-コレステリル)カルバモイル]}イミダゾール;
PyC2Chol:{N-2-エチルアミノ[(3'-β-コレステリル)カルバモイル]}ピリジン;
CTAB:セチルトリメチルアンモニウムブロミド;
NeoPhectinTM:カチオン性カルジオリピン、例えば、[1,3-ビス-(1,2-ビス-テトラデシルオキシ-プロピル-3-ジメチル-エトキシアンモニウムブロミド)-プロパン-2-オール]。
【0107】
また、上に挙げたジアシル基を含むカチオン性脂質のあらゆるジアルキル誘導体も、本発明の範囲内である。
【0108】
両性脂質
HistChol:Nα-ヒスチジニル-コレステロール-ヘミスクシネート;
HistDG:1,2-ジパルミトイルグリセロール-ヘミスクシネート-N-ヒスチジニル-ヘミスクシネート、およびジステアロイル-、ジミリストイル、ジオレオイルまたはパルミトイル-オレオイル誘導体;
IsoHistSuccDG:1,2-ジパルミトイルグリセロール-O-ヒスチジニル-Nα-ヘミスクシネート、およびジステアロイル-、ジミリストイル、ジオレオイルまたはパルミトイル-オレオイル誘導体;
AC:アシルカルノシン、ステアリル-およびパルミトイルカルノシン;
HCChol:Nα-ヒスチジニル-コレステロールカルバメート。
【0109】
また、上に挙げたジアシル基を含む両性脂質のあらゆるジアルキル誘導体も、本発明の範囲内である。
【0110】
MoChol:4-(2-アミノエチル)-モルホリノ-コレステロールヘミスクシネート:
【化2】


HisChol:ヒスタミニル-コレステロールヘミスクシネート:
【化3】

【0111】
本発明の1つの側面は、リポソーム、特に両性リポソームの製造に有用な脂質に関する。この側面の1つの態様において、該脂質は、以下の一般式で示される:
【化4】

[式中、R1およびR2は、独立して、0、1または2個のエチレン性不飽和結合を有するC8〜C30アルキルまたはアシル鎖であるか、あるいはR1またはR2の一方はHであってよく、
3は、1〜8個のC原子を有する、所望により-OHで置換されていてもよい非分岐、分岐または環式のアルキル、アルケニル、アルキレンまたはアルキニルまたはアリール基であり、
4は、以下の構造のいずれかから選択される:
【化5】


または
【化6】


(式中、XおよびY1およびY2は、独立して、1〜8個のC原子を有する、所望により-OHで置換されていてもよい非分岐、分岐または環式のアルキル、アルケニル;アルキレンまたはアルキニルまたはアリール基であるか、あるいはY2はHであってよい)]。
【0112】
この群の脂質の化学的代表例には、以下のものが含まれるが、これらに限定はされない:
1,2-ジアシル-3-エチル-(メトキシカルボニル-エチル)アンモニウム-プロパン:
【化7】


1,2-ジアシル-3-メチル-(メトキシカルボニル-エチル)アンモニウム-プロパン:
【化8】


2-[(2,3-ジアシルオキシプロピル)(メチル)アミノ]エチルアセテート:
【化9】


[式中、R1およびR2は、独立して、0、1または2個のエチレン性不飽和結合を有するC8〜C30アシル鎖であるか、あるいはR1またはR2の一方はHであってよい]。
【0113】
この群の脂質の具体的な脂質には、例えば、1,2-ジオレオイル-3-メチル-(メトキシカルボニル-エチル)アンモニウム-プロパン(DOMCAP)または1,2-ジオレオイル-3-メチル-(メトキシカルボニル-メチル)アンモニウム-プロパン(DOMGME)が含まれる。
【0114】
この側面の別の態様において、脂質は、以下の一般式のいずれかを有することができる:
【化10】

または
【化11】

[式中、RおよびRは、独立して、0、1または2個のエチレン性不飽和結合を有するC〜C30アルキルまたはアシル鎖であるか、あるいはRまたはRの一方はHであってよい]。
【0115】
この群の脂質の具体的な脂質は、例えば、1,2-ジオレオイル-3-N-ピロリジン-プロパン(DOP5P)または1,2-ジオレオイル-3-N-ピリジニウム-プロパン ブロミド塩(DOP6P)である。
【0116】
分子体積
脂質形状理論は、所与の両親媒性物質の疎水性部分と極性頭部基の間の形状バランスに基づいており、これら2つの分子部分の絶対値に基づいていない。本発明によれば、κは、脂質の極性部分と非極性部分の間の体積比である。
【数1】

【0117】
分子体積を算出するために様々な異なる方法が、当業者にとって利用可能であり、選択可能な方法および出典が、例えば、Connolly,M.J.の論文[Am. Chem. Soc. (1985) 107、1118-1124]およびその中の参照文献において議論されているか、または、http://www.ccl.net/cca/documents/molecular-modeling/node5.htmlに示されている。
【0118】
通常、分子体積は、ファンデルワールス半径(rivdW)と称される値を各原子種に、所与の原子対(iおよびj)に対するこれらの量の合計が、これらの最も近い可能な距離(dij)に等しくなるように割り当てることによって算出される:
【数2】

【0119】
「最良」のファンデルワールス半径の多くの異なる表が存在するが、異なる著者に由来する対応する原子の値は同様である。幾何的に言うと、ファンデルワールス半径は、原子を囲む球状「シールド」としてイメージすることができ、2つの非結合原子間の最も近い距離は、各シールドが触れるときである。しかし、共有結合原子のシールドは、結合長さが原子のファンデルワールス半径の合計よりも短いので、交差している。分子のファンデルワールス表面(ファンデルワールス外皮とも称される)は、個々の原子の球からなり、その交差部分が除かれている。
【0120】
単一分子(即ち、共有結合に沿う任意の2つの原子の間に通路が存在する分子)については、ファンデルワールス外皮は閉じた表面であり、従って、それは体積を有する。この体積が分子体積またはファンデルワールス体積と称され、通常はÅ3で表される。コンピューターで分子体積を算出する直接的な方法は、数値積分法による。
【0121】
ある種の態様において、脂質分子ならびにそれぞれの頭部および尾部フラグメントの分子体積を、DS Viewer Pro 5.0 (Accelrys Inc.、San Diego、CA)を用いて算出することができ、それぞれのファンデルワールス半径内の体積を算出した。
【0122】
典型的な膜フラグメントは、通常のリン脂質の疎水性部分である1,2-ジアシル-エチレングリコールであり、元のグリセロールの3’炭素原子はホスホコリン頭部基に託す。また、同じフラグメントが、通常のカチオン性脂質DOTAPおよびその誘導体にも見られ、他の極性頭部基を有するジアシルグリセロール(例えばジミリストイルグリセロールヘミスクシネートなど)にも見られる。
【0123】
コレステロール誘導体については、全ステロール(3'酸素ではない)が疎水性部分と定義され、頭部基はそれに補完的である。
【0124】
同様に、カチオン性またはアニオン性アルキル誘導体については、極性頭部基は、アルキル鎖のC1炭素を含む極性フラグメントと定義される。従って、(n−1)炭素原子を含む残りの鎖が、疎水性の非極性部分を表す。
【0125】
分子体積は、算出に使用する定数に依存し、分子の立体配座によって影響を受ける。疎水性非極性フラグメントに対して得られる典型的な値は、以下の通りであり、これをさらなる算出のために使用した:

【表2】

【0126】
多くの対アニオンの分子体積が同じように導かれたが、Na+またはK+については、強く結合した水和層を考慮する。以下に挙げる値を、さらなる算出のために使用した:

【表3】

【0127】
荷電した極性頭部基は異なる代表例を有しており、この群のいくつかの個々の構成員について、分子体積を、以下に、本明細書中の表60、表61および表62に示す。

【表4】

【0128】
脂質の分子体積を決定するために、他の方法を使用することができる。また、いくつかのパラメーター(例えば、膜尾部と極性頭部の間の正確な分離点;水和ケージ中の水分子の数またはファンデルワールス半径)を、モデルの全般的適用性に影響を与えることなく変化させることもできる。同じ理解で、分子体積における比較的微妙な変化、特に、プロトンの解離または立体配座の変化に由来する微妙な変化を無視することができる。ある種の態様において、表2、3、4、60、61および62に示した分子体積を、本発明において使用することができる。
【0129】
対イオンは、実際の極性頭部基と比べると、同じカテゴリーのサイズに分類される。即ち、脂質極性領域からの対イオンの離脱または付加は、全頭部基サイズに、従って頭部/尾部バランスκに大きな効果を有することがわかっている。1つの例として、CHEMSナトリウム塩は頭部基サイズ141Aを有するが、これがpH4における未解離形態で76Aに低下する。κは、それぞれ0.42および0.23の間で変化する。CHEMSはpH7.5およびそれ以上においてラメラ相を形成するが、低pHにおいては六角形相を採る。
【0130】
既知の相挙動を有する他の脂質を用いて、ラメラ相と六角形相の間の識別のためのκ値を選択することができる(1つの例を以下の表5に示す)。PE頭部基は、末端アミノ基とホスホエステル基中の酸素の間で水素結合により分子内環構造を形成することができる(ベタイン構造)[例えば、Pohleら、J. Mol. Struct. 408/409、(1997)、273-277]。PC頭部基は、立体的に遮蔽されており、代わりに、そのそれぞれの荷電した基に対イオンを採用する。
【表5】

【0131】
両性脂質混合物における分子体積のpH誘導変化
第1のモデルにおいては、荷電したアニオン性およびカチオン性脂質の間で脂質塩形成は起こらない。これは、LiおよびSchick[Biophys. J.、2001、80、1703-1711]の仮定を反映しており、脂質塩を形成するのには立体的に遮蔽されている脂質の場合であろう(独立イオンモデル)。
【0132】
膜における脂質種は、未解離のアニオンおよびカチオンならびに解離したアニオンおよびカチオンを含有し、この後者は、そのそれぞれの対イオンと複合している。このような混合物のκ値は、その成分の加重和であると仮定される:
【数3】


[式中、アニオン0またはカチオン0は、未荷電の種を示し、アニオン-またはカチオン+は、それぞれの荷電した種を示し、cは濃度を示す]。
【0133】
このような仮定のもとで存在する個々の種の量は、酸または塩基解離の既知の平衡定数Kから算出することができる:
【数4】


【数5】


【数6】


【数7】


[式中、アニオン0は未解離のアニオンであり、アニオン-は負に荷電した分子であり、アニオンtotは、それぞれのアニオンの合計濃度である;カチオンは同じ体系に従い、c(H)およびKは、それぞれ酸または塩基のプロトン濃度および平衡定数である]。
【0134】
しかし、カチオン性およびアニオン性の両親媒性物質の間の可能な相互作用を考慮に入れると、混合物中に脂質塩が第5の種として生じる:
【数8】

【0135】
脂質塩において、カチオン性両親媒性物質は、アニオン性両親媒性物質の対イオンとして働き(逆も同様)、こうして、小さい対イオン(ナトリウムまたはホスフェートなど)を頭部基から移動させる。脂質塩は正味で荷電しておらず、その幾何は、両部分(小さい対イオンを含まない)の合計であると仮定しなければならない。従って:
【数9】

【0136】
塩形成は、最低濃度で存在する荷電した両親媒性物質によって制限される:
【数10】

【0137】
2つの荷電した両親媒性物質の間の塩形成は、このモデル内で完全であると仮定されるが、勿論、不完全な塩形成も仮定することができる。以下に挙げる計算は、塩が2つの脂質分子を含有することをさらに反映する。勿論、脂質塩形成時のさらなるある種の膜収縮を仮定すること、およびκ(塩)の寄与に異なる加重を置くことも可能である。
【0138】
モデル計算
脂質混合物の両性の性質を達成するために、脂質イオンの少なくとも1つは、pH感受性の弱い酸または塩基(「荷電可能」)であることが必要である。詳細な開示が国際公開第02/066012号に見られ、その内容は、参照することにより本明細書に援用される。性質が異なって、3種類の基本系が可能であり、ここで分析する:
「Amphoter I」:強カチオンおよび弱アニオン;
「Amphoter II」:弱カチオンおよび弱アニオン;
「Amphoter III」:弱カチオンおよび強アニオン。
【0139】
a.Amphoter I系
Amphoter I系は、両性の性質を達成するために過剰のpH感受性アニオンを必要とする。pH7から8において、アニオン性脂質は完全に荷電しており、全てのカチオン性脂質が消費されるまで塩形成が起こる。70モル%のアニオン性脂質と30モル%のカチオン性脂質を含む例においては、全てのカチオン性脂質および対応する30モル%のアニオン性脂質が脂質塩として存在し、一方、40モル%のアニオン性脂質が未結合であり、頭部基にその対イオンを採用する。
【0140】
中性条件から出発すると、pHの低下はアニオン性脂質を放電させ、対イオンの喪失のゆえにκ値がより小さくなり、なお荷電したアニオン性脂質の部分がカチオン性脂質の量に等しくなったときに最小に到達する。従って、κは、両性脂質混合物の等電点において最小である。pHがさらに低下すると、アニオン性脂質のますます少ない部分が荷電したままである。これは、脂質塩の解離および対イオンの採用を意味し、ここでは、脂質塩から遊離したカチオン性脂質を意味する。
【0141】
添付した図面の図1の左パネルは、混合物中のアニオン性脂質の量およびpHに依存するκの複雑な挙動を示す。「融合性の谷間」が現れ、55モル%を超え85モル%未満のアニオン性脂質を含むあらゆる両性混合物は、わずかに酸性の条件下で融合するが、より酸性の条件下および中性の両方において安定であることが予測される。
【0142】
50モル%未満のアニオン性脂質を含むAmphoter I混合物は、もはや両性ではない。これは、アニオンが、カチオン性脂質上の電荷を調節することはできるが、過補償することはできないためである。このような混合物は、pH依存性の融合を経るであろうが、低pHにおいて第2の安定相を提供しない。1:1複合体は、低pHにおいてのみラメラ相を採り、中性において融合を経る。
【0143】
図1に示した計算のために使用したパラメーターを、以下の表6に示す(体積はÅ3):
【表6】

【0144】
b.Amphoter II系
Amphoter II系は、アニオン:カチオン比の全範囲にわたり両性であることの明らかな利点を有しており、Amphoter IまたはAmphoter III系におけるような強イオンに対する電荷過補償を必要としない。モデル系の計算を図2に示す。
【0145】
計算のために使用したパラメーターを、以下の表7に示す(全ての体積はÅ3):
【表7】

【0146】
ここでも、脂質塩モデルは、中性ないしわずかにアルカリ性のpHにおいて、さらにわずかに酸性のpHにおいて安定な状態を予測し、その間に不安定性または融合性の顕著な谷間を予測する。
【0147】
Amphoter I系とは対照的に、融合状態は、アニオン性およびカチオン性の成分間の広範囲の異なる脂質比を横切って到達することができる。即ち、融合性の谷間は、比較的広い範囲のアニオン/カチオン比を横切って伸び、所与の系が融合性であるpHにわたって比較的大きい制御の程度を可能にする。
【0148】
c.Amphoter III混合物
安定なアニオンとpH感受性カチオンを含有するAmphoter III混合物は、中性pHにおいて脂質塩を形成することができない。これは、このpHにおいて荷電したカチオン性脂質が存在しないか、またはわずかしか存在しないためである。それは、初めにカチオンを創製するために酸性化の進行を必要とし、次いで塩形成を経ることができる。モデル系の計算を図3に示す。
【0149】
計算のために使用したパラメーターを、以下の表8に示す(全ての体積はÅ3):
【表8】

【0150】
図1および図3からわかるように、Amphoter III系は、Amphoter I系の鏡像のように挙動する。これらは、弱い脂質イオンが過剰に存在し、逆イオンの一定電荷を過補償する限り、融合性の谷間を提供する。Amphoter I系とは対照的に、融合のためのpHは、pH感受性脂質イオンのpKよりも高いところに位置する。
【0151】
融合の谷間の実験的証拠は、実施例1〜4に示されており、両性リポソームにおける脂質塩形成の中心仮説のための確認を提供する。
【0152】
本明細書中に記載するアルゴリズムは、広範囲の両性脂質混合物の融合挙動の予測を可能にする。予測のルールは、相互作用する脂質の単純な幾何的記述から誘導され、分子の実際の化学的表現からは独立している。即ち、既存および新規の脂質の組合せを、当業者は容易に試験することができ、意図した融合挙動を、合理的な方法で予測することができる。以下に挙げる鍵となるパラメーターは、そのような選択方法を示すことができるが、他の優先事項を、適用のそれぞれの目的に依存して設定することもできる。
【0153】
脂質塩のκ
脂質塩のκは、上記した式(7)で算出され、融合性六角形相を合理的に予測するためには適切には0.34または0.35より低いであろう。ある種の態様において、κは、0.3より低く、好ましくは0.25より低くてもよい。κ(塩)は、一緒にした極性頭部基が小さく、かつ一緒にした疎水性部分が大きいときに低くなる。好ましい頭部基体積の合計は、約300Å3またはそれより小さく、より好ましい態様において、この体積は220Å3より小さく、さらに好ましい値は170Å3より小さい。上で行った選択によれば、尾部基体積の好ましい合計は、650Å3より大きく、約1000Å3程度に大きくてよく、ここで、適当な頭部および尾部基の組合せは、好ましいκ(塩)値によって支配される。
【0154】
変化の振幅[d(κ)/d(pH)]
κに対して低い値を有する脂質塩は、対イオンの採用によってその等電点の上または下で安定化することができる。本発明の好ましい態様において、比較的大きい対イオンを用いて、両性脂質混合物のカチオン性またはアニオン性状態のいずれかを安定化する。図4は、Amphoter II系について、このような対イオンサイズからの依存性を示す。図4の計算のために使用したパラメーターを、以下の表9に示す:
【表9】

【0155】
図4の右パネルから、そのような安定化が非対称性でありうること、例えば、両性脂質混合物のカチオン性相のやや限定された安定化およびアニオン性相のより高い安定化を与えることが明らかになる。また、生理学的体液中に天然に存在しない対イオンを用いて、貯蔵中の安定性を改善することができる(このような貯蔵イオンを体液中に存在するナトリウムイオンと交換することは、生体内でのリポソームからの積荷の放出に有利であることもある)。脂質相の個々のまたは共通の安定化のための適切なイオン体積を選択することができる。このような安定化は、両性リポソームの製造および貯蔵に特に有用である。
【0156】
本発明のある種の態様において、比較的大きい対カチオンを用いて、中性条件において両性リポソームを安定化させる。好ましい態様において、このような対カチオンは、分子体積が50Åまたはそれ以上であり、より好ましい態様において、この体積は75Åを超え、該中性pHは、pH7〜8、より好ましくはおよそ生理学的pH7.4である。
【0157】
両性リポソームを医薬目的のために製造するときには、使用するイオンと適用経路との適合性を満たす必要がある。適する対カチオンは、イオンサイズを記載する上記の表3から選択することができる。医薬組成物に好ましい対カチオンは、ナトリウムまたはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス-ヒドロキシエチルアミノメタン、トリエチルアミン、アルギニン(特にL−アルギニン)などのそれぞれのイオン化された形態である。
【0158】
本発明の1つの態様において、両性リポソームを、低pHにおいてそのカチオン性状態で製造することができる。このような条件下で、リポソームは、ポリアニオン、例えば、タンパク質、ペプチドまたは核酸(大きいプラスミドまたは比較的小さいオリゴヌクレオチドを問わない)に結合することができる。このような結合は、両性リポソームへの該物質の封入効率の改善に有用である。
【0159】
酸性pHにおいて低κを有する脂質相を使用するのが有利である。大きい対アニオンの選択は、例えば、これらの条件下でのリポソームの製造および積荷の封入に対して、脂質相の安定化を容易にする。
【0160】
適する大きい対アニオンは、50Åより大きい分子体積を有し、好ましい大きい対イオンは、75Åより大きい分子体積を有する。適する対アニオンは、上記の表3から選択することができる。好ましい対アニオンは、シトレート、ピロホスフェート、バルビツレート、メチルスルフェートなどである。
【0161】
酸性条件下で封入すべき積荷と脂質相とを接触させた後、リポソームを中和し、未封入の積荷を所望により除去することができる。通常、未封入の積荷は脂質膜から分離する(両者が中性条件下で同じ電荷を保持するため)。両性リポソームは、その等電点より上で、例えば、pH7〜8において負に荷電しており、積荷分子は、そのようなpHにおいてポリアニオンとして存在する。これは、特に、1核酸塩基あたりに1つの負電荷を保持する核酸の場合である。このようなリポソームは、比較的小さい対アニオンと組合せて低pHに暴露したときに、効果的な不安定化を経ることができる。これは、例えば、そのようなリポソームの全身投与および細胞取込みおよびエンドサイトーシスの後の場合である。クロリドまたはホスフェートが、動物(あらゆる動物)、哺乳動物またはヒトの体液において最も普通の対アニオンである。ホスフェート、なおさらにクロリドは、水和殻を持たないか、またはほとんど持たない小さい対イオンであり、分子体積は<60Åである。
【0162】
図5は、リポソーム生成および使用のサイクルを示し、非対称性の対イオン使用による酸性条件下での脂質相の選択的な安定化および不安定化を示す。図5の計算に使用したパラメーターを、以下の表10に示す(体積はÅ):
【表10】

【0163】
等電点
両性リポソームの等電点の数学的説明が、国際公開第02/066012号に記載されている。両性リポソームの等電点を、広範囲の条件に調整することができ、異なるpK解離定数を有する個々の脂質の十分な化学的代表例が存在し、これが、当業者による両性リポソームを製造するために有用な成分および組合せの選択を可能にする。さらに、所与の両性脂質組成物の等電点を、Hafezら[Biophys. J.、79、(2000)、1438−1446]が記載しているように、アニオン性およびカチオン性脂質の間のモル比によって容易に調整することができる。
【0164】
本発明の両性リポソームのトランスフェクション効率は、両性脂質混合物の等電点に依存することがわかった。これを図24に示すが、驚くべきことに、コレステロールまたはコレステロールとPEもしくはPCの混合物を含有する本発明の両性リポソームは、特定範囲の等電点において細胞をより効率的にトランスフェクトすることを示す。
【0165】
本発明の1つの態様において、本発明の両性リポソームの等電点は、4〜7、好ましくは4.5〜6.5、最も好ましくは5〜6である。
【0166】
上記したアルゴリズムは、特に環境のpHに応答する脂質化学と得られる膜の安定性の間の構造-活性の関係を提供する。実験データは、さらにこの関係を示し、モデル予測を正当化する(例えば、実施例2、3、4ならびに対応する図7、図8および図9)。さらに、このモデルは、脂質混合物の等電点付近の融合を予測する。このような相互関係を実験において示すことができ、図16において分析する。
【0167】
上に示したデータは、モデル計算からの高度の予測可能性を示す。分子体積の考慮および電気的荷電のやや長期の相互作用から出発するアルゴリズムは、成分の立体的適合または不適合を反映せず、また、相転移温度および関連の分子移動を考慮しない(これは特殊な場合に生じるであろう)。
【0168】
両性系のコンピューター内スクリーニング
上記したアルゴリズムによって教示される定量的な構造-活性の関係は、コンピューター内スクリーニングを容易にし、合理的な選択および最適化を助ける。このようなスクリーニングを、それ自体で、または経験的検証と組合せて、例えば、実験パラメーターの使用または一連の脂質同族体中の選択したデータポイントの包含によって、使用することができる。
【0169】
アルゴリズムは、多くの技術的目的のための両性リポソームの選択を可能にする。より詳細な分析を、医薬用途における該両性リポソームの使用について以下に挙げる。このような医薬用途の中で、ヒトまたは非ヒト動物(好ましくは哺乳動物)の血流中への直接投与および非経口投与が特に重要である。両性リポソームは、特に、積荷分子の細胞内供給において、特別の適用可能性を有する。上記したように、細胞内への取込み中に、リポソームは、細胞のリポソームまたはエンドソーム中の酸性環境にさらされる。脂質相の不安定化(例えば、高い融合性による)は、エンドソーム脱出および細胞内供給を容易にすることが知られている。また、他の低pH環境が該融合を開始させることもできる(例えば、腫瘍または炎症部位において見られる低pH条件)。
【0170】
κ(塩)の好ましい低い値を有する両性リポソームは、意図したような融合相の形成または不安定化によって酸性化に有利に応答することがわかった。
【0171】
酸性条件に対するκ(塩)とκ(合計)の間の相違は、重要性が低い。これは、酸性条件下で不安定な脂質相は、細胞取込みに介入しないためである。さらに、製造のために該脂質相を安定化する方法は、上に記載されている。
【0172】
分析は、対カチオンサイズおよび混合物中のアニオン性脂質の割合に敏感である。上記したように、比較的大きい対カチオンは、選択を厳格性の低いものにする。これは、このパラメーターがdκ(pH8)を直接改善し、これが、低振幅を有する系がより機能的になることを意味するためである。多かれ少なかれ厳格な選択になるが、対カチオンサイズは、選択した系の観察される全体パターンを変化させない。このことは、文献において見ることができる対カチオンサイズの変動性を効果的に補償する。
【0173】
本発明は、中性脂質を含有する両性リポソームの別の配合物を提供することを目的とする。
中性脂質は、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質またはコレステロールなどの構造を含んでなる。これらの脂質は、pH3〜8で反応するpH応答性要素を有していないので、この範囲で分子幾何の変化は起こらない。中性脂質の個々のκ値に依存して、両性脂質対の双安定性挙動の希釈が起こり、d(κ)/d(pH)の険しさが比較的小さくなる(図6に示すように)。さらに、相ダイアグラム中の曲線が、荷電した脂質の希釈のために使用した中性脂質に依存して、より低いかまたはより高いκ値に向かってシフトする。図6の計算に使用したパラメーターを、以下の表11に示す(体積はÅ):
【表11】

【0174】
図6は、上記したAmphoter IIモデル系と組合せた、κ値がそれぞれ0.5、0.3または0.19である異なる中性脂質の添加に対する挙動を示す。この系の振幅は、Δκ=0.089から0.044に低下するが、最小値は、個々の中性成分のκに従う。
【0175】
中性脂質の添加は、融合挙動のゾーンを広げることができ、この目的のために、低いκ値を有する中性脂質を使用することができる。このような好ましい脂質は、κ値が0.3またはそれ未満であり、より好ましい脂質は、κ値が約0.2である。このような脂質の代表例は、ホスファチジルエタノールアミンである。ホスファチジルエタノールアミンは、末端アミノ基とホスフェートの間で内部塩架橋(ベタイン構造)を形成するものと考えられ、従って、対イオンは頭部基に採用されない。
【0176】
C14〜C18アルキル鎖を有するホスファチジルエタノールアミンは、両性リポソームの融合性を調節するための好ましい脂質である。
コレステロールが、低κを有する脂質の別の例であり、従って、両性脂質系の融合挙動を広げるであろう。
勿論、異なる中性脂質の混合物を用いて、そのような系の融合性と安定性の間のバランスを最適化することもできる。
【0177】
上記したアルゴリズムは、両性脂質系に対する中性脂質混合物の効果について定量的予測を行うことを容易にする。このような混合物は、リポソームの改善された安定性を与えることになり、さらに、血清タンパク質に対するさらに良好な耐性あるいは細胞への増強された取込みを与えることになるであろう。両性系の最適化は、多数の有用成分のゆえに、それ自体が骨の折れる作業である。この作業は、さらなる成分の追加によりさらに複雑になり、合理的なアプローチが至急に必要とされている。
【0178】
コンピューター内スクリーニングのために、脂質頭部基サイズが40〜190Åおよび脂質疎水性尾部サイズが340、410または500Åである両性脂質系を、対カチオン、具体的にはナトリウム(65Å)の存在下に分析した。対アニオンは、提供したスクリーニングにとって関連性が低い。これは次の理由による:即ち、イオンが、(i)脂質塩に関与しない、および(ii)pH8において本質的に膜に結合しない。
【0179】
このコンピューター内分析の目的のために、パラメーターκ(塩)をその機能的等価物κ(塩)nに置換する。同様に、パラメーターdκ(pH8)を、dκ(pH8)nに置換して、中性脂質を含有する系の分析のための使用を示す。
【0180】
貯蔵条件下で、または血流中でしばらく安定であるためには、中性pHにおけるκ(合計)とκ(塩)nの間にある程度の相違が必要である。好ましい態様において、このような相違[本明細書においてdκ(pH8)nと称する]は、0.08に等しいかまたはそれより大きくてよい。上記したように、κ(塩) nは、融合性の有力な予測であり、一方、dκ(pH8)n≧0.08が必要であるが、十分な条件ではない。選択した系の採点は、基準として1/κ(塩)nを用いて行った。高い値は、良好な融合および十分な安定性振幅を有する系を示す。
【0181】
以下に挙げるAmphoter IおよびAmphoter IIおよびIII系のコンピューター内スクリーニングは、低κを有する中性脂質をさらに含有する融合性両性リポソームのより一般的かつ実験的に無作為の選択を提供する。この計算は、当業者が、好ましい頭部および尾部サイズを有する両親媒性物質を推測し、次いで、改良された両性脂質混合物を確認することを可能にする。
【0182】
中性脂質をさらに含有するAmphoter I系
Amphoter I系について、アニオン性両親媒性物質の完全解離をpH8において仮定した。C/A=0.333を有する324のAmphoter I脂質系のライブラリーを構築し、κ(塩)n<0.34およびdκ(pH8)n≧0.08を有する好ましい脂質系を、全集団から選択した。選択した系の適合度を、ライブラリーへの30%コレステロールの添加について、以下の表12に1/κ(塩)nとして示す。
【0183】
































【表12】

表12:30%コレステロールを含有する高機能性Amphoter I系;C/A=0.333、κ(塩)n<0.34およびdκ(pH8)n>0.08、値は1/κ(塩)nを表す。
【0184】
最良の適合を有する系は、脂質アニオンおよび脂質カチオンに対して小さい頭部基を有する。大きい脂質アニオン尾部はdκ(pH8)nによって制限され、一方、カチオン尾部サイズは影響が少ない。
強ラメラ脂質(例えば、POPCまたはDOPC)の添加は、上に示した選択ルールに質的に影響することなく、より厳格な選択になる。
【0185】
b.中性脂質をさらに含有するAmphoter II系
Amphoter II系について、アニオン性両親媒性物質の完全解離をpH8において仮定し、本質的にカチオン性両親媒性物質の解離をこのpHにおいて仮定しなかった。また、このような選択をAmphoter III系にも適用する(それが、50%またはそれ未満のアニオン性両親媒性物質を含有する限りにおいて)。
【0186】
カチオンに富むAmphoter IIまたはAmphoter III系のライブラリー(C/A=3)を、上記したように構築し、κ(塩)n<0.34およびdκ(pH8)n>0.08を基準として用いて高機能性の系を選択した。選択した系の適合度を、ライブラリーへの30%コレステロールの添加について、以下の表13に1/κ(塩)nとして示す。
【0187】
【表13】


表13:30%コレステロールを含有する高機能性Amphoter II系;C/A=3、κ(塩)n<0.34およびdκ(pH8)n>0.08、値は1/κ(塩)nを表す。
【0188】
コレステロールの添加は、大きい頭部基を有するカチオン性脂質に向かって大きく偏った選択になり、この特徴は、κ(塩)nに対して敏感であり、比較的小さい値のκ(塩)nが、この最適を比較的小さい頭部基の方へシフトさせる。好ましい脂質アニオンは小さい頭部基を有する。
ここでも、ラメラ脂質(例えば、POPCまたはDOPC)の添加は、上に示した選択ルールに質的に影響することなく、厳格な選択になる。
【0189】
また、平衡化したAmphoter II系のライブラリー(C/A=1)を構築し、このライブラリーにおいて30%コレステロールの存在下に選択スキームに導入した(表14)。
【0190】
【表14】


表14:30%コレステロールを含有する高機能性Amphoter II系;C/A=1、κ(塩)n<0.34およびdκ(pH8)n>0.08、値は1/κ(塩)nを表す。
【0191】
中性脂質を含まない混合物からの対応するAmphoter IIライブラリー(C/A=1)は、多数の陽性の系を有するが、30%コレステロールの添加は、非常に厳格な選択になった。これは、融合を促進する脂質の添加に対する直観に反し、選択基準としてのdκ(pH8)nの影響を示す。敏感性分析は、非常に厳格な変数としてdκ(pH8)nを明らかにし、この値の低下は、選択圧を急速に排除する。
この群において、ラメラ脂質(例えば、POPCまたはDOPC)の添加は、コレステロールの添加と同様の影響を有していた。
【0192】
また、アニオンに富むAmphoter II系のライブラリー(C/A=0.33)を構築し、このライブラリーにおいて30%コレステロールの存在下に選択スキームに導入した(表15)。
【0193】
【表15】


表15:30%コレステロールを含有する高機能性Amphoter II系;C/A=0.333、κ(塩)n<0.34およびdκ(pH8)n>0.08、値は1/κ(塩)nを表す。
【0194】
ここで、比較的大きいアニオン頭部基に向かって陽性候補のある種の偏りを観察することができる。しかし、これは、小さいアニオン性頭部基の存在下に融合活性が常に改善しているので、注意深く解釈する必要がある。
ラメラ脂質(例えば、POPCまたはDOPC)の添加は、より厳格な選択基準を示唆するが、陽性候補のパターンを質的に変化させない。
【0195】
中性もしくは双性イオン性脂質を含有する両性リポソームの選択
荷電した両親媒性物質を含有する異なる両性リポソーム混合物の融合性を、脂質融合アッセイ、粒子成長または当分野で既知の他の方法を用いて調べることができ、これによって、好ましい混合物の確認が可能になる。脂質の混合を、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を用いて試験することができ、実験詳細を実施例5に記載する(該実施例において、両性脂質混合物の融合をpH2.5〜7.5の範囲内でモニターする)。
【0196】
両性リポソーム配合物の好ましい混合物の確認のためのさらなる実験アプローチには、実施例8、9および10に記載するように、供給ビヒクルとして異なる両性リポソーム配合物を用いる細胞のトランスフェクションが含まれる。試験管内および生体内での細胞または組織への活性物質(例えば核酸活性物質)の供給はなお課題であり、当分野において、トランスフェクションが効率的であり、医薬用途に安全であり、かつ製造が容易である改善された供給ビヒクルが必要とされている。
【0197】
また、上記したアルゴリズムは、中性脂質をさらに含有する両性脂質混合物にも当てはまり、このような混合物の量的影響が、実施例6および対応する図10〜13に示されている。簡潔に言うと、中性脂質の含有は、κ(中性)が荷電した脂質のみの混合物のκ(min)よりも高いときには常に、所与の両性系の融合強度を低下させることができる。図10a、bおよび図13a、bは、このことを実験的に示す。また、図12a、bに示すように、逆の場合も見られる。最終的に、図11a、bに示すように、ある種の系は、中性脂質の導入による影響が少ない。より多くの成分を用いる系の実験的最適化は、ますます困難かつ面倒になるので、様々な構成成分の影響の分析および数値予測が、ますます重要になり、迅速かつ効率的な予測を可能にする。
【0198】
実際的に言うと、両性リポソーム膜における中性脂質の存在は、リポソームの融合性に効果を有しており、リポソームの融合または機能(例えば、細胞および組織への活性物質の供給)を改善するか、または損なうことができる。このような効果の性質が、両性系のκ(塩)とκ(中性)の間の関係、中性脂質または中性脂質混合物の膜定数によって大きく影響されることがアルゴリズムから明らかである。例えば、κ(塩)がκ(中性)よりも高いときには、そのような中性脂質の添加は、融合を刺激するか、または融合ゾーンの幅を広げることができる。勿論、このためにκ(合計)はある種の最小値に到達しなければならない。ある種の態様において、このような最小値は、0.34または0.35より小さく、より好ましくは0.3より小さく、さらに好ましくは0.25より小さい。
【0199】
実験的証拠が実施例6および図14に示されている。そこでは、異なる量の異なる中性脂質が、Amphoter II系(MoChol/DOGS)の膜に混合されている。さらに、他の両性系の融合性に対する中性脂質の影響を、実施例6において試験し、結果を表73および表74にまとめた。
【0200】
中性脂質としてのコレステロールは、両性脂質系の融合性に効果を持たないか、または融合性の改善を導くことができる。同様の挙動が、脂質DOPEに対して観察された。コレステロールおよびホスファチジルエタノールアミンは、κ値が0.3より低く、六角形相を採る中性もしくは双性イオン性脂質であり、コレステロールのκ値は、ホスファチジルエタノールアミンのκ値よりも低い。
【0201】
融合性と安定性の間のバランスを最適化するために、両性リポソームにおいて中性成分として中性もしくは双性イオン性脂質の混合物を使用するのが有利であることもある。
【0202】
また、中性脂質は、荷電した両親媒性物質のみの混合物と比較して、融合性をさらなるC/A比に広げうることがわかった。例えば、40モル%コレステロールの添加は、融合が起こるためのDOTAP/ChemsのC/A比を、C/A≧0〜0.4からC/A≧0〜0.67に広げる。さらなるデータを、実施例6の表73および表74中に見ることができる。
【0203】
また、中性脂質は、両性リポソームの他の性質、例えば、コロイド安定性または体液中の安定性にも影響を与えることができる。例えば、医薬用途における両性リポソームの使用は、貯蔵中および血流移動中のリポソームの安定性を必要とする。
【0204】
実施例7は、中性脂質が両性リポソームを安定化しうることを示す。例えば、両性脂質混合物DOTAP/オレイン酸は、生理学的pHおよび高C/A比においてコロイド状であり、不安定であり、凝集体を形成する。ある量の例えばコレステロールを中性脂質として添加すると、これらの混合物を生理学的pHにおいて安定化することができる。
【0205】
本発明の1つの態様は、中性脂質として、コレステロールまたはコレステロールと1つまたはそれ以上の中性もしくは双性イオン性脂質との混合物を含有する両性リポソームに関する。
【0206】
この側面の1つの態様において、コレステロールと1つまたはそれ以上の中性もしくは双性イオン性脂質との混合物のκ(中性)は、0.3またはそれ未満、好ましくは0.25未満、より好ましくは0.2未満、最も好ましくは0.15未満である。
【0207】
この側面のある種の態様において、両性リポソームは、50モル%またはそれ以上のモル量でコレステロールとホスファチジルコリンの混合物を含有するもの以外である。
【0208】
κ(中性)は、以下の式によって算出することができる:
【数11】


[式中、κ(脂質)は、適当な中性もしくは双性イオン性脂質のκ値であり、c(脂質)は、中性脂質混合物中の該脂質の濃度であり、iは実行中の変数である]。
【0209】
例えば、コレステロールと双性イオン性脂質の異なる混合物のκ(中性)値を、表16〜18に示す。
【0210】
【表16】

【0211】
【表17】


【0212】
【表18】

【0213】
コレステロールと1つまたはそれ以上の中性もしくは双性イオン性脂質との混合物は、以下からなる群から選択することができるが、これらに限定はされない:
a.コレステロール/ホスファチジルコリン、
b.コレステロール/ホスファチジルエタノールアミン、
c.コレステロール/ホスファチジルエタノールアミン/ホスファチジルコリン、
d.コレステリン/スフィンゴミエリン、
e.コレステロール/ホスファチジルエタノールアミン/スフィンゴミエリン。
【0214】
本発明の好ましい態様において、コレステロールまたはコレステロールとホスファチジルエタノールアミンの混合物が、唯一の中性脂質として両性リポソーム中に存在し、これは、κ(中性)>0.25である中性脂質(ホスファチジルコリンなど)が本質的に存在しないことを意味する。好ましくは80モル%以下、より好ましくは65モル%以下、最も好ましくは50モル%以下のこれら脂質を、両性リポソーム中の唯一の中性脂質として使用する。
【0215】
コレステロールまたはコレステロールとホスファチジルエタノールアミンの混合物は、実施例8および9に示すように、両性脂質混合物のトランスフェクション効率を改善しうることがわかった。
【0216】
本発明の1つの態様において、コレステロールとホスファチジルエタノールアミンの混合物のモル比は、4またはそれ未満、好ましくは4〜0.25、より好ましくは3〜0.5、最も好ましくは2〜1である。
【0217】
ホスファチジルエタノールアミンの膜尾部は、限定されることなく、C14〜C20の直鎖飽和または不飽和のアシルまたはアルキル(これらは、フィタン酸におけるようにメチル側鎖をさらに含有することができる)の群から選択することができ、これにより、脂質、例えば、DOPE、POPE、DPhyPE、DLinPE、DMPE、DPPE、DSPEまたはこれらの天然等価物を形成する。また、異なるホスファチジルエタノールアミンの混合物も本発明の範囲内である。本発明の好ましい態様において、ホスファチジルエタノールアミンはDOPEである。
【0218】
本発明のさらなる態様において、コレステロール、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルコリンの混合物が、中性脂質として両性リポソーム中に存在することができる。好ましくは、上記の表18に示すように、該混合物は、40モル%以下のホスファチジルコリン、κ(中性)>0.25である双性イオン性脂質成分を含有する。
【0219】
本発明のなおさらなる態様において、中性脂質、例えばホスファチジルコリン(PC)、スフィンゴミエリンまたはセラミドおよびコレステロール(Chol)の混合物を、中性脂質成分として両性リポソームにおいて使用することができる。
【0220】
好ましいのは、ホスファチジルコリンとコレステロールの混合物である。PC/Cholのモル比は、4〜0.25または3〜0.33であってよい。好ましいのは、PC/Cholのモル比が1.5〜0.25、より好ましくは1〜0.25である。これらの中性脂質混合物を、塩形成性の荷電した脂質に、80モル%またはそれ未満、あるいは65モル%またはそれ未満、好ましくは50モル%またはそれ未満の量で添加することができる。
【0221】
ある種の態様において、50モル%未満、好ましくは40モル%未満のモル量でのPC/Cholの添加が好ましいこともある。
【0222】
対照的に、Endertらの国際公開第05/094783号に開示されている両性リポソーム配合物は、コレステロールとPCの混合物を、50モル%を超える合計量あるいは2またはそれ以上のPC/Cholのモル比およびκ(中性)>0.3で含有する。
【0223】
図22および23は、漸増する量のPOPC/Chol(モル比 0.5)の混合物が、両性リポソーム配合物のトランスフェクション効率を低下させることを示す。同様に、図15に示すように、漸増するモル比のPC/Cholは、両性リポソーム配合物の融合性を低下させる。
【0224】
ホスファチジルコリンは、限定されることなく、POPC、DOPC、DMPC、DPPC、DSPCまたはこれらの天然等価物(例えば、大豆PCまたは卵PC)の群から選択することができる。また、異なるホスファチジルコリンの混合物も本発明の範囲内である。本発明の好ましい態様において、ホスファチジルコリンは、POPCまたはDOPCから選択する。
【0225】
κ(中性)<0.25である中性脂質の他の化学的代表例を見つけることもできる。グリセロール骨格に未置換のヒドロキシルを保持するジアシルグリセロールを、中性脂質として使用するために考慮することができる。しかし、これら化合物の一部は、タンパク質キナーゼC経路への第2のメッセンジャーおよびシグナルとして機能し[Albertsら;Molecular Biology of the Cell、第3版、1994、第747頁以降、Garland Publishing、ロンドン]、これがその使用を制限する。
【0226】
長鎖アルコールについては、そのような制限は当てはまらず、例えば、14〜30個のC原子を有する直鎖の飽和または不飽和アルコールを、本発明の実施に使用することができる。他の中性脂質には、トコフェロール、他のステロール、中性もしくは双性イオン性リゾ脂質、モノアシルもしくはモノアルキルグリセロールまたはジアルキルグリセロールが含まれる
【0227】
本発明の中性脂質を含有する両性リポソームは、1つまたはそれ以上または複数の荷電した両親媒性物質(これらは、互いと組合せて両性の性質を有し、pH7.4において負に荷電または中性であり、pH4またはそれ未満において正に荷電している)を含有することができる。
【0228】
本発明の1つの態様において、両性リポソームは、HistChol、HistDG、isoHistSuccDG、アシルカルノシンおよびHC-Cholの群から選択することができるが、これらに限定はされない両性脂質を含有する。
【0229】
本発明の別の態様において、両性リポソームは、荷電した脂質の混合物を含有し、該荷電した脂質の少なくとも1つはpH応答性である。
【0230】
この荷電した脂質成分の混合物は、
(i)安定なカチオン性脂質およびpH応答性の荷電可能なアニオン性脂質(Amphoter I混合物と称する)、
(ii)荷電可能なカチオン性脂質および荷電可能なアニオン性脂質(Amphoter II混合物と称する)、または
(iii)安定なアニオン性脂質および荷電可能なカチオン性脂質(Amphoter III混合物と称する)、
を含有することができる。
【0231】
本発明の両性リポソームは、1つまたはそれ以上のカチオン性脂質を含有することができ、該カチオン性脂質は、以下からなる群から選択することができるが、これらに限定はされない:DOTAP、DMTAP、DPTAP、DSTAP、POTAP、DODAP、PODAP、DMDAP、DPDAP、DSDAP、DODMHEAPまたはDORI、PODMHEAPまたはPORI、DMDMHEAPまたはDMRI、DPDMHEAPまたはDPRI、DSDMHEAPまたはDSRI、DOMDHEAP、POMDHEAP、DMMDHEAP、DPMDHEAP、DSMDHEAP、DOMHEAP、POMHEAP、DMMHEAP、DPMHEAP、DSMHEAP、DODHEAP、PODHEAP、DMDHEAP、DPDHEAP、DSDHEAP、DDAB、DODAC、DOEPC、DMEPC、DPEPC、DSEPC、POEPC、DORIE、DMRIE、DOMCAP、DOMGME、DOP5P、DOP6P、DC-Chol、TC-Chol、DAC-Chol、Chol-ベタイン、N-メチル-PipChol、CTAB、DOTMA、MoChol、HisChol、Chim、MoC3Chol、Chol-C3N-Mo3、Chol-C3N-Mo2、Chol-C4-Mo2、Chol-DMC3N-Mo2、CholC4Hex-Mo2、DmC4Mo2、DmC3Mo2、C3Mo2、C3Mo3、C5Mo2、C6Mo2、C8Mo2、C4Mo4、PipC2-Chol、MoC2Chol、PyrroC2Chol、ImC3Chol、PyC2Chol、MoDO、MoDP、DOIMまたはDPIM。
【0232】
ある種の態様において、1つまたはそれ以上のカチオン性脂質は、DOTAP、DODAP、DODMHEAPまたはDORI、DDAB、DOEPC、DC-Chol、MoChol、HisChol、Chim、Chol-C3N-Mo2、Chol-C4N-Mo2、MoDO、DOMCAP、DOP5P、DOP6P、DOIMまたはDPIMからなる群から選択することができる。
【0233】
本発明の両性リポソームは、1つまたはそれ以上のアニオン性脂質を含有することができ、該アニオン性脂質は、以下からなる群から選択することができるが、これらに限定はされない:ジアシルグリセロールヘミスクシネート、例えば、DOGS、DMGS、POGS、DPGS、DSGS;ジアシルグリセロールヘミマロネート、例えば、DOGMまたはDMGM;ジアシルグリセロールヘミグルタレート、例えば、DOGG、DMGG;ジアシルグリセロールヘミアジペート、例えば、DOGA、DMGA;ジアシルグリセロールヘミシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、例えば、DO-cHA、DM-cHA;(2,3-ジアシル-プロピル)アミノ}-オキソアルカン酸、例えば、DOAS、DOAM、DOAG、DOAA、DMAS、DMAM、DMAG、DMAA;ジアシル-アルカン酸、例えば、DOP、DOB、DOS、DOM、DOG、DOA、DMP、DOB、DMS、DMM、DMG、DMA;Chemsおよびその誘導体、例えば、Chol-C2、Chol-C3、Chol-C5、Chol-C6、Chol-C7またはChol-C8;Chol-C1、CholC3Nまたはコレステロールヘミジカルボン酸およびコレステリルオキシカルボニルアミノカルボン酸、例えば、Chol-C12またはCholC13N、脂肪酸、例えば、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ネルボン酸、ベヘン酸;DOPA、DMPA、DPPA、POPA、DSPA、Chol-SO4、DOPG、DMPG、DPPG、POPG、DSPGまたはDOPS、DMPS、DPPS、POPS、DSPSまたはセチル-ホスフェート。
【0234】
ある種の態様において、1つまたはそれ以上のアニオン性脂質は、DOGS、DMGS、Chems、Chol-C3、Chol-C5、Chol-C6、Chol-C7、Chol-C8、Chol-C1、CholC3N、Chol-C12、CholC13Nまたは他のコレステロールヘミジカルボン酸またはコレステリルオキシカルボニルアミノカルボン酸からなる群から選択することができる。
【0235】
さらに、または別法として、本発明の両性リポソームは、表60および表61に挙げた化合物番号1〜97を有する1つまたはそれ以上の化合物を含有することもできる。
【0236】
上記したように、中性脂質を含有する両性脂質混合物のκ(合計)は、リポソームの融合を可能にするために、ある種の最小値 κ(min)に到達しなければならない。
【0237】
本発明の1つの態様において、両性リポソーム配合物はAmphoter I混合物であり、中性脂質は、コレステロールまたはコレステロールと中性もしくは双性イオン性脂質(例えば、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリン)の混合物であり、これら混合物のκ(min)は0.07〜0.22、好ましくは0.09〜0.15である。この発見は驚くべきことであり、これは、本発明のAmphoter Iリポソーム配合物のトランスフェクション効率が、特定範囲のκ(min)値において最適を示すことを意味する。
【0238】
図17は、異なるAmphoter I系のトランスフェクション効率のそのような関係を示す[IC50-対-κ(min)として表す]。
【0239】
本発明のさらなる態様において、中性脂質成分としてコレステロールまたはコレステロールと中性もしくは双性イオン性脂質(例えば、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリン)の混合物を含有するAmphoter Iリポソーム配合物を、以下に挙げる混合物から選択することができる:
【0240】
【表19−1】

【0241】
【表19−2】

【0242】
【表19−3】

【0243】
【表19−4】

【0244】
【表19−5】

【0245】
【表19−6】

【0246】
本発明の別の態様において、両性リポソーム配合物は、Amphoter II混合物であり、中性脂質が、コレステロールまたはコレステロールと中性もしくは双性イオン性脂質(例えば、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリン)の混合物であり、これら混合物のκ(min)が0.23未満、好ましくは0.18未満である。図18は、異なるAmphoter II系のトランスフェクション効率の相関を示す[IC50-対-κ(min)として表す]。
【0247】
本発明のさらなる態様において、中性脂質成分としてコレステロールまたはコレステロールと中性もしくは双性イオン性脂質(例えば、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリン)の混合物を含有するAmphoter IIリポソーム配合物を、以下に挙げる混合物から選択することができる:
【0248】
【表20−1】

【0249】
【表20−2】

【0250】
【表20−3】

【0251】
【表20−4】

【0252】
本発明の両性リポソームは、当業者に知られる適する方法を用いて製造することができる。このような方法には、規定の孔サイズを有する膜からの押出、封入すべき積荷を含有する水相へのアルコール性脂質溶液の射出、または高圧ホモジナイゼーションが含まれるが、これらに限定はされない。
【0253】
薬物(例えばオリゴヌクレオチド)の溶液を、中性pHにおいて脂質相と接触させ、これにより、一定割合(%)の溶液を体積含有させることができる。約50mM〜約150mMの範囲の高濃度の脂質が、活性物質の実質的な封入を達成するために好ましい。
【0254】
両性リポソームは、その等電点またはそれ以下において核酸を結合する明らかな利点を提供し、これにより、これらの活性物質をリポソーム膜に集中させる。この方法(改良装填法と称される)は、国際公開第02/066012号により詳しく記載されており、その内容は、参照することにより本明細書に援用される。
【0255】
本発明の1つの態様において、両性リポソームを、脂質フィルム押出法と組合せて該改良装填法を用いることによって製造することができる。
本発明の別の態様において、両性リポソームを、例えば核酸を含有する水相へのアルコール性脂質溶液の射出と組合せて該改良装填法を用いることによって製造することができる。この方法は、国際公開第07/107304号(Panznerら)により詳しく記載されており、その内容は、参照することにより本明細書に援用される。
【0256】
本発明の両性リポソームの製造に使用した実際の製造方法とは関係なく、ある種の態様において、未封入の薬物を、リポソームの最初の製造後にリポソームから除去することができる。ここでも、本明細書中に含まれる技術文献および参照文献が、そのような方法を詳しく記載しており、適する工程には、サイズ排除クロマトグラフィー、沈降、透析、限外濾過および透析濾過が含まれるが、これらに限定はされない。
【0257】
しかし、あらゆる未封入薬物の除去は、本発明の効果にとって必要ではなく、ある種の態様においては、リポソーム配合物は、遊離ならびに捕捉薬物を含有していてよい。
【0258】
本発明の1つの側面において、リポソームのサイズは、50〜1000nm、好ましくは50〜500nm、より好ましくは70〜250nmの間で変化することができる。
他の側面において、リポソームのサイズは70〜150nmの間で変化することができ、さらに他の側面において、リポソームのサイズは130〜250nmの間で変化することができる。
【0259】
中性pHにおいて安定な膜相の形成を達成するためにはdκ(pH)8のある種の最小値が必要であることを、本発明において記載した。実施例8で得られた実験データの分析により、dκ(pH8)が0.08より高いときに、非常に小さい粒子のより高い頻度が得られることが明らかになった(これは安定なリポソームの形成を示す)。この実験の多くの例において、驚くほど小さいdκ(pH8)である0.04が、小さい粒子の形成になお十分であった。しかし、小さい粒子の形成の頻度は、より低い値のdκ(pH8)については低い。これは、これらの粒子が融合ゾーンを脱出しなかったためである。この分析を図19に示す。
【0260】
本明細書中に挙げた実験データは、Amphoter I系に対してκ(min)=0.09〜0.15およびAmphoter II系に対してκ(min)<0.2をdκ(pH8)>0.04と組合せて用いて、両性脂質のライブラリーをコンピューター内でスクリーニングすることによって、成功裏の担体のより一般的な記載を可能にする。容易に入手できるパラメーターκ(塩)またはκ(塩)nを、上で行ったスクリーニングに使用したが、κ(min)の関数を以下のように書くことができる。Amphoter I系については、次の通りである:
【数12】


【数13】


【数14】

【0261】
Amphoter II系については、それぞれの式は次の通りである:
【数15】


【数16】

(アニオン過剰の系について)、しかし
【数17】

(カチオン過剰の系について)、そして

【数18】

【0262】
Amphoter III系については、以下の式が当てはまる:

【数19】


【数20】


【数21】

【0263】
これらの式において、VAH、VCH、VATおよびVCTは、それぞれアニオン性およびカチオン性の頭部および尾部基の体積であり、xanおよびxcatは、アニオン性およびカチオン性成分の分画である。Vccは対イオンの体積である。
【0264】
中性pHのAmphoter I系においては、全てのカチオン性脂質および同じ量のアニオン性脂質が脂質塩を形成し、残りのアニオン性脂質は、(1a)におけるように荷電している。pHの低下は、荷電した脂質アニオンの利用可能性が脂質塩形成を制限するまで、脂質アニオンのプロトン化およびその対イオンの喪失の結果を与えることになる。そのとき、全ての脂質アニオンは、脂質塩におけるその結合またはプロトン化の進行のいずれかにより、本質的に対イオンを欠いており、これが(2a)に反映される。同じ制約がアニオンに富むAmphoter II系に当てはまり、κ(min)は、脂質アニオンのpKからそう離れていないpHにおいて脂質塩ゾーンの左側に見られ、従って、式(5a)は、(2a)と同一である。
【0265】
カチオンに富むAmphoter IIまたは真のAmphoter III系は、これらの特徴を逆にし、κ(min)は、脂質塩ゾーンの上端に見られる。これは、限定量のアニオン性脂質が、カチオン性脂質のイオン化した部分と脂質塩を形成し、残りのカチオン性脂質が、式(6a)および(9a)におけるように未荷電である場合である。pHの低下は、膜への対アニオンの採用およびカチオン性脂質のさらなるイオン化により、κを高くするであろう。いくらかより高いpHにおいて、イオン化脂質カチオンは、脂質塩を維持するのに十分ではなく、そのとき遊離した脂質アニオンは、その対イオンを二重層に採用するであろう。
【0266】
pH8において、荷電した脂質アニオンおよび未荷電の脂質カチオンの両方が共存し、ここでも、カチオンに富むAmphoter II系とAmphoter IIIの間に差はない。
【0267】
アニオン性およびカチオン性脂質の均等な分布を有するAmphoter II系は、pH8において、他のAmphoter II系のように挙動する。κ(min)に関する限り、完全塩形成が可能であり、どちらの化合物によっても限定されない。従って、それは次の通りである:
【数22】

【0268】
個々のpK値は、融合ゾーンの実際の場所を決定するが、κ(min)およびκ(pH8)に関する限り重要ではなく、脂質アニオンのpKは、脂質カチオンのpKよりも2単位またはそれ以上低く、ほぼ完全な脂質塩形成を容易にする。それぞれのpK値の間の比較的小さい相違は、不完全な脂質塩形成の結果になり、そのとき膜のκ(合計)は、非パートナー脂質種の比較的大きい部分を含み、こうしてκ(min)を高め、系振幅dκ(pH8)を低下させる。この効果は、Amphoter II系に対して限定され、両脂質がほぼ等モル量で存在する状況において最も顕著である。具体的な計算は、以下のAmphoter IIセクションのもとで行う。
【0269】
残る唯一の非脂質変数は、対カチオンの体積であり、これを、ほとんどの目的のためにナトリウム(65Å)に設定する。スクリーニングライブラリーにおける中性脂質の添加は、両性および中性脂質部分の線形混合を用いて行った。
【0270】
ライブラリー
上記からのパラメーターおよび計算を用いて、配合物空間の包括的分析のためのツールとして、組合せライブラリーを創製した。このために、4種類の最も典型的な脂質尾部体積(C24アルキル=280Å、コレステロール=340Å、ジミリストイルグリセロール=410Åおよびジオレオイルグリセロール=500Å)を、体積が40Å〜200Åである8種類の異なる頭部基と体系的に組合せた。得られた32種類の脂質に、全1024種類の可能な組合せを採らせて、荷電した脂質対を形成し、さらなる複雑性の層を加えた(アニオン性およびカチオン性脂質の間のモル比を柔軟に保ち、そのときに得られた荷電した両親媒性物質の組を、所望によりκ(中性)<0.25である可変量の中性脂質とブレンドした)。4種類のこのようなライブラリーを構築して、Amphoter I、アニオンに富むAmphoter II、平衡化したAmphoter IIおよびカチオンに富むAmphoter II/Amphoter III系の相違に対応した。
【0271】
κ(min)>0.09、κ(min)<0.15、およびdκ(pH8)>0.04を有する好ましいAmphoter I系の一般的説明
脂質のライブラリーを、記載したように構築した。脂質アニオンおよびカチオン間の相互作用がAmphoter I明細に続く。以下に挙げる表21〜25は、0、20、30、40または50%コレステロールを含有する陽性にスクリーニングされた種を確認する。表中に挙げた値はκ(min)であり、AH、AT、CHおよびCTは、それぞれ、アニオンおよびカチオンの頭部および尾部基を示す。
【0272】
【表21】

【0273】
【表22】

【0274】
【表23】

【0275】
【表24】

【0276】
【表25】

【0277】
陽性のAmphoter I種は、60%コレステロールまたはそれ以上で見られなかった。
κ(中性)の増加は、κ(min)に向かって追加の選択圧を生じる。κ(中性)=0.15、0.2または0.25である中性脂質に対して陽性の系を、以下の表26〜28に示す(これらは、30%の中性脂質含量に対するそのような分析を提供する)。
【0278】
【表26】

【0279】
【表27】

【0280】
【表28】

【0281】
また、選択圧は、より高い量の脂質カチオンにより増加する[脂質塩のより広範囲の形成が系振幅dκ(pH8)を低下させるため]。以下の表29は、C/A=0.5および30%コレステロールのAmphoter I系について、陽性種の頻度の減少を示し、約0.66のC/Aがこの設定の限界を示す。
【0282】
【表29】

【0283】
κ(min)<0.18およびdκ(pH8)>0.08を有する、好ましいアニオンに富むおよび平衡化したAmphoter II系の一般的説明
脂質のライブラリーを、記載したように構築した。脂質アニオンおよびカチオン間の相互作用が、過剰の脂質アニオンまたは等量脂質アニオンおよび脂質カチオンを有するAmphoterII明細に続く。中性pHにおいて脂質塩形成が系振幅を制限しないので、dκ(pH8)を用いるより厳密なスクリーニングがここで示される。勿論、Amphoter I系に対して行ったように、より低い選択圧を用いてライブラリーをスクリーニングすることもできる。
【0284】
以下に挙げる表30〜35は、0、20、30、40、50または60%コレステロールを含有する陽性にスクリーニングされた種を確認する。表中に挙げた値はκ(min)であり、AH、AT、CHおよびCTは、それぞれ、アニオンおよびカチオンの頭部および尾部基を示す。
【0285】
【表30】

【0286】
【表31】

【0287】
【表32】

【0288】
【表33】

【0289】
【表34】

【0290】
【表35】

【0291】
やや高いκ(中性)を有する中性脂質の使用が実行可能であり、κ(中性)=0.15、0.2または0.25である中性脂質成分を30%含有するそのような混合物の結果を、以下の表36〜38に示す。
【0292】
【表36】

【0293】
【表37】

【0294】
【表38】

【0295】
Amphoter I系とは対照的に、カチオン性脂質成分の量のさらなる増加は、系振幅dκ(pH8)を低下させない(中性pHにおいて脂質塩形成が起こらないため)。従って、系はより寛容になり、65、60または50%脂質アニオンおよび30%コレステロールを含有するアニオンに富むAmphoter II系について以下の表39〜41に示すように、陽性にスクリーニングされた種の頻度がより高くなる。
【0296】
【表39】

【0297】
【表40】

【0298】
【表41】

【0299】
Amphoter II系について、pK値の差に関する規定を上記で行った。この制限の程度を以下の表42に示す。
【表42】

【0300】
この効果は、等量の脂質アニオンおよび脂質カチオンを含む系に対して最も顕著であり、pK値において制限差を有する平衡化したAmphoter II系のκ(min)のための式は次の通りである:
【数23】


[式中、sfは、表42に示す塩形成の程度である]。
【0301】
脂質塩形成の減少は、より高いκ(min)を導き、結果としてdκ(pH8)の低下を導く[κ(pH8)が影響を受けないため]。従って、脂質塩形成能力の小さな低下は、以下の表43−A〜Fに示すように、このような系の適合度のむしろ大きな低下につながる:表43において、
(A)sf=83%、および30%のコレステロール;
(B)sf=76%、および30%のコレステロール;
(C)sf=83%、および30%のκ(中性)が0.2である中性脂質;
(D)sf=76%、および30%のκ(中性)が0.2である中性脂質;
(E)sf=76%、および15%のコレステロール;
(F)sf=83%、および15%のコレステロール。
【0302】
【表43−1】

【0303】
【表43−2】

【0304】
【表43−3】

【0305】
【表43−4】

【0306】
【表43−5】

【0307】
【表43−6】

【0308】
κ(min)<0.18およびdκ(pH8)>0.08を有する、好ましいカチオンに富むAmphoter IIおよびAmphoter III系の一般的説明
脂質のライブラリーを、記載したように構築した。脂質アニオンおよびカチオン間の相互作用が、過剰の脂質カチオンを有するAmphoter II明細に続く。他のAmphoter II系を用いたときのように、系振幅dκ(pH8)を制限する脂質塩形成が存在せず、より厳格な値0.08をスクリーニングに使用した。Amphoter III系は同じ処方によって導かれ、それに応じて結果が当てはまる。
【0309】
以下に挙げる表44〜49は、0、20、30、40、50または60%コレステロールを含有する陽性にスクリーニングされた種を確認する。表中に挙げた値はκ(min)であり、AH、AT、CHおよびCTは、それぞれ、アニオンおよびカチオンの頭部および尾部基を示す。
【0310】
【表44】

【0311】
【表45】

【0312】
【表46】

【0313】
【表47】

【0314】
【表48】

【0315】
【表49】

【0316】
やや高いκ(中性)を有する中性脂質の使用が実行可能であり、κ(中性)=0.15、0.2または0.25である中性脂質成分を30%含有するそのような混合物の結果を、以下の表50〜52に示す。
【0317】
【表50】

【0318】
【表51】

【0319】
【表52】

【0320】
AmphoterI系とは対照的に、カチオン性脂質成分の量の変動は、系振幅dκ(pH8)に挑戦しない(中性pHにおいて脂質塩形成が起こらないため)。この系はより寛容になり、40または45%脂質アニオンおよび30%コレステロールを含有するアニオンに富むAmphoter II系について以下の表53〜54に示すように、陽性にスクリーニングされた種の頻度がより高くなる。
【0321】
【表53】

【0322】
【表54】

【0323】
本発明の別の側面において、驚くべきことに、ある等電点(IP)5〜6を有する粒子が細胞トランスフェクションにおいて最も効率的であることがわかった。両性リポソームの融合ゾーンは、所与の粒子の等電点付近に局在化されるが、これら融合性担体に対する細胞応答は、上記した領域において融合性になるものに限定される。これは、本発明のアルゴリズムを用いて予測することができない細胞の側面である。
【0324】
この発見は、IPが5〜6である好ましい担体を製造するために使用しうる脂質アニオンおよび脂質カチオン間のモル比に制限を加える。電解質の所与の混合物のIPは、以下のように算出することができる:
【数24】


[式中、KaおよびKcは、それぞれ脂質アニオンおよびカチオンの解離定数であり、xanおよびxcatは、これら2つのそれぞれのモル分率であり、SQRは平方根を表し、logは10を底とする対数を表す]。
【0325】
IPの好ましい範囲の式の解を、Amphoter I、IIおよびIII系について、脂質のpK値に対して以下の表55〜59に挙げる。
pK15は、多くの第一および第二アミンの高pKを表すが、多くの脂質カチオン中のアンモニウム基の非既存pKをも表す。
【0326】
【表55】

【0327】
【表56】

【0328】
【表57】

【0329】
【表58】

【0330】
【表59】

【0331】
ここで、機能的な両性リポソームを形成する好ましい脂質種をさらに記載することができる。コンピューター内スクリーニングデータは、荷電および中性脂質の有用な組合せの詳細な記述を与え、そのそれぞれの頭部および尾部基サイズに関する詳細な情報を包含する。また、このデータは、膜における脂質アニオン、脂質カチオンと1つまたはそれ以上の中性脂質種の間のモル比を確認および選択する方法をも示す。また、問題の脂質アニオンおよび脂質カチオンのpKに対して、さらなる特定が行われ、上記の表は、荷電した種のpKと、得られる混合物の好ましいIPを達成するための得られるモル比の間の関係を提供する。
【0332】
最新技術は、脂質のpKを決定する方法およびデータを提供している[例えば、Hafezら、(2000)、Biochim Biophys Acta 1463、107-114、またはBudkerら、(1996)、Nature Biotechnology 14、760-764、またはHeyesら、(2005)、J. Control. Release 107(2)、276-287]。所与の構造のpKを決定する別の方法には、定量的な構造-活性の関係およびそれに供されているデータベース、例えば、ACD/pka DB(Version 7.06)(Advanced Chemistry Development Inc.)、pK分析および計算を提供するソフトウエアプログラムの使用が含まれる。実験的pK値は、計算値とはある程度異なることがあり、このような差異は、使用した異なる実験方法または膜背景中に置いたときの荷電した基の制限された化学的活性に帰することができる。実のところ、膜結合した基の局所濃度は、同じ材料について自由溶液におけるよりも高く、解離の減少、従って化学的活性の低下は、電解質の濃溶液に対して知られた現象である。これは、脂質アニオンについてはより高い実際のpK値および脂質カチオンについてはより低い値にシフトする結果になる。このような差異は、本発明の多くの側面において、脂質アニオンについては+1であり、脂質カチオンについては−0.5である。
【0333】
好ましい脂質系の化学的代表例
本明細書は、膜混合および細胞トランスフェクションからの実験データを、数学的記述(脂質形状および脂質相互作用に基づく機構的洞察を、好ましい系の分子体積、相互作用の種類およびpK値の詳細な記述を可能にする系に変換する)と一体化する。この数学的記述は連続的であるが、該連続体中でいずれかの脂質が明らかな代表例を与える。以下に挙げる表は、上記したコンピューター内スクリーニングおよび実験データによって記述される化学的空間内に入るある種の脂質頭部および尾部基の上記のような明らかな代表例を示す。表60、表61および表62の全ての分子体積および全てのpK値は、それぞれ、DS Viewer Pro 5.0 (Accelrys Inc.、San Diego、CA)およびACD/pka DB (Version 7.06)(Advanced Chemistry Development Inc.)を用いて計算した。pK値は、溶液中の分子について示し、上で行った膜環境におけるpKシフトの考慮を、ケースバイケースで相応に当てはめることができる。
【0334】
当業者に周知である他のツールを用いて分子体積を算出することができる。体積の代わりに分子断面を用いたとしても、質的予測は変化しないであろう。勿論、そのような場合には、結果を再較正しなければならないであろう。
【0335】
本明細書中に開示した分子体積の計算は、疎水性部分の鎖飽和に対して沈黙している。不飽和脂質の使用は、そのような脂質を含有する脂質膜が周囲温度で比較的高い流動性を有し、これが融合挙動を改善することもあるので、特定の利点を有することもある。また、不飽和脂質が膜において側圧をかけ、従って、これら成分の見掛け体積を反映するために補正因子を挿入しうることも知られている。このような補正因子は1よりも高い。
【0336】
脂質尾部基
最も多く使用される脂質尾部基のリストを、本明細書の表2に挙げる。
【0337】
脂質頭部基:中性頭部基
コレステロールおよび双性イオン性リン脂質PCおよびPEが、このカテゴリーにおいて最も典型的な成分である。これらの頭部基体積は、それぞれ、30A、136Aおよび98Aである。コレステロールおよびPEは、対イオンを欠いている(第1のものはその中性の性質により、第2のものは双性イオン性構造の形成による)。PC頭部基は、1つの対アニオンおよび1つの対カチオンの両方を引き付け、それぞれの分子体積を、本明細書の表3に挙げる。
【0338】
脂質頭部基:アニオン性頭部基
Amphoter IおよびII中の脂質アニオンのための標準の荷電要素は、カルボキシル基である。膜アンカーとの直接会合は、多くの配合物において好ましい最小の頭部基を生じる。種のリストを、以下の表60に挙げる。
【0339】
【表60】

【0340】
本発明の好ましい態様において、ジアシルグリセロールは、ジミリストイル−、ジパルミトイル−、ジオレオイル−、ジステアロイル−およびパルミトイルオレオイル−グリセロールであり、上記した表中のRには、この群からの任意の選択が含まれる。
【0341】
ジアシルグリセロールおよびコレステロール化合物に加えて、長鎖脂肪酸を用いて両性リポソームを構築することができる。その尾部体積は変化するが、頭部基は、カルボニル原子およびC2として規定される。このフラグメントの体積は41.9Åであり、これら酸のpKは4.78である。
【0342】
リン脂質において2種類の関連する酸性頭部基が存在する:即ち、フラグメント体積が115.9Åであるホスホグリセロール、およびフラグメントサイズが121.7Åであるホスホセリン。それぞれのpK値は、ホスホグリセロールについては1.34および8.4(ホスファチジルセリン中のアミノ官能)、1.96(ホスファチジルセリン中のカルボキシル官能)およびそのリン酸エステルについては1.26である。
【0343】
脂質頭部基:カチオン性脂質頭部基
カチオン性脂質頭部基は、そのアニオン性対応物と比較して化学的により多様である。pH感受性窒素が荷電中心として機能するが、この元素を様々な脂肪族、複素環式または芳香族構造中に組込むことができる。以下のリストは、小さいカチオン性頭部基の例を挙げるものである。
【0344】
【表61−1】

【0345】
【表61−2】

【0346】
【表61−3】

【0347】
本発明の好ましい態様において、ジアシルグリセロールは、ジミリストイル−、ジパルミトイル−、ジオレオイル−、ジステアロイル−およびパルミトイルオレオイル−グリセロールであり、ジアルキルは、ジミリスチル−、ジパルミチル−、ジオレイル−、ジステアリル−およびパルミチルオレイル−であり、上記した表中のRには、この群からの任意の選択が含まれる。
【0348】
多数のカチオン性脂質化合物が、膜アンカーとしてコレステロールを使用している。通常、リンカー基を挿入して、荷電した基をこの骨格上に組込むが、この群の化合物には、HisChol、MoChol、CHIMなどが含まれる。フラグメント体積およびpK値を、以下の表62に挙げる。
【0349】
【表62】

【0350】
上に挙げた記載は、全ての必要なパラメーター(例えば、脂質頭部基サイズおよびpKならびに脂質尾部基サイズ)に関して、有用な脂質種を確認することを可能にする。
【0351】
以下の開示は、本発明の特定の態様のために上記した知見を一体化する。そこでは、κ(min)、dκ(pH8)およびIPに対する制限を特定の脂質化学に適用し、特定の配合物を記載する。
【0352】
このような態様のある種の好ましい側面において、CHEMS、DMGS、DOGSまたはChol-C1をアニオン性脂質種として使用する。以下の表63は、Amphoter I系におけるこれら脂質の分析を供するものであり、そこで、脂質カチオンは、pKが8.5より大きい強カチオンであり、該脂質カチオンは、それぞれVCH=50Åまたは100Å、およびVCT=500Åを有し、中性脂質はコレステロールであり、κ(min)<0.13および>0.09;dκ(pH8)>0.04およびIP5〜6である。
【0353】


【表63−1】


【0354】
【表63−2】

【0355】
【表63−3】

【0356】
表64は、κ(中性)=0.2である中性脂質の分析を供するものである。
【表64−1】

【0357】
【表64−2】

【0358】
【表64−3】

【0359】
脂質カチオンのpKが7.5または8に向かって低下すると、系振幅の最初の改善につながる。これは、比較的少ない脂質アニオンが、pH8において脂質塩中に隔離されるためである。以下の表65は、このような系の分析を供するものであり、そこでは、CHEMS、DMGS、DOGSまたはChol-C1をアニオン性脂質種として使用し、脂質カチオンはpK7.7を有し、また脂質カチオンはそれぞれVCH=50Å3または100Å3、およびVCT=500Å3を有し、中性脂質はコレステロールであり、κ(min)<0.13および>0.09;dκ(pH8)>0.04およびIP5〜6である。
【0360】
【表65−1】




















【0361】
【表65−2】

【0362】
【表65−3】

【0363】
以下の表66は、65について記載した系であってκ(中性)=0.2である系の分析を供するものである。
【表66−1】

【0364】
【表66−2】

【0365】
【表66−3】

【0366】
脂質カチオンのpKが7に向かってさらに低下すると、dκ(pH8)から選択圧が解放される。これは、実質的な脂質塩形成が、中性pHにおいてもはや起こらないためである。以下の表67は、このようなAmphoter II系の分析を供するものであり、そこでは、CHEMS、DMGS、DOGSまたはChol-C1をアニオン性脂質種として使用し、脂質カチオンはpK7.0を有し、また脂質カチオンはそれぞれVCH=50Å3または100Å3、およびVCT=500Å3を有し、中性脂質はコレステロールであり、κ(min)<0.18および>0.09;dκ(pH8)>0.08およびIP5〜6である。
【0367】
【表67−1】

【0368】
【表67−2】

【0369】
【表67−3】

【0370】
表67で使用した中性脂質を比較的大きいκ(中性)=0.2の種に置換すると、以下の表68に示すようになる。
【表68−1】

【0371】
【表68−2】

【0372】
【表68−3】

【0373】
上に記載したように、脂質カチオンのpKを6.3に向かってさらに低下させると、混合物の等電点において脂質塩形成を最大化する脂質アニオンおよび脂質カチオンの能力に制限を創出し、それと同時に該制限は、κ(min)を上昇させ、dκ(pH8)を低下させる。以下の表69は、このようなAmphoter II系の分析を供するものであり、そこでは、CHEMS、DMGS、DOGSまたはChol-C1をアニオン性脂質種として使用し、脂質カチオンはpK6.3を有し、また脂質カチオンはそれぞれVCH=50Å3または100Å3、およびVCT=500Å3を有し、中性脂質はコレステロールであり、κ(min)<0.18および>0.09;dκ(pH8)>0.08およびIP5〜6である。
【0374】
【表69−1】

【0375】
【表69−2】

【0376】
【表69−3】

【0377】
また最後に、表69に記載の脂質系を、κ(中性)=0.2の中性脂質系の存在下で分析し、結果を以下の表70に示す。
【表70−1】

【0378】
【表70−2】

【0379】
【表70−3】

【0380】
要約すると、本発明の両性リポソームは、コレステロールまたはコレステロールと1つまたはそれ以上の中性もしくは双性イオン性脂質(例えば、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリン)の混合物から選択される中性脂質を含有し、細胞または組織に活性物質を供給するのによく適している。多数の活性配合物の具体例が、本明細書および本発明の実施例に開示されている。高頻度の成功裏の組成物を与える化学的空間が、アルゴリズムならびに本明細書中に記載するパラメーターκ(min)およびdκ(pH8)を用いて記載されている。特に好ましい配合物は、
・Amphoter I相互作用タイプ;κ(min)=0.09〜0.15およびdκ(pH8)>0.04および等電点5〜6;
・Amphoter II相互作用タイプ;κ(min)<0.18およびdκ(pH8)>0.08および等電点5〜6;
を有しており、
上記の両性配合物の全てが、コレステロールまたはコレステロールと1つまたはそれ以上の中性もしくは双性イオン性脂質(例えば、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリン)の混合物からなる群から選択される中性脂質をさらに含有し、該混合物のκ(中性)が0.3またはそれ未満である。
【実施例】
【0381】
本発明を実施するある種の側面のさらなる細部の理解のために、以下に実施例を挙げる。これら実施例は、いかなる意味においても本開示の範囲を限定するものではない。
【0382】
実施例1:リポソームの製造およびpH依存性の融合実験
緩衝系
100mMクエン酸ナトリウムおよび200mMリン酸水素ナトリウムをストック溶液として調製し、変化量の両溶液を混合して必要なpHに調整した。1つの例としてCiP7.0は、pH7.0の該系列からの緩衝液を特定し、クエン酸塩およびリン酸塩から調製される。
【0383】
リポソームの製造
リポソームを乾燥した脂質フィルムから生成させた。簡潔に言うと、各脂質組成物(20μモル)を、クロロホルム/メタノール 3:1(1ml)に溶解し、真空中で回転蒸発器を用いて乾燥した。得られたフィルムを、CiP8.0(1ml)中で穏やかに撹拌しながら45分間水和させた。得られたリポソーム懸濁液を凍結させ、解凍後に超音波処理し、最終的に200nmポリカーボネートフィルターから押出した。
【0384】
pHジャンプ実験
CiP8.0中のリポソーム(10μl)を、ガラス管中に入れ、必要なpHのCiP緩衝液(1ml)と急速混合した。試料を室温で1時間放置し、200mMリン酸水素ナトリウム(3ml)を試料と急速混合した。リポソームのサイズをMALVERN Zetasizer 3000HSを用いて分析し、サイズをZ-平均として記録した。
【0385】
実施例2:Amphoter I脂質混合物の融合
リポソームを、クエン酸ナトリウム/リン酸ナトリウムpH8.0(CiP8.0)中のDOTAPおよびCHEMSから調製し、少量を、比較的低いpHを有するCiP緩衝液に注入した(詳細については実施例1を参照)。比較的低いpHにおいて観察されるいずれかの比較的大きい構造は、凝集体形成および多中心ハチの巣構造の生成のいずれかによるものか、あるいはそのような構造は、真の融合に起因するものであろう。これら2つの結果物の間で分離するために、200mMリン酸水素ナトリウムを用いてpHを中性に再調整した。静電反発が、多中心小胞を解離したが、融合生成物は解離しなかった。この結果を図7に示す。
【0386】
数学的な塩架橋モデルにおいて予測されるように、不安定性の谷間がわずかに酸性の条件において存在し、比較的大きい粒子への融合が、pH6.5から始まって観察された。しかし、低pHへのリポソームの速い添加は、いくらかのDOTAPが混合物中に存在している限り、粒子の安定化を与えた。100モル%CHEMSからのリポソームは、pH4.5より下で融合状態に入り、比較的低いpHにおいて安定化が得られなかった。
【0387】
注目すべきことに、DOTAP/CHEMSの1:1混合物は、CiP8.0においてリポソームを形成することができず、これは、これらのパラメーターに対して非ラメラ相を予測する数学的モデルと良く一致する。
【0388】
実施例3:Amphoter II系の融合
リポソームを、クエン酸ナトリウム/リン酸ナトリウムpH8.0(CiP8.0)中のMoCholおよびCHEMSから調製し、少量を、比較的低いpHを有するCiP緩衝液に注入した(詳細については実施例1を参照)。比較的低いpHにおいて観察されるいずれかの比較的大きい構造は、凝集体形成および多中心ハチの巣構造の生成のいずれかによるものか、あるいはそのような構造は、真の融合に起因するものであろう。これら2つの結果物の間で分離するために、200mMリン酸水素ナトリウムを用いてpHを中性に再調整した。静電反発が、多中心小胞を解離したが、融合生成物は解離しなかった。
【0389】
実験的証拠は、塩架橋モデルを支持する(図8を参照)。融合ゾーンは、MoCHolの大きい頭部基サイズのゆえに、高アニオン含量に向かって傾斜する。従って、混合物中の33モル%または50モル%CHEMSを用いて融合は起こらず、一方、66モル%または75モル%CHEMSを含有する混合物は、pH4〜6に暴露したときに融合を経る。予測されるように、融合の開始は、比較的高い量のCHEMSを用いて比較的低いpH値にシフトする。ここでも、100モル%CHEMSは、低pHで融合性であり、低pHにおいて安定な状態を持たない。
【0390】
計算に使用したパラメーターを、以下の表71に示す。Na/H2PO4中のCHEMSおよびMoCholをモデル化合物として使用した(全ての体積はÅ3):
【表71】

【0391】
実施例4:モノアルキル脂質との脂質塩形成
オレイン酸を、既知の普通のpH感受性膜成分として選択した。脂質尾部は体積が比較的小さいので、頭部基におけるいずれかの変化は、膜安定性に対してより顕著な結果を有する。図9に示すように、モデル化は、オレイン酸が、MoCholを含むAmphoter II系における融合の強力な推進体であることを予測する。これを実験的に確認する。オレイン酸の混合物は、MoCholとリポソームを形成し、粒子は、異なる条件に暴露したときに急速に融合を経る。アルゴリズムから予測されるように、融合の程度は、混合物中の比較的少ない量のOAに対して制限されるが、50モル%のアニオンは、古典的な谷間タイプの融合パターンの結果を与える。融合傾向はOAでより強いので、混合物中の該アニオンのより大きい部分が、広範囲のpH値にわたって大きな融合の結果を与える。それでも、低pHにおいて混合物を常に安定化させることができる。詳細は実施例1の通りである。
【0392】
【表72】

【0393】
実施例5:蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に基づく融合アッセイ
異なる両性脂質混合物の融合性を調べるために、FRETに基づく脂質混合アッセイを用いた。それぞれ0.6モル%のNBD-PE[N-(7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル)-1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、トリエチルアンモニウム塩]またはRhodamine-PE [LissamineTM ローダミンB 1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、トリエチルアンモニウム塩]で単一ラベルしたリポソームを調製して、FRETシグナルの出現により脂質融合をモニターした。
【0394】
脂質をイソプロパノールに溶解し(最終脂質濃度16mM)、混合した。緩衝液(酢酸10mM、リン酸10mM、NaOH、pH7.5)をアルコール性脂質混合物に加えることによってリポソームを調製し、最終脂質濃度1.95mMおよび最終イソプロパノール濃度12.2%を得た。リポソームの調製のために、液体取扱いロボット(Perkin Elmer、Multiprobe II Ex)を使用した。NBD-ラベルおよびRh-ラベルした両性リポソームを1:1の比で混合し、次いで上記した緩衝液を用いて1:1で希釈した。最後に、この混合試料の少量を、漸減特定pH(HAc50mM、リン酸50mM、NaOH、pH7.5〜2.5)にし、37℃で2時間インキュベートした。この工程において、リポソームを再び1:1で希釈した。
【0395】
試料の蛍光を、2組のフィルター(NBD/ローダミン:460/590nmおよびNBD/NBD:460/530nm)を用いて測定した。膜融合のシグナルとしてのFRETを、発光(590nm)/発光(530nm)の比として表した。バックグラウンド0.4はバックグラウンド蛍光を示し、従って、FRETシグナルから差し引いた。
【0396】
融合と単なる凝集を識別するために、懸濁液をpH7.5に中和し、再びFRETシグナルを測定した。リポソームの融合に対する残存アルコール含量3%の可能な介入を、予備実験によって排除した。
【0397】
実施例6:両性脂質混合物の融合に対する中性もしくは双性イオン性脂質の影響
漸増量の中性もしくは双性イオン性脂質を含む両性リポソームを、実施例5の記載のように調製した。最初に、Amphoter I系(DOTAP/DMGS)およびAmphoter II(MoChol/DOGS)を、10〜50%の異なる中性もしくは双性イオン性脂質またはこれらの混合物の添加によって調製した。一連の異なるC/A比を有するリポソームについて融合を測定した。全マトリックス中の全てのこのような測定の合計を用いて、系を特徴付けることができる。次いで、中性もしくは双性イオン性脂質の効果を、この全体的パラメーター(Σ FRET)を用いて分析した。
【0398】
図14は、両性脂質混合物MoChol/DOGSの融合性に対する、異なる中性もしくは双性イオン性脂質の影響を示す。高κを有する中性脂質(例えば、POPCまたはDOPC)が両性リポソームの融合性を低下させ、一方、比較的低いκを有する脂質(例えば、DOPEまたはコレステロール)が、融合性にわずかの影響しか持たないか、または融合を改善することすらあることが明らかである。POPCとDOPEの混合物およびPOPCまたはDOPCとコレステロールの混合物は、2つの脂質の比に依存して、融合能力にわずかの影響しか持たないか、またはそれを減少させる。これを、図15にさらに示す。モル比PC/Cholが高くなるにつれて、両性リポソームの融合性が低くなる。これらの発見は、中性脂質POPC、DOPE、コレステロールおよびPOPC/Chol=1の混合物について図10〜13に示したモデルと非常によく関連する。これらの図において、DOTAP/DMGS(C/A=0.17〜0.75)またはMoCHol/DOGS(C/A=0.33〜3)からのリポソームのΣFRETを、0%〜50%の中性脂質を含む混合物のκ(min)に対してプロットした。参照κ(min)は、C/A=0.66(DOTAP/DMGS)またはC/A=1(MoChol/DOGS)についてモデル化した。
【0399】
さらなる実験において、他の両性脂質系の融合性に対するPOPCまたはコレステロールの効果を測定した。表73および表74は、これらのデータをまとめ、実験の第1部分の結果を確認するものである。表73および表74は、Σ FRET、ならびに、両性リポソームがpH7〜pH8において安定であり、pH3〜pH6、好ましくはpH4〜pH6において融合するC/A比の範囲を示す。
【0400】
低融合性を有する両性脂質系を、コレステロールの添加によって明瞭に改善しうることが明らかになった。さらに、結果は、コレステロールが、融合性の範囲に影響を有しうることを示す。これは、C/A比の範囲を広くしうることを意味する。
【0401】
【表73】

【0402】
【表74】

【0403】
実施例7:中性脂質による両性リポソームのコロイド安定化
融合アッセイを、実施例5に記載したように行った。0または20モル%コレステロールを含むDOTAP/オレイン酸配合物について、カチオン/アニオンのモル比(C/A比)=0.17、0.33、0.40、0.50、0.67、0.75での融合を試験し、純粋なアニオン性リポソームを対照として調製した。
【0404】
以下に挙げる表75および表76は、2つのDOTAP/オレイン酸Amphoter系の融合プロフィールを、マトリックスC/A-対-pHとして示す。さらに、純粋なアニオン性脂質のリポソームの融合をも示す(C/A=0)。
【0405】
これらの表は、コレステロールの添加が、pH7.5およびC/A比=0.67および0.75において両性リポソームのコロイド安定化を導くことを示す。
【表75】


【表76】

【0406】
実施例8:siRNA標的化Plk-1または非標的化スクランブル(scr)siRNAを封入した両性リポソームによるHela細胞の試験管内トランスフェクション
リポソームの調製
リポソームを、イソプロパノール注入法によって製造した。脂質をイソプロパノールに溶解し(30mM脂質濃度)、混合した。NaAc20mM、スクロース300mM、pH4.0中のsiRNA溶液(pHをHAcで調整する)を、アルコール性脂質混合物に加えることによってリポソームを調製し、最終アルコール濃度30%を得た。生成したリポソーム懸濁液を、体積の2倍の136mMのNa2HPO4、100mMのNaCl(pH9)を用いてpH7.5にシフトさせ、最終脂質濃度3mMおよび最終イソプロパノール濃度10%を得た。
【0407】
一部の配合物は、出発濃度として20mM脂質を用いて調製し、2mMを最終脂質濃度とした。このような配合物は、表77および表78においてアステリスク(*)を付けた。
N/P=製造中の脂質からのカチオン性電荷/siRNAからのアニオン性電荷の比。
リポソーム配合物のサイズを、動的光散乱(Zetasizer 3000、Malvern)を用いて特徴付けた。
【0408】
以下に挙げるsiRNA標的化PLK-1または非標的化スクランブルsiRNAを封入したリポソームAmphoter I配合物を調製した。
PLK-1 siRNAは、Haupenthalら、Int J Cancer、121、206-210 (2007)に記載される通りである。
【0409】
【表77−1】

【0410】
【表77−2】

【0411】
【表77−3】

【0412】
【表77−4】

【0413】
【表77−5】

【0414】
以下に挙げるsiRNA標的化PLK-1または非標的化スクランブルsiRNAを封入したリポソームAmphoter II配合物を調製した。
【0415】
【表78−1】

【0416】
【表78−2】

【0417】
【表78−3】

【0418】
トランスフェクションプロトコール
Hela細胞を、DSMZ(German Collection of Micro Organism and Cell Cultures)から入手し、DMEM中で維持した。培地をGibco-Invitrogenから購入し、10%FCSを追加した。細胞を、2.5*104細胞/mlの密度でプレーティングし、培地(100μl)中、37℃、5%CO2下で培養した。16時間後に、siRNAを含有するリポソームを、所望により血清中でのプレインキュベート後に、製造用緩衝系(上記を参照)において、またはPBSにおいて、またはOptimemI(Gibco-Invitrogen)において希釈した。次いで、10μlを細胞に加えた(ウエルあたり110μlの最終体積および9.1%FCS)(用量は、0.4〜150nMのPlk-1またはスクランブルsiRNAで変化し、最大試験用量は、Amphoter I配合物については12.5〜150nMで、Amphoter IIについては40〜150nMで変化した)。また、希釈緩衝液(10μl)を、未処理細胞および細胞を含まないウエルに加えた。さらに、対照として、遊離のsiRNAを細胞に加えた(10〜80nMのPlk-1またはスクランブルsiRNA)。細胞培養皿を、5%CO下に37℃で72時間インキュベートした。トランスフェクション効率を、細胞増殖/生存性アッセイを用いて分析した。
【0419】
細胞増殖/生存性アッセイ
細胞増殖/生存性を、CellTiter-Blue 細胞生存性アッセイ(Promega、米国)を用いて測定した。簡潔に言うと、トランスフェクションの72時間後に、Medium/CellTiter-Blue 試薬(80μlのMediumと20μlのCellTiter-Blue試薬のプレミックス)(100μl)をウエルに加えた。37℃で2.5時間のインキュベートに続いて、培地(80μl)を、黒色微量滴定プレート(NUNC、デンマーク)のウエルに移した。蛍光を、蛍光プレートリーダー(Ex.550nm/Em.590nm)を用いて記録した。各プレート上に、以下の対照を含ませた:(i)細胞を含まず培地を含むウエル(培養培地バックグラウンド蛍光のための対照)および(ii)細胞を含むウエル(未処理細胞=偽トランスフェクション細胞)。計算のために、培養培地バックグラウンドの平均蛍光値を、実験ウエル(トランスフェクションおよび偽トランスフェクション細胞)の全ての平均(3回)値から差し引いた。各トランスフェクションからの蛍光値を、偽トランスフェクション細胞からの平均蛍光値(これを100%とした)に対して正規化した。
【0420】
結果
図17は、表77の中性リポソームを含む全てのAmphoter IリポソームのIC50値-対-κ(min)値のプロットを示す。
低IC50値は、リポソーム供給系の高トランスフェクション効率を示す。配合物を異なる用量範囲で試験すると、「IC50>12.5nM」としてマークしたプロット中の一部の配合物は、これらの配合物が適切な試験用量範囲において効率的ではないことを示す。
このプロットは、特定範囲のκ(min)値におけるAmphoter Iリポソームのトランスフェクション効率の最適値を明瞭に示す。
【0421】
同様に、図18において、表78の中性脂質を含む全てのAmphoter IIリポソームのIC50値-対-κ(min)値が示されている。配合物を異なる用量範囲でのみ試験すると、「IC50>40nM」としてマークしたプロット中の一部の配合物は、これらの配合物が適切な試験用量範囲において効率的ではないことを示す。
この図から、細胞トランスフェクションのためには、両性リポソームはκ(min)のある種の最小値に到達しなければならないことが明らかになった。
【0422】
図19中のプロットは、表77および表78からの中性脂質を含有する全てのリポソームのサイズ-対-配合物のdκ(pH8)を示し、非常に小さい粒子が、好ましくはdκ(pH8)>0.04で得られることを示す。dκ(pH8)は、κ(pH8)とκ(min)の差である。
【0423】
2つの選択した両性脂質混合物のトランスフェクション効率に対する中性脂質の添加の影響を、図20および図21に示す。両ケースにおいて、中性脂質の添加は、両性リポソームのトランスフェクション効率を明瞭に改善し、両ケースにおいて、用量応答が見られたが、その一方で、適当な両性リポソーム中に封入された対照スクランブルsiRNAは効果を示さなかった。
【0424】
図22および図23は、Amphoter I(DC-CHOL/DMGS)系およびAmphoter II(Chim/DMGS)系について、60モル%のPOPC/Chol混合物(モル比0.5)の添加が、細胞トランスフェクションをほぼ完全に阻害したことを示す。対照的に、20モル%または40モル%のPOPC/Chol混合物の添加は、細胞トランスフェクションを阻害しなかった。
【0425】
さらに、本発明の両性リポソームのトランスフェクション効率に対する両性脂質混合物の等電点(IP)の影響を、本発明の異なる両性リポソームについて、図24に示す。
【0426】
実施例9:siRNA標的化ApoB100または非標的化スクランブル(scr)siRNAを封入した両性リポソームによる初代肝細胞の試験管内トランスフェクション
siRNA標的化ApoB100または非標的化スクランブル(scr)siRNAを封入したリポソームの調製
リポソームを、イソプロパノール注入法によって製造した。脂質混合物をイソプロパノールに溶解した。活性ApoB100または非活性スクランブルsiRNAのストック溶液を緩衝液で希釈して適当な濃度にし、丸底フラスコに移した。両溶液を、pH4において、ポンプ付き注入デバイスを用いて10:23.3(溶媒中の脂質:水性緩衝液中のsiRNA)の比で混合して、イソプロパノール濃度30%にした。得られたリポソーム懸濁液を、pH7.5および最終アルコール濃度10%にシフトさせた。最終リポソームを透析して、未封入のsiRNAおよびアルコールを除去した。次いで、このリポソーム懸濁液を、所望のsiRNA濃度に濃縮した。
【0427】
ApoB100 siRNAは、Soutschekら、Nature、432、173-178 (2004)に記載される通りであり、ガイド鎖上に5'ホスホリル化をさらに含む。
【表79】

【0428】
トランスフェクションプロトコール
初代マウス肝細胞を、Seglen[Seglen, P.O.、「単離したラット肝細胞の調製」、Methods Cell Biol. 13:29-83; 1976]のプロトコールに従って単離し、マウス細胞調製のために修飾した。マウス肝細胞を、最終的にDME-培地(Gibco-Invitrogen)に再懸濁させた。この細胞を、6ウエルのプレートに4×105細胞/ウエルの密度でプレーティングし、10%FCSを含むDME-培地(2000μl)中、37℃、5%CO2下で培養した。
【0429】
トランスフェクションのために、siRNAを含有するリポソームを、Optimem I (Gibco-Invitrogen、Karlsruhe、独国)で希釈して、所望の用量にした。200μl量を細胞に添加した(ウエルあたり2200μl最終体積および9.1%FCS)。Optimem Iまたは透析緩衝液で処理した細胞を、未処理対照とした。細胞培養皿を、5%CO2下に37℃で70時間インキュベートした。
標的mRNA(ApoB)の減少を、Quantigeneアッセイ(Panomics、Fremint、CA、米国)を用いて定量した。
【0430】
結果
両方の両性リポソーム配合物が、未処理細胞と比較して、用量依存的に5または20%下まで、標的ApoB mRNAのノックダウンを示した(図25および26を参照)。対照的に、非標的化スクランブルsiRNAを封入した配合物は、細胞のApoB mRNAレベルに対してほとんど効果を有さず、リポソーム配合物が毒性を示さないことを示した。
【0431】
実施例10:siRNA標的化PLK-1または非標的化スクランブル(scr)siRNAを封入した両性リポソームによるRAW264.7細胞(マウス白血病単球マクロファージセルライン)の試験管内トランスフェクション
siRNA標的化PLK-1または非標的化スクランブル(scr)siRNAを封入したリポソームの調製
リポソームF1〜F4を、イソプロパノール注入法によって製造した。脂質混合物をイソプロパノールに溶解した。活性PLK-1または非活性スクランブルsiRNAのストック溶液を緩衝させて適当な濃度にし、丸底フラスコに移した。両溶液を、pH4において、ポンプ付き注入デバイスを用いて10:23.3(溶媒中の脂質:水性緩衝液中のsiRNA)の比で混合して、イソプロパノール濃度30%にした。得られたリポソーム懸濁液を、pH7.5および最終アルコール濃度10%にシフトさせた。次いで、このリポソーム懸濁液を、所望のsiRNA濃度に濃縮した。
【0432】
PLK-1 siRNAは、Haupenthalら、Int J Cancer、121、206-210 (2007)に記載される通りである。
F1:DOTAP/Chems/Chol 24:26:40(モル%)
F2:DOTAP/DOGS/Chol 15:45:40(モル%)
F3:DOTAP/DMGS/Chol 15:45:40(モル%)
F4:DOTAP/DMGS/Chol 17:53:30(モル%)
【表80】

【0433】
トランスフェクションプロトコール
RAW264.7細胞を、ATCCから入手し、DMEM中で維持した。培地をGibco-Invitrogenから購入し、10%FCSを追加した。細胞を、4*104細胞/mlの密度でプレーティングし、培地(100μl)中、37℃、5%CO2下で培養した。siRNAを含有するリポソームを、製造用緩衝系で希釈した。次いで、10μlを細胞に加えた(ウエルあたり110μlの最終体積および9.1%FCS)(19〜600nMのPlk-1またはスクランブルsiRNA)。また、希釈緩衝液(10μl)を、未処理細胞および細胞を含まないウエルに加えた。細胞培養皿を、5%CO2下に37℃で72時間インキュベートした。トランスフェクション効率を、実施例8に記載した細胞増殖/生存性アッセイを用いて分析した。
【0434】
結果
PLK-1 siRNAを封入した両性リポソーム配合物F1〜F4は、RAW264.7細胞、即ち、マウス白血病単球マクロファージセルラインのトランスフェクションに有効であった。IC50値を以下の表81に示す。
【表81】

【0435】
実施例11:両性リポソームの血清安定性
siRNA封入リポソームの調製
Plk-1 siRNA/scr siRNA-Cy5.5ラベル化(9:1 w/w)の混合物を封入した両性リポソームを、実施例10に記載したように調製した。製造過程の後、リポソームを濃縮および透析して、未封入のsiRNAおよびアルコールを除去した。
F5:DOTAP/Chems/Chol 31:39:30(モル%)
F6:DOTAP/DMGS/Chol 15:45:40(モル%)
F7:CholC4N-Mo2/DMGS/Chol 23:47:30(モル%)
F8:POPC/DOPE/HisChol/DMGS/Chol 7:28:25:30:10(モル%)
【表82】

【0436】
血清安定性を測定するために、リポソームを、2mMの脂質濃度に希釈し、次いで、75%マウス血清中、37℃で2時間インキュベートした(最終脂質濃度0.5mM)。血清インキュベート中のsiRNAの放出を、TBE緩衝液中、15%ポリアクリルアミドゲル(Biorad)でのゲル電気泳動によってモニターした。遊離のsiRNAだけがゲルに入るので、血清インキュベート中にリポソームから放出されたsiRNAを、ゲルにおいて、Cy5.5ラベル化siRNAを検出するODYSSEY赤外結像系(LI-COR Biosciences)を用いて検出することができる。
【0437】
結果
【表83】

【0438】
実施例12:マウスにおける両性リポソームの生体内分布および許容性
実施例11の両性リポソームF5、F7およびF8を、雌性BALB/cマウスの尾静脈に、8mg/kgのsiRNA用量で静脈内注射した。2時間後にマウスを犠牲にし、肝臓と脾臓の低温切開片を調製し、Cy5.5ラベル化siRNAを検出するODYSSEY赤外結像系(LI-COR Biosciences)を用いて分析した。低温切開片の平均強度を、合計強度/面積によって算出した。
【0439】
結果
マウスは、副作用(例えば、みすぼらしい毛、呼吸困難または無気力)の徴候を示さなかった。
肝臓および脾臓における2時間後の両性リポソームの生体内分布を図27に示す。全ての両性リポソーム配合物が肝臓において見られ、幾分低い濃度で脾臓において見られた。
【0440】
実施例13:siRNAを封入した両性リポソーム
siRNAを装填した両性リポソームを、非標的化スクランブルsiRNAを用いて製造した。脂質混合物A(DC-Chol:DMGS:Chol、26:39:35モル%)またはB(DC-Chol:DMGS:Chol、20:40:40モル%)を、両混合物について濃度30mMまたは60mM(最終脂質濃度)でエタノールに溶解した。適切な体積のsiRNAストックを、20mMのNaAc、300mMのスクロース/NaOH、pH4.0で希釈した。有機および水溶液を、3:7の比で混合し、直ちにリポソーム懸濁液を、136mMのNa2HPO4、100mMのNaClによってpH>7.5にシフトさせた。
【0441】
未封入のsiRNAの量を、Centrisart[分子量排除300kD(Sartorius、Goettingen、独国)]を用いる限外濾過によって測定した。濾液のsiRNA濃度を分光学的に測定した(OD260nm)。封入されたオリゴヌクレオチドの量は、siRNAの全体量から未封入のsiRNA量を差し引くことによって決定した。
【0442】
製造後の粒子特性
【表84】

【0443】
実施例14:1,2-ジオレオイル-3-メチル-(メトキシカルボニル-エチル)アンモニウム-プロパン(DOMCAP)の合成
工程A:1,2-ジヒドロキシ-3-メチル-(メトキシカルボニル-エチル)アンモニウム-プロパンの合成
【化12】

この化合物は、Xuら、Synlett 2003、2425-2427に従って合成した。簡潔には、3-メチルアミノ-1,2-プロパンジオール(5.26g)をアセトニトリル(80ml)に加え、混合物を2.5時間撹拌した。次いで、アクリル酸メチルエステル(4.31g)および酢酸銅(II)一水和物(0.5g)を加え、反応液を室温で一晩撹拌した。溶媒を回転蒸発によって除去し、粗生成物(青色油)を、シリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製した(溶離液:酢酸エチルエステル)。生成物(無色油)を1H-NMRによって特徴付けた。
【0444】
工程B:1,2-ジオレオイル-3-メチル-(メトキシカルボニル-エチル)アンモニウム-プロパンの合成
【化13】


1,2-ジヒドロキシ-3-メチル-(メトキシカルボニル-エチル)アンモニウム-プロパン(1.9g)を乾燥ジクロロメタン(40ml)に溶解した。次いで、トリエチルアミン(2.23g)および4-ジメチルアミノピリジン(0.318mg)を加え、混合物を氷浴で5〜10℃まで冷却した。次いで、ジクロロメタン(10ml)中のオレイン酸クロリド(6.62g)の溶液を、反応混合物に滴下し、温度を15℃未満であるように制御した。添加の後、氷浴を除去し、混合物を20℃で2時間撹拌した。最後に、反応混合物を濾過し、残留物をジクロロメタン(50ml)で洗浄した。濾液の溶媒を回転蒸発によって除去し、粗生成物(黄色油)を、シリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製した(溶離液:酢酸エチルエステル:石油エーテル 1:9)。生成物(黄色油)を、1H-NMRおよびLC-MSによって特徴付けた。
【0445】
実施例15:1,2-ジオレオイル-3-N-ピロリジン-プロパン(DOP5P)の合成
【化14】


2雰囲気下に、ピロリジノ-1,2-プロパンジオール(2g)をジクロロメタン(25ml)と混合した。次いで、トリエチルアミン(2.79g)および4-ジメチルアミノピリジン(0.01g)を加え、反応混合物を撹拌し、氷浴中で冷却した。次いで、ジクロロメタン(25ml)中のオレイン酸クロリド(8.29g)を、45分間で滴下した。反応混合物を、室温で2日間撹拌した。粗生成物を、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによって精製した(溶離液:酢酸エチルエステル:石油エーテル 1:1)。生成物(黄色油)を、1H-NMR、13C-NMRおよびLC-MSによって特徴付けた。
【0446】
実施例16:1,2-ジオレオイル-3-N-ピリジニウム-プロパンブロミド塩(DOP6P)の合成
工程A:1,2-ジオレオイル-3-ブロモ-プロパンの合成
【化15】


2雰囲気下に、3-ブロモ-1,2-プロパンジオール(7.75g)をジクロロメタン(300ml)に溶解した。反応混合物を氷浴で冷却し、次いで、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(19.39g)およびオレイン酸クロリド(36.11g)を加えた。反応液を一晩撹拌した。次いで、溶媒を回転蒸発によって除去した。石油エーテル(300ml)を加えた後に白色固体が沈殿し、これを除去した。粗生成物を、シリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製した(溶離液:石油エーテル)。生成物(黄色油)を1H-NMRによって特徴付けた。
【0447】
工程B:1,2-ジオレオイル-3-N-ピリジニウム-プロパンブロミド塩の合成
【化16】

1,2-ジオレオイル-3-ブロモ-プロパン(5.56g)をピリジン(80ml)に溶解し、反応混合物を85℃で一晩撹拌した。溶媒を回転蒸発によって除去し、粗生成物を、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによって精製した(溶離液:クロロホルム;クロロホルム:メタノール 4:1)。生成物(褐色油)を1H-NMRによって特徴付けた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性脂質を含有する両性リポソームであって、該中性脂質が、コレステロールまたはコレステロールと少なくとも1つの中性もしくは双性イオン性脂質の混合物からなる群から選択され、該混合物のκ(中性)が0.3またはそれ未満である両性リポソーム。
【請求項2】
コレステロールと少なくとも1つの中性もしくは双性イオン性脂質の混合物のκ(中性)が、0.25未満、好ましくは0.2未満、最も好ましくは0.15未満である請求項1に記載の両性リポソーム。
【請求項3】
コレステロールと少なくとも1つの中性もしくは双性イオン性脂質の混合物が、
(i)コレステロール/ホスファチジルコリン、
(ii)コレステロール/ホスファチジルエタノールアミン、
(iii)コレステロール/ホスファチジルエタノールアミン/ホスファチジルコリン、
(iv)コレステリン/スフィンゴミエリン、
(v)コレステロール/ホスファチジルエタノールアミン/スフィンゴミエリン、
からなる群から選択される請求項1または2に記載の両性リポソーム。
【請求項4】
ホスファチジルエタノールアミンがDOPEである請求項3に記載の両性リポソーム。
【請求項5】
ホスファチジルコリンが、DMPC、DPPC、DSPC、POPC、DOPC、大豆PCまたは卵PCから選択される請求項3に記載の両性リポソーム。
【請求項6】
コレステロールと少なくとも1つの中性もしくは双性イオン性脂質の混合物のモル比が4〜0.25である請求項1〜5のいずれかに記載の両性リポソーム。
【請求項7】
両性リポソームが、1つまたはそれ以上または複数の荷電した両親媒性物質を含有し、該物質が互いと組合せて両性の性質を有する請求項1〜6のいずれかに記載の両性リポソーム。
【請求項8】
荷電した両親媒性物質が両性脂質である請求項7に記載の両性リポソーム。
【請求項9】
両性脂質が、HistChol、HistDG、isoHistSuccDG、アシルカルノシンおよびHCCHolからなる群から選択される請求項8に記載の両性リポソーム。
【請求項10】
両性リポソームが両性の特性を有する脂質成分の混合物を含有し、該脂質成分の混合物が少なくとも1つのpH応答性成分を含有する請求項7に記載の両性リポソーム。
【請求項11】
脂質成分の混合物が、
(i)安定なカチオン性脂質および荷電可能なアニオン性脂質(Amphoter I混合物と称する)、
(ii)荷電可能なカチオン性脂質および荷電可能なアニオン性脂質(Amphoter II混合物と称する)、または
(iii)安定なアニオン性脂質および荷電可能なカチオン性脂質(Amphoter III混合物と称する)、
を含有する請求項10に記載の両性リポソーム。
【請求項12】
両性リポソームの等電点が4.5〜6.5である請求項1〜11のいずれかに記載の両性リポソーム。
【請求項13】
アニオン性脂質が、以下からなる群から選択される請求項1〜12のいずれかに記載の両性リポソーム:
ジアシルグリセロールヘミスクシネート、例えば、DOGS、DMGS、POGS、DPGS、DSGS;ジアシルグリセロールヘミマロネート、例えば、DOGMまたはDMGM;ジアシルグリセロールヘミグルタレート、例えば、DOGG、DMGG;ジアシルグリセロールヘミアジペート、例えば、DOGA、DMGA;ジアシルグリセロールヘミシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、例えば、DO-cHA、DM-cHA;(2,3-ジアシル-プロピル)アミノ}-オキソアルカン酸、例えば、DOAS、DOAM、DOAG、DOAA、DMAS、DMAM、DMAG、DMAA;ジアシル-アルカン酸、例えば、DOP、DOB、DOS、DOM、DOG、DOA、DMP、DOB、DMS、DMM、DMG、DMA;Chemsおよびその誘導体、例えば、Chol-C2、Chol-C3、Chol-C5、Chol-C6、Chol-C7またはChol-C8;Chol-C1、CholC3Nまたはコレステロールヘミジカルボン酸およびコレステリルオキシカルボニルアミノカルボン酸、例えば、Chol-C12またはCholC13N、脂肪酸、例えば、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ネルボン酸、ベヘン酸;DOPA、DMPA、DPPA、POPA、DSPA、Chol-SO4、DOPG、DMPG、DPPG、POPG、DSPGまたはDOPS、DMPS、DPPS、POPS、DSPSまたはセチル-ホスフェート。
【請求項14】
カチオン性脂質が、以下からなる群から選択される請求項1〜13のいずれかに記載の両性リポソーム:
DOTAP、DMTAP、DPTAP、DSTAP、POTAP、DODAP、PODAP、DMDAP、DPDAP、DSDAP、DODMHEAPまたはDORI、PODMHEAPまたはPORI、DMDMHEAPまたはDMRI、DPDMHEAPまたはDPRI、DSDMHEAPまたはDSRI、DOMDHEAP、POMDHEAP、DMMDHEAP、DPMDHEAP、DSMDHEAP、DOMHEAP、POMHEAP、DMMHEAP、DPMHEAP、DSMHEAP、DODHEAP、PODHEAP、DMDHEAP、DPDHEAP、DSDHEAP、DDAB、DODAC、DOEPC、DMEPC、DPEPC、DSEPC、POEPC、DORIE、DMRIE、DOMCAP、DOMGME、DOP5P、DOP6P、DC-Chol、TC-Chol、DAC-Chol、Chol-ベタイン、N-メチル-PipChol、CTAB、DOTMA、MoChol、HisChol、Chim、MoC3Chol、Chol-C3N-Mo3、Chol-C3N-Mo2、Chol-C4N-Mo2、Chol-DMC3N-Mo2、CholC4Hex-Mo2、DmC4Mo2、DmC3Mo2、C3Mo2、C3Mo3、C5Mo2、C6Mo2、C8Mo2、C4Mo4、PipC2-Chol、MoC2Chol、PyrroC2Chol、ImC3Chol、PyC2Chol、MoDO、MoDP、DOIMまたはDPIM。
【請求項15】
両性リポソームがAmphoter I混合物であり、該混合物のκ(min)が0.07〜0.22である請求項1〜14のいずれかに記載の両性リポソーム。
【請求項16】
両性リポソームが以下から選択されるAmphoter I混合物である請求項1〜15のいずれかに記載の両性リポソーム:
クレーム
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【表1−6】

【請求項17】
両性リポソームがAmphoter II混合物であり、該混合物のκ(min)が0.23未満である
請求項1〜14のいずれかに記載の両性リポソーム。
【請求項18】
両性リポソームが以下から選択されるAmphoter II混合物である請求項1〜14および17のいずれかに記載の両性リポソーム:
【表2−1】

【表2−2】

【表2−3】

【表2−4】

【請求項19】
リポソームが、50〜1000nmの範囲内のサイズを有する請求項1〜18のいずれかに記載の両性リポソーム。
【請求項20】
リポソームが、細胞標的化リガンドおよび/または粒子を立体的に安定化する膜形成分子または膜配置分子を含有する請求項1〜19のいずれかに記載の両性リポソーム。
【請求項21】
リポソームが少なくとも1つの活性物質を封入している請求項1〜20のいずれかに記載の両性リポソーム。
【請求項22】
活性物質が、脊椎動物細胞において1つまたはそれ以上のRNAに転写されうる核酸を含有し、該RNAがmRNA、shRNA、miRNAまたはリボザイムであり、該mRNAが1つまたはそれ以上のタンパク質またはポリペプチドをコードしている請求項21に記載の両性リポソーム。
【請求項23】
核酸が、環状DNAプラスミド、線状DNA構築物またはmRNAである請求項22に記載の両性リポソーム。
【請求項24】
活性物質がオリゴヌクレオチドである請求項21に記載の両性リポソーム。
【請求項25】
オリゴヌクレオチドが、デコイオリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、転写に影響を与える物質、スプライシングに影響を与える物質、リボザイム、DNAザイムまたはアプタマーである請求項24に記載の両性リポソーム。
【請求項26】
オリゴヌクレオチドが、ホスフェートまたはホスホチオエート形態にあるDNA、RNA、ロックされた核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、2'O-メチルRNA(2'Ome)、2'O-メトキシエチルRNA(2'MOE)などの修飾ヌクレオチドを含有する請求項24または25のいずれかに記載の両性リポソーム。
【請求項27】
少なくとも80重量%の活性物質がリポソーム内部に配置されている請求項21〜26のいずれかに記載の両性リポソーム。
【請求項28】
リポソームが未封入の活性物質を含有する請求項21〜24のいずれかに記載の両性リポソーム。
【請求項29】
請求項21〜28のいずれかに記載の活性物質を装填した両性リポソームおよびそのための医薬的に許容しうるビヒクルを含有する医薬組成物。
【請求項30】
細胞の試験管内、生体内または生体外トランスフェクションのための、請求項1〜28のいずれかに記載の両性リポソームの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公表番号】特表2011−500520(P2011−500520A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528325(P2010−528325)
【出願日】平成20年10月12日(2008.10.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/008621
【国際公開番号】WO2009/047006
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(503300306)ノヴォソム アクチェンゲゼルシャフト (8)
【Fターム(参考)】