説明

中掘工法に於ける球根形成用オーガ掘削ヘッド

【課題】 杭の先端に極めて大きい径を有する拡大球根を形成するために、掘削孔の内径を極めて大きくするための中掘工法に於ける球根形成用オーガ掘削ヘッドを目的とする。
【解決手段】 中空ロッド8の外周に螺旋状に取付けられたブレード2に沿って、固定外筒3内に内筒4a、4b、5を伸縮自在に収納した噴射筒1を取付け固定し、該噴射筒1と中空ロッド8とをパイプ9で連結し、前記内筒5の先端に噴射ノズル6を設けて構成した中掘工法に於ける球根形成用オーガ掘削ヘッドの構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既製中空杭の中に掘削ヘッドを有するスクリューオーガを押通して、スクリューオーガの回転によって該既製中空杭を地中に建て込んで行く中掘工法に使用される掘削ヘッドの構造に係り、特に中空杭を所定深さに建て込んだ後に、中空杭下端部に拡大球根を造成するために使用される掘削ヘッドの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明と同様に中空杭を所定深さに建て込んだ後に、中空杭下端部に拡大球根を造成するために使用される掘削ヘッドの構造に関する従来の公知技術としては、特開2004−183377号公報(特許文献1)或は特開2004−324274号公報(特許文献2)が知られている。
【0003】
これ等の特許文献1、2の技術は、共に先端に掘削刃を有するオーガ掘削ヘッドの中空ロッド内に外部から高圧流体を案内すべき流体案内路を縦通し、先端に高圧流体を噴出することが出来る噴射ノズルを、前記中空ロッドの外周面に取付けられた複数本の伸縮自在の噴射筒の中で放射方向に半径延長線上で伸縮出来るように取付けて構成している。そして前記噴射ノズルを伸しながら高圧流体を噴出することによって、掘削孔の孔壁をさらに掘削して径の大きい拡大球根用の拡大孔を形成することが出来るようにした技術である。
【0004】
【特許文献1】特開2004−183377号公報
【特許文献2】特開2004−324274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の特許文献1及び特許文献2に示すような従来技術は、中空ロッドの外周面に伸縮出来る噴射ノズルを取付けて、この噴射ノズルより高圧流体を噴出することが出来るように構成している。従って、この噴射ノズルを伸して高圧流体を噴出することによって、掘削孔の孔壁をさらに掘削して或る程度の径の大きい拡大孔を形成することは可能であるが、次のような理由によって、杭体の支持力を最大にするための拡大球根を構成するのに必要とする径の大きい拡大孔を形成することは極めて困難であった。
【0006】
即ち、特許文献1及び特許文献2に記載された技術に於ては、中空ロッド外周面に伸縮自在な噴射筒を取付け、かつ該噴射筒の中に噴射ノズルを半径延長線上で伸縮出来るように構成しているが、噴射筒の先端は掘削ヘッドの掘削刃の外径より突出することができないので、該噴射筒の長さが限定され、従って、噴射筒を最大限に伸ばして、噴射ノズルより高圧流体を噴出しても、所望する大きい径の拡大孔を掘削することができない問題があった。
【0007】
本発明に係る中掘工法に於ける球根形成用オーガ掘削ヘッドは、前述の従来の技術に鑑み開発された全く新しい技術であって、特に先端に高圧流体噴射ノズルを有する複数本の伸縮自在な噴射筒を掘削ヘッドのブレードに沿って取付けることによって軸長の大きい噴射筒を使用出来るように構成し、これによりより径の大きい拡大孔を掘削することが出来るようにした中掘工法に於ける球根形成用オーガ掘削ヘッドの技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る中掘工法に於ける球根形成用オーガ掘削ヘッドは、前述の従来の問題点を根本的に改善した発明であって、その第1の構成は外周面に螺旋状のブレードを突設した中空ロッドの中央管に外部から高圧流体を導入する流路を設け、先端に高圧流体噴射ノズルを有する複数本の伸縮自在な軸長の大きい噴射筒を前記ブレードに沿って取付け、パイプを介して噴射筒の後部と前記中空ロッドの流路とを相互に連通し、外部から中空ロッドの流路に圧送される高圧流体の圧力により前記噴射筒を伸縮出来るようにした中掘工法に於ける球根形成用オーガ掘削ヘッドである。
【0009】
また、本発明の中掘工法に於ける球根形成用オーガ掘削ヘッドの第2の構成は、前記噴射筒は固定外筒と該固定外筒内に収納された内筒とよりなり、該内筒は噴射筒に導入される高圧流体の圧力或は噴射筒に収納したばねによって一定距離を前進或は後退するように構成されていることを特徴とした請求項1の球根形成用オーガ掘削ヘッドである。
【0010】
また、本発明の中掘工法に於ける球根形成用オーガ掘削ヘッドの第3の構成は、前記噴射筒の先端部がブレードとほぼ等しい角度で下方向に傾斜されて構成されていることを特徴とした第1構成或は第2構成の球根形成用オーガ掘削ヘッドである。
【0011】
また、本発明の中掘工法に於ける球根形成用オーガ掘削ヘッドの第4の構成は、前記噴射筒の噴射ノズルの先端部に該噴射ノズルと所定間隔を保ってブラケットを介して掘削刃が設けられていることを特徴とした第1構成乃至第3構成の球根形成用オーガ掘削ヘッドである。
【0012】
また、本発明の中掘工法に於ける球根形成用オーガ掘削ヘッドの第5の構成は、前記掘削刃を所定方向に傾斜させ、噴射ノズルの先端から噴射された高圧流体が該掘削刃に当って掘削刃の掘進方向に噴出されるように構成したことを特徴とした第4構成の球根形成用オーガ掘削ヘッドである。
【発明の効果】
【0013】
前記本発明に係る中掘工法に於ける球根形成用オーガ掘削ヘッドの第1構成に於ては、複数本の伸縮自在な噴射筒をブレードに沿って取付けるようにしたので、軸長の大きい噴射筒を中空ロッドの周りに取付けることが出来る。従って、噴射筒のストロークを大きくし、かつその先端の噴射ノズルを外方に大きく伸ばすことが出来る。
【0014】
前記噴射筒の後部と前記中空ロッドの流路とをパイプを介して相互に連通したので、外部から中空ロッドの流路に圧送される高圧流体の圧力を利用して噴射筒を所定の長さに伸縮することが出来る。
【0015】
また、本発明に係る中掘工法に於ける球根形成用オーガ掘削ヘッドの第2の構成に於ては、前記噴射筒を固定外筒と、この固定外筒内に収納された内筒で構成し、かつ該内筒を高圧流体の圧力或はばねによって前進或は後退するように構成したので、噴射筒の伸縮を地上から簡単に操作することが出来る。
【0016】
また、本発明に係る中掘工法に於ける球根形成用オーガ掘削ヘッドの第3の構成に於ては、ブレードに沿って取付けられた噴射筒がブレードとほぼ等しい角度で下方向に傾斜されているので、噴射筒から掘削ヘッドの掘削方向に向けて高圧流体を噴出することが出来る。
【0017】
また、本発明に係る中掘工法に於ける球根形成用オーガ掘削ヘッドの第4の構成に於ては、噴射筒の噴射ノズルの先端部に該噴射ノズルと所定の間隔を保って、ブラケットを介して掘削刃を取付けたので、噴射筒の噴射ノズルを伸した際に、この掘削刃によって掘削孔の内壁を掘削することが出来る。
【0018】
また、本発明に係る中掘工法に於ける球根形成用オーガ掘削ヘッドの第5の構成に於ては、前記第4構成に於ける掘削刃を所定方向に傾斜させたので、噴射ノズルの先端から噴射される高圧流体をこの掘削刃に当って、掘削刃の掘進方向に噴出させることが出来るので、掘削刃に作用する土砂の抵抗を下げる効果が期待出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図により本発明に係る中掘工法に於ける球根形成用オーガ掘削ヘッドの一実施例を具体的に説明すると、図1は本発明に係る中掘工法に於ける球根形成用オーガ掘削ヘッドの要部の構成を示す説明図、図2は図1の一部を省略した平面図、図3は図1の噴射筒の縦断面図、図4は図1の噴射筒とブレードとの関係を示す斜視説明図である。
【0020】
図1乃至図4に於て、1は噴射筒であって、後述の中空ロッド8の外周に螺旋状に傾斜して取付けられたブレード2の上面に沿って載置固定し得る軸長を有している。この噴射筒1は、固定外筒3と、この中に収納された2本の内筒4a、4b、5とより構成されている。内筒5の先端には噴射ノズル6が設けられている。
【0021】
また、内筒5の後端には、コイルばね7が取付けられており、内筒5はこのコイルばね7を介して固定外筒3の後端に連結されている。固定外筒3の後端と、中空ロッド8とはパイプ9によって連結されており、中空ロッド8の中央管の流路と固定外筒3内の中空部とを連通している。従って、外部から中空ロッド8の流路に圧送される高圧流体を固定外筒3に圧送し、高圧流体の圧力及び前記コイルばね7の作用によって、内筒4、5を伸縮し得るように構成している。前記コイルばね7は、エアダンパーに代えることも可能である。
【0022】
内筒5の先端部には、図1に示す如く、所定の間隔を保って掘削刃10が図示しないブラケットを介して取付けられている。従って、内筒5(噴射ノズル6)を伸した際には、この掘削刃10で掘削孔の外壁を掘削して掘削孔の内径を大きくすることが出来るように構成されている。
【0023】
また、前記掘削刃10は、図1に示す如く、所定方向に傾斜されており、噴射ノズル6より噴出した高圧流体11をこの掘削刃10に当てて掘削刃10の掘進方向に噴出することが出来るように構成されている。
【0024】
本発明に於ては、前述の如く噴射筒1をブレード2の上面に沿って載置固定するようにしたので、前記従来の中空ロッドに放射状に半径延長線上で伸縮出来るように取付けた噴射筒と異なり、噴射筒1の軸長を極めて大きくすることが出来る。
【0025】
従って、固定外筒3と内筒4a、4b、5とより構成される噴射筒1のストロークを大きくし、噴射ノズル6を外方に大きく伸ばすことが出来るようにし、これによって掘削孔の内径を著しく大きく掘削出来るように構成している。
【0026】
例えば、本発明の掘削ヘッドを使用した場合には、中空ロッド8の径を154mm、ブレード2の外径を380mmと仮定した場合に、噴射筒1の固定外筒3の軸長を261mmに、かつ径を80mmにすることが出来、さらに内筒4a、4b、5を伸ばした場合には、固定外筒3の先端より噴射ノズル6を230mm突出させることが出来、これによって820mmの内径を有する掘削孔を形成することが出来る。
【0027】
また、噴射筒1をブレード2の上面に載置して固定した場合には、噴射筒1を約35°傾かせることが出来る。従って、噴射ノズル6からは、下方に向けて、即ち掘進方向に高圧流体11を噴出することが出来、これによって掘削ヘッドの掘進をスムーズにすることが出来る。
【0028】
前記実施例に於ては、噴射筒1をブレード2の上面に載置固定したが、噴射筒1はブレード2の下面に取付け固定することも可能である。掘削土はブレードの上面に沿って排土するので、ブレード2の下面に噴射筒1を取付ける場合の方が排土の邪魔にならずに合理的である。
【0029】
前記噴射筒1の伸縮に当っては、噴射筒1の固定外筒3内に高圧流体11を供給することによって行うことが出来る。最初に約5MPa、その後約10MPa、約15〜20MPaの高圧流体11を供給することによって、固定外筒3より内筒4a、4b、5を徐々に突出させて噴射ノズル6を最大限に伸ばすことが出来る。掘削孔の掘削が完了した後では、噴射圧力を下げることによって、コイルばね7の作用で内筒4a、4b、5を固定外筒3内に収納して噴射筒1を収縮せしめることが出来る。
【0030】
掘削孔の拡大掘削が終了した後では、中空ロッド8及び噴射筒1を介して、噴射ノズル6よりセメントミルクを掘削孔の拡大掘削部を注入することによって、これを固化させて拡大球根を作成し、この拡大球根によって杭の支持力を高めることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本件は、中掘工法で施工する杭先端の拡大球根築造方法について述べているが、プレボーリング工法で施工する場合にも適用することが出来る。むしろ、中掘工法の場合よりもプレボーリング工法の方が掘削装置を杭中空部に収納しなくてよい分だけ容易に適用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る中掘工法に於ける球根形成用オーガ掘削ヘッドの要部の構成を示す説明図である。
【図2】図1の一部を省略した平面図である。
【図3】図1の噴射筒の縦断面図である。
【図4】図1の噴射筒とブレードとの関係を示す斜視説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ・・・噴射筒
2 ・・・ブレード
3 ・・・固定外筒
4a ・・・内筒
4b ・・・内筒
5 ・・・内筒
6 ・・・噴射ノズル
7 ・・・コイルばね
8 ・・・中空ロッド
9 ・・・パイプ
10 ・・・掘削刃
11 ・・・高圧流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に螺旋状のブレードを突設した中空ロッドの中央管に外部から高圧流体を導入する流路を設け、先端に高圧流体噴射ノズルを有する複数本の伸縮自在な軸長の大きい噴射筒を前記ブレードに沿って取付け、パイプを介して噴射筒の後部と前記中空ロッドの流路とを相互に連通し、外部から中空ロッドの流路に圧送される高圧流体の圧力により前記噴射筒を伸縮出来るようにした中掘工法に於ける球根形成用オーガ掘削ヘッド。
【請求項2】
前記噴射筒は固定外筒と該固定外筒内に収納された内筒とよりなり、該内筒は噴射筒に導入される高圧流体の圧力或は噴射筒に収納したばねによって一定距離を前進或は後退するように構成されていることを特徴とした請求項1の球根形成用オーガ掘削ヘッド。
【請求項3】
前記噴射筒の先端部がブレードとほぼ等しい角度で下方向に傾斜されて構成されていることを特徴とした請求項1或は請求項2の球根形成用オーガ掘削ヘッド。
【請求項4】
前記噴射筒の噴射ノズルの先端部に該噴射ノズルと所定間隔を保ってブラケットを介して掘削刃が設けられていることを特徴とした請求項1乃至請求項3の球根形成用オーガ掘削ヘッド。
【請求項5】
前記掘削刃を所定方向に傾斜させ、噴射ノズルの先端から噴射された高圧流体が該掘削刃に当って掘削刃の掘進方向に噴出されるように構成したことを特徴とした請求項4の球根形成用オーガ掘削ヘッド。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−299595(P2006−299595A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−120820(P2005−120820)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(597058664)株式会社トーヨーアサノ (24)
【Fターム(参考)】