説明

中皮抗原及びそれを標的化するための方法及びキット

【課題】中皮腫及び卵巣癌に関連する、メソセリンと称する分化抗原を利用した、癌の治療および診断法の提供。
【解決手段】約69Kdの分子量を持つ分化抗原メソセリンに特異的に結合する抗体、および抗体と毒素等のエフェクター分子との複合体を用いて、メソセリンを担持する腫瘍細胞を標的化し、該細胞の増殖を阻害する方法、および腫瘍細胞の存在の徴候として、該抗原及びその発現レベルを検出するための方法、及びその検出のためのキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍細胞、特に、中皮腫(mesotheliomas)及び卵巣腫瘍細胞上に見出される特定の抗原の同定、及び中でも、前記抗原を担持する細胞を標的化するための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
モノクローナル抗体が現在、癌を診断し、そして治療するために使用されている(Mach, J.など., Current Opinion Immunol.B, 685-693 (1991); Grossbard, M.L., など., Blood 80 (4): 863-878 (1992))。治療のために有用であるためには、抗体は、癌細胞上に多量に、そして正常細胞にはごくわずかな量で存在する抗原を認識すべきである。あるいは、前記抗原は、正常細胞が必須器官の成分でない場合、正常細胞上に実質的な量で存在することができる。このアプローチは、白血病及びリンパ腫のための新規治療法を開発する上で有用である。いくつかの分化抗原が、それらは分化されたリンパ球を生ぜしめる幹細胞上に存在しないので、免疫治療のための良好な標的物であるリンパ腫及び白血病に対して同定されて来た(Grossbard, M.L., など., Blood 80 (4): 863-878 (1992))。
【0003】
従って、免疫治療により殺される正常なリンパ球は再生され得る。このタイプのリンパ球抗原のいくつかの例は、CD19, CD22, CD25及びCD30である(Grossbard, M.L., など., Blood 80 (4): 863-878 (1992); Engert, A., など., Cancer Research 50, 84-88 (1990))。明らかに、固形腫瘍上の分化抗原を認識する抗体を有することが非常に有用であるが、しかしそれらのうち少数のみが入手できている。そのような抗体が少数しかない1つの理由は、種々のタイプの上皮細胞上の分化抗原を同定する努力が、造血系の細胞上の分化抗原を同定するためになされた集中的な努力に比較して、比較的控えめであったことである。
【0004】
卵巣癌のための手術の間、卵巣が常に除去され、そして正常な卵巣組織との反応性は問題でないので、卵巣癌は免疫治療により治療され得る疾病の1つを代表する。卵巣癌細胞上の分化抗原を認識するいくつかの抗体が生成されている。それらの1つは、 CA125抗原を認識する OC125である(Bast, R., など., N.Eng.J.Med. 309, 883-887 (1983))。 CA125は、卵巣癌細胞により生成され、そして卵巣癌の診断において有用である高分子量糖タンパク質である。しかしながら、 CA125に対する抗体は、その CA125抗原が血流中に生成されるので、免疫治療のために有用ではない(Bast, R., など., N.Eng.J.Med. 309, 883-887 (1983))。
【0005】
もう1つのものは、葉酸結合タンパク質を認識する MOV18である。このタンパク質は、卵巣癌において、及びいくつかの他の癌において豊富である。不運なことには、このタンパク質はまた、腎臓においても豊富に発現される(Campbell, I.G., など., Cancer Res. 51, 5329-5338 (1991))。本発明者が以前、単離し、そしてMAb K1と命名した抗体は、多くの卵巣癌及び多くの中皮腫と反応する。 OC125のように、抗体はまた、正常な中皮細胞とも反応するが、しかしそれは気管におけるいくつかの細胞との弱い反応性を除いて、他の細胞型と反応しない(Chang,K., など., Int.J.Cancer 50, 373-381 (1992); Chang, K., など., Cancer Res. 52, 181-186 (1992) 、また、アメリカ特許第 5,320,956号も参照のこと)。
【0006】
MAb K1 により認識される抗原は、中皮上に存在する分化抗原であるように見え、そして中皮に由来する癌、たとえば上皮型中皮腫上で及びほとんどの卵巣癌上で発現される。従って、CAK1抗原に向けられる免疫治療は、正常な中皮細胞及びおそらく、気管の細胞の可能性ある危険性を考思すべきである(Chang, K., など., Int.J.Cancer 50, 373-381 (1992); Chang, K.,など., Cancer Res. 52, 181-186 (1992); Chang, K., など., Int.J.Cancer 51, 548-554 (1992); Chang, K., など., Am.J.Surg.Pathol. 16, 259-268 (1992))。
【0007】
卵巣癌細胞系 OVCAR-3及びHeLa細胞を用いて、抗原は、ホスファチジルイノシトールにより細胞表面に結合された約40KDの糖タンパク質であることが示されている。このタンパク質は、細胞がホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼCにより処理される場合、放出される(Chang, K., など., Cancer Res. 52, 181-186 (1992))。本発明者は、CAK1抗原をコードするcDNAをクローン化することを以前、試みたが、しかしそれに反して、MAb K1とも反応する2種の異なった細胞内タンパク質をコードするcDNAをクローン化した(Chang, K., and Pastan, I., Int.J.Cancer 57, 90-97 (1994))。それらのいづれも、MAb K1により認識される細胞表面膜抗原ではない。
【発明の開示】
【0008】
発明の要約
本発明は、配列番号2のポリペプチド配列からの少なくとも10個の隣接したアミノ酸を含んで成る単離されたポリペプチドについての用途を提供し、ここで前記ポリペプチドは、 OVCAR-3及びHeLa細胞の細胞表面に結合された40KDのポリペプチド(K1抗原)により十分に免疫吸着された、免疫系として配列番号2の十分な長さのポリペプチドに対して生ぜしめられた抗血清に結合する。
【0009】
本発明の十分な長さのポリペプチドは典型的には、約69KDの長さであるが、但し、それらは、グリコシル化されるか、又は、たとえば真核発現ベクターのごとき構造体中に組込まれた場合、それよりも大きい。本発明のポリペプチドは、いくつかの形で、たとえば単離された天然のエンドプロテオリティック・ポリペプチドの形で、組換え的に生成されたポリペプチドの形で、及び組換えポリペプチド、たとえば融合タンパク質の一部として存在することができる。
【0010】
本発明はまた、上記ポリペプチドをコードする単離された核酸についての用途も提供する。代表的な核酸は、配列番号1に記載されるものを包含する。好ましい態様において、核酸は、組換えベクター、たとえばプラスミドもしくはウィルスの一部であり、又は抗原を検出するためのプローブとして使用され得る。好ましい態様において、核酸は、配列番号1の核酸に対して選択的にハイブリダイズする。核酸配列は、たとえば天然に存在するメソセリンタンパク質に対して完全な配列同一性を有するメソセリンポリペプチドをコードすることができる。核酸はまた、天然に存在するメソセリンポリペプチドに対して同一ではないメソセリンポリペプチド、たとえば融合タンパク質、又は本明細書に記載されるようなタンパク質機能又は免疫原性のために必須の塩基を保持する遺伝子的構築された変異メソセリンタンパク質をコードすることができる。
【0011】
本発明の核酸を含んで成る組換え細胞、たとえば真核及び原核細胞もまた、供給される。本発明はまた、本発明のポリペプチドに対して特異的に結合する抗体も供給する。
本発明はさらに、メソセリンを担持する細胞の増殖を標的化し、そして/又は阻害するための方法;腫瘍細胞の存在の徴候としての抗原及びその発現レベルを検出するための方法;及びそのような検出のためのキットを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
定 義
特にことわらない限り、本明細書に使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が関与する当業者により通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法及び材料に類似するか又は同等のいづれかの方法及び材料が本発明の実施又は試験において使用され得るが、好ましい方法及び材料が記載されている。本発明のためには、次の用語が下記に定義される。
【0013】
用語“抗体”とは、本明細書で使用される場合、種々の形の修飾された又は変更された抗体、たとえば損なわれていない免疫グロブリン、種々のフラグメント、たとえばFvフラグメント、L及びH鎖可変領域のみを含むFvフラグメント、ジスルフィド結合により連結されるFvフラグメント(Brinkmann, など., Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90: 547-551 (1993)) 、可変領域、及び不変領域の一部を含む Fab又は (Fab)′2 フラグメント、一本鎖抗体、及び同様のものを包含する(Birdなど., Science 242: 424-426 (1988); Hustonなど., Proc.Nat.Acad.Sci. USA 85: 5879-5883 (1988)) 。抗体は、動物(特に、マウス又はラット)もしくはヒト起源のものであり得、又はキメラ性であり得(Morrisonなど., Proc.Nat.Acad.Sci. USA81: 6851-6855 (1984)) 、又はヒト化(humonized)され得る(Jonesなど., Nature 321: 522-525 (1986) 及び公開されたUK特許出願第 8707252号)。
【0014】
用語“イムノアッセイ”とは、分析物又は抗原を特異的に結合するために抗体を利用するアッセイである。イムノアッセイは、分析物を単離し、標的化し、そして/又は定量化するために特定の抗体の特異的結合性質の使用により特徴づけられる。
【0015】
用語“単離された”、“精製された”、又は“生物学的に純粋”とは、その生来の状態で見出されるように、通常付随する成分を実質的に又は本質的に有さない材料を意味する。
【0016】
用語“核酸”とは、一本鎖又は二本鎖形でのデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドポリマーを意味し、そして特にことわらない限り、天然に存在するヌクレオチドと類似する態様で機能することができる天然のヌクレオチドの既知類似体を包含する。
【0017】
用語“核酸プローブ”とは、核酸の特異的配列又はサブ配列に結合する分子を意味する。プローブは好ましくは、標的核酸の十分な配列又はサブ配列に対合する相補的塩基を通して結合する核酸である。プローブは、ハイブリダイゼーション条件の緊縮性に依存して、プローブ配列との完全な相補性を欠いている標的配列と結合することができることが当業者により理解されるであろう。プローブは好ましくは、同位体、発色団、発光団、色原体により直接的にラベルされ、又はストレプタビジン複合体がのちに結合することができるビオチンにより間接的にラベルされる。プローブの存在又は不存在についてアッセイすることによって、選択配列又はサブ配列の存在又は不在を検出することができる。
【0018】
用語“ポリペプチド”、“ペプチド”及び“タンパク質”は、アミノ酸残基のポリマーを意味するために本明細書においては、交換可能的に使用される。その用語は、1又は複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学類似体であるアミノ酸ポリマー、及び天然に存在するアミノ酸ポリマーに当てはまる。
用語“組換え”とは、細胞に関して使用される場合、細胞がその起源がその細胞型に対して外因性である DNAをコードすることを示す。従って、たとえば、組換え細胞は、細胞の生来(非組換え)形内に見出されない遺伝子を発現する。
【0019】
2種の核酸又はポリペプチド配列における用語“同一”とは、最大の対応で並べられる場合に同じである、2種の配列における残基を意味する。比較のための配列の最適な整列は、たとえば、Smith and Waterman Adv.Appl.Math. 2: 482 (1981) の局部相同アルゴリズムにより、Needleman and Wunsch J.Mol.Biol. 48: 443 (1970)の相同整列アルゴリズムにより、Pearson and Lipman Proc.Natl.Acad.Sci. (U.S.A.) 85: 2444 (1988) の類似性方法についての研究により、それらのアルゴリズムのコンピューター化された手段(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group,575 Science Dr., Madison, WIにおける GAP, BESTFIT, FASTA及びTFASTA) により、又は観察により実施され得る。
【0020】
ポリペプチドにおける用語“実質的な同一性”又は“実質的な類似性”とは、ポリペプチドが対照の配列に対して少なくとも70%の配列同一性、又は対照の配列に対して好ましくは80%、又はより好ましくは85%の配列同一性、約10〜20個のアミノ酸残基の比較領域に対して、最とも好ましくは90%の同一性を有する配列を含んで成ることを示す。2つのポリペプチド配列が実質的に同一であるという表示は、1つのペプチドがその第2ペプチドに対して生ぜしめられた抗体と免疫学的に反応性であることである。従って、ポリペプチドは、たとえば2つのペプチドが保存性置換によってのみ異なる場合、第2ペプチドに対して実質的に同一である。
【0021】
2種の核酸配列が、実質的に同一であるという表示は、第1核酸がコードするポリペプチドが第2核酸によりコードされるポリペプチドと免疫学的に交差反応性であることである。
【0022】
2種の核酸配列が実質的に同一であるもう1つの表示は、2種の分子が緊縮条件下でお互いハイブリダイズすることである。緊縮条件は、配列依存性であり、そして異なった環境パラメーター下で異なる。一般的に、緊縮条件は、定義されたイオン強度及びpHでの特定の配列のための熱融点(thermal melting point)(Tm )よりも約5℃〜20℃低く選択される。Tm は、完全に適合されたプローブに対して標的配列の50%がハイブリダイズする温度(定義されたイオン強度及びpH下での)である。しかしながら、緊縮条件下でお互いハイブリダイズしない核酸は、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一である場合には、なお実質的に同一である。これは、たとえば、核酸のコピーが遺伝子コードにより許容される最大のコドン縮重を用いて作られる場合に生じる。
【0023】
句“タンパク質に特異的に結合する”又は“特異的にハイブリダイズする”又は“特異的に免疫反応する”とは、抗体に言及する場合、タンパク質及び他の生物学的物質の異種集団の存在下で、タンパク質の存在の決定因子である結合反応を意味する。従って、企画されたイムノアッセイ条件下で、明記された抗体は特定のタンパク質に対して選択的に結合し、そしてサンプルに存在する他のタンパク質に有意な量で結合しない。そのような条件下でのタンパク質に対する特異的結合は、特定のタンパク質に対するその特異性に対して選択される抗体を必要とする。
【0024】
種々のイムノアッセイ型が、特定のタンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択するために使用され得る。たとえば、固相 ELISAイムノアッセイが、タンパク質と特異的に免疫反応するモノクローナル抗体を選択するために通常使用される。イムノアッセイ型の説明、及び特異的免疫反応性を決定するために使用され得る条件については、 Harlow and Lane (1988)Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications, New Yorkを参照のこと。
【0025】
詳細な記載
本発明は、中皮腫、卵巣癌細胞及びいくつかの扁平上皮細胞癌上に見出される、メソセリンとして本明細書において言及される抗原の発見に関する。40KD(キロドルトン)の分子量を有する OVCAR-3細胞(ヒト卵巣腫瘍細胞系からの)上に見出される抗原と反応するモノクローナル抗体K1と称する抗体は、以前に記載されている。たとえば、アメリカ特許第 5,320,956号を参照のこと。本明細書に記載され、そして特許請求されている抗原が、K1抗原をクローン化し、そして配列決定する試みの間、予想外に得られた。その完全な長さの形でのメソセリンは、約69KDの見掛け分子量を有し、そして40KDのK1抗原のための前駆体タンパク質であると思われる。
【0026】
K1抗原自体はクローン化するのは困難であることがわかっており、そして本発明者の最初の試みは、上記のように、2種の異なった細胞内タンパク質のクローニングをもたらした(Chang & Pastan, Int.J.Cancer、前記を参照のこと)。K1抗原の存在は知られているが、そのcDNAはクローン化するためには日常的でなかった。最初に、本発明者は、クローン化するためのその十分な量を得ることはできなかった。本発明で使用される方法はより面倒であったが、しかしK1抗原が、本発明者が存在することを知らなかった大きな分子に由来したことについて未知であるので、好都合であった。十分な長さのメソセリンについての DNA配列及び対応するアミノ酸配列が、それぞれ図1及び配列番号1及び2に示されている。
【0027】
本明細書におけるメソセリンに対する参照は、単離された十分な長さのポリペプチド、及びその十分な長さの配列からの少なくとも10個の隣接するアミノ酸の単離されたポリペプチドフラグメントの両者を意味し、ここで前記フラグメントは、40KDのK1抗原により十分に免疫吸着された、十分の長さのポリペプチドに対して生ぜしめられた抗血清に結合する。
【0028】
メソセリンは、本明細書に記載されるように、中皮、中皮腫、卵巣癌、及びいくつかの扁平上皮細胞癌上に見出される抗原を表わす。本発明者は、中皮細胞上でのその抗原メソセリンを明示した。メソセリルのための十分な長さのcDNAは、2138bpの長さであり、そして1884bpのオープンリーディングフレームを含む。それがコードするタンパク質は、その十分な長さの形で約 69000ドルトンの計算された分子量を有する 628個のアミノ酸を含む。
【0029】
そのタンパク質は、図1に太文字で示される4種の可能性あるN−結合グリコシル化部位N−X−S又はN−X−Tを含む。典型的なシグナル配列は、そのアミノ末端で存在しない。しかしながら、短い疎水性セグメントが、最初のメチオニンから15個のアミノ酸部分に位置する(図1)。この配列は、タンパク質が細胞表面上に見出され、そして細胞フリー翻訳の間、ミクロソーム中に挿入されるので、膜挿入のためのシグナル配列として機能する。また、アミノ酸 293で開始する、推定上のタンパク質分解性プロセッシング部位、すなわちRPRFRRが存在する(図1)。この部位は、フリン、すなわちいくつかの膜タンパク質のプロセッシングにおいて、及びシュードモナス(Pseudomonas) 毒素及びジフテリア毒素の活性化において重要なプロテアーゼにより認識される(Chiron, M.F., など., J.B.C. 269 (27): 18169-18176 (1994)) 。
【0030】
その40KD形(“K1”)は、いくつかのプロセッシング段階により69KDの前駆体から誘導されると思われる。それらは、図2に要約される。最初に、メソセリンが、たぶん除去され、そしてホスファチジルイノシトールにより置換される疎水性末端を有する69KDのポリペプチドとして生産される(Chang, K., など., Cancer Res. 52, 181-186 (1992))。その4個の推定上のN−結合グリコシル化部位の1又は複数の部位でのグリコシル化の後、それはプロテアーゼにより切断され、高分子量形、すなわち OVCAR-3細胞の表面上に見出される40KDフラグメント(又はダブレット)及びより小さな(約31KD)フラグメントが生成される。後者は、培地中に放出され、そして/又はさらに、分解され得る。本発明者は、そのアミノ末端フラグメントが、 OVCAR-3細胞の培地に検出されたことを見出した。
【0031】
メソセリンは、ホスファチジルイノシトールにより細胞表面に結合される多くのタンパク質及び糖タンパク質の1つである。いくつかの機能は、それらの分子にのせいであった。いくつかは細胞シグナルに関与する受容体であり;他は細胞認識及び/又は付着に関与する(Dustin, M.L., など., Nature 329, 846-848 (1987); Stiernberg, J., など., J.Immunol. 38, 3877-3884 (1987)) 。 GPI結合タンパク質はチロシンキナーゼと相互作用することができる(Stefanova, I., など., Science 254, 1016-1019 (1991); Pandey, A., など., Science 268, 567-569 (1995)) 。
【0032】
メソセリンに対する抗体は、たとえば、卵巣癌手術の間、時々生じる腹膜壁中への卵巣癌細胞の広がり又は移植を阻害することに有用である。理論により拘束されるつもりではないが、メソセリンは、腹膜腔じゅうに時おり生じる卵巣癌細胞の付着及び移植、又は胸腔における腫瘍細胞の付着をたぶん担当すると思われる。メソセリントランスフェクタントはトランスフェクトされなかった細胞よりも培養皿からよりゆっくり除かれるので、メソセリンは付着において役割を演じる。メソセリン細胞は極端に平らであり、そして腹膜腔又は胸腔中への及びそれらからの分子及び細胞の移動を調節する。
【0033】
メソセリンは、悪性中皮腫及び卵巣ノウ胞腺癌が由来する正常な中皮細胞において非常に豊富である。それらの2種のタイプの腫瘍は、他の固形腫瘍とそれらとを区別するユニークな生物学的特徴を共有する。初期段階において、両タイプの腫瘍は、腹膜(又は胸)腔全体に攻撃的に広がり、そして局部的に侵入するが、しかしリンパ又は血流を通して直接的に転移しない。実際、多くの患者は、直接的な転移が進行する前、それらの癌に屈服する。
【0034】
メソセリンはたぶん、この工程において役割を有する。なぜならば、細胞過剰発現メソセリンは変更された付着特性を有し、そしてメソセリン発現が不良に分化された卵巣癌において縮少されるからである(Chang, K., など., Int.J.Cancer 51, 548-554 (1992); Chang, K., など., Am.J.Surg.Pathol. 16, 259-268 (1992))。強い付着機構を通しての卵巣癌細胞の移植は、局部的な侵入及び遠位転移に対する最初の段階であり得る。従って、卵巣癌移植の阻止は、癌細胞の侵入及び転移、並びに増殖を妨げ、そして癌細胞をアポプトシス(apoptosis)及び同様のものに導びく。
【0035】
I.メソセリンについての検出
メソセリンの検出は、腫瘍細胞、特に卵巣腫瘍細胞又は中皮腫の存在のインジケーターとして有用である。血清中に見出される場合、それは残留癌細胞の存在を示す因子であり得る。腫瘍細胞は、メソセリンの分解を担当する種々のプロテアーゼを含む。血液又は腹水に存在するメソセリンのN−末端フラグメントの量は、存在する残留腫瘍細胞の数を反映することができる。メソセリンの血清学的検出が、疾病の進行をモニターするための新規インジケーターとして作用することができる。
【0036】
メソセリンタンパク質の検出のための基本原理は、メソセリンに対して結合するが、しかし正常なヒト細胞又はその周囲細胞における他のタンパク質又は核酸に対しては結合しない特異的リガンドを用いてタンパク質を検出することがある。そのリガンドは核酸又は抗体のいづれかであり得る。リガンドは、天然に存在するもの、又は遺伝子的に又は物理的に修飾されたもの、たとえば非天然の誘導体又は抗体誘導体、すなわち FAB、又はキメラ抗体であり得る。
【0037】
A.サンプル収集及び加工
メソセリンは好ましくは、生物学的サンプル、たとえば患者に由来する血清、細胞又は組織サンプルにおいて定量化される。好ましい態様においては、メソセリンは、組換えメソセリンから調製された標準に対して、血清、中皮細胞、頸部組織又は卵巣組織のサンプルにおいて定量化される。
【0038】
サンプルは、必要なら、適切な緩衝溶液による希釈により前処理され、又は所望には、使用されるアッセイに依存して、濃縮され得る。生理学的pHで種々の緩衝液、たとえばリン酸、トリス又は同様のものの1つを用いる多くの標準水性緩衝溶液のいづれかが使用され得る。
【0039】
B.メソセリンペプチドの定量化
メソセリンペプチドは、当業者に良く知られている多くの手段のいづれかにより検出され、そして定量化され得る。それらは、分析生化学方法、たとえば電気泳動、細管電気泳動、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC) 、高拡散クロマトグラフィー、及び同様のもの、及び種々の免疫学的方法、たとえば流体又はゲル沈降反応、免疫拡散(単又は二重)、免疫電気泳動、ラジオイムノアッセイ(RIAs)、酵素結合の免疫吸着アッセイ(ELISAs)、免疫螢光アッセイ、及び同様のものを包含する。
【0040】
C.一般的な技法−核酸検出
検出のためのハイブリダイゼーションアッセイを行なうための許容された手段は知られており、そしてその技法の一般的な概観は次の総説から得られた:Nucleic Acid Hybridization: A Practical Approach, Ed. Hames, B.D. and Higgins, S.J., IRL Press, 1985; Hybridization of Nucleic Acids Immobilized on Solid Supports, Meinkoth, J. and Wahl, G.,; Analytical Biochemistry, Vol.238, 267-284, 1984; 及び Innisなど., PCR Protocols、前記(それらのすべては、引用により本明細書に組込まれる)。
【0041】
PCRが使用される場合、プライマーが、標的化された剤の核酸の特定部分を標的化するよう企画される。好ましくは、プライマーは、約14〜約24個の長さのヌクレオチドである。本明細書に提供される配列情報から、当業者は適切な特異的プライマーを選択すること
ができるであろう。
【0042】
標的物特異的プローブは、メソセリンについての核酸ハイブリダイゼーション診断アッセイにおいて使用され得る。そのプローブは、注目の標的物に対して特異的であり、又は相補的である。たとえば、メソセリンのためのオープンリーディングフレームにおける核酸配列の1つに対するプローブが効果的である。正確な対立遺伝子分化のためには、プローブは、約14個の長さのヌクレオチド、及び好ましくは、約20〜30個の長さのヌクレオチドであるべきである。より一般的な検出のためには、核酸プローブは、約50〜約1000個のヌクレオチド、最とも好ましくは約 200〜約 400個のヌクレオチドである。
【0043】
メソセリンポリペプチドの検出、及び本発明の他の観点は、検出のための、又は特に、検出のためのプローブ及びプライマー手段の生成のための、メソセリンポリペプチドをコードする生物学的サンプル中の核酸を増幅するために、 PCR増幅, TAS増幅, 3SR増幅,QB増幅及びグローニングのような技法を使用することができる。
生物学的サンプル、たとえば腫瘍細胞を含むと思われる血清又は組織におけるメソセリン核酸の存在は、たとえばメソセリンの存在を評価し、そして続いて、腫瘍細胞の徴候である現象を提供するためのプローブとして有用である。
【0044】
本発明の核酸は、クローン化され、又はインビトロ方法、たとえばポリメラーゼ鎖反応(PCR) 、リガーゼ鎖反応(LCR) 、転写に基づく増幅システム(TAS) 、自己維持された配列複製システム(3SR) 、及びQβレプリカーゼ増幅システム(QB)により増幅される。広範囲の種類のクローニング及びインビトロ増幅方法が、当業者に良く知られている。多くのクローニング練習を通して当業者を方向づけるのに十分なそれらの技法及び説明書の例は次の文献に見出される:Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology 152 Academic Press, Inc., San Diego, CA (Berger); Sambrookなど. (1989) Molecular Cloning - A Laboratory Manual (2nd ed.) Vol.1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Press, NY, (Sambrookなど.); Current Protocols in Molecular Biology, F.M.Ausubel など., eds., Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., (1994 Supplement)(Ausubel); Cashion など., アメリカ特許第 5,017,478号;及びCarr、ヨーロッパ特許第 0,246,864号。
【0045】
インビトロ増幅法を通して当業者を方向づけるのに十分な技法の例は、次の文献に見出される: Berger, Sambrook, and Ausubel, as well as Mullis など., (1987) アメリカ特許第 4,683,202号;PCR Protocols A Guide to Methods and Applications (Innisなど. eds) Academic Press Inc. San Diego, CA (1990)(Innis); Arnheim & Levinson (October 1, 1990) C & EN 36-47; The Journal Of NIH Research (1991) 3, 81-94; (Kwoh など.(1989) Proc.Natl.Acad.Sci. USA 86, 1173; Guatelliなど.(1990) Proc.Natl.Acad.Sci. USA 87, 1874; Lomellなど. (1989) J.Clin.Chem 35, 1826; Landegrenなど., (1988) Science 241, 1077-1080; Van Brunt (1990) Biotachnology 8, 291-294; Wu and Wallace, (1989) Gene 4, 560; 及び Barringerなど. (1990) Gene 89, 117 。
【0046】
特定の配列の記載、たとえば、配列番号1及び2に言及する場合、そのような言及は、その相補的配列に実質的に対応する配列、及びいづれかの配列の変動が、相当する配列表が関与する核酸配列に対応するよう、マイナーな配列誤差、単一の塩基の変更、欠失、置換及び同様のことについての許容性を包含する、記載される配列を包含することは、当業者により容易に理解され、そしてそれが本明細書において、意図される。
【0047】
D.メソセリンに対する抗体及び抗体−リガンド結合アッセイ
抗体(又は抗血清)は、それらの天然に存在する(十分な長さ)形及び組換え形で、本発明のポリペプチド(その個々のフラグメントを包含する)に対して生ぜしめられる。さらに、抗体は、それらの生来の形状又は非生来の形状のいづれかで、それらのポリペプチドに対して生ぜしめられる。抗イディオタイプ抗体もまた、生ぜしめられ得る。抗体を生成するための多くの方法は、当業者に知られている。次の議論は、利用できる技法の一般的な概観として提供されるが、しかしながら当業者は、次の方法に対する多くの変動が知られていることを認識するであろう。
【0048】
1.抗体生成
多くの免疫原が、メソセリンポリペプチドと特異的に反応する抗体を生成するために使用される。配列番号1の副配列から選択された、長さ10個、又はそれよりも長いアミノ酸の組換え又は合成ポリペプチドが、モノクローナル又はポリクローナル抗体の生成のための好ましいポリペプチド免疫原である。1つの種類の好ましい態様においては、免疫原性ペプチド接合体がまた、免疫原として包含される。天然に存在するポリペプチドもまた、純粋な形で又は不純な形で使用される。組換えメソセリンを過剰発現するトランスフェクトされた哺乳類細胞もまた、完全な損なわれていない細胞又は膜調製物のいづれかにおいて、免疫原として使用され得る。それらの免疫原は、ポリクローナル又はモノクローナル抗体生成のために有用である。
【0049】
組換えポリペプチドは、真核又は原核細胞において発現され、そして標準の技法を用いて精製される。次に、前記ポリペプチド、又はその合成部分が、抗体を生成することができる動物中に注入される。モノクローナル又はポリクローナル抗体のいづれかが、ポリペプチドの存在及び量を測定するためのイムノアッセイへの続く使用のために生成され得る。
【0050】
ポリクローナル抗体を生成するための方法は、当業者に知られている。手短に言及すれば、免疫原、好ましくは精製されたポリペプチド、適切なキャリヤー(たとえば GST、キーホールリンペット(カサガイ)のヘマノシアニン、等)に結合されたポリペプチド、又は免疫化ベクター、たとえば組換えワクシニアウィルス中に組込まれたポリペプチド(アメリカ特許第 4,722,848号を参照のこと)が、アジュバントと共に混合され、そして動物がその混合物により免疫化される。
【0051】
免疫原調製物に対する動物の免疫応答は、試験用採血を取り、そして興味あるポリペプチドに対する反応性の力価を決定することによってモニターされる。免疫原に対する抗体の適切に高い力価が得られる場合、血液が動物から採血され、そして抗血清が調製される。さらに、ポリペプチドに対して反応性の抗体を富化するために抗血清の分別が、所望により実施される。たとえば、Coligan (1991) Current Protocols in Immunology Wiley/Greene, NY;及びHarlow and Lane (1989) Antobodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Press, NY(それらは、引用により本明細書に組込まれる)、及び下記例を参照のこと。
【0052】
メソセリンポリペプチドの予定されたフラグメントに対する抗体(その結合フラグメント及び一本鎖組換え部分を包含する)が、たとえば、上記のように、キャリヤータンパク質と前記フラグメントとの接合体により動物を免疫化することによって生ぜしめられる。典型的には、注目の免疫原は、少なくとも約3個のアミノ酸のペプチドであり、より典型的には、そのペプチドは5個の長さのアミノ酸であり、好ましくはそのフラグメントは10個の長さのアミノ酸であり、そしてより好ましくは、そのフラグメントは15個の長さのアミノ酸又はそれよりも長いアミノ酸である。ペプチドは、典型的には、キャリヤータンパク質に結合され(たとえば、融合タンパク質として)、又は免疫化又は発現ベクターにおいて、組換え的に発現される。抗体が結合するペプチド上の抗原決定基は典型的には、3〜10個の長さのアミノ酸である。
【0053】
モノクローナル抗体は、所望の抗体を分泌する細胞から調製される。それらの抗体は、正常な又は変性されたポリペプチドに対する結合についてスクリーンされる。特異的モノクローナル及びポリクローナル抗体は通常、少なくとも 0.1mM、より通常には少なくとも約50μM、及び最とも好ましくは少なくとも約1μM又はそれ以上のKD を伴って結合するであろう。
【0054】
多くの場合、種々の哺乳類宿主、たとえばマウス、ゲッ歯動物、霊長類、ヒト、等からモノクローナル抗体を調製することが所望される。そのようなモノクローナル抗体を調製するための技法の説明は、良く知られおり、そしてたとえば、 Asai, ed. Antibodies in Cell Biology, Academic Press, Inc., San Diego, CA; Stitesなど. (eds.) Basic and Clinical Immunology (4th ed.) Lange Medical Publications, Los Altos, CA、及びその中に引用される引例;Harlow and Lane, Supra; Goding (1986) Monoclonal Antibodies: Principles and Practice (2d ed.) Academic Press, New York, NY; 及びKohler and Milstein (1975) Nature 256: 495-497に見出される。本発明のポリペプチド及び抗体は、修飾を伴って又はそれを伴わないで使用され、そしてキメラ抗体、たとえばヒト適合されたネズミ抗体を包含する。
【0055】
他の適切な技法は、ファージ又は類似するベクターにおける組換え抗体のライブラリーの選択を包含する。Huse, など.(1989) Science 246: 1275-1281; 及びWard, など. (1989) Nature 341: 544-546を参照のこと。
【0056】
しばしば、ポリペプチド及び抗体は、検出できるシグナルを提供する物質を共有又は非共有結合することによってラベルされるであろう。広範囲の種類のラベル及び接合技法が知られており、そして科学文献及び特許文献の両者に広範に報告されている。適切なラベルは、放射性ヌクレオチド、酵素、基質、補因子、インヒビター、螢光成分、化学ルミネセント成分、磁気粒子及び同様のものを包含する。そのようなラベルの使用を教授する特許は、アメリカ特許第 3,817,837号;第 3,850,752号;第 3,939,350号;第 3,996,345号;第 4,277,437号;第 4,275,149号;及び第 4,366,241号を包含する。また、組換え免疫グロブリンもまた生成され得る。たとえば、 Cabilly、アメリカ特許第 4,816,567号;及び Queenなど. (1989) Proc.Nat'l Acad.Sci. USA 86: 10029-10033 を参照のこと。
【0057】
本発明の抗体はまた、メソセリンポリペプチドを単離する際、親和性クロマトグラフィーのためにも使用される。カラムが、たとえば、固体支持体、たとえば粒子、たとえばアガロース、Sephadex又は同様のものに結合された抗体により調製され、ここで細胞溶解物がそのカラムに通され、洗浄され、そして高まる濃度の適度な変性剤により処理され、それにより、精製されたメソセリンポリペプチドが放される。
【0058】
抗体は、特定の発現生成物、たとえば哺乳類メソセリンのための発現ライブラリーをスクリーンするために使用され得る。通常、そのような方法における抗体は、抗体結合により抗原の存在の容易な検出を可能にする成分によりラベルされる。
メソセリンポリペプチドに対して生ぜしめられた抗体がまた、抗イディオタイプ抗体を生ぜしめるためにも使用され得る。それらは、それぞれの抗原の存在に関係する種々の病理学的状態を検出し、又は診断するために有用である。
【0059】
2.イムノアッセイ
特定のタンパク質が、種々のイムノアッセイ法により定量化され得る。一般的に、免疫学的方法及びイムノアッセイ方法のレビューのためには、Stites and Terr (eds.) 1991 Basic and Clinical Immunology (7th ed.) を参照のこと。さらに、本発明のイムノアッセイは、いくつかの構成、たとえば次の文献にレビューされる構成のいづれかにより実施され得る:Maggio (ed.)(1980) Enzyme Immunoassay CRC Press, Boca Raton, Florida; Tijan (1985) "Practice and Theory of Enzyme Immunoassays," Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Elsevier Science Publishers B.V., Amsterdam; Harlow and Lane, supra; Chan (ed.)(1987) Immunoassay: A Practical Guide Academic Press, Orlando, FL; Price and Newman (eds.)(1991) Principles and Practice of Immunoassays Stockton Press, NY; 及びNgo (ed.)(1988) Non-isotopic Immunoassays Plenum Press, NY。
【0060】
イムノアッセイはまた、しばしば、捕獲剤及び分析物により形成される結合複合体を特異的に結合し、そしてラベルするためにラベリング剤を利用する。ラベリング剤は、それ自体、抗体/分析物複合体を含んで成る成分の1つであり得る。従って、ラベリング剤は、ラベルされたメソセリンペプチド又はラベルされた抗−メソセリン抗体であり得る。他方では、ラベリング剤は、第3成分、たとえば抗体/メソセリン複合体に、又はメソセリンペプチド対抗−メソセリン抗体に共有結合される変性された捕獲基(たとえばビオチン)に特異的に結合するもう1つの抗体であり得る。
【0061】
好ましい態様においては、ラベリング剤は、捕獲剤(抗−メソセリン)に特異的に結合する抗体である。そのような剤は、当業者に良く知られており、そして最とも典型的には、捕獲剤が由来する特定動物種の抗体(たとえば抗−イディオタイプ抗体)を特異的に結合するラベルされた抗体を含んで成る。従って、たとえば、捕獲剤がマウス由来の抗−ヒトメソセリン抗体である場合、ラベル剤はヤギ抗−マウス IgG、すなわちマウス抗体の不変領域に対して特異的な抗体であり得る。
【0062】
免疫グロブリン不変領域を特異的に結合することができる他のタンパク質、たとえばストレプトコーカルのプロテインA又はプロテインGがまた、ラベリング剤として使用される。それらのタンパク質は、ストレプトコーカル細菌の細胞壁の通常の構成成分である。それらは、種々の種からの免疫グロブリン不変領域との強い非−免疫原性反応性を示す。一般的には、 Kronval, など., (1973) J.Immunol., 111: 1401-1406、及び Akerstrom, など., (1985) J.Immunol., 135: 2589-2542を参照のこと。
【0063】
アッセイを通して、インキュベーション及び/又は洗浄段階は、試薬の個々の組合せの後に必要とされる。インキュベーション段階は、約5秒〜数時間、好ましくは約5分〜約24時間であり得る。しかしながら、インキュベーション時間は、アッセイ型、分析物、溶液の体積、濃度及び同様のものに依存するであろう。通常、アッセイは周囲温度で実施されるが、但しそれは広範囲の温度にわたって、たとえば5℃〜45℃で行なわれ得る。
【0064】
(a)非−競争アッセイ形式
メソセリンを検出するためのイムノアッセイは、競争又は非競争性のいづれかであり得る。非競争イムノアッセイは、捕獲された分析物(この場合、メソセリン)の量が直接的に測定されるアッセイである。1つの好ましい“サンドイッチ”アッセイにおいては、たとえば捕獲剤(たとえば抗−メソセリン抗体)が、それらが固定される固体支持体に直接的に結合される。次に、それらの固定された抗体が、試験サンプルに存在するメソセリンを捕獲する。次に、このように固定されたメソセリンが、ラベリング剤、たとえばラベルを担持する第2のヒトメソセリン抗体により結合される。他方では、第2メソセリン抗体はラベルを欠くことができるが、しかし、それは、第2抗体が由来する種の抗体に対して特異的なラベルされた第3抗体により結合され得る。
【0065】
メソセリンについてのサンドイッチアッセイが構成され得る。上記のように、固定された抗−メソセリンが、サンプルに存在するメソセリンに特異的に結合する。次に、ラベルされた抗−メソセリンが、すでに結合されているメソセリンに結合する。遊離した、ラベルされた抗−メソセリンが洗浄され、そして残存する結合された、ラベルされた抗−メソセリンが検出される(たとえば、ラベルが放射性であるγ検出器を用いて)。
【0066】
(b)競争アッセイ形式
競争アッセイにおいては、サンプルに存在する分析物により、捕捉剤(たとえば抗−メソセリン抗体)から排除される(又は競争的に除去される)添加された(外因性)分析物の量を測定することによって、サンプルに存在する分析物(たとえばメソセリン)の量が間接的に測定される。1つの競争アッセイにおいては、既知量の分析物がサンプルに添加され、そしてサンプルが捕捉剤、この場合、分析物を特異的に結合する抗体と接触せしめられる。抗体に結合される分析物の量は、サンプルに存在する分析物の濃度に反比例する。
【0067】
特に好ましい態様においては、捕捉剤は固体支持体上に固定される。捕捉剤に結合されるメソセリンの量は、メソセリン/抗体複合体に存在するメソセリンの量を測定することによって、又は他方では、残留する複合体化されなかったメソセリンの量を測定することによって決定される。メソセリンの量は、ラベルされたメソセリンを供給することによって検出され得る。
【0068】
ハプテン阻害アッセイは、もう1つの好ましい競争アッセイである。このアッセイにおいては、既知の分析物(この場合、メソセリン)が固体支持体上に固定される。既知量の抗−メソセリン抗体がサンプルに添加され、そして次に、サンプルが前記固定されたメソセリンと接触せしめられる。この場合、固定されたメソセリンに結合される抗−メソセリン抗体の量は、サンプルに存在するメソセリンの量に比例する。再び、固定された抗体の量が抗体の固定された画分、又は溶液に残存する抗体の画分のいづれかを検出することによって検出される。検出は、抗体がラベルされる場合、直接的であり、又は上記のように、抗体に特異的に結合するラベルされた成分の続く添加により間接的であり得る。
【0069】
(c)イムノアッセイへの使用のためのプールされた抗血清の生成
定義された免疫原、たとえば配列番号2のアミノ酸配列から成る免疫原に対して生成された抗体に特異的に結合するか、又はその抗体と特異的に免疫反応するメソセリンタンパク質が、イムノアッセイにおいて決定される。そのイムノアッセイは、配列番号2のタンパク質(免疫原性ポリペプチド)に対して生ぜしめられたポリクローナル抗血清を用いる。
【0070】
イムノアッセイへの使用のための抗血清を生成するために、配列番号2のポリペプチドが、本明細書に記載されるようにして単離される。たとえば、組換えタンパク質が哺乳類又は他の真核細胞系において生成され得る。マウスの近交系(inbred)株が、標準のアジュバント、たとえばフロイントアジュバント、及び標準のマウス免疫化プロトコールを用いて、配列番号2のタンパク質により免疫化される(Harlow and Lane、前記を参照のこと)。
【0071】
他方では、本明細書に開示され配列に由来し、そしてキャリヤータンパク質に接合される合成ポリペプチドが免疫原として使用される。ポリクローナル血清が収集され、そしてイムノアッセイ、たとえば固体支持体上に固定された免疫原を用いる固相イムノアッセイにおいて、免疫原性ポリペプチドに対して力価される。 104又はそれよりも高い力価を有するポリクローナル抗血清が選択され、そして競争結合イムノアッセイ、たとえば Harlow and Lane、前記、570-573pに記載されるイムノアッセイを用いて、興味あるタンパク質に対するそれらの交差反応性について試験される。
【0072】
競争結合形式でのイムノアッセイが、交差反応性の決定のために使用される。たとえば、免疫原性ポリペプチドが固体支持体に固定される。アッセイに添加されるタンパク質が、固定された抗原に対する抗血清の結合と競争する。固定されたタンパク質に対する抗血清の結合と競争する上記タンパク質の能力が、免疫原性ポリペプチドに比較される。上記タンパク質についての%交差反応性が、標準の計算法を用いて計算される。興味あるタンパク質との10%以下の交差反応性を有するそれらの抗血清が組合され、そしてプールされる。次に、交差反応する抗体が、プールされた抗血清から免疫吸着により除去される。
【0073】
免疫吸着され、そしてプールされた抗血清が、免疫原性ポリペプチドと第2の“標的物”ポリペプチドとを比較するために、本明細書に記載されるような競争結合イムノアッセイに使用される。この比較を行なうために、2種のポリペプチドが、広範囲の濃度でそれぞれアッセイされ、そして固定されたタンパク質に対する抗血清の結合の50%を阻害するために必要とされる個々のポリペプチドの量が、標準の技法を用いて決定される。
【0074】
必要とされる標的ポリペプチドの量が必要とされる免疫原性ポリペプチドの量の2倍以下である場合、標的ポリペプチドは、免疫原性タンパク質に対して生成された抗体に対して特異的に結合すると言われる。特異性の最終決定として、プールされた抗血清が、免疫吸着に使用されるポリペプチドに対する結合が検出できなくなるまで、免疫原性ポリペプチドにより十分に免疫吸着される。次に、十分に免疫吸着された抗血清が、試験ポリペプチドとの反応性について試験される。反応性が観察されない場合、試験ポリペプチドは、免疫原性タンパク質により誘発された抗血清により特異的に結合される。
【0075】
D.他のアッセイ形式
ウェスターンブロット分析もまた、サンプル中のメソセリンの存在を検出し、そして定量化するために使用される。その技法は一般的に、分子量に基づいて、ゲル電気泳動によりサンプルタンパク質を分離し、その分離されたタンパク質を、適切な固体支持体(たとえばニトロセルロースフィルター、ナイロンフィルター、又は誘導体化されたナイロンフィルター)に移し、そしてサンプルを、メソセリンを特異的に結合する抗体と共にインキュベートすることを含んで成る。抗−メソセリン抗体は、固体支持体上のメソセリンに特異的に結合する。それらの抗体は、直接的にラベルされ得、又は他方では、抗−メソセリンに特異的に結合する、ラベルされた抗体(たとえば、メソセリンに対する抗体がネズミ抗体である、ラベルされた羊抗−マウス抗体)を用いて連続的に検出され得る。
【0076】
他のアッセイ形式は、特異的分子(たとえば抗体)を結合し、そして封入された試薬又はマーカーを放すよう企画されたリポソームを用いる、リポソームイムノアッセイ(LIAs)を包含する。次に、放された化学物質が、標準の技法に従って検出される(Monroeなど., (1986) Amer.Clin.Prod.Rev. 5: 34-41を参照のこと;これは引用により本明細書に組込まれる)。
【0077】
E.ラベル
本明細書に記載される用途のためのラベリング剤はたとえば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、メソセリン結合タンパク質又は複合体、たとえば本明細書に記載されるもの、又はポリマー、たとえば親和性マトリックス、炭水化物又は脂質であり得る。検出は、次のいづれかの既知方法により進行することができる:イムノブロット、ウェスターン分析、ゲル移動度シフトアッセイ、螢光現場ハイブリダイゼーション分析(FISH)、放射性又は生物発光マーカーの追跡、核磁気共鳴、電子常磁性共鳴、停止された−流水分光分析法、カラムクロマトグラフィー、細管電気泳動、又は大きさ及び/又は電荷の変更に基づいて分子を追跡する他の方法。
【0078】
アッセイに使用される特定のラベル又は検出可能グループは、本発明の決定的な観点ではない。前記検出可能グループは、検出できる物理的又は化学的性質を有するいづれかの物質であり得る。そのような検出できるラベルは、イムノアッセイの分野においては十分に開発されて来ており、そして一般的には、そのような方法に有用ないづれかのラベルが本発明に適用され得る。従って、ラベルは、分光分析、光化学、生化学、免疫化学、電気的、光又は化学的手段により検出できるいづれかの組成物である。
【0079】
本発明における有用なラベルは次のものを包含する:磁気ビーズ(たとえば DynabeadsTM)、螢光染料(たとえば、フルオロセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミン及び同様のもの)、放射性ラベル(たとえば、 3H, 125I,35S,14C又は32P)、酵素(たとえば、ホースラディシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、 ELISAに通常、使用される他の酵素)、及び比色ラベル、たとえばコロイド状金、又は着色されたガラス又はプラスチック(たとえば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス、等)ビーズ。
【0080】
ラベルは、当業界において良く知られている方法に従って、アッセイの所望する成分に、直接的に又は間接的に結合され得る。上記で示されたように、広範囲の種類のラベルが使用され得、そしてラベルの選択は必要とされる感度、化合物の接合の容易さ、安定性の必要性、利用できる計測器、及び処理設備に依存する。
【0081】
非放射性ラベルがしばしば、直接的な手段により結合される。一般的に、リガンド分子(たとえば、ビオチン)が、分子に共有結合される。次に、リガンドが、本質的に検出できるか、又はシグナルシステム、たとえば検出可能酵素、螢光化合物、又は化学ルミネセンス化合物に共有結合されるかいづれかである抗−リガンド(たとえば、ストレプタビジン)分子に結合する。多くのリガンド及び抗−リガンドが使用され得る。リガンドが天然の抗−リガンド、たとえばビオチン、チロキシン及びコルチゾールを有する場合、それはラベルされた、天然に存在する抗−リガンドと組合わせて使用され得る。他方、いづれかのハプテン又は抗原化合物が、抗体と組合して使用され得る。
【0082】
前記分子はまた、たとえば酵素又は発光団との接合により、シグナル発生化合物に直接的に接合され得る。ラベルとしての興味ある酵素は、主に、ヒドロラーゼ、特にホスファターゼ、エステラーゼ及びグリコシダーゼ、又はオキシドレダクターゼ、特にペルオキシダーゼであろう。螢光化合物は、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロンを包含する。化学ルミネセント化合物は、ルシフェリン、及び2,3−ジヒドロフタルアジンジオン、たとえばルミノールを包含する。使用され得る種々のラベリング又はシグナル生成システムのレビューのためには、アメリカ特許第 4,391,904号(これは引用により本明細書に組込まれる)。
【0083】
ラベルを検出する手段は、当業者に良く知られている。従って、たとえば、ラベルが放射性ラベルである場合、検出のための手段は、シンチレーションカウンター、又はオートラジオグラフィーにおけるような写真フィルムを包含する。ラベルが螢光ラベルである場合、それは、光の適切な波長により螢光色素を励起し、そして得られる螢光を、たとえば顕微鏡、肉眼での観察により、写真フィルムを通して、電子検出器、たとえば電荷連結の装置(CCDs)又は光電子増倍管及び同様の手段の使用により検することによって、検出される得る。同様に、酵素ラベルは、酵素のための適切な基質を供給し、そして得られる反応生成物を検出することによって、検出され得る。最終的に、単純な比色ラベルは、ラベルに関連する色彩を観察することによって単純に検出され得る。従って、種々のディプスティクアッセイにおいては、接合された金がしばしば、ピンク色に見え、同時に種々の接合されたビーズがそのビーズの色に見えてくる。
【0084】
いくつかのアッセイ形式は、ラベルされた成分の使用を必要としない。たとえば、凝集アッセイが、標的抗体の存在を検出するために使用され得る。この場合、抗原をコートした粒子が標的抗体を含有するサンプルにより凝集される。この形式においては、どの成分もラベルされる必要はなく、そして標的抗体の存在は、単純な肉眼での観察により検出される。
【0085】
F.基 質
上記で言及されたように、アッセイに依存して、種々の成分、たとえば抗原、標的抗体、又は抗−ヒト抗体が、固体表面に結合され得る。種々の固体表面に生物分子を固定するための多くの方法は、当業界において知られている。たとえば、固体表面は、膜(たとえば、ニトロセルロース)、マイクロタイター皿(たとえば、 PVC、ポリプロピレン又はポリスチレン)、試験管(ガラス又はプラスチック)、ディプスティク(たとえば、ガラス、 PVC、ポリプロピレン、ポリスチレン、ラテックス、及び同様のもの)、微小遠心分離管、又はガラス、シリカ、プラスチック、金属又はポリマービーズであり得る。所望する成分は、非特異的結合を通して、共有結合、又は非共有結合され得る。
【0086】
広範囲の種類の有機及び無機ポリマー(天然又は合成)が、固体表面のための材料として使用され得る。例示的なポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルブテン)、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリ(エチレンテレフタレート)、レーヨン、ナイロン、ポリ(ビニルブチレート)、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、シリコーン、ポリホルムアルデヒド、セルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース及び同様のものを包含する。
【0087】
使用され得る他の材料は、紙、ガラス、セラミックス、金属、メタロイド、半導体材料、セメント又は同様のものを包含する。さらに、ゲルを形成する物質、たとえばタンパク質(たとえばゼラチン)、リポ多糖、シリケート、アガロース及びポリアクリルアミドが使用され得る。いくつかの水性相を形成するポリマー、たとえばデキストラン、ポリアルキレングリコール又は界面活性剤、たとえばリン脂質、長鎖(12〜24個の炭素原子)のアルキルアンモニウム塩及び同様のものがまた、適切である。固体表面が多孔性である場合、種々の孔サイズが、システムの性質に依存して使用され得る。
【0088】
前記表面を調製する場合、多くの異なった材料、たとえばラミネートが、種々の性質を得るために使用され得る。たとえば、タンパク質コーチング、たとえばゼラチンが、非特異的結合を回避し、共有結合を単純化し、シグナル検出を増強し、又は同様のことを実施するために使用され得る。
【0089】
化合物と表面との間の共有結合が所望される場合、その表面は通常、多価であり、又は多価にされ得るであろう。表面上に存在することができ、そして結合のために使用され得る官能基は、カルボン酸、アルデヒド、アミノ基、シアノ基、エチレン基、ヒドロキシル基、メルカプト基、及び同様のものを包含することができる。種々の表面に広範囲の種類の化合物を連結する態様は、良く知られており、そして文献に詳細に例示されている。たとえば、Immobilized Enzymes, Ichiro Chibata, Halsted Press, New York, 1978、及びCuatrecasas, J.Biol.Chem. 245, 3059(1970)(それらは引用により本明細書に組込まれる)を参照のこと。
【0090】
共有結合の他に、アッセイ化合物を非共有結合させるための種々の方法が使用され得る。非共有結合は、典型的には表面への化合物の非特異的吸収である。典型的には、その表面は、ラベルされたアッセイ化合物の非特異的結合を妨げるために第2化合物によりブロックされる。他方では、表面は、それが1つの成分を非特異的に結合するが、しかし他を有意に結合しないように企画される。たとえば、レクチン、たとえばコンカナバリンAを担持する表面は、炭水化物含有化合物を結合するが、しかしグリコシル化を欠いているラベルされたタンパク質を結合しないであろう。アッセイ化合物の非共有結合への使用のための種々の固体表面は、アメリカ特許第 4,447,576号及び第 4,254,082号(これらは引用により本明細書に組込まれる)に概説されている。
【0091】
II.メソセリンへのエフェクター分子の標的化
本発明はまた、メソセリンを担持する腫瘍細胞の存在又は不在を検出するための組成物及び方法を提供する。それらの方法は、メソセリンを特異的に結合する標的化分子に結合される検出ラベルである、エフェクター分子を含んで成るキメラ分子を供給することを包含する。メソセリン標的化成分は、検出できるラベルとの腫瘍細胞の結合により区別される腫瘍細胞にキメラ分子を特異的に結合する。細胞−結合されたラベルの続く検出が、腫瘍細胞の存在を示す。
【0092】
さらにもう1つの態様においては、エフェクター分子は、もう1つの特異的結合成分、たとえば抗体、成長因子、又はリガンドであり得る。次に、キメラ分子は、高い特異性の二官能価リンカーとして作用するであろう。このリンカーは、融合タンパク質が結合する細胞又は細胞成分を結合し、そしてそれらの間の相互作用を増強するよう作用することができる。従って、たとえば、キメラ分子の“標的化”成分がメソセリンに特異的に結合するポリペプチドを含んで成り、そして“エフェクター”成分が抗体又は抗体フラグメント(たとえば、抗体のFvフラグメント)である場合、その標的化成分は癌細胞を特異的に結合し、同時にエフェクター成分は細胞増殖を阻害し、又は標的癌細胞に対する免疫応答を増強し、そして方向づけるよう作用することができる。
【0093】
さらに他の態様においては、エフェクター分子は薬学的剤(例えば薬物)又は薬学的剤を含有するビヒクルである。すなわち、メソセリンに特異的に結合する成分は薬物、例えばビンブラスチン、ドキシルビシン、ゲニスタイン(チロシンキナーゼ阻害物)、アンチセリン分子、及び当業者において知られている他の薬学的剤に接合させ、これにより該薬学的剤を腫瘍細胞に特異的に標的化することができる。
【0094】
あるいは、標的化分子は、治療組成物を含むビークルに結合され得る。そのようなビークルは、リポソーム、ミセル、種々の合成ビーズ及び同様のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0095】
本発明のキメラ分子が、単一のエフェクターに結合される多数標的化成分、又は逆に言えば、単一の標的化成分に結合される多数エフェクター分子を含むことができることを当業者は理解するであろう。さらに他の態様においては、キメラ分子は、多数標的化成分及び多数エフェクター分子の両者を含むことができる。従って、たとえば、本発明は、“二重標的化された”細胞毒性キメラ分子を供給し、ここでメソセリンに特異的に結合する標的化分子が細胞毒性分子に結合され、そしてもう1つの分子(たとえば、抗体、又は他のリガンド)が毒素の他の末端を結合される。そのような二重−標的化された細胞毒素は、アミノ酸 604と 609との間のドメインIII に挿入されるPE及び抗−TAC(Fv) のアミノ末端で、ドメインIaを置換する成長因子を含むことができる。
【0096】
A.標的化分子
好ましい態様においては、標的化分子は、メソセリンに特異的に結合する分子である。種々のイムノアッセイ形式が、適切な抗体を選択するために使用され得、そして上記に論ぜられる。
【0097】
B.エフェクター分子
上記のように、本発明のキメラ分子のエフェクター分子成分は、その活性を、メソセリンを発現する細胞に供給することが所望されるいづれかの分子であり得る。特に好ましいエフェクター分子は、細胞毒素、たとえばPE又はDT、放射性核種、リガンド、たとえば成長因子、抗体、検出可能ラベル、たとえば螢光又は放射性ラベル、及び治療組成物、たとえばリポソーム及び種々の薬物を包含する。
【0098】
1.細胞毒素
特に好ましい細胞毒素は、プソイドモナス(Pseudomonas) 外毒素、ジフテリア(Diphtheria)毒素、リシン及びアブリンを包含する。プソイドモナス外毒素及びジフテリア毒素が最とも好ましい。
【0099】
(a)プソイドモナス外毒素(PE)
プソイドモナス外毒素A(PE)は、プソイドモナス アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)により分泌されるひじょうに活性的なモノマータンパク質(分子量66KD)であり、これはその ADP−リボシル化を触媒する(EF-2上への酸化された NADの ADPリボシル成分の移行を触媒する)ことによっての延長因子2(EF-2)の不活性化を通して真核細胞におけるタンパク質合成を阻害する。
【0100】
毒素は、細胞毒性を引き起こすために協力して作用する3種の構造ドメインを含む。ドメインIa(アミノ酸1−252)は細胞結合を媒介する。ドメインII(アミノ酸 253−364)は、シトソール(cytosol)へのトランスロケーションを担当し、そしてドメインIII (アミノ酸 400−613)は、タンパク質を不活性化しそして細胞の死を引き起こす、延長因子2の ADPリボシル化を仲介する。ドメインIb(アミノ酸 365−399)の機能は、不確定のままであるが、しかしその大きな部分、すなわちアミノ酸 365−380 は、細胞毒性の損失なしに欠失され得る。 Siegallなど., J.Biol.Chem. 264: 14256-14261 (1989)(引用により本明細書に組込まれる)を参照のこと。
【0101】
標的化分子がPEに融合される場合、好ましいPE分子は、ドメインIa(アミノ酸1〜252)が欠失され、そしてアミノ酸 365〜380 がドメインIbから欠失されている分子である。しかしながら、ドメインIbのすべて及びドメインIIの一部(アミノ酸 350〜394)は、特に欠失される配列が結合ペプチド、たとえばGGGGS(配列番号3)により置換される場合、欠失され得る。
【0102】
さらに、PE分子は、特定部位の突然変異誘発又は当業界において知られている他の技法を用いてさらに修飾され得、特定の所望する用途のために分子を変更することができる。本明細書に記載されるPE分子により供給される機能的利点に実質的に影響を与えない態様でPE分子を変更するための手段がまた使用され得、そしてそのような得られた分子は本明細書において保護される予定である。
【0103】
好ましいPE分子の最大の細胞毒性性質のためには、分子に対するいくつかの修飾が推薦される。組換え分子に対する適切なカルボキシル末端配列は、標的細胞のシトソール中に分子をトランスローケートするために好まれる。効果的であることが見出されているアミノ酸配列は、REDLK(配列番号4)(生来のPEにおけるような)、REDL(配列番号5)、RDEL(配列番号6)、又はKDEL(配列番号7)、それらの反復体、又は“小胞体保持配列”として本明細書において言及される、小胞体中にタンパク質を維持し、又は再循環するよう機能する他の配列を包含する。たとえば、 Chaudharyなど., Proc.Nalt.Acad.Sci. USA 87: 308-312及び Seetharamなど., J.Biol.Chem. 266: 17376-17381 (1991) 並びに1990年1月2日に出願された USSN 07/459,635(それらは引用により本明細書に組込まれる)を参照のこと。
【0104】
ドメインIbのアミノ酸 365−380 の欠失は、活性の損失を伴わないで行なわれ得る。さらに、アミノ酸1−279 は欠失され得、その結果、毒素はメチオニンにより開始し、続いて位置 280でのグリシンを伴う。セリンは、不適切なジスルフィド結合の形成を妨げるために位置 289で置換され得、これは有益である。標的化分子は、ドメインIaに代わって挿入され得る。
【0105】
PEの好ましい形は、アミノ酸 253−364 及び 381−608 を含み、そして生来の配列REDLK(配列番号4)、又は変異配列KDEL(配列番号7)又はRDEL(配列番号6)が続く。位置 590及び 606でのリシンは、グルタミンに突然変異誘発されても又はされなくても良い。
【0106】
標的化分子はまた、PE分子のドメインIII 内の位置で挿入され得る。最とも好ましくは、標的化分子は、PE分子のアミノ酸位置 607と 609間に融合される。これは、標的化分子が、分子のアミノ酸 607の後に挿入され、そしてPEの適切なカルボキシル末端が、標的化分子の後のPEのアミノ酸 604−613 を置換することによって再創造されることを意味する。従って、標的化分子は、およそアミノ酸 607の後の組換えPE分子内に挿入され、そしてドメインIII のアミノ酸 604−613 がそれに続く。標的化分子はまた、毒性のために必要ではない配列を置換するためにドメインIb中にも挿入され得る。Debinski, など., Mol.Cell.Biol., 11: 1751-1753 (1991) 。
【0107】
種々のリガンドに融合されたPEをコードする遺伝子をクローニングするための方法は当業者に良く知られている。たとえば、 Siegallなど., FASEB J., 3: 2647-2652 (1989); Chaudhary など., Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 84: 4538-4542(1987)(それらは引用により本明細書に組込まれる)を参照のこと。
【0108】
当業者は、追加の修飾、欠失、挿入及び同様のことが、本発明のキメラ分子、又はメソセリン指図されたキメラ分子をコードする核酸配列に対して行なわれ得ることを十分に理解するであろう。すべてのそのような構成は、当業者に良く知られている遺伝子工学の方法により行なわれ得(一般的には、Sambrookなど., 前記を参照のこと)、そして種々の臨床学的又は生物学的用途のためにタンパク質を特に適切にする、親和性、特異性、安定性及び毒性の異なった性質を有するタンパク質を生成することができる。
【0109】
(b)ジフテリア毒素(DT)
PEのように、ジフテリア毒素(DT)は ADP−リボシル化延長因子2により細胞を殺し、それにより、タンパク質合成を阻害する。しかしながら、ジフテリア毒素は、ジスルフィド架橋により連結された2つの鎖、A及びBに分けられる。PEとは対照的に、カルボキシル末端上に存在する、DTの鎖Bは、受容体結合を担当し、そしてアミノ末端上に存在する鎖Aは、酵素活性を含む(Uchidaなど., Science, 175: 901-903 (1972); Uchida など., J.Biol.Chem., 248:3838-3844 (1973)) 。
【0110】
好ましい態様においては、本発明の標的化分子−ジフテリア毒素融合タンパク質は、ジフテリア毒素B鎖の切断により除去される生来の受容体−結合ドメインを有する。 DT388、すなわち残基 389で開始するカルボキシル末端配列が除去されているDTが特に好ましい(Chaudhary, など., Bioch.Biophys.Res.Comm., 180: 545-551 (1991))。
【0111】
PEキメラ細胞毒素のように、DT分子はメソセリン標的化分子に化学的に接合され得るが、しかし好ましい態様においては、標的化分子は組換え手段によりジフテリア毒素に融されるであろう。タンパク質鎖をコードする遺伝子は、当業者に知られているいづれかのクローニング方法により、cDNAに又はゲノム形にクローン化され得る。種々のリガンドに融合されるDTをコードする遺伝子をクローニングするための方法はまた、当業者に良く知られている。たとえば、Williamsなど., J.Biol.Chem. 265: 11885-11889 (1990) 、及び多くの成長因子−DT融合タンパク質の発現を記載する継続特許出願(USSN 07/620,989)を参照のこと。
【0112】
用語“ジフテリア毒素”(DT)とは、本明細書において使用される場合、十分な長さの生来のDT、又は修飾されたDTを意味する。修飾は典型的には、B鎖における標的化ドメインの除去を包含し、そしてより特定には、B鎖のカルボキシル領域の切断を包含する。
本発明のキメラ分子のエフェクター分子成分としての使用のために適切な検出可能なラベルは、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的又は化学的手段(すべては、上記の通りである)により検出できるいづれかの組成物を包含する。
【0113】
C.エフェクター分子への標的化分子の結合
当業者は、標的化分子及びエフェクター分子がいづれの順序ででも一緒に連結され得ることを認識するであろう。従って、標的分子がポリペプチドである場合、エフェクター分子は、標的化分子のアミノ又はカルボキシ末端のいづれかに連結され得る。標的化分子はまた、エフェクター分子の内部領域にも連結され得、又は逆に言えば、エフェクター分子は、結合が前記分子のそれぞれの活性を妨害しない限り、標的分子の内部位置に連結され得る。
【0114】
標的化分子及びエフェクター分子は、当業者に良く知られている多くの手段のいづれかにより結合され得る。典型的には、エフェクター分子は、標的化分子に、直接的に又はリンカー(スペーサー)を通して接合される。しかしながら、エフェクター分子及び標的化分子の両者がポリペプチドである場合、一本鎖融合タンパク質としてキメラ分子を組換え的に発現することが好ましい。
【0115】
D.標的化分子へのエフェクター分子の接合
1つの態様においては、標的化分子は、エフェクター分子(たとえば、細胞毒素、ラベル、リガンド、又は薬物、もしくはリポソーム)に化学的に接合される。分子を化学的に接合する手段は、当業者に良く知られている。
【0116】
抗体又は他のポリペプチド標的化分子に剤を結合するための方法は、その剤の化学構造に従って変化することができる。ポリペプチドは典型的には、種々の官能基、たとえばエフェクター分子をそれに結合するためにそのエフェクター基上の適切な官能基との反応のために利用できるカルボン酸(COOH)又遊離アミン(−NH2)基を含む。
【0117】
あるいは、標的化分子及び/又はエフェクター分子は、追加の反応性官能基を暴露し又は結合するために誘導体化され得る。その誘導体化は、多くのリンカー分子、たとえばPierce Chemical Company, Rockford Illinoisから入手できるそれらの分子のいづれかの結合を包含する。
【0118】
“リンカー”とは、本明細書において使用される場合、エフェクター分子に標的化分子を連結するために使用される分子である。リンカーは、標的化分子及びエフェクター分子の両者に対して共有結合を形成することができる。適切なリンカーは、当業者に良く知られており、そして直鎖又は枝分れ鎖の炭素リンカー、複素環式炭素リンカー、又はペプチドリンカーを包含するが、但しそれらだけには限定されない。標的化分子及びエフェクター分子がポリペプチドである場合、リンカーは、それらの側基を通して置換アミノ酸に(たとえば、ジスルフィド結合を通してシステインに)連結され得る。しかしながら、好ましい態様においては、リンカーは、末端アミノ酸のα炭素アミノ及びカルボキシル基に連結されるであろう。
【0119】
特定の剤上の基と反応性の1つの官能基、及び抗体と反応性のもう1つの基を有する二官能価リンカーは、所望する免疫接合体を形成するために使用され得る。他方では、誘導体化は、標的化分子の化学的処理、たとえば遊離アルデヒド基を生成するために過ヨウ素酸塩による糖タンパク質抗体の糖成分のグリコール分解を包含することができる。抗体上の遊離アルデヒド基は、剤をそれに結合するためにその剤上の遊離アミン又はヒドラジン基と反応せしめられ得る(アメリカ特許第 4,671,958号を参照のこと)。ポリペプチド、たとえば抗体又は抗体フラグメント上の遊離スルフヒドリル基の生成のための方法はまた、知られている(アメリカ特許第 4,659,839号を参照のこと)。
【0120】
タンパク質、たとえば抗体への放射性核種金属キレート、毒素及び薬物を包含する種々の化合物の結合のための多くの方法及びリンカー分子は知られている。たとえば、ヨーロッパ特許出願第 188,256号;アメリカ特許第 4,671,958号;第 4,659,839号;第 4,414,148号;第 4,699,784号;第 4,680,338号;第 4,569,789号;及び第 4,589,071号;及び Borlinghausなど., Cancer Res. 47: 4071-4075 (1987)(それらは引用により本明細書に組込まれる)を参照のこと。特に、種々の免疫毒素の生成は、当業界において良く知られており、そしてたとえば、“Monoclonal Antibody-Toxin Conjugated: Aiming the Magic Bullet," Thorpeなど., Monoclonal Antidodies in Clinical Medicine, Academic Press, pp.168-190 (1982),Waldmann, Science, 252: 1657 (1991) 、アメリカ特許第 4,545,985号及び第 4,894,443号(それらは引用により本明細書に組込まれる)に見出され得る。
【0121】
いくつかの情況においては、キメラ分子がその標的部位に達した時、標的分子からエフェクター分子を遊離することが所望される。従って、標的部位近くで切断できる結合を含んで成るキメラ接合体が、エフェクターが標的部位で開放される予定である場合に使用され得る。抗体から剤を開放するために結合の切断は、酵素活性により、又は免疫接合体が標的細胞内に又は標的部位近くにゆだねられる状態により、促進され得る。標的部位が腫瘍である場合、腫瘍部位で存在する条件下で切断できるリンカー(たとえば、腫瘍関連酵素又は酸性pHに暴露される場合)が使用され得る。
【0122】
多く異なった切断可能リンカーは、当業者に知られている。アメリカ特許第 4,618,492号;第 4,542,225号及び第 4,625,014号を参照のこと。それらのリンカー基からの剤の開放のための機構は、たとえば光不安定結合の照射及び酸触媒された加水分解を包含する。たとえば、アメリカ特許第 4,671,958号は、患者の補体系のタンパク質加水分解酵素により標的部位でインビボ切断されるリンカーを含んで成る免疫接合体の説明を包含する。種々の放射性診断化合物、放射性治療化合物、薬物、毒素及び他の剤を抗体に結合するための、報告されている多くの方法の観点においては、当業者は、与えられる剤を抗体又は他のポリペプチドに結合するための適切な方法を決定することができるであろう。
【0123】
E.融合タンパク質の生成
標的化分子及び/又はエフェクター分子が比較的短い(すなわち、約50個よりも少ないアミノ酸)場合、それらは標準の化学的ペプチド合成技法を用いて合成され得る。両分子が比較的短い場合、キメラ分子は単一の隣接するポリペプチドとして合成され得る。他方では、標的化分子及びエフェクター分子は、別々に合成され、そして次に、他の分子のカルボキシル末端との1つの分子のアミノ末端の縮合により融合され、それによりペプチド結合が形成される。他方では、標的化分子及びエフェクター分子は、ペプチドスペーサー分子の一端によりそれぞれ縮合され、それにより隣接した融合タンパク質が形成される。
【0124】
配列のC−末端アミノ酸が不溶性支持体に結合され、続いて、配列中の残るアミノ酸の連続的な付加を伴う固相合成が、本発明のポリペプチドの化学合成のための好ましい方法である。固相合成のための技法は、Barany and Merrifield, Solid-Phase Peptide Synthesis; pp.3-284, The Peptides: Analysis, Synthesis, Biology.Vol.2: Special Methods in Peptide Synthesis, Part A., Merrifield, など. J.Am.Chem.Soc., 85: 2149-2156 (1963)、及び Stewartなど., Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd ed. Pierce Chem.Co., Rockford, Ill.(1984)(それらは引用により本明細書に組込まれる)により記載される。
【0125】
好ましい態様においては、本発明のキメラ融合タンパク質は、組換え DNA技法を用いて合成される。一般的に、これは、融合タンパク質をコードする DNA配列の創造、特定のプロモーターの制御下で発現カセットへの前記 DNAの配置、宿主における前記タンパク質の発現、前記発現されたタンパク質の単離、及び必要の場合、前記タンパク質の再生を包含する。
【0126】
本発明の融合タンパク質をコードする DNAは、たとえば、次の方法による適切な配列のクローニング及び制限、又は直接的な化学合成を包含するいづれかの適切な方法により調製され得る:Narangなど., Meth.Enzymol. 68: 90-99 (1979) のホスホトリエステル方法; Brownなど., Meth.Enzymol. 68: 109-151 (1979) のホスホジエステル方法; Beucageなど., Tetra.Lett., 22: 1859-1862 (1981)のジエチルホスホラミジット方法;及びアメリカ特許第 4,458,066号の固体支持体方法(それらは引用により本明細書に組込まれる)。
【0127】
化学合成は、一本鎖オリゴヌクレオチドを生成する。これは、相補的配列とのハイブリダイゼーションにより、又は鋳型として一本鎖を用いて DNAポリメラーゼによる重合により、二本鎖 DNAに転換され得る。当業者は、 DNAの化学合成又は約 100個の塩基の配列に限定されるが、より長い配列が短い配列の連結により得られることを理解するであろう。
【0128】
あるいは、副配列がクローン化され得、そして適切な副配列が適切な酵素を用いて切断され得る。次に、フラグメントが、所望する DNA配列を生成するために連結され得る。
【0129】
2つの分子は好ましくは、実質的に直接的に一緒に連結されるが、当業者は、それらの分子が1又は複数のアミノ酸から成るペプチドスペーサーにより分離され得ることを理解するであろう。一般的に、スペーサーは、タンパク質を連結し、又はそれら間の最小距離又は他の空間関係を保存する以外、特定の生物学的活性を有さないであろう。しかしながら、スペーサーの構成成分であるアミノ酸は、分子のある性質、たとえば折りたたみ、実効電場、又は疎水性に影響を及ぼすよう選択され得る。
【0130】
融合タンパク質をコードする核酸配列は、種々の宿主細胞、たとえばE.コリ、他の細菌宿主、酵母、及び種々の高等真核細胞、たとえばCOS, CHO及びHeLa細胞系及び骨髄腫細胞系において発現され得る。組換えタンパク質遺伝子は、個々の宿主のための適切な発現制御配列に操作可能的に連結されるであろう。E.コリのためには、これはプロモーター、たとえばT7, trp 、又はλプロモーター、リボソーム結合部位、及び好ましくは、転写終結シグナルを包含する。真核細胞のためには、制御配列は、プロモーター及び好ましくは、免疫グロブリン遺伝子、SV40、サイトメガロウィルス、等に由来するエンハンサー、及びポリアデニル化配列を含み、そしてスプライスドナー及び受容体配列を含むことができる。
【0131】
本発明のプラスミド及びベクターは、良く知られている方法、たとえばE.コリのための塩化カルシウム形質転換法及び哺乳類細胞のためのリン酸カルシウム処理又はエレクトロポレーションにより、選択された宿主細胞中に移送され得る。プラスミドにより形質転換された細胞は、プラスミド上に含まれる遺伝子、たとえば amp,gpt, neo及び hyg遺伝子により付与される抗生物質に対する耐性により選択され得る。
【0132】
発現されると、組換え融合タンパク質は、当業界の標準の方法、たとえば硫酸アンモニウム沈殿法、親和性カラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動及び同様のものに従って精製され得る(一般的には、R.Scopes, Protein Purification, Springer-Verlag, N.Y. (1982), Deutscher, Methods in Enzymology Vol.182: Guide to Protein Purification., Academic Press, Inc. N.Y. (1990)を参照のこと)。少なくとも約90〜95%の均質性の実質的に純粋な組成物が好ましく、そして98〜99%又はそれ以上の均質性が医薬用途のために最とも好ましい。部分的に又は所望により均質性に精製されると、次にポリペプチドは治療的に使用され得る。
【0133】
III .メソセリンに対する標的化剤の患者への投与
本発明の治療剤、たとえばメソセリンに対する抗体、又はたとえばエフェクター分子に結合される抗体又は他の標的化分子は、好ましくは医薬的に許容されるキャリヤーと共に、いづれか適切な態様で投与される。当業者は、本発明におけるそのような化合物を患者に投与するための適切な方法が利用でき、そして1よりも多くの経路が特定の化合物を投与するために使用され得るが、特定の経路がしばしば、他の経路よりもより即時的で且つより効果的な反応を提供することができることを理解するであろう。ペプチドの投与は多くの疾病のために良く知られており、そして当業者はそれらの他の疾病を処理するためのペプチドの使用のために利用できる情報に基づいてメソセリンペプチドを推定できることが理解されるべきである。
【0134】
医薬的に許容できるキャリヤーはまた、当業者に良く知られている。キャリヤーの最適な選択は、特定の化合物により、及び組成物を投与するために使用される特定の方法により一部決定されるであろう。従って、本発明の医薬組成物の広範囲の種類の適切な配合物が存在する。
【0135】
抗体は、注射用調製物中に配合され得る。非経口配合物は知られており、そして本発明への使用のために、好ましくはi.m.又はi.v.投与のために適切である。治療的有効量の抗体又は免疫毒素を含む配合物は、無菌の液体溶液、液体懸濁液又は凍結乾燥されたもののいづれかであり、そして任意には、安定剤又は賦形剤を含む。凍結乾燥された組成物は、0.01mg/kg宿主体重〜適切な場合、10mg/kgのレベルで、適切な希釈剤、たとえば注射用水、塩溶液、 0.3%グリシン及び同様のものにより再構成される。典型的には、抗体又は免疫毒素を含む医薬組成物は約0.01mg/kg〜約5mg/kg治療哺乳類の範囲の医薬として有効な量において投与される。医薬組成物の好ましい治療有効量は、約0.01mg/kg〜約5mg/kg(処理される哺乳類)の範囲であり、数日間〜2週間にわたって毎日、静脈内注入により投与され、個々の投与は、連続した患者用量−段階的拡大管理下で1時間にわたって行なわれる。
【0136】
抗体は、i.m.注射、皮下、硬膜下腔内、又は腹膜内に、又は血管空間中に、特に腹腔又は胸腔中に、約1μg/cc流体/日以上の用量で全身投与され得る。永久的な硬膜下腔内カテーテルは、治療用抗体を投与するための便利な手段である。用量は、使用される抗体又は免疫毒素の性質、たとえばその活性及び生物学的半減期、配合物における抗体の濃度、投与の部位及び速度、関与する患者の臨床学的耐性、患者を苦しめる疾病、及び医師の熟練内に良くある同様のことに依存するであろう。
【0137】
本発明の抗体は溶液で投与され得る。溶液のpHは、5〜9.5 のpH、好ましくは 6.5〜7.5 のpHの範囲で存在すべきである。抗体又はその誘導体は、適切な医薬的に許容できる緩衝液、たとえばリン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−HCl 又はクエン酸塩、及び同様のものを有する溶液に存在すべきである。緩衝液濃度は1〜100mM の範囲であるべきである。抗体の溶液はまた、塩、たとえば塩化ナトリウム、又は塩化カリウムを、50〜150mM の濃度で含むことができる。安定剤、たとえばアルブミン、グロブリン、ゼラチン、プロタミン又はプロタミンの塩の有効量がまた含まれ得、そして抗体又は免疫毒素を含む溶液に、又はその溶液が調製される組成物に添加され得る。抗体又は免疫毒素はまた、微小球体、リポソーム、又は血液を包含する一定の組織に配置される他の微小粒状供給システムを通して投与され得る。
【0138】
用 量
治療用途においては、本発明に従って使用される化合物の用量は、化合物の種類及び処理される状態に依存して変化する。受容体患者の年齢、体重、及び臨床学的状態;及び治療を行なう臨床医又は実施者の経験及び判断が、選択される用量に影響を及ぼす要因である。たとえば、免疫グロブリンの用量は、ポリクローナル抗体に関して、約 0.1mg/kg体重/日〜約10mg/kg/日であり、そしてモノクローナル抗体に関しては、その量の約5%〜約20%の範囲である。そのような場合、免疫グロブリンは、静脈内注入として1日1回投与され得る。好ましくは、その用量は、治療結果が達成されるまで、又は副作用が治療の中断を保証するまで、毎日くり返えされる。一般的に、その用量は、患者に対して許容できない毒性を生成することなしに、疾病の症状又は徴候を処理し;又は改善するために十分であるべきである。
【0139】
化合物の治療的有効量は、病状の主観的な軽減、又は臨床医又は他の資格のある観察者により言及されるように、客観的に同定できる改良点、たとえば腫瘍細胞増殖の阻害のいづれかを提供する量である。その用量範囲は、使用される化合物、投与の経路及び特定の化合物の有効性により変化する。
【0140】
IV.遺伝子療法及び阻害性核酸治療学
本発明のヌクレオチド配列情報を用いて、当業者は、メソセリン遺伝子を単離するための手段及び方法を計画し、機能のための遺伝子構造を説明し、そしてまた、中皮腫及び卵巣癌の遺伝的介入においてさらに価値あるものである既知又は未知の転写因子のための特定のプロモーターを発見することができる。中皮細胞における正常なメソセリンの分析的 DNA配列決定は、中皮腫及び卵巣癌における遺伝子の突然変異の発見を導びくことができる。
【0141】
メソセリンは、中皮腫及び卵巣癌の移植に帰属される付着性質を明白にする。アンチセンス DNAを導入し、又はメソセリン遺伝子の転写をブロックすることによって、新規の遺伝子療法レジメガ、遺伝子療法の現在の方策に従って設定され得る。
【0142】
メソセリン遺伝子の発現又は活性をブロックすることができる阻害性核酸治療は、中皮腫又は卵巣腫瘍、又はメソセリンに関係する他の異常細胞の増殖を遅延し、又は阻害することにおいて有用であろう。阻害性核酸は、相補的核酸配列に特異的に結合することができる一本鎖核酸であり得る。適切な標的配列に結合することによって、RNA-RNA, DNA-DNA、又は RNA-DNA複合体又は三重体が形成される。それらの核酸はしばしば、“アンチセンス”と称される。なぜならば、それらは、“センス”核酸の使用のためのアプローチがまた開発されているが、通常、遺伝子のセンス又はコード鎖に対して相補的であるからである。用語“阻害性核酸”とは、本明細書において使用される場合、“センス”及び“アンチセンス”核酸の両者を意味する。
【0143】
標的核酸に結合することによって、阻害性核酸は、標的核酸の機能を阻害することができる。これは、たとえば、 DNA転写、mRNAへのプロセッシング又はポリ(A)の付加、 DNA複製、翻訳のブロック、又は細胞の阻害機構の促進、たとえば RNA分解の促進の結果である。従って、阻害性核酸方法は、たとえばメソセリン遺伝子の発現を変更するために多くの異なったアプローチを包含する。阻害性核酸技法のそれらの異なった型は、Helene, C. and Toulme, J., 1990, Biochim.Biophys.Acta. 1049: 99-125(引用により本明細書に組込まれ、そしてこの後、"Helene and Toulme" として言及される)に記載されている。
【0144】
手短に言及すれば、阻害性核酸治療アプローチは、 DNA配列を標的化するアプローチ、 RNA配列(プレ−mRNA及びmRNAを包含する)を標的化するアプローチ、タンパク質を標的化するアプローチ(センス鎖アプローチ)、及び標的核酸の分解又は化学的修飾を引き起こすアプローチに分類され得る。
【0145】
DNAを標的化するアプローチは、いくつかのカテゴリーに分類される。核酸は、三重させん又は“三重体”構造を形成するために二重 DNAに結合するよう企画され得る。他方では、阻害性核酸は、複製又は転写の間、二重 DNAの開放に起因する一本鎖 DNAの領域に結合するよう企画される。 Helene and Toulmeを参照のこと。
【0146】
より通常には、阻害性核酸は、mRNA又はmRNA前駆体に結合するよう企画される。阻害性核酸は、プレ−mRNAの成熟を妨げるために使用される。阻害性核酸は、 RNAプロセッシング、スプライシング又は翻訳を妨げるよう企画され得る。
【0147】
阻害性核酸は、mRNAに標的化され得る。このアプーチにおいては、阻害性核酸は、コードされたタンパク質の翻訳を特異的にブロックするよう企画される。このアプローチを用いて、阻害性核酸は決定的なタンパク質をコードするmRNAの翻訳の阻害により一定の細胞機能を選択的に抑制するために使用され得る。たとえば、c-myc mRNAの領域に対して相補的な阻害性核酸は、 c-mycプロト−腫瘍遺伝子を過剰発現する、ヒト前骨髄球性白血病細胞、HL60における c-mycタンパク質発現を阻害する。Wickstrom E.L., など., 1998, PNAS (USA) 85: 1028-1032 及びHarel-Bellan, A., など., 1988, Exp.Med. 168: 2309-2318を参照のこと。 Helene and Toulmeに記載されるように、mRNAを標的化する阻害性核酸は、コードされたタンパク質の翻訳を阻害するためにいくつかの異なった機構により作用することが示されている。
【0148】
細胞中に導入される阻害性核酸はまた、mRNA翻訳に関与する酵素又は結合タンパク質をトラップし、又はそれと競争するために遺伝子又はmRNAの“センス”鎖を包含することができる。 Helene and Toulmeを参照のこと。
【0149】
最後に、阻害性核酸は、標的遺伝子又はmRNAの化学的不活性化又は切断を誘発するために使用され得る。化学的不活性化は、阻害性核酸と細胞内の標的核酸との間の架橋の誘発により生じることができる。適切に誘導体化された阻害性核酸により誘発された標的核酸の他の化学的修飾もまた使用され得る。
【0150】
標的核酸の切断及び従って、不活性化は、切断反応を誘発するために活性化され得る阻害性核酸に置換基を結合することによって達成され得る。前記置換基は、化学的又は酵素的切断に影響を及ぼす置換基であり得る。他方では、切断は、リボザイム(ribozyme)又は触媒性 RNAの使用により誘発され得る。このアプローチにおいては、阻害性核酸は、天然に存在するRNA(リボザイム) 又は触媒活性を有する合成核酸のいづれかを含んで成る。
【0151】
特定の細胞の表面上に受容体を結合する標的化成分との接合による免疫系のそれらの細胞への阻害性核酸の標的化が、阻害性核酸治療の上記形のすべてのために使用され得る。本発明は、上記のように及び Helene and Toulmeに記載されるように、阻害性核酸治療のすべての形を包含する。
【0152】
本発明は、メソセリンに関連する腫瘍の増殖を阻害し、又は遅延することへの使用のためにメソセリンの配列への阻害性核酸の標的化に関する。阻害性核酸治療に関連する問題は、標的細胞への阻害性核酸の効果的なインビボ供給、及びその細胞による阻害性核酸の続くインターナリゼーションである。しかしながら、供給は、感染された標的細胞の表面上の特異的受容体に結合し、そして結合の後、インターナリゼーション化される接合体を形成するために標的化成分に阻害性核酸を連結することによって達成され得る。好ましくは、阻害性核酸は、腹膜腔、胸腔、及びメソセリンを担持する細胞が興味あるものであるいづれか他の位置に供給されるであろう。
【0153】
遺伝子治療はまた、所望する機能を欠いている細胞中へのその所望する機能をコードする外因性細胞遺伝子の挿入により、その外因性遺伝子の発現が、a)遺伝子欠陥を修正し、又はb)遺伝子的に欠陥のある細胞の破壊を引き起こすよう、遺伝子欠陥を修正することができる。遺伝子治療の方法は、当業界において良く知られており、たとえばLu, M., など.(1994), Human Gene Therapy 5: 203;Smith, C. (1992), J.Hematotherapy 1: 155; Cassel, A., など.(1993), Exp.Hematol. 21-: 585 (1993); Larrick, J.W. and Burck, K.L., GENE THERAPY: APPLICATION OF MOLECULAR BIOLOGY, Elsevier Science Publishing Co., Inc., New York, New York (1991) 及びKreigler, M.GENE TRANSFER AND EXPRESSION: A LABORATORY MANUAL, W.H.Freeman and Company, New York (1990)(それぞれは、引用により本明細書に組込まれる)を参照のこと。
【0154】
遺伝子治療の1つの形式は、(a)特定細胞型の一次細胞の生存サンプルを患者から獲得し;(b)それらの一次細胞中に、所望する遺伝子生成物をコードする核酸セグメントを挿入し;(c)遺伝子生成物を発現する細胞及び細胞系を同定し、そして単離し;(d)遺伝子生成物を発現する細胞を再導入し;(e)段階(c)に起因する細胞及びそれらの子孫を包含する組織のアリコートを患者から除去し;そして(f)前記アリコートにおける、段階(c)に起因する細胞及びそれらの子孫の量を決定することを包含する。メソセリン発現又は活性をブロックするであろう配列(たとえば、“所望する遺伝子生成物”)をコードするベクターの段階(b)における細胞中への導入は、メソセリンに関連する腫瘍細胞の増殖を阻害し、又は遅延することにおいて有用であり得る。
【0155】
V.ワクチンの開発
メソセリンアミノ酸配列を用いてのワクチンの開発
メソセリンを担持する腫瘍の増殖の防止及び阻害のためのワクチンとしての使用のために適切な物質、及びそれらを投与するための方法が使用され得る。ワクチンは、メソセリンに対して指図される。好ましくは、ワクチンは、メソセリン由来の抗原を含んで成る。
【0156】
ワクチンは、組換え的に製造され得る。典型的には、ワクチンは、約1〜約50μgの抗原、又は抗原性タンパク質又はペプチドを含むであろう。より好ましくは、タンパク質の量は約15〜約45μgである。典型的には、ワクチンは、用量が約 0.5mlになるよう配合される。ワクチンは、当業界において知られているいづれかの経路により投与され得る。好ましくは、その経路は腹腔内又は非経口である。
【0157】
特に、ワクチンの当業者に関連される場合、抗原の有効性を増幅するための多くの方策が存在する。たとえば、ペプチドの環化又は環状化は、ペプチドの抗原性及び免疫原性能力を高めることができる。アメリカ特許第 5,001,049号(これは、引用により本明細書に組込まれる)を参照のこと。より便利には、抗原は、適切なキャリヤー、通常、タンパク質分子に接合され得る。この方法は幾つかの面を有する。それは、抗原、たとえばペプチドの複数コピーの単一の大きなキャリヤー分子への接合を可能にすることができる。さらに、キャリヤーは、抗原の輸送、結合、吸着又はトランスファーを促進する性質を有することができる。
【0158】
非経口投与のためには、適切なキャリヤーの例は、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、血清アルブミン、及びヤツメウナギ、又はキーホールリンペット(カサガイ)ヘモシアニンである。なぜならば、それらは得られる接合体に最少の遺伝的制限を付与するからである。それらの普遍的なキャリヤーを含む接合体は、ひじょうに異なる遺伝子組を有する個人においてT細胞クローン活性化因子として作用することができる。
【0159】
ペプチドとキャリヤーとの間の接合は、当業界において知られている方法の1つを用いて達成され得る。特別には、接合は、たとえばMeans and Feeney, "A recent review of protein modification techniques," Bioconjugate Chem. 1: 2-12 (1990) により詳細に記載されるように、結合剤として二官能価架橋剤を使用することができる。
【0160】
抗原は、当業界において知られているように、種々の溶液及び他の化合物と組合され又は混合され得る。たとえば、それは、種々のアジュバント又は免疫希釈剤と共に又はそれを伴わないで、水、塩溶液、又は緩衝ビークルに投与され得る。そのようなアジュバント又は剤の例は、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸ベリリウム、、シリカ、カオリン、炭素、油中水エマルジョン、水中油エマルジョン、ムラミルジペプチド、細菌性内毒素、脂質X、コリネバクテリウム パルバム(Corynebacterium parvum)(プロピオニバクテリウム アクネス)(Propionibacterium acnes)、ボルデテラ ペルツシス(Bordetella pertussis)、ポリリボヌクレオチド、アルギン酸ナトリウム、ラノリン、リソレシチン、ビタミンA、サポニン、リポソーム、レバミゾール、DEAE−デキストラン、ブロックされたコポリマー又は他の合成アジュバントを包含する。
【0161】
そのようなアジュバントは、次のように種々の源から市販されている:Merck Adjuvant 65 (Merck and Company, Inc., Rahway, N.J.) 又は不完全フロイントアジュバント及び完全フロイントアジュバント(Difco Laboratories, Detroit, Michigan)。他の適切なアジュバントは、Amphigen(水中油型)、Alhydrogel(水酸化アルミニウム)、又はAmphigen及びAlhydrogelの混合物である。アルミニウムのみがヒト使用のために許容される。
【0162】
抗原及びアジュバントの割合は、両者が有効量で存在する限り広い範囲にわたって変化され得る。たとえば、水酸化アルミニウムは、ワクチン混合物(Al2O3に基づく)中に約 0.5%の量で存在することができる。用量当たりに基づけば、抗原の量は、患者当たり約 0.1μg〜約 100μgのタンパク質の範囲であり得る。好ましい範囲は、約1μg〜約50μg/用量である。より好ましい範囲は、約15μg〜約45μgである。適切な用量サイズは約 0.5mlである。配合の後、ワクチンは無菌容器中に導入され、次に密封され、そして低温、たとえば4℃で貯蔵されるか、又はそれは凍結乾燥され得る。凍結乾燥は、安定された状での長期の貯蔵を可能にする。
【0163】
処理は、ワクチンの一回の用量、又は一定期間にわたっての複数回の用量から成る。好ましくは、用量は、メソセリン担持の腫瘍細胞を有すると思われる患者に与えられる。本発明の抗原は、適切な用量の化合物、たとえばインフルエンザ抗原、たとえばA型インフルエンザ抗原と共に組合され得る。また、抗原は、経口投与のために適合できる組換えワクチンの成分でもあり得る。
【0164】
本発明のワクチンは、多価ワクチンを生成するために、他の疾病のための他のワクチンと組合され得る。医薬的に有効な量の抗原が、医薬的に許容できるキャリヤー、たとえば動物、特にヒトの予防接種のために有用なタンパク質又は希釈剤と共に使用され得る。他のワクチンは、当業者に良く知られている方法に従って調製され得る。
【0165】
当業者は、効果的な免疫保護を誘発するためには適切なエピトープに哺乳類を暴露することが単に必要であることを容易に認識するであろう。前記エピトープは典型的には、完全なタンパク質の小部分であるアミノ酸のセグメントである。組換え遺伝学を用いて、天然に存在するエピトープと同一か又は実質的に同じ(免疫学的に同等である)であるエピトープを包含する誘導体を創造するために天然のタンパク質の一次構造体を変更することは日常のことである。そのような誘導体は、メソセリンのためのアミノ酸配列内でのペプチドフラグメント、アミノ酸置換、アミノ酸欠失及びアミノ酸付加を包含することができる。たとえば、一定のアミノ酸残基が、タンパク質の生物学的活性に対して不適切な効果を伴わないで、類似するサイズ及び極性のアミノ酸により置換され得ることは、タンパク質業界において知られている。
【0166】
メソセリンのアミノ酸配列情報を用いて、当業者は、卵巣癌又は中皮腫を有する患者から単離された血清に対するエピトープマッピングを行なうことができる。比較的強いエピトープが同定され得、そして通常のエピトープもまた、認識され得る。ヒト血清に対するエピトープマッピングはまた、可能性あるT−細胞エピトープを同定するために、活性化されたヒトリンパ球に対するエピトープ−ペプチドのスクリーニングに拡張され得る。理論的には、メソセリンのT−細胞エピトープはヒトT−細胞に見出され得ないが、しかしメソセリンに誘発される突然変異は、T−細胞により認識され得る新規のエピトープを創造することができる。変異メソセリンは、ファージ表示方法を用いて容易にランダムに生成され得る。得られるライブラリーは、悪性中皮腫及び卵巣癌を有する患者からのヒト血清によりスクリーンされる。従って、適切な抗原性ペプチドが、メソセリン−由来のワクチンのために同定され得る。
【0167】
VI.キット
本発明はさらに、メソセリンに対して特異的な核酸、又は抗体、もしくは他の標的化剤を有する容器、及びメソセリンの検出のための使用説明書を含んで成る、組織サンプル又は血清におけるメソセリンの存在について検出するための診断キットを包含する。
【0168】
前述の発明はより理解するために例示的且つ例的に、いくらか詳細に記載されて来たが、一定の変更及び修飾が本発明の範囲内で行なわれ得ることは当業者に明らかであろう。
【0169】
本明細書に引用されるすべての出版物及び特許出願は、それぞれ個々の出版物又は特許出願が引用により特別に及び個々に組込まれているかのように、すべての目的のためにそれらの全体を引用により本明細書に組込まれる。
【0170】
VII .メソセリンに対して指図された治療の評価のためのモデル
メソセリンcDNAは、タンパク質を発現するであろう確立された腫瘍細胞系中にトランスフェクトされ得る。そのトランスフェクトされた細胞系は、メソセリン発現を制御し、抑制し、又は調節するよう指図された治療を試験するためのモデルを供給するために、マウス又は他の哺乳類において腫瘍を増殖するために使用され得る。トランスフェクトされた腫瘍細胞系は、試験哺乳類中に移植され得る。次に、哺乳類は興味ある薬物にゆだねられ得、そして続く腫瘍細胞活性が、興味ある薬物が抗−腫瘍効果を有するかどうかを決定するためにモニターされ得る。この方法のための特に良好な候補体であることが見出されている腫瘍細胞系は、マウス NIH 3T3細胞(腫瘍形成性細胞系)、A431ヒト卵巣腫瘍細胞及び MCF-7乳癌細胞、 A2780ヒト卵巣腫瘍細胞、及び OVCAR-3ヒト類表皮癌細胞を包含する。
【実施例】
【0171】
A.材料及び方法
1.細胞及び抗体
ヒト卵巣腫瘍細胞系、 OVCAR-3及び細胞系 A431, KB, MCF-7, COS-1, WI-38及び NIH 3T3を、American Type Culture Collections (ATCC, Rockville, Maryland) から入手した。細胞を、L−グルタミン(2mM)、ペニシリン(50μg/ml)、ストレプトマイシン(50単位/ml)及び5〜10%ウシ胎児血清(GIBCO) により補充された RPMI 1640又はDMEM培地(GIBCO Laboratories, Grand Island, NY)のいずれかにおいて培養した。 NIH 3T3トランスフェクタントを、 0.8mg/mlのG418 (GIBCO)を有するDMEMにおいて増殖した。細胞は、それが、氷−冷却のPBS (GIBCO) により3度洗浄した後、80〜90%の集密度に達した時に使用された。MAb K1及び抗体 MOPC-21は記載されており(Chang, K., など., Int.J.Cancer 50, 373-381 (1992)) 、そして5〜10μg/mlの濃度で使用された。
【0172】
2.cDNAクローンの単離
HeLa S3 cDNAライブラリー(Clon Tech, Palo Alto, CA)を、プロテインA−精製されたMAb K1(5μg/ml)及びペルオキシダーゼ−接合されたヤギ抗−マウスIgG (H+L)(10μg/ml、Jackson Immuno Research Lab, Inc., West Grove, PA)を用いて、前記のようにして(Chang, K., and Pastan, I., Int.J.Cancer 57, 90-97 (1994)) 、約 50,000pfu/150mm フィルターでスクリーンした。2個の陽性プラーク(λ6−1,λ6−2)を単離し、そしてファージを、3回又はそれ以上の回数のスクリーニングにより均質性に精製した。それらが対照 MOPC-21抗体と反応しないことを示すことによってMAb K1によるそれらの特異性の確認の後、λ6−1及びλ6−2の単一プラーク単離物を用いて5〜10のファージ−プレートを調製し、続いてλファージ DNAキット(Qiagen, Inc., Chatsworth, CA) によりファージ DNAを抽出し、そして精製した。
【0173】
次に、ファージ DNAをEcoRIにより消化し、そして挿入体を、急速な連結プロトコール(Chang, K., and Pastan, I., Int.J.Cancer 57, 90-97 (1994)) を用いて、pcDNAI/Amp (Invitrogen Corporation, San Diego, CA) ベクターのEcoRI部位中にサブクローン化した。プラスミド DNAを、 Qiageneのプラスミド DNA単離キット(Chang, K., and Pastan, I., Int.J.Cancer 57, 90-97 (1994)) を用いて単離した。 XhoI, EcoRI, SalI, BamHI, NcoI及び DNA配列決定を用いての制限マッピングは、2つのプラスミドクローン(p6−1及びp6−2)が同一の1500個の塩基対挿入体を有することを示した。
【0174】
より長いクローンを単離するために、p6−1の挿入体を、ランダムプライミングにより精製し、cDNAプローブ(比活性= 8.5×105cpm/ml)を製造した。HeLa S3 cDNAライブラリーを、前に記載のフィルターハイブリダイゼーション方法(Chang, K., and Pastan, I., Int.J.Cancer 57, 90-97 (1994)) を用いて再スクリーンした。14個のλクローンを単離し、そして精製し、そしてそれらの挿入体を、EcoRIによる消化により評価した。4個の大きな挿入体を、pcDNAI/Amp プラスミドベクター(p9,p13−1,p16及びp18−1)中にサブクローン化した。p9は、長い読取り枠を有する最長の挿入体を含んだ。
【0175】
3. DNA配列決定分析
T3及びT7プロモータープライマー及び20個の17bp合成プライマーを用いて、p9の完全なcDNA挿入体を、Sanger (Sanger, F.,など., Proc.Natl.Acad.Sci. USA 74, 5463-5467 (1977))により記載される方法及び自動サイクル配列決定法により配列決定した。
【0176】
4.ノザンブロット分析
OVCAR-3, KB, MCF-7, A431及びWI38からの全RNA(20μg)を、16.6%のホルムアルデヒドを有するMOPS緩衝液における1%アガロースゲル上で電気泳動し、そして次に、ナイロン紙に移した。ノザンハイブリダイゼーションを、前述の方法(Chang, K., and Pastan, I., Int.J.Cancer 57, 90-97 (1994)) により行なった。ブロットを洗浄し、そして内部対照として32P−ラベルされたヒトβ−アクチンcDNAにより再プローブし、負荷された RNAサンプルの完全性及び量を評価した。
【0177】
5.インビトロ転写及び翻訳
TNT Coupled Reticulocyte Lysate System、イヌ膵臓ミクロソーム膜、除去するための、p9 (pcDICAK1-9), pAPK1 (Chang, K., and Pastan, I., Int.J.Cancer 57, 90-97 (1994)) のプラスミドDNA2μg、及び 3Hロイシンを、製造業者(Promega, Madison, WI, USA) のプロトコールに従って、インビトロ転写/翻訳、及びトランスロケーション/プロセッシング実験に使用した。翻訳生成物を、10% SDS-PAGE 還元ゲル上で決定した。タンパク質を固定し、そして組込まれなかったラベルを、緩衝液、40%メタノール及び脱イオン水中、10%酢酸の溶液 200mlにより30分間、3度にわたって前記ゲルをソークすることによって除去した。次に、ゲルを、 200mlのINTENSIFY Part A及びPart B (NEN Research Product, Boston, MA) により30分間にわたってソークした。乾燥の後、翻訳された生成物を、オートラジオグラフィーにより可視化した。
【0178】
6.哺乳類細胞におけるクローン化されたcDNAの発現
COS細胞の過渡的トランスフェクションを、製造業者のプロトコール(GIBCO) に従って、pcDICAK1-9 (p9) 及びLipofectAMINE (GIBCO) を用いて行なった。COS1細胞を、 2.5×105 個の細胞/60mmの皿で、実験の1日前にプレートした。24μlの LipofectAMINE及び76μlのOptiMEMI培地を、 100μlのOptiMEMI培地中、10μgのpcDNAI/Amp ベクター又はpcDICAK1-9と共に室温で30分間、混合した。 COS-1細胞を2度、OptiMEMIにより洗浄した後、 2.4mlのOptiMEMIを、前記トランスフェクション混合物に添加し、そしてCOS1細胞上に重ね、続いて、37℃で5時間インキュベートした。次に、20% FBSを含むDMEM 2.6mlを個々の皿に添加した。
【0179】
トランスフェクションの48時間後、皿を、記載のような(Chang, K., など., Int.J.Cancer 50, 373-381 (1992)) 免疫螢光ラベリング又は他の処理をゆだねた。プラスミドp9からの挿入体(pcDNAI/Amp における)をまた、安定したトランスフェクションのためにpcDNA3 (Invitrogen)ベクター中にサブクローン化した。プラスミドミニプレプを、 Qiagen's Miniprep Plasmid DNA Kitを用いて製造し、そして個々のクローンにおける挿入体の配向を制限マッピングにより決定した。次に、得られるプラスミド、pcD3CAK1-9を用いて、記載のような(Chen, C. and Okayama, H., Mol.Cell.Biol. 7, 2745-2752 (1987))DNA−リン酸カルシウム沈殿によりNIH 3T3, MCF-7, A431及び OVCAR-3細胞をトランスフェクトした。沈殿物への一晩の暴露の後、細胞を PBSにより3度、洗浄し、そして新鮮なDMEM/10% FBS培地を2〜3日間、供給した。Geneticin G418スルフェート(0.8mg/ml)を添加し、そしてその培養物を、直径2〜3mmのコロニーが形成されるまで、維持した。
【0180】
次に、コロニーを、96ウェルプレートのウェル中に移し、そして次に、それらが80%の集密度である場合、35mmの皿に移した。トランスフェクトされた細胞を、免疫螢光によりスクリーンし(Chang, K., など., Int.J.Cancer 50, 373-381 (1992);Chang, K., など., Cancer Res. 52, 181-186 (1992))、そして陽性細胞をさらに、記載のようにして制限希釈法によりサブクローン化した(Chang, K., など., Int.J.Cancer 50, 373-381 (1992)) 。 NIH 3T3トランスフェクタントクローンの1つ、 NIH 3T3 K20を、さらなる研究のために選択した。CAK1の発現を局在化するために、両細胞表面及び細胞内免疫螢光ラベリングをまた、前述の方法(Chang, K., など., Cancer Res. 52, 181-186 (1992))に従って実施した。
【0181】
7.PI-PLCによるトランスフェクトされた細胞の処理
CAK1 cDNAトランスフェクトされた NIH 3T3細胞(NIH 3T3 K20)を175mm2のフラスコにおいて増殖し、そしてそれが90%の集密度に達した場合、細胞を PBSにより3度、洗浄した。細胞を、1.25U/mlのPI-PLC(バシラス・セレウス(Bacillas cereus) からの;Boehringer Mannheim Biochemicals) 5ml又は0.05%のトリプシン/ 0.052mMのEDTAと共に、37℃で30分間、及び室温で30分間、振盪しながらインキュベートした。
【0182】
上清液を集め、そして1000×gでの遠心分離の後、Centricon 30 (Amicon, Inc., Beverly, MA)を用いて、約10倍に濃縮した。その濃縮された上清液を、SDS-PAGE及びイムノブロット分析に使用した。酵素処理された細胞を再培養し、そしてCAK1発現の回復が、一晩の培養の後、見出され得る。PI-PLCによる処理を、35mmの直径の皿を用いて、類似する態様で行ない、続いて処理された細胞の免疫螢光ラベリングを行なった(Chang, K., など., Cancer Res. 52, 181-186 (1992))。
【0183】
8.トランスフェクトされた NIH 3T3細胞のイムノブロット分析
トランスフェクトされた NIH 3T3 K20細胞 (Chang, K., and Pastan, I., Int.J.Cancer 57, 90-97 (1994)) からの膜及びシトソール画分を、12.5%のSDS-PAGEにゆだね、そして分解されたタンパク質をニトロセルロースに移した。イムノブロットを前述のようにして実施した(Chang, K., など., Int.J.Cancer 51, 548-554 (1992); Chang, K., and Pastan, I., Int.J.Cancer 57, 90-97 (1994))。
【0184】
B.結 果
発現クローニングを用いて、 CAK1 cDNAを単離した。本発明者は、MAb K1が OVCAR-3及びHeLa細胞と反応することを前に観察している。本発明者は OVCAR-3ライブラリー(Chang, K., and Pastan, I., Int.J.Cancer 57, 90-97 (1994)) からcDNAを単離することができないので、本発明者は上記のようにして、λgt11に発現する HeLa cDNAライブラリーをスクリーンした。合計1×106 個のファージをスクリーンし、そして2つのファージクローン(λ6−1及びλ6−2)を同定した。 DNA配列決定は、両ファージが同じ 1.5Kbの挿入体を含むことを示した。
【0185】
その挿入体は、 OVCAR-3及びKB細胞(MAb K1とまた反応するHeLaサブクローン)からのmRNAにハイブリダイズするが、しかし多くの他の細胞系からの RNAにはハイブリダイズせず、すなわちこれは、そのcDNAがMAb K1と反応する細胞に対して特異的であることを示唆する。 OVCAR-3細胞(レーン1)、 MCF-7細胞(レーン2)、KB細胞(HeLaサブクローン、レーン3)、A431細胞(レーン4)、及びWI38細胞(レーン5)からの全RNA 20μgを、電気泳動により分解し、ナイロン紙に移し、そして32P−ラベルされたCAK1プローブによりブロットした。
【0186】
アクチンプローブとのハイブリダイゼーションは、それらのレーンが同等に負荷されたことを示した。検出されたmRNAは 2.2Kbのサイズであり、これは、単離された挿入体が十分な長さでなかったことを示す。挿入体は、読み取り枠、停止コドン及びポリA末端を含むが、しかしその5′末端は欠失しているように見えた。従って、ファージライブラリーを挿入体の1つにより再スクリーンし、そして種々のサイズのcDNA挿入体を有する14個の新しいファージを単離した。
【0187】
最大の挿入体(#9)は、2138bpの長さであり、そして配列決定される場合、1884bpの読み取り枠を含んだ(図1)。それは典型的な Kozak配列(Kozak, M., Nucleic Acids Res. 5, 8125-8148 (1987))(AXXATGG) 、続いて69KDのタンパク質をコードする読み取り枠を含む。その配列は、試験された種々のデータベース(EMBL-GenBank)においては存在しなかった。CAK1抗原は約40KDの大きさであることが本来見出されているので、いくつかの実験を行ない、クローン9がCAK1をコードするかどうかを決定した。
【0188】
1.インビトロ翻訳
挿入体9を、pcDNAI/Amp ベクター中にクローン化し、pcDICAK1-9を製造し、そして TNT網状赤血球系に使用した。pcDICAK1-9プラスミドDNA(レーン1及び2)、及びpcDIAPK1(レーン3及び4)を、膵臓ミクロソーム膜(m)の存在(+)又は不在(−)下で、 TNT結合された網状赤血球溶解物システムに使用した。生成物を、10%還元SDS-PAGE上で分解し、そしてオートラジオグラフィー処理した。69KDのタンパク質を生成した。膵臓ミクロソーム(レーン2)の存在下で、わずかに大きなタンパク質を観察し、これはそのタンパク質がミクロソーム中に挿入され、そしてグリコシル化されたことを示唆する。対照として、MAb K1 (Chang, K., and Patan, I., Int.J.Cancer 57; 90-97 (1994) とまた反応する30KDのシトソールタンパク質をコードするcDNAを、同じ分析にゆだねた。タンパク質のサイズは、ミクロソームの存在により影響されなかった。
【0189】
2.培養された細胞における発現
pcDICAK1-9を、過渡的発現のために COS細胞中にトランスフェクトした。挿入体9を有するか又は挿入体を有さないpcDNAI/Amp ベクターを、 COS細胞中にトランスフェクトした。2日後、細胞を、MAb K1により4℃で(表面のラベリングのために)、又は23℃で(細胞内ラベリングのために)、免疫細胞化学的にラベルし、そして写真を取った(250倍の倍率)。
【0190】
MAb K1を用いて挿入体9によりトランスフェクトされた COS細胞の特定のラベリングパターンを観察した。透過されなかった細胞においては、典型的な細胞表面螢光パターンが検出される。透過された細胞においては、ゴルジ領域の強い染色が明白である。シトソール染色は検出されなかった。また、免疫反応性は、挿入体又は対照挿入体を有さないベクターによりトランスフェクトされた細胞においては検出されなかった。従って、挿入体9は、ゴルジにおいてまた存在する細胞表面タンパク質をコードする。
【0191】
3.CAK1抗原のサイズ及びプロセッシング
挿入体9によりトランスフェクトされた細胞により生成される抗原のサイズを決定するために、 NIH 3T3細胞をpcD3CAK1-9によりトランスフェクトし、安定した細胞系を製造した。安定してトランスフェクトされたクローンを上記のようにして生成し、そして表面上での抗原の存在を免疫螢光により確かめた。次に、膜及びシトソール画分を、 NIH 3T3 K20細胞から、及び OVCAR-3細胞から調製し、SDS-PAGEにゆだね、そしてMAb K1によるイムノブロットにより分析した。トランスフェクトされたNIH 3T3(pcD3CAK1) 及び模擬対照(pcD3)の膜画分(レーン1及び3)又はシトソール画分(レーン2及び4)約 100μg、及び OVCAR-3細胞の膜(レーン5)又はシトソール画分(レーン6)約 100μgを、電気泳動し、そしてMAb K1によりイムノブロットした。
【0192】
前で報告されたように、 OVCAR-3細胞における主要反応性は、膜に存在するが、しかしシトソールには存在しない約40及び43KDのダブレットに関して存在する。トランスフェクタントにおいては、同じ強度の2つのバンドが膜画分に検出され;その1つは約40KDであり、そして他の1つは約71KDであった。シグナルはシトソールには検出されなかった。それらのデータは、CAK1が、約40KD形へのタンパク質加水分解によりプロセッシングされる大きな分子量の前駆体として製造されることを提案する。
【0193】
4.細胞表面結合の性質
CAK1が、 OVCAR-3細胞(Chang, K., など., Cancer Res. 52, 181-186 (1992))におけるように、PI結合を通してトランスフェクタントに結合されるかどうかを決定するために、 NIH 3T3トランスフェクタント細胞系K20を、PI-PLCにより60分間、処理した。トランスフェクトされた NIH 3T3 K20細胞を、PI-PLCにより処理し、そして上記のようにして、MAb K1によりラベルする。CAK1シグナルを、PI-PLC処理の後、完全に除去した。
【0194】
強い細胞表面ラベリングパターンが、未処理の細胞に観察された。螢光は、PI-PLCによる処理の後、不在であった。処理の前(B)及び処理の後(D)の相対比像においては、処理された細胞は皿にまだ結合されているが、しかし形状においてわずかに変更される。PI-PLC処理された細胞からの培地を濃縮し、SDS-PAGEにゆだね、そしてMAb K1により分析した。約70KDのバンドが検出されたが、しかし分子量バンドはもはや検出されなかった。
【0195】
C.結果の要約
従って、上記のことは、中皮、中皮腫、卵巣癌及びいくつかの扁平上皮細胞癌上に見出されるCAK1抗原の分子クローニングを記載する。本発明者は、中皮細胞上での抗原メソセリンの存在に影響を及ぼすその抗原メソセリンを明示した。メソセリンの1つの予測できない特徴は、そのcDNAが69KDのタンパク質をコードし、ところがMAb K1を単離するために使用される、 OVCAR-3細胞上に存在する抗原が約40,000ドルトンの分子量を有することである。CAK1の DNA配列及び推定されるアミノ酸配列は、図1に示される。そのcDNAは2138bpの長さであり、そして1884bpの読み取り枠を含む。それをコードするタンパク質は、 69001ドルトンの計算された分子量を有する 628個のアミノ酸を含む。
【0196】
相同性の分析がヌクレオチド又はアミノ酸配列により行なわれ、そして GCGプログラムによりアクセスされるEMBL-GenBankを用いて検出した。タンパク質は、太文字で示される、可能性ある4個のN−結合されたグリコシル化部位N−X−S又はN−X−Tを含む。典型的なシグナル配列は、そのアミノ末端で存在しない。しかしながら、短い疎水性セグメントは、最初のメチオニンから15個目のアミノ酸に位置する(図1)。この配列は膜挿入のためのシグナル配列として機能し得る。なぜならば、そのタンパク質が細胞表面上に見出され、そして細胞フリー翻訳の間、ミクロソーム中に挿入されるからである。
【0197】
アミノ酸 293で開始する推定上のタンパク質加水分解プロセッシング部位、RPRFRRがまた存在する(図1)。この部位は、フリン、すなわちいくつかの膜タンパク質のプロセッシングにおいて、及びプソイドモナス及びジフテリア毒素の活性化において重要であるプロテアーゼにより認識される(Chiron, M.F., など., J.B.C. 269 (27): 18169-18176 (1994)) 。40KD形が、いくつかのプロセッシング段階により69KDの前駆体から誘導されると思われる。それらは図2に要約される。最初に、メソセリンが、たぶん除去され、そしてホスファチジルイノシトールにより置換される疎水性末端を有する69KDのポリペプチドとして製造される(Chang, K., など., Cancer Res. 52, 181-186 (1992))。
【0198】
その4個の推定上のN−結合されたグリコシル化部位の1又は複数の部位でのグリコシル化の後、それはプロテアーゼにより切断され、 OVCAR-3細胞の表面上に見出される40KDのフラグメント(又はダブレット)及びそれよりも小さな(約31KD)のフラグメントが生成される。後者は、培地中に開放され、そして/又はさらに、分解される。アミノ末端フラグメントは、 OVCAR-3細胞の培地に最近、検出されている(本発明者のデータ)。トランスフェクトされた NIH 3T3及び MCF-7細胞においては、本発明者は、ほぼ等量の70KD及び40KDタンパク質を見出す。本発明者は、初め、 OVCAR-3及びHeLa細胞に40KD形を検出し、そしてそれよりも大きな形を認めなかった。 OVCAR-3及びHeLa細胞の再試験は、微量の70KD前駆体を示す。
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1−1】図1−1: CAK1-9 cDNAのヌクレオチド配列及び推定されるアミノ酸配列。 CAK1 cDNAのヌクレオチド配列(上方のライン)及び推定されるアミノ酸配列(下方のライン)が、左側でのヌクレオチド番号と共に列挙される。CAK1の翻訳は、ヌクレオチド 100−102 (ATG)で開始し、そして1986−88(TGA) で停止する。推定上のシグナルペプチドは下線が引かれており、そして GPI基質のための典型的な疎水性配列は二重の下線が引かれている。可能性の高いフリン切断部位RPRFRRは、下線が引かれており、そしてその切断部位は矢印により示される。4個の可能性あるN−結合グリコシル化部位(太文字)が存在する。種々のポリアデニル化シグナル(AGTAAA)が、ポリアデニル化末端から22個の塩基対上流に存在する。元の p6-1 cDNA配列は、ヌクレオチド 721〜2138に及んでいる。
【図1−2】図1−2: CAK1-9 cDNAのヌクレオチド配列及び推定されるアミノ酸配列。 CAK1 cDNAのヌクレオチド配列(上方のライン)及び推定されるアミノ酸配列(下方のライン)が、左側でのヌクレオチド番号と共に列挙される。CAK1の翻訳は、ヌクレオチド 100−102 (ATG)で開始し、そして1986−88(TGA) で停止する。推定上のシグナルペプチドは下線が引かれており、そして GPI基質のための典型的な疎水性配列は二重の下線が引かれている。可能性の高いフリン切断部位RPRFRRは、下線が引かれており、そしてその切断部位は矢印により示される。4個の可能性あるN−結合グリコシル化部位(太文字)が存在する。種々のポリアデニル化シグナル(AGTAAA)が、ポリアデニル化末端から22個の塩基対上流に存在する。元の p6-1 cDNA配列は、ヌクレオチド 721〜2138に及んでいる。
【図2】図2:CAK1腫瘍抗原の異なった形。S.P.=推定上のシグナルペプチド;H.P.= GPI基質依存性疎水性ペプチド; CHO=炭水化物;M=膜;AA=アミノ酸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
OVCAR-3及びHeLa細胞の細胞表面に結合される40KDのポリペプチド(K1抗原)により十分に免疫吸着された、免疫原としての配列番号2の十分な長さのポリペプチド(“メソセリン”)に対して生ぜしめられた抗血清に結合する、配列番号2のポリペプチド配列からの少なくとも10個の隣接したアミノ酸のポリペプチド抗原を担持する腫瘍細胞にエフェクター分子を特異的に供給するための方法であって:
メソセリンに特異的に結合する標的化分子に結合される前記エフェクター分子を含んで成るキメラ分子を供給し;そして
前記腫瘍と、腫瘍細胞に特異的に結合する前記キメラ分子とを接触せしめることを含んで成る方法。
【請求項2】
前記標的化分子がメソセリンに対する抗体である請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項3】
前記腫瘍が卵巣腫瘍細胞である請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項4】
前記エフェクター分子が、細胞毒素、ラベル、放射性核種、薬物、リポソーム、リガンド及び抗体から成る群から選択される請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項5】
前記エフェクター分子が、プソイドモナス外毒素である請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項6】
OVCAR-3及びHeLa細胞の細胞表面に結合される40KDのポリペプチド(K1抗原)により十分に免疫吸着された、免疫原としての配列番号2の十分な長さのポリペプチド(“メソセリン”)に対して生ぜしめられた抗血清に結合する、配列番号2のポリペプチド配列からの少なくとも10個の隣接したアミノ酸のポリペプチド抗原を担持する腫瘍細胞の増殖を減じるための方法であって、
メソセリンを特異的に結合する標的化分子;及び
細胞毒素、放射性核種、リガンド及び抗体から成る群から選択されたエフェクター分子を含んで成る、腫瘍細胞に特異的に結合するキメラ分子と、前記腫瘍とを接触せしめることを含んで成る方法。
【請求項7】
前記細胞毒素が、プソイドモナス外毒素、リシン、アブリン、及びジフテリア毒素から成る群から選択される請求の範囲第6項記載の方法。
【請求項8】
前記腫瘍細胞増殖がヒトにおける腫瘍細胞増殖である請求の範囲第6項記載の方法。
【請求項9】
前記接触が、前記キメラ分子を、ヒト静脈内に、体腔中に、又は管腔もしくは器官中に投与することを含んで成る請求の範囲第6項記載の方法。
【請求項10】
OVCAR-3及びHeLa細胞の細胞表面に結合される40KDのポリペプチド(K1抗原)により十分に免疫吸着された、免疫原としての配列番号2の十分な長さのポリペプチド(“メソセリン”)に対して生ぜしめられた抗血清に結合する、配列番号2のポリペプチド配列からの少なくとも10個の隣接したアミノ酸のポリペプチドを担持する腫瘍の存在又は不在を検出するための方法であって:
メソセリンを特異的に結合する標的化分子;及び検出可能ラベルを含んで成るキメラ分子と前記腫瘍とを接触せしめ;そして前記ラベルの存在又は不在を検出することを含んで成る方法。
【請求項11】
医薬的に許容されるキャリヤー、及び OVCAR-3及びHeLa細胞の細胞表面に結合される40KDのポリペプチド(K1抗原)により十分に免疫吸着された、免疫原としての配列番号2の十分な長さのポリペプチドに対して生ぜしめられた抗血清に結合する、配列番号2のポリペプチド配列からの少なくとも10個の隣接したアミノ酸のポリペプチドに特異的に結合する標的化分子の治療的有効量を含んで成る薬理学的組成物。
【請求項12】
前記標的化分子が、キメラ分子を形成するためにエフェクター分子にさらに連結される請求の範囲第11項記載の薬理学的組成物。
【請求項13】
前記エフェクター分子が、細胞毒素、ラベル、放射性核種、薬物、リポソーム、リガンド及び抗体から成る群から選択される請求の範囲第12項記載の組成物。
【請求項14】
前記キメラ分子が、一本鎖融合タンパク質である請求の範囲第12項記載の組成物。
【請求項15】
OVCAR-3及びHeLa細胞の細胞表面に結合される40KDのポリペプチド(K1抗原)により十分に免疫吸着された、免疫原としての配列番号2の十分な長さのポリペプチド(“メソセリン”)に対して生ぜしめられた抗血清に結合する、配列番号2のポリペプチド配列からの少なくとも10個の隣接したアミノ酸のポリペプチドに対して特異的な核酸又は抗体を有する容器、及びメソセリンを担持する腫瘍細胞の検出のための使用説明書を含んで成る、メソセリンの検出のためのキット。
【請求項16】
メソセリン発現又は活性の阻害のための方法であって、配列番号1に示される核酸配列に対して特異的な阻害性核酸と、メソセリン担持の細胞とを接触せしめることを含んで成る方法。
【請求項17】
メソセリン由来の抗原を患者に投与することを含んで成る、中皮腫又は卵巣腫瘍の阻害又は予防のためのワクチン。
【請求項18】
メソセリンを担持する腫瘍細胞の処理のための薬物をスクリーニングするための方法であって、配列番号1の配列に対して実質的に同一の核酸配列によりトランスフェクトされた移植腫瘍細胞を含む哺乳類を、興味ある薬物にゆだね、そして腫瘍細胞の活性をモニターすることを含んで成る方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−197439(P2007−197439A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−2808(P2007−2808)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【分割の表示】特願平9−525355の分割
【原出願日】平成9年1月3日(1997.1.3)
【出願人】(301050360)アメリカ合衆国 (2)
【Fターム(参考)】