説明

中空ガラスを補強し引掻きから保護するための組成物、対応する処理方法及びその結果の処理された中空ガラス

本発明は、水中に、(A)少なくとも1個のアミノ官能基及び/又は少なくとも1個のエポキシ官能基を有する少なくとも1つの付着促進剤と、(B)成分(A)のアミノ及び/又はエポキシ官能基と共有結合反応することが可能なポリマー系を作ることを目的とする少なくとも1つのモノマー及び/又は少なくとも1つのプレポリマーと、(C)成分(B)の化学量論量の±30mol%に相当する量で用いられる少なくとも1つの硬化剤又は架橋剤と、を含む組成物に関する。本発明によれば、成分(B)はその組成物中に、水中の固形分として表して、0.5〜5重量%の量で、特に1.5重量%の量で存在し、成分(A)は成分(B)の100重量部当たり0.2〜3重量部の量で存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空ガラスを補強しそれを引掻きに対して保護するために、成形後にそれを状態調節することに関する。
【0002】
「中空ガラス」という表現は、容器、例えばボトル、フラスコ、ポットなどを構成するために作製されたガラスを意味すると理解される。
【背景技術】
【0003】
中空ガラスを製造し且つ状態調節するための方法は、次の操作、すなわち、
・中空ガラスをおよそ700℃の温度で成形すること、
・「高温処理」と呼ばれる表面処理であって、その際の前記中空ガラスの表面温度が約500℃〜600℃である表面処理、
・前記中空ガラスを徐冷すること、
・「低温処理」と呼ばれる表面処理であって、前記中空ガラスの表面温度が約80℃〜150℃である表面処理、
を含む。
【0004】
前記成形により得られた成形中空ガラスはコンベヤー上に配置され、その後高温表面処理ステーションに移動する。この処理は、ガラスに、化学蒸着(CVD)によって約10〜20nmの厚さ以上にSnO2又はTiO2の層を適用するものである。この層には、一つには高温での接触により生じる可能性がある欠陥からガラスを保護するための働きをするという役割と、もう一つにはその後の低温表面処理のための結合プライマーの役割という二重の役割がある。
【0005】
成形され上述のように高温処理された中空ガラスは、次いで徐冷炉に移動し、そこでガラスの種類に応じて500℃〜600℃の温度で徐冷されて150℃でそこを出てから、なおもコンベヤー上にある状態で低温表面処理ステーションに送られる。その間に、中空ガラス上には、スプレーにより、使用及び取り扱いによる引掻き傷と摩擦作用からの保護のための少なくとも1つの薬剤が被着される。潤滑性を有するこの薬剤は、ワックス、例えば酸化又は非酸化ポリエチレンワックス、脂肪酸の部分エステル及び脂肪酸、そしてポリウレタン及び保護的役割で知られている他のポリマー、例えばアクリルポリマー、から一般的に選択される。
【0006】
この中空ガラスは、その後非常に多くの取り扱い操作、すなわち、パレットへの積載、輸送、パレットからの積降、ボトルやフラスコなどへの充填、蓋締め、ラベル貼り、輸送など、に付されることが意図されている。
【0007】
これらの全ての理由から、消費者が欠陥のない容器を受け取ることができるためには、中空ガラスの成形後にそれを補強し且つ保護するという二重の役割を有する状態調節を中空ガラスに施すことが求められ、
・補強は、前記ガラスの固有の機械的強度を増加させること、すなわち、ガラスの破壊応力を増加させてそれが内圧に耐えるようにし、そして引掻きに関係する新たな欠陥の発生を制限するとともにその実用寿命中に必然的に起こる機械的強度の喪失を制限することを目標としており、
・保護は、ガラスの表面を潤滑性にして、摩耗と引掻き傷の発生を制限し、その結果として新たな表面欠陥の発生を制限することを目標としている。
【0008】
ガラスを包装する際の機械的特性は、特に、成形に関連する、より一般的には生産サイクルにおけるあらゆる高温での接触に関連する、表面欠陥により制限される。残念なことに、これらの欠陥は回避することができず、成形型との接触はパリソンがこの金型に入った時に既に起こっており、そして熱衝撃、冷却操作、成形型からの微量の潤滑剤などの影響下で、ガラスに応力が発生し、その表面に亀裂、バッチストーンの包有などが現われ、それらが回避することが望ましい欠陥の原因となる。
【0009】
第1の上述の表面処理(CVDによる)は、成形直後且つ徐冷炉に入る前のガラスに対して保護を提供する。第2の表面処理(ワックスなどのスプレーによる)は、第1の処理を補い、そしてこの処理後にガラスに新たな表面欠陥が発生するのを制限するために必要である。しかしながら、かかる処理がガラスを補強することはない。それらは亀裂が伝播するのを制限することによりその表面を保護するにとどまる。
【0010】
様々な補強処理が研究されてきたが、工業的に使用できることが立証されたものはない。実際には、これらの処理は、周囲温度で適用することだけができる樹脂を適用することからなるのに対し、不必要に製造ラインを複雑にしたり又は長くしたりしないように、上述の第2の表面処理の代わりに80〜150℃でガラスに対してかかる処理を実施できることが有利である。更に、かかる処理では、耐引掻性が不十分である。
【0011】
国際公開第2006/013305号パンフレットから、10〜150℃の温度で適用できることが示されている、中空ガラスの表面処理のための組成物も知られている。かかる組成物は、実際には、主として表面欠陥の修復のみを行うものである。
【0012】
成形後に、中空ガラスが補強処理を受け、またその都度表面保護処理を受けたか又は任意の表面保護処理を受けたかどうかによって、中空ガラスの実用寿命を通じて機械的強度が変化するのを概略的に示す添付図面の図1を参照することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
よって、直面する課題は、80〜150℃の高温ガラス上で有利に被着を行うことができる、補強を行い且つ同時に表面保護を行う中空ガラスの処理を見つけることである。更に、CVD処理を排除できること、言い換えれば、提示する処理により、既に発生している、すなわち成形中及び徐冷中に発生している亀裂及び欠陥を同時に修復できることが有利である。
【0014】
本発明の目的は、これらの課題の解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
よって、本発明の1つの対象は、第1に、中空ガラスを補強し引掻き傷からそれを保護するという二重の役割を有する薬剤として、少なくとも1つのモノマー及び/又は少なくとも1つのプレポリマーから形成されるポリマー系と共有結合反応した少なくとも1個のアミン官能基及び/又は少なくとも1個のエポキシ官能基を含む少なくとも1つのガラス付着促進剤と、前記モノマー及び/又はプレポリマーの化学量論量に相当する又は実質的に相当する量で用いられる少なくとも1つの硬化剤又は架橋剤とを使用することである。
【0016】
本発明のもう1つの対象は、中空ガラスの表面を処理するための組成物であって、その組成物は、水中に、
(A)少なくとも1個のアミン官能基及び/又は少なくとも1個のエポキシ官能基を有する少なくとも1つの付着促進剤、
(B)前記成分(A)のアミン官能基及び/又はエポキシ官能基と共有結合反応することが可能なポリマー系を形成することを目的とする少なくとも1つのモノマー及び/又は少なくとも1つのプレポリマー、
(C)前記成分(B)の化学量論量の±30mol%に相当する量で用いられる少なくとも1つの硬化剤又は架橋剤、
を含み、
前記成分(B)は、当該組成物中に、水中の固形分として表して0.5〜5重量%の量で、特に1.5重量%の量で存在し、
前記成分(A)は、前記成分(B)の100重量部当たり0.2〜3重量部の量で存在することを特徴とする組成物である。
【0017】
成分(A)の付着促進剤又はカップリング剤について説明する。
成分(A)は、有利には、成分(B)の100重量部当たり0.5〜2重量部の量で存在する。
【0018】
それは特に、アミノシラン、アミノジシラン、エポキシシラン、及び少なくとも1個の−NH−及び/又は−NH2官能基を有する有機金属付着促進剤から選択される。
【0019】
特に、成分(A)は下式(I)及び(II)、すなわち、
【0020】
【化1】

【0021】
(式中、
1はメトキシ又はエトキシを表し、
2はR1又はメチルを表し、
3は、少なくとも1個の−NH−及び/又は−NH2官能基、特に1〜3個の−NH−及び/又は−NH2官能基、又はエポキシ官能基を含む、一価炭化水素基を表し、
4は、少なくとも1個の−NH−及び/又は−NH2官能基、特に1〜3個の−NH−及び/又は−NH2官能基を含む、二価炭化水素基を表す)
のシランから選択される。
【0022】
3が少なくとも1個のアミノ官能基を有する場合には、それはアルキル又はアラルキル基により構成されてよく、そのアリール基は、必要に応じて、ビニル、シクロアルキルアルキル又はアリールにより置換されている。R3がエポキシ(グリシドキシ)官能基を有する場合には、それはアルキル基により構成されてよく、エポキシ基はそのアルキル基の2個の末端炭素にあり、あるいはそれはシクロアルキルアルキル基により構成されてよく、エポキシ基はそのシクロアルキル基の2個の隣接炭素にあり、且つそのアルキル部分の間には酸素原子が挟まれている。
【0023】
4は、とりわけ、二価アルキレン残基である。
【0024】
成分(A)は、特に、
・アミノシラン類、例えば、3−(トリエトキシシリル)プロピルアミン、3−(トリメトキシシリル)プロピルアミン、3−(ジエトキシメチルシリル)プロピルアミン、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アニリン、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N−[3−(ジメトキシメチルシリル)−2−メチルプロピル]エチレンジアミン、N−(2−アミノエチル)−N’−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−N’−(ビニルベンジル)エチレンジアミン及びその塩酸塩、[3−(トリエトキシシリル)プロピル]尿素、m−アミノフェニルトリメトキシシランなど、
・アミノジシラン類、例えば、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンなど、
・エポキシシラン類、例えば、[3−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピル]トリメトキシシラン、[3−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピル]ジメトキシメチルシラン、[3−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピル]ジエトキシメチルシラン、[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル]トリメトキシシランなど、
から選択することができる。
【0025】
アミノ(ジ)シラン及びエポキシシランは前記組成物に加水分解状態で導入されることが好ましい。
【0026】
成分(A)は、アミノジルコアルミネートタイプのカップリング剤、例えばジルコニウム,β−アラニンクロロヒドロキシプロピレングリコールアルミニウム錯体など、から選択してもよい。下式(III)により表され、McGeanよりCAVCO GLAS(商標) APGという商品名で販売されている、溶媒中に20〜40重量%のアミノジルコアルミネート錯体を挙げることができる(式中のRはアミノ官能基を有する炭化水素基である)。
【0027】
【化2】

【0028】
他の金属付着促進剤としては、ChartwellよりChartwell B515.5W及びChartwell B516.5Wという名前で販売されている、それぞれ1個のアミノ基及び2個のアミノ基を有する、カップリング剤も挙げることもできる。
【0029】
成分(B)、すなわち前記ポリマー系のモノマー及び/又はプレポリマーについて説明する。
成分(B)は、とりわけ、ビスフェノールAの誘導体、例えば下式(IV)、
【0030】
【化3】

【0031】
(式中のnは0〜5である)
により表されるもの、ビスフェノールFとエポキシノボラックの誘導体、例えば下式(V)、
【0032】
【化4】

【0033】
(式中のnは繰り返し単位の数であり、0〜2の平均値を有する)
により表されるもの、などから選択される。
【0034】
成分(B)は、任意のタイプのエポキシドエマルジョンであってもよい。成分(B)として用いるエポキシモノマー又はプレポリマーの長さの増加とともに、耐引掻性が増加することが認められている。
【0035】
成分(C)、すなわち前記ポリマー系の硬化剤又は架橋剤について説明する。
成分(C)は、有利には、成分(B)の化学量論量に相当する又は成分(B)の化学量論量の±10mol%に相当する量で用いられる。それは特に、
・下式、
【0036】
【化5】

【0037】
により表されるジシアンジアミド、
・メラミン(しかしながら、これは260℃でのガラスの焼成を必要としよう)、
・水溶性脂肪族アミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどであり、これらは食品品質のものであるが、ガラスへの前記組成物の被着が80℃より高い温度で実施される場合には機能しない、
・食品品質のものではないポリエーテルアミン、例えば、下式(VI)及び(VII)、
【0038】
【化6】

【0039】
により表される、それぞれJeffamine(商標)D及びEDシリーズのものなど、
から選択することができる。
【0040】
DシリーズのJeffamineとしては、Jeffamine D−230(x=2〜3)、D−400(x=5〜6)、D−2000(x=平均して33)、D−4000(x=平均して68)を挙げることができ、EDシリーズのJeffamineとしては、Jeffamine HK−511(XTJ−511)(b=2.0、a+c=2.0)、XTJ−500(ED−600)(b=9.0、a+c=3.6)、XTJ−502(ED−2003)(b=38.7、a+c=6.0)を挙げることができる。
【0041】
成分(C)がジシアンジアミドである場合には、それは特に、成分(B)の5〜10重量部、特に6〜7重量部の量で存在する。
【0042】
ガラスを200℃で4分間焼成する場合には、以下で説明する「K54」触媒とともに用いられるジシアンジアミドが好ましい。
【0043】
成分(D)の触媒について説明する。
成分(D)は、有利には、とりわけ、成分(B)の100重量部当たり0.1〜2重量部、特に0.5重量部の量で存在する。それは特に、
・第三級アミン、例えば2,4,6−トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール(Air ProductsのAncamine K54)、2,4,6−トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールの2−エチルヘキサン酸塩(同社のK61B)など、
・イミダゾール、例えば、それぞれ下式、
【0044】
【化7】

【0045】
の、Imicure(商標) AMI−2、Curezol(商標) 2E4MZ、Curezol(商標) 1B2MZ、Curezol(商標) 2PZ、Curezol(商標) 2P4MZ、Curezol(商標) C17Zという名称で販売されているものなど、
から選択することができる。
【0046】
成分(E)、すなわち、特に水性澱粉及びカゼイン接着剤による、ラベルの接着を向上させる薬剤について説明する。
任意選択の成分(E)は、有利には、全組成物中における量が、水中の固形分として表して0.02〜0.5重量%、特に0.05〜0.2重量%であることができる。
【0047】
それは特に、ドデシル硫酸ナトリウムでよく、これは特に成分(B)として界面活性剤の一部(例えば半分)を除去したHexionのEpirezエポキシドエマルジョンを使用する場合に、効果的である。
【0048】
次に、方法及び得られる中空ガラスについて説明する。
本発明は、中空ガラスを補強するため及びそれを引掻きから保護するために中空ガラスの表面を処理するための方法にも関し、この方法は、上記の組成物の薄膜を処理すべきガラスの部分に適用すること、及び前記ポリマー系を作り熱の作用下で水性キャリアを除去しながら前記付着促進剤と反応させて、ガラス上に補強及び引掻き傷防止用の薬剤の、不連続であってもよい層を残すことを特徴とする。
【0049】
有利には、前記組成物の薄膜を80〜200℃の温度でスプレーにより適用することが可能である。
【0050】
本発明は、中空ガラスを製造し且つ状態調節するための方法にも関し、この方法は、次の操作、すなわち、
(a)中空ガラスを700〜800℃の温度で成形する操作、
(b)中空ガラスを徐冷炉で、ガラスの種類に応じ500℃〜600℃の温度で徐冷する操作、
(c)上記の方法による表面処理操作、
を実施し、成形した中空ガラスを連続的に搬送し、徐冷炉を通過させてから、前記表面処理(c)を施すステーションへ搬送することを特徴とする。
【0051】
第1の特に好ましい実施形態によれば、中空ガラスは、成形工程から直接徐冷工程に送られる。こうして、CVDによりSnO2又はTiO2を適用する上述の工程が省かれ、非常に良好な機械的強度を有しなおも許容可能である耐引掻性を有する中空ガラスが得られる。
【0052】
第2の実施形態によれば、中空ガラスは、徐冷工程に送られる前にCVDによりSnO2又はTiO2が適用される表面処理工程に送られる。
【0053】
本発明はまた、上記の方法によって上記の組成物により処理された中空ガラスにも関する。
【0054】
特に、ガラス上に被着された硬化組成物は、平均厚さが100nm未満、特に50nm未満、好ましくは10nm未満であることができる。しかしながら、組成物の平均厚さは100nmより大きくてもよい。
【0055】
最後に、本発明は、中空ガラスを補強するため及びそれを引掻きから保護するために上記の組成物の使用することにも関する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】中空ガラスの実用寿命を通じての機械的強度の変化を概略的に示す図である。
【図2】内圧分布に対する本発明による補強処理の効果を示す図である。
【図3】耐内圧性に対する本発明による補強処理の効果を示す図である。
【図4a】例5の試験結果を圧力の平均について示す図である。
【図4b】例5の試験結果を内圧の関数としての累積破壊率について示す図である。
【図4c】例5の試験結果を低い値での破壊率について示す図である。
【図4d】例5の試験結果を破壊原因箇所の分布について示す図である。
【実施例】
【0057】
以下の例により本発明を、その範囲を限定することなしに、説明する。これらの例において、部数及び百分率は、特に断りのない限り、重量によるものである。
【0058】
〔例1〜3〕
次の3つの配合物を調製した。
【0059】
【表1】

【0060】
これらの配合物において、
・シランA1100は3−(トリエトキシシリル)プロピルアミンであり、
・シランA187は[3−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピル]トリメトキシシランであり、
・エポキシ樹脂1は、HexionよりEPIREZ 3510W60という商標で販売されているエポキシ樹脂であり、これはビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)の水性エマルジョンであって、その平均モル質量は約370g/molであり、上記の式(III)により表され(式中のn=0.1)、
・エポキシ樹脂2は、HexionよりEPIREZ 3520WY55という商標で販売されているエポキシ樹脂であり、これはビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)の水性エマルジョンであって、その平均モル質量は約910g/molであり、上記の式(III)により表され(式中のn=2)、
・触媒は、Ancamine K54という名称で販売されている2,4,6−トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールである。
【0061】
コーティングを、スプレーにより、事前にビッカースチップにより50Nで20秒間圧痕を付けておいた寸法70×70mm、厚さ3.85mmの平板ガラス上に被着させる。これらの試料は被着前にオーブンで120℃にした。次いで、コーティングした試料をオーブン内で220℃で5分間硬化させた。平板ガラスの機械的強度を、三点曲げ試験によりクロスヘッド速度5mm/秒で試験する。「対照」は、未処理の圧痕付きガラスのケースに相当する。
【0062】
表1に記載した破壊応力は、試験した10枚の平板ガラスの平均値に相当する。
【表2】

【0063】
〔例4〕
この例は、中空ガラスから作られた物品の総合的な機械的強度に対する本発明の組成物の効果を説明する。
【0064】
工業ラインで300gのブルゴーニュボトルに対してスプレー試験を実施した。スプレー後に、処理したボトルをベルトで回収し、コーティングを架橋させるためにラインの端部の2つのオーブンに供給した。架橋を220℃(オーブンの設定値)で20分間実施した。これらの条件は、架橋欠陥を排除するため及びこの調査をスプレー条件の有効性に焦点を合わせるために、意図的に高くしている。
【0065】
試験1及び2に用いた配合物の組成は、表1に記載した例1のものである。
【0066】
スプレーパラメーターを以下の表2に記載する。
【0067】
【表3】

【0068】
対照には変性ポリエチレンワックスに基づいた低温表面処理を施した。かかる処理は被着量に関わらず補強する能力を示さない。
【0069】
1個の成形型当たり10〜12個の物品について、内圧(IP)による特性評価をその場で行った(成形型16個、試験1については成形型14個)。
【0070】
2つの試験条件下で、物品の外観は良好であり、対照と同程度である。
【0071】
内圧分布に対する本発明による補強処理の効果を図2に示す。試験2の場合において対照と比較して平均内圧の25%の増加が認められる。
【0072】
低い値(10及び12バール未満)の耐内圧性に対する本発明による補強処理の効果を図3に示す。10バール未満の物品の割合は、試験2の条件下では、対照の10%から2.1%へと変化する。10及び12バール未満の物品の数は、試験2の場合において対照と比較して5分の1に減少する。
【0073】
〔例5〕
この例は、高温最終処理を行っていない物品に対する本発明による処理による補強を説明する。
【0074】
徐冷炉の後でボトルをサンプリングし、その後本発明の例1の組成物を用いて低温スプレーにより処理し、高温最終処理トンネルは停止した。SnO2層なしで徐冷炉を通過後の機械的特性の喪失を評価するために、対照物品を高温処理して又は高温処理せずにサンプリングする。SnO2なしの物品は、高温処理トンネルのクリーニング直後にサンプリングした。処理後、ボトルを内圧試験で破壊する。破壊の原因箇所に注目し、15バール未満で壊れた総てのボトルを解析した。
【0075】
低温最終処理前にボトルを32個の成形型を1組としてサンプリングした。各処理について、5×32本のボトル、すなわち合計480本のボトルをサンプリングした。対照と見なす物品は、ラインにおいて高温で処理(SnO2)した及びポリエチレンワックスにより低温で処理した物品である。
【0076】
結果を図4に報告しており、
・図4aは圧力の平均、
・図4bは内圧の関数としての累積破壊率、
・図4cは低い値での破壊率、
・図4dは破壊原因箇所の分布(全圧力を一緒にしたもの)、
である。
【0077】
徐冷炉の出口でサンプリングしたSnO2なしの物品では、SnO2ありの物品と比較して、内圧の非常に大きな低下(約5バール)が見られる(図4a)。この結果は、高温処理トンネルと徐冷炉の出口に位置する低温最終処理ラインとの間でのSnO2層の保護的役割を実証しており、この保護効果はここで定量される。
【0078】
本発明によるコーティングの適用は平均内圧レベルを大きく増加させる(8.7バール)ため、SnO2の不存在下でのこの機械的強度の喪失を相殺するだけでなくSnO2ありの物品に相当する平均内圧レベルにあることも可能にする。
【0079】
従って、機械的強度の相対的増加を考えると、本発明によるコーティングはSnO2層の不存在下でより著しく効果的であるように思われる。
【0080】
低いレベル(12バール未満)の低下に対する効果は目覚しく、本発明による処理後にはSnO2なしの物品で55%から3%へと変化する(図4c)。
【0081】
非常に低いレベルがなくなったこと(図4b)も注目され、SnO2なしの場合の10バール未満は160のうち42の値であるのに対し、処理後の場合にはない(最低値は10.1バールである)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのモノマー及び/又は少なくとも1つのプレポリマーから形成されるポリマー系と共有結合反応した少なくとも1個のアミン官能基又は少なくとも1個のエポキシ官能基を含む少なくとも1つのガラス付着促進剤と、前記モノマー及び/又はプレポリマーの化学量論量に相当するか又は実質的に相当する量で用いられる少なくとも1つの硬化剤又は架橋剤の、中空ガラスを補強し引掻き傷から保護する二重の役割を有する薬剤としての使用。
【請求項2】
中空ガラスの表面を処理するための組成物であって、水中に、
(A)少なくとも1個のアミン官能基及び/又は少なくとも1個のエポキシ官能基を有する少なくとも1つの付着促進剤、
(B)前記成分(A)のアミン官能基及び/又はエポキシ官能基と共有結合反応することが可能なポリマー系を形成することを目的とする少なくとも1つのモノマー及び/又は少なくとも1つのプレポリマー、
(C)前記成分(B)の化学量論量の±30mol%に相当する量で用いられる少なくとも1つの硬化剤又は架橋剤、
を含んでおり、
前記成分(B)が当該組成物中に、水中の固形分として表して、0.5〜5重量%の量で、特に1.5重量%の量で存在し、
前記成分(A)が前記成分(B)の100重量部当たり0.2〜3重量部の量で存在することを特徴とする、中空ガラス表面を処理するための組成物。
【請求項3】
前記成分(A)が前記成分(B)の100重量部当たり0.5〜2重量部の量で存在することを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記成分(A)が、アミノシラン、アミノジシラン、エポキシシラン及び少なくとも1個の−NH2及び/又は−NH−官能基を有する有機金属付着促進剤から選択されることを特徴とする、請求項2又は3のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項5】
前記成分(A)が下式(I)及び(II)、すなわち、
【化1】

(式中、
・R1はメトキシ又はエトキシを表し、
・R2はR1又はメチルを表し、
・R3は、少なくとも1個の−NH−及び/又は−NH2官能基、特に1〜3個の−NH−及び/又は−NH2官能基、又はエポキシ官能基を含む、一価炭化水素残基を表し、
・R4は、少なくとも1個の−NH−及び/又は−NH2官能基、特に1〜3個の−NH−及び/又は−NH2官能基を含む、二価炭化水素残基を表す)
の化合物から選択され、
前記成分(A)が、特に、
・アミノシラン、例えば3−(トリエトキシシリル)プロピルアミン、3−(トリメトキシシリル)プロピルアミン、3−(ジエトキシメチルシリル)プロピルアミン、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アニリン、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N−[3−(ジメトキシメチルシリル)−2−メチルプロピル]エチレンジアミン、N−(2−アミノエチル)−N’−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−N’−(ビニルベンジル)エチレンジアミン、[3−(トリエトキシシリル)プロピル]尿素など、
・アミノジシラン、例えばビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンなど、
・エポキシシラン、例えば[3−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピル]トリメトキシシラン、[3−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピル]ジメトキシメチルシラン、[3−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピル]ジエトキシメチルシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランなど、
から選択されることを特徴とする、請求項2〜4の一つに記載の組成物。
【請求項6】
前記成分(A)がアミノジルコアルミネートタイプのカップリング剤、例えばジルコニウム,β−アラニンクロロヒドロキシプロピレングリコールアルミニウム錯体など、から選択されることを特徴とする、請求項2〜4の一つに記載の組成物。
【請求項7】
前記成分(B)が、ビスフェノールAの誘導体、例えば下式(IV)、
【化2】

(式中のnは0〜5である)
により表されるものなど、ビスフェノールFとエポキシノボラックの誘導体、例えば下式(V)、
【化3】

(式中のnは繰り返し単位の数であり、0〜2の平均値を有する)
により表されるものなど、及びエポキシドエマルジョンから選択されることを特徴とする、請求項2〜6の一つに記載の組成物。
【請求項8】
前記成分(C)が成分(B)の化学量論量に相当する又は成分(B)の化学量論量の±10mol%に相当する量で用いられることを特徴とする、請求項2〜7の一つに記載の組成物。
【請求項9】
前記成分(C)が
・ジシアンジアミド、
・メラミン、
・水溶性脂肪族アミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなど、
・ポリエーテルアミン
から選択されることを特徴とする、請求項2〜8の一つに記載の組成物。
【請求項10】
前記成分(C)がジシアンジアミドであり、とりわけ前記成分(B)の5〜10重量部、特に6〜7重量部の量で存在する、請求項2〜9の一つに記載の組成物。
【請求項11】
(D)前記ポリマー系を硬化又は架橋させるための少なくとも1つの触媒をも、とりわけ前記成分(B)の100重量部当たり0.1〜2重量部の量で、含むことを特徴とする、請求項2〜10の一つに記載の組成物。
【請求項12】
前記成分(D)が、
・第三級アミン、例えば2,4,6−トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールの2−エチルヘキサン酸塩など、及び
・イミダゾール、
から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
(E)中空ガラスへのラベルのその後の接着を促進する少なくとも1つの薬剤をも、とりわけ全組成物中に、水中の固形分として表して、0.02〜0.5重量%、特に0.05〜0.2重量%の量で、含むことを特徴とする、請求項2〜12のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項14】
前記成分(E)がドデシル硫酸ナトリウムであることを特徴とする、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
中空ガラスを補強するため及びそれを引掻きから保護するために中空ガラスの表面を処理するための方法であって、請求項1〜14の一つに記載の組成物の薄膜を、前記ガラスの処理すべき部分に適用すること、及び前記ポリマー系を作り、熱の作用下で水性キャリアを除去しながら前記付着促進剤と反応させて、前記ガラス上に補強及び引掻き傷防止用薬剤の、不連続であってもよい層を残すことを特徴とする、中空ガラス表面の処理方法。
【請求項16】
前記組成物の薄膜を80〜200℃の温度でスプレーにより適用することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
次の操作、すなわち、
(a)中空ガラスを700〜800℃の温度で成形する操作、
(b)中空ガラスを徐冷炉で、ガラスの種類に応じ500℃〜600℃の温度で徐冷する操作、
(c)請求項15と16のいずれかに記載の方法による表面処理操作、
を実施し、成形した中空ガラスを連続的に搬送し、徐冷炉を通過させてから、前記表面処理(c)を施すステーションへ搬送することを特徴とする、中空ガラスを製造及び状態調節するための方法。
【請求項18】
前記中空ガラスを前記成形工程から直接前記徐冷工程に送ることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記中空ガラスを前記徐冷工程に送る前にCVDによりSnO2又はTiO2を適用する表面処理の工程に送ることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
請求項15と16のいずれかに記載の方法により、請求項2〜14の一つに記載の組成物により処理された中空ガラス。
【請求項21】
前記ガラス上に被着された硬化組成物が100nm未満、特に50nm未満、好ましくは10nm未満の平均厚さを有することを特徴とする、請求項20に記載の中空ガラス。
【請求項22】
中空ガラスを補強するため及びそれを引掻きから保護することへの、請求項2〜14の一つに記載の組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【公表番号】特表2011−527283(P2011−527283A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517206(P2011−517206)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051349
【国際公開番号】WO2010/004209
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(593099355)
【Fターム(参考)】