説明

中空成形方法および中空成形装置

【課題】 従来の中空成形条件設定方法は、トータルの情報データを入力する煩わしさがあり、より簡素化した情報データの入力方法が望まれていた。
【解決手段】 成形用の原料樹脂情報、1成形サイクルの時間情報、成形すべき製品の形状および重量の情報、金型のばり切断用刃の刃厚情報および該ばり切断用刃によって切断されるばり全ての長さ情報を中空成形装置の成形条件設定装置20へ入力し、押出機1における溶融した前記樹脂の送り用スクリュの回転数、型締装置5の型締力、パリソンにエアを吹き込む打込装置4の打込ノズル9による打込力および中空成形装置の所定箇所の設定温度のそれぞれのデータを算出して、これら算出データを用いて中空成形する構成とした。これにより、設定条件の確実かつ簡素化した入力・演算ができる中空成形方法および中空成形装置を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空成形方法および中空成形装置、特に中空成形条件の設定方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中空成形機を用いた中空成形方法において、高品質の中空成形品を生みだす最も大切な作業に中空成形条件の設定がある。中空成形条件は、一般に、成形される中空成形品の形状・寸法・重量、使用する原料樹脂や使用する中空成形機の機種・形式などによって大きく異なってくる。さらに、この中空成形条件には、中空成形機の押出機における溶融樹脂送り用のスクリュの回転数・温度条件などの押出条件、型締装置に関する型締力などの型締条件、パリソンにエアを吹き込む打込装置に関する打込ノズルの打込力などの打込条件など多くの制御パラメータが複雑に関係し合っている。
【0003】
従来、中空成形機における中空成形条件の設定は、熟練技術者の豊富な経験と判断に頼って行われているが、設定に際し試行錯誤を繰り返しながらの長い設定時間を要するとともに、試行時には原料樹脂やエネルギの損失を伴っている。そこで、設定する必要のある中空成形条件の一部の設定方法が実行されていた(たとえば、特許文献1ないし7参照)。
【0004】
特許文献1および特許文献2に記載の発明は、パリソンの長さ制御方法であって、いずれもパリソン長さの最適条件を設定した後にそのパリソン長さの最適条件を維持・制御するものである。
【0005】
特許文献3および特許文献4に記載の発明は、パリソンの肉厚制御方法である。特許文献3に記載の発明は、パリソン肉厚の最適条件を設定した後にそのパリソン肉厚を作動信号等で制御するものであり、特許文献4に記載の発明は、成形される中空成形品の形状・寸法よりパリソンプロファイルを作成してパリソン肉厚を制御するものである。
【0006】
特許文献5に記載の発明は、パリソンの肉厚・長さ制御方法であって、パリソン肉厚・長さを設定した後にそれら中空成形方法をダイスで制御するものである。
【0007】
特許文献6に記載の発明は、エア吹込ノズルの打込高さ設定方法であって、成形される中空成形品の口径から打込力を求めトルク値から打込高さを制御するものである。特許文献7は、成形サイクル時間制御方法であって、設定された成形サイクル時間より吹込時間と放出時間を求めるものである。
【0008】
特許文献4に記載の発明を除いた上記特許文献は、各々のブロー成形条件を設定した後に、設定したブロー成形条件を制御することで、使用する原料樹脂や使用する中空成形機の機種・形式などに合わせて良好な中空成形品の品質を得るものである。一方、特許文献4に記載の発明は、ブロー成形される中空成形品の外径及び肉厚寸法を入力して、パリソンの肉厚を制御するものであり、中空成形品の外径および肉厚寸法ならびにパリソン肉厚の制御と比較的単純なものに好適に適用されるものである。
【0009】
しかしながら、中空成形において、良好な品質の中空成形品を得るための最適なブロー成形条件を導き出すため、ブロー成形条件をトータルで把握し、複数のブロー成形条件を変更・調整しながら最適なブロー成形条件を求める試行を繰り返すことが必要となるものである。
【0010】
そこで、出願人は、特許文献8に示すように、ブロー成形される中空成形品の形状・寸法・重量・層構成などの中空成形品データ、その中空成形品に使用する原料樹脂の種類・グレードや物理的性質などの原料樹脂データ、ブロー成形に使用する中空成形機の機種・形式やダイスの温度条件などの中空成形機データ、ブロー成形に使用する成形金型の温度条件などの成形金型データ等の諸データをコンピュータに入力し、この入力した諸データに基づき必要に応じて演算し、諸データに適合する最適なブロー成形条件を算出し、これら条件をコンピュータから客先仕様対応しやすいシーケンス制御成形機のシーケンス制御機器に再入力する方法を提案した。すなわち、原料樹脂情報、押出機情報、吹込情報、金型情報、設定演算式の知識情報などの諸情報をデータベースとして備えたコンピュータによるブロー成形条件の設定する方法を提案した。
【0011】
【特許文献1】特開平6−8310号公報
【特許文献2】特開2000−153549号公報
【特許文献3】特開平3−262606号公報
【特許文献4】特開平7−227900号公報
【特許文献5】特開平8−230021号公報
【特許文献6】特開平7−227902号公報
【特許文献7】特開平7−227899号公報
【特許文献8】特開2006−205417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献8の方法では、トータルの情報データをコンピュータに入力する煩わしさがあり、設定条件の確実性を維持しつつより簡素化した情報データの入力が望まれていた。さらに、これら情報データを演算し算出したコンピュータから、シーケンス制御成形機のシーケンス制御機器に再入力する煩わしさがあった。
【0013】
本発明は、このような従来の構成が有していた問題を解決しようとするものであり、設定条件の確実かつ簡素化した入力・演算ができる中空成形方法および中空成形装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記目的を達成するために、成形用の原料樹脂情報、1成形サイクルの時間情報、成形すべき製品の形状および重量の情報、金型のばり切断用刃の刃厚情報および該ばり切断用刃によって切断されるばり全ての長さ情報を中空成形装置の成形条件設定装置へ入力して、押出機における溶融した前記樹脂の送り用スクリュの回転数、型締装置の型締力、パリソンにエアを吹き込む打込装置の打込ノズルによる打込力および中空成形装置の所定箇所の設定温度のそれぞれのデータを算出し、これら算出データを用いて中空成形するものである。
【0015】
第2の課題解決手段は、成形用の原料樹脂情報、1成形サイクルの時間情報、成形すべき製品の形状および重量の情報、金型のばり切断用刃の刃厚情報および該ばり切断用刃によって切断されるばり全ての長さ情報を入力する成形条件設定装置と、押出機における溶融した前記樹脂の送り用スクリュの回転数、型締装置の型締力、パリソンにエアを吹き込む打込装置の打込ノズルによる打込力および中空成形装置の所定箇所の設定温度のそれぞれのデータを算出する演算装置を具備した中空成形装置である。
【0016】
上記第1の課題解決手段の作用は、次の通りである。すなわち、少なくとも成形用の原料樹脂情報、1成形サイクルの時間情報、成形すべき製品の形状および重量の情報、金型のばり切断用刃の刃厚情報および該ばり切断用刃によって切断されるばり全ての長さ情報を中空成形装置の成形条件設定装置へ入力し、押出機における溶融した前記樹脂の送り用スクリュの回転数、型締装置の型締力、パリソンにエアを吹き込む打込装置の打込ノズルによる打込力および中空成形装置の所定箇所の設定温度のそれぞれのデータを算出して、これら算出データを用いて中空成形することができる。したがって、設定条件の入力項目を少なくしてそれら入力の確実かつ簡素化を達成でき、しかも、成形条件設定装置が中空成形装置内にあるので、中空成形装置の制御装置への演算結果の再入力という工程も排除することができる。
【0017】
上記第2の課題解決手段の作用は、少なくとも成形用の原料樹脂情報、1成形サイクルの時間情報、成形すべき製品の形状および重量の情報、金型のばり切断用刃の刃厚情報および該ばり切断用刃によって切断されるばり全ての長さ情報を中空成形装置の成形条件設定装置へ入力して、押出機における溶融した前記樹脂の送り用スクリュの回転数、型締装置の型締力、パリソンにエアを吹き込む打込装置の打込ノズルによる打込力および中空成形装置の所定箇所の設定温度のそれぞれのデータを算出し、これら算出データを用いて中空成形することができる。したがって、設定条件の入力項目を少なくしてそれら入力の確実かつ簡素化を達成でき、しかも、中空成形装置自体が成形条件設定装置を備えているので、中空成形装置の制御装置への演算結果の再入力という工程も排除することができるという効果を発揮する。
【発明の効果】
【0018】
上述したように本発明の中空成形方法よれば、設定条件を少なくしてそれらの確実かつ簡素化した入力・演算ができる中空成形方法および中空成形装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図1ないし図9に基づいて説明する。
【0020】
本発明の実施の形態に係る中空成形装置は、図1および図2に示すように、成形するための作動部として、樹脂組成物を溶融して押し出す押出機1、押出機先端にあってパリソンを押し出すクロスヘッド2、その下方の図示を省略したパリソン切断装置、成形金型3、打込装置4、型締装置5、型締移動装置6および成形品取出装置7を具備している。
【0021】
押出機1は、樹脂組成物の投入用ホッパ8と、押出機内部に樹脂組成物の移送・混練・溶融・吐出を行うためのスクリュ(図示略)を備えている。クロスヘッド2は2頭用のものであり、スクリュによって押し出された原料樹脂を分岐するヘッド2a、ヘッド2aから分岐した樹脂を下流させるダイ2b、ダイ2b下端のダイとコアとからなるリップ2cを具備している。押出機1にて溶融した樹脂組成物は、クロスヘッド2内を流れて、リップ2cから筒状パリソンを垂下させるようになっている。
【0022】
図示を省略した前記パリソン切断装置は、クロスヘッド2のリップ2cから垂下する筒状パリソンの上端部を切断するものであり、電熱カッタを有するカッタホルダを備えている。
【0023】
成形金型3は、図2に示すように、一対の割型3a,3bからなり、これら割型が筒状パリソンを挿入させて中空成形品Pを成形するため、図3に示すように左右2個のキャビティ3cを形成している。割型3a,3bのそれぞれのキャビティの対向上縁に、図4に示すように、パリソンの上ばりを食いちぎるための上向きのテーパを持つ口金3d、3eを設けている。
【0024】
割型3a,3bは、図1に示した成形後の口部を有する有底筒状製品Pの筒状部P1の上端から口部P2の先端に至る肩部分のばりを切断するための肩刃3fと、製品Pの底部分のばりを切断するための底刃3gと、取手P3のばりを切断するための取手刃3hを設けている。図3中、3カ所の窪み3iは、樹脂の逃げ部を示す。
【0025】
成形金型3は、付帯する電動機6aを備えた型締移動装置6によって、型締装置5と一体的に、2頭用クロスヘッド2の直下位置および打込装置4の左右の吹込ノズル9,9の直下位置の間にて、水平方向に交互に往復動できるようになっている。
【0026】
打込装置4は、成形金型3の左右のキャビティ3cそれぞれの上方にて、パリソン内に挿入して圧縮エアを吹込む左右の打込ノズル9およびこれらノズルを上昇・下降させる打込ノズル駆動装置10を備えている。打込ノズル駆動装置10は、図示を省略した制御部に接続された可変速タイプの吹込装置駆動用の電動機を具備している。打込ノズル9の先端寄りの上部に、図4に示すように、割型3a,3bの口金3d,3eと協同してパリソンの上ばりを挟んで剪断的に切断するためのカッティングスリーブ9aを形成している。
【0027】
型締装置5は、割型3a,3bの開閉および型締を駆動するものであり、これら割型をそれぞれ取り付けて移動可能に所定間隔あけた前方プラテン11および後方プラテン12を、成形金型3のパーティングラインに対して接近・離反方向に同調して移動させるようになっている。図1,2中、符号13は前方プラテン11を取り付けた前方支持プレートである。
【0028】
成形品取出装置7の取出スライドユニット7aは、型開き中に製品Pを把持し、成形装置外に搬送するものである。
【0029】
成形条件設定装置20は、各種中空成形条件を入力するためのものであり、安全扉30に取り付けてられている。成形条件設定装置20は、成形条件入力用の表示画面21を備えている。
【0030】
図5に示すように、原料樹脂の処理の流れに従って、押出機1,押出機を上下に揺動する装置40,パリソンの肉厚を制御するパリソンコントローラ50,クロスヘッド2,クロスヘッド2下方のパリソン切断装置60,成形金型3,型締装置5,型締移動装置6,打込装置4および成形品取出装置7の駆動制御および温度や肉厚の制御は、これら装置に電気的に接続したシーケンス制御装置70によって実行されるようになっている。さらにシーケンス制御装置70に成形条件設定装置20が電気的に接続して、成形条件設定装置20に入力された各種成形条件がシーケンス制御装置70にて演算処理されるようになっている。そして、シーケンス制御装置70は、シーケンスによって上述の各装置を制御するようになっている。
【0031】
成形条件設定装置20の表示画面21は、図7に示すような、画面構成を持ち、この成形条件簡易設定画面21aに各種成形条件が入力されるようになっている。
【0032】
その入力処理の流れを説明すると、図6に示すように、まず中空成形装置のオペレータが、原料樹脂情報を入力するステップS1、1成形サイクルの時間情報を入力するステップS2、製品の形状・重量情報を入力するステップS3、金型のばり切断用の刃厚情報を入力するステップS4および金型の切断刃によって切断されるばりの全長情報を入力するステップS5を実行する。なお、演算上必要な情報である1成形サイクル内の成形製品の取り数の情報および型締装置の台数の情報は、中空成形装置自体に固有に決まっている。
【0033】
シーケンス制御装置70は、これら情報が入力されると後述する所定式に基づき演算・算出を実行する(ステップS6)。そして、押出機1における溶融樹脂の送り用スクリュの回転数と、型締装置5の型締力と、打込装置4の打込ノズル9による打込力と、押出機1,ヘッド2,中空成形装置の所定箇所の設定温度とのそれぞれの算出データは、成形条件設定処理20の所定画面21に表示される(ステップ7)。
【0034】
溶融樹脂の送り用スクリュの回転数Rは、下記の数式1および数式2によって求まる。
【0035】
【数1】

【0036】
上記数式1において、Qは単位Kg(キログラム)/時間のスクリュの押出量、NWは単位g(グラム)のばりと製品との合計重量、Nは1成形サイクル(単位sec(秒))中の製品の取り数である。NWは、通常、製品重量に所定倍数を乗算して求まる。
【0037】
【数2】

【0038】
上記数式2において、a,b,cおよびdは原料樹脂とスクリュ自体に基づく係数、Qは上記数式1にて算出された値である。係数a,b,cおよびdは、スクリュ径、樹脂グレードやスクリュデザインにより異なるが、例として原料樹脂が高密度ポリエチレンおよびスクリュ径がφ55の場合、aは7.E−05,bは0.0036,cは1.4831,dは0.0439である。原料樹脂が低密度ポリエチレンおよびスクリュ径φ55の場合、aは9.E−06,bは−0.0003,cは1.4955,dは0.0081である。
【0039】
型締装置5の型締力は、下記の数式3,数式4および数式5によって算出される。
【0040】
【数3】

【0041】
上記数式3において、F1は単位Kgfのばり喰いきり力、Lは単位mmの肩ばり長さ、取手ばり長さおよび底ばり長さの合計値、Nは上記数式1にて定義した数、Kcは原料樹脂毎のパリソン1mmの長さ当たりの喰いきり力、tは単位mmの金型3のばり切断刃の厚さ、α1は成形条件に基づくパラメータである。
【0042】
【数4】

【0043】
上記数式4において、F2は単位Kgfのエア吹込力による必要型締力、Bは単位mmの製品の幅、Hは単位mmの製品の高さ、Nは上記数式1にて定義した製品の取り数、Pは単位Kg/cm2のエア吹込圧、α2は成形条件に基づくパラメータである。
【0044】
【数5】

【0045】
上記数式5において、Fkは単位Kgfの必要型締力、F1は数式3から算出された値、F2は数式4から算出された値である。
【0046】
打込装置4の打込ノズル9による打込力は、下記数式6によって算出される。
【0047】
【数6】

【0048】
上記数式6において、Fuは単位Kgfの必要打込力、d1は単位mmの製品口径、Nは上記数式1にて定義した数、Kuは原料樹脂毎のパリソン1mmの長さ当りのカット力、α3は成形条件に基づくパラメータである。
【0049】
【数7】

【0050】
上記数式7において、Thは単位mmのパリソンカットに必要な押込力、e,f,gは打込装置の構成部品に基づく係数、Fuは上記数式6から算出された値である。e,f,gは、例えばサーボモータ2.0KW、ボールねじリード12mmの場合、eは232.14、fは112.91、gは56.415である。
【0051】
中空成形装置の所定箇所の設定温度は、この成形装置のシーケンス制御装置70にて記録しているデータベースから条件設定した使用原料樹脂の温度設定値を呼び出して算出する。所定箇所は、押出機1の4つの加熱シリンダ1c、出口側の加熱シリンダ1cとクロスヘッド2のヘッド2aとの接続アダプタ、クロスヘッド2のヘッド2a、2個のダイ2b、2個のリップ2cの各ゾーンである。
【0052】
次に、上述の中空成形装置を使用して中空成形条件を入力して成形する方法を説明する。
【0053】
まず、オペレータは、図6のステップS1を行なう。すなわち、オペレータは、成形条件設定装置20の表示画面21において、図7に示した成形条件簡易設定の画面21aを呼び出し、原料樹脂の選択ボタンであるLDPEボタンB1,HDPEボタンB2、PPボタンB3、PETボタンB4、その他ボタンB5のうち、LDPEボタンB1を押す。ここに、LDPEは低密度ポリエチレン樹脂、HDPLは高密度ポリエチレン樹脂、PPはポリプロピレン樹脂、PETはポリエチレンテレフタレート樹脂を示す。
【0054】
ついで、オペレータは、成形サイクルボタンの横のセル画面D6に所定数値20.0secを入力して、図6のステップS2を行なう。
【0055】
オペレータは、製品の形状・重量情報の入力ステップS3を行なうべく、製品重量ボタンの横のセル画面D7に45.0g、口部外径d1ボタンの横のセル画面D8に図7中の製品Pの口部外径d1の数値28.0mm、口部内径d2ボタンの横のセル画面D9に図7中の製品Pの口部内径d2の数値25.0mm、製品高さHボタンの横のセル画面D10に図7中の製品Pの高さHの数値200.0mm、製品外径Dボタンの横のセル画面D11に図7中の製品Pの外径Dの数値80.0mmを入力する。
【0056】
オペレータは、金型の刃厚情報の入力ステップS4を行なうべく、金型刃厚ボタンの横のセル画面D12に0.4mmの数値を入力する。
【0057】
最後に、オペレータは、肩バリ長さL1ボタンの横のセル画面D13に図7中の製品Pの肩バリ長さL1の数値25.0mm、肩バリ長さL2ボタンの横のセル画面D14に図7中の製品Pの肩バリ長さL2の数値25.0mm、取手バリ長さL3ボタンBの横のセル画面D15に図7中の製品Pの取手バリ長さL3の数値ゼロ、底バリ長さL4ボタンの横セルの画面D16に図7中の製品Pの底バリ長さL4の数値30.0mmを入力する。これにより、図6の切断ばりの全長情報入力ステップS5が実行された。なお、取手バリ長さ13の数値ゼロは、図1の製品Pとは異なり、取手がない製品を意味する。
【0058】
オペレータが、これらステップS1ないし5を実行した後、図7の表示画面21aにて簡易条件算出ボタンB6を押すと、図6のステップS6が実行される。押出機1における溶融樹脂の送り用スクリュの回転数はセル画面D17に、型締装置5の型締力がセル画面D18に、打込装置4の打込ノズル9による打込力言い換えれば打込押込量がセル画面D19に、押出機1の加熱シリンダ1cの設定温度Cがセル画面D20に、アダプタの設定温度Aおよびクロスヘッド2のヘッド2aの設定温度Hがセル画面D21に,クロスヘッド2のダイ2bの設定温度がDセル画面D22に、クロスヘッド2のリップ2cの設定温度Lがセル画面D23に表示される。
【0059】
ついで、オペレータが表示画面21aの下段の算出結果展開ボタンB7を押し、実行ボタンB8を押すと、図示を省略した押出機自動運転の画面中のスクリュの回転数がセル画面D17の数値に設定される。また型締力が、図示を省略した型締力調整の画面にてセル画面D18の数値をカバーする型締力に設定される。温度設定は、図示を省略した温度設定の画面中の各設定温度がセル画面D20ないしD23の数値に設定される。
【0060】
セル画面D19に表示された打込押込量1.41mmは、図8に示した表示画面21での手動運転(型替・メンテ)画面において、カット位置押込補正ボタンB9下のセル画面D24に表示される。オペレータが左打込カット位置調整ボタンB10を押すと、打込カット位置近似値セル画面D24中の左打込検出値が検出されて6.80mmと表示され、この数値に打込押込量1.41mmが加算された数値8.21mmが設定値として表示される。同様に、オペレータが右打込カット位置調整ボタンB11を押すと、同セル画面D25中の右打込検出値が検出されて6.60mmと表示され、この数値に打込押込量1.41mmが加算された数値8.01mmが設定値として表示される。
【0061】
これら数値は、図示を省略した打込動作設定の画面にて表示設定される。なお、上記左打込検出値は、図4に示すように、左右側の打込ノズル9のカッティングスリーブ9aが割型3aの口金3dおよび割型3bの口金3eの表面から当接する位置までの寸法Lを示す。
【0062】
上述の設定を行った後、中空成形を開始すると、押出機1から溶融樹脂がクロスヘッド2を通って、リップ2cから垂下したパリソンとなり、型締装置5の駆動によって開いた成形金型3が閉じ型締されて咥えられると同時にパリソン切断装置によってパリソン上部が切断されるとともに、肩ばり、底ばり、取手ばりなどが金型刃3f,3g,3hによって切断される。成形金型3が型締移動装置6駆動によって打込装置4下方に移動し、打込ノズル9がパリソン内に進入してエア吹込みと同時に口ばり部分を切断する。そして、成形品取出装置7が型開きした成形金型3から製品Pを取出して、1成形サイクルが終了する。
【0063】
製品Pが図1に示すような取手付き製品ではなく、単純なボトル型の場合は、成形金型の各割型3a,3bは、底ばり切断用の3gのみを形成したものを使用して、上述と同様な成形条件の設定ステップの実行およびそれに基づき算出した設定値によって中空成形する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態の方法が適用される中空成形装置の正面図
【図2】同中空成形装置の一部省略した側面図
【図3】成形金型の割型を示す正面図
【図4】同割型の口部および打込ノズルを示す拡大正面図
【図5】図1の中空成形装置の制御システムを示す概要図
【図6】実施形態における成形条件入力・算出方法を示すフロー図
【図7】同成形条件入力・算出方法を示す画面の正面図
【図8】打込力設定のための画面の正面図
【符号の説明】
【0065】
1 押出機
2 クロスヘッド
3 成形金型
4 打込装置
5 型締装置
6 型締移動装置
7 製品取出装置
9 打込ノズル
20 成形条件設定装置
70 シーケンス制御装置(演算装置)
S1 原料樹脂情報入力ステップ
S2 1成形サイクル時間情報入力ステップ
S3 製品の形状・重量情報入力ステップ
S4 金型の刃厚情報入力ステップ
S5 切断ばりの全長情報入力ステップ
S6 演算実行ステップ
S7 所望設定値の算出・表示ステップ
・・・

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形用の原料樹脂情報、1成形サイクルの時間情報、成形すべき製品の形状および重量の情報、金型のばり切断用刃の刃厚情報および該ばり切断用刃によって切断されるばり全ての長さ情報を中空成形装置の成形条件設定装置へ入力して、押出機における溶融した前記樹脂の送り用スクリュの回転数、型締装置の型締力、パリソンにエアを吹き込む打込装置の打込ノズルによる打込力および中空成形装置の所定箇所の設定温度のそれぞれのデータを算出して、これら算出データを用いて中空成形することを特徴とする中空成形方法。
【請求項2】
成形用の原料樹脂情報、1成形サイクルの時間情報、成形すべき製品の形状および重量の情報、金型のばり切断用刃の刃厚情報および該ばり切断用刃によって切断されるばり全ての長さ情報を入力する成形条件設定装置と、押出機における溶融した前記樹脂の送り用スクリュの回転数、型締装置の型締力、パリソンにエアを吹き込む打込装置の打込ノズルによる打込力および中空成形装置の所定箇所の設定温度のそれぞれのデータを算出する演算装置を具備したことを特徴とする中空成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−111106(P2010−111106A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307961(P2008−307961)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(591159099)株式会社タハラ (15)
【Fターム(参考)】