説明

中空成形機の制御方法及び装置

【課題】本発明は、射出用油圧シリンダの圧力を計測し、クロスヘッド内の樹脂圧力の制御を行い、パリソンの品質を安定させることを目的とする。
【解決手段】本発明による中空成形機の制御方法及び装置は、樹脂(81)の計量充填時における前記射出用油圧シリンダ(16)の圧力を圧力フィードバック値(FB)として圧力計(72)で計測し、前記クロスヘッド(60)内の樹脂圧力を前記圧力フィードバック値(FB)を用いて前記油圧回路(70)により制御する方法と構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空成形機の制御方法及び装置に関し、特に、射出用油圧シリンダの圧力を計測し、クロスヘッド内の樹脂圧力の制御を行い、パリソンの品質を安定させるための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の中空成形機の制御方法及び装置としては、例えば、後述の特許文献1に開示された構成を、図4として挙げることができる。
すなわち、図4において、ダイスハウジング1は上部ダイスハウジング1aと下部ダイスハウジング1bとで構成され、着脱自在に締付ボルトにより結合されている。このダイスハウジング1の中心には芯金7が配置され、その下に上マンドレル2が配設されパリコン用ロッド4を介してパリコンシリンダ6に接続されている。上マンドレル2の下端には下マンドレル5が固着されており、下部ハウジング1bと下マンドレル5との間に長円形状の下部スリット28を形成している。前記パリコン用ロッド4の外周部には同心的に真円状の芯金7が配設され真円状の樹脂通路である上部スリット26を形成している。上部スリット26と下部スリット28とを総称してスリット8と呼ぶ。
【0003】
このブロー成形機において、ダイス50内は同心的に内側から外側に向けてパリコン用ロッド4、芯金7、スリーブ31、プランジャ22及び上部ダイスハウジング1aが配置されている。前記スリーブ31の内周面には樹脂分配路51が刻設してあり、このダイスハウジング1の周壁に設けた押出機23と連結された樹脂通路24からこの樹脂分配路51に供給される溶融樹脂をまず2叉状に分散させ、平面でみてスリーブ31の内周面に沿い時計方向、反時計方向へ回流させ、前記樹脂通路24の位置と平面視においてほぼ180度位置のずれている位置で2叉に分散された溶融樹脂流れを再び合流後、プランジャ22と芯金7間の樹脂通路の上部スリット26に流下滞留する溶融樹脂をプランジャ22の下動に伴い、上部ダイスハウジング1aに保持した下部ダイスハウジング1bとマンドレル2の下端に保持した下マンドレル5間で形成した樹脂の出口スリット8aから吐出させパリソンPを形成する構造としてある。
【0004】
前記上部ダイスハウジング1aの上部にはフレーム10が配設され、所定の間隔を保持可能に第1プレート12と第2プレート14が設けられている。第2プレート14上にはパリコンシリンダ6が中心部に固着され、このパリコンシリンダ6に取付けられたパリソン用ロッド4の両側の第1プレート12上には射出シリンダ16が配設されている。射出シリンダ16には射出シリンダ用ロッド18を介してパリソンPを射出するためのプランジャ22が固着されている。
【0005】
押出機23内には遊嵌状態にて回転ならびに前後進自在にスクリュ23aが設けられる。樹脂通路24の押出機23に近接した1点には、外部に通じる透孔24aが設けられ、圧力センサ30と連結される。圧力センサ30からの圧力信号は電気信号に変換され、射出シリンダ16に圧油を供給する図示しない油圧ユニットの制御装置へ送信される。
【0006】
以上のように構成されたブロー成形機における本発明のブロー成形方法の作動について説明する。
前ショットのパリソン射出の完了後、プランジャ22は前進限マグネットで下降しており、プランジャ22の前進限(下降限)と後退限(上昇限)とで形成される円環状のアキュムレータQは、プランジャ22により占有されている。この状態で、押出機23に高温溶融樹脂Rを供給して押出機23のスクリュ23aを駆動すると、樹脂Rは樹脂通路24、樹脂分配路51、上部スリット26及び下部スリット28へ順次充填されたあと、プランジャ22を押し上げてアキュムレータQの空間にも充填される。この時、射出シリンダ16の後退側背圧(以下射出シリンダ背圧という)をフリーとしたときには、プランジャ22の内周面と芯金7外周面とで形成される狭く細い通路がプランジャ22の上昇に伴い広い通路へと拡大されるので樹脂の管路抵抗は急激に減少し、スクリュ背圧は変化する。
【0007】
そこで、射出シリンダ背圧をフリーにしないで、スクリュ背圧の圧力低下に対抗してこれを補償するために射出シリンダ背圧を増加せしめ、スクリュ背圧を計量開始から計量終了までの計量中常に一定の圧力に保持する。この操作は、センサ30で得られる圧力変化を監視してこの変化に対応して射出シリンダ背圧を増加する操作をマニュアルでやっても良いが、通常は射出シリンダ16の操作用油圧ユニットをコントロールする制御装置へ圧力センサ30からの圧力信号を入力し、スクリュ背圧を一定となるよう自動制御する。
【0008】
以上の操作を行なうことにより、スクリュ背圧は常に一定圧力に保たれる結果、押出機23より吐出される高温溶融樹脂の圧力、温度は一定値となりその結果一定の粘度の樹脂がアキュムレータQ内に貯溜される。従って、パリソンの吐出時には安定した吐出が行われ、所望肉厚分布を持つパリソンが安定して形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−206251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の中空成形機の制御方法及び装置は、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
すなわち、押出機より吐出される樹脂圧力を圧力計で監視して射出背圧を制御する方式であるが、樹脂圧力で監視制御する方式では、押出機の変動、樹脂粘性などの影響によりクロスヘッド内の樹脂圧力を安定制御ができなかった。
従って、従来の油圧回路制御方法では樹脂にかけられる負荷はピストンを樹脂の蓄積力により制御しているため、ピストン及びロッドの重量、油圧シリンダピストンの抵抗と油の流れる圧力損失のみである。そのため、より多くの負荷を充填する樹脂に与えることはできなかった。発泡樹脂のような充填中に発泡状態を維持するには後退側で圧力を負荷する必要があるため現状の油圧制御では適切な圧力を負荷することは困難である。
また、ピストンは樹脂充填により後退するので樹脂にかかる圧力も不安定であり均一に充填できない欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による中空成形機の制御方法は、アキュムレータ式のクロスヘッド内に押出機によって押出された樹脂を油圧回路を介して射出用油圧シリンダで駆動される射出用ピストンにより射出するようにした中空成形機の制御方法において、前記樹脂の計量充填時における前記射出用油圧シリンダの圧力を圧力フィードバック値として圧力計で計測し、前記クロスヘッド内の樹脂圧力を前記圧力フィードバック値を用いて前記油圧回路により制御する方法であり、また、本発明による中空成形機の制御装置は、アキュムレータ式のクロスヘッド内に押出機によって押出された樹脂を油圧回路を介して射出用油圧シリンダで駆動される射出用ピストンにより射出するようにした中空成形機の制御装置において、前記樹脂の計量充填時における前記射出用油圧シリンダの圧力を圧力フィードバック値として圧力計で計測し、前記クロスヘッド内の樹脂圧力を前記圧力フィードバック値を用いて前記油圧回路により制御する構成である。
【発明の効果】
【0012】
本発明による中空成形機の制御方法及び装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、アキュムレータ式のクロスヘッド内に押出機によって押出された樹脂を油圧回路を介して射出用油圧シリンダで駆動される射出用ピストンにより射出するようにした中空成形機の制御装置において、前記樹脂の計量充填時における前記射出用油圧シリンダの圧力を圧力フィードバック値として圧力計で計測し、前記クロスヘッド内の樹脂圧力を前記圧力フィードバック値を用いて前記油圧回路により制御することにより、例えば、発泡樹脂のように充填中に気泡が出て行く樹脂においては、クロスヘッド内において樹脂に圧力を負荷することにより発泡状態を維持することが可能となる。また高粘度などの樹脂の場合、クロスヘッド内で適切な圧力を負荷することにより均一に充填され安定した計量を行うことができ、パリソンの品質を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による中空成形機の制御方法及び装置を示すためのアキュムレータ式のクロスヘッドの断面図である。
【図2】図1の射出時を示す断面図である。
【図3】図1の射出用油圧シリンダに接続される油圧回路を示す構成図である。
【図4】従来の中空成形機を示す断面付き構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、射出用油圧シリンダの圧力を計測し、クロスヘッド内の樹脂圧力の制御を行い、パリソンの品質を安定させるようにした中空成形機の制御方法及び装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0015】
以下、図面と共に本発明による中空成形機の制御方法及び装置の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分については、同一符号を用いて説明する。
図1において符号60で示されるものは、押出機23に接続されたアキュムレータ式のクロスヘッドであり、このクロスヘッド60には押出機23が接続されて樹脂81を供給するように構成されているが、この押出機23は、図示の1台に限ることなく複数台用いて多層のパリソンを得る場合もある。
【0016】
前記クロスヘッド60は、樹脂を充填するための樹脂射出シリンダ21と、この樹脂射出シリンダ21に充填するための樹脂を押し出すための射出用ピストン22と、この射出用ピストン22に連結された射出用ロッド22aと、この射出用ロッド22aに接続された油圧シリンダピストン22bを有する射出用油圧シリンダ16と、最上部に設けられコアロッド61を昇降させるための肉調用油圧シリンダ6と、このコアロッド61の最下部に設けられたコア5と対応してダイギャップ8aを形成するためのダイス1bと、から構成されている。
【0017】
前記射出用油圧シリンダ16の射出用ピストン22を駆動させる油圧回路70の構成は、図3のように、上部のみに油圧が流入し射出用ピストン22を押し出す射出用油圧シリンダ16と、この射出用油圧シリンダ16の圧力を保持するためのノンリーク弁71と、射出用油圧シリンダ16内の圧力を測定する圧力計72と、圧力計72からの値をフィードバックし油圧制御回路73により圧力制御を行う圧力制御リリーフ弁74と、射出速度や計量時の流量の制御を行う流量制御弁75と、ポンプ76からの流れを切り替えるために前記流量制御弁75と前記ノンリーク弁71との間に接続され油のタンク77に接続された切り替え弁78とから構成されている。
【0018】
次に、前述の構成による中空成形機のクロスヘッド60を用いて実機の射出サイクルと各油圧機器の動作を表1に示すチャート表に基づいて述べる。
【0019】
【表1】

【0020】
まず、図1で示されるように、クロスヘッド60内に樹脂充填計量中は、押出機23−ON、流量制御弁75FV1−ON(小流量)、切り替え弁78SV1−ON、圧力制御リリーフ弁74PV1−ON(低圧)、ノンリーク弁71SV2−OFFとし、溶融樹脂を押し出す射出用ピストン22は最下限に位置しており、クロスヘッド60内の射出用ピストン22が樹脂充填により後退する。このとき流量制御弁75FV1及び圧力制御リリーフ弁74PV1の開度は射出用油圧シリンダ16の圧力を監視しながら射出用油圧シリンダ16の圧力が一定となるように自動制御を行う。その場合の圧力値は樹脂81の粘度が高い場合はより大きい負荷を行い、粘度が低い樹脂81に関しては低い負荷を与え、出口において樹脂81の流出量が少ない圧力負荷設定を上限としクロスヘッド60内樹脂が均一となる圧力を負荷する。
【0021】
樹脂充填完了後は成形するまで待機することにより、押出機23−OFF、切り替え弁78SV1−OFF、流量制御弁75FV1−OFF、圧力制御リリーフ弁74PV1−OFF、ノンリーク弁71SV2−ONにすることにより圧力負荷状態を維持し、さらにクロスヘッド60内樹脂が均等に計量充填できる。また、発泡樹脂の場合には発泡状態を維持できるよう圧力の負荷を行う。
【0022】
次に、図2に示されるように、射出中は押出機23−OFF、流量制御弁75FV1−ON(大流量)、切り替え弁78SV1−ON、圧力制御リリーフ弁74PV1−ON、ノンリーク弁71SV2−OFFとし圧力値は高圧とし、流量を成形条件により適切に設定し樹脂射出シリンダ21の射出用ピストン22を下限まで下降させパリソンPを形成させる。
最後にクロスヘッド60内樹脂を射出しピストン22が最下限の位置では押出機23−ON、流量制御弁75FV1−ON(小流量)、切り替え弁78SV1−ON、圧力制御リリーフ弁74PV1−ON(低圧)、ノンリーク弁71SV2−OFFとしピストン22に一定の圧力を負荷し、ピストン22と樹脂の間に空隙ができ酸化劣化を起さないようにする。
【0023】
前述の動作は、油圧側で射出装置の動作及び制御を行うことにより、押出機23の変動や押出機23による粘度の変動による不安定な制御もなくなる。また、発泡樹脂の場合には樹脂充填から射出完了までクロスヘッド60内の樹脂に圧力を負荷することができる。それにより発泡状態をコントロールすることが可能となり成形品の品質を保持できる。また、粘度の高い樹脂の場合にはより大きい圧力を負荷でき、均一で精度の高い計量が行なえ、均一な肉厚で重量が安定したパリソンPにより成形品の品質を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明による中空成形機の制御方法及び装置は、発泡樹脂のように充填中に気泡が出ていく樹脂、及び、高粘度の樹脂に対して安定した計量を行い、幅広く適用できる。
【符号の説明】
【0025】
1b ダイス
5 コア
6 肉調用油圧シリンダ
8a ダイギャップ
16 射出用油圧シリンダ
21 樹脂射出シリンダ
22 射出用ピストン
22a 射出用ロッド
22b 油圧シリンダピストン
23 押出機
60 アキュムレータ式のクロスヘッド
61 コアロッド
70 油圧回路
71 ノンリーク弁SV2
72 圧力計
73 油圧制御回路
74 圧力制御リリーフ弁PV1
75 流量制御弁FV1
76 ポンプ
78 切換弁SV1
81 樹脂
P パリソン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アキュムレータ式のクロスヘッド(60)内に押出機(23)によって押出された樹脂(81)を油圧回路(70)を介して射出用油圧シリンダ(16)で駆動される射出用ピストン(22)により射出するようにした中空成形機の制御方法において、
前記樹脂(81)の計量充填時における前記射出用油圧シリンダ(16)の圧力を圧力フィードバック値(FB)として圧力計(72)で計測し、前記クロスヘッド(60)内の樹脂圧力を前記圧力フィードバック値(FB)を用いて前記油圧回路(70)により制御することを特徴とする中空成形機の制御方法。
【請求項2】
アキュムレータ式のクロスヘッド(60)内に押出機(23)によって押出された樹脂(81)を油圧回路(70)を介して射出用油圧シリンダ(16)で駆動される射出用ピストン(22)により射出するようにした中空成形機の制御装置において、
前記樹脂(81)の計量充填時における前記射出用油圧シリンダ(16)の圧力を圧力フィードバック値(FB)として圧力計(72)で計測し、前記クロスヘッド(60)内の樹脂圧力を前記圧力フィードバック値(FB)を用いて前記油圧回路(70)により制御することを特徴とする中空成形機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−24936(P2012−24936A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162806(P2010−162806)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】