説明

中空糸膜モジュールの欠陥検査方法

【課題】中空糸膜モジュールにおけるリークの有無の検査を精度よく短時間で行うことができる中空糸膜モジュールの欠陥検査方法を提供する。
【解決手段】微粒子の数を測定する前にあらかじめ中空糸膜モジュール10に気体を流した後、中空糸膜モジュール10に微粒子を含む気体を流し、中空糸膜を通過した気体中の微粒子の数を、5〜200L/min・m2 の範囲内の吸引流速によって、レーザー光源を具備した微粒子計測器32で測定する欠陥検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空糸膜モジュールの欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、中空糸膜モジュールは、無菌水、飲料水、高度純水の製造、空気の浄化等の数多くの用途で使用されている。
中空糸膜モジュールとしては、図2に示すような、円筒状のケース11と、ケース11内に収納された、中空糸膜束12からなるロール13と、ロール13の端部をケース11内に固定する樹脂固定部14とから概略構成される中空糸膜モジュール10がある。ここで、ロール13は、複数の中空糸膜15をU字状に折り曲げ、折り曲げ部分を拘束糸条16によって結束した帯状の中空糸膜束12が、ストロー17を中心に巻き回された状態にあるものである。
【0003】
この中空糸膜モジュール10は、以下のようにして製造される。
まず、図3に示すような、帯状の中空糸膜束12を作製する。この中空糸膜束12は、いわゆるラッセル編みにより作製されるものであり、複数の中空糸膜15を、中空糸膜束12の幅の長さに複数回折り返し、この折り返し部分を、中空糸膜束12の長手方向に延びるチェーンステッチ(鎖編み)の拘束糸条16にて結束させたものである。
【0004】
次いで、この中空糸膜束12を巻取装置(図示略)に搬送し、ストロー17を中心にして巻き回して図4に示すような中空糸膜束12からなるロール13とする。このロール13を、図5に示すように、底部に放射状に延びる複数の溝が形成された有底筒状のケース11に収納する。次いで、底部から樹脂注入管21が下方に延び、内部に液状の固定用樹脂22が充填された、有底円筒状の樹脂ポット20を、樹脂注入管21がストロー17に挿入されるようにして、ロール13上に配置する。
【0005】
次いで、ケース11内にロール13が収納され、ロール13上に樹脂ポット20が配置されたものを、遠心機(図示略)にセットし、遠心力によって樹脂ポット20中の固定用樹脂22を、ストロー17を通してケース11の底部に注入し、ケース11とロール13との間、そして各中空糸膜15間に流し込んで行き渡らせる。
固定用樹脂22を固化させて樹脂固定部14とした後、ロール13の底部側を、ケース11および樹脂固定部14ごと切断して、中空糸膜15の端部を開口させることにより、図2に示す中空糸膜モジュール10が製造される。
【0006】
この中空糸膜モジュール10においては、例えば水の濾過処理の場合、中空糸膜15を透過する前の原水と中空糸膜15を透過した浄水とが混ざり合わないように、原水側と浄水側とを樹脂固定部14によって液密に仕切る必要がある。
しかしながら、ケース11内に収納されたロール13を構成する中空糸膜15が、部分的に偏っていたり、交絡していたりする場合、中空糸膜15が密となった部分に固定用樹脂22が流れ込みにくくなり、この固定用樹脂22の未含浸部分が原因となって樹脂固定部14による仕切りが不十分となる、いわゆるリークの状態が発生することがあった。また、中空糸膜15にピンホールなどの欠陥がある場合、そこでリークが発生してしまうことがあった。
【0007】
中空糸膜モジュールの樹脂固定部および中空糸膜におけるリークを検査する方法としては、中空糸膜の一次側に微粒子や濁質を含有する気体または液体を導入し、中空糸膜の二次側に透過した透過気体または透過液の微粒子数や濁度を、パーティクルカウンタや濁度計を用いて測定することによって、リークの有無を判定する検査方法が、特公平2−14084号公報、特開平3−127614号公報、特許第3184631号公報、特開2001−343320号公報などに提案されている。
【0008】
しかしながら、従来のリーク検査方法では、良品であるにもかかわらず中空糸膜の二次側に透過した透過気体または透過液に、微粒子や濁りが検出され、不良品と判断されることがあった。また、従来のパーティクルカウンタを用いたリーク検査方法では、短時間の測定では不良品であっても微粒子が少ししか、もしくは全く検出されず、良品と判断されてしまうことがあった。そのため、中空糸膜の二次側に透過した透過気体の微粒子数を長時間測定する必要があった。
このように、従来のリーク検査方法では、短時間でリークの有無を確実に判定することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平2−14084号公報(第3−5頁、第4図)
【特許文献2】特開平3−127614号公報(第2−4頁、第1図)
【特許文献3】特許第3184631号公報(第2−5頁、図1)
【特許文献4】特開2001−343320号公報(第2−4頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
よって、本発明の目的は、中空糸膜モジュールにおけるリークの有無の検査を精度よく行うことができる中空糸膜モジュールの欠陥検査方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、中空糸膜モジュールにおけるリークの有無の検査を精度よく、かつ短時間で行うことができる中空糸膜モジュールの欠陥検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明の中空糸膜モジュールの欠陥検査方法は、複数の中空糸膜が樹脂固定部にてケース内に固定された中空糸膜モジュールに微粒子を含む気体を流し、中空糸膜を通過した気体中の微粒子の数を測定する中空糸膜モジュールの欠陥検査方法において、気体中の微粒子の数を測定する前にあらかじめ中空糸膜モジュールに気体を流した後、中空糸膜モジュールに微粒子を含む気体を流し、中空糸膜を通過した気体中の微粒子の数を、5〜200L/min・m2 の範囲内の吸引流速によって、レーザー光源を具備した微粒子測定器にて測定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の中空糸膜モジュールの欠陥検査方法においては、中空糸膜を通過した気体中の微粒子の数の測定を、所定時間ごとに複数回測定し、中空糸膜を通過した気体中の微粒子の数の平均値を算出することが望ましい。
また、本発明の中空糸膜モジュールの欠陥検査方法においては、中空糸膜モジュールに微粒子を含む気体を流し、中空糸膜モジュールの気体流出側から流出する気体を集気し、中空糸膜を通過し、かつ集気された気体中の微粒子の数を、レーザー光源を具備した微粒子計測器にて測定することが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の中空糸膜モジュールの欠陥検査方法は、複数の中空糸膜が樹脂固定部にてケース内に固定された中空糸膜モジュールに微粒子を含む気体を流し、中空糸膜を通過した気体中の微粒子の数を測定する中空糸膜モジュールの欠陥検査方法において、気体中の微粒子の数を測定する前にあらかじめ中空糸膜モジュールに気体を流した後、中空糸膜モジュールに微粒子を含む気体を流し、中空糸膜を通過した気体中の微粒子の数を、レーザー光源を具備した微粒子測定器にて測定する方法であるので、中空糸膜モジュールにおけるリークの有無の検査を精度よく行うことができる。
【0014】
また、本発明の中空糸膜モジュールの欠陥検査方法において、中空糸膜を通過した気体中の微粒子の数を、5〜200L/min・m2 の範囲内の吸引流速によって、レーザー光源を具備した微粒子測定器にて測定するようにすれば、中空糸膜モジュールにおけるリークの有無の検査を精度よく、かつ短時間で行うことができる。
また、本発明の中空糸膜モジュールの欠陥検査方法において、中空糸膜を通過した気体中の微粒子の数の測定を、所定時間ごとに複数回測定し、中空糸膜を通過した気体中の微粒子の数の平均値を算出するようにすれば、欠陥検出精度をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の中空糸膜モジュールの欠陥検査装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】中空糸膜モジュールの一例を示す断面図である。
【図3】中空糸膜束の一例を示す正面図である。
【図4】図3の中空糸膜束を巻き回したロール体である。
【図5】中空糸膜モジュールの製造の一工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
図1は、本発明の中空糸膜モジュールの欠陥検査装置の一例を示す概略構成図である。
この欠陥検査装置は、中空糸膜モジュール10の樹脂固定部14側の端部18(気体流出側)から流出する気体を集気する複数の集気ホルダ31,31・・・(集気手段)と、気体中の微粒子の数を測定する微粒子計測器32と、排気用の真空ポンプ33と、各集気ホルダ31と微粒子計測器32とを接続する複数の通気流路34,34・・・と、各通気流路34の途中から分岐し、真空ポンプに接続する排気流路35,35・・・と、通気流路34と排気流路35との分岐点よりも下流の通気流路34に設けられた通気側開閉弁36,36・・・と、通気流路34と排気流路35との分岐点よりも下流の排気流路35に設けられた排気側開閉弁37,37・・・と、微粒子計測器32、真空ポンプ33、通気側開閉弁36および排気側開閉弁37に電気的に接続され、これらの制御を行う制御部38と、微粒子計測器32に電気的に接続し、微粒子計測器32にて測定された気体中の微粒子の数に基づいて、中空糸膜モジュール10の良否を判定する判定部39(判定手段)とを具備して概略構成されるものである。
【0017】
中空糸膜モジュール10は、図2に示すように、円筒状のケース11と、ケース11内に収納された、中空糸膜束12からなるロール13と、ロール13の端部をケース11内に固定する樹脂固定部14とから概略構成されるものである。ここで、ロール13は、複数の中空糸膜15をU字状に折り曲げ、折り曲げ部分を拘束糸条16によって結束した帯状の中空糸膜束12が、ストロー17を中心に巻き回された状態にあるものである。
【0018】
集気ホルダ31は、中空糸膜モジュール10の端部18から流出する気体を集気し、かつ中空糸膜モジュール10の端部10から流出する気体以外を遮断するものであり、中空糸膜モジュール10のケース11の外周壁を囲む円筒部41と、中空糸膜モジュール10の端部18を、間隙を介して覆う、内側がテーパ面とされた底部42と、底部42に穿設された通気孔43と、中空糸膜モジュール10のケース11の外周壁と円筒部41との間を気密に保つためのOリング44とを有して構成されるものである。
【0019】
微粒子計測器32としては、気体中の微粒子の大きさと数を測定できるものであれば、いずれのものも用いることができ、通常は、パーティクルカウンタが用いられる。パーティクルカウンタとしては、例えば、微粒子を浮遊状態のまま光散乱方式により連続的に大きさと数を測定するものを用いることができ、その原理は、半導体レーザーから出射された光が被測定気体と交差し、その気体中に微粒子が存在する場合には、その散乱光が受光素子へと導かれ電気信号に変換されるものである。
レーザー光源を具備したパーティクルカウンタは、従来のハロゲンランプを具備したパーティクルカウンタに比べ、微粒子の計測精度や計測安定性、および長時間の使用においても信頼性に優れ、精度よく、短時間で気体中の微粒子を検出でき、微細な欠陥をも検出可能である。微粒子を検出するための感度の観点から、最大定格粒子濃度10000個/リットル以上のものが好ましい。
【0020】
通気流路34は、始端が集気ホルダ31の通気孔43に接続し、途中で他の通気流路34と合流して、終端が微粒子計測器32に接続する配管からなるものである。
配管としては、内面が平滑で、気体が円滑に通過できるものを用いることができる。配管としては、内面平滑性、耐圧性、および耐久性の点で、タイゴンチューブが好ましい。配管の長さ(集気ホルダ31から微粒子計測器32までの流路長)は、被測定気体の滞留容積の軽減、被測定対象物の切り替えにおける応答性、およびパーティクルカウンタの吸引抵抗(圧力損失)の軽減の点で、2m以下が好ましく、0.5m以下がより好ましい。
【0021】
排気流路35は、始端が通気流路34から分岐し、途中で他の排気流路35と合流して、終端が真空ポンプ33に接続する配管からなるものである。
配管としては、通気流路34に用いられる配管と同じものを用いることができる。
【0022】
通気側開閉弁36および排気側開閉弁37としては、弁を閉じた際の封止性に優れ、かつ開閉動作時において低発塵性の構造を有するものが好ましく、例えば、ピンチバルブが挙げられる。
【0023】
制御部38は、処理部と、インターフェース部とを有して概略構成され、微粒子計測器32の吸引ポンプ(図示略)の運転開始・停止、真空ポンプ33の運転開始・停止、通気側開閉弁36および排気側開閉弁37の開閉を制御するものである。特に、制御部38によって、複数の通気側開閉弁36のうち、1つ通気側開閉弁36のみを開き、他の通気側開閉弁36を閉じることにより、特定の通気流路34を選択することができる。すなわち、複数の通気側開閉弁36と制御部38との組み合わせが、流路切り換え手段として機能する。
【0024】
インターフェイス部は、各流路に設けられた開閉弁および各ポンプと、処理部との間を電気的に接続するものである。
処理部は、処理部に入力された操作信号に基づいて、各流路に設けられた開閉弁の開閉およびポンプの運転の開始、停止を制御するものである。
【0025】
判定部39は、処理部と、インターフェース部とを有して概略構成され、微粒子計測器32にて測定された気体中の微粒子の数に基づいて、中空糸膜モジュール10の良否を判定するものである。
【0026】
インターフェイス部は、微粒子計測器32と判定部39の処理部との間を電気的に接続するものである。処理部は、微粒子計測器32から送られたデータ(気体中の微粒子の数)が、所定値よりも多いか、少ないかによって、中空糸膜モジュール10の良否を判定し、表示装置(図示略)に判定結果を表示させるものである。
【0027】
なお、これら処理部は専用のハードウエアにより実現されるものであってもよく、また、これら処理部はメモリおよび中央演算装置(CPU)によって構成され、処理部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
また、制御部38、判定部39には、周辺機器として、入力装置、表示装置等が接続されるものとする。ここで、入力装置とは、ディスプレイタッチパネル、スイッチパネル、キーボード等の入力デバイスのことをいい、表示装置とは、CRTや液晶表示装置のことをいう。
【0028】
次に、この欠陥検査装置を用いた中空糸膜モジュールの欠陥検査方法について説明する。
まず、中空糸膜モジュール10を、中空糸膜モジュール10の樹脂固定部14側の端部18が集気ホルダ31に覆われるように、集気ホルダ31にセットする。中空糸膜モジュール10の端部18には、中空糸膜モジュール10の製造過程において、ロール13の底部側をケース11および樹脂固定部14ごと切断して中空糸膜15の端部を開口させる際の、ケース11および樹脂固定部14の切断屑が付着していることがあるので、あらかじめこの切断屑を除去しておくことが好ましい。
【0029】
制御部38によって、すべての通気側開閉弁36を閉にし、すべての排気側開閉弁37を開にした後、真空ポンプ33の運転を開始し、中空糸膜15の外側から内側に向かって気体が通過するように、中空糸膜モジュール10に気体を所定時間(所定量)流し、この気体を微粒子計測器32に通すことなく、真空ポンプ33から装置外部へ排気する。
【0030】
所定時間となったところで、制御部38によって、真空ポンプ33の運転を停止し、すべての排気側開閉弁37を閉にし、通気側開閉弁36のいずれか1つ、例えば、最初に検査を行う中空糸膜モジュール10がセットされた集気ホルダ31に接続した通気流路34の通気側開閉弁36のみを開にする。ついで、制御部38によって、微粒子計測器32の吸引ポンプの運転を開始し、中空糸膜15の外側から内側に向かって気体が通過するように、中空糸膜モジュール10に微粒子を含む気体を所定時間(所定量)流し、この気体を微粒子計測器32に導く。
【0031】
微粒子計測器32にて、中空糸膜を通過した気体にレーザー光源からの光を当て、気体中の微粒子の数を測定する。微粒子計測器32に導かれた気体は、吸引ポンプによって装置外に排気される。
微粒子計測器32にて測定された気体中の微粒子の数は、判定部39に送られ、中空糸膜モジュール10の良否を判定し、判定結果を表示装置に表示する。
【0032】
1つの中空糸膜モジュール10の検査が終了した後、制御部38によって、すべての通気側開閉弁36を閉にし、次に検査を行う中空糸膜モジュール10がセットされた集気ホルダ31に接続した通気流路34の通気側開閉弁36のみを開にする。ついで、制御部38によって、微粒子計測器32の吸引ポンプの運転を開始し、中空糸膜15の外側から内側に向かって気体が通過するように、中空糸膜モジュール10に微粒子を含む気体を所定時間(所定量)流し、この気体を微粒子計測器32に導き、気体中の微粒子の数を測定する。
以後、セットされた中空糸膜モジュール10の数に応じて、同様の測定を繰り返し行う。
【0033】
気体中の微粒子の数を測定する前にあらかじめ中空糸膜モジュール10に流す気体の流量は、3〜100リットル/分が好ましい。気体の流量が3リットル/分未満では、中空糸膜モジュールの大きさによっては、全体の中空糸膜に気体を流すことが困難となることや、配管内に微細な塵埃が滞留する場合に短時間では十分には除去できないおそれがあり、気体の流量が100リットル/分を超えると、中空糸膜モジュールの大きさによっては、一部の中空糸膜に偏って気体が流れるおそれがある。
あらかじめ中空糸膜モジュール10に気体を流す時間(量)は、中空糸膜モジュール10のサイズ等により適宜設定されるものであり、特に限定はされない。
【0034】
気体中の微粒子の数を測定する際に、吸引ポンプで吸引する気体の流量(定格値)は、1〜60リットル/分が好ましく、3〜30リットル/分がより好ましい。気体の流量が1リットル/分未満では、中空糸膜モジュールの大きさによっては、全体の中空糸膜に気体を流すことが困難となるおそれがあり、気体の流量が60リットル/分を超えると、中空糸膜モジュールの大きさによっては、一部の中空糸膜に偏って気体が流れるおそれがある。
同じく、中空糸膜モジュールの有効膜面積当たりの平均吸引流速は、5〜200リットル/分・m2 が好ましく、10〜100リットル/分・m2 がより好ましい。
【0035】
あらかじめ中空糸膜モジュール10に流す気体、および気体中の微粒子の数を測定する際に中空糸膜モジュール10に流す微粒子を含む気体としては、通常、欠陥検査装置周辺の空気が使用される。
あらかじめ中空糸膜モジュール10に流す気体に微粒子が含まれていても、中空糸膜モジュール10に欠陥がなければ2次側に微粒子が入り込むことはなく、後の欠陥検査の測定には影響しない。
気体中の微粒子の数を測定する際に中空糸膜モジュール10に流す微粒子を含む気体としては、中空糸膜モジュール10の仕様に応じて、所定粒径の微粒子を所定濃度添加した気体を用いることができる。
【0036】
以上説明した中空糸膜モジュール10の欠陥検査方法にあっては、気体中の微粒子の数を測定する前にあらかじめ中空糸膜モジュール10に気体を流すことによって、中空糸膜相互を離間させて隙間を形成するとともに、中空糸膜モジュール10および気体流路の配管内に残留する微細な塵埃を洗い流しているので、この後、中空糸膜モジュール10に微粒子を含む気体を流す際に、中空糸膜に均一に微粒子を含む気体を流すことができ、また、中空糸膜を通過した気体中の微粒子の数を測定する際に、中空糸膜モジュール10に流される微粒子を含む気体に由来しない微粒子を検出してしまうことがない。これにより、良品であるにもかかわらず、誤って不良品と判断してしまうことがない。
【0037】
また、中空糸膜を通過した気体中の微粒子の数を、レーザー光源を具備した微粒子計測器32にて測定しているので、従来のハロゲンランプを具備した微粒子測定器に比べ、感度よく、短時間で気体中の微粒子を検出でき、微細な欠陥をも検出できるため、不良品であるにもかかわらず、良品と判断してしまうことがない。
【0038】
また、以上説明した欠陥検査装置にあっては、微粒子計測器32として、レーザー光源を具備するものを用いているので、従来のハロゲンランプを具備した微粒子測定器に比べ、精度よく、短時間で気体中の微粒子を検出でき、微細な欠陥をも検出できるため、不良品であるにもかかわらず、良品と判断してしまうことがない。
【0039】
また、欠陥検査装置には、集気ホルダ31が複数あり、各集気ホルダ31と微粒子計測器32とを接続する複数の通気流路34を切り換える流路切り換え手段が設けられているので、微粒子計測器32の台数を増やすことなく、中空糸膜モジュール10の欠陥検査を連続して効率よく行うことができる。
また、微粒子計測器32にて測定された気体中の微粒子の数に基づいて、中空糸膜モジュール10の良否を判定する判定部を具備するので、大量の中空糸膜モジュールの欠陥検査を行う場合に、測定された気体中の微粒子数を目視により確認し良否判定することが不要となるため、作業時間の短縮を図り得るとともに、検査工程の自動化も行えるため、製品の品質管理を簡便に行うことができる。
【0040】
なお、本発明の中空糸膜モジュールの欠陥検査方法においては、中空糸膜モジュール10に気体を流す方向は、中空糸膜15の外側から内側に向かって気体が通過する方向に限定されず、中空糸膜15の内側から外側に向かって気体が通過するように中空糸膜モジュール10に気体を流してもよい。
また、中空糸膜モジュールに気体を流す方法は、中空糸膜モジュール10の気体流出側から真空ポンプまたは吸引ポンプにて気体を吸引し、中空糸膜モジュール10内に気体を流入させる方法に限定されず、中空糸膜モジュール10の気体流入側から加圧ポンプにて気体を加圧し、中空糸膜モジュール10内に気体を流入させる方法であっても構わない。
【0041】
また、本発明の中空糸膜モジュールの欠陥検査方法においては、中空糸膜を通過した気体中の微粒子の数の測定を、所定時間ごとに複数回測定し、中空糸膜を通過した気体中の微粒子の数の平均値を算出することが好ましい。このような測定を行うことで、中空糸膜を通過した気体中の微粒子の数の経時的変動を測定することができ、例えば、大型の中空糸膜モジュールの欠陥検査を行う場合や、複数の中空糸膜モジュールを同時に欠陥検査を行う場合においても、欠陥検出精度をより向上させることができる。
【0042】
また、本発明の中空糸膜モジュールの欠陥検査装置は、図示例のものに限定はされず、集気ホルダ31が1つまたは2つのものであっても、集気ホルダ31が4つ以上のものであっても構わない。また、流路切り替え手段として、三方弁のような切替弁を用いてもよい。
また、検査対象の中空糸膜モジュールも、図示例の中空糸膜モジュール10に限定はされず、複数の中空糸膜が樹脂固定部にてケース内に固定された中空糸膜モジュールであれば、例えば、ケースの両端にて複数の中空糸膜が樹脂固定部によって固定されたものなどにも適用可能である。この場合、検査対象の中空糸膜モジュールの形態に合わせて、集気ホルダの大きさ、形状等を適宜変更することは無論のことである。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例を示して詳しく説明する。
(実施例1)
図2に示すような、中空糸膜モジュールを以下のようにして製造した。
まず、三菱レイヨン(株)製のポリエチレン製中空糸膜(分画性能0.1μm、外径380μm)を5000本まとめた糸束を、65mmの長さで折り返しながら、その両側の折り返し部分を、ポリエステルフィラメント糸を用いたチェーンステッチにて結束させ、帯状の中空糸膜束とした。
【0044】
この中空糸膜束を、中心にストローを配置した状態で巻取装置にて巻き取り、直径約38mm、中空糸膜の総表面積0.4m2 の中空糸膜束のロールを作製した。このロールを、中空糸膜束の側部がケースの底部に位置するように、有底円筒状のケース内に収納した。ここで、有底円筒状のケースとしては、内径40mm、高さ70mm、筒部の肉厚2mmのABS樹脂製の成形品を用いた。
【0045】
次いで、液状の固定用樹脂を、ストローを通して遠心力にてケースの底部に注入し、各中空糸膜間、およびロールとケースとの間に流し込み、行き渡らせた。ここで、固定用樹脂としては、粘度1500mPa・sのポリウレタン樹脂を用いた。
固定用樹脂を固化させた後、ケースの底部側端部から10mmの位置でケースの軸に直交して中空糸膜束をケースおよび樹脂固定部ごと切断し、中空糸膜の端部を開口させ、中空糸膜モジュールを得た。
【0046】
この中空糸膜モジュールについて、図1に示す欠陥検査装置を用いてリーク検査を行った。ここで、微粒子計測器32としては、リオン(株)製のパーティクルカウンタ「KM−27」(光源:レーザーダイオード、最大定格粒子濃度:14000個/リットル、吸引流量:28リットル/分)を用い、各流路の配管にはタイゴンチューブを用い、各開閉弁としては、山本産業(株)製のピンチバルブを用いた。
【0047】
まず、中空糸膜モジュール10を集気ホルダ31にセットし、すべての通気側開閉弁36を閉にし、すべての排気側開閉弁37を開にした後、真空ポンプ33の運転を開始し、中空糸膜15の外側から内側に向かって空気が通過するように、中空糸膜モジュール10に空気を流量50リットル/分で30秒間流し、この空気を微粒子計測器32に通すことなく、真空ポンプ33から装置外部へ排気した。
【0048】
中空糸膜モジュール10に空気を30秒間流したところで、真空ポンプ33の運転を停止し、すべての排気側開閉弁37を閉にし、最初に検査を行う中空糸膜モジュール10がセットされた集気ホルダ31に接続した通気流路34の通気側開閉弁36のみを開にした。ついで、微粒子計測器32の吸引ポンプの運転を開始し、中空糸膜15の外側から内側に向かって空気が通過するように、中空糸膜モジュール10に空気を吸引流量28リットル/分で20秒間流し、中空糸膜を通過した空気を微粒子計測器32に導き、この間、中空糸膜を通過した空気中の微粒子の数を測定した。
【0049】
20秒の間に微粒子計測器32にて測定された気体中の微粒子の数を、判定部39に送り、ここにおいて、微粒子の数が規定値の0個のものを良品と判断し、1個以上のものを不良品と判断した。判定結果を表示装置に表示すると同時に、判定部39内の記憶装置(図示略)に、中空糸膜モジュール10固有の製造番号とともに判定結果を記録し、後の製品の品質管理に利用できるようにした。
【0050】
以上の検査を、良品の中空糸膜モジュール100本、および故意に中空糸膜あるいは樹脂固定部を損傷させた中空糸膜モジュール100本について行った。良品については、中空糸膜を通過した空気中の微粒子の数は、すべて0個であった。損傷品については、中空糸膜を通過した空気中の微粒子の数は、すべて10個以上であり、中空糸膜モジュールにおけるリークの発生の有無を確実に判定することができた。また、このような検査を5回繰り返して行ったところ、すべての回で同じ検査結果を得た。
【0051】
(比較例1)
気体中の微粒子の数を測定する前に、あらかじめ中空糸膜モジュールに気体を流さなかった以外は、実施例1と同様にして中空糸膜モジュールのリーク検査を行った。良品の中空糸膜モジュール100本中、10本において測定された微粒子の数が3〜30個となり、正確な判定を行うことができなかった。
【0052】
(参考例)
微粒子計測器32として、リオン(株)製のパーティクルカウンタ「KC−13」(光源:ハロゲンランプ、最大定格粒子濃度:5000個/リットル、吸引流量:10リットル/分)を用い、気体中の微粒子の数の測定時間を60秒に変更した以外は、実施例1と同様にして中空糸膜モジュールのリーク検査を行った。良品の中空糸膜モジュールについては、中空糸膜を通過した空気中の微粒子の数は、すべて0個であった。しかしながら、損傷品100本中、3本において微粒子の数が5個以下となった。検査を複数回繰り返しても、微粒子の数が変動した。この3本について、気体中の微粒子の数の測定時間を120秒にして検査を行ったところ、微粒子の数は、すべて10個以上となった。
【符号の説明】
【0053】
10 中空糸膜モジュール
11 ケース
14 樹脂固定部
15 中空糸膜
31 集気ホルダ(集気手段)
32 微粒子計測器
34 通気流路
36 通気側開閉弁(流路切り換え手段)
38 制御部(流路切り換え手段)
39 判定部(判定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中空糸膜が樹脂固定部にてケース内に固定された中空糸膜モジュールに微粒子を含む気体を流し、中空糸膜を通過した気体中の微粒子の数を測定する中空糸膜モジュールの欠陥検査方法において、
気体中の微粒子の数を測定する前にあらかじめ中空糸膜モジュールに気体を流した後、中空糸膜モジュールに微粒子を含む気体を流し、中空糸膜を通過した気体中の微粒子の数を、5〜200L/min・m2 の範囲内の吸引流速によって、レーザー光源を具備した微粒子計測器にて測定することを特徴とする中空糸膜モジュールの欠陥検査方法。
【請求項2】
中空糸膜を通過した気体中の微粒子の数の測定を、所定時間ごとに複数回測定し、中空糸膜を通過した気体中の微粒子の数の平均値を算出することを特徴とする請求項1に記載の中空糸膜モジュールの欠陥検査方法。
【請求項3】
中空糸膜モジュールに微粒子を含む気体を流し、中空糸膜モジュールの気体流出側から流出する気体を集気し、中空糸膜を通過し、かつ集気された気体中の微粒子の数を、レーザー光源を具備した微粒子計測器にて測定することを特徴とする請求項1または2に記載の中空糸膜モジュールの欠陥検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−291787(P2009−291787A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192403(P2009−192403)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【分割の表示】特願2003−8396(P2003−8396)の分割
【原出願日】平成15年1月16日(2003.1.16)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】