説明

中空部材の製造装置

【課題】内径が小さい中空な空間を有する中空部材を製造することができる中空部材の製造装置を提供する。
【解決手段】互いに接近離間可能に設けられた一対の型と、一対の型を接近させた状態において両者の間に形成されるキャビティC内に流動性を有する材料を供給する材料供給部とを備えた装置であって、キャビティC内に、一対の型が接近離間する方向と平行な中心軸を有する、直径が基端から先端に向けて狭くなるように形成されたピン4が配置されており、材料供給部が、その一端が、ピン4の先端側からキャビティC内に材料を投入する投入口となった材料流路5を備えており、材料流路5は、その中心軸がピン4の中心軸と同軸になるように形成されている。材料を供給したときにピン4が破損したり、ピン4の位置がずれたりすることを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空部材の製造装置に関する。
インクジェットプリンタやディスペンサー、ワイヤーボンディング等に使用されるノズルや、キャピラリー、配管路等に使用されるオリフィス等には、軸状部材であって、その軸方向に沿って貫通孔等の中空な空間が形成された中空部材が使用される。かかる中空部材における中空な空間の内径は、インクジェットプリンタやバルブ等の性能向上に伴って小径化しており、現状では直径10μm以下の中空な空間を有する中空部材が求められている。
本発明は、かかる小径の中空な空間を有する中空部材の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小径の貫通孔等の中空な空間を有する中空部材の製造には、中空部材の成形と同時に中空な空間を形成することができる射出成形が採用される(例えば、特許文献1〜6)。
射出成形は、固定型と可動型によって空閉されたキャビティ内に流動可能とした材料を注入して固化させることにより、キャビティの形状に成形された部材を製造する技術であり、キャビティ内にコアピンを配置しておけば、部材はキャビティの形状に成形され、その部材には、キャビティにおいてコアピンが配置されていた箇所に中空な空間が成形される。
【0003】
しかるに、上記のごとき方法により製造された中空部材では、その中空な空間はコアピンと同じ形状に成形されるため、その中空な空間の内径はコアピンと同じ大きさになる。このため、中空部材における中空な空間の内径を小さくするためには非常に細いコアピンを使用する必要がある。しかし、現在のところ、直径10μm程度のコアピンしか製造することができないため、内径10μm以下の中空部材を製造することはできない。たとえ、直径10μm以下のコアピンが製造できたとしても、かかるコアピンは非常に強度が弱くなるため、キャビティ内に材料を注入したときに、コアピンの半径方向から、その円周方向において不均一な力が加わればコアピンが損傷してしまうおそれがある。
また、材料として、セラミックス等の粉末に有機化合物のバインダを混合したものを使用すれば、直径10μmのコアピンを使用して製造された部材を焼結することにより、内径8μm程度の中空部材を製造することも可能であるが、この場合でも、内径8μm以下の中空部材を製造することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−181811号
【特許文献2】特開2001−145912号
【特許文献3】特開平11−090963号
【特許文献4】特開平08−099305号
【特許文献5】特開平07−253521号
【特許文献6】特開平05−329813号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、コアピンの直径より内径が小さい中空な空間を有する中空部材を製造することができる中空部材の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の中空部材の製造装置は、互いに接近離間可能に設けられた一対の型と、該一対の型を接近させた状態において両者の間に形成されるキャビティ内に流動性を有する材料を供給する材料供給部とを備えた装置であって、前記キャビティ内に、前記一対の型が接近離間する方向と平行な中心軸を有する、直径が基端から先端に向けて狭くなるように形成されたピンが配置されており、前記材料供給部が、その一端が、前記ピンの先端側から前記キャビティ内に前記材料を投入する投入口となった材料流路を備えており、該材料流路は、その中心軸が前記ピンの中心軸と同軸になるように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1発明によれば、材料流路の中心軸がキャビティ内に配置されているピンの中心軸と同軸になるように形成されているから、投入口から材料をキャビティ内に供給しても、ピンには中空な空間の中心軸周りに回転対称かつ均一な力しか加わらない。よって、材料を供給したときに、ピンに対してピンを曲げるような力は全く加わらないから、非常に細いピンを製造しても、材料を供給したときにピンが破損したり、ピンの位置がずれたりすることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態の中空部材の製造装置1による中空部材10の製造作業の説明図である。
【図2】本実施形態の中空部材の製造装置1の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1および図2において、符号B、MFは、互いに接近離間可能に設けられた一対のフレームを示しており、符号2、3は、一対のフレームB,MFに取り付けられている一対の型を示している。この一対の型2,3は、一対のフレームB,MFが接近離間すると、互いに接近離間するように配設されている。
【0010】
図1および図2において、下方に位置するフレームB(以下、受入側フレームBという、)の上面には、型2(以下、受入側型2という)が取り付けられている。
この受入側型2には、その上面2Aから下方に向けて凹んだ略円筒状の空間2h(以下、単に空間2hという)が形成されている。この受入側型2の空間2hは、その中心軸CAが一対のフレームB,MFの移動方向と平行となるように形成されており、その内部にはピン4が配置されている。このピン4は、その直径が下端から上端に向けて狭くなるように形成されたものであり、その中心軸が空間2hの中心軸CAと同軸となるように配設されており、その先端が後述する貫通孔3hの絞り部3bまで伸びている。
なお、空間2hおよびピン4におけるその軸方向と直交する方向の断面形状は、円形に限られず、四角形や三角形等でもよく、その中心軸周りに回転対称な形状であればよい。
【0011】
一方、受入側フレームBの上方に配置されたフレーム(以下、導入側フレームMFという)の下面には、型3(以下、導入側型3という)が取り付けられている。この導入側型3には、その上下方向を貫通する貫通孔3hが形成されている。この貫通孔3hの上端部は、ノズル6を介して、プラスチック等の熱可塑性材料を加熱し流動化させる図示しない加熱部が連通されている。また、この貫通孔3hは、その中心軸が前記受入側型2における空間2hの中心軸CAと同軸となるように形成されており、導入側型3の移動方向に沿って下面3Aに向うに従いその内径が小さくなり、下面3Aよりわずかに上方にその内径が最も小さくなる部分(絞り部3b)が位置するように形成されている。
なお、貫通孔3hにおけるその軸方向と直交する方向の断面形状は、円形に限られず、四角形や三角形等でもよく、その中心軸周りに回転対称な形状であればよい。
【0012】
上記のごとき構成であるから、受入側フレームBと導入側フレームMFとを互いに接近させて導入側型3と受入側型2とを互いに接近させれば、導入側型3の下面3Aと受入側型2の上面2Aとを接触させることができる。すると、導入側型3の貫通孔3hと受入側型2における空間2hが連通され、両者の間には、貫通孔3hと空間2hによって外部から遮断された空間が形成される。この空間に、加熱部において流動化された材料をノズル6を通して供給すれば、導入側型3の貫通孔3hおよび受入側型2の空間2h内に材料が充満される。
【0013】
このとき、導入側型3の貫通孔3hおよびピン4は、いずれもその中心軸が受入側型2の空間2hの中心軸CAと同軸であるから、導入側型3の貫通孔3hおよびピン4は同軸であり、絞り部3bの中心もピン4の軸方向の延長線上に位置する。
【0014】
このため、ノズル6から供給された材料は、絞り部3bを通って導入側型3の貫通孔3hから受入側型2の空間2hに流入するが、このとき材料は、受入側型2の空間2hの中心軸CA方向にのみ流れ、中心軸CAと交差する方向にはほとんど流れが生じない。
すると、材料が導入側型3の貫通孔3hから空間2hに流入したときに、ピン4には空間2hの中心軸周りに回転対称かつ均一な力しか加わらず、ピン4を曲げるような力はほとんど発生しない。
よって、材料を供給したときにピン4が破損したり、ピン4の位置が空間2hの中心からずれたりすることを防ぐことができる。
【0015】
したがって、導入側型3の貫通孔3hおよび受入側型2の空間2h内に材料が充満された状態で材料を固化させれば、材料を、導入側型3の貫通孔3hおよび受入側型2の空間2hの形状に成形され、かつ、空間2h内におけるピン4の位置、つまり、中心軸上に中空な空間を有する中空部材とすることができるのである。
【0016】
なお、上記のごとく、ピン4に対して曲げるような力を発生させないためには、ノズル6の中心軸も受入側型2の空間2hの中心軸CAと同軸であることが望ましい。つまり、受入側型2の空間2hからノズル6までの空間の中心軸が、全て同軸上に位置することが望ましい。
【0017】
上記の導入側型3の貫通孔3hおよび受入側型2の略円筒状空間2hにおいて、ピン4が存在する部分、つまり貫通孔3hの絞り部3bよりも下方の空間が特許請求の範囲にいうキャビティCであり、それより上方の空間が特許請求の範囲にいう材料流路5であり、絞り部3bが特許請求の範囲にいう投入口である。
【0018】
また、材料Mを、流動性を有する、例えば酢酸ビニルやアクリル系樹脂等の結合剤やジブチルフタレート等の可塑剤等の熱可塑性のバインダと、このバインダに混合された、例えば、金属やセラミックス等の粉体とからなる材料を使用することも可能である。
粉末だけからなる材料では、流動性が悪く材料をキャビティC内に充填することが困難であるが、上記のごときバインダと混合しておけば、材料を加熱することによって材料の流動性が向上し、キャビティC内にスムースに供給することができる。
しかも、材料を冷却して固化させたのち、バインダの蒸発温度以上に固化した材料を加熱すれば、熱可塑性のバインダを固化した材料から除去することができる。
【0019】
そして、加熱温度を粉体の焼結温度以上とすれば、粉体が焼結した中空部材を製造することができる。粉体が焼結した中空部材は、材料を冷却して固化させた場合に比べて、除去されたバインダの体積の分だけ体積が減少し、かつ、粉体の焼結による体積の減少も生じるから、焼結後の中空部材の体積を約20%以上減少させることができる。
すると、中空部材は、その壁面の厚さが薄くなるともに、内部空間の内径も小さくなるから、1μm以下の内径を有する中空部材10を、より一層容易に製造することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の中空部材の製造装置は、インクジェットプリンタやディスペンサー等に使用される、内径が小さい中空部材の製造に適している。
【符号の説明】
【0021】
1 中空部材の製造装置
2 受入側型
3 導入側型
4 ピン
5 材料流路
10 中空部材
C キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接近離間可能に設けられた一対の型と、該一対の型を接近させた状態において両者の間に形成されるキャビティ内に流動性を有する材料を供給する材料供給部とを備えた装置であって、
前記キャビティ内に、前記一対の型が接近離間する方向と平行な中心軸を有する、直径が基端から先端に向けて狭くなるように形成されたピンが配置されており、
前記材料供給部が、
その一端が、前記ピンの先端側から前記キャビティ内に前記材料を投入する投入口となった材料流路を備えており、
該材料流路は、その中心軸が前記ピンの中心軸と同軸になるように形成されている
ことを特徴とする中空部材の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−173331(P2010−173331A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90070(P2010−90070)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【分割の表示】特願2004−293907(P2004−293907)の分割
【原出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(592129486)株式会社長峰製作所 (18)
【Fターム(参考)】