説明

中華合わせ調味料

【課題】
著しく優れた香り、風味向上効果を付与する中華合わせ調味料を提供する。
【解決手段】
水、香味油、調味料を主成分とする溶液をレトルト殺菌したソースと、澱粉を別の包材に入れたものであることを特徴とする中華合わせ調味料。
また、この中華合わせ調味料を使用し、麻婆豆腐、千焼蝦仁、麻婆茄子、回鍋肉又は青椒肉絲などの中華料理を調理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた風味向上効果を有する中華合わせ調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
1970年代後半に中華合わせ調味料が開発されて以来、家庭で本格中華料理を簡単に楽しむことができるようになった。最初の中華合わせ調味料が市場に登場して以来、この30数年の間に麻婆豆腐、酢豚、青椒肉絲等の各種中華料理に合った中華合わせ調味料が開発されてきた。
【0003】
現在、市場に出ている中華合わせ調味料は全て高品質の製品である。しかし、微生物汚染を回避し、安全性を確保する為に強力なレトルト殺菌を行うので、好ましい香り、風味が抑えられ、逆に、レトルト臭と呼ばれる異風味が発生する。その結果、全体的に香り、風味が劣るという課題がある。
本課題を解決する為に、従来からいくつかの試みがなされて来た。以下に、代表的な手法を紹介する。
【0004】
不快なレトルト臭を抑制する方法として、マスキング効果のあるエキス類、香料、甘味料等を添加する方法がある(特許文献1、2)。また、一般的に香辛料、調味料を添加し好ましい香り、風味を強化することで前記課題を解決する方法も報告されており、具体的にはソース中の主成分である油脂を通常の食用油に代えて、胡麻油、ネギ油等の風味を強くもつ食用油(本発明においては風味油と称する)を使用する方法である(特許文献3)。
【0005】
いずれの方法とも優れた方法で香り、風味向上効果は確認されるが、十分に前記課題を解決する方法であるとは言い切れない。
【特許文献1】特開2002−191298号公報
【特許文献2】特開2001−299264号公報
【特許文献3】特開平6−339364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は著しく優れた香り、風味向上効果を付与する中華合わせ調味料の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決する為に鋭意検討を重ねた結果、ソース部分と澱粉部分を別の包材に入れレトルト殺菌を行った後、調理時に両者を合わせることで前記課題を解決することが出来、本発明を完成した。即ち、本発明は以下の通りである。
【0008】
第一の発明は、水、香味油、調味料を主成分とする溶液をレトルト殺菌したソースと、澱粉を別の包材に入れたものであることを特徴とする中華合わせ調味料である。
更に、第二の発明は、ソース中の香味油の含量が、ソース全体の0.3〜15重量%である第一の発明の中華合わせ調味料である。
また、第三の発明は、香味油が品温115〜135℃まで加熱した焙煎唐辛子を食用油に浸漬し抽出したものである第一の発明の中華合わせ調味料である。
また、中華合わせ調味料が、麻婆豆腐用、千焼蝦仁用、麻婆茄子用、回鍋肉用又は青椒肉絲用である第一の発明の中華合わせ調味料である。
尚、本発明において、中華合わせ調味料とは、レトウトパウチに油、調味料、水、香辛料等からなるソースを入れた後、レトルト殺菌したものを言う。
【発明の効果】
【0009】
本発明の調味料は、従来品に比べて著しい香味、風味向上効果を有し、かつ、レトルト臭も抑制できるという効果も併せ持つ。より詳細に記すと、本発明の中華合わせ調味料は、レトルト殺菌処理を行ったソースと澱粉が別の包材に入れられており、家庭等で調理する時に中華食材とソース及び澱粉を混合することで、従来にない香り、風味向上効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明においてソース部分には、主成分である香味油、水、調味料以外に、他にニンニク、生姜、韮、キャベツ、玉ねぎ、葱、等の野菜、鶏肉、豚肉、牛肉等の肉類、コショウ、山椒等の香辛料、レシチン等の乳化剤等を含有させてもよい。勿論、これ以外の食材を用いても構わない。
調味料としては、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム、コハク酸ナトリウムを初め、酵母エキス、肉エキス、植物性タンパク加水分解物、動物性タンパク加水分解物等を用いることができる。勿論、これ以外の調味料を用いても構わない。
【0011】
主成分の1つである香味油は、本発明の効果である香り及び風味向上効果を発揮させる上で重要である。香味油としては、最終品に好ましい香りを付与することができるものならば何でも使用できるが、通常は、ゴマ油、オリーブ油、唐辛子を食用油に浸漬して得た油脂が用いられる。その中でも、焙煎したゴマを食用油に浸漬し抽出して得た焙煎ゴマ油、焙煎した唐辛子を食用油に浸漬して得た焙煎唐辛子油を用いる事が好ましい。
特に、唐辛子の品温を115〜135℃まで加熱した焙煎唐辛子を 大豆油 等の食用油に浸漬して調製した香味油が最も好ましい。品温115〜135℃まで加熱することは過加熱であり、通常は行われないが、本発明においては品温115〜135℃まで加熱した焙煎唐辛子を用いて得た香味油が最終製品に著しく好ましい香り、風味を付与するのである。
また、焙煎唐辛子を食用油中に浸漬、抽出するときの条件は特に限定されるものではないが、抽出効率及び風味の観点から115〜150℃で行うのが良い。
【0012】
ソースと香味油の混合比率も本発明の特徴の1つであり、ソースを100重量部とした時、香味油を0.3〜15重量部、好ましくは2〜10重量部になるように配合する。0.3重量部以下では香味油の発現効果が弱くなり、逆に15重量部以上だと辛味の発現効果が強くなり好ましくなくなる。
さて、水、香味油、調味料、上述した他の食材からなるソースをレトルトパウチに入れてレトルト殺菌を行う。この時のレトルト殺菌条件は特に限定されるものではなく、通常の条件、例えば120℃で4〜20分で行えばよい。無論この条件は一例であり、これ以外の条件でレトルト殺菌を行っても構わない。
【0013】
本発明の特徴は、レトルト殺菌処理したソースと澱粉を別の包材に分けることである。即ち、ソースと澱粉を別々の包材に入れた中華合わせ調味料は、従来の澱粉をソース部に配合してからレトルト殺菌に付したものに比較して、著しい香り、風味向上効果がもたらされる。
詳しくは、豆腐、牛肉、豚肉、鶏肉、野菜等の中華料理に供せられる素材とソース、澱粉を調理時に混合することで、従来にない好ましい香り、風味向上効果が得られる。
【0014】
ソースは前述のようにレトルト殺菌に付されるのでレトルトパウチに入れる必要があるが、一方、澱粉を入れる包材は特に限定されない。しかし、通常、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、オリエンテッドポリプロピレン、アルミニウムが用いられる。次に、澱粉の量はソース100重量部当たり通常 1〜8重量部、好ましくは2〜5重量部である。ただ、この数値範囲は目安であり、この範囲に限定されるものではない。
使用する澱粉として、その種類は特に限定されないが、通常は馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉等を用いればよい。特に、好ましくは馬鈴薯澱粉を用いればよい。また、リン酸化処理澱粉、エステル化澱粉、湿熱処理澱粉等の加工澱粉を用いても構わない。
尚、澱粉はソース部分とは異なり、加熱処理或いはレトルト殺菌処理に付す必要はないが、加熱或いはレトルト殺菌処理してもかまわない。
【0015】
レトルト処理したソースと澱粉を別の包材に入れて組み合わせた本発明の中華合わせ調味料は、今まで存在しない新しいタイプの調味料である。本発明の中華合わせ調味料は、麻婆豆腐、千焼蝦仁、麻婆茄子、回鍋肉、青椒肉絲等の中華料理に使用できるが、最も効果が高いのは麻婆豆腐、千焼蝦仁、麻婆茄子に用いた場合である。
【実施例】
【0016】
以下、本発明を実験例および実施例に従って説明する。尚、当然のことであるが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0017】
実験例
粉砕した唐辛子10kgをガス直火式の焙煎機で攪拌しながら品温が約140℃になるまで加熱した。途中、各品温のときに100gずつ抜き取り、焙煎度の異なる焙煎唐辛子を得た。得られたそれぞれの焙煎唐辛子をコーン油1kg中に浸漬し、100℃で加熱し抽出した。これを冷却、ろ過し焙煎唐辛子油を得た。
【0018】
得られた焙煎唐辛子油を官能評価した。結果を表1に示す。結果から品温が115〜135℃となるまで焙煎したもので求める風味が付与されており、さらに好ましくは120〜130℃の範囲に焙煎されるものが最も風味が良いことが分かった。
【0019】
【表1】

【0020】
実施例
粉砕した唐辛子10kgをガス直火式の焙煎機で攪拌しながら品温が125℃になるまで加熱した。得られた焙煎唐辛子をコーン油100kg中に浸漬し、100℃で加熱し抽出した。これを冷却、ろ過し焙煎唐辛子油を得た。
【0021】
焙煎唐辛子油5kgと、ニンニク、豆板醤、醤油、グルタミン酸ナトリウムなどからなる調味液部45kgと水50kgを混合した。十分混合した後、100gずつレトルト包材に密封し、レトルト殺菌装置にて120℃で10分間殺菌しソース部を得た。馬鈴薯澱粉4gをポリエチレン包材に密封し澱粉部とした。
【0022】
フライパンで油10gと肉100gを加熱した後、ソース部を添加し加熱した。さらにさいの目に切られた豆腐400gを加え加熱した。ここに水30gに澱粉部を溶解した澱粉液を加え、さらに粘度がつくまで加熱し麻婆豆腐を得た。このようにして得られた麻婆豆腐を本発明の食品とする。
【0023】
比較対照品として、以下のように従来の手法で調製したもの用いた。ニンニク、豆板醤、醤油、グルタミン酸ナトリウムなどからなる調味液部45kgと馬鈴薯澱粉4kgと水46kgを混合した。100gずつレトルト包材に密封し、レトルト殺菌装置にて120℃で10分間殺菌し、ソース部を得た。
フライパンで油10gと肉100gを加熱した後、ソース部を添加し加熱した。さらにさいの目に切られた豆腐400gを加え加熱し、麻婆豆腐を得た。このようにして得られた麻婆豆腐を比較の食品とする。
【0024】
本発明の食品及び比較の食品をパネル60名に試食してもらい官能評価を実施したところ、風味の強さ、好ましさ、総合評価で有意に本発明の食品が好まれた。結果を表2に示す。(数字は構成比%を表す)
【0025】
【表2】

【0026】
この結果からも分かるように、本発明の食品は比較の食品に比べて有意に優れていることが確認できた。
尚、同様の手法で干焼蝦仁、麻婆茄子、回鍋肉、青椒肉絲を評価したところ、麻婆豆腐と同様の結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、香味油、調味料を主成分とする溶液をレトルト殺菌したソースと、澱粉を別の包材に入れたものであることを特徴とする中華合わせ調味料。
【請求項2】
ソース中の香味油の含量が、ソース全体の0.3〜15重量%である請求項1記載の中華合わせ調味料。
【請求項3】
香味油が、品温115〜135℃まで加熱した焙煎唐辛子を食用油に浸漬し抽出したものである請求項1記載の中華合わせ調味料。
【請求項4】
中華合わせ調味料が、麻婆豆腐用、千焼蝦仁用、麻婆茄子用、回鍋肉用又は青椒肉絲用である請求項1記載の中華合わせ調味料。

【公開番号】特開2007−151484(P2007−151484A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−352950(P2005−352950)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】