説明

中間ストラット相互連結部材を有する管腔ステント

管腔ステント(10)は、ステント(10)の円周を形成するように配列すると共にステント(10)の軸線に沿って延在する複数の円周拡大要素(12)と、円周拡大要素(12)の隣接対を相互に連結する複数の相互連結部材(14)とを具え、相互連結部材(14)は、ストラット(16)のほぼ中間点にて相互連結部材(14)の隣接対のストラット16に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管腔ステントと、被覆ステントと、ステントグラフトとに概ね関し、案内ワイヤを通り越す送出カテーテルを用いた経皮的血管送出の如き、最低限の外科的技術を使って解剖学的通路に送出するように設計される。より詳細には、本発明は、構造体の構成および構造幾何学的形状を有する管腔ステントに関し、生理的に受け入れ可能な半径方向、すなわちフープ強度と長手方向可撓性とを与え、同時にまた、本発明の装置の管腔面を横切って流体が流れる間、長手方向の剪断力に対してより少ない障害をもたらし、同時に疲労寿命および耐食性を最大にするのに特に適切である。さらに、この発明の管腔ステントは、一意的に半径方向の拡大に対して負の係数の長手方向の短縮を独自に有する幾何学的形状によって特徴付けられる。従って、この発明の管腔ステントの独特な形態は、これが半径方向の拡大に対して長くなるということである。
【背景技術】
【0002】
管腔ステントは、グラフト可能な生体適合性材料から作られる概ね筒状の構造体である。ステントは、中央空隙,長手方向軸線,円周方向軸線および半径方向軸線によって特徴付けられた概ね筒状の幾何学的形状を有する。従来の管腔ステントは、バルーン膨張,自己展開および形状記憶の3つの概略分類内に属する。バルーン膨張ステントは、バルーンカテーテルを使うことによる如き、機械的介入を必要とし、ステントの中央空隙から半径方向外側に正圧を印加し、ステントを機械的に膨らませてこれを大きな径に付勢する。自己展開ステントは、ステントを拡大するためにステント材料における材料固有の機械的特性を利用する。一般に、自己展開ステントは、正圧が材料に加えられた場合に反発する材料から作られる。自己展開ステントは、それらのゼロ応力形状が第2の大きな径となるように製造される。自己展開ステントは、最初のより小さな径まで引き下ろされ、管腔内送出のために送出カテーテル内に拘束される。拘束の解除は、それ自身の機械的特性の下で拘束圧力および自己展開ステントを解放し、第2のより大きな径へと反発する。最後に、形状記憶ステントは、ある特定の熱状態の下で形状記憶を示す独特な合金に依存する。従来の形状記憶ステントは、一般にニチノールとして概ね知られているニッケル−チタン合金であり、そしてそれは標準的な人体温度、すなわちセ氏37度またはその近傍での相転移を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術は、あらゆるステント分類に亙って種々のステント設計で満たされている。従来の多くのステント設計に関する困難性の1つは、ステントの円周、すなわちフープ強度,長手方向、すなわちコラム強度,長手方向可撓性,ステントの個別の構造部材のフィッシュスケーリング,疲労寿命,耐食性,腐食疲労,血液力学,電磁波不透過性および生体適合性ならびにグラフト済みステントを介したステントを通過する能力に関する望ましい特性の間の矛盾する基準のために生ずる。一般に、フープ強度に対して最適に設計されたステントは、コラム強度および/または長手方向可撓性を一般に犠牲にする一方、コラム強度に対して最適に設計されたステントは、長手方向可撓性および/またはフープ強度をしばしば危うくする。
【0004】
従来のステントの大部分は、ステントの半径方向の拡大に対して長手方向の短縮を示す。長手方向の短縮は、ステントが収縮状態から完全な拡大状態まで半径方向に拡がるので、ステントの構造部材の幾何学的変形に起因するよく知られた特性である。ステントの新奇な特徴として、ステントの感知可能な短縮の欠落を請求したいくつかの従来技術のステントが発明されている。しかしながら、収縮した状態から完全に拡大した状態まで半径方向の拡大に対して長手方向に伸びるステントは、これまでこの分野において知られていない。
【0005】
管腔ステントのフープ強度,コラム強度および長手方向可撓性の間の釣合いを達成する幾何学的パターンで配列する一連の第1および相互連結部材を使用する管腔ステントを発明するのが望ましいことを見出した。従来の多くのステントは、さまざまな形状の一連の円周構造要素および長手方向構造要素を使用している。多数の従来のステントは、曲がりくねった形状またはジグザグ形状に形成された円周構造要素を利用する。この形状を基礎とする理由は、ステントの半径方向の拡大が必要なためである。曲がりくねったり、ジグザグの円周構造要素を使用するこれら従来のステントの大部分はまた、隣接する円周構造要素に接続する長手方向構造要素を使用し、僅かな長手方向、すなわちコラム強度をもたらすと同時に装置の長手方向可撓性を保持する。さらに、従来の多くのステントは、ステントの係合面を接続するために溶接を必要とする。
【0006】
しかしながら、これまでこの技術は、フープ強度とコラム強度と長手方向可撓性との間の釣合い,長手方向短縮の度合い,ステントの円周方向強度、すなわちフープ強度,長手方向可撓性,ステントの個々の構造部材のフィッシュスケーリング,疲労寿命,耐食性,腐食疲労,血液力学,電磁波不透過性,生体適合性およびグラフト済みステントを介したステント通過能力を達成するユニボディのステント構造要素の幾何学的形状を発明していない。「フィッシュスケーリング」という用語は、この分野で用いられており、ここでは何らかのステント構成要素が半径方向拡大か、グラフトか、あるいは同時に血管の曲げを介してステントを通している間、ステントの円周方向平面を越えて延在する状態を述べている。当該分野の当業者らは、ステント構成要素のフィッシュスケーリングが、管腔内送出中またはグラフト後のステントに解剖学的組織と突き当たるか、または引っ掛かることをもたらすことを理解する。ここに用いた「ユニボディ」という用語は、溶接を用いずに一体部品として材料から製造されるステントを意味することを意図している。
【0007】
必然性はないけれども、この発明の管腔ステントは、気相堆積技術により製造することができる。本発明のステントの気相堆積製造は、限定なく、複雑な幾何学的形状のステントを製造する能力,疲労寿命を制御する能力,耐食性,腐食疲労,バルクおよび表面材料特性,断面形状を変える能力,Z軸厚みおよび長手方向可撓性に影響を与える方法でのステント構成要素のX−Y軸面領域,ステントのフープ強度および半径方向の拡大形状を含む多くの利点をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
管腔ステント,被覆ステントおよびステントグラフト設計は、生得的に半径方向の膨張性の機能的な形態、すなわち拡大した径に対する送出径の割合,フープ強度,長手方向可撓性,長手方向短縮特性,コラム強度,ステントの個々の構成部材のフィッシュスケーリング,疲労寿命,耐食性,腐食疲労,血液力学,生体適合性およびステント間の送出能力を最適化することを本質的に企図する。従来のステント設計は、特定の機能を最大にするため、例えば望ましいコラム強度を達成するために長手方向可撓性が最小にされたり、高いフープ強度が小さな割合の半径方向伸長性の犠牲にて達成されるように、ステントの1つ以上の機能的特徴を危うくしなければならなかった。半径方向伸長性の比率,フープ強度,長手方向可撓性およびコラム強度,生体適合性,血液工学,電磁波不透過性,最少またはフィッシュスケーリングなし,内皮化に対する増大能力の間の釣り合いを達成する管腔内ユニボディ構成ステントのための設計を提供することが本発明の目的である。
【0009】
本発明の好ましい実施形態によると、本発明の管腔ステントは、生体適合性の金属または擬似金属の単一の部品から形成され、ステントの長手方向軸線に沿って同軸に配列する複数の円周拡大部材と、円周拡大部材の隣接対を相互に連結する複数の相互連結部材とを有する。複数の円周拡大部材のそれぞれは、概ね正弦波形のリング構造を具えており、ステントストラット部材によって相互に連結される連続した頂部と底部とを有する。相互連結部材のそれぞれは、円周拡大部材の隣接対をステントストラット部材のほぼ中間点にて円周拡大部材の隣接対に対して相互に連結する。本発明のステントの長手方向可撓性を強化するため、相互連結部材の主たる中間領域より幅が狭い各相互連結部材の小さい方の端末領域を含むことが望ましいことを見出した。この副端末領域は、各相互連結部材の基端および末端の両方に配され、ステントストラット部材と相互連結部材との間の接続領域における屈曲性を強めるように幅が狭くなっている。さらに、相互連結部材の小端末領域のそれぞれを、各相互連結部材の中間領域から基端または末端に延在する概ねC字形形状の形態にて形成することが望ましいことを見出した。
【0010】
本発明のすべての実施形態によると、複数の円周拡大部材のそれぞれと、複数の相互連結部材とを、同様な生体適合性の材料、好ましくは生体適合性の金属または合金から作ることができる。この方法において、複数の円周拡大部材および複数の相互連結部材の両方とも、同様な物理的材料特性、例えば引張り強さ,弾力性,可塑変形性,ばね偏倚、形状記憶または超弾性特性を有する。代わりに、複数の円周拡大部材および相互連結部材は、生体適合性材料、好ましくは異なった物理的または材料特性を示す生体適合性の金属または合金から作ることができる。後者の場合、複数の円周拡大要素は、例えばステンレス鋼の如き柔軟に変形可能な材料から作ることができ、また複数の相互連結部材を、ニッケル−チタン合金の如き形状記憶または超弾性材料か、あるいはステンレス鋼の如きばね付勢材料から作ることができる。
【0011】
これまで、管腔ステントの個々の部分の間の接続は、ステントの接続部分のために溶接を必要としていた。本発明の1つの特別な利点は、気相堆積技術を使ってステントを形成することにより、個々の領域が溶接を使用せずに原子的に結合されるのみならず、個々の領域に対して別の材料特性およびそれ故機能性を与えるため、異なる材料をステントの異なる別々の部分に用いることができるということである。
【0012】
最後に、本発明はまた、自立式管腔内グラフトも含んでいる。ここに用いた「グラフト」という用語は、一体型柱状および円周方向強度を示す任意の種類の筒状部材を示し、筒状部材の厚さを通り抜ける開口を有することを意図している。本発明の自立式管腔内グラフトは、複数の層の少なくとも1つから形成される部材からなることが好ましく、各層は上述したように相互に交差する複数の第1および相互連結部材からなり、第1および相互連結部材の交差対の間に複数の開いた領域を画成する。ウェブ領域は、複数の開いた領域のそれぞれを少なくとも部分的に囲むように、少なくとも開いた領域の部分を内在する。開いた領域がZ軸に関してずれるように、複数の層の連続する隣接層は、自立式の管腔内グラフトの壁を横切って配される。開いた領域をずらすことにより、層間空間が管腔内グラフトの内皮化を容易にするために作られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明によると、いくつかの好ましい実施形態がもたらされる。本発明の好ましい実施形態のそれぞれにおいて、この発明の管腔ステントの概略形状はほぼ同じである。特に図1を参照して具体的に説明すると、本発明の管腔ステント10は、ステント10の円周方向軸線C'を中心とする概ね閉じたリングを形成する複数の円周拡大要素12にて構成される概ね中空の筒状要素からなり、ステント10の長手方向軸線L'に沿って相互に同軸の関係で間隔をあけて配列している。複数の相互連結部材14は、複数の円周拡大要素12の隣接対を相互に連結する。複数の円周拡大要素12のそれぞれは、円周拡大部材のそれぞれの複数の頂部12pと複数の底部12tとを持った概ね正弦波形状と、隣接する頂部12pおよび底部12tを相互に連結する複数のストラット16とを有する。1つの円周リング部材12における複数の頂部12pおよび複数の底部12tは、隣接する円周リング部材12の複数の頂部12pおよび複数の底部12tと同位相か、あるいは位相がずれていてもかまわない。さらに、各円周リング部材12内において、頂部12pおよび底部12tは一定または不規則な周期を有することができ、あるいは複数の円周拡大要素のそれぞれが一定周期の領域と不規則な周期の領域とを有することができる。複数の相互連結部材14のそれぞれは、第1の円周拡大要素12のストラット16を第2の隣接する円周要素12のストラット16と相互に連結する幅Wiを持った概ね直線状の要素を好ましくは具えている。複数の相互連結部材のそれぞれは、概ね長方形の横断面形状を有する。本発明の好ましい実施形態のそれぞれによると、複数の相互連結部材14およびストラット16のそれぞれの間の相互連結は、ストラット16の長手方向に沿ったほぼ中間点にて行われる。複数のストラット16のそれぞれは、幅Wsを有すると共に横断面が概ね長方形である。
【0014】
さらに、仮想で示した複数の末端フランジ部材11は、(図示せず)グラフト被膜をステント10に取り付けるための装着点をもたらすために与えることができる。末端フランジ部材11は、ステント10の末端,基端または両端に配置することができ、好ましくはステント10の基端および末端の両方または何れか一方にて円周拡大要素12の頂部12pまたは底部12tから概ね直線状に突出して形成される。複数のフランジ部材11のそれぞれは、グラフト被膜の装着を容易にするために丸い末端または基端領域をさらに含むことができる。
【0015】
図2および図6を参照すると、本発明のステント10をその最初のより小さな送出径に縮めることを容易にするため、頂部12pおよび底部12tのそれぞれに各円周拡大部材12に沿って隣接するストラットを連結する概ねU字形蝶番要素22を与えることが望ましいことが見出された。本発明の好ましい実施形態によると、概ねU字形要素蝶番のそれぞれは、これが連結されるストラット16のWsよりも狭い幅Whを有することが望ましい。WhをWsよりも小さくすることにより、概ねU字形の蝶番要素22によって相互連結された隣接するストラット16の間に形成される角度aの圧縮のより大きな度合いを実現し、これによってU字形蝶番要素22が用いられなかった所で見出されるよりも本発明のステント10によって大きな圧縮可能性を与えることが見出された。
【0016】
さらに、本発明の最良の形態によると、複数の相互連結部材14のそれぞれの両端にてひずみ軽減部18および20を与えることが望ましいことを見出している。ひずみ軽減部18および20は、相互連結部材14の末端部を具え、相互連結部材14の幅Wiよりも狭い幅Wtを有する。本発明の一実施形態によると、ひずみ軽減部18および20は概ねC字形状をそれぞれ有し、相互連結部材14を、隣接する円周拡大部材12のストラット16と連結する際の半径を横切る。C字形末端ひずみ軽減部18および20の別な幾何学的形状もまた、相互連結部材14のそれぞれの長手方向軸線に沿って同軸に突出するS字形状,V字形状,M字形状,W字形状,U字形状,あるいは単なる概ねI字形状の延在部の如く、本発明によって意図されている。
【0017】
図2〜図5は、本発明のステント10の他の好ましい実施形態を描いている。図2〜図5に描いた各好ましい実施形態は、複数の頂部12pおよび底部12tをそれぞれ有し、頂部12pおよび底部12tにて相互連結される複数のストラット16が形成され、概ねU字形状要素22が頂部12pおよび底部12tを形成し、複数の相互連結部材14によって相互に連結される円周拡大要素12の隣接対と同じ円周拡大要素12を含む。従って、図2〜図5のそれぞれにおいて、同様の要素は、同様の参照符号によって識別される。図2,図3,図4および図5にそれぞれ示す本発明のステント30,40,50および60の他の好ましい実施形態は、複数の相互連結部材14の位置および向きが主に異なる。図2〜図5において、ステント30,40,50および60のそれぞれが平面図にて示されている。例示の容易性のために平面図が描かれ、またステントの幾何学的配列を平面図に示すため、描かれたステントがステントの長手方向軸線L'に沿った分割線を構成するA−A線およびB−B線を持った筒状であることを当業者らは理解しよう。
【0018】
図2において、ステント30は複数の円周拡大部材12と複数の相互連結部材14とを具えている。複数の相互連結部材14のそれぞれは、円周拡大部材14の隣接対に接続する。それぞれの相互連結部材14は、隣接する円周拡大部材12のそれぞれのストラット16と結合部を形成し、かつそれぞれのストラット16の長手方向に沿ったほぼ中間点にてストラット16に交差する。複数の相互連結部材14は、ステント30の長手方向軸線L'に沿ってグループ14a,14b,14c,14d,14eおよび14fを形成する。相互連結部材14は、角度αについて頂部12pおよび底部12tおよびストラット16の折りたたみ面にあるので、ステント30のより大きな径からより小さな径まで円周拡大部材12の折りたたみ特性を向上させるため、ステント30の長手方向軸線L'と平行な線から角度βまで相互連結部材14のそれぞれをオフセットすることが望ましいことを見出した。ステント30において、グループ14a〜14fの複数の相互連結部材14のそれぞれは、同じオフセット角度βを有し、複数の相互連結部材14のすべてが相互に平行である。オフセット角度βを調整すると共にそのより大きな径からそのより小さな径までステント30の圧縮中に相互連結部材14の折りたたみをもたらすように、ひずみ軽減部18および20が相互連結部材14のそれぞれの端縁に反対向きに有する。従って、ステント30が基端視線Pからその筒形状を見た場合、第1のひずみ軽減部18が右手、すなわち時計回りの向きを有する概ねC字形状を有するのに対し、同様な概ねC字形状を持った第2のひずみ軽減部20は、概ね左手、すなわち反時計回りの向きを有する。
【0019】
ステント30に対する好ましい実施形態によると、頂部12pまたは底部12tが相互連結部材に対して2:1の割合を用いることが望ましいことを見出している。従って、描かれているように、複数の円周拡大要素のそれぞれに6つの頂部12pおよび6つの頂部12tがあり、3つの相互連結部材14がそれぞれ円周拡大要素12の隣接対を相互に連結している。同様に、円周拡大要素12の隣接対の間において、相互連結部材14は、1つの頂部12pおよび1つの底部12tを円周拡大要素12の隣接対の相互連結部材12から円周方向にオフセットしている。従って、グループ14a,14cおよび14eの相互連結要素が円周方向拡大要素の対12a-12b,12c-12d,12e-12f,12g-12hおよび12i-12jを相互に連結し、グループ14b,14dおよび14fの相互連結要素が円周方向拡大要素の対12b-12c,12d-12f,12f-12g,12g−12hを相互に連結する。グループ14a,14cおよび14eの相互連結要素に関し、それぞれ円周拡大要素12の円周方向軸線に沿ってそれぞれ1つの頂部12pおよび1つの底部12tによりオフセットされている。
【0020】
図3に転ずると、頂部12pまたは底部12tを相互連結要素に対して2:1の割合を用いる代わりに、ステント40が3:1の割合を用いている以外、円周拡大要素12および相互連結要素14とほぼ同一の形状を有するステント40が示されており、各円周拡大要素12a〜12iが6つの頂部12pおよび6つの底部12tを有するけれども、円周要素12の隣接対は単に2つの相互連結要素14によってのみ相互に連結されるようになっている。ステント30と同様に、ステント40におけるオフセットが1つの頂部12pおよび2つの底部12tか、または2つの頂部12pおよび1つの底部12tであることを除き、第1の円周拡大要素対の相互連結要素が第2の隣接する円周拡大要素対の相互連結要素から円周方向にオフセットされている。ステント40において、複数の円周拡大要素12を相互に連結する4つのグループの相互連結要素14a,14b,14cおよび14dがある。相互連結要素グループ14aおよび14cは、円周拡大要素対12b- 12c,12d-12e,12f-12gおよび12h-12iを相互に連結し、相互連結要素グループ14bおよび14dは、円周拡大要素対12a-12b,12c-12d,12e-12fおよび12g-12hを相互に連結する。
【0021】
ステント40において、相互連結要素14のそれぞれはまた、複数の相互連結要素14が相互に関してすべて平行ではないことを除き、ステントの長手方向軸線から角度βだけ角度がオフセットされている。むしろ、相互連結要素グループ14aおよび14cにおける相互連結要素は相互に平行であり、相互連結要素グループ14bおよび14dにおける相互連結要素は相互に平行であり、グループ14aおよび14cにおける相互連結要素がステントの長手方向軸線から角度β+としても示された角度βと交互に角度β−だけオフセットされ、グループ14bおよび14dにおける相互連結要素に対して長手方向軸線L'からのオフセットを形成している。称呼角度β+および角度β−は、これらの角度が長手方向軸線L’からほぼ同じ角度のオフセットを表すが、ステント40の円周方向軸線に関して互い違いの向きを有していることを示すことを意図している。
【0022】
さて、ステント50が描かれた図4に転ずる。上述したステント30および40と同様に、ステント50は、円周拡大要素12の共通要素を共有し、複数のストラット16とU字形部分22とを相互に連結する複数の頂部12pおよび底部12tと、相互連結要素14とを有する。しかしながら、ステント50における複数の相互連結要素14は、相互連結要素14aおよび相互連結要素14bの2つのグループを形成する。相互連結要素のグループ14aおよび14bにおけるそれぞれ個々の相互連結要素14はまた、ステント50の長手方向軸線L'から角度βだけ角度がオフセットされている。さらに、それぞれ円周拡大要素12の隣接対において、相互連結要素のグループ14aおよび14bは、3つの頂部12pおよび3つの底部12tだけ相互に円周方向にオフセットされている。しかしながら、相互連結要素のそれぞれのグループ14aおよび14b内において、複数の個々の相互連結要素14のそれぞれは、共通の長手方向軸線をに沿って概ね一直線状に配列している。この方法において、最基端12aおよび最末端12bの円周リング要素を除き、複数の相互連結要素のそれぞれは、円周拡大要素12b〜12hのそれぞれのストラット16のほぼ中間点にて実質的4点接続部19を形成する。この実質的4点接続部19は、ストラット16の基端側と共に一方の相互連結部材のひずみ軽減部20の末端と、同じストラット16の末端側と共に隣接する相互連結要素14のひずみ軽減部18の基端との間に形成される。
【0023】
最終的に図5に転ずると、複数の円周拡大要素12と、円周拡大要素12の隣接対を相互に連結する相互連結要素14と具え、ステント30,40および50と類似のステント60が示されている。図3のステント40のように、ステント60は、相互連結要素のグループ14a,14b,14cおよび14dの状態の相互連結要素14のグループを有する。しかしながら、ステント60においては、相互連結要素のグループ14aおよび14dが円周拡大要素12の同じ対を相互に連結し、相互連結要素のグループ14bおよび14cが円周拡大要素12の同じ対を相互に連結する。相互連結要素のグループ14aおよび14dの相互連結要素のそれぞれは、ステント60の長手方向軸線L'から角度βだけ角度がオフセットされると共に相互に平行である。同様に、相互連結要素グループ14bおよび14cにおける相互連結要素のそれぞれは、ステント60の長手方向軸線L'から角度β+だけ角度がオフセットされると共に相互に平行である。
【0024】
それぞれ円周拡大要素12の隣接対に対し、相互連結要素14はステント50の長手方向軸線L'から角度がオフセットされた異なる向きを有する。例えば、円周拡大要素の対12a-12bに関し、グループ14bおよびグループ14cの相互連結要素は、それぞれ角度β+および角度β−だけオフセットされている。隣接する円周拡大要素の対12b-12cにおいて、グループ14aおよび14dの相互連結要素は、それぞれ角度β−および角度β+だけオフセットされている。従って、円周要素12の隣接対の間において、相互連結要素は位相がずれており、これらは角度が角度βの異なる向きを有する。さらに、円周要素12の隣接対の間において、相互連結要素は、単一の頂部12pだけ円周方向にオフセットされ、相互連結要素グループ14aが相互連結要素グループから単一の頂部12pだけ円周方向にオフセットされていると共に相互連結要素グループ14cが相互連結要素グループ14dから単一の頂部12pだけ円周方向にオフセットされている。さらに、個々の円周拡大要素12の隣接対において、相互連結要素グループの対14b-14cと14a-14dとの間に異なる円周方向オフセットがある。相互連結要素グループの対14b-14cの間の円周方向オフセットは、2つの頂部12pおよび3つの底部12tであるのに対し、相互連結要素のグループの対14a-14dの間にある円周方向オフセットは、4つの頂部12pおよび3つの底部12tである。
【0025】
当業者らは、ステント10,20,30,40および50の前述した実施形態が共通の構造的要素をすべて具えた種々の幾何学的形状を記述していること、すなわち、円周拡大要素12が複数の頂部12pおよび底部12tと蝶番要素22により相互に連結されるストラット15とを有していることを認識しよう。さらに、当業者らは円周拡大要素12の隣接対の間およびステントの円周方向軸線に沿った相互連結部材14の数および位置に関する変更もまた、本発明により考慮されており、図面を参照して例示および記述した特定の実施形態が本質的な代表であることを理解しよう。
【0026】
しかしながら、図3は本発明のスタント40の特に好ましい一実施形態を表している。本発明のステント40は、記述した幾何学的形状をニッケルチタン低酸化管からレーザー切断することにより作られる。レーザー切断後、完全拡大状態で5.8mmの拡大外径と30.6mmの長さとを持つ形状記憶特性をステント40に設定するため、ステント40が焼鈍される。ステント40は、より小さな1.4mmの折りたたみ外径に折りたたまれ、図7に示すような拘束シース内に置かれる。ステント40は、円周拡大要素12と相互連結要素14との間に明瞭に判断できるような干渉がなく、角度aを介して概ねU字形状蝶番要素22に折りたたむストラット16を持つ優れた折りたたみ性を示した。
【0027】
ステント40の半径方向の拡大中、その最初の拘束されたより小さな直径、すなわち1.4mmからその第2の拡大された半径方向拡大された直径、すなわち5.8mmまで、ステント40はこの分野にて知られた多くのステント幾何学的形状の短縮特性を全く示さなかった。短縮とは裏腹に、このステント40は2.5%だけ予期せずに伸びた。これまで半径方向拡大の状態で伸びるステントは、この分野において知られていない。
【0028】
図8は、拘束シースがステント40から引き出されるように、半径方向に拡大しているステント40を描いている。図9は、径がほぼ完全に半径方向に膨らんで拡大したステント40を描いているが、ステント40の基部のみ拘束シース(図示せず)に拘束されている。図6は、基端および末端のひずみ軽減部18および20における円周拡大要素12と相互連結要素14との間の中間ストラット連結を示すステント40の拡大部分であり、概ねU字形蝶番要素22aと、各円周拡大要素12の頂部12pおよび底部12tとを明瞭に示している。図6はまた、基端および末端のひずみ軽減部の幅Wtと、相互連結部材14の本体の幅Wiとの相違を、U字形蝶番要素22の幅Whと、ストラット16の幅Wsとの間の相違と同様に、明瞭に描いている。
【0029】
複数の円周拡大要素12および相互連結部材14ならびにそれらの構成部品は、チタン,バナジウム,アルミニウム,ニッケル,タンタル,ジルコニウム,クロム,銀,金,シリコン,マグネシウム,ニオブ,スカンジウム,プラチナ,コバルト,パラジウム,マンガン,モリブデンおよびこれらの合金、ならびにニチノールおよびステンレス鋼からなるグループから選択される材料から作られることが好ましい。複数の円周拡大要素12および複数の相互連結部材14は、同じ材料または異なる材料から作ることができ、同じ材料特性を有するか、あるいは異なる材料特性を有することができる。「材料特性」という用語は、弾性,引っ張り強さ,機械的特性,硬さ,バルクおよび/または表面粒径,粒子組成および粒界寸法,ならびに内部粒子析出物を限定せずに含む物理特性を包含するように意図している。同様に、複数の円周拡大要素12および複数の相互連結部材14のために選択される材料は、同じまたは異なる化学的特性を有するように選択することができる。「化学的特性」という用語は、人体内へのグラフト後に材料が受ける可能性がある任意の化学反応および状態変化と、グラフト後の材料に対する人体の生理的反応との両方を包含するように意図している。
【0030】
本発明のステントが化学的エッチング,レーザー切断,EDMあるいはウォータジェット処理の如き、この分野において知られた化学的,熱的,または機械的に除去可能な方法によって製造することができるけれども、本発明のステントを製造するための好ましい方法は、物理的気相堆積技術によるものであると思われる。物理的気相成長法は、ステントおよびステント材料の物理的および化学的特性と同様、ステントの幾何学的形状の公差を共にしっかりと制御する能力を与える。これらの要素、すなわち複数の円周拡大要素12および相互連結部材14ならびにこれらの構成部品のそれぞれを含む本発明のステント10,30,40,50および60は、これらの管腔面に制御された異成分を有するバルク材料から好ましくは作られる。2002年4月30日に交付された米国特許第6379383号の分割であり、参照することによって本明細書に組み入れられ、2000年12月22日に提出され、同時継続で普通に譲受された米国特許出願第09/754304号に記述されているように、規定した粒子の寸法,化学的および内部および粒間析出物を有するようにステントのバルク材料を製造することにより、異成分が制御され、バルクおよび表面の形態は、ステントの表面に沿ったしなやかな領域または場所とは異なるけれども、受容可能または最適なタンパク質結合能力を維持する。本発明のステントの特徴として望ましい特性は、(a)規制当局の承認基準と一致または上回る最適な機械的特性と、(b)亀裂またはピンホール欠陥の如き欠陥の最小化と、(c)模擬加速試験によって測定されるような400MMサイクルの疲労寿命と、(d)腐食および/または腐食疲労抵抗と、(e)生物学的に重大な不純物を持たない材料の生体適合性と、(f)非外傷性管の交差および追跡を容易にすると共にステント導入のための変換カテーテル技術と互換性があるように、実質的に摩擦のないアブルミナル(abluminal)面と、(g)選択領域での放射線不透過性およびMRI互換性と、(h)表面エネルギーおよびマイクロレリーフのために最適化される管腔面を有することと、(i)望ましい材料特性を達成することと結び付く最小の製造および材料コストと、(j)高い処理収益である。
【0031】
本発明によると、前述の特性は、参照することによってこの明細書に組み込まれるマイクロ電子工学およびナノ製造真空コーティング技術にて用いられ、かつ標準的である同じ金属堆積手順にてステントを製造することによって達成される。好ましい堆積手順は、イオンビーム補助気相堆積およびスパッタリング技術を含む。イオンビーム補助気相堆積において、二重および同時熱電子ビーム蒸発をアルゴン,キセノン,窒素またはネオンの如き不活性ガスを用いた基板の同時イオン衝撃と共に用いることが好ましい。アルゴンイオンの如き不活性ガスでの衝撃は、堆積中に堆積する材料の原子充填密度を増大することによって、無効な内容を減らすのに役立つ。堆積材料中の減少した無効な内容は、堆積材料の機械的特性がバルク材料特性と類似することを可能にする。20nm/秒までの堆積割合は、イオンビーム補助気相堆積技術を用いて達成可能である。
【0032】
スパッタリング技術が用いられる場合、200ミクロンの厚さのステンレス鋼フィルムが約4時間堆積時間内に堆積させることができる。スパッタリング技術に関し、円筒状のスパッタリングターゲット、つまりソース内に同軸位置に保持される基板を同軸に囲む単一の円形ソースを用いることが望ましい。本発明によりステントを形成するために用いることができる別な堆積方法は、陰極アーク,レーザー切除および直接イオンビーム堆積である。真空堆積手順を用いる場合、堆積フィルムの結晶構造は、堆積フィルムの機械的特性に影響を与える。これら堆積フィルムの機械的な特性は、例えば焼鈍,高圧処理またはガス焼入れによる如き、後工程処理によって変更させることができる。
【0033】
本発明のステントを作るための材料は、それらの生体適合性と、機械的特性、すなわち引張り強度,降伏強さと、それらの堆積の容易性とに関して選択され、次の元素のチタン,バナジウム,アルミニウム,ニッケル,タンタル,ジルコニウム,クロム,銀,金,シリコン,マグネシウム,ニオブ,スカンジウム,白金,コバルト,パラジウム,マンガン,モリブデンおよびジルコニウム−チタン−タンタル合金,ニチノールおよびステンレス鋼の如きこれらの合金を含む。
【0034】
堆積中のチャンバ圧力,堆積圧力および処理ガスの部分的な圧力は、基板に望ましい種類の堆積を最適化するように制御される。マイクロ電子製造,ナノ製造および真空コーティング技術において知られているように、反応性および非反応性ガスが共に制御され、堆積チャンバに導入される不活性または非反応性ガスの種類は、一般にアルゴンおよび窒素である。基板は、静止または移動可能の何れかであってよく、基板に対する堆積材料の堆積またはパターニングを容易にするため、その長手方向軸線回りに回転するか、または反応装置内のX−Y平面で動かされる。堆積材料は、基板に対して一体の一様なフィルムとして堆積するか、または(a)基板表面に与えられるエッチングまたはフォトリソグラフィ技術による如き、望ましいパターンの顕像または潜像を作り出すように、基板に顕像または潜像パターンの何れかを与えるか、あるいは(b)基板に対して与えられるパターンを画成するように、基板に対して静止または移動可能である1枚のマスクかマスクのセットを用いることにより、パターンを形成することができる。パターニングは、ステントの半径方向の拡大に対してステントの両端の広がりを妨げるべく、ステントの基端および末端の部分を厚くするように、その長手方向に亙って材料の壁厚を変えることによる如き、堆積フィルムの異なる領域での材料厚さと同様に、パターンの空間配向の状況においても、結果として得られるステントの複雑な幾何学的仕上げ形状を達成するために用いることができる。
【0035】
ステントは、種々の方法の何れかによるステントの構成後に基板から取り除くことができる。例えば、基板はエッチングまたは溶解の如き化学的手段,切除,機械加工または超音波エネルギーにより取り除くことができる。代わりに、炭素またはアルミニウムの如き材料の犠牲層を基板とステントの中間に堆積させることができ、基板からステントを自由にするため、この犠牲層は溶融,化学的手段,切除,機械加工または他の適当な手段によって取り除かれる。
【0036】
次に、結果として得られるステントに、あるいは悪影響を与えるべきエッチング加工によってのような、面地形、そしてステントの血流面の上に制御、異質性、を修正するための焼鈍による如き結晶構造を修正するため、あるいはステントの血流面に対する異成分に作用すると共に制御するように、エッチングによる如き表面性状を修正するため、後堆積処理を施すことができる。
【0037】
1999年5月20日に公開され、本出願に対して普通に譲受され、参照することによって本明細書に組み入れられる国際公開第WO99/23977号により完全に記述されているように、複数の微小溝を、ステント10の管腔および/またはアブルミナル(abluminal)面に与えることができる。複数の微小溝は、エッチングによる如き、後堆積処理ステップとして、または微小溝パターンを堆積材料の一部として堆積することを金属にもたらすその表面に微小形状を有する心金にステント形成材料を堆積させることによる如き、堆積中に形成することができる。
【0038】
本発明の好ましい実施形態のそれぞれは、ステント形成金属を基板に気相堆積させることを伴う気相堆積技術を用いることによって好ましくは作り出される。この基板は平坦または円筒状であってよく、顕像または潜像にて第1および相互連結部材の好ましい幾何学的形状の1つに予めパターン化されるか、または基板をパターン化しなくてもよい。基板をパターン化しない場合、この堆積ステント形成金属を第1および相互連結部材の好ましい幾何学的形状の1つにパターン化するように、堆積ステント形成金属に後堆積パターニングが施される。気相堆積技術によって作られる本発明のすべての実施形態において、パターン化された管腔ステントの後堆積処理、例えば機械的,電気的,熱的または化学的な機械加工または研磨によりステントの表面を修正する必要性が排除または最小にされる。
【0039】
この発明の管腔ステントの気相堆積製造は、多くの利点をもたらし、例えば複雑な幾何学的形状のステントを製造する能力,オングストロームの単位の超微細な寸法公差,疲労寿命の制御能力,耐食性,腐食疲労,内部および粒子内析出物および耐食性および腐食疲労に対するその効果,バルク材料組成物,バルクおよび表面材料特性,電磁波不透過性,長手方向の可撓性に影響を与える方法にてステント構成要素のZ軸厚みおよびX−Y軸表面領域の横断輪郭を変える能力,フープ強度,半径方向に拡大するステントの輪郭および挙動を含む。バルク材料組成物を、普通に形成された金属を使用した場合に実現可能ではない合金組成物の要素的割合を用いるように調整することができる。これは、望ましい材料または機械的特性に対する合金組成物を最適化する方法において、この合金組成物を適合させる能力を達成するという結果をもたらす。例えば、形状記憶および/または超弾性特性を示すニッケルチタン管は、ニッケルを51.5原子パーセント以上使用して作られ、この材料によって示される高安定応力のために従来の加工技術を用いては達成できない。特に、本考案者らはニッケルが51.5から55原子パーセントの間に含まれる本発明の方法を用いたニッケル−チタン合金管を製造している。
【0040】
本発明の好ましい実施形態によるこの発明の管腔ステントの気相堆積は、バルク材料における内部および粒子内析出物を著しく減少または事実上排除する。転位温度および沈降措置によって一定の粒子ニッケル−チタン比を変えることにより結果として生ずる機械的特性を制御することは、ニッケルチタン製管腔内装置産業における共通の営みである。本発明において、機械的特性のための析出物を制御する必要性は排除される。ニッケルチタンが本発明のステント形成金属として用いられる場合、特定のニッケル−チタン比は、バルク材料におけるニッケル−チタン比と同じ、または実質的に同一であり、まだ最適な形態学を考慮に入れて、そして沈降熱処理を用いる必要を排除する一方、従来の加工されたニッケル−チタン合金と比較した場合、結果として得られる堆積ステント形成金属は優れた耐食性とそれ故に腐食疲労に対する抵抗とを示す。
【0041】
複数の円周拡大要素12および複数の相互連結部材14は、直角端部または面取りまたは湾曲して続く概ね長方形,卵形または楕円形の断面形状を与えるべく、気相堆積中に構造的に形成されることができ、より好ましい血流面形状をもたらすため、ステントの長手方向軸線における管腔およびアブルミナル(abluminal)面端部を持つ。
【0042】
本発明はその好ましい実施形態を参照して記述されているけれども、この分野の当業者らは、前述の実施形態に関する多数の変更が可能であって、気相堆積およびステント製造における当業者の能力の範囲内にあり、上述した実施形態が単なる例示であって本発明の範囲を限定せず、ここに添付した特許請求の範囲によってのみ限定されることを理解および認識しよう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明によるその径を拡大した管腔ステントの立体投影図である。
【図2】本発明の管腔ステントの第1の実施形態の平面図である。
【図3】本発明の管腔ステントの第2の実施形態の平面図である。
【図4】本発明の管腔ステントの第3の実施形態の平面図である。
【図5】本発明の管腔ステントの第4の実施形態の平面図である。
【図6】本発明の管腔ステントの円周拡大部材の一部および相互連結部材の顕微鏡写真である。
【図7】管腔内送出のためにその径を拘束シース内に縮めた本発明の管腔ステントを描く顕微鏡写真である。
【図8】拘束シースから一部が解放されて径方向に拡大した本発明の管腔ステントを描く顕微鏡写真である。
【図9】その径が半径方向に拡大した本発明の管腔ステントを描く顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.概ね筒形状を形成するように同軸に間隔があけられ、ストラットにより相互に連結される頂部および底部の概ね波形パターンをそれぞれ有する複数の円周拡大要素と、
b.円周拡大要素の隣接対を相互に連結し、隣接するストラットの管腔ステントの長手方向軸線に沿ったほぼ中間点にて接続される概ね直線状をなす複数の相互連結要素と
を具えたことを特徴とする管腔ステント。
【請求項2】
複数の円周拡大要素のそれぞれは、管腔ステントの円周軸線に沿った概ねジグザグ形状をさらに具え、ストラットは概ね直線状の部分を形成すると共にストラットの幅よりも狭い幅を有する蝶番要素により頂部および底部にて相互に連結されることを特徴とする請求項1に記載の管腔ステント。
【請求項3】
概ね直線状をなす複数の相互連結要素は、ストラットと接続する各相互連結要素の両端に概ね曲線からなる第1および第2の端部をさらに具えていることを特徴とする請求項2に記載の管腔ステント。
【請求項4】
複数の円周拡大要素のそれぞれは、複数の相互連結部材のそれぞれと継ぎ目なく一体であることを特徴とする請求項3に記載の管腔ステント。
【請求項5】
概ね直線状をなす複数の相互連結要素の概ね曲線からなる第1および第2の端部は、概ねC字形状の部分をさらに具えていることを特徴とする請求項4に記載の管腔ステント。
【請求項6】
概ねC字形状部分は、残りの相互連結部材の幅よりもわずかに狭い幅を有することを特徴とする請求項5に記載の管腔ステント。
【請求項7】
概ね直線状をなす複数の相互連結部材は、すべて相互に平行であることを特徴とする請求項1に記載の管腔ステント。
【請求項8】
概ね直線状をなす複数の相互連結部材は、管腔ステントの長手方向軸線に沿った少なくとも2つのグループの相互連結部材として配列し、少なくとも2つのグループの一方は、少なくとも2つのグループの他方よりも管腔ステントの長手方向軸線に関して異なる位相角度を有することを特徴とする請求項1に記載の管腔ステント。
【請求項9】
前記管腔ステントは、これがより小さな直径からより大きな直径まで拡大するように、この管腔ステントの長手方向軸線に沿って伸びることを特徴とする請求項1に記載の管腔ステント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−520648(P2006−520648A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507303(P2006−507303)
【出願日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/008247
【国際公開番号】WO2004/084764
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(504006054)アドヴァンスド バイオ プロスセティック サーフェシーズ リミテッド (11)
【Fターム(参考)】