説明

中間水分食品の包装方法

【課題】外装のパウチを開封した後でも個々の食品内容物に密封性を確保でき、賞味期限を延長することができるとともに、脱酸素剤添付のコストを節約でき、脱酸素剤誤食の危険性を排除することができる中間水分食品の包装方法を提供する。
【解決手段】水分活性(Aw)0.9〜0.6の食品内容物を脱酸素機能を有する包装容器内に充填し、この包装容器内の空気をガス置換した後包装容器を密封する中間水分食品の包装方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、和菓子、洋菓子、つまみ類等水分活性(Aw)が0.9〜0.6の中間水分食品をカップ、パウチ等の包装容器によって包装する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水分活性(Aw)が0.9〜0.6の中間水分食品である和菓子の中で、餅に砂糖・水飴等の糖類等を加えて練り込み、固化・成形後きな粉をまぶした餅菓子がある。この種の餅菓子は、図4の断面図に示されるように、ポリエチレン製またはポリスチレン製のカップaに取扱い上最小単位(1個)の餅菓子bを充填し、このカップaの上端部にポリエチレン製またはポリスチレン製の落し蓋cを嵌め込むようにして装着し、この落し蓋cの窪み部に蜜入り小パウチdを載せた後このカップaと落し蓋cを和紙製の巾着袋eでくるんでひねり包装した餅菓子包装物fを複数個外装ガスバリア性パウチgに収容するとともにこの外装パウチg内には脱酸素剤が充填された小パウチhを収容し、この外装パウチgを密封して流通過程に提供している。
【0003】
この餅菓子包装物fはそれ自体は密封されていない包装形態であるから、その賞味期限は1週間前後である。また、この餅菓子包装物fを脱酸素剤hとともに外装パウチgに充填後密封した包装形態においては、カビ等の増殖を抑制できるため、約1ヶ月の賞味期限が一般的である。ただし、この脱酸素剤を封入した包装形態においても、外装パウチgを開封してしまえば1週間以内に消費する必要があり、これを過ぎるとカビの増殖のために餅菓子は変敗する。このため、単身者や家族の構成が2、3人の小家族では、外装パウチgを開封後複数個の餅菓子包装物fを全部食べきれないまま廃棄してしまうことが少なくない。この不具合を防止するには、個々の餅菓子包装物f内に脱酸素剤の小パウチを添付後落し蓋cをカップaに密封する方法もあるが、この場合は脱酸素剤添付のためのコストが増大する上に幼児等が脱酸素剤を食物と間違えて誤食するおそれもあり、好ましくない。
【0004】
また、水分活性(Aw)が0.9〜0.6の中間水分食品中他の種類であるたこ、いか、ホタテ等の燻製は、図5の断面図に示すように、取扱い上最小単位(1個)である燻製品kを複数個ガスバリア性パウチiに充填するとともにこのガスバリア性パウチiには脱酸素剤が充填された小パウチjを収容し、このガスバリア性パウチiを密封して流通過程に提供している。
【0005】
この場合も上記と同様に、単身者や家族の構成が2、3人の小家族では、ガスバリア性パウチiを開封後複数個の燻製品kを全部食べきれないまま廃棄してしまうことが少なくない。またこの場合も脱酸素剤添付のためのコストが増大する上に幼児等が脱酸素剤を誤食するおそれもあり、好ましくない。
【0006】
一方脱酸素機能を有する包装容器として特許文献1に記載された脱酸素剤を配合した特許文献2に記載の酸素吸収樹脂組成物からなる層を備えたものが開示されている。しかしこれらの文献は上記問題点の解決についてなんら示唆するところがない。
【特許文献1】特公平7−57316号公報
【特許文献2】特公平7−33475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の中間水分食品の包装方法における問題点にかんがみなされたものであって、外装のパウチを開封した後でも個々の食品内容物の密封性を確保でき、賞味期限を延長することにより、単身者や小家族でも食品内容物を全部食べきることができる中間水分食品の包装方法を提供しようとするものである。
【0008】
また、本発明の他の目的は、脱酸素剤添付のためのコストを節約するとともに幼児等による脱酸素剤誤食の危険性のない中間水分食品の包装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記本発明の目的を達成するため、鋭意研究と実験を重ねた結果、中間水分食品を脱酸素機能を有する包装容器内に充填し、この包装容器内の空気をガス置換した後包装容器を密封することにより本発明の目的を達成することができることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明に係る中間水分食品の包装方法は、水分活性(Aw)0.9〜0.6の食品内容物を脱酸素機能を有する包装容器内に充填し、該包装容器内の空気をガス置換した後該包装容器を密封することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の1側面において、該包装容器はカップであることを特徴とする。
【0012】
本発明の1側面においては、該包装方法は、取扱い上最小単位の食品内容物を個々に脱酸素機能を有するカップに充填し、該カップ内の空気をガス置換した後該カップをガスバリア性材料からなる蓋で密封し、このカップを複数個外装パウチに収容し、該外装パウチを密封することを特徴とする。
【0013】
本発明の他の側面において、該食品内容物は餅菓子であり、該包装方法は、該カップを該蓋で密封した後それぞれの蓋の上に蜜を密封した小パウチを載せ、該カップと該蜜入り小パウチを和紙製巾着袋でくるんだ餅菓子包装物を複数個外装パウチに収容することを特徴とする。
【0014】
本発明の他の側面においては、該包装容器はパウチであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、食品内容物を脱酸素機能を有する包装容器内に充填し、該包装容器内の空気をガス置換した後該包装容器を密封することにより、脱酸素剤を包装容器内に封入する必要がなく、脱酸素剤添付の費用を節約することができる上に幼児等による脱酸素剤誤食の危険性を排除することができる。
【0016】
また、本発明の1側面によれば、取扱い上最小単位の食品内容物を個々に脱酸素機能を有するカップに充填し、該カップ内の空気をガス置換した後該カップをガスバリア性材料からなる蓋で密封し、このカップを複数個外装パウチに収容し、該外装パウチを密封することにより、外装パウチを開封した後でも個々の食品内容物の密封性を確保でき、賞味期限を延長することにより、単身者や小家族でも食品内容物を全部食べきることができる。また、脱酸素剤を包装容器内に封入する必要がなく、脱酸素剤添付の費用を節約することができる上に幼児等による脱酸素剤誤食の危険性を排除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明に係る包装方法を餅菓子の包装に適用した実施形態を模式的に示す断面図である。
【0018】
図1において、餅菓子包装物1は、図4に示されるものと同一種類の餅菓子3を脱酸素機能を有するカップ2に充填し、このカップ2内の空気をガス置換した後カップ2にガスバリア性材料からなる蓋4をヒートシールすることによりカップ2を密封し、蓋4の上に蜜を密封した小パウチ5を載せ、カップ2と蜜入り小パウチ5を和紙製巾着袋6でくるんでひねり包装したものである。この餅菓子包装物1を複数個外装パウチ7に収容し、この外装パウチ7を密封して流通過程に提供する。
【0019】
ここで脱酸素機能を有するカップ2としては、上記特許文献1記載の酸素吸収剤を配合した特許文献2記載の熱成形性酸素吸収樹脂組成物からなる層とガスバリア性樹脂層をラミネートした積層体であるオキシガード(商標)製品が好適であるが、これに限定されるものではなく、脱酸素機能を有し、カビ等好気性菌の増殖を防止する能力を有する樹脂であれば他の樹脂製品であってもよい。樹脂組成物に配合する好適な酸素吸収剤としては、鉄、ナトリウム、カリウム、非鉄金属(例:イオウ)等の無機材料、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、カスターオイル等の低分子量有機化合物、ポリマー(MXD6,ポリアミド、ポリプタジエン、ポリオレフイン、EVA、EVOH等の非分離型高分子系化合物と酸化触媒(コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等)の組合わせに必要に応じて光開始剤を添加したもの等の中から適宜選択することができる。
【0020】
蓋4としては、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を塗布したコートフイルムにシーラント層等を積層した積層フイルム、ポリビニルアルコールによるコートフイルムやエチレンビニルアルコール共重合体フイルム、PET/AL/PPの積層フイルム等公知のガスバリア性材料からなるフイルムを使用することができる。
【0021】
カップ2内の空気をガス置換する方法としては、周知の方法による窒素ガス置換のほか、特公平7−90847号や特許第2669280号記載の窒素ガスと炭酸ガスの混合ガスによるガス置換方法、特許第3587049号記載の粉末ドライアイスを使用するガス置換方法等を適宜選択使用することができる。ガス置換は、カップ2内の酸素濃度が2%以下になるまで行うことが好ましく、酸素濃度が1%以下になるまで行うことが特に好ましい。
【0022】
外装パウチ7としては、従来の外装パウチのようにガスバリア性パウチを使用する必要はなく、ポリエチレンやポリスチレン等非ガスバリア性の安価な材料からなるパウチで充分である。ただし、ガスバリア性パウチを使用することができることはもちろんである。
【0023】
この包装方法によれば、外装パウチ7を開封後餅菓子包装物1は約1ヶ月はカビ等による変敗を生じることなく保存することができる。したがって、外装パウチ7を開封した後でも個々の餅菓子包装物1の密封性を確保でき、賞味期限を延長することにより、単身者や小家族でも食品内容物を全部食べきることができる。また、脱酸素剤をカップ2または外装パウチ7内に封入する必要がなく、脱酸素剤添付の費用を節約することができる上に幼児等による脱酸素剤誤食の危険性を排除することができる。
【0024】
図2は本発明に係る包装方法をたこ、いか、ホタテ等の燻製品の包装に適用した実施形態を模式的に示す断面図である。
【0025】
図2の実施形態においては、たこ、いか、ホタテ等の燻製品10を脱酸素機能を有するカップ11に充填し、このカップ11内の空気をガス置換した後カップ11にガスバリア性材料からなる蓋12をヒートシールすることによりカップ11を密封し、この密封したカップ11を複数個外装パウチ13に収容し、この外装パウチ13を密封して流通過程に提供する。
【0026】
この実施形態において、脱酸素機能を有するカップ11およびガスバリア性材料からなる蓋12としては図1の実施形態と同一の材質のもの、たとえばカップとしては前記のオキシガード(商標)製品等を使用することができる。また、ガス置換の方法も図1の実施形態と同様のガス置換方法を使用することができる。さらに、外装パウチ13も図1の実施形態における外装パウチ7と同様の材質のものを使用することができる。
【0027】
この包装方法によれば、外装パウチ13を燻製品10は約1ヶ月はカビ等による変敗を生じることなく保存することができる。したがって、外装パウチ13を開封した後でも個々の燻製品10の密封性を確保でき、賞味期限を延長することにより、単身者や小家族でも食品内容物を全部食べきることができる。また、脱酸素剤をカップ11または外装パウチ13内に封入する必要がなく、脱酸素剤添付の費用を節約することができる上に幼児等による脱酸素剤誤食の危険性を排除することができる。
【0028】
図3は本発明にかかる包装方法を燻製品に適用した他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【0029】
図3の実施形態においては、燻製品10を脱酸素機能を有するパウチ20内に充填し、パウチ20内の空気をガス置換した後パウチ20を密封して流通過程に提供する。
【0030】
この実施形態において、脱酸素機能を有するパウチ20としては図1の実施形態と同一の材質のもの、たとえば前記のオキシガード(商標)製品等を使用することができる。また、ガス置換の方法も図1の実施形態と同様のガス置換方法を使用することができる。
【0031】
この包装方法によれば、燻製品10は約1ヶ月はカビ等による変敗を生じることなく保存することができる。またこの包装方法によれば、脱酸素剤をパウチ20内に封入する必要がなく、脱酸素剤添付の費用を節約することができる上に幼児等による脱酸素剤誤食の危険性を排除することができる。
【0032】
本発明に係る包装方法は、水分活性(Aw)0.9〜0.6の食品すなわち和菓子(うぐいす餅、ういろう、ぎゅうひ、芋加工品、羊羹、団子類等)のほか、洋菓子類(カステラ、ケーキ、パイ、マロングラッセ等)、つまみ類(たこ、いか、ホタテ等魚介類の燻製)、魚類のみりん干し、うどん、そば、その他の食品(干し柿、サラミソーセージ、佃煮等)に適用することができる。
【実施例】
【0033】
水分活性が0.9〜0.6の中間水分食品の1例としてぎゅうひ餅(水分活性0.85)を使用し、脱酸素機能を有する包装容器としてオキシガード(商標)カップ(LSX83−105)を使用し、蓋として12μPET/7μAl/50μPPの3層構造のフイルムを使用し、かつ公知の窒素ガス置換法によりカップ内の残存酸素濃度が2%になるまでガス置換を実施してカビ増殖防止効果を調べた。また、包装容器としてラミコンカップを使用し、ガス置換を実施したものおよび実施しないものを対照品としてカビ増殖防止効果を調べた。
【0034】
カビ増殖防止効果を調べるための保存条件として常温促進条件である30℃、80%RHを設定した。評価期間として1週、2週、3週、1ヶ月を設定し、各期間ごとに内容物の外観の変化と味の変化を確認した。試験結果は次のとおりである。
【0035】
1) 外観観察
表1に外観観察によるカビ増殖の有無の確認結果を示す。以下の各表において、「オキシガード 2%品」はオキシガードカップを使用しガス置換を行ったもの(残存酸素濃度2%)、「オキシガード 20.9%品」はオキシガードカップを使用しガス置換を行わなかったもの、「ラミコン 2%品」はラミコンカップを使用しガス置換を行ったもの(残存酸素濃度2%)、「ラミコン 20.9%品」はラミコンカップを使用しガス置換を行わなかったものをそれぞれ示す。
【表1】

【0036】
ここで、
−: カビ増殖なし
±: 一部のサンプルにわずかにカビコロニーが観察される
+: すべてのサンプルにわずかにカビコロニーが認められる
++: すべてのサンプルに明らかにカビコロニーが認められる。
【0037】
+++: すべてのサンプルに著しくカビコロニーが認められる。
【0038】
2) 官能試験
表2に各サンプルの保存中に生じる味の変化を示す。
【表2】

【0039】
ここで、5:正常な味・香り
4:わずかに味・香り変化
3:多少カビ臭あり、味変化する
2:カビ臭あり、明らかに香り変化(食味不可、香りのみ)
1:カビ臭あり、著しく香り変化(食味不可、香りのみ)
0:評価不可
以上の試験結果から、脱酸素機能を有する包装容器を使用して容器内の酸素濃度を2%以下にすることにより、少なくとも1ヶ月間はぎゅうひ餅のカビの増殖を完全に抑えることが可能であり、これにより味の変化を最小限に抑えることができる。ただしガス置換を行わない場合は1週間以上の径時によりカビのわずかな増殖が認められ、香り、味の変化が認められた。
【0040】
既存のバリア容器であるラミコンカップを使用した対照例では、ガス置換することにより短期間(1週間程度)には外観上のカビの増殖は認められず問題なかったが、1週間以上の径時によりカビの増殖が認められ、味、香りの変化が認められた。なお、ガス置換を行わなかった対照品では、保存初期からカビが増殖して香り・味の変化が著しかった。
【0041】
以上の結果から、本発明によれば、脱酸素機能を有する容器に中間水分食品を充填し、密封前に酸素濃度が2%以下になるまでガス置換することにより、カビの増殖防止と内容物の味を高品質に維持することが可能となることが判った。
【0042】
したがって、水分活性が0.9〜0.6の中間水分食品について、脱酸素機能を有する包装容器を個包装としてこの個包装物を複数個外装パウチに収容することにより、消費者が外装パウチを開封しても個々の包装物は嫌気状態が保たれ、個々の包装物を短期間に消費する必要がなくなり、長期間にわたって良好な品質を保つことが可能となり、消費者の使い勝手を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る包装方法の1実施形態を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明に係る包装方法の他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明に係る包装方法の他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【図4】従来の包装方法を模式的に示す断面図である。
【図5】従来の包装方法の他の例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 包装物
2 脱酸素機能を有する包装容器
3 食品内容物
4 蓋


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分活性(Aw)0.9〜0.6の食品内容物を脱酸素機能を有する包装容器内に充填し、該包装容器内の空気をガス置換した後該包装容器を密封することを特徴とする中間水分食品の包装方法。
【請求項2】
該包装容器はカップであることを特徴とする請求項1記載の中間水分食品の包装方法。
【請求項3】
取扱い上最小単位の食品内容物を個々に脱酸素機能を有するカップに充填し、該カップ内の空気をガス置換した後該カップをガスバリア性材料からなる蓋で密封し、このカップを複数個外装パウチに収容し、該外装パウチを密封することを特徴とする請求項2記載の中間水分食品の包装方法。
【請求項4】
該食品内容物は餅菓子であり、該カップを該蓋で密封した後それぞれの蓋の上に蜜を密封した小パウチを載せ、該カップと該蜜入り小パウチを和紙製巾着袋でくるんだ餅菓子包装物を複数個外装パウチに収容することを特徴とする請求項3記載の中間水分食品の包装方法。
【請求項5】
該包装容器はパウチであることを特徴とする請求項1記載の中間水分食品の包装方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−61591(P2008−61591A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243972(P2006−243972)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】