説明

中間転写ベルト、及びそれを用いた画像形成装置

【課題】従来の中間転写ベルトよりもゴム硬度が低くレザック紙といった高連量の表面凹凸紙への転写性に優れ、かつ、耐オゾン性と難燃性を兼ね備えた中間転写ベルト、及び該中間転写体を用いた、特にフルカラー画像形成に好適な中間転写方式の画像形成装置を提供すること。
【解決手段】像担持体上に形成された潜像をトナーにより現像して得られたトナー像が転写される中間転写ベルトであって、該中間転写体は基層上に弾性層を備える積層構造からなり、該弾性層がUL94VTM燃焼試験においてVTM−0を示す難燃性アクリルゴム弾性層であり、かつ、10μm押し込み時のマルテンス硬度が0.2N/mm〜0.8N/mmであって、弾性層表面が独立した球状樹脂粒子で面方向に配列し一様な凹凸形状で形成されていることを特徴とする中間転写ベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コピー・プリンター等の画像形成装置に装備されるシームレスベルト、及びそれを用いた画像形成装置、特にフルカラー画像形成に好適な中間転写ベルト及びそれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真装置においては様々な用途でシームレスベルトが部材として用いられている。特に近年のフルカラー電子写真装置においては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の現像画像を一旦中間転写媒体上に色重ねし、その後一括して紙などの転写媒体に転写する中間転写ベルト方式が用いられている。
このような中間転写ベルト方式は、1つの感光体に対して4色の現像器を用いるシステムで用いられていたがプリント速度が遅いという欠点があった。そのため、高速プリントとしては、感光体を4色分並べ、各色を連続して紙に転写する4連タンデム方式が用いられている。しかし、この方式では紙の環境による変動などもあり、各色画像を重ねる位置精度を合わせることが非常に困難であり、色ずれ画像を引き起こしていた。そこで近年では、4連タンデム方式に中間転写方式を採用することが主流になってきている。
【0003】
このような情勢の中で中間転写ベルトにおいても、従来よりも要求特性(高速転写、位置精度)が厳しいものとなっており、これらの要求に対応する特性を満足することが必要となってきている。特に、位置精度に対しては、連続使用によるベルト自体の伸び等の変形による変動を抑えることが求められる。また、中間転写ベルトは、装置の広い領域に渡ってレイアウトされ、転写のために高電圧が印加されることから難燃性であることが求められている。このような要求に対応するため、中間転写ベルト材料として主に、高弾性率で高耐熱樹脂であるポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などが用いられている。
【0004】
ところが、ポリイミド樹脂による中間転写ベルトにおいては、高強度であるためその表面硬度も高いので、トナー像を転写する際にトナー層に高い圧力がかかり、トナーが局部的に凝集し画像の一部が転写されない、いわゆる中抜け画像が発生することがある。また、感光体や用紙などの転写部での接触部材との接触追従性が劣るため、転写部において部分的な接触不良部(空隙)が発生し、転写むらが発生することがある。
【0005】
近年、フルカラー電子写真を用いてさまざまな用紙に画像を形成することが多くなり、通常の平滑な用紙だけでなく、コート紙のようなスリップ性のある平滑度の高いものからリサイクルペーパーやエンボス紙や和紙やクラフト紙のような表面性の粗いものが使用されることが増えてきている。このような表面性状の異なる用紙への追従性は重要であり、追従性が悪いと、用紙の凹凸状の濃淡むらや色調のむらが発生する。この課題を解決するために比較的柔軟性のあるゴム弾性層を基層上に積層した様々な中間転写ベルトが提案されている。
【0006】
例えば特許文献1の特開2006−47609号公報では、ゴム弾性層としてウレタン、ニトリルゴム、エチレンゴム、シリコーンゴム、ポリアミド、またはこれらの2種類以上を有する中間層と、フッ素含有ポリマーにより形成される表層を有した転写ベルトが開示されている。また、特許文献2の特開平10−83122号公報では、ゴム弾性層として、フッ素系ゴムまたはシリコーンゴム等で構成された中間層と、フッ素系樹脂等の表面エネルギーの小さい材料を表層とした中間転写ベルトが開示されている。さらに、特許文献3の特開2010−15143号公報には、ベース上に、ポリウレタンエラストマーを50〜100質量%の割合で含む弾性材料層と、フッ素樹脂とシリコーン成分とを含む水系ウレタン樹脂ラテックスと硬化剤を用いた表層を順に積層してなる中間転写ベルトが開示されている。
【0007】
しかしながら、上記のゴム弾性層および表層を有した中間転写ベルトでは表面凹凸がある紙種に対する画像品質は不十分であり、満足できるものではなかった。そこで、我々は、基質層上に、加熱硬化性のエラストマー又はゴム材料を含有する樹脂層を設け、その表面に、独立した球形樹脂粒子により、深さ方向に50%を超え〜100未満の埋没率で埋め込まれた粒子によって凹凸形状を形成した中間転写ベルトを既に提案している。
しかしながら、中間転写ベルトには、転写操作時の受像用紙表面への良好な追従性と共に、耐オゾン性やノンハロゲン処方による難燃性が求められるケースが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決するために従来の中間転写ベルトよりもゴム硬度が低くレザック紙といった高連量の表面凹凸紙への転写性に優れ、かつ、耐オゾン性と難燃性を兼ね備えた中間転写ベルト、及び該中間転写体を用いた、特にフルカラー画像形成に好適な中間転写方式の画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、この発明は、以下の(1)〜(7)の構成の中間の転写ベルト及びこれを用いた画像形成装置を提供する。
(1)像担持体上に形成された潜像をトナーにより現像して得られたトナー像が転写される中間転写ベルトであって、該中間転写体は基層上に弾性層を備える積層構造からなり、該弾性層がUL94VTM燃焼試験においてVTM−0を示す難燃性アクリルゴム弾性層であり、かつ、10μm押し込み時のマルテンス硬度が0.2N/mm〜0.8N/mmであって、弾性層表面が独立した球状樹脂粒子で面方向に配列し一様な凹凸形状で形成されていることを特徴とする中間転写ベルト。
(2)前記難燃性アクリルゴム弾性層は水酸化金属化合物及び燐化合物を含有することを特徴とする前記(1)項に記載の中間転写ベルト。
(3)前記表面の球状樹脂微粒子がシリコーン樹脂微粒子であることを特徴とする前記(1)項又は(2)項に記載の中間転写ベルト。
(4)前記表面の球状樹脂微粒子の粒子径が0.5μm〜5μmであることを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の中間転写ベルト。
(5)該基層がポリイミド樹脂、もしくはポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする前記(1)項乃至(4)項のいずれかに記載の中間転写ベルト。
(6)潜像が形成され、トナー像を担持可能な像担持体と、該像担持体上に形成された潜像をトナーで現像する現像手段と、該現像手段により現像されたトナー像が一次転写される中間転写ベルトと、該中間転写ベルト上に担持されたトナー像を記録媒体に二次転写する転写手段とを有してなり、前記中間転写ベルトが前記(1)項乃至(5)項のいずれかに記載の中間転写ベルトであることを特徴とする画像形成装置。
(7)画像形成装置がフルカラー画像形成装置であって、各色の現像手段を有する複数の潜像担持体を直列に配置してなる前記(6)項に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0010】
表面凹凸がある紙種に対する画像品質が優れた中間転写ベルトを得るために一連の検討を重ねた結果、中間転写ベルトの10ミクロン押し込み時のマルテンス硬度が0.2N/mm〜0.8N/mmであれば表面凹凸がある紙種に対する画像品質に優れることを本発明において見出した。
また、中間転写ベルトには耐オゾン性や難燃性も要求されるケースが多いところ、充分配合すれば難燃性を満たす反面、機械的強度特に靭性減少や硬度上昇、弾力性(用紙への追従性)低下等が懸念される球状シリコーン樹脂擬粒子や、赤燐、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機難燃剤をある程度使用しても、耐オゾン性や低いゴム硬度を保持し、かつ、難燃性付与が可能なゴム材料はアクリルゴムであることを見出し、この発明に達した。
したがって、以下の詳細かつ具体的な説明から、本発明の中間転写ベルトは、表面凹凸がある紙種に対する優れた画像品質と、耐オゾン性や難燃性とを同時に満たすという極めて優れた効果を奏するものであることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に好適に用いられる中間転写ベルトの層構成を示す。
【図2】本発明に係るシームレスベルトを装備する画像形成装置を説明するための要部模式図である。
【図3】4色のトナー像を形成するための4つの感光体ドラムを備え、本発明のシームレスベルトを装備した4ドラム型のデジタルカラープリンタの一構成例を示す。
【図4】本発明の中間転写ベルトの弾性層表面に球状粒子を均一に一部分埋め込む方法例を説明する図である。
【図5】本発明におけるベルト基層作製用塗工液から基層を製造する装置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
電子写真装置においてはいくつかの部材にシームレスベルトが用いられるが、電気的特性を要求される重要な部材の一つとして中間転写体(中間転写ベルト)がある。以下、本発明の中間転写ベルト、これを用いた画像形成装置について詳細かつ具体的に説明する。
本発明のシームレスベルトは、中間転写ベルト方式の電子写真装置〔いわゆる、像担持体(例えば、感光体ドラム)上に順次形成される複数のカラートナー現像画像を中間転写ベルト上に順次重ね合わせて一次転写を行い、その一次転写画像を被記録媒体に一括して二次転写する方式の装置〕における中間転写ベルトとして好適に装備されるものである。
【0013】
図1には、本発明に好適に用いられる中間転写ベルトの層構成を示す。構成としては、比較的屈曲性が得られる剛性な基層(11)の上に柔軟な弾性層(12)が積層されており、最表面には微粒子が表面層(13)として積層されている。
まず、基層(11)について説明する。この構成材料としては、樹脂中に電気抵抗を調整する充填材(又は、添加材)、いわゆる電気抵抗調整材を含有してなるものが挙げられる。
【0014】
このような樹脂としては、難燃性の観点から、例えば、PVDF、ETFEなどのフッ素系樹脂や、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂等が好ましく、機械強度(高弾性)や耐熱性の点から、特にポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂が好適である。
電気抵抗調整材としては、金属酸化物やカーボンブラック、イオン導電剤、導電性高分子材料などがある。金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素等が挙げられる。また、分散性を良くするため、前記金属酸化物に予め表面処理を施したものも挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ガスブラック等が挙げられる。イオン導電剤としては、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルサルフェート、グルセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエステル、アルキルベタイン、過塩素酸リチウム等が挙げられ、これらを併用して用いてもよい。
なお、本発明における電気抵抗調整材は、上記例示化合物に限定されるものではない。
【0015】
また、本発明のシームレスベルトの製造方法における少なくとも樹脂成分を含む塗工液には必要に応じて、さらに分散助剤、補強材、潤滑材、熱伝導材、酸化防止剤などの添加材を含有してもよい。
【0016】
前記中間転写ベルトとして好適に装備されるシームレスベルトに使用する場合、抵抗値として、好ましくは表面抵抗で1×10^8〜1×10^14Ω/□、体積抵抗で1×10^7〜1×10^13Ω・cmになるようなカーボンブラック量を含有させるが、機械強度の面から、膜が脆く割れやすくならない程度の添加量で達成できるものを選択する。
つまり、中間転写ベルトとする場合には、前記樹脂成分(例えば、ポリイミド樹脂前駆体又はポリアミドイミド樹脂前駆体)と電気抵抗調整材の配合を適正に調整した塗工液を用いて、電気特性(表面抵抗及び体積抵抗)と機械強度のバランスが取れたシームレスベルトを製造して用いるのが好ましい。
【0017】
本発明における電気抵抗調整材の含有量としては、カーボンブラックの場合には、塗工液中の全固形分の10〜25wt%、好ましくは15〜20wt%である。また、金属酸化物の場合の含有量としては、塗工液中の全固形分の1〜50wt%、好ましくは10〜30wt%である。含有量が前記それぞれの電気抵抗調整材の範囲よりも少ないと抵抗値の均一性が得られにくくなり、任意の電位に対する抵抗値の変動が大きくなる。また含有量が前記それぞれの範囲よりも多いと前記中間転写ベルトの機械強度が低下し、実使用上好ましくない。
【0018】
前記シームレスベルトの材料として好適に用いられるポリイミド樹脂(以下、「ポリイミド」と略称することがある。)又はポリアミドイミド樹脂(以下、「ポリアミドイミド」と略称することがある。)について以下具体的に説明する。
【0019】
<ポリイミド>
本発明に用いられるポリイミドとしては、限定されるものではないが芳香族系のポリイミドが好ましい例として挙げられる。芳香族系のポリイミドは、一般的に知られている芳香族多価カルボン酸無水物(又はその誘導体)と芳香族ジアミンとの反応によって、ポリアミック酸(ポリイミド前駆体)を経由して得られる。
すなわち、ポリイミド、特に、芳香族系のポリイミドは、その剛直な主鎖構造により溶媒等に対して不溶であり、また不融の性質を有する。そのため、先ず、芳香族多価カルボン酸無水物と芳香族ジアミンとの反応により、有機溶媒に可溶なポリイミド前駆体(ポリアミック酸、又はポリアミド酸)を合成し、このポリアミック酸の段階で様々な方法で成形加工が行われ、その後ポリアミック酸を加熱もしくは化学的な方法で脱水反応させて環化(イミド化)しポリイミドとされる。芳香族系のポリイミドを得る反応を例にその概略を下記式(1)に示す。
【0020】
【化1】

式中、Ar1は少なくとも1つの炭素6員環を含む4価の芳香族残基を示し、Ar2は少なくとも1つの炭素6員環を含む2価の芳香族残基を示す。
【0021】
上記芳香族多価カルボン酸無水物の具体例としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシルフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
また、非芳香族系のエチレンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物も、芳香族系のものと遜色なく用いることができる。これらは単独または2種以上混合して用いられる。
【0022】
次に、芳香族多価カルボン酸無水物と反応させる芳香族ジアミンの具体例としては、例えば、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、1,1−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,1−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−エタン、1,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ブタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、4,4’−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4’−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4’−ビス〔4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ〕ベンゾフェノン、4,4’−ビス〔4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ〕ジフェニルスルホン、ビス〔4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル〕スルホン、1,4−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン等が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して使用される。
本発明の物性を効果的に発現するために、特に、少なくとも成分の1つとして、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いることが好ましい。
【0023】
上記芳香族多価カルボン酸無水物成分とジアミン成分とを略等モル用いて有機極性溶媒中で重合反応させることにより、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)を得ることができる。下記にポリアミック酸の製造方法について具体的に説明する。
【0024】
ポリアミック酸の重合反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系またはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独または混合溶媒として用いるのが望ましい。溶媒は、ポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されないが、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
【0025】
ポリイミド前駆体を製造する場合の例として、まず、アルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気下において、1種または複数種のジアミンを上記の有機溶媒に溶解するか、またはスラリー状に分散させる。この溶液に前記した少なくとも1種の芳香族多価カルボン酸無水物、またはその誘導体を添加(固体状態のままでも、有機溶媒に溶解した溶液状態でも、スラリー状態でもよい)すると、発熱を伴って開環重付加反応が起こり、急速に溶液の粘度増大が見られ、高分子量のポリアミック酸溶液が得られる。この際の反応温度は、通常−20℃〜100℃、望ましくは60℃以下に制御することが好ましい。反応時間は、30分〜12時間程度である。
【0026】
上記は一例であり、反応における上記添加手順とは逆に、まず芳香族多価カルボン酸無水物またはその誘導体を有機溶媒に溶解または拡散させておき、この溶液中に前記ジアミンを添加させてもよい。ジアミンの添加は、固体状態のままでも、有機溶媒に溶解した溶液状態でも、スラリー状態でもよい。すなわち、酸二無水物成分と、ジアミン成分との混合順序は限定されない。さらには、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを同時に有機極性溶媒中に添加して反応させてもよい。
【0027】
上記のようにして、芳香族多価カルボン酸無水物またはその誘導体と、芳香族ジアミン成分とをおよそ等モル、有機極性溶媒中で重合反応することにより、ポリアミック酸が有機極性溶媒中に均一に溶解した状態でポリイミド前駆体溶液が得られる。
本発明におけるポリイミド前駆体溶液(ポリアミック酸溶液)は、上記のようにして合成したものを使用することが可能であるが、簡便には有機溶媒にポリアミック酸組成物が溶解された状態の、いわゆるポリイミドワニスとして上市されているものを入手して使用することもできる。
【0028】
このような例としては、トレニース(東レ社製)、U−ワニス(宇部興産社製)、リカコート(新日本理化社製)、オプトマー(JSR社製)、SE812(日産化学社製)、CRC8000(住友ベークライト社製)等が代表的なものとして挙げられる。
【0029】
合成または入手したポリアミック酸溶液に、必要に応じて充填剤を混合・分散して塗工液が調製される。塗工液を後述のように支持体(成形用の型)に塗布した後、加熱等の処理することにより、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸からポリイミドへの転化(イミド化)が行われる。
【0030】
ポリアミック酸は、加熱する方法(1)、または化学的方法(2)によってイミド化することができる。加熱する方法(1)は、ポリアミック酸を例えば200〜350℃に加熱処理することによってポリイミドに転化する方法であり、ポリイミド(ポリイミド樹脂)を得る簡便かつ実用的な方法である。一方、化学的方法(2)は、ポリアミック酸を脱水環化試薬(カルボン酸無水物と第3アミンの混合物など)により反応した後、加熱処理して完全にイミド化する方法であり、(1)の加熱する方法に比べると煩雑でコストのかかる方法であるため、通常(1)の方法が多く用いられている。
【0031】
なお、ポリイミドの本来的な性能を発揮させるためには、相当するポリイミドのガラス転移温度以上に加熱して、イミド化を完結させることが好ましい。
【0032】
イミド化の進行状況(イミド化の程度)は、通常行われているイミド化率の測定手法により評価することができる。
このようなイミド化率の測定方法としては、例えば、9〜11ppm付近のアミド基に帰属される1Hと6〜9ppm付近の芳香環に帰属される1Hとの積分比から算出する核磁気共鳴分光法(NMR法)、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR法)、イミド閉環に伴う水分を定量する方法、カルボン酸中和滴定法など種々の方法が用いられているが、中でもフーリエ変換赤外分光法(FT−IR法)は最も一般的な方法である。
フーリエ変換赤外分光法(FT−IR法)では、イミド化率を、例えば、下記式(a)のように定義する。
すなわち、焼成段階(イミド化処理段階)でのイミド基のモル数を(A)とし、100%イミド化された場合(理論的)のイミド基のモル数を(B)とすると、次により表される。
【0033】
イミド化率(%)=[(A)/(B)]×100・・・計算式(a)
【0034】
この定義におけるイミド基のモル数は、FT−IR法により測定されるイミド基の特性吸収の吸光度比から求めることができる。例えば、代表的な特性吸収として、以下の吸光度比を用いてイミド化率を評価することができる。
(1)イミドの特性吸収の1つである725cm−1(イミド環C=O基の変角振動帯)と、ベンゼン環の特性吸収1,015cm−1との吸光度比
(2)イミドの特性吸収の1つである1,380cm−1(イミド環C−N基の変角振動帯)と、ベンゼン環の特性吸収1,500cm−1との吸光度比
(3)イミドの特性吸収の1つである1,720cm−1(イミド環C=O基の変角振動帯)と、ベンゼン環の特性吸収1,500cm−1との吸光度比
(4)イミドの特性吸収の1つである1,720cm−1とアミド基の特性吸収1,670cm−1(アミド基N−H変角振動とC−N伸縮振動の間の相互作用)との吸光度比
また、3000〜3300cm−1にかけてのアミド基由来の多重吸収帯が消失していることを確認すればさらにイミド化完結の信頼性は高まる。
【0035】
<ポリアミドイミド>
次に、ポリアミドイミドについて説明する。
ポリアミドイミドは、分子骨格中に剛直なイミド基と柔軟性を付与するアミド基を有する樹脂であり、本発明に用いられるポリアミドイミドとしては一般的に知られている構造のものを使用することができる。
一般的にポリアミドイミド樹脂を合成する方法としては、酸クロライド法(a):酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体ハライド、最も代表的には当該誘導体のクロライド化合物とジアミンとを溶媒中で反応させて製造する公知の方法(例えば、特公昭42−15637号公報参照。)が知られている。または別な方法として、イソシアネート法(b):酸無水物基とカルボン酸を含む3価の誘導体と芳香族イソシアネートとを溶媒中で反応させて製造する公知の方法(例えば、特公昭44−19274号公報)等が知られており、いずれも使用することができる。各製造方法について以下に説明する。
【0036】
(a)酸クロライド法
酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体ハライド化合物としては、例えば、下記式(2)および式(3)に示す化合物を使用することができる。
【0037】
【化2】

式中、Xはハロゲン元素を示す。
【0038】
【化3】

式中、Xはハロゲン元素を示し、Yは−CH2−、−CO−、−SO2−または−O−を示す。
【0039】
前記各式において、ハロゲン元素はクロライドが好ましく、誘導体の具体例を挙げると、テレフタル酸、イソフタル酸、4、4’ビフェニルジカルボン酸、4、4’ビフェニルエーテルジカルボン酸、4、4’ビフェニルスルホンジカルボン酸、4、4’ベンゾフェノンジカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、3、3’、4、4’ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3、3、’、4、4’ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、3、3’、4、4’ビフェニルテトラカルボン酸、アジピン酸、セバチン酸、マレイン酸、フマール酸、ダイマー酸、スチルベンジカルボン酸、1、4シクロヘキサンジカルボン酸、1、2シクロヘキサンジカルボン酸等の多価カルボン酸の酸クロライドが挙げられる。
【0040】
一方、ジアミンとしては特に限定されないが、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、および脂環族ジアミンのいずれも用いられるが、芳香族ジアミンが好ましく用いられる。
芳香族ジアミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、オキシジアニリン、メチレンジアミン、ヘキサフルオロイソプロピリデンジアミン、ジアミノ−m−キシリレン、ジアミノ−p−キシリレン、1,4−ナフタレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、2,7−ナフタレンジアミン、2,2’−ビス−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス−(4−アミノフェニル)へキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、イソプロピリデンジアニリン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、1,3−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス−[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ビス−(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]へキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィドなどが挙げられる。
【0041】
また、ジアミンとして両末端にアミノ基を有するシロキサン系化合物、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノフェノキシメチル)ポリジメチルシロキサン、1,3,−ビス(2−(3−アミノフェノキシ)エチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(2−(3−アミノフェノキシ)エチル)ポリジメチルシロキサン、1,3−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)プロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)プロピル)ポリジメチルシロキサン等を用いればシリコーン変性ポリアミドイミドを得ることができる。
【0042】
酸クロライド法により本発明におけるポリアミドイミド(ポリアミドイミド樹脂)を得るためには、ポリイミド樹脂の製造の場合と同様に、上記した酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体ハライドとジアミンとを有機極性溶媒に溶解した後、低温(0〜30℃)で反応させ、ポリアミドイミド前駆体(ポリアミド−アミック酸)とする。
【0043】
使用することのできる有機極性溶媒としては前記ポリイミドと同様であり、ホルムアミド系溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等)、アセトアミド系溶媒(例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等)、ピロリドン系溶媒(例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン等)、フェノール系溶媒(例えば、フェノール、o−、m−、またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコール等)、エーテル系溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等)、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等)、セロソルブ系溶媒(例えば、ブチルセロソルブ等)、またはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。これらを単独または混合溶媒として用いるのが望ましく、ポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されない。
特に好ましく用いられる溶媒は、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンである。
【0044】
上記により得たポリアミド・ポリアミック酸溶液を支持体(成形用の型)に塗布された後、加熱等の処理することにより、ポリアミック酸からポリイミドへの転化(イミド化)が行われる。
イミド化の方法としては、加熱処理により脱水閉環させる方法、および脱水閉環触媒を用いて化学的に閉環させる方法が挙げられる。加熱処理により脱水閉環させる場合、例えば、反応温度は150〜400℃、好ましくは180〜350℃であり、加熱処理時間は30秒間〜10時間、好ましくは5分間〜5時間である。また、脱水閉環触媒を用いる場合、反応温度は0〜180℃、好ましくは10〜80℃であり、反応時間は数十分間〜数日間、好ましくは2時間〜12時間である。脱水閉環触媒の例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸等の酸無水物等が挙げられる。
【0045】
(b)イソシアネート法
イソシアネート法の場合に用いる酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体としては、例えば、式(4)または式(5)で示す化合物を使用することができる。
【0046】
【化4】

式中、Rは水素、炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基を示す。
【0047】
【化5】

式中、Rは水素、炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基を示し、Yは−CH2−、−CO−、−SO2−または−O−を示す。
【0048】
上記一般式で表される誘導体は何れも使用することができるが、最も代表的には無水トリメリット酸が挙げられる。また、これらの酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体は、目的に応じて単独または混合して用いることができる。
【0049】
次に、本発明のポリアミドイミドの合成に用いられる一方の芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−〔2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート、ビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ビフェニル−3,3’−ジイソシアネート、ビフェニル−3,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジエチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジエチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジメトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ナフタレン−2,6−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0050】
これらの芳香族ポリイソシアネートは単独で使用することもできるし、組み合わせて使用することもできる。必要に応じてこの一部としてヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水添m−キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族、脂環式イソシアネートおよび3官能以上のポリイソシアネートを使用することもできる。
【0051】
上記各酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体と、芳香族ポリイソシアネートとを有機極性溶媒に溶解調整して得られるポリアミドイミド前駆体を含む溶液を支持体に塗布した後、加熱処理することにより、ポリアミドイミド前駆体からポリアミドイミドへの転化が行われる。この方法によるポリアミドイミドへの転化の際、概略ポリアミック酸を経由することなく(炭酸ガスを発生して)ポリアミドイミドを生成する。下記式(6)に無水トリメリット酸と芳香族イソシアネートとを用いた場合のポリアミドイミド化の例を示す。
【0052】
【化6】

式中、Arは芳香族基を示す。
【0053】
上記に示した、ポリイミド及びポリアミドイミドは通常単独で使用するが、相溶性を考慮して選択されたものを併用することも可能である。
また、ポリイミド繰返単位とポリアミドイミド繰返単位を有する共重合体であっても良い。
【0054】
次に上記基材層(11)の上に積層する弾性層(12)について説明する。
本発明のゴム弾性層であるアクリルゴムは現在上市されているもので良く、特に限定されるものではない。しかし、アクリルゴムの各種架橋系(エポキシ基、活性塩素基、カルボキシル基)の中ではカルボキシル基架橋系がゴム物性(特に圧縮永久歪み)及び加工性が優れているので、カルボキシル基架橋系を選択することが好ましい。
【0055】
カルボキシル基架橋系のアクリルゴムに用いる架橋剤は、アミン化合物が好ましく、多価アミン化合物が最も好ましい。
このようなアミン化合物として、具体的には脂肪族多価アミン架橋剤、芳香族多価アミン架橋剤などが挙げられる。脂肪族多価アミン架橋剤としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメイト、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンなどが挙げられる。
芳香族多価アミン架橋剤としては、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3,5−ベンゼントリアミン、1,3,5−ベンゼントリアミノメチルなどが挙げられる。
【0056】
上記架橋剤の配合量は、アクリルゴム100重量部に対し、好ましくは0.05〜20重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。
架橋剤の配合量が少なすぎると、架橋が十分に行われないため、架橋物の形状維持が困難になる。
一方、含有量が多すぎると、架橋物が硬くなりすぎ、架橋ゴムとしての弾性などが損なわれる。
【0057】
本発明のアクリルゴム弾性層においては、さらに架橋促進剤を配合して上記架橋剤に組み合わせて用いてもよい。架橋促進剤も限定はないが、前記多価アミン架橋剤と組み合わせて用いることができる架橋促進剤であることが好ましい。このような架橋促進剤としては、例えば、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、第四級オニウム塩、第三級ホスフィン化合物、弱酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。グアニジン化合物としては、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジオルトトリルグアニジンなどが挙げられる。イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどが挙げられる。第四級オニウム塩としては、テトラn−ブチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリn−ブチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。
多価第三級アミン化合物としては、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)などが挙げられる。
第三級ホスフィン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィンなどが挙げられる。
弱酸のアルカリ金属塩としては、ナトリウムまたはカリウムのリン酸塩、炭酸塩などの無機弱酸塩あるいはステアリン酸塩、ラウリル酸塩などの有機弱酸塩が挙げられる。
【0058】
架橋促進剤の使用量は、アクリルゴム100重量部あたり、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.3〜10重量部である。
架橋促進剤が多すぎると、架橋時に架橋速度が早くなりすぎたり、架橋物表面ヘの架橋促進剤のブルームが生じたり、架橋物が硬くなりすぎたりする場合がある。架橋促進剤が少なすぎると、架橋物の引張強さが著しく低下したり、熱負荷後の伸び変化または引張強さ変化が大きすぎたりする場合がある。
【0059】
アクリルゴムの調製にあたっては、ロール混合、バンバリー混合、スクリュー混合、溶液混合などの適宜の混合方法が採用できる。配合順序は特に限定されないが、熱で反応や分解しにくい成分を充分に混合した後、熱で反応しやすい成分あるいは分解しやすい成分として、例えば架橋剤などを、反応や分解が起こらない温度で短時間に混合すればよい。
【0060】
アクリルゴムは、加熱することにより架橋物とすることができる。
加熱温度は、好ましくは130〜220℃、より好ましくは140℃〜200℃であり、架橋時間は好ましくは30秒〜5時間である。
加熱方法としては、プレス加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる方法を適宜選択すればよい。また、一度架橋した後に、架橋物の内部まで確実に架橋させるために、後架橋を行ってもよい。後架橋は、加熱方法、架橋温度、形状などにより異なるが、好ましくは1〜48時間行う。後架橋を行う際の加熱方法、加熱温度は適宜選択すればよい。
【0061】
ゴム弾性層であるアクリルゴムの硬度は10ミクロン押し込み時のマルテンス硬度が0.2N/mm〜0.8N/mmであることが好ましい。マルテンス硬度が0.2N/mm未満のアクリルゴム弾性層は作製困難であり、マルテンス硬度が0.8N/mm超えると表面凹凸がある紙種に対する画像品質は低下してしまう。このマルテンス硬度は、市販されている微小硬度計、たとえばフィッシャー・インスツルメンツ社のFisher Scope HM2000LTにて押し込み深さ10μmに設定することにより測定することができる。
【0062】
ゴム弾性層であるアクリルゴムの膜厚は100μm〜1000μmが好ましい。100μm未満では表面凹凸がある紙種に対する画像品質は低下してしまい、1000μm超えるとゴムの収縮が強くなるために、ベルト端部の反りが大きくなってしまう。
【0063】
ゴム弾性層であるアクリルゴムへの難燃性付与には公知の難燃剤の使用が可能であるが、ハロゲン含有難燃剤の使用は環境負荷が大きく使用不可である。環境負荷もなく安価な難燃剤として水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの水酸化金属化合物が公知であるが、難燃性を得るにはゴムに対して100部以上の添加が必要である。その結果、マルテンス硬度は0.8N/mm以上となってしまうので水酸化金属化合物単独の使用は不可となる。そこで難燃性付与の公知技術である水酸化金属化合物と燐化合物を併用することにより、マルテンス硬度が0.2N/mm〜0.8N/mmであり、かつ、UL94VTM燃焼試験においてVTM−0の複写機用ゴム弾性中間転写ベルトを実現できる。具体的には水酸化金属化合物の添加量をゴム100部に対して20部〜80部添加、及び燐化合物を10部〜20部添加するのが好ましい。上記の添加量以下では難燃性が得られず、それ以上の添加量ではマルテンス硬度0.8N/mm以上となってしまう。
【0064】
中間転写ベルトに必要な抵抗率制御はアクリルゴム単体では抵抗率が高いために導電剤の添加が必要となる。抵抗率の制御としてはカーボンやイオン導電剤の添加が可能であるが、本発明ではゴム硬度が重要となるので少量添加で効果がありゴム硬度に影響を与えないイオン導電剤の使用が好ましい。具体的には種々の過塩素酸塩やイオン性液体をゴム100部に対して0.01部〜3部添加するのが好ましい。イオン導電剤の添加量が0.01部未満では抵抗率を下げる効果が得られず、3部を超える添加量ではベルト表面へ導電剤がブルーム又はブリードする可能性が高くなってしまう。当弾性層の抵抗値としては、表面抵抗で1×10^8〜1×10^13Ω/□、体積抵抗で1×10^7〜1×10^12Ω・cmとなるように調整されることが好ましい。
【0065】
次に、上記弾性層(12)の上に形成される球状樹脂微粒子(13)について説明する。
使用する微粒子の材料としては特に問わないが、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、などの樹脂を主成分としてなる球状微樹脂粒子(以下、単に「球状樹脂粒子」ともいう)が挙げられる。また、これらの樹脂材料からなる粒子の表面を異種材料で表面処理を施したものでも良い。また、ここで言う樹脂粒子の中には、ゴム材料も含む。ゴム材料で作製された球状粒子の表面を硬い樹脂をコートしたような構成のものも適用可能である。
また、中空であったり、多孔質であったりしても良い。これらの樹脂中で、滑性を有し、トナーに対しての離型性、耐磨耗性を付与できる機能の高いものとして、シリコーン樹脂微粒子が最も好ましい。
【0066】
使用する微粒子は、重合法などにより球状の形状に作製された粒子であることが好ましく、本発明においては、真球に近いものほど好ましい。また、その粒径は、体積平均粒径が0.5μm〜5μmの間であり分布がシャープな単分散であることが好ましい。平均粒子径が0.5μm未満では微粒子間の凝集が顕著である為にアクリルゴム弾性層表面への均一塗布が困難となる。一方、平均粒子径が5μmを超えると微粒子塗布後のベルト表面の凹凸が大きくなるためにトナークリーニング不良を起こしてしまう。
【0067】
さらには、粒子は絶縁性であることが多いため、粒径が大きすぎると粒子による帯電電位の残留により、連続画像出力時にこの電位の蓄積による画像乱れが発生する不具合も生じる。このような単分散の球状樹脂粒子は、樹脂層の上に粉体そのまま直接塗布して、ならすことにより容易に均一に整列させることができる。
【0068】
なお、粒子をアクリルゴム弾性層表面に塗布するタイミングは特に限定されず、ゴムの加硫前、加硫後何れでも可能である。
【0069】
次に、上記本発明の構成のベルトを作製する方法についての一例を説明する。まず、基層(11)の作製方法について説明する。
本発明の少なくとも樹脂成分を含む塗工液、すなわち前記ポリイミド樹脂前駆体又はポリアミドイミド樹脂前駆体を含む塗工液を用いて基層を製造する方法について説明する。
ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂製の基体は、円筒状支持体(型)表面に前記前駆体液をノズルやディスペンサーによる螺旋塗工、または広幅のダイによるダイ塗工、または塗布ロールを用いたロール塗工などにより塗工することができる。ここでは、ロール塗工について説明する。
【0070】
例えば、図5に示すような装置により塗工できる。Aは塗料である脱泡した前駆体液を貯留するための塗料パンであり、Cは塗料パンAから塗料を連続的に汲み上げるための塗布ローラであり、Dは連続的に汲み上げられた塗料の厚みを塗布ローラCとの隙間で調節して所定塗料厚みにするための規制ローラであり、Eは所定厚みにした塗料(塗膜)を塗布ローラCから転移させて付着させるための円筒状支持体(金型)である。
【0071】
上記した製造装置に、先ず予め十分に脱泡された前駆体塗料を塗料パンに流し込む。
塗料粘度は、前記した有機極性溶媒により、0.5〜10Pa・sに調整しておくことが望ましい。次いで、塗布ローラの下部に塗料を流し込んだ塗料パンを近づけ塗料中に浸漬し、10〜100mm/secのゆっくりとした周速度で塗布ローラ表面に塗料を付着、上方に汲み上げていく。
その後、塗布ローラ上部に設置され、塗布ローラと任意の隙間を調整することができる規制ローラにより、塗布ローラ上の塗料厚みを調整する。
規制する塗料厚みとしては、円筒状芯体へ転写する塗料厚みの2倍量程度が好ましい。
【0072】
次に塗布ローラCに円筒状支持体Eをゆっくり回転させながら、塗布ローラの塗料厚み以下まで近づける。塗布ローラ上の塗料は、塗布ローラCと同方向(図5示す方向では「時計回り方向」)に回転する円筒状支持体E上に、塗布ローラCからの塗料が転移され、円筒状支持体E上に所定膜厚の塗料が付着される。
【0073】
塗布後、円筒状支持体を回転させつつ徐々に昇温させながら、約80〜150℃の温度で塗膜中の溶媒を蒸発させていく。この過程では、雰囲気の蒸気(揮発した溶媒等)を効率よく循環して取り除くことが好ましい。自己支持性のある膜が形成されたところで金型ごと高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に移し、段階的に昇温し、最終的に250℃〜450℃程度の高温加熱処理(焼成)し、十分にポリイミド樹脂前駆体又はポリアミドイミド樹脂前駆体のイミド化又はポリアミドイミド化を行う。充分に冷却後、引き続き、弾性層(12)を積層する。
【0074】
弾性層(12)は、ゴムを有機溶剤に溶解させたゴム塗料を用い、基層上に塗布形成し、その後、溶剤を乾燥、加硫することで製造することができる。塗布成形法としては、基層と同じく、螺旋塗工、ダイ塗工、ロール塗工などの既存の塗工法が適用できるが、凹凸転写性を良くする為には弾性層の厚みを厚くすることが必要であり、厚膜を形成する塗工法としては、ダイ塗工、及び螺旋塗工が優れている。ここでは、螺旋塗工について説明する。
基層を周方向に回転させながら、丸型、又は広幅のノズルによりゴム塗料を連続的に供給しながら、ノズルを基層の軸方向に移動させて、基層上に塗料を螺旋状に塗工する。基層上に螺旋状に塗工された塗料は、所定の回転速度、乾燥温度を維持させることでレベリングされながら乾燥される。その後、さらに所定の加硫温度で加硫(架橋)硬させて形成される。
【0075】
加硫された弾性層は、その後充分に冷却し、引き続いて球状粒子を弾性層(12)上へ塗布することで球状樹脂微粒子(13)を形成させて所望のシームレスベルト(中間転写ベルト)を得る。球状粒子層の形成方法としては、図4に示すように、粉体供給装置(31)と押し当て部材(32)を設置し、回転させながら粉体供給装置(31)から球状粒子を表面に均一にまぶし、表面にまぶされた球状粒子を押し当て部材(32)により一定圧力にて押し当てる。この押し当て部材(32)により、樹脂層へ粒子を埋設させつつ、余剰な粒子を取り除く。本発明では、特に単分散の球状樹脂粒子を用いるために、このような押し当て部材でのならし工程のみの簡単な工程で、均一な単一粒子層を形成することが可能である。埋没率の調整は、ここでの押し当て部材の押し当て時間の長さにより調整する。
なお、本発明における球状粒子層とは、実施例に記載された製造方法からも分かるように、前記弾性層の表面に、独立した球状樹脂粒子を弾性層表面において面方向に配列し、その一部分を埋没させることにより形成された凹凸形状を表わし、例えば、単なる粒子だけによる被覆層や粒子が層内に分散された層とは異なるものである。
【0076】
[画像形成装置]
前述の方法により製造されたシームレスベルトは、例えば、像担持体上に順次形成される複数のカラートナー現像画像を中間転写ベルト上に順次重ね合わせて一次転写を行い、その一次転写画像を被記録媒体に一括して二次転写する、いわゆる中間転写方式の電子写真装置の中間転写ベルトとして好適に用いられ、高画質画像形成な電子写真画像形成装置を構成することができる。本発明における画像形成装置に装備されるベルト構成部に用いられるシームレスベルトについて、要部模式図を参照しながら以下に詳しく説明する。なお、模式図は一例であって本発明はこれに限定されるものではない。
【0077】
図2は、本発明に係る製造方法により得られるシームレスベルトをベルト部材として装備する画像形成装置を説明するための要部模式図である。図2に示すベルト部材を含む中間転写ユニット(500)は、複数のローラに張架された中間転写体である中間転写ベルト(501)などにより構成されている。この中間転写ベルト(501)の周りには、2次転写ユニット(600)の2次転写電荷付与手段である2次転写バイアスローラ(605)、中間転写体クリーニング手段であるベルトクリーニングブレード(504)、潤滑剤塗布手段の潤滑剤塗布部材である潤滑剤塗布ブラシ(505)などが対向するように配設されている。
【0078】
また、位置検知用マークが中間転写ベルト(501)の外周面または内周面に図示しない位置検知用マークが設けられる。ただし、中間転写ベルト(501)の外周面側については位置検知用マークがベルトクリーニングブレード(504)の通過域を避けて設ける工夫が必要であり、配置上の困難さを伴うことがあるので、その場合には位置検知用マークを中間転写ベルト(501)の内周面側に設けてもよい。マーク検知用センサとしての光学センサ(514)は、中間転写ベルト(501)が架け渡されている1次転写バイアスローラ(507)とベルト駆動ローラ(508)との間の位置に設けられる。
【0079】
この中間転写ベルト(501)は、1次転写電荷付与手段である1次転写バイアスローラ(507)、ベルト駆動ローラ(508)、ベルトテンションローラ(509)、2次転写対向ローラ(510)、クリーニング対向ローラ(511)、及びフィードバック電流検知ローラ(512)に張架されている。各ローラは導電性材料で形成され、1次転写バイアスローラ(507)以外の各ローラは接地されている。1次転写バイアスローラ(507)には、定電流または定電圧制御された1次転写電源(801)により、トナー像の重ね合わせ数に応じて所定の大きさの電流または電圧に制御された転写バイアスが印加されている。
【0080】
中間転写ベルト(501)は、図示しない駆動モータによって矢印方向に回転駆動されるベルト駆動ローラ(508)により、矢印方向に駆動される。このベルト部材である中間転写ベルト(501)は、通常、半導体、又は絶縁体で、単層または多層構造となっているが、本発明においてはシームレスベルトが好ましく用いられ、これによって耐久性が向上すると共に、優れた画像形成が実現できる。また、中間転写ベルトは、感光体ドラム(200)上に形成されたトナー像を重ね合わせるために、通紙可能最大サイズより大きく設定されている。
【0081】
2次転写手段である2次転写バイアスローラ(605)は、2次転写対向ローラ(510)に張架された部分の中間転写ベルト(501)のベルト外周面に対して、後述する接離手段としての接離機構によって、接離可能に構成されている。2次転写バイアスローラ(605)は、2次転写対向ローラ(510)に張架された部分の中間転写ベルト(501)との間に被記録媒体である転写紙(P)を挟持するように配設されており、定電流制御される2次転写電源(802)によって所定電流の転写バイアスが印加されている。
【0082】
レジストローラ(610)は、2次転写バイアスローラ(605)と2次転写対向ローラ(510)に張架された中間転写ベルト(501)との間に、所定のタイミングで転写材である転写紙(P)を送り込む。また、2次転写バイアスローラ(605)には、クリーニング手段であるクリーニングブレード(608)が当接している。該クリーニングブレード(608)は、2次転写バイアスローラ(605)の表面に付着した付着物を除去してクリーニングするものである。
【0083】
このような構成のカラー複写機において、画像形成サイクルが開始されると、感光体ドラム(200)は、図示しない駆動モータによって矢印で示す半時計方向に回転され、該感光体ドラム(200)上に、Bk(ブラック)トナー像形成、C(シアン)トナー像形成、M(マゼンタ)トナー像形成、Y(イエロー)トナー像形成が行われる。中間転写ベルト(501)はベルト駆動ローラ(508)によって矢印で示す時計回りに回転される。
この中間転写ベルト(501)の回転に伴って、1次転写バイアスローラ(507)に印加される電圧による転写バイアスにより、Bkトナー像、Cトナー像、Mトナー像、Yトナー像の1次転写が行われ、最終的にBk、C、M、Yの順に中間転写ベルト(501)上に各トナー像が重ね合わせて形成される。
【0084】
例えば、上記Bkトナー像形成は次のように行われる。図2において、帯電チャージャ(203)は、コロナ放電によって感光体ドラム(200)の表面を負電荷で所定電位に一様に帯電する。上記ベルトマーク検知信号に基づき、タイミングを定め、図示しない書き込み光学ユニットにより、Bkカラー画像信号に基づいてレーザ光によるラスタ露光を行う。このラスタ像が露光されたとき、当初一様帯電された感光体ドラム(200)の表面の露光された部分は、露光光量に比例する電荷が消失し、Bk静電潜像が形成される。
このBk静電潜像に、Bk現像器(231K)の現像ローラ上の負帯電されたBkトナーが接触することにより、感光体ドラム(200)の電荷が残っている部分にはトナーが付着せず、電荷の無い部分つまり露光された部分にはトナーが吸着し、静電潜像と相似なBkトナー像が形成される。
【0085】
このようにして感光体ドラム(200)上に形成されたBkトナー像は、感光体ドラム(200)と接触状態で等速駆動回転している中間転写ベルト(501)のベルト外周面に1次転写される。この1次転写後の感光体ドラム(200)の表面に残留している若干の未転写の残留トナーは、感光体ドラム(200)の再使用に備えて、感光体クリーニング装置(201)で清掃される。この感光体ドラム(200)側では、Bk画像形成工程の次にC画像形成工程に進み、所定のタイミングでカラースキャナによるC画像データの読み取りが始まり、そのC画像データによるレーザ光書き込みによって、感光体ドラム(200)の表面にC静電潜像を形成する。
【0086】
そして、先のBk静電潜像の後端部が通過した後で、且つC静電潜像の先端部が到達する前にリボルバ現像ユニット(230)の回転動作が行われ、C現像機(231C)が現像位置にセットされ、C静電潜像がCトナーで現像される。以後、C静電潜像領域の現像を続けるが、C静電潜像の後端部が通過した時点で、先のBk現像機(231K)の場合と同様にリボルバ現像ユニットの回転動作を行い、次のM現像機(231M)を現像位置に移動させる。これもやはり次のY静電潜像の先端部が現像位置に到達する前に完了させる。なお、M及びYの画像形成工程については、それぞれのカラー画像データ読み取り、静電潜像形成、現像の動作が上述のBk、Cの工程と同様であるので説明は省略する。
【0087】
このようにして感光体ドラム(200)上に順次形成されたBk、C、M、Yのトナー像は、中間転写ベルト(501)上の同一面に順次位置合わせされて1次転写される。これにより、中間転写ベルト(501)上に最大で4色が重ね合わされたトナー像が形成される。一方、上記画像形成動作が開始される時期に、転写紙(P)が転写紙カセット又は手差しトレイなどの給紙部から給送され、レジストローラ(610)のニップで待機している。そして、2次転写対向ローラ(510)に張架された中間転写ベルト(501)と2次転写バイアスローラ(605)によりニップが形成された2次転写部に、上記中間転写ベルト(501)上のトナー像の先端がさしかかるときに、転写紙(P)の先端がこのトナー像の先端に一致するように、レジストローラ(610)が駆動されて、転写紙ガイド板(601)に沿って転写紙(P)が搬送され、転写紙(P)とトナー像とのレジスト合わせが行われる。
【0088】
このようにして、転写紙(P)が2次転写部を通過すると、2次転写電源(802)によって2次転写バイアスローラ(605)に印加された電圧による転写バイアスにより、中間転写ベルト(501)上の4色重ねトナー像が転写紙(P)上に一括転写(2次転写)される。この転写紙(P)は、転写紙ガイド板(601)に沿って搬送されて、2次転写部の下流側に配置した除電針からなる転写紙除電チャージャ(606)との対向部を通過することにより除電された後、ベルト構成部であるベルト搬送装置(210)により定着装置(270)に向けて送られる(図3参照)。そして、この転写紙(P)は、定着装置(270)の定着ローラ(271)、(272)のニップ部でトナー像が溶融定着された後、図示しない排出ローラで装置本体外に送り出され、図示しないコピートレイに表向きにスタックされる。なお、定着装置(270)は必要によりベルト構成部を備えた構成とすることもできる。
【0089】
一方、上記ベルト転写後の感光体ドラム(200)の表面は、感光体クリーニング装置(201)でクリーニングされ、上記除電ランプ(202)で均一に除電される。また、転写紙(P)にトナー像を2次転写した後の中間転写ベルト(501)のベルト外周面に残留した残留トナーは、ベルトクリーニングブレード504によってクリーニングされる。
該ベルトクリーニングブレード(504)は、図示しないクリーニング部材離接機構によって、該中間転写ベルト(501)のベルト外周面に対して所定のタイミングで接離されるように構成されている。
【0090】
このベルトクリーニングブレード(504)の上記中間転写ベルト(501)の移動方向上流側には、該中間転写ベルト(501)のベルト外周面に対して接離するトナーシール部材(502)が設けられている。このトナーシール部材(502)は、上記残留トナーのクリーニング時に上記ベルトクリーニングブレード(504)から落下した落下トナーを受け止めて、該落下トナーが上記転写紙(P)の搬送経路上に飛散するのを防止している。このトナーシール部材(502)は、上記クリーニング部材離接機構によって、上記ベルトクリーニングブレード(504)とともに、該中間転写ベルト(501)のベルト外周面に対して接離される。
【0091】
このようにして残留トナーが除去された中間転写ベルト(501)のベルト外周面には、上記潤滑剤塗布ブラシ(505)により削り取られた潤滑剤(506)が塗布される。
該潤滑剤(506)は、例えば、ステアリン酸亜鉛などの固形体からなり、該潤滑剤塗布ブラシ(505)に接触するように配設されている。また、この中間転写ベルト(501)のベルト外周面に残留した残留電荷は、該中間転写ベルト(501)のベルト外周面に接触した図示しないベルト除電ブラシにより印加される除電バイアスによって除去される。ここで、上記潤滑剤塗布ブラシ(505)及び上記ベルト除電ブラシは、それぞれの図示しない接離機構により、所定のタイミングで、上記中間転写ベルト(501)のベルト外周面に対して接離されるようになっている。
【0092】
ここで、リピートコピーの時は、カラースキャナの動作及び感光体ドラム(200)への画像形成は、1枚目の4色目(Y)の画像形成工程に引き続き、所定のタイミングで2枚目の1色目(Bk)の画像形成工程に進む。また、中間転写ベルト(501)は、1枚目の4色重ねトナー像の転写紙への一括転写工程に引き続き、ベルト外周面の上記ベルトクリーニングブレード(504)でクリーニングされた領域に、2枚目のBkトナー像が1次転写されるようにする。その後は、1枚目と同様動作になる。以上は、4色フルカラーコピーを得るコピーモードであったが、3色コピーモード、2色コピーモードの場合は、指定された色と回数の分について、上記同様の動作を行うことになる。また、単色コピーモードの場合は、所定枚数が終了するまでの間、リボルバ現像ユニット(230)の所定色の現像機のみを現像動作状態にし、ベルトクリーニングブレード(504)を中間転写ベルト(501)に接触させたままの状態にしてコピー動作を行う。
【0093】
上記実施形態では、感光体ドラム1を一つだけ備えた複写機について説明したが、本発明は、例えば、図3の要部模式図に一構成例を示すような、複数の感光体ドラムをシームレスベルトからなる一つの中間転写ベルトに沿って並設した画像形成装置にも適用できる。
図3は、4つの異なる色(ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)のトナー像を形成するための4つの感光体ドラム(21BK)、(21Y)、(21M)、(21C)を備えた4ドラム型のデジタルカラープリンタの一構成例を示す。
【0094】
図3において、プリンタ本体(10)は電子写真方式によるカラー画像形成を行うための、画像書込部(12)、画像形成部(13)、給紙部(14)、から構成されている。
画像信号を元に画像処理部で画像処理して画像形成用の黒(BK)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)の各色信号に変換し、画像書込部12に送信する。画像書込部(12)は、例えば、レーザ光源と、回転多面鏡等の偏向器と、走査結像光学系、及びミラー群、からなるレーザ走査光学系であり、上記の各色信号に対応した4つの書込光路を有し、画像形成部(13)の各色毎に設けられた像坦持体(感光体)(21BK)、(21M)、(21Y)、(21C)に各色信号に応じた画像書込を行う。
【0095】
画像形成部(13)は黒(BK)用、マゼンタ(M)用、イエロー(Y)用、シアン(C)用の各像坦持体である感光体(21BK)、(21M)、(21Y)、(21C)を備えている。
この各色用の各感光体としては、通常OPC感光体が用いられる。各感光体(21BK)、(21M)、(21Y)、(21C)の周囲には、帯電装置、上記書込部(12)からのレーザ光の露光部、黒、マゼンタ、イエロー、シアンの各色用の現像装置(20BK)、(20M)、(20Y)、(20C)、1次転写手段としての1次転写バイアスローラ(23BK)、(23M)、(23Y)、(23C)、クリーニング装置(表示略)、及び図示しない感光体除電装置等が配設されている。なお、上記現像装置(20BK)、(20M)、(20Y)、(20C)には、2成分磁気ブラシ現像方式を用いている。ベルト構成部である中間転写ベルト(22)は、各感光体(21BK)、(21M)、(21Y)、(21C)と、各1次転写バイアスローラ(23BK)、(23M)、(23Y)、(23C)との間に介在し、各感光体上に形成された各色のトナー像が順次重ね合わせて転写される。
【0096】
一方、転写紙(P)は、給紙部(14)から給紙された後、レジストローラ(16)を介して、ベルト構成部である転写搬送ベルト(50)に担持される。そして、中間転写ベルト(22)と転写搬送ベルト(50)とが接触するところで、上記中間転写ベルト(22)上に転写されたトナー像が、2次転写手段としての2次転写バイアスローラ(60)により2次転写(一括転写)される。これにより、転写紙(P)上にカラー画像が形成される。このカラー画像が形成された転写紙(P)は、転写搬送ベルト(50)により定着装置(15)に搬送され、この定着装置(15)により転写された画像が定着された後、プリンタ本体外に排出される。
【0097】
なお、上記2次転写時に転写されずに上記中間転写ベルト(22)上に残った残留トナーは、ベルトクリーニング部材(25)によって中間転写ベルト(22)から除去される。
このベルトクリーニング部材(25)の下流側には、潤滑剤塗布装置(27)が配設されている。この潤滑剤塗布装置(27)は、固形潤滑剤と、中間転写ベルト(22)に摺擦して固形潤滑剤を塗布する導電性ブラシとで構成されている。前記導電性ブラシは、中間転写ベルト(22)に常時接触して、中間転写ベルト(22)に固形潤滑剤を塗布している。固形潤滑剤は、中間転写ベルト(22)のクリーニング性を高め、フィルミィングの発生を防止し耐久性を向上させる作用がある。
【実施例】
【0098】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りこれらの実施例を適宜改変したものも本件の発明の範囲内である。
【0099】
「基層用塗工液Aの調製」
以下に示す手順により基層用塗工液を調製し、この塗工液を用いてシームレスベルト基層を製造した。
先ず、ポリイミド樹脂前駆体を主成分とするポリイミドワニス(U−ワニスA;宇部興産社製)に、予めビーズミルにてN−メチル−2−ピロリドン中に分散させたカーボンブラック(SpecialBlack4;エボニックデグサ社製)の分散液を、カーボンブラック含有率がポリアミック酸固形分の17重量%になるように調合し、よく攪拌混合して基層用塗工液Aを調製した。
【0100】
「シームレスベルトの作製」
次に、外径340mm、長さ360mmの外面をブラスト処理にて粗面化した金属製の円筒状支持体を型として用い、ロールコート塗工装置に取り付けた。
次に、基層用塗工液Aをパンに流し込み、塗布ローラの回転速度40mm/secで塗料を汲み上げ、規制ローラと塗布ローラのギャップを0.6mmとして、塗布ローラ上の塗料厚みを制御した。円筒状支持体の回転速度を35mm/secに制御して塗布ローラに近づけ、塗布ローラとのギャップ0.4mmとして塗布ローラ上の塗料を均一に円筒状支持体上に転写塗布した後、回転を維持しながら熱風循環乾燥機に投入して、110℃まで徐々に昇温して30分加熱、さらに昇温して200℃で30分加熱し、回転を停止した。
その後、これを高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に導入し、段階的に320℃まで昇温して60分加熱処理(焼成)した。
【実施例1】
【0101】
「基層上への弾性層の作製」
表1に示す各成分を同表1に示す割合で配合し混練することでゴム組成物を作成した。
【0102】
【表1】

アクリルゴム:日本ゼオン株式会社製 二ポールAR12
ステアリン酸:日油株式会社製 ビーズステアリン酸つばき
赤リン:燐化学工業株式会社製 ノーバエクセル140F
水酸化アルミニウム:昭和電工株式会社製 ハイジライトH42M
架橋剤:デュポン ダウ エラストマー ジャパン製 Diak.No1(ヘキサメチレンジアミンカーバメイト)
架橋促進剤:Safic alcan社製 VULCOFAC ACT55(70%1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7と二塩基酸との塩、30%アモルファスシリカ)
導電剤:日本カーリット株式会社製 QAP−01(過塩素酸テトラブチルアンモニウム)
【0103】
次いで、このようにして得られたゴム組成物を有機溶剤(MIBK:メチルイソブチルケトン)に溶かして固形分35wt%のゴム溶液を作製した。この作製したゴム溶液を先に作製したポリイミド基層が形成された円筒状支持体を回転させながらポリイミド基層上に、ノズルよりゴム塗料を連続的に吐出しながら支持体の軸方法に移動させ螺旋状に塗工した。塗布量としては最終的な膜厚が500μmになるような液量の条件とした。その後、ゴム塗料が塗工された円筒状支持体をそのまま回転しながら熱風循環乾燥機に投入して、昇温速度4℃/分で90℃まで昇温して30分加熱した。続いて、昇温速度4℃/分で170℃まで昇温して60分加熱処理した。
【実施例2】
【0104】
基層上への弾性層作製のための作製各成分を、表1に示す割合で配合し混練したこと以外は、実施例1と同様にして、シームレスベルトを作製した。
【実施例3】
【0105】
基層上への弾性層作製のための作製各成分を、表1に示す割合で配合し混練したこと以外は、実施例1と同様にして、シームレスベルトを作製した。
【0106】
[比較例1]
実施例1から3について記載の表1のアクリルゴム処方に替えて、表2の処方にした以外は、実施例1と同様にして、比較例1のシームレスベルトを作製した。
【0107】
【表2】

ホウ酸亜鉛:水澤化学工業株式会社製 アルカネックスXF−100C
メラミン系難燃剤:チバ・ジャパン株式会社製 MELAPUR MC25
【0108】
[比較例2]
実施例1から3について記載の表1のアクリルゴム処方に替えて、表2の処方にした以外は、実施例1と同様にして、比較例2のシームレスベルトを作製した。
【0109】
[比較例3]
実施例1から3について記載の表1のアクリルゴム処方に替えて、表2の処方にした以外は、実施例1と同様にして、比較例3のシームレスベルトを作製した。
【0110】
[比較例4]
実施例1から3について記載の表1のアクリルゴム処方に替えて、表3の処方にした以外は、実施例1と同様にして、比較例4のシームレスベルトを作製した。
【0111】
【表3】

ニトリルゴム:日本ゼオン株式会社製 二ポールDN2850
加硫促進剤:大内新興化学工業株式会社製 ノクセラーTS(テトラメチルチウラムモノスルフィド)
【0112】
[比較例5]
実施例1から3について記載の表1のアクリルゴム処方に替えて、表4の処方にした以外は、実施例1と同様にして、比較例5のシームレスベルトを作製した。
【0113】
【表4】

水素化ニトリルゴム:日本ゼオン株式会社製 ゼットポール2020L
加硫促進剤:大内新興化学工業株式会社製 ノクセラーTS(テトラメチルチウラムモノスルフィド)
【0114】
[比較例6]
実施例1から3について記載の表1のアクリルゴム処方に替えて、ポリウレタンゴム弾性層とした。
DIC(株)製ウレタン樹脂(ウレハイパー)の主剤RUP−1627(ブロック型イソシアネート)100部に対して、実施例記載の水酸化アルミニウム70部及び赤リン20部を添加し、粘度調整用の溶媒としてDMF(ジメチルホルムアミド)を20部加え、良く攪拌させて添加剤を分散させた。次いで、硬化剤CLH−5(アミン硬化剤)10部を添加し攪拌混合してウレタンゴム塗工液を作製した。このウレタンゴム塗工液を先に作製したポリイミド基層が形成された円筒状支持体を回転させながらポリイミド基層上に、ノズルより連続的に吐出しながら支持体の軸方法に移動させ螺旋状に塗工した。塗布量としては最終的な膜厚が500μmになるような液量の条件とした。その後、金型をそのまま回転しながら熱風循環乾燥機に投入して、昇温速度4℃/分で150℃まで昇温して60分加熱処理した。
【0115】
「弾性層上への粒子層の作製」
実施例1〜3及び比較例1〜6の各種弾性層を充分に冷却した後、弾性層上に粒子層を形成した。図4の方法を用い、球状樹脂粒子としてシリコーン球状樹脂粒子「トスパール120」(体積平均粒子系2.0μm品);モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社)をまんべんなく表面にまぶし、ポリウレタンゴムブレードの押し付け部材を押し当てて弾性層に固定化した。その後、金型から取り外し、各種中間転写ベルトを得た。
【0116】
これら中間転写ベルトを用いて下記の物性評価を行なった。
マルテンス硬度:フィッシャー製 微小硬さ試験機 HM2000を用い、押し込み深さ10ミクロン時のマルテンス硬度を測定した。
難燃性:試験片はポリイミド基層に弾性層を積層したものを使用した(シリコーン球状樹脂粒子は未塗布)。JIS K7341に準拠して測定した。
耐オゾン性:20℃、50%RH環境下でオゾン濃度5ppmのボックス内に試験片をφ2mmの丸棒を挿み込んだ状態で5日間放置して、ベルト表面のクラック有無を○×評価した。
凹凸紙の画像品質ランク:種々作製した中間転写ベルトを図3の電子写真装置に搭載し、凹凸紙(レザック紙175kg)への画像品質(シアン、マゼンタの2色ブルーベタのトナー転写性)を目視によるランク判定(ランク1(凹部のベタ埋まりが悪い)〜ランク5(凹部のベタ埋まりが良い))で行った。
その結果を表5に示す。
【0117】
【表5】

【0118】
以上の結果から、本発明の構成とすることにより、表面凹凸がある紙種への画質が優れており、かつ、耐オゾン性と難燃性を兼ね備えた中間転写体を得ることができることがわかった。
【符号の説明】
【0119】
(図1の符号)
11 基材層
12 弾性層
13 球状粒子
(図2の符号)
P 転写紙
L 露光手段
70 除電ローラ
80 アースローラ
200 感光体ドラム
201 感光体クリーニング装置
202 除電ランプ
203 帯電チャージャ
204 電位センサ
205 トナー画像濃度センサ
210 ベルト搬送装置
230 リボルバ現像ユニット
231Y Y現像機
231K Bk現像機
231C C現像機
231M M現像機
270 定着装置
271、272 定着ローラ
500 中間転写ユニット
501 中間転写ベルト
502 トナーシール部材
503 帯電チャージャ
504 ベルトクリーニングブレード
505 潤滑剤塗布ブラシ
506 潤滑剤
507 1次転写バイアスローラ
508 ベルト駆動ローラ
509 ベルトテンションコントローラ
510 2次転写対向ローラ
511 クリーニング対向ローラ
512 フィードバッグ電流検知ローラ
513 トナー画像
514 光学センサ
600 2次転写ユニット
601 転写紙ガイド板
605 2次転写バイアスローラ
606 転写紙除電チャージャ
608 クリーニングブレード
610 レジストローラ
801 1次転写電源
802 2次転写電源
(図3の符号)
P 転写紙
10 プリンタ本体
12 画像書込部
13 画像形成部
14 給紙部
15 定着装置
16 レジストローラ
20 BK、20M、20Y、20C 現像装置
21 BK、21M、21Y、21C 感光体
22 中間転写ベルト
23 BK、23M、23Y、23C 1次転写バイアスローラ
25 ベルトクリーニング部材
26 ベルト従動ローラ
27 潤滑剤塗布装置
50 転写搬送ベルト
60 2次転写バイアスローラ
70 バイアスローラ
(図4の符号)
31 金型ドラム
32 基層、弾性層を積層したベルト
33 押し当て部材
34 粒子
35 粉体塗布装置
(図5の符号)
A 塗料パン
B 塗料
C 塗布ロール
D 規制ロール
E 円筒状支持体(金型)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0120】
【特許文献1】特開2006−47609号公報
【特許文献2】特開平10−83122号公報
【特許文献3】特開2010−15143号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上に形成された潜像をトナーにより現像して得られたトナー像が転写される中間転写ベルトであって、該中間転写体は基層上に弾性層を備える積層構造からなり、該弾性層がUL94VTM燃焼試験においてVTM−0を示す難燃性アクリルゴム弾性層であり、かつ、10μm押し込み時のマルテンス硬度が0.2N/mm〜0.8N/mmであって、弾性層表面が独立した球状樹脂粒子で面方向に配列し一様な凹凸形状で形成されていることを特徴とする中間転写ベルト。
【請求項2】
前記難燃性アクリルゴム弾性層は水酸化金属化合物及び燐化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の中間転写ベルト。
【請求項3】
前記表面の球状樹脂微粒子がシリコーン樹脂微粒子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の中間転写ベルト。
【請求項4】
前記表面の球状樹脂微粒子の粒子径が0.5μm〜5μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の中間転写ベルト。
【請求項5】
該基層がポリイミド樹脂、もしくはポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の中間転写ベルト。
【請求項6】
潜像が形成され、トナー像を担持可能な像担持体と、該像担持体上に形成された潜像をトナーで現像する現像手段と、該現像手段により現像されたトナー像が一次転写される中間転写ベルトと、該中間転写ベルト上に担持されたトナー像を記録媒体に二次転写する転写手段とを有してなり、前記中間転写ベルトが請求項1乃至5のいずれかに記載の中間転写ベルトであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
画像形成装置がフルカラー画像形成装置であって、各色の現像手段を有する複数の潜像担持体を直列に配置してなる請求項6に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−208485(P2012−208485A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−52463(P2012−52463)
【出願日】平成24年3月9日(2012.3.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】