説明

中間転写記録媒体、及び転写された被転写体

【課題】
個人情報などの痕跡が残るインクリボンを使用せず、被転写体の材料制限が少なく、接着性よく転写でき、かつ、転写後には耐擦擦性や耐溶剤性などの耐久性が要求される中間転写記録媒体、及び転写された被転写体を提供することである。
【解決手段】
基材11の一方の面に離型層13、ハードコート層14及び受容層21が順に積層されてなる中間転写記録媒体10であって、受容層21がカチオン性ウレタン系樹脂とカチオン性フィックス剤とフィラーとを含み、インクジェット方式での画像を形成することができ、かつ、被転写体101の前記被着層102へ転写する際に、転写時の加熱加圧によって受容層21に含まれているバインダが軟化及び/又は溶融して、前記被着層102と密着して一体化することを特徴とし、ハードコート層14の代わりに、ホログラム層15及び透明反射層17を用いることも特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写記録媒体、及び転写された被転写体に関し、さらに詳しくは、個人情報などの痕跡が残るインクリボンを使用せず、中間転写記録媒体へ画像を印画する際には画像が滲まず、乾燥が早く、該中間転写記録媒体を用いて多くの被転写体に画像を転写形成する際には、多種の被転写体へ接着性よく転写でき、しかも、箔切れがよく効率よく転写でき、転写後は耐擦傷性や耐溶剤性などの耐久性に優れる中間転写記録媒体、及び転写された被転写体に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。また、「PET」は「ポリエチレンテレフタレート」、「UV」は「紫外線」、「電離放射線硬化(性)樹脂」は「未硬化の電離放射線硬化性樹脂と、硬化した電離放射線硬化樹脂の総称」の略語、機能的表現、通称、又は業界用語である。
【背景技術】
【0003】
(主なる用途)本発明の中間転写記録媒体を用いて被転写体へハードコート層(又はホログラム層及び透明反射層)及び画像が転写された被転写体(媒体)の主なる用途としては、例えば、紙幣、株券、証券、証書、商品券、小切手、手形、入場券、通帳類、ギフト券、乗車券、車馬券、印紙、切手、鑑賞券、入場証、通行証、チケット等の金券類、キャッシュカード、クレジットカード、IDカード、プリペイドカード、メンバーズカード、ICカード、光カードなどのカード類、グリーティングカード、ハガキ、名刺、運転免許証、パスポート等の各種証明書やその証明写真類、カートン、ケース、軟包装材などの包装材類、バッグ類、化粧品、腕時計、ライター等のブランド装身具、封筒、タグ、しおり、カレンダー、ポスター、パンフレット、ネームプレート、レポート用紙など文具類、建材、パネル、エンブレム、キー、布、衣類、履物、ラジオ、テレビ、電卓、OA機器等の装置類などがある。しかしながら、画像を印画でき、かつ、耐擦擦性や耐溶剤性などの耐久性が要求される用途であれば、特に限定されるものではない。
【0004】
(背景技術)従来、金券類、カード類、及び各種証明書類などのは、資格証明や一定の経済的価値や効果を持つため、所有者の個人情報が表示されるが、該個人情報の漏洩を防止し、かつ、使用時における外力に対する耐久性が必要である。個人情報の表示方法として、熱転写法による印字(表示)が広く使用される様になっている。これらの熱転写方法では、各種の画像が簡便に形成されるので、印刷枚数が比較的少なくてもよい印刷物、例えば、身分証明書等のIDカードの作成等に利用される様になっている。又、顔写真等の如くカラー画像が好ましい場合には、連続した基材フイルム上に、例えば、イエロー、マゼンダ及びシアン(更に必要に応じてブラック)の着色熱転写層を面順次に繰返し多数設けた長尺熱転写フイルムを用いる熱転写方法が行なわれている。この様な熱転写フイルムは溶融転写タイプと、昇華タイプの熱転写フイルムとがあるが、いじれも、専用のインクリボンを用いて印字するので、印字されて抜けた部分があるインクリボンが排出され、該排出インクリボンの抜け部分は秘密にしたい個人情報などであり、該個人情報などが廃棄されるインクリボンから容易に知られてしまうという危険性があった。
また、上記の熱転写フイルムで、身分証明書等のIDカードを作成する場合、溶融転写タイプの熱転写フイルムの場合は、文字や数字等の如き画像の形成は容易であるが、これらの画像は耐久性、特に耐摩擦性が劣るという欠点がある。一方、昇華転写型の熱転写フイルムの場合には、顔写真等の階調性画像を形成することが出来るが、形成された画像は通常の印刷インキとは異なり、ビヒクルが無い為、耐光性、耐候性、耐摩擦性等の耐久性に劣るという問題がある。上記問題を解決する方法として、画像を形成した後に、該画像の表面に、さらに、透明樹脂層や硬化樹脂層などの保護層(本発明のハードコート層に相当する)を重ねて転写する方法がある。しかしながら、画像転写と保護層転写の2回の転写操作を行うために、煩雑で効率が悪い。
そこで、インクリボンを使用せず、インクジェット方式で画像を形成する中間転写記録媒体もあるが、インクジェット方式による画像では乾燥が遅いため画像形成速度が遅くなったり、また印字が滲んだり、さらに画像形成後の乾燥も遅いので、直ちに被転写体へ転写できないという問題点もあった。
さらにまた、インクジェット方式で画像を形成する中間転写記録媒体のインクジェット受容層は、ある程度厚い層が必要とされるために、画像を形成した中間転写記録媒体を最終的な被転写体へ転写する際に、箔切れが著しく悪く、転写適性に劣るという欠点もあった。
さらにまた、インクジェット方式で画像を形成する中間転写記録媒体のインクジェット受容層は、被転写体へ転写する際の接着層も兼ねているので、被転写体の種類によっては転写した際の接着性に劣り、被転写体の種類によって受容層の材料を代えねばならず、逆に見れば、被転写体の材料が制限されてしまうという欠点もあった。
従って、中間転写記録媒体は、個人情報などの痕跡が残るインクリボンを使用せず、中間転写記録媒体へ画像を印画する際には画像が滲まず、乾燥が早く、該中間転写記録媒体を用いて被転写体に画像を転写形成する際には、被転写体の材料制限が少なく、接着性よく転写でき、しかも、箔切れがよく効率よく転写でき、かつ、転写後には耐擦擦性や耐溶剤性などの耐久性が要求されることが求められている。
【0005】
(先行技術)従来、受容層が基材上に剥離可能に設けられた中間転写記録媒体で、その受容層に染料層や熱溶融性インキ層を有する熱転写シートを用いて、染料、顔料などの着色剤を転写して画像を形成し、その後に中間転写記録媒体を加熱して、受容層を被転写体上に転写する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、受容層へ染料層や熱溶融性インキ層を有する熱転写シート(本発明のインクリボンに相当する)を用いているので、画像を形成して抜けた部分があるインクリボンが排出され、抜け部分の秘密にしたい個人情報などが廃棄されるインクリボンから知られてしまうという問題点がある。
また、本出願人は、熱転写フィルム(本発明の中間転写記録媒体に相当する)の熱転写層と熱転写記録媒体の熱転写インク層とを対向するように重ね合せて加熱して、熱転写インク層または熱転写インク層に含有する着色剤を熱転写フィルムの熱転写層に転写した後に、被画像形成体(本発明の被転写体に相当する)へ画像形成された熱転写層ごと転写する画像形成方法を開示している(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2には、ノズルから部分的に吐出させるインクジェット記録方式で凸部を形成することが例示されているが、しかしながら、受容層は接着層を兼ねており、被転写体の材料が制限されてしまうので、多種材料の被転写体へ使用できないという欠点がある。また、特許文献2には、熱転写フィルムには、基材上に設けた熱転写層の上に接着層を設けて、熱転写の際に被転写体との定着性を向上させることも可能であると、記載されている、しかしながら、このような接着層があると、インクジェット方式での画像が形成できないという問題点がある。
このために、本出願人はさらに研究を鋭意進めて、受容層と接着性のある被着層を被転写体へ設けることで、被転写体の被着層面へ転写する際に、転写時の加熱加圧によって受容層に含まれているバインダの少なくとも1部が軟化及び/又は溶融して、被着層と密着して一体化して、強固に接着させることで課題を解消し、本発明に至ったものである。
【0006】
【特許文献1】特開昭62−238791号公報
【特許文献2】特開2003−80855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、中間転写記録媒体へ画像を印画する際には個人情報などの痕跡が残るインクリボンを使用せず、中間転写記録媒体へ画像を印画する際には画像が滲まず、乾燥が早く、該中間転写記録媒体を用いて被転写体に画像を転写形成する際には、被転写体の材料制限が少なく、接着性よく転写でき、しかも、箔切れがよく効率よく転写でき、かつ、転写後には耐擦擦性や耐溶剤性などの耐久性が要求される中間転写記録媒体、及び転写された被転写体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明に係わる中間転写記録媒体は、被着層を有する被転写体の前記被着層へ転写する中間転写記録媒体であって、基材と、該基材の一方の面に離型層、ハードコート層及び受容層が順に積層されてなり、前記受容層がカチオン性ウレタン系樹脂(バインダ)とカチオン性フィックス剤とフィラーとを含み、インクジェット方式での画像を形成することができ、かつ、前記被転写体の前記被着層へ転写する際に、転写時の加熱加圧によって前記受容層に含まれているバインダが軟化及び/又は溶融して、前記被着層と密着して一体化するように、したものである。
請求項2の発明に係わる中間転写記録媒体は、上記ハードコート層の代わりに、ホログラム層及び透明反射層を用いるように、したものである。
請求項3の発明に係わる転写された被転写体は、請求項1〜2のいずれかに記載の中間転写記録媒体を用い、該中間転写記録媒体の上記受容層へインクジェット方式で画像を形成した後に、上記被転写体の上記被着層へ転写するように、したものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の本発明によれば、中間転写記録媒体へインクジェット方式で画像を印画する際には、個人情報などの痕跡が残るインクリボンを使用せず、画像が滲まず、乾燥が早く印画でき、該中間転写記録媒体を用いて、多種材料の被転写体の被着層へハードコート層及び画像が形成された受容層とを効率よく強固に接着でき、かつ、転写後には耐擦擦性や耐溶剤性などの耐久性に優れる中間転写記録媒体が提供される。
請求項2の本発明によれば、請求項1の効果に加えて、意匠性及び偽造防止性に優れるホログラムを転写できる中間転写記録媒体が提供される。
請求項3の本発明によれば、滲みのない鮮明な画像を、多種材料の被転写体へ箔切れがよく効率よく、強固に接着するように転写でき、かつ、転写後には耐擦擦性や耐溶剤性などの耐久性に優れる転写された被転写体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施例を示す中間転写記録媒体の断面図である。
図2は、本発明の中間転写記録媒体への画像形成方法を説明する説明図である。
図3は、本発明の中間転写記録媒体を用いて、ハードコート層及び画像を形成した受容層を転写した被転写体の断面図である。
図4は、本発明の1実施例を示す中間転写記録媒体の断面図である。
【0011】
(中間転写記録媒体)本発明の中間転写記録媒体10は、図1に示すように、基材11と、該基材11の一方の面へ離型層13、ハードコート層14、及びカチオン性ウレタン系樹脂(バインダ)とカチオン性フィックス剤とフィラーとを含む受容層21を有する。また、これらの層間及び/又は層表面へ、必要に応じてプライマ層16、印刷層などの他の層を設けてもよい。従来、転写の際の被転写体101との接着機能は受容層21へ持たせていたが、受容層21のバインダ樹脂が限られているので、該バインダ樹脂が接着し転写することのできる被転写体101の材料も限定されてしまっていた。そこで、本発明の中間転写記録媒体10では、接着機能を中間転写記録媒体10へは設けずに、被転写体101の表面へ転写時の加熱加圧によって受容層21に含まれているバインダが軟化及び/又は溶融して密着して一体化する被着層102を設けるようにしたものである。被転写体101へ被着層102を設けておけば、図3に示すように、被転写体101面の被着層102への転写時には、中間転写記録媒体10の受容層21に含まれているバインダに少なくとも1部が軟化及び/又は溶融して密着して一体化するので、強固に接着した転写をすることができる。このために、中間転写記録媒体10は1種類でも、被転写体101の材料の制限がなくなり、多くの被転写体に対応できるようになる。ここで、密着とは化学的電気的な親和性による接着や粘着、相熔による接着などを含むものとする。
【0012】
(基材)基材11としては、特に限定されるではなく、好ましい基材11の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の耐熱性の高いポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレン誘導体、ポリアミド、ポリメチルペンテン等のプラスチックの延伸または未延伸フィルムが挙げられる。また、これらの材料を2種以上積層した複合フィルムも使用することができる。基材フィルムの厚さは、その強度および耐熱性等が適切になるように材料に応じて適宜選択することができるが、通常は1〜100μm程度のものが好ましく用いられる。
【0013】
(離型層)転写時の剥離性を向上させるために離型層13を設け、必要に応じて、離型層13の代わりに剥離層も設けてもよく、離型層13及び剥離層の両方を設けるとより転写性をより向上できる。
【0014】
(離型層)離型層13としては、通常、離型性樹脂、離型剤を含んだ樹脂、電離放射線で架橋する硬化性樹脂などがあるが、好ましくはメラミン系樹脂を用い、後述するハードコート層14と組合わせることで、離型層13との剥離性が安定し、転写時の転写性を向上させることができる。離型層13の形成は、該樹脂を溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート、グラビアコートなどの公知のコーティング方法で、塗布し乾燥して、温度150℃〜200℃程度で焼き付ける。離型層13の厚さとしては、通常は0.01μm〜5.0μm程度、好ましくは0.5μm〜3.0μm程度である。
【0015】
(剥離層)必要に応じて設ける剥離層としては、一般的にはエチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラールなどのビニル共重合体の熱可塑性樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノアルキッド樹脂などの熱硬化型の樹脂を用いて形成することができる。また、離型層には箔切れ性を向上させるために、マイクロシリカやポリエチレンワックスなどのフィラーを含有させることが好ましい。離型層は、上記の樹脂を溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート、グラビアコート、バーコートなどの公知のコーティング方法で、少なくとも1部に塗布し乾燥して塗膜を形成したりすれば良い。離型層の厚さとしては、通常は0.1μm〜5μm程度、好ましくは0.5μm〜2μm程度である。離型層13及び剥離層の両方を設ける場合には、適宜組み合わせて用いればよく、この場合には、剥離層は転写後には被転写体へ転写移行して、保護層としての機能を合わせ持つ。
【0016】
(ハードコート層)ハードコート層14としては、少なくとも電離放射線硬化樹脂を主成分とし、マイクロシリカやポリエチレンワックスを含むようにする。該電離放射線硬化性樹脂としては、好ましくは、(1)分子中にイソシアネート基を3個以上有するイソシアネート類、(2)分子中に水酸基を少なくとも1個と(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも2個有する多官能(メタ)アクリレート類、又は(3)分子中に水酸基を少なくとも2個有する多価アルコール類の反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂を用い、ポリエチレンワックスを含ませて、塗布し乾燥して電離放射線で硬化させて、電離放射線硬化樹脂とすればよい。
【0017】
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂(本明細書では電離放射線硬化性樹脂組成物Mと呼称する)は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂の硬化物、具体的には、特開2001−329031号公報で開示されている光硬化性樹脂などが例示できる。
【0018】
(ポリエチレンワックス)ポリエチレンワックスとしては、ポリエチレン系樹脂の粒子やビーズが挙げられるが、好ましくは球状ビーズである。但し、ポリエチレンワックスを添加すると、箔切れ性は低下するので、その添加量は、電離放射線硬化樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部程度、好ましくは0.1〜5質量部とする。転写後にはハードコート層14が最表面層となり、含まれるポリエチレンワックスは、機械的な摩擦、及び摩耗から媒体を保護し、後述する画像などの固有情報も保護する。
【0019】
(1)ポリエチレンワックスを含ませることで、転写後にはハードコート層14が最表面層となるが、極めて過酷な環境での使用、長期間にわたる使用、及び/又は多数回の繰り返し使用などでも、溶剤、機械的な摩擦、及び摩耗から被転写体に設けられた画像を保護し、傷付きにくく耐久性に優れる。(2)ハードコート層14はメラミン系樹脂を用いた離型層13と界面を接しているので、ハードコート層14と離型層13との間で剥離し、安定した剥離性を有するので、転写時にはバリなどの発生も極めて少なくさせることができる。(3)ハードコート層14へはフィラーとしてポリエチレンワックスを含ませ、かつ、受容層21へはフィラーとしてマイクロシリカを含ませて、転写する全部の層へフィラーを混入させているので、カードなどの媒体(被転写体101)へ転写する際の箔キレをよくさせて、(2)の安定した剥離性とともに、転写性を向上させることができる。
【0020】
(ハードコート層の形成)ハードコート層14の形成は、上記の電離放射線硬化性樹脂にポリエチレンワックス、必要に応じて光重合開始剤、可塑剤、安定剤、界面活性剤等を加え、溶媒へ分散または溶解して、ロールコート、グラビアコート、コンマコート、ダイコートなどの公知のコーティング方法で塗布し乾燥して、電離放射線で反応(硬化)させればよい。
【0021】
(ハードコート層の厚味)ハードコート層14の厚さは、通常、1〜5μm程度であるが、本発明では、極めて過酷な環境での使用、使用期限がなかったり、長期にわたる使用、及び/又は多数回の繰り返し使用などでも、溶剤や機械的な摩擦及び摩耗、特に引掻きから画像を保護し、傷付きにくい耐久性を付与するために、ハードコート層14の厚みで5μm以上で、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上とする。上限は特に限定されないが、価格や箔切れ性から25μm以下程度である。ハードコート層14の厚味が5μm以上で、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上であるようにすることで耐久性が高まり、極めて過酷な環境での使用、使用期限がなかったり、長期にわたる使用、及び/又は多数回の繰り返し使用などでも、化学的機械的な外力から画像を保護できる。実施例でも述べるが、転写する層がハードコート層14/受容層21と総厚さが厚くなり、通常の転写箔の転写層数μmと比較すると著しく厚くなると、バリが発生したり、箔切れが悪く転写速度低下などの転写性が著しく低下するが、転写する層の全部にフィラー成分を含ませることで、剥離性もよく、箔切れ性もよくすることができるので、容易に転写することができる。
【0022】
(ホログラム層)また、本発明はハードコート層14の代わりに、ホログラム層15及び透明反射層17を用いることで、ホログラムの持つ高意匠性及び偽造防止性を付与することもできる。図4に示すように、基材11/離型層13/ホログラム層15/反射層17/プライマー層16(必要に応じて)/受容層21の層構成である。ホログラム層15は、ハードコート層と同様又は同じ電離放射線硬化性樹脂の硬化物を用いるので、ハードコート層の機能を兼ね備えており、一石二鳥である。ホログラム層15としては、電離放射線硬化性樹脂の硬化物、反応性シリコーンを含ませ、それらに加えてポリエチレンワックスも含ませる場合もある。このようにすることで、電離放射線硬化後でも熱で白化しない耐熱性と、伸縮へ追従性がよく、割れや白化などのホログラム効果の低下が少ない意匠性に優れたホログラムを立体面へ転写することができる。電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタン変性アクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル等が適用でき、好ましくはウレタン変性アクリレート樹脂である。
【0023】
(電離放射線硬化性樹脂組成物M)好ましいウレタン変性アクリレート樹脂としては、「電離放射線硬化性樹脂組成物M」である。該「電離放射線硬化性樹脂組成物M」としては、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂の硬化物、具体的には、特開2001−329031号公報で開示されている光硬化性樹脂が好ましい。即ち、「電離放射線硬化性樹脂組成物M」(1)分子中にイソシアネート基を3個以上有するイソシアネート類、(2)分子中に水酸基を少なくとも1個と(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも2個有する多官能(メタ)アクリレート類、又は(3)分子中に水酸基を少なくとも2個有する多価アルコール類の反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂と(メタ)アクリレートオリゴマーの硬化物、及び滑剤を含み、かつ、ホログラム層は(1)分子中にイソシアネート基を3個以上有するイソシアネート類、(2)分子中に水酸基を少なくとも1個と(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも2個有する多官能(メタ)アクリレート類、又は(3)分子中に水酸基を少なくとも2個有する多価アルコール類の反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂(本明細書では「電離放射線硬化性樹脂組成物M」と呼称する)である。また、必要に応じて、(メタ)アクリレートオリゴマーなどを含ませてもよい。
【0024】
((メタ)アクリレートオリゴマー)(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、耐熱性のあるオリゴマーであればよく、例えば、日本合成化学社の商品名;紫光6630B、7510B、7630Bなどが例示できる。含有させる質量基準での割合としては、「電離放射線硬化性樹脂組成物M」100部に対して10〜30部程度、好ましくは15〜25部である。この範囲未満では耐熱性が不足し、この範囲を超えては耐熱性はよいが、ヒビ割れしやすい。
【0025】
(反応性シリコーン)反応性シリコーンとしては、電離放射線で硬化時に樹脂と反応し結合して一体化したり、1部は残留するものもある。該反応性シリコーンとしてはアクリル変性、メタクリル変性、又はエポキシ変性などで変性した反応性シリコーンで、該反応性シリコーンを含有させる質量基準での割合としては「電離放射線硬化性樹脂組成物M」100に対して、0.1〜10部程度、好ましくは0.3〜5部である。この範囲未満ではレリーフの賦型時にプレススタンパとの剥離が不十分であり、プレススタンパの汚染を防止することが困難で賦型性が悪い。また、この範囲を超えてはホログラム層面への透明反射層の密着性が低く、ホログラム層と透明反射層との間で剥離し商品価値を失ってしまう。また、透明反射層との密着性がやや劣るが、シリコーンオイルを添加してもよい。
【0026】
(ポリエチレンワックス)ポリエチレンワックスとしては、ポリエチレン系樹脂の粒子やビーズが挙げられるが、好ましくは球状ビーズである。但し、ポリエチレンワックスを添加すると、箔切れ性は低下するので、その添加量は、電離放射線硬化樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部程度、好ましくは0.1〜5質量部とする。
【0027】
このように、ホログラム層15へ電離放射線硬化性樹脂の硬化物、反応性シリコーン及びポリエチレンワックスを含ませることで、次の作用効果を兼ねさせることができる。(1)電離放射線硬化前の塗布状態のホログラム層15の塗膜は指乾状態でべとつかず、ブロッキングせずに巻き取ることができるので、ロールツーロール加工ができる。(2)ホログラム層15へは反応性シリコーンを含ませることで、賦型性がよいので、レリーフ構造を容易に賦型でき、賦型後に電離放射線で硬化できる。(3)転写後のホログラム層15は最表面層となり、極めて過酷な環境での使用、長期間にわたる使用、及び/又は多数回の繰り返し使用などでも、溶剤、機械的な摩擦、及び摩耗からホログラムを保護し、傷付きにくく耐久性に優れる。(4)ホログラム層15はメラミン系樹脂を用いた離型層13と界面を接しているので、安定した剥離性を有し、転写時には箔切れがよく、バリなどの発生も極めて少なくすることができる。
【0028】
(ホログラム層の形成)ホログラム層15は、上記の樹脂及び必要に応じて添加剤を、溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、コンマコートなどの公知のコーティング方法で、少なくとも1部に塗布し乾燥して塗膜を形成したりすれば良い。ホログラム層15の厚さとしては、通常は1μm〜30μm程度、好ましくは2μm〜20μm程度である。複数回の塗布でもよい。
【0029】
(ホログラム)次に、ホログラム層15の表面には、ホログラムなどの光回折効果の発現する所定のレリーフ構造を賦型し、硬化させる。ホログラムは物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を凹凸のレリーフ形状で記録されたもので、例えば、フレネルホログラム等のレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラム等の白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などがある。レリーフ形状は凹凸形状であり、特に限定されるものではなく、微細な凹凸形状を有する光拡散、光散乱、光反射、光回折などの機能を発現するものでもよく、例えば、フーリエ変換やレンチキュラーレンズ、光回折パターン、モスアイ、が形成されたものである。また、光回折機能はないが、特異な光輝性を発現するヘアライン柄、マット柄、万線柄、干渉パターンなどでもよい。
【0030】
これらのレリーフ形状の作製方法としてはホログラム撮影記録手段を利用して作製されたホログラムや回折格子の他に、干渉や回折という光学計算に基づいて電子線描画装置等を用いて作製されたホログラムや回折格子をあげることもできる。また、ヘアライン柄や万線柄のような比較的大きなパターンなどは機械切削法でもよい。これらのホログラム及び/又は回折格子の単一若しくは多重に記録しても、組み合わせて記録しても良い。これらの原版は公知の材料、方法で作成することができ、通常、感光性材料を塗布したガラス板を用いたレーザ光干渉法、電子線レジスト材料を塗布したガラス板に電子線描画装置を用いてパターン作製する電子線描画法をなどが適用できる。
【0031】
(レリーフの賦型)ホログラム層15面へ、上記のレリーフ形状を賦形(複製ともいう)する。ホログラムの賦型は、公知の方法によって形成でき、例えば、回折格子やホログラムの干渉縞を表面凹凸のレリーフとして記録する場合には、回折格子や干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型(スタンパという)として用い、上記樹脂層上に前記原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着することにより、原版の凹凸模様を複製することができる。
【0032】
また、ホログラム層に形成するホログラムパターンは単独でも、複数でもよい。複数のホログラムパターンを設ける場合には、該ホログラムパターン毎にホログラムマーク(タイミングマーク)が設けることが好ましい。該ホログラムマーク(タイミングマーク)を検知して、後述するインクジェット方式で画像を形成する際に、ホログラムパターンとインクジェット画像とを同期して形成することができ、同期したホログラム像と印画画像との意匠効果やセキュリティ性をより向上させることができる。
【0033】
(レリーフの硬化)ホログラム層15は、スタンパでエンボス中、又はエンボス後に、電離放射線を照射して、電離放射線硬化性樹脂を硬化させる。上記の電離放射線硬化性樹脂は、レリーフを形成後に、電離放射線を照射して硬化(反応)させると電離放射線硬化樹脂(ホログラム層15)となる。電離放射線としては、電磁波が有する量子エネルギーで区分する場合もあるが、本明細書では、すべての紫外線(UV−A、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線を包含するものと定義する。従って、電離放射線としては、紫外線(UV)、可視光線、ガンマー線、X線、または電子線などが適用できるが、紫外線(UV)が好適である。電離放射線で硬化する電離放射線硬化性樹脂は、紫外線硬化の場合は光重合開始剤、及び/又は光重合促進剤を添加し、エネルギーの高い電子線硬化の場合は添加しないで良く、また、適正な触媒が存在すれば、熱エネルギーでも硬化できる。ホログラム層15として、熱硬化性樹脂を用いた場合には、使用する熱硬化性樹脂の硬化条件に応じた温湿度環境下で、エージングを行い硬化させればよい。
【0034】
(レリーフの絵柄)ホログラム層15の絵柄を擬似連続絵柄とすることが好ましい。擬似連続絵柄はプレス型(スタンパという)を作成する際に、小さなレリーフ版の複数を、精度よく突合せてつなぎ目を目立たなくしたり、つなぎ目を樹脂で埋めたりすればよい。このように、擬似連続絵柄とすることで、できるだけ大きな面積、又は好ましくは全面とすることもできる。大面積又は全面のホログラム絵柄を背景とし他の任意な印刷絵柄と、同調させたり、合わせたりして、さらなる特異な意匠性を向上させることができる。印刷絵柄は、層間又は層表面に、公知の印刷法などで適宜設ければよく、印刷絵柄はインモールド用転写箔、及び/又は収縮フィルムのいずれへ設けてもよい。
【0035】
(透明反射層)透明反射層17は、所定のレリーフ構造を設けたホログラム層15面のレリーフ面へ、透明反射層17へ設けることにより、レリーフの反射及び/又は回折効果を高めるので、ホログラム層15の反射率のより高れば、特に限定されない。該透明反射層17として、ほぼ無色透明な色相で、その光学的な屈折率がホログラム層のそれとは異なることにより、金属光沢が無いにもかかわらず、ホログラムなどの光輝性を視認できるから、透明なホログラムを作製することができる。例えば、ホログラム層15よりも光屈折率の高い薄膜、および光屈折率の低い薄膜とがあり、前者の例としては、ZnS、TiO2、Al23、Sb23、SiO、SnO2、ITO等があり、後者の例としては、LiF、MgF2、AlF3がある。好ましくは、金属酸化物又は窒化物であり、具体的には、Be、Mg、Ca、Cr、Mn、Cu、Ag、Al、Sn、In、Te、Fe、Co、Zn、Ge、Pb、Cd、Bi、Se、Ga、Rb、Sb、Pb、Ni、Sr、Ba、La、Ce、Au等の酸化物又は窒化物他はそれらを2種以上を混合したもの等が例示できる。またアルミニウム等の一般的な光反射性の金属薄膜も、厚みが200Å以下になると、透明性が出て使用できる。
【0036】
透明金属化合物の形成は、金属の薄膜と同様、ホログラム層15のレリーフ面に、10〜2000nm程度、好ましくは20〜1000nmの厚さになるよう、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVDなどの真空薄膜法などにより設ければよい。
【0037】
(プライマ層)ハードコート層14面、又は透明反射層層17面へ、受容層21を設けるが、接着力を向上させるために、プライマ層16を設けることが好ましい。該プライマ層16としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノ−ル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、酸変性ポリオレフィン系樹脂、エチレンと酢酸ビニル或いはアクリル酸などとの共重合体、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ゴム系化合物などを使用することができ、好ましくは、酸素若しくは窒素を有するもの、若しくはイソシアネート化合物を反応性のもの、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂、アイオノマー樹脂、ゴム系樹脂等の従来の接着剤として既知のものである。該プライマ層は膜厚が薄いので必ずしも含有しなくてもよいが、マイクロシリカやポリエチレンワックスなどのフィラーを含有させることが好ましい。
【0038】
(受容層)ハードコート層14面、又は透明反射層層17面へ、必要に応じてプライマー層16を介して、受容層21を設け、該受容層21は中間転写記録媒体10の最表面となり、該受容層21にはインクジェット方式によって画像が印画される。受容層21としては、少なくともカチオン性ウレタン系樹脂とカチオン性フィックス剤とフィラーとを含むようにする。
【0039】
カチオン性ウレタン系樹脂としてはカチオン性基を有するポリカーボネート系ポリウレタン、ポリテトラメチレンエーテルグリコール系ポリウレタン、ポリエステルエーテル系ポリウレタン、ポリブチレンアジペート系ポリウレタン、ポリメチルペンタンアジペート系ポリウレタン、ポリノナンジオールアジペート/ポリオクタンアジペート系ポリウレタン、ポリメチルペンタンアジペート系ポリウレタンなどのウレタン系樹脂で、好ましくは自己乳化性又は水性で、カチオン性親水基を有するポリカーボネート系又はポリエステル系のポリオールと脂肪族イソシアネートの反応物が好ましい。カチオン性基としては1〜3級アミン或いは4級アンモニウム塩基などが例示できる。カチオン性フィックス剤としては、ポリアミン誘導体や第4級アンモニウム塩などの染料固着剤が例示できる。フィラーとしては、箔切れ性を良くし、透明性を害さない程度に含有させ、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、プラスチックピグメント等の透明性の高い微粒子やワックス等で、マイクロシリカが好ましい。
【0040】
カチオン性ウレタン系樹脂とカチオン性フィックス剤とマイクロシリカの割合が質量基準でカチオン性ウレタン系樹脂:カチオン性フィックス剤:マイクロシリカ=100:5〜20:1〜10である。カチオン性フィックス剤の含有割合が上記範囲未満では定着性が悪く、上記範囲を越えると洗濯中に溶出して堅牢性を低下させる。マイクロシリカの含有割合が上記範囲未満ではインキ定着性と箔キレ性が悪く、上記範囲を越えると透明性が低下し画像が見えにくくなる。
【0041】
(定着性)従来の受容層はポリビニルアルコールなどの水溶性樹脂を主体とするもので、耐水性は著しく悪く、また、多孔質質のフィラーを用いたり、受容層塗工液の溶媒として良溶媒と貧溶媒を用いて、乾燥中に相分離、ゲル化させて多孔質の網目構造とさせたり、していたが、画像の定着性が充分でなく、洗濯時に画像が淡くなる問題点もあった。本発明の印字ラベル20の受容層27によれば、インクジェット方式によって印画された画像103でも高画質で定着性がよく、洗濯堅牢度も向上する。定着性と洗濯堅牢度の両立は定かではないが、カチオン性ウレタン系樹脂とカチオン性フィックス剤とフィラーとを含むことで、塗膜の表面が微細な凹凸状となったり、塗膜自身の凝集状態も密ではなくかなり粗状になっているために、画像成分の浸透性や密着性が向上し、また、画像を構成する染料などがカチオン性ウレタン系樹脂やカチオン性フィックス剤と反応し不溶化するため、と推測される。
【0042】
(他の層)層間及び/又は層表面へ必要に応じて設ける層としては、プライマ層、印刷層、帯電防止層、背面滑性層などがあり、それぞれ公知のものでよい。特に、印刷層としては、着色インキや蛍光インキなどを用いて、公知のスクリーン印刷やグラビア印刷法で印刷すればよい。
【0043】
(転写された被転写体)本発明の中間転写記録媒体10を用いた本発明の転写された被転写体は、(1)基材11/離型層13/ハードコート層14/プライマー層16(必要に応じて)/受容層21、又は、基材11/離型層13/ホログラム層15/透明反射層17(必要に応じて)/プライマー層16(必要に応じて)/受容層21、が順に積層されてなる中間転写記録媒体10を準備する準備工程と、(2)前記中間転写記録媒体10の受容層21へインクジェット方式で画像を形成する画像形成工程と、(3)画像が形成された中間転写記録媒体の受容層21面を被転写体101の被着層102へ重ね合わせて加熱することによって、ハードコート層14/プライマー層16(必要に応じて)/画像が形成された受容層21、又は、ホログラム層15/透明反射層17/プライマー層16(必要に応じて)/画像が形成された受容層21、を転写する転写工程の、3工程からなる。
【0044】
(第1工程)中間転写記録媒体10を準備する準備工程であって、前述してきた材料、製造方法で製造し準備すればよい。
【0045】
(第2工程)画像103を形成する画像形成工程であって、図2に示すように、中間転写記録媒体10の受容層へインクジェット方式で画像103を形成される。インクジェット方式には熱インパクト法などがあるが特に限定されず、インクジェットインキも水性や油性インキなどがあるが特に限定されない。また、インクジェット方式で形成する画像103も、円形や星形などのスポット状、文字、数字、イラスト、写真などの任意の形状でよく、その色調も単独、複数、フルカラー用など限定されるものではない。好ましくは、オンデマンドで可変情報をインクジェット方式で印画することである。また、インクジェット方式で画像を形成する際に、ホログラムパターンに対応したホログラムマーク(タイミングマーク)が設けれている場合には、該ホログラムマーク(タイミングマーク)を検知して、ホログラムパターンにインクジェット画像を同期して形成することができ、同期したホログラム像と印画画像との意匠効果やセキュリティ性をより向上させることができる。インクジェット方式では、画像103を印画する際に、個人情報などの痕跡が残るインクリボンを使用せず、また、画像103を印画する際にも、画像が滲まず、乾燥が早いので効率がよい。
【0046】
(第3工程)被転写体101への転写工程であって、図3に示すように、画像103が形成された中間転写記録媒体10の受容層21面を被転写体101の被着層102へ重ね合わせて加熱することによって、画像103が形成された受容層21/プライマー層16(必要に応じて)/ハードコート層14が被転写体101の被着層102へ転写される。転写は、画像103が形成された中間転写記録媒体10の受容層21面を被転写体101の被着層102へ重ね合わせて加熱することによって、被転写体101の被着層102にハードコート層と印画画像とが転写され形成される。被転写体101の被着層102への形成方法としては、公知の転写法でよく、例えば、熱刻印によるホットスタンプ(箔押)、熱ロールによる全面又はストライプ転写、サーマルヘッド(感熱印画ヘッド)によるサーマルプリンタ(熱転写プリンタともいう)などの公知の方法が適用できる。円形、矩形、星形などのスポット状や、文字、数字などの任意の形状でよい。
【0047】
上記転写工程において、画像103が形成された中間転写記録媒体10の受容層21面を被転写体101の被着層102へ転写する際に、転写時の加熱加圧によって受容層21に含まれているバインダが軟化及び/又は溶融して、被着層102と密着して一体化し、図3に示すように、強固に接着する。従来のインクジェット方式で画像103を形成するインクジェット用の受容層21は、被転写体101へ転写する際の接着層も兼ねているので、被転写体101の種類によっては転写した際の接着性に劣る。本発明によれば、被転写体101へ接着するための被転写体101の被転写面へ専用接着機能を有する被着層102が設けられているので、種々の材料からなる被転写体101でも容易に接着させることができる。また、第2工程の画像形成工程と、第3工程の転写工程とは、別々のオフライン操作でも、連続して行うインライン操作でもよい。好ましくはインライン操作でも画像103が滲まず、乾燥が早いので、画像103を印画した直後でも転写操作をすることができる。
【0048】
(箔切れ性)上記転写工程において、被転写体へ重ね合わせて加熱し、画像103が形成された受容層21/ハードコート層14が転写された後に、転写されない部分は転写された部分から箔切れさせて、基材11離型層13とともに引き剥がされ除去される。しかしながら、箔切れ、即ち、受容層21/ハードコート層14の2層からなる層を切ることになり、これらの層のうち、受容層21とハードコート層14は厚味があり、箔切れ性が悪い。好ましい本発明では、受容層21、必要に応じて設けるプライマ層16及びハードコート層14のすべての層へフィラーを含有させることで、箔切れ性が向上でき、効率よく転写作業ができる。従来のンクジェット用の受容層21においては、箔切れ性を向上させるために、フィラーを含有させると、被転写体への接着性が低下して転写すること自体ができなくなる危険性もあったが、本発明では、受容層21へフィラーを含有させることができるのである。
【0049】
(被転写体)被転写体101の転写面には被着層102を設ける。被転写体101としては特に限定されず、例えば天燃繊維紙、コート紙、トレーシングペーパー、転写時の熱で変形しないプラスチックフイルム、ガラス、金属、セラミックス、木材、布などのいずれのものでもよい。また、被転写体101の媒体はその少なくとも1部が着色、印刷、その他の加飾が施されていてもよく、転写したホログラム面にも、印刷、その他の加飾を施してもよい。また、被転写体101の形状は特に限定されず、平面でも立体物でもよく、転写する面も平面に限らず、曲面や凹凸のある立体面でもよい。被着層102としては、受容層に含まれているバインダと転写時の加熱加圧によって軟化及び/又は溶融して、密着して一体化するものであれば、特に限定されない。例えば、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリルウレタン樹脂、これらの樹脂の変性樹脂、及びこれらの樹脂の混合物が挙げられ、好ましくは受容層21のバインダ樹脂と同系樹脂であり、特にポリウレタン系樹脂が好ましい。
【0050】
(画像)インクジェット方式による画像103としては、身分証明書等のIDカードを作成する場合、画像の形成は容易であるが、これらの画像は耐久性、特に耐摩擦性が劣るという欠点がある。該画像を本発明の中間転写記録媒体10の受容層21へ印画した後に、被転写体101の被着層102面へ表面へ転写することで、高耐久性のハードコート層14、又はホログラム層15が最表面に位置し、画像を保護し、耐久性を高める。
【0051】
(耐久性)転写後に最表面となるハードコート層14の鉛筆硬度試験は、JIS−K5400に準拠して測定し、H以上の硬度が好ましい。また、ハードコート層14のスクラッチ強度は、表面の充分な耐摩擦性の点から、サファイア150g以上、好ましくは200g以上である。なお、スクラッチ強度の測定方法は、23℃、55%RHの条件下で24時間調湿した試料に対して、耐摩耗性試験機(HEIDON−18)を用い、0.8mmφサファイア針を直角にあてがい、サファイア針に掛かる荷重を0gから200gまで徐々に増加させ、60cm/minで試料表面を摺動して移動させながら、表面に傷が付き始める時の荷重の測定を行った。荷重が大きいほど良好であることを表す。
【実施例】
【0052】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。なお、溶媒を除き、各層の各組成物は固形分換算の質量部である。
【0053】
まず、被転写体101/被着層102からなる被転写材を準備する。被転写体101としては、クレジットカード用で、厚さが0.76mmの4層ポリ塩化ビニル製のシートを用いて、一方の面へ、被着層組成物として下記の被着層組成物をロールコーターで乾燥後の厚さが1μmになるように、塗工し120℃で乾燥させて、被着層102とした。
・<被着層組成物>
ウレタン系樹脂 15質量部
溶媒(水:イソプロピルアルコール=90:10)85質量部
【0054】
(実施例1)基材11として厚さ25μmのPETフィルムを用い、該基材11の一方の面へ、グラビアコート法で、下記の離型層樹脂組成物(塗工液)を乾燥後2μmになるように塗布し乾燥して、180℃20秒間焼き付けて、離型層13を形成した。
・<離型層の樹脂組成物>
TCM01メジューム(大日本インキ社製、メラミン樹脂商品名) 25質量部
溶媒(MEK:トルエン=1:1) 75質量部
該離型層13面へ、下記のハードコート層用の電離放射線硬化性樹脂組成物をグラビアリバースコーターで乾燥後の塗布厚さが6μmになるように塗工し100℃で乾燥させた後に、高圧水銀灯を用いて紫外線を照射して硬化させてハードコート層14を形成した。
・<電離放射線硬化性樹脂組成物の作製手順>
まず、「電離放射線硬化性樹脂組成物M」は以下の手順で、生成した。撹拌機、還流冷却器、滴下漏斗及び温度計を取り付けた反応器に、酢酸エチル206.1g及びイソホロンジイソシアネートの三量体(HULS社製品、VESTANAT T1890、融点110℃)133.5gを仕込み、80℃に昇温して溶解させた。溶液中に空気を吹き込んだのち、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.38g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業社製品、ビスコート300)249.3g及びジブチル錫ジラウレート0.38gを仕込んだ。80℃で5時間反応させたのち酢酸エチル688.9gを添加して冷却した。
該「電離放射線硬化性樹脂組成物M」と、造膜性樹脂(アクリル系オリゴマー)、ポリエチレンワックス、光重合開始剤、及び溶媒を下記の組成で配合して電離放射線硬化性樹脂組成物を調製した。
・<電離放射線硬化性樹脂組成物>
「電離放射線硬化性樹脂組成物M」 30質量部
ポリエチレンワックス(平均粒径5μm) 0.6質量部
光重合開始剤(チバ社製、商品名イルガキュア907) 0.9質量部
溶媒(酢酸エチル:メチルイソブチルケトン=1:1) 70質量部
該ハードコート層14面へ、下記のプライマ層組成物をグラビアコーターで乾燥後の塗布量が3μmになるように、塗工し100℃で乾燥させて、プライマ層16とした。
・<プライマ層組成物途工液>
ポリエステル樹脂 20質量部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 1質量部
溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)40質量部
該プライマ層16面へ、下記の受容層組成物をグラビアリバースコーターで乾燥後の厚さが4μmになるように、塗工し120℃で乾燥させて、インクジェット印刷が可能な受容層21とし、実施例1の中間転写記録媒体10を得た。
・<受容層組成物>
第4級アンモニウム塩型ポリカーボネート系ポリウレタン 20質量部
ダンフィックス505RE(日東紡績社製;ポリカチオン性フィックス剤)2質量部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 1質量部
溶媒(水) 80質量部
【0055】
(実施例2)基材11として厚さ25μmのPETフィルムを用い、該基材11の一方の面へ、グラビアコート法で、下記の離型層樹脂組成物(塗工液)を乾燥後2μmになるように塗布し乾燥して、180℃20秒間焼き付けて、離型層13を形成した。
・<離型層の樹脂組成物>
TCM01メジューム(大日本インキ社製、メラミン樹脂商品名) 25質量部
溶媒(MEK:トルエン=1:1) 75質量部
該離型層13面へ、下記の電離放射線硬化性樹脂組成物をグラビアリバースコーターで乾燥後の厚さが5μmになるように、塗工し100℃で乾燥させた。
・<ホログラム層の電離放射線硬化性樹脂組成物>
ユピマーUV−V3031(三菱化学社製、UV硬化性樹脂商品名)100質量部
反応性シリコーン(信越化学社製、商品名X−22−1602) 0.5質量部
ポリエチレンワックス(平均粒径3〜5μm、球状) 2質量部
光重合開始剤(チバ社製、商品名イルガキュア184) 5質量部
酢酸エチル 300質量部
次に、該層面へ、立体の社章の2光束干渉法によるホログラムから、2P法で複製した絵柄(立体の社章像を再生するレリーフ)と、該絵柄毎にホログラムマークが設けて一対とし、該一対を複製の流れ方向へ順次羅列して複数絵柄としたプレス型を複製装置のエンボスローラーに貼着して、相対するローラーと間で加熱プレス(エンボス)して、微細な凹凸パターンからなるレリーフを賦形させた。賦形後直ちに、高圧水銀灯を用いて紫外線を照射して硬化させて、ホログラム層15を形成した。
該ホログラム層15のレリーフ面へ、コロナ処理を行い、厚さ500nmの酸化チタンを真空蒸着法で形成して、透明反射層17とした。
該透明反射層17面へ、下記のプライマ層組成物をグラビアコーターで乾燥後の塗布量が0.5μmになるように、塗工し100℃で乾燥させて、プライマ層とした。
・<プライマ層組成物途工液>
ポリエステル樹脂 20質量部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 1質量部
溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)80質量部
該プライマ層面へ、下記の受容層組成物をグラビアリバースコーターで乾燥後の厚さが4μmになるように、塗工し乾燥させて、受容層21とし、実施例2の中間転写記録媒体10を得た。
・<受容層組成物>
第4級アンモニウム塩型ポリカーボネート系ポリウレタン 20質量部
ダンフィックス505RE(日東紡績社製;ポリカチオン性フィックス剤)2質量部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 1質量部
溶媒(水) 80質量部
【0056】
(評価試験1)<オフライン>上記実施例1の中間転写記録媒体10の受容層21へ画像103を印画(形成)する。印画は、600dpiのカラーインクジェットプリンターを用いて、顔写真及び氏名を印画した。
次に、受容層21へ画像103(顔写真及び氏名)が形成された中間転写記録媒体10を、被転写材として前述の被転写体101/被着層102の被着層102面へ、加熱ロール方式転写装置で転写し、基材を離型層と共に剥離し徐去した。
ハードコート層14/プライマー層16(必要に応じて)/画像103が形成された受容層21/被着層102/被転写体101、の構成の転写された被転写体を得た。目視で観察したところ、顔写真及び氏名が観察された。
【0057】
(評価試験2)<インライン>また、上記実施例2の中間転写記録媒体10の受容層21へ、インクジェットプリンタ内臓転写装置を用いて、印画操作と転写操作をインラインで行った。中間転写記録媒体10の受容層21へ、タイミングマークを読み取り、該タイミングを取り、ホログラム像(立体の社章像を再生するレリーフ)の面へ、インクジェット方式で顔写真及び氏名(画像103)を印画し、遠赤外線ヒーターで2秒間乾燥乾燥させた直後、145℃の熱ローラとゴムローラで、被転写材として前述の被転写体101/被着層102の被着層102面とを重ね合わせて、走行速度1m/分で転写した後に、基材及び離型層を剥離し除去した。
転写済みの被転写材を目視で観察したところ、ホログラム像の位置に顔写真及び氏名の画像103に汚れやカスレもなく観察でき、個人情報がオンデマンドで転写されていた。
【0058】
(評価結果)実施例1〜2では、転写時の剥離性もよく、箔切れ性もよく、正常に転写できた。問題なく転写することができた。
また、実施例1〜2のハードコート層14面の鉛筆硬度試験を、JIS−K−5400に準拠して測定したところ、2H以上の硬度を有し、さらに、実施例1〜2の表面のスクラッチ強度はサファイア200g以上であり、充分な耐久性を有していた。しかしながら、比較例1ではスクラッチ強度が悪く、充分な耐久性を有していなかった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の1実施例を示す中間転写記録媒体の断面図である。
【図2】本発明の中間転写記録媒体への画像形成方法を説明する説明図である。
【図3】本発明の中間転写記録媒体を用いて、ハードコート層及び画像を形成した受容層を転写した被転写体の断面図である。
【図4】本発明の1実施例を示す中間転写記録媒体の断面図である。
【符号の説明】
【0060】
10:中間転写記録媒体
11:基材
13:離型層
14:ハードコート層
15:ホログラム層
16:プライマ層
17:透明反射層層
19:接着層
21:受容層
101:被転写体
102:被着層
103:画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着層を有する被転写体の前記被着層へ転写する中間転写記録媒体であって、基材と、該基材の一方の面に離型層、ハードコート層及び受容層が順に積層されてなり、前記受容層がカチオン性ウレタン系樹脂(バインダ)とカチオン性フィックス剤とフィラーとを含み、インクジェット方式での画像を形成することができ、かつ、前記被転写体の前記被着層へ転写する際に、転写時の加熱加圧によって前記受容層に含まれているバインダが軟化及び/又は溶融して、前記被着層と密着して一体化することを特徴とする中間転写記録媒体。
【請求項2】
上記ハードコート層の代わりに、ホログラム層及び透明反射層を用いることを特徴とする請求項1記載の中間転写記録媒体。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載の中間転写記録媒体を用い、該中間転写記録媒体の上記受容層へインクジェット方式で画像を形成した後に、上記被転写体の上記被着層へ転写したことを特徴とする上記ハードコート層及び画像が形成された前記受容層、又はホログラム層、透明反射層及び画像が形成された前記受容層が転写された被転写体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−67013(P2009−67013A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240439(P2007−240439)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】