説明

丸棒状体の搬出装置

【課題】簡単な構成でかつ確実に、重合・積載された多数の丸棒状体を1本ずつ又は2本以上を整列させて順次搬出できる丸棒状体の搬出装置を提供する。
【解決手段】丸棒状体の搬出装置100は、重合・積載された多数の丸棒状体の1本ずつ又は2本以上を整列させて順次搬出するものであり、丸棒状体を重合・積載して収容する収容筐体10と、駆動源50により往復動する送り出し手段60とを備え、前記収容筐体10の前方下部には、1本の丸棒状体のみが通過可能な上下幅の間隙を有するゲート35が形成され、また、前記送り出し手段60は前記収容筐体10内の丸棒状体の内、最下部に位置する丸棒状体と当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合・積載された多数の丸棒状体を1本ずつ又は2本以上を整列させて順次搬出でき、特には丸棒状ワークの加工工程で有用な丸棒状体の搬出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
丸棒状体は、機械や装置の構成部品として数多く使用されている。例えば、長尺の丸棒鋼材を所定の長さに切断して作製される丸棒状ワークは、NC旋盤のような工作機械による加工など数次の加工工程を経て機械や装置の構成部品となる。各加工工程において、丸棒状ワークは1本ずつ処理されるため、工作機械などに丸棒状ワークを1本ずつ供給する材料供給装置が用いられる。従来、この種の材料供給装置について、丸棒材を載置する載置部材上に整列された丸棒状のワークをせき止めるストッパの位置をワークの直径値を入力することにより自動的に調整する材料供給装置(特許文献1参照)や積載部上に積載された丸棒材が交差することなく整列状態で確実に次の整列部に取り込むことができる丸棒材供給装置(特許文献2参照)の提案がある。
【0003】
【特許文献1】特開平5−24643号公報
【特許文献2】特開2003−72932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のような材料供給装置は予め丸棒材を並列させておくことが前提となり、この作業の多くは人手に委ねられていたため、作業効率が悪くコスト面でも不利である。特許文献2に記載の丸棒材供給装置は、丸棒材を整列させて供給できるものの、部品点数が多く構成が複雑で、コスト面及びメンテナンス面で不利である。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、簡単な構成でかつ確実に、重合・積載された多数の丸棒状体を1本ずつ又は2本以上を整列させて順次搬出できる丸棒状体の搬出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための発明は、重合・積載された多数の丸棒状体の1本ずつ又は2本以上を整列させて順次搬出する丸棒状体の搬出装置であり、丸棒状体を重合・積載して収容する収容筐体と、駆動源により往復動する送り出し手段とを備え、前記収容筐体の前方下部には、1本の丸棒状体のみが通過可能な上下幅の間隙を有するゲートが形成され、また、前記送り出し手段は前記収容筐体内の丸棒状体の内、最下部に位置する丸棒状体と当接することを特徴とする丸棒状体の搬出装置を要旨とする。
【0007】
上記の構成の発明によれば、重合・積載された丸棒状体は送り出し手段の後退によりゲートに詰まることなく、送り出し手段の前進により1本ずつ又は2本以上を整列させて搬出できる。なお、丸棒状体は、横断面が円形に限定されず、転動可能である限り略円形のものでもよい。また、丸棒状体は、管状のものでもよい。
【0008】
上記の発明において、送り出し手段は、対向配置される少なくとも一対のチェーンコンベア又はベルトコンベアとしてもよい。この構成により、簡単な構成で往復動が可能となる。
【0009】
上記の発明において、チェーンコンベア又はベルトコンベアは、ゲートの手前から前方下方向に傾斜する状態で回動するようにしてもよい。この構成により、丸棒状体の搬出がより容易になる。
【0010】
上記の発明において、送り出し手段の往復動の後退する時間を前進する時間より短くしてもよい。この構成により、丸棒状体を確実に1本又は2本以上を整列させて搬出でき、かつチェーンの緩みを抑制できる。
【0011】
上記の発明において、前記ゲートは、間隙の上下幅の調節が可能としてもよい。この構成により、種々の径の丸棒状体に対応可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の丸棒状体の搬出装置は、簡単な構成でかつ確実に多数の丸棒状体を1本ずつ又は2本以上を整列させて搬出できるので、丸棒状ワークのNC旋盤のような工作機械による加工や熱処理など様々な加工工程で人手を不要とし、作業効率を高めることができる共にコスト面でも有利となる。また、簡単な構成であるので、装置のメンテナンス面でも有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次いで、本発明を図面を参照しながら実施の形態により詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の図面で、同一部材が複数ある場合、いずれかに符号を付さないことがある。
【0014】
収容筐体10は、以下のように構成される。図2に示すように、後枠11と側枠12、13からなる前方と上下が開口する逆コ字状をなす枠体の本体部14が設けられ、該本体部14の前方の開口近傍の側枠12、13間にゲート枠30が横設される。本体部14の前端の左右は、図1に示すように、支持台15、16に載置・固定され、該支持台15、16は前枠17上に載置・固定される。また、支持台15、16間に中枠18が横設される。前枠17と後枠11には、図1及び図3に示すように、それぞれ支持脚20、21が設けられる。前枠17には、取付板36により前方下方向に傾斜する一対のスロープ37が取り付けられている。なお、図3において、収容筐体10内の丸棒状体Wは、本来不可視なので点線で表示すべきところ、図面として見やすくするため実線で示した。
【0015】
ゲート35は、ゲート枠30と2本の調整棒体31から構成される。ゲート枠30には、取付板32が固定され、該取付板32に調整棒体31がそれぞれ取り付けられる。ゲート枠30と取付板32にはスライド孔33がそれぞれ形成され、また、調整棒体31には多数のボルト孔が形成されているので、スライド孔33を移動させてボルト34で固定することにより調整棒体31の高さ位置を調整できる。調整棒体31の下端と後記のチェーン48の上部との間は、1本の丸棒状体Wのみが通過できる上下幅の間隙に調整される。
【0016】
送り出し手段は、駆動源のモータ50で駆動されるチェーンコンベア60で構成される。すなわち、前枠17上には、3個の軸受け41が形成され、駆動軸42を軸支する。また、支持台15は貫通孔が形成され、駆動軸42が挿通される。駆動軸42には、一対の駆動スプロケット43が対向して固定され、また、モータ用のスプロケット44が固定される。後枠11には、軸受けを備える一対の軸受け取付部45が対向して固定され、従動軸46を軸支する。従動軸46には、従動スプロケット47が固定される。駆動スプロケット43と従動スプロケット47には、無端状のチェーン48が巻き掛けられる。また、中枠18と後枠11に固定されるチェーンガイド49が形成され、チェーン48はチェーンガイド49に当接しながら回動する。チェーンガイド49は、ゲート35の手前から前方下方向に傾斜するように形成される。
【0017】
チェーンコンベア60を駆動するモータ50は、側枠12上に載置・固定される。モータ50とスプロケット44には、無端状のチェーン51が巻き掛けられている。モータ50は、タイマーに制御され正逆運転する慣用の回路により、所定の間隔毎に右回転と左回転を繰り返し、これにより収容筐体10の下部でチェーン48は前進、後退の往復動をする。また、モータ50は、タイマーによりチェーン48が後退する時間が前進する時間より短く設定される。
【0018】
次いで、上記のように構成される丸棒状体の搬出装置100の使用方法及び作用について説明する。丸棒状ワークスのような丸棒状体Wの多数を収容筐体10内に重合・積載する。収容筐体10内に多数の丸棒状体Wを収容した後、モータ50を作動させる。上部に位置するチェーン48は、収容筐体10内の最下部に位置する丸棒状体Wに当接し、またゲート35は1本の丸棒状体Wのみが通過できるので、チェーン48の前進により丸棒状体Wの1本ずつ又は2本以上が整列してゲート35を通過し、丸棒状体Wは収容筐体10の外部に整列して搬出される。一方、図4に示すように、丸棒状体Wが搬出されると、収容筐体10内の重合・積載された丸棒状体Wの位置関係が変化し、崩れた丸棒状体Wがゲート35を塞ぎ、丸棒状体Wのゲート35の通過を妨げる。しかし、チェーン48の後退により、重合・積載された丸棒状体Wの位置関係が再度変化し、ゲート35を塞いだ丸棒状体Wが崩れてゲート35を開放するので、丸棒状体Wはチェーン48の前進に伴いゲート35を通過でき、スロープ37を転動する。このように、チェーン48の往復動により、丸棒状体Wを円滑に収容筐体10の外部に整列させて送り出し搬出することができる。チェーン48は、僅かに後退するだけで、ゲート35を塞いだ丸棒状体Wの詰まりを崩すことができるので、前進する時間より後退する時間が短く設定され、チェーン48の後退によるチェーン48の緩みを抑制し、ひいてはチェーン48の保全を図ることができる。また、チェーンガイド49がゲート35の手前から前方下方向に傾斜するように形成されているので、チェーン48の前進により丸棒状体Wの搬出がより容易になる。
【0019】
上記の実施の形態において、チェーンコンベアに代え、ベルトコンベアを用いることができる。側枠12、13の上部に逆ハ字状に側壁を設けてもよい。これにより、丸棒状体Wの収容作業が容易になる。また、軸受け取付部45をボルトで本締めではなく少し緩めた状態で後枠11に固定すると共に、軸受け取付部45に後方に向けて付勢するバネを内蔵させてもよい。これにより、チェーン48を後方に引っ張り、チェーン48の後退によるチェーン48の緩みを防止できる。使用態様によっては、スロープは設けない構成とできる。また、チェーンコンベア又はベルトコンベアを3本以上設けることもできる。
【0020】
本発明の丸棒状体の搬出装置100は、その技術的範囲に包含される限り、種々形態を変更して実施できるので、以下に記載する。
(1)送り出し手段は、往復動できれば特に構成は限定されず、例えば板状体を動力源により往復動させるような構成でもよい。
(2)丸棒状体は、ワークに限定されず、丸棒状の完成品でもよい。
(3)収容筐体は、上部と下部が開口し、丸棒状体を収容できると共に、送り出し手段が収容された最下部に位置する丸棒状体と当接できればその構成に制限はなく、上記の実施の形態の構成に限定されない。
(4)丸棒状体の搬出装置を他の機材に載置して使用する場合には、支持脚を設けない構成とすることもできる。
(5)丸棒状体の搬出装置には、ストッパーを備えるキャスターを設け、可動性を付与してもよい。
(6)ゲートは、調整棒体を設けないでゲート枠のみで構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】丸棒状体の搬出装置の正面図である。
【図2】丸棒状体の搬出装置の平面図である。
【図3】丸棒状体の搬出装置の側面図である。
【図4】丸棒状体がゲートを塞ぐ様子を拡大して示す説明図である。
【符号の説明】
【0022】
10 収容筐体
11 後枠
12、13 側枠
14 本体部
17 前枠
18 中枠
30 ゲート枠
31 調整棒体
37 スロープ
41 軸受け
42 駆動軸
45 軸受け取付部
46 従動軸
48、51 チェーン
49 チェーンガイド
50 モータ
60 チェーンコンベア
100 丸棒状体の搬出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合・積載された多数の丸棒状体の1本ずつ又は2本以上を整列させて順次搬出する丸棒状体の搬出装置であり、丸棒状体を重合・積載して収容する収容筐体と、駆動源により往復動する送り出し手段とを備え、前記収容筐体の前方下部には、1本の丸棒状体のみが通過可能な上下幅の間隙を有するゲートが形成され、また、前記送り出し手段は前記収容筐体内の丸棒状体の内、最下部に位置する丸棒状体と当接することを特徴とする丸棒状体の搬出装置。
【請求項2】
前記送り出し手段は、対向配置される少なくとも一対のチェーンコンベア又はベルトコンベアであることを特徴とする請求項1に記載の丸棒状体の搬出装置。
【請求項3】
チェーンコンベア又はベルトコンベアは、ゲートの手前から前方下方向に傾斜した状態で回動することを特徴とする請求項2に記載の丸棒状体の搬出装置。
【請求項4】
前記送り出し手段の往復動の後退する時間が前進する時間より短いことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の丸棒状体の搬出装置。
【請求項5】
前記ゲートは、間隙の上下幅の調節が可能であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の丸棒状体の搬出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−201542(P2008−201542A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−40134(P2007−40134)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(507057332)和泉技研工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】