説明

主磁極とシールドを備えた垂直磁気記録用磁気ヘッド

【課題】主磁極に対して記録媒体の進行方向の前側に配置された帰磁路部と主磁極を経由する磁路の長さを短くしながら、主磁極から十分な大きさの記録磁界を発生させる。
【解決手段】磁気ヘッドは、コイル、主磁極15、記録シールド16および帰磁路部40を備えている。帰磁路部40は、主磁極15に対して記録媒体の進行方向の前側に配置されて空間S1を形成する。コイルは、空間S1を通過するように延びる1つの第1のコイル要素121Aおよび複数の第2のコイル要素122A,122Bを含んでいる。第2のコイル要素122A,122Bは、第1のコイル要素121Aに対して記録媒体の進行方向の前側に配置されている。帰磁路部40は、媒体対向面100との間で第1のコイル要素121Aを挟む第1の部分40Aと、媒体対向面100との間で第2のコイル要素122A,122Bを挟む第2の部分40Bを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録方式によって記録媒体に情報を記録するために用いられる垂直磁気記録用磁気ヘッドに関し、特に、主磁極とシールドを備えた垂直磁気記録用磁気ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録再生装置における記録方式には、信号磁化の向きを記録媒体の面内方向(長手方向)とする長手磁気記録方式と、信号磁化の向きを記録媒体の面に対して垂直な方向とする垂直磁気記録方式とがある。垂直磁気記録方式は、長手磁気記録方式に比べて、記録媒体の熱揺らぎの影響を受けにくく、高い線記録密度を実現することが可能であると言われている。
【0003】
一般的に、垂直磁気記録用の磁気ヘッドとしては、長手磁気記録用の磁気ヘッドと同様に、読み出し用の磁気抵抗効果素子(以下、MR(Magnetoresistive)素子とも記す。)を有する再生ヘッド部と、書き込み用の誘導型電磁変換素子を有する記録ヘッド部とを、基板上に積層した構造のものが用いられる。記録ヘッド部は、記録媒体の面に対して垂直な方向の磁界を発生する主磁極を備えている。主磁極は、例えば、一端部が記録媒体に対向する媒体対向面に配置されたトラック幅規定部と、このトラック幅規定部の他端部に連結され、トラック幅規定部よりも大きな幅を有する幅広部とを有している。トラック幅規定部は、ほぼ一定の幅を有している。垂直磁気記録方式の記録ヘッド部には、高記録密度化のために、トラック幅の縮小と、記録特性、例えば重ね書きの性能を表わすオーバーライト特性の向上が求められる。
【0004】
ところで、ハードディスク装置等の磁気ディスク装置に用いられる磁気ヘッドは、一般的に、スライダに設けられる。スライダは、上記媒体対向面を有している。この媒体対向面は、空気流入端(リーディング端)と空気流出端(トレーリング端)とを有している。そして、空気流入端から媒体対向面と記録媒体との間に流入する空気流によって、スライダは記録媒体の表面からわずかに浮上するようになっている。
【0005】
ここで、基準の位置に対して、よりリーディング端に近い位置をリーディング側と定義し、基準の位置に対して、よりトレーリング端に近い位置をトレーリング側と定義する。リーディング側は、スライダに対する記録媒体の進行方向の後側である。トレーリング側は、スライダに対する記録媒体の進行方向の前側である。
【0006】
スライダにおいて、一般的に、磁気ヘッドは媒体対向面におけるトレーリング端近傍に配置される。磁気ディスク装置において、磁気ヘッドの位置決めは、例えばロータリーアクチュエータによって行なわれる。この場合、磁気ヘッドは、ロータリーアクチュエータの回転中心を中心とした円軌道に沿って記録媒体上を移動する。このような磁気ディスク装置では、磁気ヘッドのトラック横断方向の位置に応じて、スキューと呼ばれる、円形のトラックの接線に対する磁気ヘッドの傾きが生じる。
【0007】
特に、長手磁気記録方式に比べて記録媒体への書き込み能力が高い垂直磁気記録方式の磁気ディスク装置では、上述のスキューが生じると、あるトラックへの信号の記録時に、記録対象のトラックに隣接する1以上のトラックに記録された信号が消去されたり減衰したりする現象(以下、隣接トラック消去と言う。)が生じる場合がある。高記録密度化のためには、隣接トラック消去の発生を抑制する必要がある。
【0008】
上述のようなスキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制すると共に記録密度を向上させる技術としては、主磁極の近傍に記録シールドを設ける技術が有効である。記録シールドは、媒体対向面に配置された端面を有している。例えば、特許文献1には、主磁極と共に磁路を形成するリターンヨークを備え、このリターンヨークが、媒体対向面において主磁極の端面に対して所定の距離だけ離れた位置に配置された端面を有するリターンヨークチップを含む磁気ヘッドが開示されている。リターンヨークチップは、記録シールドとして機能する。
【0009】
一般的に、記録シールドを備えた磁気ヘッドでは、主磁極のうちの媒体対向面から離れた部分と記録シールドとを接続する1つ以上の帰磁路部が設けられる。記録シールドと1つ以上の帰磁路部は、主磁極の端面より発生されて記録媒体の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込んで、この磁束が記録媒体に達することを阻止する機能を有している。また、記録シールドと1つ以上の帰磁路部は、主磁極の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束を、主磁極に還流させる機能も有している。記録シールドを備えた磁気ヘッドによれば、隣接トラック消去の発生を抑制することが可能になると共に、記録密度のより一層の向上が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−20999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、記録媒体に記録される記録ビットの端部の位置は、媒体対向面に配置された主磁極の端面のうち、トレーリング側の端部の位置によって決まる。そのため、記録ビットの端部の位置を精度よく規定するためには、記録シールドの端面は、主磁極の端面のトレーリング側に配置された端面部分を含むことが有効である。
【0012】
また、記録密度を高めるために記録信号の周波数が高くなってくると、磁気ヘッドには、主磁極の端面より発生される磁束の方向の変化の速度の向上が求められる。記録シールドを備えた磁気ヘッドでは、この要求に応えるためには、上述のように、記録シールドの端面が主磁極の端面のトレーリング側に配置された端面部分を含むことに加え、主磁極のトレーリング側に配置された帰磁路部を設け、この帰磁路部の長さを短くすることが有効である。
【0013】
特許文献1には、主磁極のトレーリング側に配置された帰磁路部の長さに関係するヨーク長を短くする技術が記載されている。すなわち、この技術では、主磁極をソレノイド構造で取り囲むコイルを設けている。このコイルは、主磁極の下部を通る下部導線部と、主磁極の上部を通る上部導線部と、下部導線部と上部導線部とを電気的に連結する連結部とを備えている。上部導線部は、少なくとも2層で積層された上部導線層を備えている。
【0014】
しかし、特許文献1に開示された磁気ヘッドでは、以下のような問題点がある。この磁気ヘッドでは、上部導線部は、主磁極に相対的に近い第1上部導線層と、主磁極から相対的に遠い第2上部導線層とを有している。リターンヨークは、上部導線部よりも媒体対向面から遠い位置にある部分を有している。この部分の下面は、主磁極上に設けられたサブヨークの上面に接している。以下、リターンヨークの上記の部分をバックギャップ部と言う。バックギャップ部の媒体対面に向いた端部における任意の位置の媒体対向面からの距離は、任意の位置が主磁極に近づくに従って段階的に大きくなっている。このようなバックギャップ部の形状では、バックギャップ部からサブヨークに向かう磁束の方向は、バックギャップ部とサブヨークの界面の近傍において、90°以上の大きな角度で変化する。この場合、バックギャップ部とサブヨークの界面の近傍において磁束の漏れが生じ、その結果、主磁極から十分な大きさの記録磁界を発生させることができなくなるおそれがある。
【0015】
このように、従来は、主磁極に対して記録媒体の進行方向の前側(トレーリング側)に配置された帰磁路部と主磁極を経由する磁路の長さを短くしながら、主磁極から十分な大きさの記録磁界を発生させることが難しかった。
【0016】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、主磁極に対して記録媒体の進行方向の前側に配置された帰磁路部と主磁極を経由する磁路の長さを短くしながら、主磁極から十分な大きさの記録磁界を発生させることができるようにした垂直磁気記録用磁気ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面と、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生するコイルと、主磁極と、記録シールドと、ギャップ部と、第1の帰磁路部とを備えている。主磁極は、媒体対向面に配置された端面を有し、コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。記録シールドは、磁性材料よりなり、媒体対向面に配置された端面を有している。ギャップ部は、非磁性材料よりなり、主磁極と記録シールドとの間に配置されている。第1の帰磁路部は、磁性材料よりなり、主磁極に対して記録媒体の進行方向の前側に配置されている。
【0018】
記録シールドの端面は、主磁極の端面に対して記録媒体の進行方向の前側に配置された第1の端面部分を含んでいる。第1の帰磁路部は、主磁極、ギャップ部、記録シールドおよび第1の帰磁路部によって囲まれた第1の空間が形成されるように、主磁極のうちの媒体対向面から離れた部分と記録シールドとを接続している。コイルは、第1の空間を通過するように延びる1つ以上の第1のコイル要素および複数の第2のコイル要素を含んでいる。複数の第2のコイル要素は、1つ以上の第1のコイル要素に対して記録媒体の進行方向の前側に配置されている。
【0019】
第1の帰磁路部は、媒体対向面との間で1つ以上の第1のコイル要素を挟む位置に配置された第1の部分と、媒体対向面との間で複数の第2のコイル要素を挟む位置に配置された第2の部分とを含んでいる。第2の部分は、第1の部分に対して記録媒体の進行方向の前側に配置されている。媒体対向面に配置された主磁極の端面と交差し、記録媒体の進行方向に平行であって、媒体対向面に垂直な断面において、媒体対向面から最も遠い1つ以上の第1のコイル要素の端部は、媒体対向面から最も遠い複数の第2のコイル要素の端部よりも、媒体対向面に近い位置に配置され、媒体対向面に最も近い第1の部分の端部は、媒体対向面に最も近い第2の部分の端部よりも、媒体対向面に近い位置に配置されている。
【0020】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドにおいて、1つ以上の第1のコイル要素は、複数の第2のコイル要素よりも数が少なくてもよい。
【0021】
また、本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドにおいて、記録シールドは、主磁極に対して記録媒体の進行方向の前側に配置されて第1の端面部分を含む第1のシールドを有していてもよい。この場合、1つ以上の第1のコイル要素は、第1のシールドと第1の部分との間に配置されていてもよい。
【0022】
また、本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドにおいて、第1の部分と媒体対向面の最短距離は、0.8〜4.0μmの範囲内であってもよい。
【0023】
また、本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドは、更に、磁性材料よりなり、主磁極に対して記録媒体の進行方向の後側に配置された第2の帰磁路部を備えていてもよい。第2の帰磁路部は、主磁極、ギャップ部、記録シールドおよび第2の帰磁路部によって囲まれた第2の空間が形成されるように、主磁極のうちの媒体対向面から離れた部分と記録シールドとを接続している。コイルは、更に、第2の空間を通過するように延びる1つ以上の第3のコイル要素を含んでいてもよい。
【0024】
また、本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドにおいて、記録シールドの端面は、更に、第2、第3および第4の端面部分を含んでいてもよい。第2の端面部分は、主磁極の端面に対して記録媒体の進行方向の後側に配置されている。第3および第4の端面部分は、主磁極の端面に対してトラック幅方向の両側に配置されている。
【発明の効果】
【0025】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドでは、媒体対向面に配置された主磁極の端面と交差し、記録媒体の進行方向に平行であって、媒体対向面に垂直な断面において、媒体対向面に最も近い第1の部分の端部は、媒体対向面に最も近い第2の部分の端部よりも、媒体対向面に近い位置に配置されている。これにより、本発明によれば、コイルの十分な起磁力を確保しながら、主磁極に対して記録媒体の進行方向の前側に配置された第1の帰磁路部と主磁極とを経由する磁路の長さを短くすることが可能になる。
【0026】
また、本発明によれば、媒体対向面に最も近い第1の部分の端部が、媒体対向面に最も近い第2の部分の端部よりも、媒体対向面に近い位置に配置されていることにより、第1の帰磁路部の第2の部分から、第1の部分を経由して、主磁極に向かう磁束の方向は大きくは変化しない。その結果、本発明によれば、第1の帰磁路部の第1および第2の部分の近傍の部分から外部へ磁束が漏れることを防止することができる。
【0027】
これらのことから、本発明によれば、主磁極に対して記録媒体の進行方向の前側に配置された第1の帰磁路部と主磁極を経由する磁路の長さを短くしながら、主磁極から十分な大きさの記録磁界を発生させることが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極の媒体対向面の近傍の部分を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第2の部分を示す平面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第1の部分の第1層を示す平面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第1の部分の第2層を示す平面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1ないし図6を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る磁気ヘッドの構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。図2は、本実施の形態に係る磁気ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。図3は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極の媒体対向面の近傍の部分を示す断面図である。図4は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第2の部分を示す平面図である。図5は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第1の部分の第1層を示す平面図である。図6は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおけるコイルの第1の部分の第2層を示す平面図である。なお、図1において磁気ヘッド内に描かれた矢印は、磁束の流れを表している。図1および図3において記号Tで示す矢印は、記録媒体の進行方向を表している。図2、図4ないし図6において記号TWで示す矢印は、トラック幅方向を表している。
【0030】
図1および図2に示したように、本実施の形態に係る垂直磁気記録用磁気ヘッド(以下、単に磁気ヘッドと記す。)は、アルミニウムオキサイド・チタニウムカーバイド(Al23・TiC)等のセラミック材料よりなり、上面1aを有する基板1と、この基板1の上面1a上に配置されたアルミナ(Al23)等の絶縁材料よりなる絶縁層2と、この絶縁層2の上に配置された磁性材料よりなる第1の再生シールド層3と、第1の再生シールド層3を覆うように配置された絶縁膜である第1の再生シールドギャップ膜4と、この第1の再生シールドギャップ膜4の上に配置された再生素子としてのMR(磁気抵抗効果)素子5と、このMR素子5の上に配置された絶縁膜である第2の再生シールドギャップ膜6と、この第2の再生シールドギャップ膜6の上に配置された磁性材料よりなる第2の再生シールド層7とを備えている。
【0031】
MR素子5の一端部は、記録媒体に対向する媒体対向面100に配置されている。MR素子5には、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子あるいはTMR(トンネル磁気抵抗効果)素子等の磁気抵抗効果を示す感磁膜を用いた素子を用いることができる。GMR素子としては、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ平行な方向に流すCIP(Current In Plane)タイプでもよいし、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ垂直な方向に流すCPP(Current Perpendicular to Plane)タイプでもよい。
【0032】
第1の再生シールド層3から第2の再生シールド層7までの部分は、再生ヘッド部8を構成する。磁気ヘッドは、更に、非磁性材料よりなり、第2の再生シールド層7の上に配置された非磁性層50と、非磁性層50の上に配置された記録ヘッド部9とを備えている。非磁性層50は、例えばアルミナによって形成されている。記録ヘッド部9は、コイルと、主磁極15と、記録シールド16と、ギャップ部17とを有している。
【0033】
コイルは、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。コイルは、第1の部分120と第2の部分110とを含んでいる。第1の部分120と第2の部分110は、いずれも、銅等の導電材料によって形成されている。第1の部分120と第2の部分110は、直列または並列に接続されている。主磁極15は、媒体対向面100に配置された端面を有し、コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。図1および図3は、媒体対向面100に配置された主磁極15の端面と交差し、記録媒体の進行方向Tに平行であって、媒体対向面100に垂直な断面(以下、主断面と言う。)を示している。
【0034】
記録シールド16は、媒体対向面100に配置された端面を有している。記録シールド16の端面は、第1ないし第4の端面部分16Aa,16Ba,16Ca,16Daを含んでいる。第1の端面部分16Aaは、主磁極15の端面に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されている。第2の端面部分16Baは、主磁極15の端面に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されている。第3および第4の端面部分16Ca,16Daは、主磁極15の端面に対してトラック幅方向TWの両側に配置されている。媒体対向面100において、第1ないし第4の端面部分16Aa,16Ba,16Ca,16Daは、主磁極15の端面の周りを囲むように配置されている。
【0035】
記録シールド16は、磁性材料によって形成されている。記録シールド16の材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。
【0036】
記録ヘッド部9は、更に、第1の帰磁路部40および第2の帰磁路部30を有している。第1の帰磁路部40および第2の帰磁路部30は、いずれも磁性材料によって形成されている。第1の帰磁路部40および第2の帰磁路部30の材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。第1の帰磁路部40と第2の帰磁路部30は、主磁極15を挟むように基板1の上面1aに垂直な方向に沿って並んでいる。第1の帰磁路部40は、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されて、主磁極15のうちの媒体対向面100から離れた部分と記録シールド16とを接続し、これにより、主磁極15と記録シールド16とを磁気的に連結している。第2の帰磁路部30は、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されて、主磁極15のうちの媒体対向面100から離れた部分と記録シールド16とを接続し、これにより、主磁極15と記録シールド16とを磁気的に連結している。
【0037】
第2の帰磁路部30は、磁性層31,32,33,34,35,36を有している。磁性層31は、非磁性層50の上に配置されている。磁性層32,33は、いずれも磁性層31の上に配置されている。磁性層32は、媒体対向面100の近傍に配置されている。磁性層33は、磁性層32に対して、媒体対向面100からより遠い位置に配置されている。磁性層31,32は、それぞれ、媒体対向面100に向いた端面を有し、これらの端面は、媒体対向面100から離れた位置に配置されている。図4に示したように、コイルの第2の部分110は、磁性層33の周りに約3回巻かれている。
【0038】
磁気ヘッドは、更に、磁性層31の周囲において非磁性層50の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層51と、磁性層31〜33と第2の部分110との間に介在する絶縁材料よりなる絶縁膜52と、第2の部分110の巻線間に配置された絶縁材料よりなる絶縁層53と、第2の部分110および磁性層32の周囲に配置された絶縁材料よりなる絶縁層54とを備えている。第2の部分110、磁性層32,33、絶縁膜52および絶縁層53,54の上面は平坦化されている。絶縁層51,54および絶縁膜52は、例えばアルミナによって形成されている。絶縁層53は、例えばフォトレジストによって形成されている。
【0039】
図2に示したように、記録シールド16は、第1のシールド16Aと、第2のシールド16Bと、2つのサイドシールド16C,16Dとを有している。2つのサイドシールド16C,16Dは、主磁極15のトラック幅方向TWの両側に配置されている。第1のシールド16Aは、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されている。第2のシールド16Bは、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されている。サイドシールド16C,16Dは、第1のシールド16Aと第2のシールド16Bを磁気的に連結している。
【0040】
図3に示したように、第1のシールド16Aは、第1の端面部分16Aaと、第1の傾斜面16Abを含む下面とを含んでいる。第2のシールド16Bは、第2の端面部分16Baと、上面である第2の傾斜面16Bbとを含んでいる。第1の傾斜面16Abと第2の傾斜面16Bbについては、後で詳しく説明する。図2に示したように、サイドシールド16Cは、第3の端面部分16Caを含んでいる。サイドシールド16Dは、第4の端面部分16Daを含んでいる。
【0041】
磁性層34は、磁性層32および絶縁層54の上に配置されている。磁性層35は、磁性層33の上に配置されている。磁気ヘッドは、更に、第2の部分110、絶縁膜52および絶縁層53,54の上面の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層55と、磁性層34,35の周囲において絶縁層55の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層56とを備えている。磁性層34,35および絶縁層56の上面は、平坦化されている。絶縁層55,56は、例えばアルミナによって形成されている。
【0042】
第2のシールド16Bは、磁性層34の上に配置されている。磁性層36は、磁性層35の上に配置されている。磁気ヘッドは、更に、非磁性材料よりなる非磁性層57を備えている。非磁性層57は、第2のシールド16Bおよび磁性層36の周囲において磁性層34の上面の一部および絶縁層56の上面の上に配置されている。非磁性層57は、例えばアルミナによって形成されている。また、非磁性層57の上面は、第2の傾斜面16Bbに連続する傾斜面UL1と、この傾斜面UL1に連続し傾斜面UL1よりも媒体対向面100からより遠い位置に配置された底部UL2とを含んでいる。
【0043】
主磁極15は、記録媒体の進行方向Tの前側の端に位置する面である上面15T(図3参照)と、上面15Tとは反対側の下端部15L(図3参照)と、トラック幅方向TWの両側に配置された第1および第2の側部(図2参照)とを有している。サイドシールド16Cは、主磁極15の第1の側部に対向する第1の側壁を有している。サイドシールド16Dは、主磁極15の第2の側部に対向する第2の側壁を有している。
【0044】
ギャップ部17は、主磁極15と記録シールド16との間に配置されている。磁気ヘッドは、更に、非磁性材料よりなり、その一部がギャップ部17の一部を構成する第1のギャップ層19と、非磁性材料よりなり、その一部がギャップ部17の他の一部を構成する第2のギャップ層18とを備えている。第1のギャップ層19のうち、ギャップ部17の一部を構成する部分は、主磁極15と第1のシールド16Aとの間に配置されている。第2のギャップ層18のうち、ギャップ部17の他の一部を構成する部分は、主磁極15と第2のシールド16Bおよびサイドシールド16C,16Dとの間に配置されている。
【0045】
サイドシールド16C,16Dは、第2のシールド16Bの上に配置され、第2のシールド16Bの第2の傾斜面16Bbに接している。第2のギャップ層18は、サイドシールド16C,16Dの側壁、第2のシールド16Bの第2の傾斜面16Bbおよび非磁性層57の上面に沿って配置されている。第2のギャップ層18を構成する非磁性材料は、絶縁材料でもよいし、非磁性金属材料でもよい。第2のギャップ層18を構成する絶縁材料としては、例えばアルミナが用いられる。第2のギャップ層18を構成する非磁性金属材料としては、例えばRuが用いられる。第2のギャップ層18には、磁性層36の上面を露出させる開口部が形成されている。
【0046】
主磁極15は、第2のシールド16Bの第2の傾斜面16Bbおよび非磁性層57の上面と主磁極15との間に第2のギャップ層18が介在するように、第2のシールド16Bおよび非磁性層57の上に配置されている。また、図2に示したように、主磁極15とサイドシールド16C,16Dとの間にも、第2のギャップ層18が介在している。
【0047】
媒体対向面100から離れた位置において、主磁極15の下端部15Lは、磁性層36の上面に接している。主磁極15は、金属磁性材料によって形成されている。主磁極15の材料としては、例えば、NiFe、CoNiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。主磁極15の形状については、後で詳しく説明する。
【0048】
磁気ヘッドは、更に、主磁極15およびサイドシールド16C,16Dの周囲に配置された非磁性材料よりなる図示しない第1の非磁性層を備えている。本実施の形態では、特に、第1の非磁性層は、アルミナ等の非磁性絶縁材料よりなる。
【0049】
磁気ヘッドは、更に、媒体対向面100から離れた位置において、主磁極15の上面15Tの一部の上に配置された非磁性金属材料よりなる非磁性金属層58と、この非磁性金属層58の上面の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層59とを備えている。非磁性金属層58は、例えばRu、NiCrまたはNiCuによって形成されている。絶縁層59は、例えばアルミナによって形成されている。
【0050】
第1のギャップ層19は、主磁極15、非磁性金属層58および絶縁層59を覆うように配置されている。第1のギャップ層19の材料は、アルミナ等の非磁性絶縁材料でもよいし、Ru、NiCu、Ta、W、NiB、NiP等の非磁性導電材料でもよい。
【0051】
第1のシールド16Aは、サイドシールド16C,16Dおよび第1のギャップ層19の上に配置され、サイドシールド16C,16Dおよび第1のギャップ層19の上面に接している。媒体対向面100において、第1のシールド16Aの第1の端面部分16Aaの一部は、主磁極15の端面に対して、第1のギャップ層19の厚みによる所定の間隔を開けて配置されている。第1のギャップ層19の厚みは、5〜60nmの範囲内であることが好ましく、例えば30〜60nmの範囲内である。主磁極15の端面は、第1のギャップ層19に隣接する辺を有し、この辺はトラック幅を規定している。
【0052】
第1の帰磁路部40は、磁性層41,43,44,45を有している。磁性層41は、媒体対向面100から離れた位置において主磁極15の上に配置されている。
【0053】
コイルの第1の部分120は、第1層121および第2層122を含んでいる。図5に示したように、第1層121は、磁性層41の周りに1回巻かれている。磁気ヘッドは、更に、第1のシールド16A、第1のギャップ層19および磁性層41と第1層121との間に介在する絶縁材料よりなる絶縁膜61と、第1層121および第1のシールド16Aの周囲に配置された非磁性材料よりなる図示しない第2の非磁性層とを備えている。絶縁膜61は、例えばアルミナによって形成されている。第2の非磁性層は、例えば無機絶縁材料によって形成されている。この無機絶縁材料としては、例えばアルミナまたはシリコン酸化物が用いられる。第1のシールド16A、第1層121、磁性層41、絶縁膜61および第2の非磁性層の上面は平坦化されている。
【0054】
磁気ヘッドは、更に、第1層121および絶縁膜61の上面の上ならびに磁性層41の上面の一部の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層62を備えている。絶縁層62は、例えばアルミナによって形成されている。
【0055】
磁性層43は、第1のシールド16Aおよび絶縁層62の上に配置されている。磁性層44は、磁性層41の上に配置されている。磁性層43は、媒体対向面100に配置された前端面と、実質的に媒体対向面100に垂直な方向に延在する上面と、前端面と上面とを接続する第1および第2の接続面とを有している。磁性層43において、第1の接続面の一端は媒体対向面100に位置し、第1の接続面の他端は第2の接続面の一端に接続され、第2の接続面の他端は上面に接続されている。第1の接続面における任意の位置の基板1の上面1aからの距離は、任意の位置が媒体対向面100から離れるに従って大きくなっている。第2の接続面は、媒体対向面100に平行である。
【0056】
図6に示したように、第2層122は、磁性層44の周りに約2回巻かれている。磁気ヘッドは、更に、磁性層43,44および絶縁層62と第2層122との間に介在する絶縁材料よりなる絶縁膜64と、第2層122の巻線間に配置された絶縁材料よりなる絶縁層65と、第2層122および磁性層43の周囲に配置された絶縁材料よりなる絶縁層66とを備えている。第2層122、磁性層43,44、絶縁膜64および絶縁層65,66の上面は平坦化されている。磁気ヘッドは、更に、第2層122、絶縁膜64および絶縁層65の上面の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層67を備えている。絶縁膜64および絶縁層66,67は、例えばアルミナによって形成されている。絶縁層65は、例えばフォトレジストによって形成されている。
【0057】
磁性層45は、磁性層43,44および絶縁層67の上に配置され、磁性層43と磁性層44とを接続している。磁性層45は、媒体対向面100に向いた端面を有し、この端面は、媒体対向面100から離れた位置に配置されている。磁気ヘッドは、更に、磁性層45の周囲に配置された絶縁材料よりなる絶縁層68を備えている。絶縁層68は、例えばアルミナによって形成されている。磁性層45および絶縁層68の上面は平坦化されている。
【0058】
磁気ヘッドは、更に、非磁性材料よりなり、記録ヘッド部9を覆うように配置された保護層70を備えている。保護層70は、例えば、アルミナ等の無機絶縁材料によって形成されている。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態に係る磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面100と再生ヘッド部8と記録ヘッド部9とを備えている。再生ヘッド部8と記録ヘッド部9は、基板1の上に積層されている。再生ヘッド部8は、記録ヘッド部9に対して、記録媒体の進行方向Tの後側(リーディング側)に配置されている。
【0060】
記録ヘッド部9は、第1の部分120および第2の部分110を含むコイルと、主磁極15と、記録シールド16と、ギャップ部17と、第1の帰磁路部40および第2の帰磁路部30とを有している。記録シールド16は、第1のシールド16Aと、第2のシールド16Bと、2つのサイドシールド16C,16Dとを有している。ギャップ部17は、第1のギャップ層19の一部および第2のギャップ層18の一部によって構成されている。第1の帰磁路部40と第2の帰磁路部30は、主磁極15を挟むように基板1の上面1aに垂直な方向に沿って並んでいる。
【0061】
第1の帰磁路部40は、磁性層41,43〜45を有し、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されている。図1に示したように、第1の帰磁路部40は、主磁極15、ギャップ部17(ギャップ層19)、記録シールド16および第1の帰磁路部40(磁性層41,43〜45)によって囲まれた第1の空間S1が形成されるように、主磁極15のうちの媒体対向面100から離れた部分と記録シールド16とを接続している。
【0062】
第2の帰磁路部30は、磁性層31〜36を有し、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されている。図1に示したように、第2の帰磁路部30は、主磁極15、ギャップ部17(ギャップ層18)、記録シールド16および第2の帰磁路部30(磁性層31〜36)によって囲まれた第2の空間S2が形成されるように、主磁極15のうちの媒体対向面100から離れた部分と記録シールド16とを接続している。
【0063】
以下、図1、図4ないし図6を参照して、コイルの第1の部分120および第2の部分110と、第1の帰磁路部40について詳しく説明する。図4は、第2の部分110を示す平面図である。第2の部分110は、第2の帰磁路部30の一部である磁性層33の周りに約3回巻かれている。第2の部分110は、第2の空間S2内のうち特に磁性層32と磁性層33との間を通過するように延びる3つのコイル要素110A,110B,110Cを含んでいる。なお、コイル要素とは、コイルの巻線の一部である。コイル要素110A,110B,110Cは、媒体対向面100側からこの順に、媒体対向面100に垂直な方向に並んでいる。また、第2の部分110は、第1の部分120に電気的に接続されたコイル接続部110Eを有している。
【0064】
図5は、第1の部分120の第1層121を示す平面図である。第1層121は、第1の帰磁路部40の一部である磁性層41の周りに1回巻かれている。第1層121は、第1の空間S1内のうち特に第1のシールド16Aと磁性層41との間を通過するように延びるコイル要素121Aを含んでいる。また、第1層121は、第2の部分110のコイル接続部110Eに電気的に接続されたコイル接続部121Sと、第2層122に電気的に接続されたコイル接続部121Eとを有している。コイル接続部121Sは、第1層121と第2の部分110との間の複数の層を貫通する図示しない柱状の接続層を介してコイル接続部110Eに電気的に接続されている。接続層は、銅等の導電材料によって形成されている。
【0065】
図6は、第1の部分120の第2層122を示す平面図である。第2層122は、第1の帰磁路部40の一部である磁性層44の周りに約2回巻かれている。第2層122は、第1の空間S1内のうち特に磁性層43と磁性層44との間を通過するように延びる2つのコイル要素122A,122Bを含んでいる。コイル要素122A,122Bは、媒体対向面100側からこの順に、媒体対向面100に垂直な方向に並んでいる。また、第2層122は、絶縁層62および絶縁膜64を貫通して第1層121のコイル接続部121Eに電気的に接続されたコイル接続部122Sを有している。図4ないし図6に示した例では、第1の部分120と第2の部分110は、直列に接続されている。
【0066】
コイル要素121A,122A,122Bは、それぞれ第1の空間S1を通過するように延びている。コイル要素122A,122Bは、コイル要素121Aに対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されている。コイル要素121Aは、本発明における1つ以上の第1のコイル要素に対応し、コイル要素122A,122Bは、本発明における複数の第2のコイル要素に対応する。
【0067】
第2のコイル要素122Bは、第2のコイル要素122Aよりも媒体対向面100から遠い位置に配置されている。図1に示したように、第1のコイル要素121Aは端部E1を有し、第2のコイル要素122Bは端部E2を有している。端部E1は、第1のコイル要素121Aにおいて、媒体対向面100から最も遠い位置にある。端部E2は、複数の第2のコイル要素122A,122Bにおいて、媒体対向面100から最も遠い位置にある。前記主断面において、端部E1は、端部E2よりも、媒体対向面100に近い位置に配置されている。端部E1は、本発明における1つ以上の第1のコイル要素の端部に対応する。端部E2は、本発明における複数の2のコイル要素の端部に対応する。
【0068】
コイル要素110A,110B,110Cは、それぞれ第2の空間S2を通過するように延びている。コイル要素110A,110B,110Cは、本発明における1つ以上の第3のコイル要素に対応する。
【0069】
第1の帰磁路部40は、媒体対向面100との間で第1のコイル要素121Aを挟む位置に配置された第1の部分40Aと、媒体対向面100との間で第2のコイル要素122A,122Bを挟む位置に配置された第2の部分40Bとを含んでいる。本実施の形態では、第1の部分40Aは磁性層41によって構成され、第2の部分40Bは磁性層44によって構成されている。第2の部分40B(磁性層44)は、第1の部分40A(磁性層41)に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されている。
【0070】
図1に示したように、第1の部分40A(磁性層41)は端部E3を有し、第2の部分40B(磁性層44)の端部E4を有している。端部E3は、第1の部分40Aにおいて、媒体対向面100に最も近い位置にある。端部E4は、第2の部分40Bにおいて、媒体対向面100に最も近い位置にある。前記主断面において、端部E3は、端部E4よりも、媒体対向面100に近い位置に配置されている。端部E3は、本発明における第1の部分の端部に対応する。端部E4は、本発明における第2の部分の端部に対応する。ここで、図5に示したように、第1の部分40Aと媒体対向面100の最短距離を、記号DAで表す。距離DAは、0.8〜4.0μmの範囲内であることが好ましく、1.5〜3.5μmの範囲内であることがより好ましい。
【0071】
次に、図2ないし図6を参照して、主磁極15の形状について詳しく説明する。図4ないし図6に示したように、主磁極15は、媒体対向面100に配置された端面とその反対側の端部とを有するトラック幅規定部15Aと、トラック幅規定部15Aの端部に接続された幅広部15Bとを含んでいる。また、図2および図3に示したように、主磁極15は、記録媒体の進行方向Tの前側の端に位置する面である上面15Tと、上面15Tとは反対側の下端部15Lと、第1の側部と、第2の側部とを有している。幅広部15Bにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅は、トラック幅規定部15Aにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅よりも大きい。
【0072】
トラック幅規定部15Aにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅は、媒体対向面100からの距離によらずにほぼ一定である。幅広部15Bにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅は、例えば、トラック幅規定部15Aとの境界位置ではトラック幅規定部15Aにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅と等しく、媒体対向面100から離れるに従って、徐々に大きくなった後、一定の大きさになっている。ここで、媒体対向面100に垂直な方向についてのトラック幅規定部15Aの長さをネックハイトと呼ぶ。ネックハイトは、例えば0〜0.3μmの範囲内である。ネックハイトが0の場合は、トラック幅規定部15Aがなく、幅広部15Bの端面が媒体対向面100に配置される。
【0073】
上面15Tは、媒体対向面100に近い順に配置された第1の部分15T1と第2の部分15T2を含んでいる。第1の部分15T1は、媒体対向面100に配置された第1の端部と、その反対側の第2の端部とを有している。第2の部分15T2は、第1の部分15T1の第2の端部に接続されている。
【0074】
下端部15Lは、媒体対向面100に近い順に配置された第3の部分15L1と第4の部分15L2を含んでいる。第3の部分15L1は、媒体対向面100に配置された第1の端部と、その反対側の第2の端部とを有している。第3の部分15L1は、2つの面が交わってできるエッジでもよいし、2つの面を連結する面でもよい。第4の部分15L2は、第3の部分15L1の第2の端部に接続された面である。
【0075】
ここで、図3に示したように、第1の部分15T1の第1の端部を通り、媒体対向面100および記録媒体の進行方向Tに垂直な第1の仮想の平面P1と、第3の部分15L1の第1の端部を通り、媒体対向面100および記録媒体の進行方向Tに垂直な第2の仮想の平面P2とを想定する。第1の部分15T1は、その第2の端部が第1の仮想の平面P1に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されるように、第1の仮想の平面P1および媒体対向面100に対して傾斜している。第3の部分15L1は、その第2の端部が第2の仮想の平面P2に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されるように、第2の仮想の平面P2および媒体対向面100に対して傾斜している。
【0076】
前述のように、記録シールド16の第1のシールド16Aは、第1の傾斜面16Abを含む下面を含んでいる。第1の傾斜面16Abは、ギャップ部17の第1のギャップ層19を介して第1の部分15T1に対向する部分を含んでいる。第1の傾斜面16Abは、第1の仮想の平面P1および媒体対向面100に対して傾斜している。
【0077】
また、記録シールド16の第2のシールド16Bは、上面である第2の傾斜面16Bbを含んでいる。第2の傾斜面16Bbは、ギャップ部17の第2のギャップ層18を介して第3の部分15L1に対向している。第2の傾斜面16Bbは、第2の仮想の平面P2および媒体対向面100に対して傾斜している。また、非磁性層57は、第2の傾斜面16Bbに連続し、第2の仮想の平面P2および媒体対向面100に対して傾斜した傾斜面UL1と、底部UL2とを含んでいる。第3の部分15L1は、ギャップ部17の第2のギャップ層18を介して第2の傾斜面16Bbおよび傾斜面UL1に対向している。
【0078】
ここで、図3に示したように、媒体対向面100に垂直な方向についての第1の部分15T1の長さを記号Lで表し、媒体対向面100に垂直な方向についての第3の部分15L1の長さを記号Lで表し、媒体対向面100に垂直な方向についての第1の傾斜面16Abの長さを記号Lで表し、媒体対向面100に垂直な方向についての第2の傾斜面16Bbの長さを記号Lで表す。長さLは、長さLおよびLよりも小さい。また、長さLは、長さLよりも小さい。長さLは、例えば0.05〜0.15μmの範囲内である。長さLは、例えば0.2〜1.2μmの範囲内である。長さLは、例えば0.2〜0.6μmの範囲内である。長さLは、例えば0.1〜0.5μmの範囲内である。
【0079】
なお、トラック幅規定部15Aと幅広部15Bとの境界位置と媒体対向面100との間の距離すなわちネックハイトは、第1の部分15T1の長さLまたは第3の部分15L1の長さLと等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0080】
図3に示したように、第1の仮想の平面P1に対する第1の部分15T1の傾斜角度を記号θT1で表し、第2の仮想の平面P2に対する第3の部分15L1の傾斜角度を記号θL1で表す。傾斜角度θT1は、例えば22°〜35°の範囲内である。傾斜角度θL1は、例えば30°〜50°の範囲内である。
【0081】
第2の部分15T2と第4の部分15L2は、実質的に媒体対向面100に垂直な方向に延在している。図3に示したように、媒体対向面100における主磁極15の厚み、すなわち第1の仮想の平面P1と第2の仮想の平面P2との間の距離を記号D0で表す。また、第2の部分15T2と第1の仮想の平面P1との間の距離を記号D1で表し、第4の部分15L2と第2の仮想の平面P2との間の距離を記号D2で表す。距離D2は距離D1よりも大きい。距離D0は、例えば0.05〜0.1μmの範囲内である。距離D1は、例えば0.02〜0.1μmの範囲内である。距離D2は、例えば0.2〜0.8μmの範囲内である。
【0082】
また、媒体対向面100に配置された主磁極15の端面は、第1のギャップ層19に隣接する第1の辺と、第1の辺の一端部に接続された第2の辺と、第1の辺の他端部に接続された第3の辺とを有している。第1の辺はトラック幅を規定する。記録媒体に記録される記録ビットの端部の位置は、第1の辺の位置によって決まる。媒体対向面100に配置された主磁極15の端面のトラック幅方向TWの幅は、主磁極15の下端部15Lに近づくに従って、すなわち第2の仮想の平面P2に近づくに従って小さくなっている。第2の辺と第3の辺がそれぞれ第2の仮想の平面P2に垂直な方向に対してなす角度は、例えば7°〜17°の範囲内であり、10°〜15°の範囲内であることが好ましい。第1の辺の長さは、例えば0.05〜0.20μmの範囲内である。
【0083】
次に、本実施の形態に係る磁気ヘッドの作用および効果について説明する。この磁気ヘッドでは、記録ヘッド部9によって記録媒体に情報を記録し、再生ヘッド部8によって、記録媒体に記録されている情報を再生する。記録ヘッド部9において、第1の部分120および第2の部分110を含むコイルは、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。第1の部分120によって発生された磁界に対応する磁束は、第1の帰磁路部40と主磁極15を通過する。第2の部分110によって発生された磁界に対応する磁束は、第2の帰磁路部30と主磁極15を通過する。従って、主磁極15は、第1の部分120によって発生された磁界に対応する磁束と第2の部分110によって発生された磁界に対応する磁束とを通過させる。
【0084】
なお、第1の部分120および第2の部分110は、直列に接続されていてもよいし、並列に接続されていてもよい。いずれにしても、主磁極15において、第1の部分120によって発生された磁界に対応する磁束と第2の部分110によって発生された磁界に対応する磁束が同じ方向に流れるように、第1の部分120および第2の部分110は接続される。
【0085】
主磁極15は、上述のようにコイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させて、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。
【0086】
記録シールド16は、磁気ヘッドの外部から磁気ヘッドに印加された外乱磁界を取り込む。これにより、外乱磁界が主磁極15に集中して取り込まれることによって記録媒体に対して誤った記録が行なわれることを防止することができる。また、記録シールド16は、主磁極15の端面より発生されて記録媒体の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込んで、この磁束が記録媒体に達することを阻止する機能を有している。
【0087】
また、記録シールド16と第1の帰磁路部40および第2の帰磁路部30は、主磁極15の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束を還流させる機能を有している。具体的に説明すると、主磁極15の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束の一部は、記録シールド16と第1の帰磁路部40を通過して主磁極15に還流する。また、主磁極15の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束の他の一部は、記録シールド16と第2の帰磁路部30を通過して主磁極15に還流する。
【0088】
記録シールド16は、第1のシールド16Aと、第2のシールド16Bと、2つのサイドシールド16C,16Dとを有している。これにより、本実施の形態によれば、主磁極15の端面に対して記録媒体の進行方向Tの前側および後側ならびにトラック幅方向TWの両側において、主磁極15の端面より発生されて記録媒体の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込んで、この磁束が記録媒体に達することを抑制することができる。その結果、本実施の形態によれば、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することができる。第1および第2のシールド16A,16Bは、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することに寄与する他に、記録磁界の勾配を大きくすることに寄与する。サイドシールド16C,16Dは、特に隣接トラック消去を抑制することへの寄与が大きい。このような記録シールド16の機能により、本実施の形態によれば、記録密度を高めることができる。
【0089】
また、本実施の形態では、図2に示したように、媒体対向面100において、トラック幅方向TWにおける主磁極15の第1および第2の側部の間隔すなわち主磁極15の端面の幅は、第2の仮想の平面P2に近づくに従って小さくなっている。本実施の形態によれば、この特徴によっても、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することができる。
【0090】
また、本実施の形態では、媒体対向面100において、トラック幅方向TWにおけるサイドシールド16C,16Dにおける第1および第2の側壁の間隔は、主磁極15の第1および第2の側部の間隔と同様に、第2の仮想の平面P2に近づくに従って小さくなっている。従って、本実施の形態によれば、媒体対向面100において、第1の側部と第1の側壁との間隔、ならびに第2の側部と第2の側壁との間隔を、小さく、且つ均一にすることが可能になる。これにより、サイドシールド16C,16Dによって、主磁極15の端面より発生されてトラック幅方向TWの両側に広がる磁束を、効果的に取り込むことができる。その結果、本実施の形態によれば、特にサイドシールド16C,16Dの機能を高めることが可能になり、スキューに起因した隣接トラック消去の発生をより効果的に抑制することが可能になる。
【0091】
ところで、記録シールド16で取り込んだ磁束を吸収できるような、体積が大きい磁性層が記録シールド16に磁気的に接続されていないと、記録シールド16によって多くの磁束を取り込むことはできない。本実施の形態では、記録シールド16の第1のシールド16Aと主磁極15とを磁気的に連結する第1の帰磁路部40(磁性層41,43〜45)と、記録シールド16の第2のシールド16Bと主磁極15とを磁気的に連結する第2の帰磁路部30(磁性層31〜36)を備えている。このような構成により、記録シールド16で取り込んだ磁束は、第1の帰磁路部40および第2の帰磁路部30を経由して主磁極15に流れ込む。本実施の形態では、記録シールド16に対して、体積が大きい磁性層である第1の帰磁路部40および第2の帰磁路部30と主磁極15が磁気的に接続されている。従って、本実施の形態によれば、記録シールド16によって多くの磁束を取り込むことが可能になり、その結果、前述の記録シールド16の効果を効果的に発揮させることができる。
【0092】
また、記録密度を高めるために記録信号の周波数が高くなってくると、磁気ヘッドには、主磁極15の端面より発生される磁束の方向の変化の速度の向上が求められる。また、記録ビットの端部の位置は、媒体対向面100に配置された主磁極15の端面のうち、記録媒体の進行方向Tの前側に配置された端部の位置によって決まる。そのため、記録密度を高めるためには、主磁極15の端面より発生される磁束の方向の変化の速度の向上と共に、第1のシールド16Aを通過する磁束の方向の変化の速度の向上も求められる。この要求に応えるためには、第1のシールド16Aと主磁極15を経由する磁路の長さを短くすることが有効である。本実施の形態では、主磁極15と第1のシールド16Aとを接続する第1の帰磁路部40を設けることによって、第1の帰磁路部40が設けられていない場合に比べて、上記の磁路の長さを短くすることができる。
【0093】
また、本実施の形態では、前記主断面において、媒体対向面100に最も近い第1の帰磁路部40の第1の部分40A(磁性層41)の端部E3は、媒体対向面100に最も近い第1の帰磁路部40の第2の部分40B(磁性層44)の端部E4よりも、媒体対向面100に近い位置に配置されている。これにより、本実施の形態によれば、以下で説明する理由により、コイルの十分な起磁力を確保しながら、第1の帰磁路部40と主磁極15とを経由する磁路の長さを短くすることが可能になる。
【0094】
コイルの第1の部分120は、第1の帰磁路部40の一部である第1および第2の部分40A,40B(磁性層41,44)の周りに巻かれている。コイル、特に第1の部分120における十分な起磁力を確保するためには、第1の部分120の巻回数としては、約2回以上は必要である。すなわち、第1の空間S1を通過するコイル要素は2つ以上必要である。一方、第1の帰磁路部40と主磁極15とを経由する磁路の長さを短くするために、第1の部分40Aと媒体対向面100の最短距離DAを小さくことが好ましい。
【0095】
ここで、第1のコイル要素の数が第2のコイル要素の数以上で、端部E3が、端部E4と媒体対向面100に垂直な方向について同じ位置か、端部E4よりも媒体対向面100から遠い位置に配置されている場合について考える。この場合、第1の帰磁路部40から主磁極15に向かう磁束は、主磁極15に近づくに従って媒体対向面100から遠ざかってしまい、この磁束の方向は、第1の帰磁路部40と主磁極15の界面(磁性層41と主磁極15の界面)の近傍において、90°以上の大きな角度で変化する。この場合、上記界面の近傍において磁束の漏れが生じ、その結果、主磁極15から十分な大きさの記録磁界を発生させることができなくなるおそれがある。
【0096】
これに対し、本実施の形態では、端部E3,E4が前述の位置関係で配置されていることから、図1に示したように、第2の部分40B(磁性層44)から、第1の部分40A(磁性層41)を経由して、主磁極15に向かう磁束の方向は大きくは変化しない。その結果、本実施の形態によれば、第1および第2の部分40A,40B(磁性層41,44)の近傍の部分から外部へ磁束が漏れることを防止することができる。
【0097】
しかも、本実施の形態では、端部E3,E4が前述の位置関係で配置されていることから、第1の部分40Aと媒体対向面100の最短距離DAを小さくしながら、第2のコイル要素の数を第1のコイル要素の数よりも多くすることが可能になり、これにより、コイルの起磁力を大きくすることが可能になる。本実施の形態では、第1の部分40Aと媒体対向面100の最短距離DAを、0.8〜4.0μmの範囲内にすることができる。
【0098】
これらのことから、本実施の形態によれば、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置された第1の帰磁路部40と主磁極15を経由する磁路の長さを短くしながら、主磁極15から十分な大きさの記録磁界を発生させることが可能になる。
【0099】
また、本実施の形態では、主磁極15の上面15Tは、第1の仮想の平面P1および媒体対向面100に対して傾斜した第1の部分15T1を含み、主磁極15の下端部15Lは、第2の仮想の平面P2および媒体対向面100に対して傾斜した第3の部分15L1を含んでいる。このような形状の主磁極15によれば、媒体対向面100における主磁極15の厚みを小さくすることができることから、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することができる。また、媒体対向面100から離れた位置では主磁極15の厚みを大きくすることができることから、主磁極15によって多くの磁束を媒体対向面100まで導くことができ、その結果、オーバーライト特性等の記録特性を向上させることができる。
【0100】
また、本実施の形態では、媒体対向面100に垂直な方向についての第1の部分15T1の長さLは、媒体対向面100に垂直な方向についての第1の傾斜面16Abの長さLよりも小さい。もし、長さLが、図3に示された長さLと等しい場合には、広い領域において、第1の部分15T1と第1の傾斜面16Abとが小さな間隔で対向し、その結果、主磁極15から第1のシールド16Aへの磁束の漏れが多くなり、オーバーライト特性等の記録特性が低下してしまうという問題が発生する。これを防止するために、長さLとLの関係が図3に示した関係とは逆になるように長さLを短くすると、記録シールド16のうち、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置された第1のシールド16Aの体積が小さくなって、記録シールドの機能が損なわれてしまう。すなわち、第1のシールド16Aの体積が小さくなると、第1のシールド16Aで磁束の飽和が生じやすくなる。すると、第1のシールド16Aから媒体対向面100に向けて磁束が漏れて、この漏れた磁束によって、記録媒体に記録された情報が誤って消去されるという問題が発生する。
【0101】
本実施の形態では、長さLを長さLよりも小さくすることにより、記録シールド16の機能を損なうことなく、第1の部分15T1と第1の傾斜面16Abとが対向する領域の面積を小さくして、主磁極15から第1のシールド16Aへの磁束の漏れを抑制することが可能になる。しかし、それだけでは、第2の部分15T2と第1の仮想の平面P1との間の距離D1が小さくなるため、媒体対向面100から離れた位置における主磁極15の厚みを、あまり大きくすることができない。
【0102】
そこで、本実施の形態では、第4の部分15L2と第2の仮想の平面P2との間の距離D2を、第2の部分15T2と第1の仮想の平面P1との間の距離D1よりも大きくし、且つ第1の部分15T1の長さLを、第3の部分15L1の長さLよりも小さくしている。これにより、本実施の形態によれば、上述のように主磁極15から第1のシールド16Aへの磁束の漏れを抑制しながら、媒体対向面100における主磁極15の厚みを小さくし、且つ主磁極15のうち、第3の部分15L1よりも媒体対向面100からより遠い部分の厚みを十分に大きくして、スキューに起因した問題の発生を防止し、且つ記録特性を向上させることが可能になる。
【0103】
また、本実施の形態では、第2の傾斜面16Bbの長さLを、第3の部分15L1の長さLよりも小さくしている。これにより、本実施の形態によれば、第3の部分15L1と第2の傾斜面16Bbとが対向する領域の面積を小さくして、主磁極15から第2のシールド16Bへの磁束の漏れを抑制することが可能になる。なお、第3の部分15L1の長さLは十分に大きくすることができるため、長さLを長さLよりも小さくしても、第2のシールド16Bの体積が過度に小さくなることを防止することができる。
【0104】
以上のことから、本実施の形態によれば、記録シールド16の機能を損なうことなく、スキューに起因した問題の発生を防止し、且つ記録特性を向上させることが可能になる。
【0105】
[第2の実施の形態]
次に、図7を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る磁気ヘッドについて説明する。図7は、本実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。なお、図7は前記主断面を示している。図7において磁気ヘッド内に描かれた矢印は、磁束の流れを表している。
【0106】
本実施の形態に係る磁気ヘッドは、以下の点で第1の実施の形態に係る磁気ヘッドと異なっている。本実施の形態に係る磁気ヘッドでは、磁性層43は、第1および第2の接続面を有しておらず、その上面が媒体対向面100まで延びて、その前端面に接続されている。また、本実施の形態に係る磁気ヘッドでは、磁性層45は、媒体対向面100に配置された端面を有している。
【0107】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0108】
[第3の実施の形態]
次に、図8を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る磁気ヘッドについて説明する。図8は、本実施の形態に係る磁気ヘッドを示す断面図である。なお、図8は前記主断面を示している。図8において磁気ヘッド内に描かれた矢印は、磁束の流れを表している。
【0109】
本実施の形態に係る磁気ヘッドは、以下の点で第2の実施の形態に係る磁気ヘッドと異なっている。本実施の形態に係る磁気ヘッドでは、磁性層31,32は、媒体対向面100に配置された端面を有している。また、本実施の形態に係る磁気ヘッドでは、磁性層34,35および絶縁層56が設けられていない。第2のシールド16Bは、磁性層32の上に配置されている。磁性層36は、磁性層33の上に配置されている。非磁性層57は、第2のシールド16Bおよび磁性層36の周囲において磁性層34の上面の一部および絶縁層55の上面の上に配置されている。
【0110】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第2の実施の形態と同様である。
【0111】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、磁気ヘッドは、第1の帰磁路部40および第2の帰磁路部30のうち、第1の帰磁路部40のみを備えていてもよい。また、請求の範囲の要件を満たす限り、第1ないし第3のコイル要素の数は、それぞれ各実施の形態に示した例に限らず、任意である。
【符号の説明】
【0112】
15…主磁極、16…記録シールド、30…第2の帰磁路部、40…第1の帰磁路部、110…コイルの第2の部分、120…コイルの第1の部分、121A…第1のコイル要素、122A,122B…第2のコイル要素。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対向する媒体対向面と、
前記記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生するコイルと、
前記媒体対向面に配置された端面を有し、前記コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって前記情報を前記記録媒体に記録するための記録磁界を発生する主磁極と、
磁性材料よりなり、前記媒体対向面に配置された端面を有する記録シールドと、
非磁性材料よりなり、前記主磁極と前記記録シールドとの間に配置されたギャップ部と、
磁性材料よりなり、前記主磁極に対して記録媒体の進行方向の前側に配置された第1の帰磁路部とを備えた垂直磁気記録用磁気ヘッドであって、
前記記録シールドの端面は、前記主磁極の前記端面に対して前記記録媒体の進行方向の前側に配置された第1の端面部分を含み、
前記第1の帰磁路部は、前記主磁極、ギャップ部、記録シールドおよび第1の帰磁路部によって囲まれた第1の空間が形成されるように、前記主磁極のうちの前記媒体対向面から離れた部分と前記記録シールドとを接続し、
前記コイルは、前記第1の空間を通過するように延びる1つ以上の第1のコイル要素および複数の第2のコイル要素を含み、
前記複数の第2のコイル要素は、前記1つ以上の第1のコイル要素に対して記録媒体の進行方向の前側に配置され、
前記第1の帰磁路部は、媒体対向面との間で前記1つ以上の第1のコイル要素を挟む位置に配置された第1の部分と、媒体対向面との間で前記複数の第2のコイル要素を挟む位置に配置された第2の部分とを含み、
前記第2の部分は、前記第1の部分に対して記録媒体の進行方向の前側に配置され、
前記媒体対向面に配置された前記主磁極の端面と交差し、記録媒体の進行方向に平行であって、前記媒体対向面に垂直な断面において、前記媒体対向面から最も遠い前記1つ以上の第1のコイル要素の端部は、前記媒体対向面から最も遠い前記複数の第2のコイル要素の端部よりも、前記媒体対向面に近い位置に配置され、前記媒体対向面に最も近い前記第1の部分の端部は、前記媒体対向面に最も近い前記第2の部分の端部よりも、前記媒体対向面に近い位置に配置されていることを特徴とする垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項2】
前記1つ以上の第1のコイル要素は、前記複数の第2のコイル要素よりも数が少ないことを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項3】
前記記録シールドは、前記主磁極に対して前記記録媒体の進行方向の前側に配置されて前記第1の端面部分を含む第1のシールドを有し、
前記1つ以上の第1のコイル要素は、前記第1のシールドと前記第1の部分との間に配置されていることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項4】
前記第1の部分と前記媒体対向面の最短距離は、0.8〜4.0μmの範囲内であることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項5】
更に、磁性材料よりなり、前記主磁極に対して記録媒体の進行方向の後側に配置された第2の帰磁路部を備え、
前記第2の帰磁路部は、前記主磁極、ギャップ部、記録シールドおよび第2の帰磁路部によって囲まれた第2の空間が形成されるように、前記主磁極のうちの前記媒体対向面から離れた部分と前記記録シールドとを接続し、
前記コイルは、更に、前記第2の空間を通過するように延びる1つ以上の第3のコイル要素を含むことを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項6】
前記記録シールドの端面は、更に、第2、第3および第4の端面部分を含み、前記第2の端面部分は、前記主磁極の前記端面に対して前記記録媒体の進行方向の後側に配置され、前記第3および第4の端面部分は、前記主磁極の前記端面に対してトラック幅方向の両側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−114740(P2013−114740A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−234331(P2012−234331)
【出願日】平成24年10月24日(2012.10.24)
【出願人】(500475649)ヘッドウェイテクノロジーズ インコーポレイテッド (251)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【Fターム(参考)】