主磁極とシールドを備えた垂直磁気記録用磁気ヘッド
【課題】隣接トラック消去の発生の抑制と記録特性の向上を両立する。
【解決手段】磁気ヘッドは、主磁極15と記録シールド16とギャップ部17を備えている。記録シールド16は、サイドシールド16B,16Cと上部シールドを含んでいる。主磁極15は側部SP1,SP2を有し、サイドシールド16Bは側壁SW1を有し、サイドシールド16Cは側壁SW2を有している。ギャップ部17は、側壁SW1,SW2に接するように配置されたギャップ膜17Aと、非磁性層17Bを含んでいる。側部SP1は、媒体対向面2側から順に配置された第1および第3の側面を有している。第2の側部SP2は、媒体対向面2側から順に配置された第2および第4の側面を有している。非磁性層17Bは、第3の側面と第1の側壁SW1の間および第4の側面と第2の側壁SW2の間に存在する。
【解決手段】磁気ヘッドは、主磁極15と記録シールド16とギャップ部17を備えている。記録シールド16は、サイドシールド16B,16Cと上部シールドを含んでいる。主磁極15は側部SP1,SP2を有し、サイドシールド16Bは側壁SW1を有し、サイドシールド16Cは側壁SW2を有している。ギャップ部17は、側壁SW1,SW2に接するように配置されたギャップ膜17Aと、非磁性層17Bを含んでいる。側部SP1は、媒体対向面2側から順に配置された第1および第3の側面を有している。第2の側部SP2は、媒体対向面2側から順に配置された第2および第4の側面を有している。非磁性層17Bは、第3の側面と第1の側壁SW1の間および第4の側面と第2の側壁SW2の間に存在する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録方式によって記録媒体に情報を記録するために用いられる垂直磁気記録用磁気ヘッドに関し、特に、主磁極とシールドを備えた垂直磁気記録用磁気ヘッドおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録再生装置における記録方式には、信号磁化の向きを記録媒体の面内方向(長手方向)とする長手磁気記録方式と、信号磁化の向きを記録媒体の面に対して垂直な方向とする垂直磁気記録方式とがある。垂直磁気記録方式は、長手磁気記録方式に比べて、記録媒体の熱揺らぎの影響を受けにくく、高い線記録密度を実現することが可能であると言われている。
【0003】
一般的に、垂直磁気記録用の磁気ヘッドとしては、長手磁気記録用の磁気ヘッドと同様に、読み出し用の磁気抵抗効果素子(以下、MR(Magnetoresistive)素子とも記す。)を有する再生ヘッドと、書き込み用の誘導型電磁変換素子を有する記録ヘッドとを、基板上に積層した構造のものが用いられる。記録ヘッドは、記録媒体の面に対して垂直な方向の磁界を発生する主磁極を備えている。主磁極は、例えば、一端部が記録媒体に対向する媒体対向面に配置されたトラック幅規定部と、このトラック幅規定部の他端部に連結され、トラック幅規定部よりも大きな幅を有する幅広部とを有している。トラック幅規定部は、ほぼ一定の幅を有している。垂直磁気記録方式の記録ヘッドには、高記録密度化のために、トラック幅の縮小と、記録特性、例えば重ね書きの性能を表わすオーバーライト特性の向上が求められる。
【0004】
ところで、ハードディスク装置等の磁気ディスク装置に用いられる磁気ヘッドは、一般的に、スライダに設けられる。スライダは、上記媒体対向面を有している。この媒体対向面は、空気流入端と空気流出端とを有している。そして、空気流入端から媒体対向面と記録媒体との間に流入する空気流によって、スライダは記録媒体の表面からわずかに浮上するようになっている。このスライダにおいて、一般的に、磁気ヘッドは媒体対向面における空気流出端近傍に配置される。磁気ディスク装置において、磁気ヘッドの位置決めは、例えばロータリーアクチュエータによって行なわれる。この場合、磁気ヘッドは、ロータリーアクチュエータの回転中心を中心とした円軌道に沿って記録媒体上を移動する。このような磁気ディスク装置では、磁気ヘッドのトラック横断方向の位置に応じて、スキューと呼ばれる、円形のトラックの接線に対する磁気ヘッドの傾きが生じる。
【0005】
特に、長手磁気記録方式に比べて記録媒体への書き込み能力が高い垂直磁気記録方式の磁気ディスク装置では、上述のスキューが生じると、あるトラックへの信号の記録時に、記録対象のトラックに隣接する1以上のトラックに記録された信号が消去されたり減衰したりする現象(以下、隣接トラック消去と言う。)が生じる場合がある。高記録密度化のためには、隣接トラック消去の発生を抑制する必要がある。
【0006】
上述のようなスキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制する技術としては、例えば、特許文献1ないし特許文献3に記載されているように、媒体対向面における主磁極の端面の幅を、基板の上面に近づくに従って小さくする技術が知られている。
【0007】
スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制する他の技術としては、特許文献1や、特許文献2に記載されているように、主磁極のトラック幅方向の両側に2つのサイドシールドを設ける技術が有効である。また、特許文献3に記載されているように、媒体対向面において主磁極の端面の周りを囲むように配置された端面を有するシールド(以下、ラップアラウンドシールドと言う。)を設ける技術も有効である。ラップアラウンドシールドは、主磁極に対して空気流入端側に配置された下部シールドと、主磁極に対して空気流出端側に配置された上部シールドと、主磁極のトラック幅方向の両側に配置された2つのサイドシールドとを含んでいる。これらの技術によれば、主磁極の端面より発生されてトラック幅方向に広がる磁束を取り込むことができることから、隣接トラック消去の発生を抑制することができる。
【0008】
また、特許文献4には、主磁極の形状を以下のような形状とする技術が開示されている。この技術による主磁極は、媒体対向面から所定の距離だけ離れた位置から媒体対向面までの第1の領域において互いに反対側に配置された第1および第2の側面と、第1の領域以外の第2の領域に配置された第3および第4の側面と、第1の領域と第2の領域との境界位置に配置され、第1の側面と第3の側面とを接続する第5の側面と、第1の領域と第2の領域との境界位置に配置され、第2の側面と第4の側面とを接続する第6の側面とを有している。トラック幅方向についての第1の側面と第2の側面の間隔は、基板の上面に近づくに従って小さくなっている。第1の領域と第2の領域との境界位置において、最も基板の上面に近い位置におけるトラック幅方向についての第3の側面と第4の側面の間隔は、最も基板の上面に近い位置におけるトラック幅方向についての第1の側面と第2の側面の間隔よりも大きい。第5の側面の幅と第6の側面の幅は、いずれも、基板の上面に近づくに従って大きくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−190518号公報
【特許文献2】特開2007−207419号公報
【特許文献3】米国特許第6,954,340B2号明細書
【特許文献4】特開2009−243350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、媒体対向面における端面の幅が基板の上面に近づくに従って小さくなる形状の主磁極に関しては、以下のような問題点がある。従来の主磁極の形成方法では、上記の形状の主磁極を形成すると、主磁極の側面の大部分が、主磁極の全周にわたって、基板の上面に垂直な方向に対して傾いた面となる。このような形状の主磁極では、主磁極の側面全体が基板の上面に対して垂直な場合に比べて、磁束の流れる方向に対して垂直な主磁極の断面積が小さくなる。この形状の主磁極では、特にトラック幅規定部と幅広部との境界の近傍の部分において多くの磁束を通過させることができなくなり、その結果、オーバーライト特性等の記録特性が低下してしまう。
【0011】
上記の問題点に対しては、前述の特許文献4に開示された技術が有効である。この技術によれば、トラック幅規定部と幅広部との境界の近傍の部分において、磁束の流れる方向に対して垂直な主磁極の断面積が大きくなるため、多くの磁束を通過させることができる。これにより、オーバーライト特性等の記録特性を向上させることができる。
【0012】
ここで、特許文献4に開示された技術による前述の形状の主磁極と2つのサイドシールドとを有する磁気ヘッドの構成について考える。2つのサイドシールドの各々は、主磁極の2つの側部の各々に対向する側壁を有している。2つのサイドシールドによって、主磁極の端面より発生されてトラック幅方向の両側に広がる磁束を十分に取り込めるようにするためには、媒体対向面において、主磁極の側部とサイドシールドの側壁との間隔は、小さく且つ均一であることが好ましい。
【0013】
しかし、媒体対向面以外の広い領域において、主磁極の側部とサイドシールドの側壁とが小さな間隔で対向していると、主磁極からサイドシールドへの磁束の漏れが多くなり、オーバーライト特性等の記録特性が低下してしまう。これを防止するために、媒体対向面に垂直な方向についてのサイドシールドの寸法を小さくすると、サイドシールドの体積が小さくなって、サイドシールドの本来の機能が損なわれる。
【0014】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、主磁極とシールドを備えた垂直磁気記録用磁気ヘッドであって、隣接トラック消去の発生の抑制と記録特性の向上を両立できるようにした垂直磁気記録用磁気ヘッドおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドは、
記録媒体に対向する媒体対向面と、
記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生するコイルと、
媒体対向面に配置された端面を有し、コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する主磁極と、
磁性材料よりなる記録シールドと、
非磁性材料よりなり、主磁極と記録シールドとの間に設けられたギャップ部と、
上面を有する基板とを備えている。
【0016】
コイル、主磁極、記録シールドおよびギャップ部は、基板の上面の上方に配置されている。記録シールドは、第1および第2のサイドシールドと、第1および第2のサイドシールドに接する上部シールドとを含んでいる。第1および第2のサイドシールドは、媒体対向面において主磁極の端面に対してトラック幅方向の両側に配置された2つの端面を有している。上部シールドは、媒体対向面において主磁極の端面に対して記録媒体の進行方向の前側に配置された端面を有している。
【0017】
主磁極は、トラック幅方向の両側に配置された第1および第2の側部を有している。第1のサイドシールドは、主磁極の第1の側部に面した第1の側壁を有している。第2のサイドシールドは、主磁極の第2の側部に面した第2の側壁を有している。ギャップ部は、第1および第2の側壁に接するように配置されたギャップ膜と、媒体対向面から離れた位置において、ギャップ膜と第1および第2の側部との間に配置された非磁性層とを含んでいる。
【0018】
第1の側部は、媒体対向面から所定の距離だけ離れた位置から媒体対向面までの第1の領域に配置された第1の側面と、第1の領域以外の第2の領域に配置された第3の側面とを有している。第2の側部は、第1の領域に配置された第2の側面と、第2の領域に配置された第4の側面とを有している。非磁性層は、第1の側面と第1の側壁との間および第2の側面と第2の側壁との間には存在せず、第3の側面と第1の側壁との間および第4の側面と第2の側壁との間に存在している。トラック幅方向における第3の側面と第1の側壁の間隔は、トラック幅方向における第1の側面と第1の側壁の間隔よりも大きい。トラック幅方向における第4の側面と第2の側壁の間隔は、トラック幅方向における第2の側面と第2の側壁の間隔よりも大きい。
【0019】
トラック幅方向における第1の側面と第2の側面の間隔は、基板の上面に近づくに従って小さくなっている。第3および第4の側面が基板の上面に垂直な方向に対してなす角度は、第1および第2の側面が基板の上面に垂直な方向に対してなす角度よりも小さい。
【0020】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドにおいて、第1の領域と第2の領域の境界から媒体対向面までの距離は、80〜620nmの範囲内であってもよい。また、記録シールドは、更に、第1および第2のサイドシールドに接する下部シールドを含んでいてもよい。下部シールドは、媒体対向面において主磁極の端面に対して記録媒体の進行方向の後側に配置された端面を有している。
【0021】
また、本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドにおいて、主磁極は、媒体対向面から遠ざかるに従ってトラック幅方向における第1の側部と第2の側部の間隔が大きくなる部分を含んでいてもよい。また、第1の側壁は、第1の領域内に配置された第1の壁面と、第1の壁面に対して媒体対向面から遠い位置に配置された第3の壁面とを有していてもよい。第2の側壁は、第1の領域内に配置された第2の壁面と、第2の壁面に対して媒体対向面から遠い位置に配置された第4の壁面とを有していてもよい。また、第1の領域の少なくとも一部において、トラック幅方向における第1の壁面と第2の壁面の間隔は、媒体対向面から遠ざかるに従って大きくなっていてもよい。第2の領域の少なくとも一部において、トラック幅方向における第3の壁面と第4の壁面の間隔は、媒体対向面から遠ざかるに従って大きくなっていてもよい。また、第1および第2のサイドシールドにおける基板の上面から最も遠い位置において、前記第2の領域の少なくとも一部において第3および第4の壁面が媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度は、第1の領域の少なくとも一部において第1および第2の壁面が媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度よりも大きくてもよい。
【0022】
また、第1の側壁は、更に、第1の壁面と第3の壁面とを連結する第5の壁面を有し、第2の側壁は、更に、第2の壁面と第4の壁面とを連結する第6の壁面を有していてもよい。第1および第2のサイドシールドにおける基板の上面から最も遠い位置において、第5および第6の壁面が媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度は、前記第2の領域の少なくとも一部において第3および第4の壁面が媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度よりも大きくてもよい。
【0023】
第1および第2のサイドシールドにおける基板の上面から最も遠い位置において、第5および第6の壁面と媒体対向面の間の最短距離は、50〜500nmの範囲内であってもよい。
【0024】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法は、
第1および第2のサイドシールドを形成する工程と、
第1および第2のサイドシールドの形成後、ギャップ膜を形成する工程と、
ギャップ膜の形成後、主磁極および非磁性層を形成する工程と、
主磁極および非磁性層の形成後、上部シールドを形成する工程と、
コイルを形成する工程とを備えている。
【0025】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法において、主磁極および非磁性層を形成する工程は、
ギャップ膜の上に、開口部を有する型を形成する工程と、
型を用いて、後に主磁極になる予備主磁極を形成する工程と、
予備主磁極の形成後、型を除去する工程と、
型の除去後、第1および第2のサイドシールド、ギャップ膜および予備主磁極を覆うように、後に非磁性層になる予備非磁性層を形成する工程と、
第1および第2のサイドシールドおよび予備主磁極が露出するまで予備非磁性層を研磨する工程とを含んでいてもよい。
【0026】
また、本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法において、記録シールドは、更に、第1および第2のサイドシールドに接する下部シールドを含み、下部シールドは、媒体対向面において主磁極の端面に対して記録媒体の進行方向の後側に配置された端面を有していてもよい。この場合、垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法は、更に、第1および第2のサイドシールドの形成前に、下部シールドを形成する工程を備え、第1および第2のサイドシールドは、下部シールドの上に形成される。
【発明の効果】
【0027】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドおよびその製造方法では、主磁極において、トラック幅方向における第1の側面と第2の側面の間隔は、基板の上面に近づくに従って小さくなっている。これにより、媒体対向面における主磁極の端面の、トラック幅方向についての幅は、基板の上面に近づくに従って小さくなる。これにより、本発明によれば、隣接トラック消去の発生を抑制することができる。
【0028】
また、本発明では、第3および第4の側面が基板の上面に垂直な方向に対してなす角度は、第1および第2の側面が基板の上面に垂直な方向に対してなす角度よりも小さい。これにより、本発明によれば、第2の領域において、磁束の流れる方向に対して垂直な主磁極の断面積を大きくすることができ、その結果、記録特性を向上させることができる。
【0029】
また、本発明では、非磁性層は、第1の側面と第1の側壁との間および第2の側面と第2の側壁との間には存在せず、第3の側面と第1の側壁との間および第4の側面と第2の側壁との間に存在している。そして、トラック幅方向における第3の側面と第1の側壁の間隔は、トラック幅方向における第1の側面と第1の側壁の間隔よりも大きく、トラック幅方向における第4の側面と第2の側壁の間隔は、トラック幅方向における第2の側面と第2の側壁の間隔よりも大きい。これにより、本発明によれば、サイドシールドの機能を損なうことなく、主磁極からサイドシールドへの磁束の漏れを抑制することができる。以上のことから、本発明によれば、隣接トラック消去の発生の抑制と記録特性の向上を両立させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極、2つのサイドシールド、下部シールドおよびギャップ部の媒体対向面の近傍の部分を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態における主磁極の媒体対向面の近傍の部分を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態における主磁極、2つのサイドシールドおよびギャップ部の媒体対向面の近傍の部分を示す平面図である。
【図4】図3の一部を拡大して示す平面図である。
【図5】本発明の一実施の形態における主磁極および2つのサイドシールドの媒体対向面に配置された端面を示す正面図である。
【図6】図4の6−6線で示す位置における断面を示す断面図である。
【図7】図4の7−7線で示す位置における断面を示す断面図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る磁気ヘッドの構成を示す断面図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る磁気ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法における一工程を示す説明図である。
【図11】図10に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図12】図11に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図13】図12に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図14】図13に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図15】図14に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図16】図15に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1ないし図9を参照して、本発明の一実施の形態に係る磁気ヘッドの構成について説明する。本実施の形態に係る磁気ヘッドは、垂直磁気記録用である。図1は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極、2つのサイドシールド、下部シールドおよびギャップ部の媒体対向面の近傍の部分を示す斜視図である。図2は、本実施の形態における主磁極の媒体対向面の近傍の部分を示す斜視図である。図3は、本実施の形態における主磁極、2つのサイドシールドおよびギャップ部の媒体対向面の近傍の部分を示す平面図である。図4は、図3の一部を拡大して示す平面図である。図5は、本実施の形態における主磁極および2つのサイドシールドの媒体対向面に配置された端面を示す正面図である。図6は、図4の6−6線で示す位置における断面を示す断面図である。図7は、図4の7−7線で示す位置における断面を示す断面図である。図8は、本実施の形態に係る磁気ヘッドの構成を示す断面図である。図9は、本実施の形態に係る磁気ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。図1ないし図5および図7おいて記号TWで示す矢印は、トラック幅方向を表している。図8は媒体対向面および基板の上面に垂直な断面を示している。また、図8において記号Tで示す矢印は、記録媒体の進行方向を表している。
【0032】
図8に示したように、本実施の形態に係る磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面2を備えている。また、図8および図9に示したように、磁気ヘッドは、アルミニウムオキサイド・チタニウムカーバイド(Al2O3・TiC)等のセラミック材料よりなり、上面1aを有する基板1と、この基板1の上面1a上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層81と、この絶縁層81の上に配置されたヒーター82と、絶縁層81およびヒーター82を覆うように配置された絶縁材料よりなる絶縁層83とを備えている。絶縁層81,83は、例えばアルミナ(Al2O3)によって形成されている。ヒーター82は、媒体対向面2の一部を突出させるための熱を発生する。
【0033】
磁気ヘッドは、更に、ヒーター82に対して記録媒体の進行方向Tの前側(トレーリング端側)に配置された再生ヘッド部8を備えている。再生ヘッド部8は、絶縁層83の上に配置された磁性材料よりなる第1の再生シールド層3と、第1の再生シールド層3の上に配置された絶縁膜である第1の再生シールドギャップ膜4と、この第1の再生シールドギャップ膜4の上に配置された再生素子としてのMR(磁気抵抗効果)素子5と、このMR素子5に接続された図示しない2つのリードと、MR素子5およびリードの上に配置された絶縁膜である第2の再生シールドギャップ膜6と、この第2の再生シールドギャップ膜6の上に配置された磁性材料よりなる第2の再生シールド層7とを有している。
【0034】
MR素子5の一端部は、媒体対向面2に配置されている。MR素子5には、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子あるいはTMR(トンネル磁気抵抗効果)素子等の磁気抵抗効果を示す感磁膜を用いた素子を用いることができる。GMR素子としては、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ平行な方向に流すCIP(Current In Plane)タイプでもよいし、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ垂直な方向に流すCPP(Current Perpendicular to Plane)タイプでもよい。
【0035】
磁気ヘッドは、更に、再生ヘッド部8に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置された記録ヘッド部9と、再生ヘッド部8と記録ヘッド部9の間に配置された膨張層84、センサ85および非磁性部86とを備えている。非磁性部86は、非磁性材料によって形成されている。非磁性部86の材料としては、例えばアルミナを用いることができる。
【0036】
非磁性部86は、非磁性層87,88,89を有している。非磁性層87は、第2の再生シールド層7の上に配置されている。膨張層84は、非磁性層87の上に配置されている。非磁性層88は、膨張層84の上に配置されている。センサ85は、非磁性層88の上に配置されている。非磁性層89は、センサ85を覆うように配置されている。
【0037】
記録ヘッド部9は、コイルと、主磁極15と、記録シールド16と、ギャップ部17とを有している。コイルは、第1の部分10と第2の部分20とを含んでいる。第1の部分10と第2の部分20は、いずれも銅等の導電材料によって形成されている。また、第1の部分10と第2の部分20は、いずれも平面渦巻き形状をなしている。第1の部分10と第2の部分20は、直列または並列に接続されている。
【0038】
第1および第2の部分10,20を含むコイルは、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。主磁極15は、媒体対向面2に配置された端面を有し、コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。図8は、媒体対向面2に配置された主磁極15の端面と交差し、媒体対向面2および基板1の上面1aに垂直な断面を示している。
【0039】
記録シールド16は、媒体対向面2において主磁極15の端面の周りを囲むように配置された端面を有している。記録シールド16は、磁性材料によって形成されている。記録シールド16の材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。
【0040】
記録シールド16は、磁気的に連結された下部シールド16A、第1のサイドシールド16B、第2のサイドシールド16Cおよび上部シールド16Dを有している。サイドシールド16B,16Cは、主磁極15のトラック幅方向TWの両側に配置されている。下部シールド16Aは、サイドシールド16B,16Cに対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されて、サイドシールド16B,16Cに接している。上部シールド16Dは、サイドシールド16B,16Cに対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されて、サイドシールド16B,16Cに接している。
【0041】
下部シールド16Aは、媒体対向面2において主磁極15の端面に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置された端面16Aaを有している。サイドシールド16B,16Cは、媒体対向面2において主磁極15の端面に対してトラック幅方向TWの両側に配置された2つの端面16Ba,16Caを有している。上部シールド16Dは、媒体対向面2において主磁極15の端面に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置された端面16Daを有している。
【0042】
記録ヘッド部9は、更に、第1の帰磁路部30および第2の帰磁路部40を有している。第1および第2の帰磁路部30,40は、いずれも磁性材料によって形成されている。第1および第2の帰磁路部30,40の材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。第1の帰磁路部30は、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されて記録シールド16と主磁極15とに接触し、記録シールド16と主磁極15とを磁気的に連結している。第2の帰磁路部40は、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されて記録シールド16と主磁極15とに接触し、記録シールド16と主磁極15とを磁気的に連結している。
【0043】
第1の帰磁路部30は、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されたヨーク層31と、ヨーク層31と記録シールド16とを連結する第1の連結部32と、媒体対向面2から離れた位置に配置されてヨーク層31と主磁極15とを連結する第2の連結部35とを含んでいる。第1の連結部32は、磁性層33,34を含んでいる。第2の連結部35は、磁性層36,37,38を含んでいる。
【0044】
ヨーク層31は、非磁性層89の上に配置されている。磁性層33,36は、いずれもヨーク層31の上に配置されている。磁性層33は、媒体対向面2の近傍に配置されている。磁性層36は、磁性層33に対して、媒体対向面2からより遠い位置に配置されている。ヨーク層31および磁性層33は、それぞれ、媒体対向面2に向いた端面を有し、これらの端面は、媒体対向面2から離れた位置に配置されている。
【0045】
磁気ヘッドは、更に、ヨーク層31の周囲において非磁性層89の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層51と、ヨーク層31および磁性層33,36とコイルの第1の部分10との間に介在する絶縁材料よりなる絶縁膜52と、第1の部分10の巻線間に配置された絶縁材料よりなる絶縁層53と、磁性層33,36および第1の部分10の周囲に配置された絶縁材料よりなる絶縁層54とを備えている。第1の部分10、磁性層33,36、絶縁膜52および絶縁層53,54の上面は平坦化されている。絶縁層51,54および絶縁膜52は、例えばアルミナによって形成されている。絶縁層53は、例えばフォトレジストによって形成されている。第1の部分10は、第1の帰磁路部30の一部である磁性層36の周りに巻かれている。
【0046】
磁性層34は、磁性層33および絶縁層54の上に配置されている。磁性層37は、磁性層36の上に配置されている。磁性層34は、媒体対向面2に配置された端面を有している。磁気ヘッドは、更に、磁性層34,37の周囲において第1の部分10、絶縁膜52および絶縁層53,54の上面の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層55を備えている。絶縁層55は、例えばアルミナによって形成されている。磁性層34,37および絶縁層55の上面は、平坦化されている。
【0047】
下部シールド16Aは、磁性層34の上に配置されている。磁性層38は、磁性層37の上に配置されている。磁気ヘッドは、更に、下部シールド16Aおよび磁性層38の周囲において、磁性層34の上面の一部および絶縁層55の上面の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層56を備えている。絶縁層56は、例えばアルミナによって形成されている。
【0048】
図2に示したように、主磁極15は、基板1の上面1aにより近い端部である下端部15Lと、下端部15Lとは反対側の上面15Tと、トラック幅方向TWの両側に配置された第1および第2の側部SP1,SP2とを有している。サイドシールド16Bは、主磁極15の第1の側部SP1に面した第1の側壁SW1を有している。サイドシールド16Cは、主磁極15の第2の側部SP2に面した第2の側壁SW2を有している。
【0049】
ギャップ部17は、非磁性材料よりなり、主磁極15と記録シールド16との間に設けられている。ギャップ部17は、ギャップ膜17Aと非磁性層17Bとギャップ層17Cとを含んでいる。ギャップ膜17Aは、第1および第2の側壁SW1,SW2に接するように配置されている。非磁性層17Bは、媒体対向面2から離れた位置において、ギャップ膜17Aと第1および第2の側部SP1,SP2との間に配置されている。ギャップ層17Cは、少なくとも主磁極15と上部シールド16Dとの間に配置されている。
【0050】
サイドシールド16B,16Cは、下部シールド16Aの上に配置され、下部シールド16Aに接している。ギャップ膜17Aは、サイドシールド16B,16Cの側壁SW1,SW2、下部シールド16Aの上面および絶縁層56の上面に沿って配置されている。ギャップ膜17Aを構成する非磁性材料は、絶縁材料でもよいし、非磁性金属材料でもよい。ギャップ膜17Aを構成する絶縁材料としては、例えばアルミナが用いられる。ギャップ膜17Aを構成する非磁性金属材料としては、例えばRuが用いられる。ギャップ膜17Aには、磁性層38の上面を露出させる開口部が形成されている。
【0051】
主磁極15は、下部シールド16Aおよび絶縁層56の上面と主磁極15との間にギャップ膜17Aが介在するように、下部シールド16Aおよび絶縁層56の上に配置されている。また、図1に示したように、媒体対向面2において、主磁極15とサイドシールド16B,16Cとの間にも、ギャップ膜17Aが介在している。
【0052】
媒体対向面2から離れた位置において、主磁極15の下端部15Lは、磁性層38の上面に接している。主磁極15は、金属磁性材料によって形成されている。主磁極15の材料としては、例えば、NiFe、CoNiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。主磁極15の形状については、後で詳しく説明する。
【0053】
磁気ヘッドは、更に、媒体対向面2から離れた位置において、主磁極15の上面15Tの一部の上に配置された非磁性金属材料よりなる非磁性金属層58と、この非磁性金属層58の上面の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層59とを備えている。非磁性金属層58は、例えばRu、NiCrまたはNiCuによって形成されている。絶縁層59は、例えばアルミナによって形成されている。
【0054】
ギャップ層17Cは、主磁極15、非磁性金属層58および絶縁層59を覆うように配置されている。ギャップ層17Cの材料は、アルミナ等の非磁性絶縁材料でもよいし、Ru、NiCu、Ta、W、NiB、NiP等の非磁性導電材料でもよい。
【0055】
上部シールド16Dは、サイドシールド16B,16Cおよびギャップ層17Cの上に配置され、サイドシールド16B,16Cに接している。媒体対向面2において、上部シールド16Dの端面の一部は、主磁極15の端面に対して、ギャップ層17Cの厚みによる所定の間隔を開けて配置されている。ギャップ層17Cの厚みは、5〜60nmの範囲内であることが好ましく、例えば30〜60nmの範囲内である。主磁極15の端面は、ギャップ層17Cに隣接する辺を有し、この辺はトラック幅を規定している。
【0056】
第2の帰磁路部40は、ヨーク層41と磁性層42とを含んでいる。ヨーク層41は、媒体対向面2から離れた位置において主磁極15の上に配置されている。磁気ヘッドは、更に、上部シールド16Dおよびヨーク層41の周囲に配置された非磁性層61を備えている。非磁性層61は、例えば無機絶縁材料によって形成されている。この無機絶縁材料としては、例えばアルミナまたはシリコン酸化物が用いられる。上部シールド16D、ヨーク層41および非磁性層61の上面は平坦化されている。
【0057】
磁気ヘッドは、更に、ヨーク層41および非磁性層61の上面の一部の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層62を備えている。絶縁層62は、例えばアルミナによって形成されている。コイルの第2の部分20の少なくとも一部は、絶縁層62の上に配置されている。磁気ヘッドは、更に、第2の部分20を覆うように配置された絶縁材料よりなる絶縁層63を備えている。絶縁層63は、例えばフォトレジストによって形成されている。
【0058】
磁性層42は、上部シールド16D、ヨーク層41および絶縁層63の上に配置され、上部シールド16Dとヨーク層41とを接続している。また、磁性層42は、媒体対向面2に配置された端面を有している。第2の部分20は、第2の帰磁路部40の一部である磁性層42のうち、ヨーク層41の上に配置された部分の周りに巻かれている。
【0059】
磁気ヘッドは、更に、非磁性材料よりなり、磁性層42および絶縁層62,63を覆うように配置された保護層70を備えている。保護層70は、例えば、アルミナ等の無機絶縁材料によって形成されている。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態に係る磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面2と再生ヘッド部8と記録ヘッド部9とを備えている。再生ヘッド部8と記録ヘッド部9は、基板1の上に積層されている。記録ヘッド部9は、再生ヘッド部8に対して、記録媒体の進行方向Tの前側(トレーリング端側)に配置されている。
【0061】
記録ヘッド部9は、第1の部分10および第2の部分20を含むコイルと、主磁極15と、記録シールド16と、ギャップ部17と、第1および第2の帰磁路部30,40とを有している。記録シールド16は、下部シールド16Aと、2つのサイドシールド16B,16Cと、上部シールド16Dとを有している。ギャップ部17は、ギャップ膜17Aと非磁性層17Bとギャップ層17Cとを含んでいる。
【0062】
第1の帰磁路部30は、ヨーク層31と第1および第2の連結部32,35とを含んでいる。ヨーク層31は、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されている。第1の連結部32は、磁性層33,34を含んでいる。第2の連結部35は、磁性層36,37,38を含んでいる。図8に示したように、第1の帰磁路部30は、主磁極15、ギャップ部17(ギャップ膜17A)、記録シールド16および第1の帰磁路部30によって囲まれた第1の空間S10が形成されるように、記録シールド16と主磁極15とを接続し、これにより、記録シールド16と主磁極15とを磁気的に連結している。コイルの第1の部分10は、第1の空間S10を通過している。
【0063】
第2の帰磁路部40は、ヨーク層41と磁性層42とを含んでいる。図8に示したように、第2の帰磁路部40は、主磁極15、ギャップ部17(ギャップ層17C)、記録シールド16および第2の帰磁路部40によって囲まれた第2の空間S20が形成されるように、記録シールド16と主磁極15とを接続し、これにより、記録シールド16と主磁極15とを磁気的に連結している。コイルの第2の部分20は、第2の空間S20を通過している。
【0064】
本実施の形態に係る磁気ヘッドは、更に、ヒーター82と、膨張層84と、センサ85と、非磁性部86とを備えている。膨張層84、センサ85および非磁性部86は、再生ヘッド部8と記録ヘッド部9の間に配置されている。ヒーター82は、膨張層84およびセンサ85に対して、記録媒体の進行方向Tの後側(リーディング端側)に配置されている。非磁性部86は、膨張層84およびセンサ85の周囲に配置されている。
【0065】
以下、ヒーター82、膨張層84およびセンサ85について詳しく説明する。ヒーター82および膨張層84は、再生ヘッド部8および記録ヘッド部9と記録媒体の表面との間の距離を小さくするために、媒体対向面2の一部を突出させるためのものである。ヒーター82は、通電されることによって、媒体対向面2の一部を突出させるための熱を発生する。膨張層84は、ヒーター82によって発生された熱を受けて膨張して、媒体対向面2の一部を突出させる。
【0066】
膨張層84は、非磁性部86に比べて、熱伝導率および線熱膨張係数が大きい材料によって形成されている。膨張層84の材料としては、金属材料を用いることができる。膨張層84を構成する金属材料は、非磁性金属材料でもよいし、磁性金属材料でもよい。膨張層84を構成する非磁性金属材料としては、例えばAl、Cu、Auのいずれかを用いることができる。膨張層84を構成する磁性金属材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。
【0067】
磁気ヘッドの構成要素は、ヒーター82によって発生された熱を受けて膨張する。特に、膨張層84は、その周囲に配置された非磁性部86に比べて、熱伝導率が大きい材料によって形成されている。そのため、膨張層84では、非磁性部86に比べて、ヒーター82によって発生された熱が速やかに均一に分布する。また、膨張層84は、非磁性部86に比べて、線熱膨張係数が大きい材料によって形成されている。そのため、膨張層84は、ヒーター82によって発生された熱を受けて、非磁性部86に比べて、速やかに、且つ大きく膨張して、媒体対向面2の一部を突出させる。これにより、再生ヘッド部8および記録ヘッド部9と記録媒体の表面との間の距離が小さくなる。
【0068】
センサ85は、媒体対向面2の一部が記録媒体に接触したことを検出するためのものである。センサ85は、媒体対向面2の一部が記録媒体に接触したときに自身の温度変化によって抵抗値が変化する抵抗体である。センサ85の材料としては、温度変化に対する抵抗値の変化の割合、すなわち抵抗の温度係数がある程度大きい金属材料や半導体材料が用いられる。具体的には、センサ85の材料としては、例えば、NiFe、W、Cu、Ni、Ptのいずれかを用いることができる。
【0069】
媒体対向面2の一部が記録媒体に接触すると、接触による摩擦熱によって、媒体対向面2のうち、記録媒体に接触した部分およびその近傍の部分の温度が上昇する。このような温度の上昇に伴って、センサ85自身の温度も上昇する。その結果、センサ85の抵抗値が変化する。そのため、センサ85に接続された図示しない2つのリードを介してセンサ85の抵抗値を測定することによって、媒体対向面2の一部が記録媒体に接触したことを検出することができる。
【0070】
以下、図1ないし図4を参照して、主磁極15、サイドシールド16B,16C、ギャップ膜17Aおよび非磁性層17Bについて詳しく説明する。前述のように、主磁極15は、下端部15Lと上面15Tと第1および第2の側部SP1,SP2とを有している。
【0071】
図2に示したように、下端部15Lは、媒体対向面2に配置された第1の端縁とその反対側の第2の端縁とを有する第1の部分15L1と、この第1の部分15L1よりも媒体対向面2から遠い位置に配置され、第2の端縁において第1の部分15L1に接続された第2の部分15L2とを含んでいる。第1の部分15L1の少なくとも一部における任意の位置の基板1の上面1aからの距離は、この任意の位置が媒体対向面2に近づくに従って大きくなっている。第2の部分15L2は、実質的に媒体対向面2に垂直な方向に延在している。第1の部分15L1の少なくとも一部が媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度は、例えば12°〜45°の範囲内である。なお、第1の部分15L1は、媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度が互いに異なる2つの部分を有していてもよい。
【0072】
上面15Tは、媒体対向面2に配置された第1の端縁とその反対側の第2の端縁とを有する第1の部分15T1と、この第1の部分15T1よりも媒体対向面2から遠い位置に配置され、第2の端縁において第1の部分15T1に接続された第2の部分15T2とを含んでいる。第1の部分15T1における任意の位置の基板1の上面1aからの距離は、この任意の位置が媒体対向面2に近づくに従って小さくなっている。第2の部分15T2は、実質的に媒体対向面2に垂直な方向に延在している。第1の部分15T1が媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度は、例えば12°〜45°の範囲内である。なお、第1の部分15T1は、媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度が互いに異なる2つの部分を有していてもよい。
【0073】
第1の側部SP1は、第1の側面S1、第3の側面S3および第5の側面S5を含んでいる。第2の側部SP2は、第2の側面S2、第4の側面S4および第6の側面S6を含んでいる。第1および第2の側面S1,S2は、媒体対向面2から所定の距離だけ離れた位置から媒体対向面2までの第1の領域R1に配置されている。第3および第4の側面S3,S4は、第1の領域R1以外の第2の領域R2に配置されている。第5の側面S5は、第1の領域R1と第2の領域R2との境界位置に配置され、第1の側面S1と第3の側面S3とを接続している。第6の側面S6は、第1の領域R1と第2の領域R2との境界位置に配置され、第2の側面S2と第4の側面S4とを接続している。図2および図4では、領域R1と領域R2の境界を二点鎖線で示している。領域R1と領域R2の境界から媒体対向面2までの距離D1(図4参照)は、80〜620nmの範囲内であることが好ましく、120〜230nmの範囲内であることがより好ましい。
【0074】
トラック幅方向TWにおける第1の側面S1と第2の側面S2の間隔は、基板1の上面1aに近づくに従って小さくなっている。これにより、媒体対向面2における主磁極15の端面の、トラック幅方向TWについての幅は、基板1の上面1aに近づくに従って小さくなる。第1の側面S1が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度θS1と、第2の側面S2が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度θS2は、例えば7°〜17°の範囲内であり、10°〜15°の範囲内であることが好ましい。第3および第4の側面S3,S4が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は、角度θS1,θS2よりも小さい。
【0075】
ここで、トラック幅方向TWについての側面S3,S4の間隔が基板1の上面1aに近づくに従って小さくなる場合には、側面S3,S4の各々が基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度を正の値で表し、トラック幅方向TWについての側面S3,S4の間隔が基板1の上面1aに近づくに従って大きくなる場合には、側面S3,S4の各々が基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度を負の値で表す。この場合、側面S3,S4の各々が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は、例えば−7°〜7°の範囲内であり、−7°〜0°の範囲内であることが好ましい。図7に示した例では、側面S3,S4が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は0°である。
【0076】
第1の領域R1と第2の領域R2との境界位置において、最も主磁極15の下端部15Lに近い位置におけるトラック幅方向TWについての側面S3,S4の間隔は、最も下端部15Lに近い位置におけるトラック幅方向TWについての側面S1,S2の間隔よりも大きい。第5の側面S5の幅と第6の側面S6の幅は、いずれも、下端部15Lに近づくに従って大きくなっている。
【0077】
主磁極15は、媒体対向面2から遠ざかるに従ってトラック幅方向TWにおける第1の側部SP1と第2の側部SP2の間隔が大きくなる部分を含んでいる。図4に示した例では、第1の領域R1の少なくとも一部において、トラック幅方向TWにおける第1の側面S1と第2の側面S2の間隔は、媒体対向面2から遠ざかるに従って大きくなっている。また、第2の領域R2において、トラック幅方向TWにおける第3の側面S3と第4の側面S4の間隔は、媒体対向面2から遠ざかるに従って大きくなっている。
【0078】
図4に示したように、サイドシールド16Bは第1の側壁SW1を有し、サイドシールド16Cは第2の側壁SW2を有している。ギャップ膜17Aは、第1および第2の側壁SW1,SW2に接するように配置されている。ギャップ膜17Aの厚みは、30〜120nmの範囲内であることが好ましく、50〜80nmの範囲内であることがより好ましい。
【0079】
非磁性層17Bは、媒体対向面2から離れた位置において、ギャップ膜17Aと第1および第2の側部SP1,SP2との間に配置されている。非磁性層17Bは、第1の側面S1と第1の側壁SW1との間および第2の側面S2と第2の側壁SW2との間には存在せず、第3の側面S3と第1の側壁SW1との間および第4の側面S4と第2の側壁SW2との間に存在している。トラック幅方向TWにおける第3の側面S3と第1の側壁SW1の間隔は、トラック幅方向TWにおける第1の側面S1と第1の側壁SW1の間隔よりも大きい。また。トラック幅方向TWにおける第4の側面S4と第2の側壁SW2の間隔は、トラック幅方向TWにおける第2の側面S2と第2の側壁SW2の間隔よりも大きい。
【0080】
第1の側壁SW1は、第1の領域R1内に配置された第1の壁面F1と、第1の壁面F1に対して媒体対向面2から遠い位置に配置された第3の壁面F3と、第1の壁面F1と第3の壁面F3とを連結する第5の壁面F5とを有している。第2の側壁SW2は、第1の領域R1内に配置された第2の壁面F2と、第2の壁面F2に対して媒体対向面2から遠い位置に配置された第4の壁面F4と、第2の壁面F2と第4の壁面F4とを連結する第6の壁面F6とを有している。
【0081】
第1の領域R1の少なくとも一部において、トラック幅方向TWにおける第1の壁面F1と第2の壁面F2の間隔は、媒体対向面2から遠ざかるに従って大きくなっている。また、第2の領域R2の少なくとも一部において、トラック幅方向TWにおける第3の壁面F3と第4の壁面F4の間隔は、媒体対向面2から遠ざかるに従って大きくなっている。
【0082】
図4に示したように、第1および第2のサイドシールド16B,16Cにおける基板1の上面1aから最も遠い位置において、前記第2の領域R2の少なくとも一部において第3の壁面F3が媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度θF3および前記第2の領域R2の少なくとも一部において第4の壁面F4が媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度θF4は、前記第1の領域R1の少なくとも一部において第1の壁面F1が媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度θF1および前記第1の領域R1の少なくとも一部において第2の壁面F2が媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度θF2よりも大きい。第3の側面S3が媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度はθF1と等しく、第4の側面S4が媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度はθF2と等しい。
【0083】
また、第1および第2のサイドシールド16B,16Cにおける基板1の上面1aから最も遠い位置において、第5および第6の壁面F5,F6が媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度は、角度θF3,θF4よりも大きい。図4に示した例では、第1および第2のサイドシールド16B,16Cにおける基板1の上面1aから最も遠い位置において、第5および第6の壁面F5,F6が媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度は90°である。
【0084】
第1および第2のサイドシールド16B,16Cにおける基板1の上面1aから最も遠い位置において、第5および第6の壁面F5,F6と媒体対向面2の間の最短距離D2(図4参照)は、50〜500nmの範囲内であることが好ましく、70〜150nmの範囲内であることがより好ましい。
【0085】
図3に示したように、第1の側壁SW1は、更に、第3の壁面F3に対して媒体対向面2から遠い位置に配置された第7の壁面F7と、第3の壁面F3と第7の壁面F7とを連結する第9の壁面F9とを有している。第2の側壁SW2は、更に、第4の壁面F4に対して媒体対向面2から遠い位置に配置された第8の壁面F8と、第4の壁面F4と第8の壁面F8とを連結する第10の壁面F10とを有している。
【0086】
トラック幅方向TWにおける第7の壁面F7と第1の側部SP1の間隔は、トラック幅方向TWにおける第3の壁面F3と第1の側部SP1の間隔よりも大きい。また、トラック幅方向TWにおける第8の壁面F8と第2の側部SP2の間隔は、トラック幅方向TWにおける第4の壁面F4と第2の側部SP2の間隔よりも大きい。
【0087】
第1および第2のサイドシールド16B,16Cにおける基板1の上面1aから最も遠い位置において、第7および第8の壁面F7,F8が媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度は例えば角度θF3,θF4と等しく、第9および第10の壁面F9,F10が媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度は例えば90°である。
【0088】
次に、本実施の形態に係る磁気ヘッドの作用および効果について説明する。この磁気ヘッドでは、記録ヘッド部9によって記録媒体に情報を記録し、再生ヘッド部8によって、記録媒体に記録されている情報を再生する。記録ヘッド部9において、第1の部分10および第2の部分20を含むコイルは、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。第1の部分10によって発生された磁界に対応する磁束は、第1の帰磁路部30と主磁極15を通過する。第2の部分20によって発生された磁界に対応する磁束は、第2の帰磁路部40と主磁極15を通過する。第1の部分10と第2の部分20は、主磁極15において、第1の部分10によって発生された磁界に対応する磁束と第2の部分20によって発生された磁界に対応する磁束が同じ方向に流れるように、直列または並列に接続されている。
【0089】
主磁極15は、第1の部分10によって発生された磁界に対応する磁束と第2の部分20によって発生された磁界に対応する磁束とを通過させて、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。
【0090】
記録シールド16は、磁気ヘッドの外部から磁気ヘッドに印加された外乱磁界を取り込む。これにより、外乱磁界が主磁極15に集中して取り込まれることによって記録媒体に対して誤った記録が行なわれることを防止することができる。また、記録シールド16は、主磁極15の端面より発生されて記録媒体の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込んで、この磁束が記録媒体に達することを阻止する機能を有している。
【0091】
また、記録シールド16と第1および第2の帰磁路部30,40は、主磁極15の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束を還流させる機能を有している。具体的に説明すると、主磁極15の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束の一部は、記録シールド16と第1の帰磁路部30を通過して主磁極15に還流する。また、主磁極15の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束の他の一部は、記録シールド16と第2の帰磁路部40を通過して主磁極15に還流する。
【0092】
記録シールド16は、下部シールド16Aと、2つのサイドシールド16B,16Cと、上部シールド16Dとを有している。これにより、本実施の形態によれば、主磁極15の端面に対して記録媒体の進行方向Tの前側および後側ならびにトラック幅方向TWの両側において、主磁極15の端面より発生されて記録媒体の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込んで、この磁束が記録媒体に達することを抑制することができる。その結果、本実施の形態によれば、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することができる。下部シールド16Aおよび上部シールド16Dは、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することに寄与する他に、記録磁界の勾配を大きくすることに寄与する。サイドシールド16B,16Cは、特に隣接トラック消去を抑制することへの寄与が大きい。このような記録シールド16の機能により、本実施の形態によれば、記録密度を高めることができる。
【0093】
また、本実施の形態では、主磁極15において、トラック幅方向TWにおける第1の側面S1と第2の側面S2の間隔は、基板1の上面1aに近づくに従って小さくなっている。これにより、媒体対向面2における主磁極15の端面の、トラック幅方向TWについての幅は、基板1の上面1aに近づくに従って小さくなる。本実施の形態によれば、この特徴によっても、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することができる。
【0094】
また、本実施の形態では、媒体対向面2において、トラック幅方向TWにおけるサイドシールド16B,16Cの壁面F1,F2の間隔は、主磁極15の側面S1,S2の間隔と同様に、基板1の上面1aに近づくに従って小さくなっている。従って、本実施の形態によれば、媒体対向面2において、側面S1と壁面F1との間隔、ならびに側面S2と壁面F2との間隔を、小さく、且つ均一にすることが可能になる。これにより、サイドシールド16B,16Cによって、主磁極15の端面より発生されてトラック幅方向TWの両側に広がる磁束を、効果的に取り込むことができる。その結果、本実施の形態によれば、特にサイドシールド16B,16Cの機能を高めることが可能になり、スキューに起因した隣接トラック消去の発生をより効果的に抑制することが可能になる。
【0095】
また、本実施の形態では、主磁極15の下端部15Lは、第1および第2の部分15L1,15L2を含んでいる。主磁極15の上面15Tは、第1および第2の部分15T1,15T2を含んでいる。第1の部分15L1の少なくとも一部における任意の位置の基板1の上面1aからの距離は、この任意の位置が媒体対向面2に近づくに従って大きくなっていると共に、第1の部分15T1における任意の位置の基板1の上面1aからの距離は、この任意の位置が媒体対向面2に近づくに従って小さくなっている。これにより、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することができ、且つ主磁極15によって多くの磁束を媒体対向面2まで導くことにより記録特性(オーバーライト特性)を向上させることができる。
【0096】
また、本実施の形態では、主磁極15の第3および第4の側面S3,S4が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は、主磁極15の第1および第2の側面S1,S2が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度θS1,θS2よりも小さい。これにより、側面S3,S4が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度がθS1,θS2と等しい場合に比べて、第2の領域R2において、磁束の流れる方向に対して垂直な主磁極15の断面積を大きくすることができる。そのため、本実施の形態によれば、主磁極15において多くの磁束を通過させることができ、その結果、オーバーライト特性等の記録特性を向上させることができる。
【0097】
ところで、媒体対向面2以外の広い領域において、主磁極15の側部SP1,SP2とサイドシールド16B,16Cの側壁SW1,SW2が小さな間隔で対向していると、主磁極15からサイドシールド16B,16Cへの磁束の漏れが多くなり、オーバーライト特性等の記録特性が低下してしまう。これを防止するために、媒体対向面2に垂直な方向についてのサイドシールド16B,16Cの寸法を小さくすると、サイドシールド16B,16Cの体積が小さくなって、サイドシールド16B,16Cの本来の機能が損なわれる。
【0098】
これに対し、本実施の形態では、ギャップ部17の一部である非磁性層17Bは、第1の側面S1と第1の側壁SW1との間および第2の側面S2と第2の側壁SW2との間には存在せず、第3の側面S3と第1の側壁SW1との間および第4の側面S4と第2の側壁SW2との間に存在している。そして、トラック幅方向TWにおける第3の側面S3と第1の側壁SW1の間隔は、トラック幅方向TWにおける第1の側面S1と第1の側壁SW1の間隔よりも大きい。同様に、トラック幅方向TWにおける第4の側面S4と第2の側壁SW2の間隔は、トラック幅方向TWにおける第2の側面S2と第2の側壁SW2の間隔よりも大きい。これにより、本実施の形態によれば、サイドシールド16B,16Cの体積を小さくすることなく、主磁極15の側部SP1,SP2とサイドシールド16B,16Cの側壁SW1,SW2が、ギャップ膜17Aの厚みに相当する小さな間隔で対向する領域を小さくすることができる。その結果、サイドシールド16B,16Cの機能を損なうことなく、主磁極15からサイドシールド16B,16Cへの磁束の漏れを抑制することができる。
【0099】
また、本実施の形態では、前述のように、図4に示した角度θF3,θF4が、角度θF1,θF2よりも大きい。これにより、トラック幅方向TWにおける第3の側面S3と第3の壁面F3の間隔と、トラック幅方向TWにおける第4の側面S4と第4の壁面F4の間隔は、それぞれ、媒体対向面2から遠ざかるに従って大きくなる。これにより、主磁極15からサイドシールド16B,16Cへの磁束の漏れを、より確実に抑制することができる。
【0100】
以上のことから、本実施の形態によれば、隣接トラック消去の発生の抑制と記録特性の向上を両立させることができる。
【0101】
次に、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法について説明する。本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法では、まず、図8および図9に示したように、基板1の上に、絶縁層81、ヒーター82、絶縁層83、第1の再生シールド層3、第1の再生シールドギャップ膜4を順に形成する。次に、第1の再生シールドギャップ膜4の上にMR素子5と、このMR素子5に接続された図示しない2つのリードとを形成する。次に、MR素子5およびリードを覆うように第2の再生シールドギャップ膜6を形成する。次に、第2の再生シールドギャップ膜6の上に第2の再生シールド層7を形成する。次に、第2の再生シールド層7の上に、非磁性層87、膨張層84、非磁性層88、センサ85および非磁性層89を順に形成する。
【0102】
次に、例えばフレームめっき法によって、非磁性層89の上にヨーク層31を形成する。次に、積層体の上面全体の上に絶縁層51を形成する。次に、例えば化学機械研磨(以下、CMPと記す。)によって、ヨーク層31が露出するまで、絶縁層51を研磨して、ヨーク層31および絶縁層51の上面を平坦化する。
【0103】
次に、例えばフレームめっき法によって、ヨーク層31の上に磁性層33,36を形成する。次に、後にコイルの第1の部分10が配置される予定の領域において、ヨーク層31の上面および磁性層33,36の壁面に沿って絶縁膜52を形成する。次に、例えばフレームめっき法によって、絶縁膜52の上に第1の部分10を形成する。次に、第1の部分10の巻線間に絶縁層53を形成する。次に、積層体の上面全体の上に、絶縁層54を形成する。次に、例えばCMPによって、第1の部分10および磁性層33,36が露出するまで絶縁層54を研磨して、第1の部分10、磁性層33,36、絶縁膜52および絶縁層53,54の上面を平坦化する。
【0104】
次に、例えばフレームめっき法によって、磁性層33および絶縁層54の上に磁性層34を形成し、磁性層36の上に磁性層37を形成する。次に、積層体の上面全体の上に、絶縁層55を形成する。次に、例えばCMPによって、磁性層34,37が露出するまで絶縁層55を研磨して、磁性層34,37および絶縁層55の上面を平坦化する。
【0105】
次に、図10ないし図16を参照して、上記の工程の後、主磁極15の上面15Tの形状を決定する工程までの一連の工程について説明する。これらの図は、磁気ヘッドの製造過程における積層体を示している。図10ないし図15において、(a)は、それぞれ、積層体の一部の上面を示している。図10ないし図15において、(b)は、それぞれ、積層体における媒体対向面2が形成される予定の位置における断面を示している。図10ないし図15において、(c)は、それぞれ、媒体対向面2が形成される予定の位置に平行な断面を示している。図10ないし図15の(a)において、nC−nC線(nは10以上15以下の整数)は、図10ないし図15の(c)における断面の位置を示している。図16(a)は、積層体における媒体対向面2が形成される予定の位置における断面を示している。図16(b)は、積層体における媒体対向面2および基板1の上面1aに垂直な断面を表している。なお、図10ないし図16では、下部シールド16Aよりも基板1側の部分を省略している。また、図10ないし図15における(a)および図16(b)において、記号“ABS”は、媒体対向面2が形成される予定の位置を表している。
【0106】
図10は、磁性層34,37および絶縁層55の上面を平坦化した後の工程を示している。この工程では、まず、例えばフレームめっき法によって、磁性層34の上に下部シールド16Aを形成し、磁性層37の上に磁性層38を形成する。次に、積層体の上面全体の上に、絶縁層56を形成する。次に、例えばCMPによって、下部シールド16Aおよび磁性層38が露出するまで絶縁層56を研磨して、下部シールド16A、磁性層38および絶縁層56の上面を平坦化する。
【0107】
次に、下部シールド16Aの上に、サイドシールド16B,16Cを形成する。以下、サイドシールド16B,16Cの形成方法の一例について説明する。この方法では、まず、ポジ型のフォトレジストよりなるフォトレジスト層をフォトリソグラフィによってパターニングすることによって、下部シールド16Aの上面上であって、後にサイドシールド16B,16Cが形成される領域に、第1のレジスト層を形成する。第1のレジスト層は、後に形成されるサイドシールド16B,16Cの形状に対応した形状を有する2つの部分を有している。次に、第1のレジスト層を覆うように、非磁性材料よりなる分離膜を形成する。分離膜は、ポジ型のフォトレジストよりなる第1のレジスト層と、後に形成されるネガ型のフォトレジストよりなるフォトレジスト層とが混合されることを防止するためのものである。分離膜の材料としては、例えばアルミナまたは合成樹脂が用いられる。
【0108】
次に、ネガ型のフォトレジストよりなるフォトレジスト層をフォトリソグラフィによってパターニングすることによって、分離膜の上に、後に型になる第2のレジスト層を形成する。第2のレジスト層は、後に形成されるサイドシールド16B,16Cの形状に対応した形状の2つの開口部を有している。次に、例えばウェットエッチングによって、分離膜のうち、第2のレジスト層によって覆われていない部分を除去する。次に、第1および第2のレジスト層を露光した後、例えばアルカリ性の現像液を用いて、第2のレジスト層の2つの開口部から第1のレジスト層を除去する。また、第1のレジスト層を除去する際または第1のレジスト層を除去した後に、分離膜のうち、第2のレジスト層の2つの開口部の壁面に沿った部分を除去する。この工程により、第2のレジスト層は、後にサイドシールド16B,16Cが形成される領域を除く領域に形成された型になる。次に、シード層を形成することなくめっきを行って、下部シールド16Aの上面上に、サイドシールド16B,16Cを形成する。サイドシールド16B,16Cは、それぞれ、型の2つの開口部内に形成される。次に、型と分離膜を除去する。図10は、このようにして形成されたサイドシールド16B,16Cを示している。
【0109】
図11は、次の工程を示す。この工程では、まず、下部シールド16Aおよびサイドシールド16B,16Cの上に、図示しないエッチングマスクを形成する。このエッチングマスクは、フォトレジスト層をパターニングして形成される。次に、上記エッチングマスクを用いて、絶縁層56をエッチングする。このエッチングは、エッチングによって形成される底部が、当初の絶縁層56の上面と下面の間の高さの位置に達するまで行う。また、このエッチングは、例えば反応性イオンエッチングを用いて行われる。次に、エッチングマスクを除去する。次に、例えばイオンビームエッチングを用いて、媒体対向面2が形成される予定の位置ABSの近傍において、下部シールド16Aの上面の一部をエッチングする。これにより、下部シールド16Aの上面は、図8に示したような斜面になる。図11は、このエッチング後の下部シールド16Aおよびサイドシールド16B,16Cを示している。このエッチングによって、サイドシールド16B,16Cの側壁SW1,SW2の形状が決定される。
【0110】
図12は、次の工程を示す。この工程では、下部シールド16Aおよびサイドシールド16B,16Cを覆うようにギャップ膜17Aを形成する。ギャップ膜17Aの材料としてアルミナを用いる場合には、例えば原子層堆積法によって、ギャップ膜17Aを形成する。ギャップ膜17Aの材料としてRuを用いる場合には、例えば化学的気相成長法によって、ギャップ膜17Aを形成する。
【0111】
図13は、次の工程を示す。この工程では、まず、ギャップ膜17Aに、磁性層38の上面を露出させる開口部を形成する。次に、ギャップ膜17Aの上に、開口部101aを有する型101を形成する。型101は、フォトレジスト層をパターニングして形成される。
【0112】
次に、型101を用いて、例えばめっき法によって、型101の開口部101a内に、後に主磁極15になる予備主磁極15Pを形成する。予備主磁極15Pは、その上面がサイドシールド16B,16Bの上面よりも上方に配置されるように形成される。
【0113】
図13(a)および(b)に示したように、第1の領域R1では、トラック幅方向(左右方向)についての開口部101aの幅は、後に形成される主磁極15の第1および第2の側面S1,S2のトラック幅方向についての最大の間隔よりも大きい。そのため、第1の領域R1では、予備主磁極15Pは、サイドシールド16B,16Cの側壁SW1,SW2と予備主磁極15Pとの間にギャップ膜17Aが介在するように形成される。従って、主磁極15の第1および第2の側面S1,S2の形状は、サイドシールド16B,16Cの側壁SW1,SW2とギャップ膜17Aとによって決定される。
【0114】
一方、図13(a)および(c)に示したように、第2の領域R2では、開口部101aの側壁は、ギャップ膜17Aのうちサイドシールド16B,16Cの側壁SW1,SW2上に存在する部分から離れた位置にある。第2の領域R2における開口部101aの側壁の位置は、後に形成される主磁極15の第3および第4の側面S3,S4の位置と一致している。そのため、第2の領域R2では、予備主磁極15Pは、サイドシールド16B,16Cの側壁SW1,SW2と予備主磁極15Pとの間に、ギャップ膜17Aおよび型101が介在するように形成される。従って、主磁極15の第3ないし第6の側面S3〜S6の形状は、型101によって形成される。
【0115】
図14は、次の工程を示す。この工程では、まず、型101を除去する。次に、サイドシールド16B,16C、ギャップ膜17Aおよび予備主磁極15Pを覆うように、後に非磁性層17Bになる予備非磁性層102を形成する。
【0116】
図15は、次の工程を示す。この工程では、例えばCMPによって、予備主磁極15Pおよびサイドシールド16B,16Cが露出するまで予備非磁性層102を研磨する。この工程の後では、領域R2において、ギャップ膜17Aのうちサイドシールド16B,16Cの側壁SW1,SW2上に存在する部分と予備主磁極15Pとの間に、予備非磁性層102が残る。この残った予備非磁性層102が非磁性層17Bになる。
【0117】
図16は、次の工程を示す。この工程では、まず、予備主磁極15Pおよびサイドシールド16B,16Cの上に、後に非磁性金属層58になる第1のマスク層と、後に絶縁層59になる第2のマスク層とを形成する。次に、第1および第2のマスク層をエッチングマスクとして、例えばイオンビームエッチングによって、予備主磁極15Pおよびサイドシールド16B,16Cのそれぞれの一部をエッチングする。これにより、第1のマスク層は非磁性金属層58となり、第2のマスク層は絶縁層59となり、予備主磁極15Pは主磁極15になる。このエッチングにより、主磁極15の上面15Tの形状が決定される。
【0118】
図13に示した工程から、図16に示した工程までが、本発明における「主磁極および非磁性層を形成する工程」に対応する。
【0119】
以下、図8および図9を参照して、図16に示した工程の後の工程について説明する。まず、積層体の上面全体の上に、例えばスパッタ法または化学的気相成長法によって、ギャップ層17Cを形成する。次に、例えばイオンビームエッチングによって、主磁極15の上面15Tの一部およびサイドシールド16B,16Cの上面の一部が露出するように、ギャップ層17C、非磁性金属層58および絶縁層59を選択的にエッチングする。次に、例えばフレームめっき法によって、サイドシールド16B,16Cおよびギャップ層17Cの上に上部シールド16Dを形成し、主磁極15の上にヨーク層41を形成する。
【0120】
次に、積層体の上面全体の上に非磁性層61を形成する。次に、例えばCMPによって、上部シールド16Dおよびヨーク層41が露出するまで、非磁性層61を研磨して、上部シールド16D、ヨーク層41および非磁性層61の上面を平坦化する。
【0121】
次に、非磁性層61の上面のうち、コイルの第2の部分20が配置される領域の上に絶縁層62を形成する。次に、例えばフレームめっき法によって、絶縁層62の上に第2の部分20を形成する。次に、第2の部分20を覆うように絶縁層63を形成する。次に、例えばフレームめっき法によって、上部シールド16D、ヨーク層41および絶縁層63の上に磁性層42を形成する。
【0122】
次に、積層体の上面全体を覆うように保護層70を形成する。次に、保護層70の上に配線や端子等を形成し、位置ABSの近傍で基板1を切断し、この切断によって形成された面を研磨して媒体対向面2を形成し、更に浮上用レールの作製等を行って、磁気ヘッドが完成する。
【0123】
本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法では、サイドシールド16B,16Cを形成した後、図13に示した工程において、下部シールド16Aおよびサイドシールド16B,16Cを覆うようにギャップ膜17Aを形成し、ギャップ膜17Aの上に、開口部101aを有する型101を形成する。そして、この型101を用いて、後に主磁極15になる予備主磁極15Pを形成する。主磁極15の第1および第2の側面S1,S2の形状は、サイドシールド16B,16Cの側壁SW1,SW2とギャップ膜17Aとによって決定される。一方、主磁極15の第3ないし第6の側面S3〜S6の形状は、型101によって形成される。
【0124】
また、図14に示した工程と図15に示した工程とにより、型101の除去後、非磁性層17Bを形成することによって、第2の領域R2にのみ非磁性層17Bを形成される。
【0125】
このような磁気ヘッドの製造方法によれば、前述のように隣接トラック消去の発生の抑制と記録特性の向上の両立を可能にする形状および位置関係を有する主磁極15、サイドシールド16B,16C、ギャップ膜17Aおよび非磁性層17Bを容易に形成することができる。
【0126】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、実施の形態では、主磁極15の下端15Lが第1の部分15L1と第2の部分15L2とを含み、主磁極15の上面15Tが第1の部分15T1と第2の部分15T2とを含んでいるが、主磁極15の下端15Lおよび上面15Tは、それぞれ、それらの全体が実質的に媒体対向面2に垂直な方向に延びていてもよい。
【0127】
また、実施の形態では、基体側に再生ヘッド部8を形成し、その上に、記録ヘッド部9を積層した構造の磁気ヘッドについて説明したが、この積層順序を逆にしてもよい。
【符号の説明】
【0128】
15…主磁極、16…記録シールド、16A…下部シールド、16B,16C…サイドシールド、16D…上部シールド、17…ギャップ部、17A…ギャップ膜、17B…非磁性層、SP1…第1の側部、SP2…第2の側部、S1…第1の側面、S2…第2の側面、S3…第3の側面、S4…第4の側面、S5…第5の側面、S6…第6の側面、SW1…第1の側壁、SW2…第2の側壁、F1…第1の壁面、F2…第2の壁面、F3…第3の壁面、F4…第4の壁面、F5…第5の壁面、F6…第6の壁面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録方式によって記録媒体に情報を記録するために用いられる垂直磁気記録用磁気ヘッドに関し、特に、主磁極とシールドを備えた垂直磁気記録用磁気ヘッドおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録再生装置における記録方式には、信号磁化の向きを記録媒体の面内方向(長手方向)とする長手磁気記録方式と、信号磁化の向きを記録媒体の面に対して垂直な方向とする垂直磁気記録方式とがある。垂直磁気記録方式は、長手磁気記録方式に比べて、記録媒体の熱揺らぎの影響を受けにくく、高い線記録密度を実現することが可能であると言われている。
【0003】
一般的に、垂直磁気記録用の磁気ヘッドとしては、長手磁気記録用の磁気ヘッドと同様に、読み出し用の磁気抵抗効果素子(以下、MR(Magnetoresistive)素子とも記す。)を有する再生ヘッドと、書き込み用の誘導型電磁変換素子を有する記録ヘッドとを、基板上に積層した構造のものが用いられる。記録ヘッドは、記録媒体の面に対して垂直な方向の磁界を発生する主磁極を備えている。主磁極は、例えば、一端部が記録媒体に対向する媒体対向面に配置されたトラック幅規定部と、このトラック幅規定部の他端部に連結され、トラック幅規定部よりも大きな幅を有する幅広部とを有している。トラック幅規定部は、ほぼ一定の幅を有している。垂直磁気記録方式の記録ヘッドには、高記録密度化のために、トラック幅の縮小と、記録特性、例えば重ね書きの性能を表わすオーバーライト特性の向上が求められる。
【0004】
ところで、ハードディスク装置等の磁気ディスク装置に用いられる磁気ヘッドは、一般的に、スライダに設けられる。スライダは、上記媒体対向面を有している。この媒体対向面は、空気流入端と空気流出端とを有している。そして、空気流入端から媒体対向面と記録媒体との間に流入する空気流によって、スライダは記録媒体の表面からわずかに浮上するようになっている。このスライダにおいて、一般的に、磁気ヘッドは媒体対向面における空気流出端近傍に配置される。磁気ディスク装置において、磁気ヘッドの位置決めは、例えばロータリーアクチュエータによって行なわれる。この場合、磁気ヘッドは、ロータリーアクチュエータの回転中心を中心とした円軌道に沿って記録媒体上を移動する。このような磁気ディスク装置では、磁気ヘッドのトラック横断方向の位置に応じて、スキューと呼ばれる、円形のトラックの接線に対する磁気ヘッドの傾きが生じる。
【0005】
特に、長手磁気記録方式に比べて記録媒体への書き込み能力が高い垂直磁気記録方式の磁気ディスク装置では、上述のスキューが生じると、あるトラックへの信号の記録時に、記録対象のトラックに隣接する1以上のトラックに記録された信号が消去されたり減衰したりする現象(以下、隣接トラック消去と言う。)が生じる場合がある。高記録密度化のためには、隣接トラック消去の発生を抑制する必要がある。
【0006】
上述のようなスキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制する技術としては、例えば、特許文献1ないし特許文献3に記載されているように、媒体対向面における主磁極の端面の幅を、基板の上面に近づくに従って小さくする技術が知られている。
【0007】
スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制する他の技術としては、特許文献1や、特許文献2に記載されているように、主磁極のトラック幅方向の両側に2つのサイドシールドを設ける技術が有効である。また、特許文献3に記載されているように、媒体対向面において主磁極の端面の周りを囲むように配置された端面を有するシールド(以下、ラップアラウンドシールドと言う。)を設ける技術も有効である。ラップアラウンドシールドは、主磁極に対して空気流入端側に配置された下部シールドと、主磁極に対して空気流出端側に配置された上部シールドと、主磁極のトラック幅方向の両側に配置された2つのサイドシールドとを含んでいる。これらの技術によれば、主磁極の端面より発生されてトラック幅方向に広がる磁束を取り込むことができることから、隣接トラック消去の発生を抑制することができる。
【0008】
また、特許文献4には、主磁極の形状を以下のような形状とする技術が開示されている。この技術による主磁極は、媒体対向面から所定の距離だけ離れた位置から媒体対向面までの第1の領域において互いに反対側に配置された第1および第2の側面と、第1の領域以外の第2の領域に配置された第3および第4の側面と、第1の領域と第2の領域との境界位置に配置され、第1の側面と第3の側面とを接続する第5の側面と、第1の領域と第2の領域との境界位置に配置され、第2の側面と第4の側面とを接続する第6の側面とを有している。トラック幅方向についての第1の側面と第2の側面の間隔は、基板の上面に近づくに従って小さくなっている。第1の領域と第2の領域との境界位置において、最も基板の上面に近い位置におけるトラック幅方向についての第3の側面と第4の側面の間隔は、最も基板の上面に近い位置におけるトラック幅方向についての第1の側面と第2の側面の間隔よりも大きい。第5の側面の幅と第6の側面の幅は、いずれも、基板の上面に近づくに従って大きくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−190518号公報
【特許文献2】特開2007−207419号公報
【特許文献3】米国特許第6,954,340B2号明細書
【特許文献4】特開2009−243350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、媒体対向面における端面の幅が基板の上面に近づくに従って小さくなる形状の主磁極に関しては、以下のような問題点がある。従来の主磁極の形成方法では、上記の形状の主磁極を形成すると、主磁極の側面の大部分が、主磁極の全周にわたって、基板の上面に垂直な方向に対して傾いた面となる。このような形状の主磁極では、主磁極の側面全体が基板の上面に対して垂直な場合に比べて、磁束の流れる方向に対して垂直な主磁極の断面積が小さくなる。この形状の主磁極では、特にトラック幅規定部と幅広部との境界の近傍の部分において多くの磁束を通過させることができなくなり、その結果、オーバーライト特性等の記録特性が低下してしまう。
【0011】
上記の問題点に対しては、前述の特許文献4に開示された技術が有効である。この技術によれば、トラック幅規定部と幅広部との境界の近傍の部分において、磁束の流れる方向に対して垂直な主磁極の断面積が大きくなるため、多くの磁束を通過させることができる。これにより、オーバーライト特性等の記録特性を向上させることができる。
【0012】
ここで、特許文献4に開示された技術による前述の形状の主磁極と2つのサイドシールドとを有する磁気ヘッドの構成について考える。2つのサイドシールドの各々は、主磁極の2つの側部の各々に対向する側壁を有している。2つのサイドシールドによって、主磁極の端面より発生されてトラック幅方向の両側に広がる磁束を十分に取り込めるようにするためには、媒体対向面において、主磁極の側部とサイドシールドの側壁との間隔は、小さく且つ均一であることが好ましい。
【0013】
しかし、媒体対向面以外の広い領域において、主磁極の側部とサイドシールドの側壁とが小さな間隔で対向していると、主磁極からサイドシールドへの磁束の漏れが多くなり、オーバーライト特性等の記録特性が低下してしまう。これを防止するために、媒体対向面に垂直な方向についてのサイドシールドの寸法を小さくすると、サイドシールドの体積が小さくなって、サイドシールドの本来の機能が損なわれる。
【0014】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、主磁極とシールドを備えた垂直磁気記録用磁気ヘッドであって、隣接トラック消去の発生の抑制と記録特性の向上を両立できるようにした垂直磁気記録用磁気ヘッドおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドは、
記録媒体に対向する媒体対向面と、
記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生するコイルと、
媒体対向面に配置された端面を有し、コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する主磁極と、
磁性材料よりなる記録シールドと、
非磁性材料よりなり、主磁極と記録シールドとの間に設けられたギャップ部と、
上面を有する基板とを備えている。
【0016】
コイル、主磁極、記録シールドおよびギャップ部は、基板の上面の上方に配置されている。記録シールドは、第1および第2のサイドシールドと、第1および第2のサイドシールドに接する上部シールドとを含んでいる。第1および第2のサイドシールドは、媒体対向面において主磁極の端面に対してトラック幅方向の両側に配置された2つの端面を有している。上部シールドは、媒体対向面において主磁極の端面に対して記録媒体の進行方向の前側に配置された端面を有している。
【0017】
主磁極は、トラック幅方向の両側に配置された第1および第2の側部を有している。第1のサイドシールドは、主磁極の第1の側部に面した第1の側壁を有している。第2のサイドシールドは、主磁極の第2の側部に面した第2の側壁を有している。ギャップ部は、第1および第2の側壁に接するように配置されたギャップ膜と、媒体対向面から離れた位置において、ギャップ膜と第1および第2の側部との間に配置された非磁性層とを含んでいる。
【0018】
第1の側部は、媒体対向面から所定の距離だけ離れた位置から媒体対向面までの第1の領域に配置された第1の側面と、第1の領域以外の第2の領域に配置された第3の側面とを有している。第2の側部は、第1の領域に配置された第2の側面と、第2の領域に配置された第4の側面とを有している。非磁性層は、第1の側面と第1の側壁との間および第2の側面と第2の側壁との間には存在せず、第3の側面と第1の側壁との間および第4の側面と第2の側壁との間に存在している。トラック幅方向における第3の側面と第1の側壁の間隔は、トラック幅方向における第1の側面と第1の側壁の間隔よりも大きい。トラック幅方向における第4の側面と第2の側壁の間隔は、トラック幅方向における第2の側面と第2の側壁の間隔よりも大きい。
【0019】
トラック幅方向における第1の側面と第2の側面の間隔は、基板の上面に近づくに従って小さくなっている。第3および第4の側面が基板の上面に垂直な方向に対してなす角度は、第1および第2の側面が基板の上面に垂直な方向に対してなす角度よりも小さい。
【0020】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドにおいて、第1の領域と第2の領域の境界から媒体対向面までの距離は、80〜620nmの範囲内であってもよい。また、記録シールドは、更に、第1および第2のサイドシールドに接する下部シールドを含んでいてもよい。下部シールドは、媒体対向面において主磁極の端面に対して記録媒体の進行方向の後側に配置された端面を有している。
【0021】
また、本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドにおいて、主磁極は、媒体対向面から遠ざかるに従ってトラック幅方向における第1の側部と第2の側部の間隔が大きくなる部分を含んでいてもよい。また、第1の側壁は、第1の領域内に配置された第1の壁面と、第1の壁面に対して媒体対向面から遠い位置に配置された第3の壁面とを有していてもよい。第2の側壁は、第1の領域内に配置された第2の壁面と、第2の壁面に対して媒体対向面から遠い位置に配置された第4の壁面とを有していてもよい。また、第1の領域の少なくとも一部において、トラック幅方向における第1の壁面と第2の壁面の間隔は、媒体対向面から遠ざかるに従って大きくなっていてもよい。第2の領域の少なくとも一部において、トラック幅方向における第3の壁面と第4の壁面の間隔は、媒体対向面から遠ざかるに従って大きくなっていてもよい。また、第1および第2のサイドシールドにおける基板の上面から最も遠い位置において、前記第2の領域の少なくとも一部において第3および第4の壁面が媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度は、第1の領域の少なくとも一部において第1および第2の壁面が媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度よりも大きくてもよい。
【0022】
また、第1の側壁は、更に、第1の壁面と第3の壁面とを連結する第5の壁面を有し、第2の側壁は、更に、第2の壁面と第4の壁面とを連結する第6の壁面を有していてもよい。第1および第2のサイドシールドにおける基板の上面から最も遠い位置において、第5および第6の壁面が媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度は、前記第2の領域の少なくとも一部において第3および第4の壁面が媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度よりも大きくてもよい。
【0023】
第1および第2のサイドシールドにおける基板の上面から最も遠い位置において、第5および第6の壁面と媒体対向面の間の最短距離は、50〜500nmの範囲内であってもよい。
【0024】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法は、
第1および第2のサイドシールドを形成する工程と、
第1および第2のサイドシールドの形成後、ギャップ膜を形成する工程と、
ギャップ膜の形成後、主磁極および非磁性層を形成する工程と、
主磁極および非磁性層の形成後、上部シールドを形成する工程と、
コイルを形成する工程とを備えている。
【0025】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法において、主磁極および非磁性層を形成する工程は、
ギャップ膜の上に、開口部を有する型を形成する工程と、
型を用いて、後に主磁極になる予備主磁極を形成する工程と、
予備主磁極の形成後、型を除去する工程と、
型の除去後、第1および第2のサイドシールド、ギャップ膜および予備主磁極を覆うように、後に非磁性層になる予備非磁性層を形成する工程と、
第1および第2のサイドシールドおよび予備主磁極が露出するまで予備非磁性層を研磨する工程とを含んでいてもよい。
【0026】
また、本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法において、記録シールドは、更に、第1および第2のサイドシールドに接する下部シールドを含み、下部シールドは、媒体対向面において主磁極の端面に対して記録媒体の進行方向の後側に配置された端面を有していてもよい。この場合、垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法は、更に、第1および第2のサイドシールドの形成前に、下部シールドを形成する工程を備え、第1および第2のサイドシールドは、下部シールドの上に形成される。
【発明の効果】
【0027】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドおよびその製造方法では、主磁極において、トラック幅方向における第1の側面と第2の側面の間隔は、基板の上面に近づくに従って小さくなっている。これにより、媒体対向面における主磁極の端面の、トラック幅方向についての幅は、基板の上面に近づくに従って小さくなる。これにより、本発明によれば、隣接トラック消去の発生を抑制することができる。
【0028】
また、本発明では、第3および第4の側面が基板の上面に垂直な方向に対してなす角度は、第1および第2の側面が基板の上面に垂直な方向に対してなす角度よりも小さい。これにより、本発明によれば、第2の領域において、磁束の流れる方向に対して垂直な主磁極の断面積を大きくすることができ、その結果、記録特性を向上させることができる。
【0029】
また、本発明では、非磁性層は、第1の側面と第1の側壁との間および第2の側面と第2の側壁との間には存在せず、第3の側面と第1の側壁との間および第4の側面と第2の側壁との間に存在している。そして、トラック幅方向における第3の側面と第1の側壁の間隔は、トラック幅方向における第1の側面と第1の側壁の間隔よりも大きく、トラック幅方向における第4の側面と第2の側壁の間隔は、トラック幅方向における第2の側面と第2の側壁の間隔よりも大きい。これにより、本発明によれば、サイドシールドの機能を損なうことなく、主磁極からサイドシールドへの磁束の漏れを抑制することができる。以上のことから、本発明によれば、隣接トラック消去の発生の抑制と記録特性の向上を両立させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極、2つのサイドシールド、下部シールドおよびギャップ部の媒体対向面の近傍の部分を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態における主磁極の媒体対向面の近傍の部分を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態における主磁極、2つのサイドシールドおよびギャップ部の媒体対向面の近傍の部分を示す平面図である。
【図4】図3の一部を拡大して示す平面図である。
【図5】本発明の一実施の形態における主磁極および2つのサイドシールドの媒体対向面に配置された端面を示す正面図である。
【図6】図4の6−6線で示す位置における断面を示す断面図である。
【図7】図4の7−7線で示す位置における断面を示す断面図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る磁気ヘッドの構成を示す断面図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る磁気ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法における一工程を示す説明図である。
【図11】図10に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図12】図11に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図13】図12に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図14】図13に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図15】図14に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図16】図15に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1ないし図9を参照して、本発明の一実施の形態に係る磁気ヘッドの構成について説明する。本実施の形態に係る磁気ヘッドは、垂直磁気記録用である。図1は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極、2つのサイドシールド、下部シールドおよびギャップ部の媒体対向面の近傍の部分を示す斜視図である。図2は、本実施の形態における主磁極の媒体対向面の近傍の部分を示す斜視図である。図3は、本実施の形態における主磁極、2つのサイドシールドおよびギャップ部の媒体対向面の近傍の部分を示す平面図である。図4は、図3の一部を拡大して示す平面図である。図5は、本実施の形態における主磁極および2つのサイドシールドの媒体対向面に配置された端面を示す正面図である。図6は、図4の6−6線で示す位置における断面を示す断面図である。図7は、図4の7−7線で示す位置における断面を示す断面図である。図8は、本実施の形態に係る磁気ヘッドの構成を示す断面図である。図9は、本実施の形態に係る磁気ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。図1ないし図5および図7おいて記号TWで示す矢印は、トラック幅方向を表している。図8は媒体対向面および基板の上面に垂直な断面を示している。また、図8において記号Tで示す矢印は、記録媒体の進行方向を表している。
【0032】
図8に示したように、本実施の形態に係る磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面2を備えている。また、図8および図9に示したように、磁気ヘッドは、アルミニウムオキサイド・チタニウムカーバイド(Al2O3・TiC)等のセラミック材料よりなり、上面1aを有する基板1と、この基板1の上面1a上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層81と、この絶縁層81の上に配置されたヒーター82と、絶縁層81およびヒーター82を覆うように配置された絶縁材料よりなる絶縁層83とを備えている。絶縁層81,83は、例えばアルミナ(Al2O3)によって形成されている。ヒーター82は、媒体対向面2の一部を突出させるための熱を発生する。
【0033】
磁気ヘッドは、更に、ヒーター82に対して記録媒体の進行方向Tの前側(トレーリング端側)に配置された再生ヘッド部8を備えている。再生ヘッド部8は、絶縁層83の上に配置された磁性材料よりなる第1の再生シールド層3と、第1の再生シールド層3の上に配置された絶縁膜である第1の再生シールドギャップ膜4と、この第1の再生シールドギャップ膜4の上に配置された再生素子としてのMR(磁気抵抗効果)素子5と、このMR素子5に接続された図示しない2つのリードと、MR素子5およびリードの上に配置された絶縁膜である第2の再生シールドギャップ膜6と、この第2の再生シールドギャップ膜6の上に配置された磁性材料よりなる第2の再生シールド層7とを有している。
【0034】
MR素子5の一端部は、媒体対向面2に配置されている。MR素子5には、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子あるいはTMR(トンネル磁気抵抗効果)素子等の磁気抵抗効果を示す感磁膜を用いた素子を用いることができる。GMR素子としては、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ平行な方向に流すCIP(Current In Plane)タイプでもよいし、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ垂直な方向に流すCPP(Current Perpendicular to Plane)タイプでもよい。
【0035】
磁気ヘッドは、更に、再生ヘッド部8に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置された記録ヘッド部9と、再生ヘッド部8と記録ヘッド部9の間に配置された膨張層84、センサ85および非磁性部86とを備えている。非磁性部86は、非磁性材料によって形成されている。非磁性部86の材料としては、例えばアルミナを用いることができる。
【0036】
非磁性部86は、非磁性層87,88,89を有している。非磁性層87は、第2の再生シールド層7の上に配置されている。膨張層84は、非磁性層87の上に配置されている。非磁性層88は、膨張層84の上に配置されている。センサ85は、非磁性層88の上に配置されている。非磁性層89は、センサ85を覆うように配置されている。
【0037】
記録ヘッド部9は、コイルと、主磁極15と、記録シールド16と、ギャップ部17とを有している。コイルは、第1の部分10と第2の部分20とを含んでいる。第1の部分10と第2の部分20は、いずれも銅等の導電材料によって形成されている。また、第1の部分10と第2の部分20は、いずれも平面渦巻き形状をなしている。第1の部分10と第2の部分20は、直列または並列に接続されている。
【0038】
第1および第2の部分10,20を含むコイルは、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。主磁極15は、媒体対向面2に配置された端面を有し、コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。図8は、媒体対向面2に配置された主磁極15の端面と交差し、媒体対向面2および基板1の上面1aに垂直な断面を示している。
【0039】
記録シールド16は、媒体対向面2において主磁極15の端面の周りを囲むように配置された端面を有している。記録シールド16は、磁性材料によって形成されている。記録シールド16の材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。
【0040】
記録シールド16は、磁気的に連結された下部シールド16A、第1のサイドシールド16B、第2のサイドシールド16Cおよび上部シールド16Dを有している。サイドシールド16B,16Cは、主磁極15のトラック幅方向TWの両側に配置されている。下部シールド16Aは、サイドシールド16B,16Cに対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されて、サイドシールド16B,16Cに接している。上部シールド16Dは、サイドシールド16B,16Cに対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されて、サイドシールド16B,16Cに接している。
【0041】
下部シールド16Aは、媒体対向面2において主磁極15の端面に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置された端面16Aaを有している。サイドシールド16B,16Cは、媒体対向面2において主磁極15の端面に対してトラック幅方向TWの両側に配置された2つの端面16Ba,16Caを有している。上部シールド16Dは、媒体対向面2において主磁極15の端面に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置された端面16Daを有している。
【0042】
記録ヘッド部9は、更に、第1の帰磁路部30および第2の帰磁路部40を有している。第1および第2の帰磁路部30,40は、いずれも磁性材料によって形成されている。第1および第2の帰磁路部30,40の材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。第1の帰磁路部30は、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されて記録シールド16と主磁極15とに接触し、記録シールド16と主磁極15とを磁気的に連結している。第2の帰磁路部40は、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されて記録シールド16と主磁極15とに接触し、記録シールド16と主磁極15とを磁気的に連結している。
【0043】
第1の帰磁路部30は、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されたヨーク層31と、ヨーク層31と記録シールド16とを連結する第1の連結部32と、媒体対向面2から離れた位置に配置されてヨーク層31と主磁極15とを連結する第2の連結部35とを含んでいる。第1の連結部32は、磁性層33,34を含んでいる。第2の連結部35は、磁性層36,37,38を含んでいる。
【0044】
ヨーク層31は、非磁性層89の上に配置されている。磁性層33,36は、いずれもヨーク層31の上に配置されている。磁性層33は、媒体対向面2の近傍に配置されている。磁性層36は、磁性層33に対して、媒体対向面2からより遠い位置に配置されている。ヨーク層31および磁性層33は、それぞれ、媒体対向面2に向いた端面を有し、これらの端面は、媒体対向面2から離れた位置に配置されている。
【0045】
磁気ヘッドは、更に、ヨーク層31の周囲において非磁性層89の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層51と、ヨーク層31および磁性層33,36とコイルの第1の部分10との間に介在する絶縁材料よりなる絶縁膜52と、第1の部分10の巻線間に配置された絶縁材料よりなる絶縁層53と、磁性層33,36および第1の部分10の周囲に配置された絶縁材料よりなる絶縁層54とを備えている。第1の部分10、磁性層33,36、絶縁膜52および絶縁層53,54の上面は平坦化されている。絶縁層51,54および絶縁膜52は、例えばアルミナによって形成されている。絶縁層53は、例えばフォトレジストによって形成されている。第1の部分10は、第1の帰磁路部30の一部である磁性層36の周りに巻かれている。
【0046】
磁性層34は、磁性層33および絶縁層54の上に配置されている。磁性層37は、磁性層36の上に配置されている。磁性層34は、媒体対向面2に配置された端面を有している。磁気ヘッドは、更に、磁性層34,37の周囲において第1の部分10、絶縁膜52および絶縁層53,54の上面の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層55を備えている。絶縁層55は、例えばアルミナによって形成されている。磁性層34,37および絶縁層55の上面は、平坦化されている。
【0047】
下部シールド16Aは、磁性層34の上に配置されている。磁性層38は、磁性層37の上に配置されている。磁気ヘッドは、更に、下部シールド16Aおよび磁性層38の周囲において、磁性層34の上面の一部および絶縁層55の上面の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層56を備えている。絶縁層56は、例えばアルミナによって形成されている。
【0048】
図2に示したように、主磁極15は、基板1の上面1aにより近い端部である下端部15Lと、下端部15Lとは反対側の上面15Tと、トラック幅方向TWの両側に配置された第1および第2の側部SP1,SP2とを有している。サイドシールド16Bは、主磁極15の第1の側部SP1に面した第1の側壁SW1を有している。サイドシールド16Cは、主磁極15の第2の側部SP2に面した第2の側壁SW2を有している。
【0049】
ギャップ部17は、非磁性材料よりなり、主磁極15と記録シールド16との間に設けられている。ギャップ部17は、ギャップ膜17Aと非磁性層17Bとギャップ層17Cとを含んでいる。ギャップ膜17Aは、第1および第2の側壁SW1,SW2に接するように配置されている。非磁性層17Bは、媒体対向面2から離れた位置において、ギャップ膜17Aと第1および第2の側部SP1,SP2との間に配置されている。ギャップ層17Cは、少なくとも主磁極15と上部シールド16Dとの間に配置されている。
【0050】
サイドシールド16B,16Cは、下部シールド16Aの上に配置され、下部シールド16Aに接している。ギャップ膜17Aは、サイドシールド16B,16Cの側壁SW1,SW2、下部シールド16Aの上面および絶縁層56の上面に沿って配置されている。ギャップ膜17Aを構成する非磁性材料は、絶縁材料でもよいし、非磁性金属材料でもよい。ギャップ膜17Aを構成する絶縁材料としては、例えばアルミナが用いられる。ギャップ膜17Aを構成する非磁性金属材料としては、例えばRuが用いられる。ギャップ膜17Aには、磁性層38の上面を露出させる開口部が形成されている。
【0051】
主磁極15は、下部シールド16Aおよび絶縁層56の上面と主磁極15との間にギャップ膜17Aが介在するように、下部シールド16Aおよび絶縁層56の上に配置されている。また、図1に示したように、媒体対向面2において、主磁極15とサイドシールド16B,16Cとの間にも、ギャップ膜17Aが介在している。
【0052】
媒体対向面2から離れた位置において、主磁極15の下端部15Lは、磁性層38の上面に接している。主磁極15は、金属磁性材料によって形成されている。主磁極15の材料としては、例えば、NiFe、CoNiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。主磁極15の形状については、後で詳しく説明する。
【0053】
磁気ヘッドは、更に、媒体対向面2から離れた位置において、主磁極15の上面15Tの一部の上に配置された非磁性金属材料よりなる非磁性金属層58と、この非磁性金属層58の上面の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層59とを備えている。非磁性金属層58は、例えばRu、NiCrまたはNiCuによって形成されている。絶縁層59は、例えばアルミナによって形成されている。
【0054】
ギャップ層17Cは、主磁極15、非磁性金属層58および絶縁層59を覆うように配置されている。ギャップ層17Cの材料は、アルミナ等の非磁性絶縁材料でもよいし、Ru、NiCu、Ta、W、NiB、NiP等の非磁性導電材料でもよい。
【0055】
上部シールド16Dは、サイドシールド16B,16Cおよびギャップ層17Cの上に配置され、サイドシールド16B,16Cに接している。媒体対向面2において、上部シールド16Dの端面の一部は、主磁極15の端面に対して、ギャップ層17Cの厚みによる所定の間隔を開けて配置されている。ギャップ層17Cの厚みは、5〜60nmの範囲内であることが好ましく、例えば30〜60nmの範囲内である。主磁極15の端面は、ギャップ層17Cに隣接する辺を有し、この辺はトラック幅を規定している。
【0056】
第2の帰磁路部40は、ヨーク層41と磁性層42とを含んでいる。ヨーク層41は、媒体対向面2から離れた位置において主磁極15の上に配置されている。磁気ヘッドは、更に、上部シールド16Dおよびヨーク層41の周囲に配置された非磁性層61を備えている。非磁性層61は、例えば無機絶縁材料によって形成されている。この無機絶縁材料としては、例えばアルミナまたはシリコン酸化物が用いられる。上部シールド16D、ヨーク層41および非磁性層61の上面は平坦化されている。
【0057】
磁気ヘッドは、更に、ヨーク層41および非磁性層61の上面の一部の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層62を備えている。絶縁層62は、例えばアルミナによって形成されている。コイルの第2の部分20の少なくとも一部は、絶縁層62の上に配置されている。磁気ヘッドは、更に、第2の部分20を覆うように配置された絶縁材料よりなる絶縁層63を備えている。絶縁層63は、例えばフォトレジストによって形成されている。
【0058】
磁性層42は、上部シールド16D、ヨーク層41および絶縁層63の上に配置され、上部シールド16Dとヨーク層41とを接続している。また、磁性層42は、媒体対向面2に配置された端面を有している。第2の部分20は、第2の帰磁路部40の一部である磁性層42のうち、ヨーク層41の上に配置された部分の周りに巻かれている。
【0059】
磁気ヘッドは、更に、非磁性材料よりなり、磁性層42および絶縁層62,63を覆うように配置された保護層70を備えている。保護層70は、例えば、アルミナ等の無機絶縁材料によって形成されている。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態に係る磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面2と再生ヘッド部8と記録ヘッド部9とを備えている。再生ヘッド部8と記録ヘッド部9は、基板1の上に積層されている。記録ヘッド部9は、再生ヘッド部8に対して、記録媒体の進行方向Tの前側(トレーリング端側)に配置されている。
【0061】
記録ヘッド部9は、第1の部分10および第2の部分20を含むコイルと、主磁極15と、記録シールド16と、ギャップ部17と、第1および第2の帰磁路部30,40とを有している。記録シールド16は、下部シールド16Aと、2つのサイドシールド16B,16Cと、上部シールド16Dとを有している。ギャップ部17は、ギャップ膜17Aと非磁性層17Bとギャップ層17Cとを含んでいる。
【0062】
第1の帰磁路部30は、ヨーク層31と第1および第2の連結部32,35とを含んでいる。ヨーク層31は、主磁極15に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されている。第1の連結部32は、磁性層33,34を含んでいる。第2の連結部35は、磁性層36,37,38を含んでいる。図8に示したように、第1の帰磁路部30は、主磁極15、ギャップ部17(ギャップ膜17A)、記録シールド16および第1の帰磁路部30によって囲まれた第1の空間S10が形成されるように、記録シールド16と主磁極15とを接続し、これにより、記録シールド16と主磁極15とを磁気的に連結している。コイルの第1の部分10は、第1の空間S10を通過している。
【0063】
第2の帰磁路部40は、ヨーク層41と磁性層42とを含んでいる。図8に示したように、第2の帰磁路部40は、主磁極15、ギャップ部17(ギャップ層17C)、記録シールド16および第2の帰磁路部40によって囲まれた第2の空間S20が形成されるように、記録シールド16と主磁極15とを接続し、これにより、記録シールド16と主磁極15とを磁気的に連結している。コイルの第2の部分20は、第2の空間S20を通過している。
【0064】
本実施の形態に係る磁気ヘッドは、更に、ヒーター82と、膨張層84と、センサ85と、非磁性部86とを備えている。膨張層84、センサ85および非磁性部86は、再生ヘッド部8と記録ヘッド部9の間に配置されている。ヒーター82は、膨張層84およびセンサ85に対して、記録媒体の進行方向Tの後側(リーディング端側)に配置されている。非磁性部86は、膨張層84およびセンサ85の周囲に配置されている。
【0065】
以下、ヒーター82、膨張層84およびセンサ85について詳しく説明する。ヒーター82および膨張層84は、再生ヘッド部8および記録ヘッド部9と記録媒体の表面との間の距離を小さくするために、媒体対向面2の一部を突出させるためのものである。ヒーター82は、通電されることによって、媒体対向面2の一部を突出させるための熱を発生する。膨張層84は、ヒーター82によって発生された熱を受けて膨張して、媒体対向面2の一部を突出させる。
【0066】
膨張層84は、非磁性部86に比べて、熱伝導率および線熱膨張係数が大きい材料によって形成されている。膨張層84の材料としては、金属材料を用いることができる。膨張層84を構成する金属材料は、非磁性金属材料でもよいし、磁性金属材料でもよい。膨張層84を構成する非磁性金属材料としては、例えばAl、Cu、Auのいずれかを用いることができる。膨張層84を構成する磁性金属材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。
【0067】
磁気ヘッドの構成要素は、ヒーター82によって発生された熱を受けて膨張する。特に、膨張層84は、その周囲に配置された非磁性部86に比べて、熱伝導率が大きい材料によって形成されている。そのため、膨張層84では、非磁性部86に比べて、ヒーター82によって発生された熱が速やかに均一に分布する。また、膨張層84は、非磁性部86に比べて、線熱膨張係数が大きい材料によって形成されている。そのため、膨張層84は、ヒーター82によって発生された熱を受けて、非磁性部86に比べて、速やかに、且つ大きく膨張して、媒体対向面2の一部を突出させる。これにより、再生ヘッド部8および記録ヘッド部9と記録媒体の表面との間の距離が小さくなる。
【0068】
センサ85は、媒体対向面2の一部が記録媒体に接触したことを検出するためのものである。センサ85は、媒体対向面2の一部が記録媒体に接触したときに自身の温度変化によって抵抗値が変化する抵抗体である。センサ85の材料としては、温度変化に対する抵抗値の変化の割合、すなわち抵抗の温度係数がある程度大きい金属材料や半導体材料が用いられる。具体的には、センサ85の材料としては、例えば、NiFe、W、Cu、Ni、Ptのいずれかを用いることができる。
【0069】
媒体対向面2の一部が記録媒体に接触すると、接触による摩擦熱によって、媒体対向面2のうち、記録媒体に接触した部分およびその近傍の部分の温度が上昇する。このような温度の上昇に伴って、センサ85自身の温度も上昇する。その結果、センサ85の抵抗値が変化する。そのため、センサ85に接続された図示しない2つのリードを介してセンサ85の抵抗値を測定することによって、媒体対向面2の一部が記録媒体に接触したことを検出することができる。
【0070】
以下、図1ないし図4を参照して、主磁極15、サイドシールド16B,16C、ギャップ膜17Aおよび非磁性層17Bについて詳しく説明する。前述のように、主磁極15は、下端部15Lと上面15Tと第1および第2の側部SP1,SP2とを有している。
【0071】
図2に示したように、下端部15Lは、媒体対向面2に配置された第1の端縁とその反対側の第2の端縁とを有する第1の部分15L1と、この第1の部分15L1よりも媒体対向面2から遠い位置に配置され、第2の端縁において第1の部分15L1に接続された第2の部分15L2とを含んでいる。第1の部分15L1の少なくとも一部における任意の位置の基板1の上面1aからの距離は、この任意の位置が媒体対向面2に近づくに従って大きくなっている。第2の部分15L2は、実質的に媒体対向面2に垂直な方向に延在している。第1の部分15L1の少なくとも一部が媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度は、例えば12°〜45°の範囲内である。なお、第1の部分15L1は、媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度が互いに異なる2つの部分を有していてもよい。
【0072】
上面15Tは、媒体対向面2に配置された第1の端縁とその反対側の第2の端縁とを有する第1の部分15T1と、この第1の部分15T1よりも媒体対向面2から遠い位置に配置され、第2の端縁において第1の部分15T1に接続された第2の部分15T2とを含んでいる。第1の部分15T1における任意の位置の基板1の上面1aからの距離は、この任意の位置が媒体対向面2に近づくに従って小さくなっている。第2の部分15T2は、実質的に媒体対向面2に垂直な方向に延在している。第1の部分15T1が媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度は、例えば12°〜45°の範囲内である。なお、第1の部分15T1は、媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度が互いに異なる2つの部分を有していてもよい。
【0073】
第1の側部SP1は、第1の側面S1、第3の側面S3および第5の側面S5を含んでいる。第2の側部SP2は、第2の側面S2、第4の側面S4および第6の側面S6を含んでいる。第1および第2の側面S1,S2は、媒体対向面2から所定の距離だけ離れた位置から媒体対向面2までの第1の領域R1に配置されている。第3および第4の側面S3,S4は、第1の領域R1以外の第2の領域R2に配置されている。第5の側面S5は、第1の領域R1と第2の領域R2との境界位置に配置され、第1の側面S1と第3の側面S3とを接続している。第6の側面S6は、第1の領域R1と第2の領域R2との境界位置に配置され、第2の側面S2と第4の側面S4とを接続している。図2および図4では、領域R1と領域R2の境界を二点鎖線で示している。領域R1と領域R2の境界から媒体対向面2までの距離D1(図4参照)は、80〜620nmの範囲内であることが好ましく、120〜230nmの範囲内であることがより好ましい。
【0074】
トラック幅方向TWにおける第1の側面S1と第2の側面S2の間隔は、基板1の上面1aに近づくに従って小さくなっている。これにより、媒体対向面2における主磁極15の端面の、トラック幅方向TWについての幅は、基板1の上面1aに近づくに従って小さくなる。第1の側面S1が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度θS1と、第2の側面S2が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度θS2は、例えば7°〜17°の範囲内であり、10°〜15°の範囲内であることが好ましい。第3および第4の側面S3,S4が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は、角度θS1,θS2よりも小さい。
【0075】
ここで、トラック幅方向TWについての側面S3,S4の間隔が基板1の上面1aに近づくに従って小さくなる場合には、側面S3,S4の各々が基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度を正の値で表し、トラック幅方向TWについての側面S3,S4の間隔が基板1の上面1aに近づくに従って大きくなる場合には、側面S3,S4の各々が基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度を負の値で表す。この場合、側面S3,S4の各々が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は、例えば−7°〜7°の範囲内であり、−7°〜0°の範囲内であることが好ましい。図7に示した例では、側面S3,S4が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は0°である。
【0076】
第1の領域R1と第2の領域R2との境界位置において、最も主磁極15の下端部15Lに近い位置におけるトラック幅方向TWについての側面S3,S4の間隔は、最も下端部15Lに近い位置におけるトラック幅方向TWについての側面S1,S2の間隔よりも大きい。第5の側面S5の幅と第6の側面S6の幅は、いずれも、下端部15Lに近づくに従って大きくなっている。
【0077】
主磁極15は、媒体対向面2から遠ざかるに従ってトラック幅方向TWにおける第1の側部SP1と第2の側部SP2の間隔が大きくなる部分を含んでいる。図4に示した例では、第1の領域R1の少なくとも一部において、トラック幅方向TWにおける第1の側面S1と第2の側面S2の間隔は、媒体対向面2から遠ざかるに従って大きくなっている。また、第2の領域R2において、トラック幅方向TWにおける第3の側面S3と第4の側面S4の間隔は、媒体対向面2から遠ざかるに従って大きくなっている。
【0078】
図4に示したように、サイドシールド16Bは第1の側壁SW1を有し、サイドシールド16Cは第2の側壁SW2を有している。ギャップ膜17Aは、第1および第2の側壁SW1,SW2に接するように配置されている。ギャップ膜17Aの厚みは、30〜120nmの範囲内であることが好ましく、50〜80nmの範囲内であることがより好ましい。
【0079】
非磁性層17Bは、媒体対向面2から離れた位置において、ギャップ膜17Aと第1および第2の側部SP1,SP2との間に配置されている。非磁性層17Bは、第1の側面S1と第1の側壁SW1との間および第2の側面S2と第2の側壁SW2との間には存在せず、第3の側面S3と第1の側壁SW1との間および第4の側面S4と第2の側壁SW2との間に存在している。トラック幅方向TWにおける第3の側面S3と第1の側壁SW1の間隔は、トラック幅方向TWにおける第1の側面S1と第1の側壁SW1の間隔よりも大きい。また。トラック幅方向TWにおける第4の側面S4と第2の側壁SW2の間隔は、トラック幅方向TWにおける第2の側面S2と第2の側壁SW2の間隔よりも大きい。
【0080】
第1の側壁SW1は、第1の領域R1内に配置された第1の壁面F1と、第1の壁面F1に対して媒体対向面2から遠い位置に配置された第3の壁面F3と、第1の壁面F1と第3の壁面F3とを連結する第5の壁面F5とを有している。第2の側壁SW2は、第1の領域R1内に配置された第2の壁面F2と、第2の壁面F2に対して媒体対向面2から遠い位置に配置された第4の壁面F4と、第2の壁面F2と第4の壁面F4とを連結する第6の壁面F6とを有している。
【0081】
第1の領域R1の少なくとも一部において、トラック幅方向TWにおける第1の壁面F1と第2の壁面F2の間隔は、媒体対向面2から遠ざかるに従って大きくなっている。また、第2の領域R2の少なくとも一部において、トラック幅方向TWにおける第3の壁面F3と第4の壁面F4の間隔は、媒体対向面2から遠ざかるに従って大きくなっている。
【0082】
図4に示したように、第1および第2のサイドシールド16B,16Cにおける基板1の上面1aから最も遠い位置において、前記第2の領域R2の少なくとも一部において第3の壁面F3が媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度θF3および前記第2の領域R2の少なくとも一部において第4の壁面F4が媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度θF4は、前記第1の領域R1の少なくとも一部において第1の壁面F1が媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度θF1および前記第1の領域R1の少なくとも一部において第2の壁面F2が媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度θF2よりも大きい。第3の側面S3が媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度はθF1と等しく、第4の側面S4が媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度はθF2と等しい。
【0083】
また、第1および第2のサイドシールド16B,16Cにおける基板1の上面1aから最も遠い位置において、第5および第6の壁面F5,F6が媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度は、角度θF3,θF4よりも大きい。図4に示した例では、第1および第2のサイドシールド16B,16Cにおける基板1の上面1aから最も遠い位置において、第5および第6の壁面F5,F6が媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度は90°である。
【0084】
第1および第2のサイドシールド16B,16Cにおける基板1の上面1aから最も遠い位置において、第5および第6の壁面F5,F6と媒体対向面2の間の最短距離D2(図4参照)は、50〜500nmの範囲内であることが好ましく、70〜150nmの範囲内であることがより好ましい。
【0085】
図3に示したように、第1の側壁SW1は、更に、第3の壁面F3に対して媒体対向面2から遠い位置に配置された第7の壁面F7と、第3の壁面F3と第7の壁面F7とを連結する第9の壁面F9とを有している。第2の側壁SW2は、更に、第4の壁面F4に対して媒体対向面2から遠い位置に配置された第8の壁面F8と、第4の壁面F4と第8の壁面F8とを連結する第10の壁面F10とを有している。
【0086】
トラック幅方向TWにおける第7の壁面F7と第1の側部SP1の間隔は、トラック幅方向TWにおける第3の壁面F3と第1の側部SP1の間隔よりも大きい。また、トラック幅方向TWにおける第8の壁面F8と第2の側部SP2の間隔は、トラック幅方向TWにおける第4の壁面F4と第2の側部SP2の間隔よりも大きい。
【0087】
第1および第2のサイドシールド16B,16Cにおける基板1の上面1aから最も遠い位置において、第7および第8の壁面F7,F8が媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度は例えば角度θF3,θF4と等しく、第9および第10の壁面F9,F10が媒体対向面2に垂直な方向に対してなす角度は例えば90°である。
【0088】
次に、本実施の形態に係る磁気ヘッドの作用および効果について説明する。この磁気ヘッドでは、記録ヘッド部9によって記録媒体に情報を記録し、再生ヘッド部8によって、記録媒体に記録されている情報を再生する。記録ヘッド部9において、第1の部分10および第2の部分20を含むコイルは、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。第1の部分10によって発生された磁界に対応する磁束は、第1の帰磁路部30と主磁極15を通過する。第2の部分20によって発生された磁界に対応する磁束は、第2の帰磁路部40と主磁極15を通過する。第1の部分10と第2の部分20は、主磁極15において、第1の部分10によって発生された磁界に対応する磁束と第2の部分20によって発生された磁界に対応する磁束が同じ方向に流れるように、直列または並列に接続されている。
【0089】
主磁極15は、第1の部分10によって発生された磁界に対応する磁束と第2の部分20によって発生された磁界に対応する磁束とを通過させて、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。
【0090】
記録シールド16は、磁気ヘッドの外部から磁気ヘッドに印加された外乱磁界を取り込む。これにより、外乱磁界が主磁極15に集中して取り込まれることによって記録媒体に対して誤った記録が行なわれることを防止することができる。また、記録シールド16は、主磁極15の端面より発生されて記録媒体の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込んで、この磁束が記録媒体に達することを阻止する機能を有している。
【0091】
また、記録シールド16と第1および第2の帰磁路部30,40は、主磁極15の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束を還流させる機能を有している。具体的に説明すると、主磁極15の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束の一部は、記録シールド16と第1の帰磁路部30を通過して主磁極15に還流する。また、主磁極15の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束の他の一部は、記録シールド16と第2の帰磁路部40を通過して主磁極15に還流する。
【0092】
記録シールド16は、下部シールド16Aと、2つのサイドシールド16B,16Cと、上部シールド16Dとを有している。これにより、本実施の形態によれば、主磁極15の端面に対して記録媒体の進行方向Tの前側および後側ならびにトラック幅方向TWの両側において、主磁極15の端面より発生されて記録媒体の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込んで、この磁束が記録媒体に達することを抑制することができる。その結果、本実施の形態によれば、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することができる。下部シールド16Aおよび上部シールド16Dは、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することに寄与する他に、記録磁界の勾配を大きくすることに寄与する。サイドシールド16B,16Cは、特に隣接トラック消去を抑制することへの寄与が大きい。このような記録シールド16の機能により、本実施の形態によれば、記録密度を高めることができる。
【0093】
また、本実施の形態では、主磁極15において、トラック幅方向TWにおける第1の側面S1と第2の側面S2の間隔は、基板1の上面1aに近づくに従って小さくなっている。これにより、媒体対向面2における主磁極15の端面の、トラック幅方向TWについての幅は、基板1の上面1aに近づくに従って小さくなる。本実施の形態によれば、この特徴によっても、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することができる。
【0094】
また、本実施の形態では、媒体対向面2において、トラック幅方向TWにおけるサイドシールド16B,16Cの壁面F1,F2の間隔は、主磁極15の側面S1,S2の間隔と同様に、基板1の上面1aに近づくに従って小さくなっている。従って、本実施の形態によれば、媒体対向面2において、側面S1と壁面F1との間隔、ならびに側面S2と壁面F2との間隔を、小さく、且つ均一にすることが可能になる。これにより、サイドシールド16B,16Cによって、主磁極15の端面より発生されてトラック幅方向TWの両側に広がる磁束を、効果的に取り込むことができる。その結果、本実施の形態によれば、特にサイドシールド16B,16Cの機能を高めることが可能になり、スキューに起因した隣接トラック消去の発生をより効果的に抑制することが可能になる。
【0095】
また、本実施の形態では、主磁極15の下端部15Lは、第1および第2の部分15L1,15L2を含んでいる。主磁極15の上面15Tは、第1および第2の部分15T1,15T2を含んでいる。第1の部分15L1の少なくとも一部における任意の位置の基板1の上面1aからの距離は、この任意の位置が媒体対向面2に近づくに従って大きくなっていると共に、第1の部分15T1における任意の位置の基板1の上面1aからの距離は、この任意の位置が媒体対向面2に近づくに従って小さくなっている。これにより、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することができ、且つ主磁極15によって多くの磁束を媒体対向面2まで導くことにより記録特性(オーバーライト特性)を向上させることができる。
【0096】
また、本実施の形態では、主磁極15の第3および第4の側面S3,S4が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は、主磁極15の第1および第2の側面S1,S2が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度θS1,θS2よりも小さい。これにより、側面S3,S4が基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度がθS1,θS2と等しい場合に比べて、第2の領域R2において、磁束の流れる方向に対して垂直な主磁極15の断面積を大きくすることができる。そのため、本実施の形態によれば、主磁極15において多くの磁束を通過させることができ、その結果、オーバーライト特性等の記録特性を向上させることができる。
【0097】
ところで、媒体対向面2以外の広い領域において、主磁極15の側部SP1,SP2とサイドシールド16B,16Cの側壁SW1,SW2が小さな間隔で対向していると、主磁極15からサイドシールド16B,16Cへの磁束の漏れが多くなり、オーバーライト特性等の記録特性が低下してしまう。これを防止するために、媒体対向面2に垂直な方向についてのサイドシールド16B,16Cの寸法を小さくすると、サイドシールド16B,16Cの体積が小さくなって、サイドシールド16B,16Cの本来の機能が損なわれる。
【0098】
これに対し、本実施の形態では、ギャップ部17の一部である非磁性層17Bは、第1の側面S1と第1の側壁SW1との間および第2の側面S2と第2の側壁SW2との間には存在せず、第3の側面S3と第1の側壁SW1との間および第4の側面S4と第2の側壁SW2との間に存在している。そして、トラック幅方向TWにおける第3の側面S3と第1の側壁SW1の間隔は、トラック幅方向TWにおける第1の側面S1と第1の側壁SW1の間隔よりも大きい。同様に、トラック幅方向TWにおける第4の側面S4と第2の側壁SW2の間隔は、トラック幅方向TWにおける第2の側面S2と第2の側壁SW2の間隔よりも大きい。これにより、本実施の形態によれば、サイドシールド16B,16Cの体積を小さくすることなく、主磁極15の側部SP1,SP2とサイドシールド16B,16Cの側壁SW1,SW2が、ギャップ膜17Aの厚みに相当する小さな間隔で対向する領域を小さくすることができる。その結果、サイドシールド16B,16Cの機能を損なうことなく、主磁極15からサイドシールド16B,16Cへの磁束の漏れを抑制することができる。
【0099】
また、本実施の形態では、前述のように、図4に示した角度θF3,θF4が、角度θF1,θF2よりも大きい。これにより、トラック幅方向TWにおける第3の側面S3と第3の壁面F3の間隔と、トラック幅方向TWにおける第4の側面S4と第4の壁面F4の間隔は、それぞれ、媒体対向面2から遠ざかるに従って大きくなる。これにより、主磁極15からサイドシールド16B,16Cへの磁束の漏れを、より確実に抑制することができる。
【0100】
以上のことから、本実施の形態によれば、隣接トラック消去の発生の抑制と記録特性の向上を両立させることができる。
【0101】
次に、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法について説明する。本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法では、まず、図8および図9に示したように、基板1の上に、絶縁層81、ヒーター82、絶縁層83、第1の再生シールド層3、第1の再生シールドギャップ膜4を順に形成する。次に、第1の再生シールドギャップ膜4の上にMR素子5と、このMR素子5に接続された図示しない2つのリードとを形成する。次に、MR素子5およびリードを覆うように第2の再生シールドギャップ膜6を形成する。次に、第2の再生シールドギャップ膜6の上に第2の再生シールド層7を形成する。次に、第2の再生シールド層7の上に、非磁性層87、膨張層84、非磁性層88、センサ85および非磁性層89を順に形成する。
【0102】
次に、例えばフレームめっき法によって、非磁性層89の上にヨーク層31を形成する。次に、積層体の上面全体の上に絶縁層51を形成する。次に、例えば化学機械研磨(以下、CMPと記す。)によって、ヨーク層31が露出するまで、絶縁層51を研磨して、ヨーク層31および絶縁層51の上面を平坦化する。
【0103】
次に、例えばフレームめっき法によって、ヨーク層31の上に磁性層33,36を形成する。次に、後にコイルの第1の部分10が配置される予定の領域において、ヨーク層31の上面および磁性層33,36の壁面に沿って絶縁膜52を形成する。次に、例えばフレームめっき法によって、絶縁膜52の上に第1の部分10を形成する。次に、第1の部分10の巻線間に絶縁層53を形成する。次に、積層体の上面全体の上に、絶縁層54を形成する。次に、例えばCMPによって、第1の部分10および磁性層33,36が露出するまで絶縁層54を研磨して、第1の部分10、磁性層33,36、絶縁膜52および絶縁層53,54の上面を平坦化する。
【0104】
次に、例えばフレームめっき法によって、磁性層33および絶縁層54の上に磁性層34を形成し、磁性層36の上に磁性層37を形成する。次に、積層体の上面全体の上に、絶縁層55を形成する。次に、例えばCMPによって、磁性層34,37が露出するまで絶縁層55を研磨して、磁性層34,37および絶縁層55の上面を平坦化する。
【0105】
次に、図10ないし図16を参照して、上記の工程の後、主磁極15の上面15Tの形状を決定する工程までの一連の工程について説明する。これらの図は、磁気ヘッドの製造過程における積層体を示している。図10ないし図15において、(a)は、それぞれ、積層体の一部の上面を示している。図10ないし図15において、(b)は、それぞれ、積層体における媒体対向面2が形成される予定の位置における断面を示している。図10ないし図15において、(c)は、それぞれ、媒体対向面2が形成される予定の位置に平行な断面を示している。図10ないし図15の(a)において、nC−nC線(nは10以上15以下の整数)は、図10ないし図15の(c)における断面の位置を示している。図16(a)は、積層体における媒体対向面2が形成される予定の位置における断面を示している。図16(b)は、積層体における媒体対向面2および基板1の上面1aに垂直な断面を表している。なお、図10ないし図16では、下部シールド16Aよりも基板1側の部分を省略している。また、図10ないし図15における(a)および図16(b)において、記号“ABS”は、媒体対向面2が形成される予定の位置を表している。
【0106】
図10は、磁性層34,37および絶縁層55の上面を平坦化した後の工程を示している。この工程では、まず、例えばフレームめっき法によって、磁性層34の上に下部シールド16Aを形成し、磁性層37の上に磁性層38を形成する。次に、積層体の上面全体の上に、絶縁層56を形成する。次に、例えばCMPによって、下部シールド16Aおよび磁性層38が露出するまで絶縁層56を研磨して、下部シールド16A、磁性層38および絶縁層56の上面を平坦化する。
【0107】
次に、下部シールド16Aの上に、サイドシールド16B,16Cを形成する。以下、サイドシールド16B,16Cの形成方法の一例について説明する。この方法では、まず、ポジ型のフォトレジストよりなるフォトレジスト層をフォトリソグラフィによってパターニングすることによって、下部シールド16Aの上面上であって、後にサイドシールド16B,16Cが形成される領域に、第1のレジスト層を形成する。第1のレジスト層は、後に形成されるサイドシールド16B,16Cの形状に対応した形状を有する2つの部分を有している。次に、第1のレジスト層を覆うように、非磁性材料よりなる分離膜を形成する。分離膜は、ポジ型のフォトレジストよりなる第1のレジスト層と、後に形成されるネガ型のフォトレジストよりなるフォトレジスト層とが混合されることを防止するためのものである。分離膜の材料としては、例えばアルミナまたは合成樹脂が用いられる。
【0108】
次に、ネガ型のフォトレジストよりなるフォトレジスト層をフォトリソグラフィによってパターニングすることによって、分離膜の上に、後に型になる第2のレジスト層を形成する。第2のレジスト層は、後に形成されるサイドシールド16B,16Cの形状に対応した形状の2つの開口部を有している。次に、例えばウェットエッチングによって、分離膜のうち、第2のレジスト層によって覆われていない部分を除去する。次に、第1および第2のレジスト層を露光した後、例えばアルカリ性の現像液を用いて、第2のレジスト層の2つの開口部から第1のレジスト層を除去する。また、第1のレジスト層を除去する際または第1のレジスト層を除去した後に、分離膜のうち、第2のレジスト層の2つの開口部の壁面に沿った部分を除去する。この工程により、第2のレジスト層は、後にサイドシールド16B,16Cが形成される領域を除く領域に形成された型になる。次に、シード層を形成することなくめっきを行って、下部シールド16Aの上面上に、サイドシールド16B,16Cを形成する。サイドシールド16B,16Cは、それぞれ、型の2つの開口部内に形成される。次に、型と分離膜を除去する。図10は、このようにして形成されたサイドシールド16B,16Cを示している。
【0109】
図11は、次の工程を示す。この工程では、まず、下部シールド16Aおよびサイドシールド16B,16Cの上に、図示しないエッチングマスクを形成する。このエッチングマスクは、フォトレジスト層をパターニングして形成される。次に、上記エッチングマスクを用いて、絶縁層56をエッチングする。このエッチングは、エッチングによって形成される底部が、当初の絶縁層56の上面と下面の間の高さの位置に達するまで行う。また、このエッチングは、例えば反応性イオンエッチングを用いて行われる。次に、エッチングマスクを除去する。次に、例えばイオンビームエッチングを用いて、媒体対向面2が形成される予定の位置ABSの近傍において、下部シールド16Aの上面の一部をエッチングする。これにより、下部シールド16Aの上面は、図8に示したような斜面になる。図11は、このエッチング後の下部シールド16Aおよびサイドシールド16B,16Cを示している。このエッチングによって、サイドシールド16B,16Cの側壁SW1,SW2の形状が決定される。
【0110】
図12は、次の工程を示す。この工程では、下部シールド16Aおよびサイドシールド16B,16Cを覆うようにギャップ膜17Aを形成する。ギャップ膜17Aの材料としてアルミナを用いる場合には、例えば原子層堆積法によって、ギャップ膜17Aを形成する。ギャップ膜17Aの材料としてRuを用いる場合には、例えば化学的気相成長法によって、ギャップ膜17Aを形成する。
【0111】
図13は、次の工程を示す。この工程では、まず、ギャップ膜17Aに、磁性層38の上面を露出させる開口部を形成する。次に、ギャップ膜17Aの上に、開口部101aを有する型101を形成する。型101は、フォトレジスト層をパターニングして形成される。
【0112】
次に、型101を用いて、例えばめっき法によって、型101の開口部101a内に、後に主磁極15になる予備主磁極15Pを形成する。予備主磁極15Pは、その上面がサイドシールド16B,16Bの上面よりも上方に配置されるように形成される。
【0113】
図13(a)および(b)に示したように、第1の領域R1では、トラック幅方向(左右方向)についての開口部101aの幅は、後に形成される主磁極15の第1および第2の側面S1,S2のトラック幅方向についての最大の間隔よりも大きい。そのため、第1の領域R1では、予備主磁極15Pは、サイドシールド16B,16Cの側壁SW1,SW2と予備主磁極15Pとの間にギャップ膜17Aが介在するように形成される。従って、主磁極15の第1および第2の側面S1,S2の形状は、サイドシールド16B,16Cの側壁SW1,SW2とギャップ膜17Aとによって決定される。
【0114】
一方、図13(a)および(c)に示したように、第2の領域R2では、開口部101aの側壁は、ギャップ膜17Aのうちサイドシールド16B,16Cの側壁SW1,SW2上に存在する部分から離れた位置にある。第2の領域R2における開口部101aの側壁の位置は、後に形成される主磁極15の第3および第4の側面S3,S4の位置と一致している。そのため、第2の領域R2では、予備主磁極15Pは、サイドシールド16B,16Cの側壁SW1,SW2と予備主磁極15Pとの間に、ギャップ膜17Aおよび型101が介在するように形成される。従って、主磁極15の第3ないし第6の側面S3〜S6の形状は、型101によって形成される。
【0115】
図14は、次の工程を示す。この工程では、まず、型101を除去する。次に、サイドシールド16B,16C、ギャップ膜17Aおよび予備主磁極15Pを覆うように、後に非磁性層17Bになる予備非磁性層102を形成する。
【0116】
図15は、次の工程を示す。この工程では、例えばCMPによって、予備主磁極15Pおよびサイドシールド16B,16Cが露出するまで予備非磁性層102を研磨する。この工程の後では、領域R2において、ギャップ膜17Aのうちサイドシールド16B,16Cの側壁SW1,SW2上に存在する部分と予備主磁極15Pとの間に、予備非磁性層102が残る。この残った予備非磁性層102が非磁性層17Bになる。
【0117】
図16は、次の工程を示す。この工程では、まず、予備主磁極15Pおよびサイドシールド16B,16Cの上に、後に非磁性金属層58になる第1のマスク層と、後に絶縁層59になる第2のマスク層とを形成する。次に、第1および第2のマスク層をエッチングマスクとして、例えばイオンビームエッチングによって、予備主磁極15Pおよびサイドシールド16B,16Cのそれぞれの一部をエッチングする。これにより、第1のマスク層は非磁性金属層58となり、第2のマスク層は絶縁層59となり、予備主磁極15Pは主磁極15になる。このエッチングにより、主磁極15の上面15Tの形状が決定される。
【0118】
図13に示した工程から、図16に示した工程までが、本発明における「主磁極および非磁性層を形成する工程」に対応する。
【0119】
以下、図8および図9を参照して、図16に示した工程の後の工程について説明する。まず、積層体の上面全体の上に、例えばスパッタ法または化学的気相成長法によって、ギャップ層17Cを形成する。次に、例えばイオンビームエッチングによって、主磁極15の上面15Tの一部およびサイドシールド16B,16Cの上面の一部が露出するように、ギャップ層17C、非磁性金属層58および絶縁層59を選択的にエッチングする。次に、例えばフレームめっき法によって、サイドシールド16B,16Cおよびギャップ層17Cの上に上部シールド16Dを形成し、主磁極15の上にヨーク層41を形成する。
【0120】
次に、積層体の上面全体の上に非磁性層61を形成する。次に、例えばCMPによって、上部シールド16Dおよびヨーク層41が露出するまで、非磁性層61を研磨して、上部シールド16D、ヨーク層41および非磁性層61の上面を平坦化する。
【0121】
次に、非磁性層61の上面のうち、コイルの第2の部分20が配置される領域の上に絶縁層62を形成する。次に、例えばフレームめっき法によって、絶縁層62の上に第2の部分20を形成する。次に、第2の部分20を覆うように絶縁層63を形成する。次に、例えばフレームめっき法によって、上部シールド16D、ヨーク層41および絶縁層63の上に磁性層42を形成する。
【0122】
次に、積層体の上面全体を覆うように保護層70を形成する。次に、保護層70の上に配線や端子等を形成し、位置ABSの近傍で基板1を切断し、この切断によって形成された面を研磨して媒体対向面2を形成し、更に浮上用レールの作製等を行って、磁気ヘッドが完成する。
【0123】
本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法では、サイドシールド16B,16Cを形成した後、図13に示した工程において、下部シールド16Aおよびサイドシールド16B,16Cを覆うようにギャップ膜17Aを形成し、ギャップ膜17Aの上に、開口部101aを有する型101を形成する。そして、この型101を用いて、後に主磁極15になる予備主磁極15Pを形成する。主磁極15の第1および第2の側面S1,S2の形状は、サイドシールド16B,16Cの側壁SW1,SW2とギャップ膜17Aとによって決定される。一方、主磁極15の第3ないし第6の側面S3〜S6の形状は、型101によって形成される。
【0124】
また、図14に示した工程と図15に示した工程とにより、型101の除去後、非磁性層17Bを形成することによって、第2の領域R2にのみ非磁性層17Bを形成される。
【0125】
このような磁気ヘッドの製造方法によれば、前述のように隣接トラック消去の発生の抑制と記録特性の向上の両立を可能にする形状および位置関係を有する主磁極15、サイドシールド16B,16C、ギャップ膜17Aおよび非磁性層17Bを容易に形成することができる。
【0126】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、実施の形態では、主磁極15の下端15Lが第1の部分15L1と第2の部分15L2とを含み、主磁極15の上面15Tが第1の部分15T1と第2の部分15T2とを含んでいるが、主磁極15の下端15Lおよび上面15Tは、それぞれ、それらの全体が実質的に媒体対向面2に垂直な方向に延びていてもよい。
【0127】
また、実施の形態では、基体側に再生ヘッド部8を形成し、その上に、記録ヘッド部9を積層した構造の磁気ヘッドについて説明したが、この積層順序を逆にしてもよい。
【符号の説明】
【0128】
15…主磁極、16…記録シールド、16A…下部シールド、16B,16C…サイドシールド、16D…上部シールド、17…ギャップ部、17A…ギャップ膜、17B…非磁性層、SP1…第1の側部、SP2…第2の側部、S1…第1の側面、S2…第2の側面、S3…第3の側面、S4…第4の側面、S5…第5の側面、S6…第6の側面、SW1…第1の側壁、SW2…第2の側壁、F1…第1の壁面、F2…第2の壁面、F3…第3の壁面、F4…第4の壁面、F5…第5の壁面、F6…第6の壁面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対向する媒体対向面と、
前記記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生するコイルと、
前記媒体対向面に配置された端面を有し、前記コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって前記情報を前記記録媒体に記録するための記録磁界を発生する主磁極と、
磁性材料よりなる記録シールドと、
非磁性材料よりなり、前記主磁極と前記記録シールドとの間に設けられたギャップ部と、
上面を有する基板とを備えた垂直磁気記録用磁気ヘッドであって、
前記コイル、主磁極、記録シールドおよびギャップ部は、前記基板の上面の上方に配置され、
前記記録シールドは、第1および第2のサイドシールドと、前記第1および第2のサイドシールドに接する上部シールドとを含み、
前記第1および第2のサイドシールドは、前記媒体対向面において前記主磁極の前記端面に対してトラック幅方向の両側に配置された2つの端面を有し、
前記上部シールドは、前記媒体対向面において前記主磁極の前記端面に対して記録媒体の進行方向の前側に配置された端面を有し、
前記主磁極は、トラック幅方向の両側に配置された第1および第2の側部を有し、
前記第1のサイドシールドは、前記主磁極の第1の側部に面した第1の側壁を有し、
前記第2のサイドシールドは、前記主磁極の第2の側部に面した第2の側壁を有し、
前記ギャップ部は、前記第1および第2の側壁に接するように配置されたギャップ膜と、前記媒体対向面から離れた位置において、前記ギャップ膜と前記第1および第2の側部との間に配置された非磁性層とを含み、
前記第1の側部は、前記媒体対向面から所定の距離だけ離れた位置から前記媒体対向面までの第1の領域に配置された第1の側面と、前記第1の領域以外の第2の領域に配置された第3の側面とを有し、
前記第2の側部は、前記第1の領域に配置された第2の側面と、前記第2の領域に配置された第4の側面とを有し、
前記非磁性層は、前記第1の側面と第1の側壁との間および前記第2の側面と第2の側壁との間には存在せず、前記第3の側面と第1の側壁との間および前記第4の側面と第2の側壁との間に存在し、
トラック幅方向における前記第3の側面と第1の側壁の間隔は、トラック幅方向における前記第1の側面と第1の側壁の間隔よりも大きく、
トラック幅方向における前記第4の側面と第2の側壁の間隔は、トラック幅方向における前記第2の側面と第2の側壁の間隔よりも大きく、
トラック幅方向における前記第1の側面と第2の側面の間隔は、前記基板の上面に近づくに従って小さくなっており、
前記第3および第4の側面が前記基板の上面に垂直な方向に対してなす角度は、前記第1および第2の側面が前記基板の上面に垂直な方向に対してなす角度よりも小さいことを特徴とする垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項2】
前記第1の領域と第2の領域の境界から前記媒体対向面までの距離は、80〜620nmの範囲内であることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項3】
前記記録シールドは、更に、前記第1および第2のサイドシールドに接する下部シールドを含み、前記下部シールドは、前記媒体対向面において前記主磁極の前記端面に対して記録媒体の進行方向の後側に配置された端面を有することを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項4】
前記主磁極は、前記媒体対向面から遠ざかるに従ってトラック幅方向における前記第1の側部と第2の側部の間隔が大きくなる部分を含み、
前記第1の側壁は、前記第1の領域内に配置された第1の壁面と、前記第1の壁面に対して前記媒体対向面から遠い位置に配置された第3の壁面とを有し、
前記第2の側壁は、前記第1の領域内に配置された第2の壁面と、前記第2の壁面に対して前記媒体対向面から遠い位置に配置された第4の壁面とを有し、
前記第1の領域の少なくとも一部において、トラック幅方向における前記第1の壁面と第2の壁面の間隔は、前記媒体対向面から遠ざかるに従って大きくなり、
前記第2の領域の少なくとも一部において、トラック幅方向における前記第3の壁面と第4の壁面の間隔は、前記媒体対向面から遠ざかるに従って大きくなり、
前記第1および第2のサイドシールドにおける前記基板の上面から最も遠い位置において、前記第2の領域の少なくとも一部において前記第3および第4の壁面が前記媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度は、前記第1の領域の少なくとも一部において前記第1および第2の壁面が前記媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項5】
前記第1の側壁は、更に、前記第1の壁面と第3の壁面とを連結する第5の壁面を有し、
前記第2の側壁は、更に、前記第2の壁面と第4の壁面とを連結する第6の壁面を有し、
前記第1および第2のサイドシールドにおける前記基板の上面から最も遠い位置において、前記第5および第6の壁面が前記媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度は、前記第2の領域の少なくとも一部において前記第3および第4の壁面が前記媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度よりも大きいことを特徴とする請求項4記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項6】
前記第1および第2のサイドシールドにおける前記基板の上面から最も遠い位置において、前記第5および第6の壁面と前記媒体対向面の間の最短距離は、50〜500nmの範囲内であることを特徴とする請求項5記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項7】
請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッドを製造する方法であって、
前記第1および第2のサイドシールドを形成する工程と、
前記第1および第2のサイドシールドの形成後、前記ギャップ膜を形成する工程と、
前記ギャップ膜の形成後、前記主磁極および非磁性層を形成する工程と、
前記主磁極および非磁性層の形成後、前記上部シールドを形成する工程と、
前記コイルを形成する工程とを備えたことを特徴とする垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記主磁極および非磁性層を形成する工程は、
前記ギャップ膜の上に、開口部を有する型を形成する工程と、
前記型を用いて、後に前記主磁極になる予備主磁極を形成する工程と、
前記予備主磁極の形成後、前記型を除去する工程と、
前記型の除去後、前記第1および第2のサイドシールド、ギャップ膜および予備主磁極を覆うように、後に前記非磁性層になる予備非磁性層を形成する工程と、
前記第1および第2のサイドシールドおよび予備主磁極が露出するまで前記予備非磁性層を研磨する工程とを含むことを特徴とする請求項7記載の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記記録シールドは、更に、前記第1および第2のサイドシールドに接する下部シールドを含み、前記下部シールドは、前記媒体対向面において前記主磁極の前記端面に対して記録媒体の進行方向の後側に配置された端面を有し、
垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法は、更に、前記第1および第2のサイドシールドの形成前に、前記下部シールドを形成する工程を備え、
前記第1および第2のサイドシールドは、前記下部シールドの上に形成されることを特徴とする請求項7記載の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法。
【請求項1】
記録媒体に対向する媒体対向面と、
前記記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生するコイルと、
前記媒体対向面に配置された端面を有し、前記コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって前記情報を前記記録媒体に記録するための記録磁界を発生する主磁極と、
磁性材料よりなる記録シールドと、
非磁性材料よりなり、前記主磁極と前記記録シールドとの間に設けられたギャップ部と、
上面を有する基板とを備えた垂直磁気記録用磁気ヘッドであって、
前記コイル、主磁極、記録シールドおよびギャップ部は、前記基板の上面の上方に配置され、
前記記録シールドは、第1および第2のサイドシールドと、前記第1および第2のサイドシールドに接する上部シールドとを含み、
前記第1および第2のサイドシールドは、前記媒体対向面において前記主磁極の前記端面に対してトラック幅方向の両側に配置された2つの端面を有し、
前記上部シールドは、前記媒体対向面において前記主磁極の前記端面に対して記録媒体の進行方向の前側に配置された端面を有し、
前記主磁極は、トラック幅方向の両側に配置された第1および第2の側部を有し、
前記第1のサイドシールドは、前記主磁極の第1の側部に面した第1の側壁を有し、
前記第2のサイドシールドは、前記主磁極の第2の側部に面した第2の側壁を有し、
前記ギャップ部は、前記第1および第2の側壁に接するように配置されたギャップ膜と、前記媒体対向面から離れた位置において、前記ギャップ膜と前記第1および第2の側部との間に配置された非磁性層とを含み、
前記第1の側部は、前記媒体対向面から所定の距離だけ離れた位置から前記媒体対向面までの第1の領域に配置された第1の側面と、前記第1の領域以外の第2の領域に配置された第3の側面とを有し、
前記第2の側部は、前記第1の領域に配置された第2の側面と、前記第2の領域に配置された第4の側面とを有し、
前記非磁性層は、前記第1の側面と第1の側壁との間および前記第2の側面と第2の側壁との間には存在せず、前記第3の側面と第1の側壁との間および前記第4の側面と第2の側壁との間に存在し、
トラック幅方向における前記第3の側面と第1の側壁の間隔は、トラック幅方向における前記第1の側面と第1の側壁の間隔よりも大きく、
トラック幅方向における前記第4の側面と第2の側壁の間隔は、トラック幅方向における前記第2の側面と第2の側壁の間隔よりも大きく、
トラック幅方向における前記第1の側面と第2の側面の間隔は、前記基板の上面に近づくに従って小さくなっており、
前記第3および第4の側面が前記基板の上面に垂直な方向に対してなす角度は、前記第1および第2の側面が前記基板の上面に垂直な方向に対してなす角度よりも小さいことを特徴とする垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項2】
前記第1の領域と第2の領域の境界から前記媒体対向面までの距離は、80〜620nmの範囲内であることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項3】
前記記録シールドは、更に、前記第1および第2のサイドシールドに接する下部シールドを含み、前記下部シールドは、前記媒体対向面において前記主磁極の前記端面に対して記録媒体の進行方向の後側に配置された端面を有することを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項4】
前記主磁極は、前記媒体対向面から遠ざかるに従ってトラック幅方向における前記第1の側部と第2の側部の間隔が大きくなる部分を含み、
前記第1の側壁は、前記第1の領域内に配置された第1の壁面と、前記第1の壁面に対して前記媒体対向面から遠い位置に配置された第3の壁面とを有し、
前記第2の側壁は、前記第1の領域内に配置された第2の壁面と、前記第2の壁面に対して前記媒体対向面から遠い位置に配置された第4の壁面とを有し、
前記第1の領域の少なくとも一部において、トラック幅方向における前記第1の壁面と第2の壁面の間隔は、前記媒体対向面から遠ざかるに従って大きくなり、
前記第2の領域の少なくとも一部において、トラック幅方向における前記第3の壁面と第4の壁面の間隔は、前記媒体対向面から遠ざかるに従って大きくなり、
前記第1および第2のサイドシールドにおける前記基板の上面から最も遠い位置において、前記第2の領域の少なくとも一部において前記第3および第4の壁面が前記媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度は、前記第1の領域の少なくとも一部において前記第1および第2の壁面が前記媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項5】
前記第1の側壁は、更に、前記第1の壁面と第3の壁面とを連結する第5の壁面を有し、
前記第2の側壁は、更に、前記第2の壁面と第4の壁面とを連結する第6の壁面を有し、
前記第1および第2のサイドシールドにおける前記基板の上面から最も遠い位置において、前記第5および第6の壁面が前記媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度は、前記第2の領域の少なくとも一部において前記第3および第4の壁面が前記媒体対向面に垂直な方向に対してなす角度よりも大きいことを特徴とする請求項4記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項6】
前記第1および第2のサイドシールドにおける前記基板の上面から最も遠い位置において、前記第5および第6の壁面と前記媒体対向面の間の最短距離は、50〜500nmの範囲内であることを特徴とする請求項5記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項7】
請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッドを製造する方法であって、
前記第1および第2のサイドシールドを形成する工程と、
前記第1および第2のサイドシールドの形成後、前記ギャップ膜を形成する工程と、
前記ギャップ膜の形成後、前記主磁極および非磁性層を形成する工程と、
前記主磁極および非磁性層の形成後、前記上部シールドを形成する工程と、
前記コイルを形成する工程とを備えたことを特徴とする垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記主磁極および非磁性層を形成する工程は、
前記ギャップ膜の上に、開口部を有する型を形成する工程と、
前記型を用いて、後に前記主磁極になる予備主磁極を形成する工程と、
前記予備主磁極の形成後、前記型を除去する工程と、
前記型の除去後、前記第1および第2のサイドシールド、ギャップ膜および予備主磁極を覆うように、後に前記非磁性層になる予備非磁性層を形成する工程と、
前記第1および第2のサイドシールドおよび予備主磁極が露出するまで前記予備非磁性層を研磨する工程とを含むことを特徴とする請求項7記載の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記記録シールドは、更に、前記第1および第2のサイドシールドに接する下部シールドを含み、前記下部シールドは、前記媒体対向面において前記主磁極の前記端面に対して記録媒体の進行方向の後側に配置された端面を有し、
垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法は、更に、前記第1および第2のサイドシールドの形成前に、前記下部シールドを形成する工程を備え、
前記第1および第2のサイドシールドは、前記下部シールドの上に形成されることを特徴とする請求項7記載の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−25859(P2013−25859A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−51468(P2012−51468)
【出願日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【出願人】(500475649)ヘッドウェイテクノロジーズ インコーポレイテッド (251)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【出願人】(500475649)ヘッドウェイテクノロジーズ インコーポレイテッド (251)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【Fターム(参考)】
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