乗り継ぎ搬送用ハンガー

【課題】搬送ライン上における被搬送物の寸法、搬送間隔、搬送姿勢を自在として確実な移載タイミングで迅速かつ円滑な移載動作を実現するとともに複数のトロリーコンベヤ間における移載スペースの省スペース化とコンベヤ機構の簡素化を達成する乗り継ぎ搬送用ハンガーを提供すること。
【解決手段】吊持用ロッド本体１１０の最上端に設けられてトロリーコンベヤのキャリアに係脱自在に抱持される逆Ｖ字型係止ヘッド１２０と、吊持用ロッド本体１１０の最下端に設けられて被搬送物Ｗを個別に吊持する被搬送物用フック１３０と、吊持用ロッド本体１１０の最上端と最下端との中間位置に設けられて複数のトロリーコンベヤ間を乗り継がせるための移載ユニットで掬い取り可能な水平係止アーム１４０とを備えている乗り継ぎ搬送用ハンガー１００。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
この発明は、自動車ボディなどの被搬送物をトロリー搬送するためのトロリーコンベヤに用いるハンガーに関するものであって、さらに詳しくは、被搬送物を垂下状態の吊持用ロッド本体でトロリーコンベヤと共働して搬送するとともに複数のトロリーコンベヤ間を移載ユニットと共働して乗り継ぐための乗り継ぎ搬送用ハンガーに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、この種の乗り継ぎ搬送用ハンガーとして、棒状体に横方向に多数の孔が設けられた板状部材を棒状体の長手方向に沿って棒状体の周面に固定し、この孔の略Ｃ字形の吊り具の上端を引掛け、下端を被搬送物に引掛けるように構成したものがある（特許文献１を参照）。
【特許文献１】特開昭５８−１７０１０号公報（第１頁、第１図）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
しかしながら、上述した特許文献１に開示されている従来のようなハンガーでは、搬送方向に長尺状を呈する被搬送物がその搬送方向で２個のＣ字形吊り具を用いて２点吊りされているとともに２個で一対のフックを用いてコンベヤに吊り掛けられているため、その移載機構が複雑化してその取り扱いが面倒になるという厄介な問題があり、また、長尺状の被搬送物を搬送する場合、搬送方向に沿った搬送姿勢に強制されるため、搬送ライン上における被搬送物の寸法や搬送間隔などで大きな制約を受けるという問題があった。
【０００４】
さらに、従来のようなハンガーでは、被搬送物を移載する際にトロリーコンベヤを一旦停止して移載しなければならず、被搬送物の間欠的な搬送を強いられるため、迅速かつ円滑な移載動作が実現できない、移載時間の短縮ができないという移載作業上の厄介な問題があり、また、被搬送物を搬送方向と直交する方向に外して移載する方式を採用しているため、ハンガーに対して移載タイミングのズレが生じたり、複数のトロリーコンベヤ間における移載スペースを大きく確保しなければならないという設置スペース上の厄介な問題があった。
【０００５】
そこで、本発明が解決しようとする課題、すなわち、本発明の目的は、上述したような従来技術の問題点を解消するものであって、搬送ライン上における被搬送物の寸法、搬送間隔、搬送姿勢を自在として確実な移載タイミングで迅速かつ円滑な移載動作を実現するとともに複数のトロリーコンベヤ間における移載スペースの省スペース化とコンベヤ機構の簡素化を達成する乗り継ぎ搬送用ハンガーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
本請求項１に係る発明は、被搬送物を垂下状態の吊持用ロッド本体でトロリーコンベヤと共働して搬送するとともに複数のトロリーコンベヤ間を移載ユニットと共働して乗り継ぐ乗り継ぎ搬送用ハンガーにおいて、前記吊持用ロッド本体の最上端に設けられて前記トロリーコンベヤのキャリアに係脱自在に抱持される逆Ｖ字型係止ヘッドと、前記吊持用ロッド本体の最下端に設けられて被搬送物を個別に吊持する被搬送物用フックと、前記吊持用ロッド本体の最上端と最下端との中間位置に設けられて前記移載ユニットの掬い取りアーム手段で掬い取り可能な水平係止アームとを備えていることにより、前述した課題を解決したものである。
【発明の効果】
【０００７】
本発明の乗り継ぎ搬送用ハンガーは、被搬送物を垂下状態の吊持用ロッド本体でトロリーコンベヤと共働して搬送するとともに複数のトロリーコンベヤ間を移載ユニットと共働して乗り継ぐことができ、また、以下のような特有の構成に対応した格別の効果を奏することができる。
【０００８】
すなわち、本発明の乗り継ぎ搬送用ハンガーは、吊持用ロッド本体の最上端に設けられてトロリーコンベヤのキャリアに係脱自在に抱持される逆Ｖ字型係止ヘッドと、吊持用ロッド本体の最下端に設けられて被搬送物を個別に吊持する被搬送物用フックとを備えていることにより、トロリーコンベヤのキャリアに対して逆Ｖ字型係止ヘッドを介した１点吊り状態となると同時に被搬送物に対して被搬送物用フックを介した１点吊り状態となるため、搬送ライン上における被搬送物の寸法や搬送間隔に応じた自由な搬送姿勢を確保することができる。
【０００９】
そして、本発明の乗り継ぎ搬送用ハンガーは、吊持用ロッド本体の最上端に設けられてトロリーコンベヤのキャリアに係脱自在に抱持される逆Ｖ字型係止ヘッドと、吊持用ロッド本体の最下端と最上端との中間位置に設けられて移載ユニットの掬い取りアーム手段で掬い取り可能な水平係止アームとを備えていることにより、トロリーコンベヤの相互間で移載する際に、上流側に配置されているトロリーコンベヤのキャリアで吊り下げ搬送されて来た乗り継ぎ搬送用ハンガーの水平係止アームが移載ユニットの掬い取りアーム手段で瞬時に掬い上げられると同時に、乗り継ぎ搬送用ハンガーの逆Ｖ字型係止ヘッドが上流側に配置されているトロリーコンベヤのキャリアから瞬時に離脱し、次いで、移載ユニットが下流側に配置されているトロリーコンベヤへ移動して掬い取りアーム手段を旋回下降させて乗り継ぎ搬送用ハンガーの逆Ｖ字型係止ヘッドを下流側に配置されているトロリーコンベヤのキャリアに掛け渡し可能となるため、乗り継ぎ搬送用ハンガーの迅速かつ円滑な移載動作を実現できるとともに、トロリーコンベヤの相互間における移載スペースの省スペース化とコンベヤ機構の簡素化を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１０】
本発明の乗り継ぎ搬送用ハンガーは、被搬送物を垂下状態の吊持用ロッド本体でトロリーコンベヤと共働して搬送するとともに複数のトロリーコンベヤ間を移載ユニットと共働して乗り継ぐものであって、吊持用ロッド本体の最上端に設けられてトロリーコンベヤのキャリアに係脱自在に抱持される逆Ｖ字型係止ヘッドと、吊持用ロッド本体の最下端に設けられて被搬送物を個別に吊持する被搬送物用フックと、吊持用ロッド本体の最上端と最下端との中間位置に設けられて移載ユニットの掬い取りアーム手段で掬い取り可能な水平係止アームとを備え、搬送ライン上における被搬送物の寸法、搬送間隔、搬送姿勢を自在として確実な移載タイミングで迅速かつ円滑な移載動作を実現するとともに複数のトロリーコンベヤ間における移載スペースの省スペース化とコンベヤ機構の簡素化を達成するものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【００１１】
たとえば、本発明の乗り継ぎ搬送用ハンガーには、逆Ｖ字型係止ヘッドと水平係止アームとの間に円盤状の落下防止用ガイドプレートを設けて、トロリーコンベヤの搬送ラインに沿って両側に敷設した一対のガイドレールとの間で搬送時に生じがちな落下と横揺れを回避するようにしても何ら構わない。
【００１２】
他方、本発明の乗り継ぎ搬送用ハンガーを係脱自在に抱持するキャリアについては、乗り継ぎ搬送用ハンガーの受け渡し時に乗り継ぎ搬送用ハンガーの逆Ｖ字型係止ヘッドがキャリアに対して簡便に係脱できるように、逆Ｖ字型係止ヘッドの両側に向けてそれぞれ突出する左右一対の係止ピンが設けられているのが好ましい。
【００１３】
本発明の一実施例である乗り継ぎ搬送用ハンガー１００を図１乃至図１０に基づいて説明する。
ここで、図１は、本実施例の乗り継ぎ搬送用ハンガーを用いたコンベヤ機構の全体概要図であり、図２は、図１の点線で囲む領域の正面図であり、図３は、上流側トロリーコンベヤにおけるハンガー搬送状態を示す正面図であり、図４は、乗り継ぎトロリーコンベヤにおけるハンガー搬送状態を示す正面図であり、図５は、本実施例の乗り継ぎ搬送用ハンガーを示す斜視図であり、図６は、上流側トロリーコンベヤにおける移載状態の説明図であり、図７は、乗り継ぎトロリーコンベヤにおける移載状態の説明図である。
【００１４】
まず、図１乃至図２に示すように、本発明の一実施例である乗り継ぎ搬送用ハンガー１００は、被搬送物Ｗを所定の搬入位置から順次搬入する上流側トロリーコンベヤＡと、この上流側トロリーコンベヤＡから搬送された被搬送物Ｗを引き取って下流側へ順次搬送する乗り継ぎトロリーコンベヤＢと、この乗り継ぎトロリーコンベヤＢから搬送された被搬送物Ｗを引き取り所定の搬出位置へ順次搬出する下流側トロリーコンベヤＣと、被搬送物Ｗを上流側トロリーコンベヤＡのキャリアＡ１から乗り継ぎトロリーコンベヤＢのキャリアＢ２へ順々に移載する上流側移載ユニットＤと、被搬送物Ｗを乗り継ぎトロリーコンベヤＢのキャリアＢ１から下流側トロリーコンベヤＣのキャリアＣ１へ順々に移載する下流側移載ユニットＥを備え、被搬送物Ｗを上流側トロリーコンベヤＡから下流側トロリーコンベヤＣへ順々に乗り継ぎ搬送させるように構成されているコンベヤ機構に用いるものである。
【００１５】
すなわち、本実施例の乗り継ぎ搬送用ハンガー１００は、例えば、図３に示すような上流側トロリーコンベヤＡや下流側トロリーコンベヤＣ、あるいは、図４に示すような乗り継ぎトロリーコンベヤＢのそれぞれと共働して搬送するものである。
そして、本実施例の乗り継ぎ搬送用ハンガー１００は、具体的には、図５に示す乗り細長の吊持用ロッド本体１１０と、この吊持用ロッド本体１１０の最上端に設けられて上流側トロリーコンベヤＡ、乗り継ぎトロリーコンベヤＢ、下流側トロリーコンベヤＣのキャリアＡ１、Ｂ１、Ｃ１にそれぞれ係脱自在に抱持される山形形状を有する逆Ｖ字型係止ヘッド１２０と、前記吊持用ロッド本体１１０の最下端に設けられて被搬送物Ｗを個別に吊持する被搬送物用フック１３０と、前記吊持用ロッド本体１１０の最上端と最下端との中間位置で水平方向に両翼状に設けられて前述した上流側移載ユニットＤ、下流側移載ユニットＥの掬い取りアーム手段Ｄ１、Ｅ１でそれぞれ掬い取り可能な水平係止アーム１４０と、前記逆Ｖ字型係止ヘッド１２０と水平係止アーム１４０との間に設けられて前述した上流側トロリーコンベヤＡ、乗り継ぎトロリーコンベヤＢ、下流側トロリーコンベヤＣの搬送ラインに沿って両側に敷設した一対のガイドレール（図示していない）との間で搬送時に生じがちな落下と横揺れを回避する円盤状の落下防止用ガイドプレート１５０とを備えている。
なお、図３における符号Ａ２は、上流側トロリーコンベヤＡのキャリアＡ１を搬送方向に２点吊りして搬送駆動するためのトロリーである。
【００１６】
つぎに、本実施例の乗り継ぎ搬送用ハンガー１００と前述した上流側トロリーコンベヤＡの搬出エリアに沿って配置された上流側移載ユニットＤとの乗り継ぎ動作について、図６乃至図７に基づいて以下に説明する。
【００１７】
図６に示す上流側移載ユニットＤは、上流側トロリーコンベヤＡのキャリアＡ１で吊り下げ搬送されてくる乗り継ぎ搬送用ハンガー１００を掬い上げて乗り継ぎトロリーコンベヤＢのキャリアＢ１へ移載する上流側掬い取りアーム手段Ｄ１とこの上流側掬い取りアーム手段Ｄ１を上流側トロリーコンベヤＡの移載ゾーンで往復動させる上流側ストローク駆動手段Ｄ２とを備えている。
【００１８】
そこで、前述した上流側トロリーコンベヤＡから乗り継ぎトロリーコンベヤＢへの乗り継ぎ動作について説明すると、上流側トロリーコンベヤＡのキャリアＡ１が移載ゾーンに到達すると、上流側掬い取りアーム手段Ｄ１を上方に旋回して本実施例の乗り継ぎ搬送用ハンガー１００の水平係止アーム１１２を上方へ掬い上げ、上流側トロリーコンベヤＡのキャリアＡ１との係合を外して上流側移載ユニットＤの上流側掬い取りアーム手段Ｄ１に受け渡す。
【００１９】
そして、上流側トロリーコンベヤＡのキャリアＡ１から上流側移載ユニットＤの上流側掬い取りアーム手段Ｄ１に受け渡された本実施例の乗り継ぎ搬送用ハンガー１００は、上流側ストローク駆動手段Ｄ２によって上流側トロリーコンベヤＡから搬出され、図７のように、上流側移載ユニットＤの上流側掬い取りアーム手段Ｄ１を下方に旋回させて乗り継ぎトロリーコンベヤＢのキャリアＢ１へ受け渡す。
【００２０】
このようにして、本実施例の乗り継ぎ搬送用ハンガー１００は、上流側トロリーコンベヤＡから乗り継ぎトロリーコンベヤＢへの乗り継ぎ動作を完了することができる。
【００２１】
また、図６に示した上流側移載ユニットＤと同様に、下流側移載ユニットＥは、本実施例の乗り継ぎ搬送用ハンガー１００を掬い上げて下流側トロリーコンベヤＣのキャリアＣ１へ移載する下流側掬い取りアーム手段（図示しない）とこの下流側掬い取りアーム手段を下流側トロリーコンベヤＣの移載ゾーンで往復動させる下流側ストローク駆動手段（図示しない）とを備えている。
【００２２】
そこで、前述した乗り継ぎトロリーコンベヤＢから下流側トロリーコンベヤＣへの乗り継ぎ動作について説明すると、上流側トロリーコンベヤＡから乗り継ぎトロリーコンベヤＢへの乗り継ぎ動作と同様であって図示しないが、乗り継ぎトロリーコンベヤＢのキャリアＢ１が下流側トロリーコンベヤＣの移載ゾーンに到達すると同時に、下流側移載ユニットＥの下流側ストローク駆動手段が上方に旋回して本実施例の乗り継ぎ搬送用ハンガー１００の水平係止アーム１１２を掬い上げ、乗り継ぎトロリーコンベヤＢのキャリアＢ１との係合を外した後、下流側トロリーコンベヤＣの移載ゾーンで下流側移載ユニットＥの下流側掬い取りアーム手段に下方に旋回させて下流側トロリーコンベヤＣのキャリアＣ１へ本実施例の乗り継ぎ搬送用ハンガー１００を受け渡す。
【００２３】
このようにして、本実施例の乗り継ぎ搬送用ハンガー１００は、乗り継ぎトロリーコンベヤＢから下流側トロリーコンベヤＣへの乗り継ぎ動作を完了することができる。
【００２４】
以上のように、本実施例の乗り継ぎ搬送用ハンガー１００は、上流側トロリーコンベヤＡ、トロリーコンベヤ乗り継ぎトロリーコンベヤＢ、下流側トロリーコンベヤＣのキャリアＡ１、Ｂ１、Ｃ１に係脱自在に抱持される逆Ｖ字型係止ヘッド１２０と、被搬送物Ｗを個別に吊持する被搬送物用フック１３０と、上流側移載ユニットＤの掬い取りアーム手段Ｄ１などで掬い取り可能な水平係止アーム１４０とを備えていることにより、搬送ライン上における被搬送物Ｗの寸法、搬送間隔、搬送姿勢を自在として確実な移載タイミングで迅速かつ円滑な移載動作を実現するとともに複数のトロリーコンベヤ間における移載スペースの省スペース化とコンベヤ機構の簡素化を達成することができるなど、その効果は甚大である。
【図面の簡単な説明】
【００２５】
【図１】本実施例の乗り継ぎ搬送用ハンガーを用いたコンベヤ機構の全体概要図。
【図２】図１の点線で囲む領域の正面図。
【図３】上流側トロリーコンベヤにおけるハンガー搬送状態を示す正面図。
【図４】乗り継ぎトロリーコンベヤにおけるハンガー搬送状態を示す正面図。
【図５】本実施例の乗り継ぎ搬送用ハンガーを示す斜視図。
【図６】上流側トロリーコンベヤにおける移載状態の説明図。
【図７】乗り継ぎトロリーコンベヤにおける移載状態の説明図。
【符号の説明】
【００２６】
１００・・・乗り継ぎ搬送用ハンガー
１１０・・・吊持用ロッド本体
１２０・・・逆Ｖ字型係止ヘッド
１３０・・・被搬送物用フック
１４０・・・水平係止アーム
１５０・・・落下防止用ガイドプレート
Ａ・・・上流側トロリーコンベヤ
Ａ１・・・キャリア
Ａ２・・・トロリー
Ｂ・・・乗り継ぎトロリーコンベヤ
Ｂ１・・・キャリア
Ｂ２・・・トロリー
Ｃ・・・下流側トロリーコンベヤ
Ｄ・・・上流側移載ユニット
Ｄ１・・・上流側掬い取りアーム手段
Ｄ２・・・上流側ストローク駆動手段
Ｅ・・・下流側移載ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項１】
被搬送物を垂下状態の吊持用ロッド本体でトロリーコンベヤと共働して搬送するとともに複数のトロリーコンベヤ間を移載ユニットと共働して乗り継ぐ乗り継ぎ搬送用ハンガーにおいて、
前記吊持用ロッド本体の最上端に設けられて前記トロリーコンベヤのキャリアに係脱自在に抱持される逆Ｖ字型係止ヘッドと、前記吊持用ロッド本体の最下端に設けられて被搬送物を個別に吊持する被搬送物用フックと、前記吊持用ロッド本体の最上端と最下端との中間位置に設けられて前記移載ユニットの掬い取りアーム手段で掬い取り可能な水平係止アームとを備えていることを特徴とする乗り継ぎ搬送用ハンガー。

【図１】