説明

乗客コンベアのハンドレール案内装置

【課題】曲線部のハンドレールに馴染みやすくしてハンドレールの走行抵抗を低減し、部品の交換や新設も容易な乗客コンベアのハンドレール案内装置を提供する。
【解決手段】直線部と曲線部をと有する乗客コンベアのハンドレール案内装置において、曲線部3は、曲線状ハンドレールフレーム6の両端部に固定した一対の係止具13と、前記各係止具13に各端部を係止させて前記曲線状ハンドレールフレーム6に沿って張設しリンクプレートを有するローラチェーン10と、前記リンクプレートに回転自在に軸支されハンドレール4の走行と共にハンドレール4の裏面4aに接して回転する大径のローラ7aと、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータや電動道路(動く道路)などの乗客コンベアに関し、特に、欄干曲線部に設ける乗客コンベアのハンドレール案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の乗客コンベアのハンドレール案内装置は、特開平7−304583号公報に掲載されている。その乗客コンベアのハンドレール案内装置は、乗客コンベアについては、構造体である欄干の周囲にハンドレールフレームを取り付けて一体的にし、直線部及び曲線部からなる乗客コンベアの周囲に無端状のハンドレールを走行させるようになっている。そして、曲線部においては、ハンドレールフレームに一定間隔で固定したピンによって軸支されたゲートローラを設け、そのゲートローラがハンドレールの裏面によって圧接されるようになっている。このような構成によって曲線部におけるゲートローラがハンドレールの走行にともなって回転することにより、曲線部のハンドレールの走行抵抗を減じ走行案内をしている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平07−304583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
乗客コンベアの両乗降口の曲線部(湾曲形状部)の欄干においては、ハンドレールを湾曲した欄干形状に変形させて走行案内する。そこで、本来ならば直線状態になろうとするハンドレールを、湾曲した欄干形状に形状を変形させて走行案内するので、曲線部でハンドレールの欄干に対する走行抵抗が発生する。この走行抵抗を減ずる手段として、曲線部欄干にゲートローラを設け、そのゲートローラがハンドレール裏面に圧接して回転する構造としている。
【0004】
このような欄干の構成とすることにより、曲線部欄干のハンドレール走行の走行抵抗を減じスムーズにハンドレールを走行することができる。
【0005】
ところが、ハンドレールが欄干と接触し、ハンドレール裏面が磨耗することにより発生する磨耗粉や雨滴がゲートローラを支持するピン部に入り込むことで、ピンとゲートローラが固渋して、回転せずに故障することも有りうる。故障した場合には、故障した部分のみを交換して対処すべきであるが、ピンが挿入される欄干部品の孔部がクリープしたり、又はゲートローラを支持するピンが直接欄干に設けられていることにより、支持する欄干を丸ごと交換する必要がある。
【0006】
また、ゲートローラを備えていない欄干の乗客コンベアのハンドレール走行抵抗を減ずるため、ゲートローラを備えた曲線部欄干に改造するには、ゲートローラを支持する欄干構造とするため、ピンを挿入する孔部を設けなければならないので、改造が困難で、多大な労力を要した。
【0007】
また、ゲートローラは、直線状に戻りたがるハンドレールを曲線欄干の形状に合わせて変形させて走行させているため、走行方向、またハンドレール自体の構造、材質の特性によっては、ハンドレールが曲がりきらずに、多数のゲートローラの内の一部のゲートローラのみ圧接して回転するという状態となり、この結果、圧接するゲートローラのみハンドレールの押圧が増し、ゲートローラの使用限界を超え故障する問題がある。
【0008】
換言すると次のとおりである。即ち、この従来の乗客コンベアのハンドレール案内装置によると、ゲートローラに磨耗粉等が入り込む余地があるため、ピンとゲートローラの間に固渋が生じてゲートローラの回転が困難になるという問題が生じる。また、ゲートローラを交換するには、ハンドレールフレームを丸ごと交換する必要があった。また、ゲートローラを有さない既設の乗客コンベアに新たにゲートローラを設けて改造しようとすると、ゲートローラを取り付けるためのピン加工等をしなければならず、改造が困難であり、多大の労力を要する。さらに曲線部のハンドレールは、直線状に戻ろうとする作用が働くので、あるゲートローラとは圧接しても他のゲートローラとは圧接しないことも生じ、圧接するゲートローラには過負荷がかかってしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、上記した従来技術が有する課題を解決するため、曲線部のハンドレールに馴染みやすくしてハンドレールの走行抵抗をより低減し、ローラ等の部品の交換や新設も容易な乗客コンベアのハンドレール案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために本願の請求項1の発明は、無端状のハンドレールを直線部では直線状ハンドレールフレームにより案内し、かつ、曲線部では曲線状ハンドレールフレームとの間に配置するローラに接して、ハンドレールフレームの外周を走行する乗客コンベアのハンドレール案内装置において、前記曲線部は、前記曲線状ハンドレールフレームの両端部に取付けた一対の係止具と、前記各係止具に各端部を係止させて前記曲線状ハンドレールフレームに沿って張設され、ローラー、ピン及びリンクプレートを有するローラチェーンと、前記ピンに1つ置きに嵌合され、外径が前記リンクプレートの高さより大きく、前記ハンドレールの裏面に接して回転するローラと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、屈曲自在のローラチェーンにローラが装備されているから、曲線部のハンドレールを馴染ませることができ、ハンドレールの走行抵抗を低減することができ、スムーズで、安定した乗客コンベアのハンドレール案内装置を提供することが出来る。
【0012】
また、本発明によれば、ローラチェーンの張り調整が、伸縮具により、簡単にできるばかりでなく、ハンドレールフレームを外すまでもなくローラチェーンのみを外してメンテナンスを行うことができる。
【0013】
さらに、本発明によれば、リンクプレートの高さより大きい外径のローラを嵌め込んだものであるから、通常のローラチェーンを略そのまま利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態のハンドレール曲線部におけるハンドレール案内装置のローラチェーンの張設方向の断面図である。図2は、本発明のハンドレール直線部を含む乗客コンベアの乗降口部のハンドレール曲線部側面図である。図3は、図2のA−A線に沿ったハンドレール、ハンドレール案内装置、欄干等の断面図である。図4は、図1に示すローラチェーン10の要部拡大断面図である。
【0016】
図2、図1及び図3において、1は乗客コンベア(エスカレータ)、2は直線部、3は曲線部(湾曲部)、4はハンドレール、5は欄干、6はハンドレールフレームである。
【0017】
ハンドレール4は、無端状の環状体で、ハンドレールフレーム6により案内され 循環走行する。ハンドレールフレーム6の湾曲部には、ガイド9がボルト9aにより固定されている。このガイド9は、図1に示すように断面がコの字形をしており、後述するローラチェーンの外側リンクプレート12の下端側を支えるように構成されている。
【0018】
図1、図3及び図4に示すように、ローラチェーン10は、外側リンクプレート11に挟まれてピン8で連結された2枚の内側リンクプレート12の間にローラ7がピン8で回動自在に装備されている。前記ローラ7は、大径のローラ7aと小径のローラ7bとから構成され、大径のローラ7aと小径のローラ7bとは交互(大径ローラ7aは1つ置き)に配置されている。また、小径ローラ7bは一般のローラチェーンに当初から備わっているものであり、大径ローラ7aは、リンクプレート11、12の高さhより十分に大きくなっている。
【0019】
ローラチェーン10の両端となる外側リンクプレート11には係止孔が穿設されている。図1に示すように、係止具13は曲線部3における曲線状ハンドレールフレーム6に2箇所で固設している。この係止具13は、略L字状をしており、一方辺13aを曲線状ハンドレールフレーム6に取り付けられ、この他方辺13bには係止孔が穿設されている。
【0020】
図においては一方の係止具13だけ示してあるが、同様の構成の係止具がローラチェーン10反対側端部に設置され、曲線状ハンドレールフレーム6に固定されている。
【0021】
14は伸縮具であって、本実施態様では、ターンバックルとしている。ターンバックル14の両側には双方に伸縮自在な連結部材14a、14bが付属されている。そして連結部材14aを係止具13の係止孔15cと、連結部14bをローラチェーン10の係止孔11aとそれぞれ別途用意したピン等によって連結してある。
【0022】
図3に示すように、曲線状ハンドレールフレーム6は断面において底部6a及び突出辺6b、6bからなる略U字状の案内溝をなしており、底部6aを曲線部3の欄干5aに固定し、開放口がハンドレール4を望むようになっている。
【0023】
曲線状ハンドレールフレーム6の両突出辺6b、6b間に前記ガイド9およびローラチェーン10が収納されている。両突出辺6b、6bの高さはローラチェーン10に設けた大径ローラ7aの外周より低位になるように抑えてある。
【0024】
次に、この構成における曲線部3におけるハンドレール4と一連のローラ7の動作について説明する。
【0025】
ハンドレール4が図示しない駆動装置によって走行動作に入ると、曲線部3においてはハンドレール4の裏面4a側が一連の大径ローラ7aに接しながら走行する。このときのハンドレール4の裏面4a側は、一連のローラ7aに略均等に接触力で走行する。また、
ハンドレール4は無端状の全体としても曲線部3はもとより直線部2でもハンドレールフレーム6に案内されて走行する。つまり、無端状のハンドレール4はすべてのハンドレールフレーム6上のいずれの位置において、揺れの少ない安定した走行が可能となる。
【0026】
もし、ハンドレール4が走行中にもし少しでも蛇行が生じた場合には、いったん走行を停止させ、ターンバックル14の連結部14a、14bを微調整し、ローラチェーン10の緊張を高めればよい。したがって、ハンドレール4の端部4b、4bが曲線部ハンドレールフレーム6に摺接し磨耗粉が発生する事態を可及的に緩和することができる。
【0027】
また、ターンバックル14を介装させることによって、ローラチェーン10を容易に取外すことができるから、経年劣化等によりローラ7aの交換をおこなう場合、簡単に容易に交換できる。
【0028】
さらに、このような装置を設けていない既設の乗客コンベア用のハンドレール案内装置に対しても、極めて短時間で、かつ容易に付設施工をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態の曲線部のハンドレール案内装置の断面図である。
【図2】本発明のハンドレール曲線部を含む乗客コンベアの乗降口部の側面図である。
【図3】図2のA−A線に沿ったハンドレール、ハンドレール案内装置、欄干等の断面図である。
【図4】図1に示すローラチェーン10の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 乗客コンベア(エスカレータ)
2 直線部
3 曲線部
4 ハンドレール
5 欄干
6 ハンドレールフレーム
7 ローラ
8 ローラピン
9 ガイド
10 ローラチェーン
11 外側リンクプレート
12 内側リンクプレート
13 係止具
14 伸縮具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状のハンドレールを直線部では直線状ハンドレールフレームにより案内し、かつ、曲線部では曲線状ハンドレールフレームとの間に配置するローラに接して、ハンドレールフレームの外周を走行する乗客コンベアのハンドレール案内装置において、前記曲線部は、前記曲線状ハンドレールフレームの両端部に取付けた一対の係止具と、前記各係止具に各端部を係止させて前記曲線状ハンドレールフレームに沿って張設され、ローラー、ピン及びリンクプレートを有するローラチェーンと、前記ピンに1つ置きに嵌合され、外径が前記リンクプレートの高さより大きく、前記ハンドレールの裏面に接して回転するローラと、を備えることを特徴とする乗客コンベアのハンドレール案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−124065(P2006−124065A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312382(P2004−312382)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】