説明

乗客コンベアの乗客逆進入防止装置

【課題】ゲートや開閉扉を用いることなく、乗降口を広い空間に保持し、かつ外観を低下させずに、乗客の逆進入を防止することができる乗客コンベアの乗客逆進入防止装置を提供する。
【解決手段】乗降口3間で複数のステップ2が無限循環移動することによりそのステップ2に乗った乗客を一方向に搬送する乗客コンベアにおいて、乗降口3の床下の機械室9内に立体映像装置13を設置する。そして立体映像装置13により、乗降口3の空間部に、その乗降口3においてステップ2の移動方向とは逆方向から乗客が乗り込もうとする逆進入を禁止するための立体映像を結像させ、その立体映像に基づいて乗客の逆進入を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エスカレータや動く歩道などの乗客搬送用の乗客コンベアに係り、その乗客コンベアのステップの移動方向とは逆方向から乗客がステップに乗り込もうとするときのその乗り込みを防止する乗客コンベアの乗客逆進入防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアとしての例えばエスカレータにおいては、無端状に連結された複数のステップが建屋の下階の乗降口と上階の乗降口との間に傾斜して設けられ、その各ステップが無限循環移動することで乗降口からステップの上に乗った乗客が一方向に搬送される。
ステップが建屋の下階から上階に向って移動するアップ運転のときには、乗客は下階の乗降口からステップに乗り込むわけであるが、ステップの移動方向は遠方からでは分かりずらく、このためステップの移動方向とは逆の方向から乗客が乗り込もうとする逆進入をしてしまうことがある。
【0003】
このため、従来においては、特開平11−171456号公報に見られるように、乗降口の上部に進入禁止を表示するパネル付きのゲートや、乗客の進入を阻止する開閉扉を設置して乗客の逆進入を防止する手段が採られることがある。
ところで、近年、例えば特開2009−75483公報に見られるように、所要の映像を空間に立体空中映像として結像させることが可能な立体映像装置が提供され、公知となっている。さらに、立体映像に関する技術としては、特表昭59−500532公報、特開平11−184362公報、特開2002−258215公報などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−171456号公報
【特許文献2】特開2009− 75483公報
【特許文献3】特表昭59−500532号公報
【特許文献4】特開平11−184362号公報
【特許文献5】特開2002−258215公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開平11−171456号公報のように、乗降口にゲートや開閉扉を設置して乗客の逆進入を防止する手段においては、乗降口にそのゲートや開閉扉を設置するための広い空間を確保しなければならないばかりでなく、そのゲートや開閉扉により外観が損なわれ、見栄えが悪くなり、またそのゲートや開閉扉が乗客の歩行の妨げになりやすい難点がある。
【0006】
この発明はこのような点に着目してなされたもので、その目的とするところは、ゲートや開閉扉を用いることなく、乗降口を広い空間に保持し、かつ外観を低下させずに、乗客の逆進入を防止することができる乗客コンベアの乗客逆進入防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために、請求項1の発明は、乗降口間で複数のステップが無限循環移動することによりそのステップに乗った乗客を一方向に搬送する乗客コンベアにおいて、前記乗降口の空間部に、その乗降口において前記ステップの移動方向とは逆方向から乗客が乗り込もうとする逆進入を禁止するための立体映像を結像させることが可能な立体映像装置を前記乗降口の床下の機械室内に設けてなることを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、前記乗降口には人感センサが設けられ、この人感センサが前記乗降口において逆進入しようとする乗客を検知したときに、前記立体映像装置が制御手段により駆動され、前記乗降口の空間部に逆進入を禁止するための立体映像が結像されることを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明は、前記人感センサが逆進入しようとする乗客を検知した以後にも、さらにその乗客がステップに接近する方向に移動したときに、逆進入よる注意を音声によるアナウンスで報知する報知手段を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、ゲートや開閉扉を用いることなく、乗降口を広い空間に保持し、かつ外観を低下させずに、乗客の逆進入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施形態に係る乗客コンベアの乗降口部分を示す斜視図。
【図2】制御回路の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1には、乗客コンベアとしてのエスカレータの乗降口部分を示してある。エスカレータ1は、無端状に連結された複数のステップ2を有し、これらステップ2が無限循環移動することでステップ2に乗った乗客が一方向に搬送される。このエスカレータ1は、建屋の上階と下階との間に設置され、ステップ2がその上階から下階に向って移動するダウン運転の場合であって、図1にはその下階の乗降口3の周辺部分の外観を示してある。
ステップ2の両側にはスチール製のスカートガードパネル5及びガラス製の欄干パネル6が設けられている。欄干パネル6はスカートガードパネル5の上に設置され、各欄干パネル6の縁部には無端状の手すりベルト7が装着され、これら手すりベルト7がステップ2と同期してステップ2と同じ方向に同じ速度で移動する。
【0014】
乗降口3の床の下方は機械室9としての凹部となっており、この機械室9の上部の開口部に乗降板10が脱着可能に設けられ、この乗降板10により乗降口3の床が構成されている。乗降板10は建屋のフロアとほぼ面一に設置されている。
ダウン運転中のエスカレータ1のステップ2に乗って下階の乗降口3にまで搬送された乗客は、その下階の乗降板10の上に降り、その乗降板10の上を歩行して建屋のフロアに進む。
乗降口3の床下の機械室9内には公知の立体映像装置(3次元空中映像ディスプレイ装置)13が設けられている。この立体映像装置13は、駆動手段による駆動で乗降板10に形成された透光部10aを通して所要の立体映像を乗降板10の上方の乗降口13の空間部に結像させることが可能となっている。立体映像は乗降板10の上の例えば1mほどの高さ位置に結像されるように設定されている。
【0015】
乗降口3には、乗降板10の前方から乗降口3に向って移動する人の動きを検出する人感センサ15及び音声を発するスピーカー16が設けられている。これらセンサ15及びスピーカー16は、例えばエスカレータ1のスカートガードパネル5の端部に設けられている。
【0016】
図2には制御回路の構成を示してあり、立体映像装置13は制御手段としての制御盤17を介して駆動される。そして制御盤17に人感センサ15の信号が入力され、また制御盤17を介してスピーカー16が駆動されるようになっている。
次に作用について説明する。
【0017】
エスカレータ1を利用しようとする乗客が乗降板10の前方側から乗降口3に向って逆進入し、乗降板10の手前側の所定の位置(例えば3m)にまで移動すると、その乗客の動きが人感センサ15により検知され、その検知信号が制御盤17に入力される。そしてこの検知信号の入力に応じて制御盤17による制御で立体映像装置13が駆動され、この立体映像装置13により乗降板10の上方に進入禁止をイメージさせる所定の立体映像が空中に浮き上がるように結像され、この立体映像が逆進入しようとする乗客の視野に入り、このため乗客に逆進入であることを気付かせることができ、したがって誤った逆進入を防止することができる。
【0018】
この際、立体映像に気付かずにさらに乗客がエスカレータ1に接近した(乗降板10から例えば1m)ときには、その接近が人感センサ15により検知され、その検知信号に基づいて制御盤17による制御でスピーカー16が駆動され、例えば『逆進入です。エスカレータには乗れません。』というような注意を促す音声がアナウンスされ、これにより乗客が逆進入に気付き、誤った逆進入が防止される。
【0019】
乗客が逆進入に気付いて乗降口3の付近から立ち去ると、それが人感センサ15により検知され、その検知信号に基づく制御盤17の制御でスピーカー16の動作や立体映像装置13の動作が停止し、待機状態に戻る。立体映像装置13の動作の停止は、例えば人感センサ15が30秒間継続して人などの検知対象物を検知しなくなったときとする。
【0020】
このようにこの逆進入防止装置は、乗降板10の下方の機械室9内に立体映像装置13を設置し、その立体映像装置13により乗降板10の上方に立体映像を結像させることで乗客の逆進入を防止するものであり、したがって乗降板10の上にゲートや開閉扉を設置するものと異なり、乗降板10の上方の空間を狭めることなく広い空間のまま保持でき、外観を良好に保持でき、またダウン運転のエスカレータから乗降板10の上に降りた乗客の歩行の邪魔となることもない。さらに、この立体映像に乗客がぶつかったとき(重なったとき)でも、乗客に不具合を起こさせることはない。
【0021】
なお、アップ運転のエスカレーの場合にはその上階側の乗降口に同様の逆進入防止装置を設けるが、一般にエスカレータはダウン運転とアップ運転とが適宜切り換えられることがあるから、下階側の乗降口と上階側の乗降口との両方に逆進入防止装置を設置することが好ましい。
また、前記実施形態では、逆進入しようとする乗客が乗降口3に近付いたときにその乗客を人感センサ15で検知して立体映像を結像させるようにしたが、乗客の近付きの有無に関係なく、常に乗降板10の上方の空間に立体映像を結像させるような場合であってもよい。そして、その立体映像としては、逆進入を禁止する内容の映像と併せて広告用の映像を結像させて宣伝効果を得るようにしてもよい。
【0022】
さらにこの発明の逆進入防止装置は、エスカレータに適用する場合に限らず、ステップがほぼ水平に移動し、そのステップに乗る乗客を水平な一方向に搬送する動く歩道などにおいても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1…エスカレータ
3…乗降口
5…スカートガードパネル
6…欄干パネル
7…ベルト
9…機械室
10…乗降板
10a…透光部
13…立体映像装置
15…人感センサ
16…スピーカー
17…制御盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降口間で複数のステップが無限循環移動することによりそのステップに乗った乗客を一方向に搬送する乗客コンベアにおいて、
前記乗降口の空間部に、その乗降口において前記ステップの移動方向とは逆方向から乗客が乗り込もうとする逆進入を禁止するための立体映像を結像させることが可能な立体映像装置を前記乗降口の床下の機械室内に設けてなることを特徴とする乗客コンベアの乗客逆進入防止装置。
【請求項2】
前記乗降口には人感センサが設けられ、この人感センサが前記乗降口において逆進入しようとする乗客を検知したときに、前記立体映像装置が制御手段により駆動され、前記乗降口の上方空間部に逆進入を禁止するための立体映像が結像されることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの乗客逆進入防止装置。
【請求項3】
前記人感センサが逆進入しようとする乗客を検知した以後にも、さらにその乗客がステップに接近する方向に移動したときに、逆進入よる注意を音声によるアナウンスで報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の乗客コンベアの乗客逆進入防止装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−20757(P2011−20757A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164994(P2009−164994)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】