説明

乗客コンベアの制御装置

【課題】どの安全装置が動作したかを検出するための配線の削減を図ることができる乗客コンベアの制御装置を提供する。
【解決手段】電圧供給源に対して直列に接続され、乗客コンベアに設けられた複数の安全装置の各々の動作に応じて開放する複数の検知接点と、複数の検知接点の各々に近接して設けられ、複数の検知接点の各々に対して並列に接続された複数の電圧降下回路と、電圧供給源から最も遠い検知接点の電圧供給源とは反対側の端部の電圧を検出して、どの安全装置が動作したかを検出する監視装置と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗客コンベアの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の乗客コンベアの制御装置は、異常を検出する複数の安全スイッチと、この安全スイッチの動作に応じて開放する複数の第1および第2の安全スイッチ状態入力手段と、駆動装置を起動および停止する運行制御出力手段と、CPUを有し、運転運行出力手段を制御して乗客コンベアの運行および停止制御を行う運行監視手段とを備えるとともに、第1の安全スイッチ状態入力手段の開放に応じて運行制御出力手段を動作させ乗客コンベアを停止するようにそれぞれの第1の安全スイッチ状態入力手段および運行制御出力手段のコイルを直列に接続した非常停止回路と、第2の安全スイッチ状態入力手段の開放に応じて運行監視手段を介して運行制御出力手段を動作させ乗客コンベアを停止する安全スイッチ監視回路とを備えている。かかる乗客コンベアの制御装置の非常停止回路および安全スイッチ監視回路においては、安全スイッチ状態入力手段の共有化が図られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記構成の乗客コンベアの制御装置によれば、非常停止回路及び安全スイッチ監視回路に接続される電源供給側の配線、即ち、乗客コンベアのフレーム全域に引き回される配線を1本少なくすることにより安全スイッチ周辺の回路構成を簡素化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−263573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のものにおいては、各安全装置から制御回路まで複数の配線が必要となる。このため、安全装置の数に応じて配線が多くなってしまうという問題があった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、どの安全装置が動作したかを検出するための配線の削減を図ることができる乗客コンベアの制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る乗客コンベアの制御装置は、電圧供給源に対して直列に接続され、乗客コンベアに設けられた複数の安全装置の各々の動作に応じて開放する複数の検知接点と、前記複数の検知接点の各々に近接して設けられ、前記複数の検知接点の各々に対して並列に接続された複数の電圧降下回路と、前記電圧供給源から最も遠い前記検知接点の前記電圧供給源とは反対側の端部の電圧を検出して、どの安全装置が動作したかを検出する監視装置と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、どの安全装置が動作したかを検出するための配線の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1における乗客コンベアの制御装置が利用される乗客コンベアの側面図である。
【図2】この発明の実施の形態1における乗客コンベアの制御装置の一般的な配線の構成を説明するための図である。
【図3】この発明の実施の形態1における乗客コンベアの制御装置に特有な配線の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における乗客コンベアの制御装置が利用される乗客コンベアの側面図である。
図1において、1は乗客コンベアである。この乗客コンベア1は、例えば、建築物の上下階に跨って設けられる。利用者は、マンコンベア1を利用して建築物の上下階間を移動することができる。
【0012】
かかる乗客コンベア1には、利用者の安全を守ることを目的として、複数の安全装置が設けられる。図1においては、安全装置として、駆動チェーン安全装置(DCS)2、調速装置(HGD)3、スカートガード安全装置(SSS)4、インレット安全装置(HGS)5、踏段異常走行検出装置(CRS)6、手摺スリップ検出装置(HSS)7が設けられる。
【0013】
駆動チェーン安全装置2は、駆動チェーン(図示せず)の破断や伸びを検出する機能を備える。調速装置3は、乗客コンベア1の速度が定格速度の120%〜130%になったときや減速したことを検出する機能を備える。スカートガード安全装置4は、スカートガード(図示せず)と踏段(図示せず)との間に物等が挟まったことを検出する機能を備える。
【0014】
インレット安全装置5は、手摺出入口(図示せず)に手元が引き込まれたことを検出する機能を備える。踏段異常走行検出装置6は、踏段とスカートガードとの間や踏段相互間に物が挟まれて踏段が浮き上がったことを検出する機能を備える。手摺スリップ検出装置7は、手摺が踏段に対して速くなったり遅くなったりしたことを検出する機能を備える。
【0015】
また、図1においては図示しなかったが、乗客コンベア1の下部にも各種安全装置が設けられる。これらの装置2〜7等の検出状態は、監視装置(図1においては図示せず)に監視されている。そして、監視装置は、いずれの装置2〜7が上記内容を検出した場合でも、乗客コンベア1を停止させる。これにより、乗客コンベア1の利用者の安全が図られる。
【0016】
次に、図2を用いて、各安全装置と監視装置9との一般的な配線の構成を説明する。
図2はこの発明の実施の形態1における乗客コンベアの制御装置の一般的な配線の構成を説明するための図である。
【0017】
図2において、8は複数の検知接点である。これらの検知接点8は、5台の安全装置(図示せず)の各々が動作すると開放する常閉接点からなる。これらの検知接点8は、電圧供給源に対して直列に接続される。これらの検知接点8の出力側は、監視装置9に接続される。監視装置9は、これらの検知接点8の出力電圧を検出する。
【0018】
かかる配線構成においては、特定の検知接点8が開放されると、当該検知接点8よりも監視装置9側の検知接点8は電圧供給源から遮断される。このため、当該検知接点8以降の検知接点8の出力電圧は0となる。即ち、監視装置9は、各検知接点8の出力電圧に基づいて、どの安全装置が動作したかを検出することができる。
【0019】
ここで、乗客コンベア1は、設置スペースを削減することを目的として省スペース化が図られている。特に、安全装置のための配線は、乗客コンベア1全体に配置されることになる。このため、安全装置の省配線化が望まれている。しかしながら、上述した一般的な配線においては、各検知接点8に対応して、複数の配線を監視装置9に引き回す必要がある。即ち、安全装置の増加に伴い、配線の数を増加させる必要がある。
【0020】
そこで、本実施の形態では、どの安全装置が動作したかを検出するための配線の削減を図ることができる構成とした。以下、本実施の形態における安全装置の配線の構成を具体的に説明する。
【0021】
図3はこの発明の実施の形態1における乗客コンベアの制御装置に特有な配線の構成を説明するための図である。
まず、図3の上段を用いて、本実施の形態に特有な配線の構成について説明する。
図3の上段に示すように、複数の検知接点8は、一般的な配線の構成と同様に、電圧供給源に対して直列に接続される。
【0022】
そして、これらの検知接点8の各々に近接して複数の電圧降下回路10が設けられる。これらの電圧降下回路10は、例えば、抵抗からなる。これらの電圧降下回路10は、複数の検知接点8の各々に対して並列に接続される。そして、電圧供給源から最も遠い検知接点8の電圧供給源とは反対側の端部の電圧が監視装置9に検出される。
【0023】
また、本実施の形態においては、補正用配線11も設けられる。この補正用配線11は、複数の検知接点8の配線に沿って配置される。即ち、補正用配線11は、複数の検知接点8の配線と略同等の長さとなっている。そして、補正用配線11は、検知接点8と電圧降下回路10とを介さずに電圧供給源と監視装置9との間を接続する。
【0024】
ここで、上記構成を一般化し、安全装置の数をN、電圧降下回路10を通らないときの電圧をVs、各電圧降下回路10での電圧降下をΔVとした場合を考える。この場合、電圧供給源側からn番目の検知接点8に対応する安全装置が動作すると、電圧供給源側からn番目の検知接点8が開放する。
【0025】
かかる開放により、電圧供給源側からn番目以降の電圧降下回路10の各々で電圧降下が発生する。従って、配線自体の電圧降下も考慮すると、監視装置9での検出電圧Vは、電圧降下回路10を通らないときの電圧Vsよりも、この電圧降下の分だけ低下することになる。この場合の監視装置9での検出電圧Vは、次の(1)式で表される。
【0026】
V=Vs−{N−(n−1)}・ΔV (1)
なお、いずれの安全装置も動作していない場合、いずれの検知接点8も閉成している。この場合は、いずれの電圧降下回路10でも、電圧降下が発生しない。このため、監視装置9での検出電圧Vは、補正用配線11の監視装置9側近傍の電圧Vsと略同様となる。
【0027】
次に、図3の上段の具体的構成の場合について、図3の下段を用いて、安全装置の動作の検出方法を説明する。
この場合、安全装置の数Nは5である。従って、電圧供給源側から1番目の検知接点8のS1に対応した安全装置が動作した場合、監視装置9での検出電圧V1は、(1)を用いると、次の(2)式で表される。
V1=Vs−{5−(1−1)}・ΔV=Vs−5ΔV (2)
【0028】
また、同様の計算により、検知接点8のS2〜S5に対応した安全装置が動作した場合の検出電圧V2〜V5は、次の(3)式〜(6)式で表される。
V2=Vs−4ΔV (3)
V3=Vs−3ΔV (4)
V4=Vs−2ΔV (5)
V5=Vs−1ΔV (6)
【0029】
従って、図3の下段に示すように、各検知接点8の動作により、監視装置9での検出電圧Vの階調が異なることになる。しかし、V1〜V5は、電圧降下回路10を通らないときの電圧Vsの大きさに依存してしまう。そこで、監視装置9は、検出電圧Vの値と補正用配線11の電圧供給源とは反対側の端部の電圧Vsの値との差分を電圧降下回路10の電圧降下のみに対応する比較値と比較するように設定されている。そして、監視装置9は、乗客コンベア1の長さに関係なく、上記差分と比較値とを比較して、どの安全装置が動作したかを検出する。
【0030】
以上で説明した実施の形態1によれば、直列に接続された検知接点8の各々に対して、電圧降下回路10が並列に接続される。そして、監視装置9が電圧供給源から最も遠い検知接点8の電圧供給源とは反対側の端部の電圧を検出して、どの安全装置が動作したかを検出する。このため、各安全装置から複数の配線を引き回す必要がなくなる。これにより、どの安全装置が動作したかを検出するための配線の削減を図ることができる。
【0031】
また、電圧降下回路10は、抵抗からなる。このため、安価な構成部品で、どの安全装置が動作したかを検出するための配線の削減を図ることができる。さらに、監視装置9は、電圧供給源から最も遠い検知接点8の電圧供給源とは反対側の端部の電圧の値と補正用配線11の電圧供給源とは反対側の端部の電圧の値との差分を予め設定された比較値と比較して、どの安全装置が動作したかを検出する。このため、補正用配線11のコスト増加のみで、全長の長い乗客コンベア1で配線長が長くなることで導体による電圧降下が起こることが想定された場合でも、どの安全装置が動作したかを確実に検出することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 乗客コンベア、2 駆動チェーン安全装置、 3 調速装置、
4 スカートガード安全装置、 5 インレット安全装置、
6 踏段異常走行検出装置、 7 手摺スリップ検出装置、 8 検知接点、
9 監視装置、 10 電圧降下回路、 11 補正用配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧供給源に対して直列に接続され、乗客コンベアに設けられた複数の安全装置の各々の動作に応じて開放する複数の検知接点と、
前記複数の検知接点の各々に近接して設けられ、前記複数の検知接点の各々に対して並列に接続された複数の電圧降下回路と、
前記電圧供給源から最も遠い前記検知接点の前記電圧供給源とは反対側の端部の電圧を検出して、どの安全装置が動作したかを検出する監視装置と、
を備えたことを特徴とする乗客コンベアの制御装置。
【請求項2】
前記複数の電圧降下回路は、抵抗からなることを特徴とする請求項1記載の乗客コンベアの制御装置。
【請求項3】
前記複数の検知接点の配線に沿って配置され、前記電圧供給源と前記監視装置とを、前記検知接点と前記電圧降下回路とを介さずに接続した補正用配線を備え、
前記監視装置は、前記電圧供給源から最も遠い前記検知接点の前記電圧供給源とは反対側の端部の電圧の値と前記補正用配線の前記電圧供給源とは反対側の端部の電圧の値との差分を予め設定された比較値と比較して、どの安全装置が動作したかを検出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベアの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−144001(P2011−144001A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5862(P2010−5862)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】