説明

乗客コンベアの手摺りベルト案内装置および乗客コンベア

【課題】手摺りベルトの屈折やノッキング発生の頻度を抑制すると共に、案内機能を果たさなくなってしまう事態を抑制することが可能な乗客コンベアの手摺りベルト案内装置および乗客コンベアを提供する。
【解決手段】乗客コンベアは、乗り口と降り口との間を循環移動する手摺りベルト40と、手摺りベルト40が降り口側から乗り口側に移動する間において手摺りベルト40を案内する手摺りベルト案内装置90とを備えている。また、手摺りベルト案内装置90は、手摺りベルト40の幅方向の変位を規制する規制ローラ94と、手摺りベルト40の幅方向および移動方向に略直交する略直交方向に手摺りベルト40が変位した場合に、手摺りベルト40の変位と同方向に規制ローラ94を変位させる支持アーム92とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアの手摺りベルト案内装置および乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗客コンベア(例えばエスカレータ)において、乗客が手等を置く手摺りベルトは、乗り口側のスカート部から外部に現れ、降り口側まで移動した後に降り口側のスカート部内に引き込まれる。スカート部内に引き込まれた手摺りベルトは、降り口側から乗り口側までの間にトラス構造体内を通過した後、再度、乗り口側のスカート部から外部に現れる。また、乗客コンベアは、手摺りベルト案内装置を備えている。この手摺りベルト案内装置は、降り口側から乗り口側まで手摺りベルトが移動する過程において、手摺りベルトの軌道を確保しながら、乗り口側のスカート部まで手摺りベルトを案内する。
【特許文献1】特開平3−211187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載の手摺りベルト案内装置によれば、手摺りベルト案内装置のローラが手摺りベルトに強く接触することがあり、強く接触した場合には、手摺りベルトを屈曲させたり、ノッキングを発生させたりする可能性がある。また、このような問題を解消するために、手摺りベルト案内装置を取り外すと手摺りベルトの軌道を確保できなくなる可能性が高まり、案内機能を果たさなくなってしまう事態が生じてしまう。
【0004】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、手摺りベルトの屈折やノッキング発生の頻度を抑制すると共に、案内機能を果たさなくなってしまう事態を抑制することが可能な乗客コンベアの手摺りベルト案内装置および乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の乗客コンベアの手摺りベルト案内装置は、乗り口と降り口との間を循環移動する手摺りベルトが、降り口側から乗り口側に移動する間において当該手摺りベルトを案内するものである。この乗客コンベアの手摺りベルト案内装置は、手摺りベルトの幅方向の変位を規制する規制ローラと、手摺りベルトの幅方向および移動方向に略直交する略直交方向に前記手摺りベルトが変位した場合に、前記手摺りベルトの変位と同方向に前記規制ローラを変位させる変位部材とを備えている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の乗客コンベアの手摺りベルト案内装置によれば、手摺りベルトの変位と同方向に規制ローラを変位させる変位部材を備えるため、手摺りベルトが振動等により略直交方向に変位した場合、規制ローラはこの変位に追従するようにして変位することとなる。このように、規制ローラは手摺りベルトに追従して変位するため、手摺りベルトの変位時に規制ローラが手摺りベルトに強く接触することなく、手摺りベルトの屈折やノッキング発生の頻度を抑制することができる。さらに、規制ローラが手摺りベルトと同様に変位をするため、規制ローラが手摺りベルトから外れてしまう頻度も少なくなり、案内機能を果たさなくなってしまう事態を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下では、エスカレータを乗客コンベアの一例として説明するが、乗客コンベアはエスカレータに限らず、動く歩道など、静止状態の乗客を運搬するコンベア装置であれば、他のものであってもよい。
【0008】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るエスカレータの概略側面図である。なお、図1では、図示の関係上、乗客コンベアの内部構成であって乗客コンベアの外部から視認できない一部の構成について、外部から視認可能な状態で図示するものとする。また、図1に示すエスカレータは、下階側が乗り口であり、上階側が降り口である場合を例に説明する。
【0009】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る乗客コンベア1は、トラス構造体10と、多数の踏段20と、一対の欄干30と、手摺りベルト40と、一対のスカート部50と、駆動装置60と、踏段駆動部70と、手摺りベルト駆動部80と、複数の手摺りベルト案内装置90とからなっている。
【0010】
トラス構造体10は、上階床と下階床との間に亘って配置され、三角形を基本単位とする構造の骨組みである。多数の踏段20は、無端状の踏段チェーンによって連結され、トラス構造体10内を介して循環移動するものであり、静止状態にある乗客を運搬するものである。一対の欄干30は、踏段20の幅方向の両側位置に設けられ、乗客が踏段20から幅方向に脱落してしまうことなどを防止する役割を有するものである。手摺りベルト40は、一対の欄干30の周縁部にそれぞれ装着され、乗り口と降り口との間を循環移動するものである。また、手摺りベルト40は、踏段20と同期して移動するものであり、断面が略凹形状(図3参照)となっている。一対のスカート部50は、一対の欄干30の各下方位置を覆うものであって、上階床の降り口から下階床の乗り口の間に亘って設けられている。
【0011】
駆動装置60は、多数の踏段20および手摺りベルト40を循環移動させる際の動力を発生するものである。この駆動装置60は、駆動チェーン61を有し、発生させた動力を踏段駆動部70に伝達する構成となっている。踏段駆動部70は、駆動チェーン61に連結される踏段駆動輪71を有している。この踏段駆動輪71は、中心軸を中心として回転動作する歯車であって、多数の踏段20に対して無端状に連結される踏段チェーン(図示せず)に噛み合う構成となっている。この構成により、駆動装置60の動力が駆動チェーン61を介して踏段駆動輪71に伝達され、踏段駆動輪71から踏段チェーンを介して多数の踏段20に伝達されることとなる。また、踏段駆動部70は、第1スプロケット72を有している。第1スプロケット72は、踏段駆動輪71と中心軸を同じとし、踏段駆動輪71よりも外径が小さくされた歯車である。この第1スプロケット72は、駆動装置60の動力が駆動チェーン61を介して踏段駆動輪71に伝達されると、踏段駆動輪71と同期して回転することとなる。
【0012】
手摺りベルト駆動部80は、第2スプロケット81と、手摺りチェーン82と、手摺駆動輪83と、ガイドローラ84とを有している。第2スプロケット81は、中心軸を中心として回転動作する歯車である。手摺りチェーン82は、第1スプロケット72および第2スプロケット81の双方の歯車に噛み合うものである。この構成により、踏段駆動輪71が回転すると第1スプロケット72が回転し、この回転力が手摺りチェーン82を介して第2スプロケット82に伝達され、第2スプロケット82が回転することとなる。手摺駆動輪83は、第2スプロケット82と中心軸を同じとし、第2スプロケット82よりも外径が大きくされた回転体である。この手摺駆動輪83は、第2スプロケット82の回転に同期して回転することとなる。また、手摺駆動輪83は、手摺りベルト40に接しており、自己の回転によって手摺りベルト40が降り口から乗り口まで移動するための力を付与することとなる。ガイドローラ84は、手摺りベルト40が載置されるローラであって、手摺駆動輪83の力によって手摺りベルト40が移動すると、これに応じて回転する構造となっている。
【0013】
手摺りベルト案内装置90は、乗り口と降り口との間を循環移動する手摺りベルト40が、降り口側から乗り口側に移動する間において当該手摺りベルト40を案内するものである。この手摺りベルト案内装置90は、降り口側から乗り口側において手摺りベルト40が通過する箇所、例えばトラス構造体10内の複数箇所に設置される。
【0014】
図2は、図1に示した手摺りベルト案内装置90の詳細を示す側面図である。なお、各手摺りベルト案内装置90は、構成または近似しているため、図2では1つの手摺りベルト案内装置90のみを説明するものとする。図2に示すように、手摺りベルト案内装置90は、サポート91と、支持アーム(変位部材)92と、軸93と、規制ローラ94と、リミッター95と、初期位置決定部材96とからなっている。
【0015】
サポート91は、トラス構造体10内に固定される板状の部材である。支持アーム92は、断面略L字状の板材である。軸93は、支持アーム92をサポート91に対して回転自在に取り付けるための回転軸となる部材である。規制ローラ94は、支持アーム93の先端側(図2に示す例では手摺りベルト40の移動方向側)に取り付けられるローラである。
【0016】
図3は、図2に示したA−A断面図である。図3に示すように、規制ローラ94は、手摺りベルト40の幅方向および移動方向に直交する略直交方向に伸びる長尺軸94aを有している。この長尺軸94aの一端は、パッキン等を介してナットにより支持アーム92に固定されている。また、規制ローラ94は、ローラ部94bを有している。ローラ部94bは、長尺軸94aの他端に取り付けられており、長尺軸94を中心軸として左右いずれの回転方向にも回転する構成となっている。また、ローラ部94bは、手摺りベルト40が振動等していない場合において、手摺りベルト40のあご部40a,40bに接しないように取り付けられている。このような構成であるため、規制ローラ94は、手摺りベルト40の幅方向に振動等が発生した場合、いずれか一方のあご部40a,40bに接触して幅方向への変位を規制することとなる。さらに、ローラ部94bは、あご部40a,40bに接触した場合、長尺軸94aを中心として回転動作することとなる。さらに、規制ローラ94は、手摺りベルト40の上方側(乗客コンベア1を設置した状態において上方側)に位置しており、手摺りベルト40の内側下面(凹部の内側下面)40cと接しないようになっている。
【0017】
なお、図2および図3において図示を省略しているが、手摺りベルト40の下側にはガイドローラ84が設けられており、手摺りベルト40はガイドローラ84上を進行している。
【0018】
図4は、他の手摺りベルト案内装置の一例を示す断面図である。例えば図4に示すように、位置が固定される規制ローラ100が手摺りベルト101を案内している場合、手摺りベルト101が振動等により浮き上がると、手摺りベルト101が規制ローラ100に強く押しつけられることとなる。このため、手摺りベルト101の屈曲やノッキングの発生を引き起こしてしまう。ところが、第1の実施の形態に係る手摺りベルト案内装置90は、支持アーム92が手摺りベルト40の変位と同方向に規制ローラ94を変位させるため、手摺りベルト40が規制ローラ94に強く押しつけられず、手摺りベルト40の屈曲やノッキングの発生頻度を低減することとなる。
【0019】
再度図2を参照する。リミッター95は、手摺りベルト40から規制ローラ94に向かう方向に、規制ローラ94が規定量を超えて変位してしまうことを防止するものである。例えば、振動等により手摺りベルト40が勢いよく規制ローラ94側に変位した場合には、規制ローラ94を大きく弾くこととなる。このように規制ローラ94が大きく弾かれると、規制ローラ94は手摺りベルト40の凹部から一時的に外れてしまう。この期間において規制ローラ94は手摺りベルト40の案内機能を果たさなくなってしまう。しかし、手摺りベルト案内装置90がリミッター95を備えるため、規制ローラ94は大きく弾かれたとしてもリミッター95によって変位しすぎず、リミッター95がない場合と比較して比較的早くに適切な位置に復帰できることとなる。
【0020】
また、初期位置決定部材96は、規制ローラ94の初期位置を決定するものである。すなわち、初期位置決定部材96は、手摺りベルト40が規制ローラ94側に移動して規制ローラ94を変位させない場合において、規制ローラ94を初期位置に保持するものである。ここで、初期位置とは、例えば図3に示すように、規制ローラ94の下面が手摺りベルト40の凹部下面40cに接することなく、ローラ部94bが手摺りベルト40のあご部40a,40bと直交方向に同位置となる位置をいう。このような初期位置に規制ローラ94を保持することで、規制ローラ94が手摺りベルト40に常時接触することがないようにすることができる。
【0021】
次に、第1の実施の形態に係る手摺りベルト案内装置90の動作を説明する。まず、図2を参照する。例えば、手摺りベルト40に振動が加わって、手摺りベルト40が幅方向に変位したとする。この場合、規制ローラ94は、ローラ部94bが手摺りベルト40の幅方向の変位を規制すると共に、ローラ部94bの回転によって摩擦が少ない状態で手摺りベルト40を案内することとなる。
【0022】
図5は、第1の実施の形態に係る手摺りベルト案内装置90の動作を示す側面図である。図5に示すように、手摺りベルト40に振動が加わって、手摺りベルト40が浮き上がったとする。この場合、手摺りベルト40が支持アーム92に接触して、支持アーム92は軸93を中心として回転動作する。これにより、規制ローラ94は手摺りベルト40に追従して変位することとなる。このため、手摺りベルト40の変位時に規制ローラ94が手摺りベルト40に強く接触することなく、手摺りベルト40の屈折やノッキングの発生の頻度を抑制することとなる。
【0023】
図6は、第1の実施の形態に係る手摺りベルト案内装置90の動作を示す第2の側面図である。図6に示すように、手摺りベルト40に振動が加わって、手摺りベルト40が勢いよく浮き上がったとする。この場合、手摺りベルト40が支持アーム92に勢いよく当たって、手摺りベルト40が規制ローラ94を大きく弾いてしまう。しかし、規制ローラ94が規定量だけ上方に変位すると、支持アーム92の後端側(先端側の反対)がリミッター95に接触する。これにより、規制ローラ94は最大で規定量しか変位しないこととなり、比較的早くに適切な位置に復帰することとなる。
【0024】
以上のようにして、第1の実施の形態に係る乗客コンベア1およびその手摺りベルト案内装置90によれば、手摺りベルト40の変位と同方向に規制ローラ94を変位させる支持アーム92を備えるため、手摺りベルト40が振動等により略直交方向に変位した場合、規制ローラ94はこの変位に追従するようにして変位することとなる。このように、規制ローラ94は手摺りベルト40に追従して変位するため、手摺りベルト40の変位時に規制ローラ94が手摺りベルト40に強く接触することなく、手摺りベルト40の屈折やノッキングの発生の頻度を抑制することができる。さらに、規制ローラ94が手摺りベルト40と同様に変位をするため、規制ローラ94が手摺りベルト40から外れてしまう頻度も少なくなり、案内機能を果たさなくなってしまう事態を抑制することができる。
【0025】
また、手摺りベルト40から規制ローラ94に向かう方向に、規制ローラ94が規定量を超えて変位してしまうことを防止するリミッター95を備える。ここで、手摺りベルト40が勢いよく規制ローラ94側に変位した場合には、規制ローラ94が大きく弾かれることとなる。しかし、手摺りベルト案内装置90がリミッター95を備えるため、大きく弾かれたとしても規制ローラ94はリミッター95によって変位しすぎず、リミッター95がない場合と比較して比較的早くに適切な位置に復帰することとなる。従って、案内機能を果たさなくなってしまう事態を一層抑制することができる。
【0026】
また、規制ローラ94の初期位置を決定すると共に、手摺りベルト40が規制ローラ94側に移動して規制ローラ94を変位させない場合には規制ローラ94を初期位置に保持する初期位置決定部材96を備える。このため、手摺りベルト40に振動等がなく好適な状態で循環移動している場合には、規制ローラ94と手摺りベルト40との位置関係を所定の状態に保つことができる。これにより、規制ローラ94が手摺りベルト40に常時接触するなど、手摺りベルト40の屈折やノッキングの発生が生じやすい状態を回避することが可能となり、手摺りベルト40の屈折やノッキングの発生の頻度を一層抑制することができる。
【0027】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態に係る乗客コンベア1およびその手摺りベルト案内装置90を説明する。第2の実施の形態に係る手摺りベルト案内装置90は、第1の実施の形態のものと同様であるが、一部構成が異なっている。以下、第1の実施の形態と相違点について説明する。
【0028】
図7は、第2の実施の形態に係る手摺りベルト案内装置90の詳細を示す側面図である。図7に示すように、手摺りベルト案内装置90は、第1の実施の形態のものに加えて、移動方向規定ローラ97を備えている。移動方向規定ローラ97は、ガイドローラ84と同様に、手摺りベルトの移動に応じて回転するものである。
【0029】
図8は、図7に示したB−B断面図である。図8に示すように、この移動方向規定ローラ97は、軸部材97aとローラ部97bとを有している。軸部材97aの一端は、支持アーム92に接合等により一体的に取り付けられている。ローラ部97bは、軸部材97aの他端に取り付けられており、軸部材97aを中心軸として回転する構成となっている。また、ローラ部97bは、初期位置において手摺りベルト40の凹部下面40cに接している。これにより、移動方向規定ローラ97は、手摺りベルト40が移動すると、これに伴って回転することとなる。この構成により、手摺りベルト40の移動方向を正規の状態に保ちやすくなり、より好適に手摺りベルトを案内することとなる。
【0030】
また、移動方向規定ローラ97は、支持アーム92に取り付けられているため、手摺りベルト40が略直交方向に変位した場合に、手摺りベルト40の移動と同方向に変位することとなる。これにより、移動方向規定ローラ97についても、規制ローラ94と同様に、手摺りベルト40の屈折やノッキング発生の頻度を抑制することができ、案内機能を果たさなくなってしまう事態についても抑制することができる構成となっている。
【0031】
以上のようにして、第2の実施の形態に係る乗客コンベア1およびその手摺りベルト案内装置90によれば、第1の実施の形態と同様に、手摺りベルト40の変位時に規制ローラ94が手摺りベルト40に強く接触することなく、手摺りベルト40の屈折やノッキングの発生の頻度を抑制することができる。さらに、規制ローラ94が手摺りベルト40から外れてしまう頻度も少なくなり、案内機能を果たさなくなってしまう事態を抑制することができる。また、リミッター95を備えるため、リミッター95がない場合と比較して比較的早くに適切な位置に復帰することとなり、案内機能を果たさなくなってしまう事態を一層抑制することができる。また、規制ローラ94が手摺りベルト40に常時接触するなど、手摺りベルト40の屈折やノッキングの発生が生じやすい状態を回避することが可能となり、手摺りベルト40の屈折やノッキングの発生の頻度を一層抑制することができる。
【0032】
さらに、第2の実施の形態によれば、手摺りベルト案内装置90が移動方向規定ローラ97を備えるため、手摺りベルト40の移動方向を正規の状態に保ちやすくなり、より好適に手摺りベルト40を案内することができる。
【0033】
また、支持アーム92は手摺りベルト40の移動と同方向に移動方向規定ローラ97を変位させるため、手摺りベルト40が振動等により略直交方向に変位した場合、移動方向規定ローラ97は手摺りベルト40の変位に追従するようにして、変位することとなる。このように、移動方向規定ローラ97は追従変位するため、手摺りベルト40の変位に応じて移動方向規定ローラ97が手摺りベルト40に強く接触することなく、手摺りベルト40の屈折やノッキング発生の頻度を抑制することができる。さらに、移動方向規定ローラ97が手摺りベルト40と同様に変位をするため、移動方向規定ローラ97が手摺りベルト40から外れてしまう頻度も少なくなり、案内機能を果たさなくなってしまう事態を一層抑制することができる。
【0034】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態に係る乗客コンベア1およびその手摺りベルト案内装置90を説明する。第3の実施の形態に係る手摺りベルト案内装置90は、第1の実施の形態のものと同様であるが、一部構成が異なっている。以下、第1の実施の形態と相違点について説明する。
【0035】
図9は、第3の実施の形態に係る手摺りベルト案内装置90の詳細を示す側面図である。図9に示すように、手摺りベルト案内装置90は、第1の実施の形態のものに加えて、バネ部材(第1バネ部材)98を備えている。バネ部材98は、一端がサポート91に取り付けられ、他端が支持アーム92の後端側に取り付けられたバネである。また、バネ部材98は、自由状態よりもやや伸びた状態となっており、支持アーム92の後端側を初期位置決定部材96に引き寄せるように力を加えている。
【0036】
このように構成されるため、手摺りベルト40が規制ローラ94側に移動して、規制ローラ94が手摺りベルト40と同方向に変位したときに、バネ部材98は、規制ローラ94に対してもとの位置(初期位置)に復帰させる力を付与することとなる。例えば、手摺りベルト40に振動が加わって、手摺りベルト40が勢いよく浮き上がったとする。この場合、手摺りベルト40が支持アーム92に勢いよく当たって、手摺りベルト40が規制ローラ94を大きく弾いてしまう。ところが、規制ローラ94が大きく弾かれたと同時に、バネ部材98が伸びることとなる。これにより、バネ部材98の復元しようとする力が支持アーム92に加わって、規制ローラ94が弾かれる距離を短くすると共に、弾かれた規制ローラ94に対して早期にもとの位置に復帰させることとなる。
【0037】
以上のようにして、第3の実施の形態に係る乗客コンベア1およびその手摺りベルト案内装置90によれば、第1の実施の形態と同様に、手摺りベルト40の変位時に規制ローラ94が手摺りベルト40に強く接触することなく、手摺りベルト40の屈折やノッキングの発生の頻度を抑制することができる。さらに、規制ローラ94が手摺りベルト40から外れてしまう頻度も少なくなり、案内機能を果たさなくなってしまう事態を抑制することができる。また、リミッター95を備えるため、リミッター95がない場合と比較して比較的早くに適切な位置に復帰することとなり、案内機能を果たさなくなってしまう事態を一層抑制することができる。また、規制ローラ94が手摺りベルト40に常時接触するなど、手摺りベルト40の屈折やノッキングの発生が生じやすい状態を回避することが可能となり、手摺りベルト40の屈折やノッキングの発生の頻度を一層抑制することができる。
【0038】
さらに、第3の実施の形態によれば、手摺りベルト40が規制ローラ94側に移動して、規制ローラ94が手摺りベルト40と同方向に移動したときに、規制ローラ94に対してもとの位置に復帰させる力を付与するバネ部材98を備えている。このため、手摺りベルト40が規制ローラ94側に移動して規制ローラ94を弾いた場合、バネ部材98がない場合と比較して、規制ローラ94を早期にもとの位置に復帰させることができる。これにより、規制ローラ94が案内機能を果たさなくなってしまう頻度を一層抑制することができる。
【0039】
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態に係る乗客コンベア1およびその手摺りベルト案内装置90を説明する。第4の実施の形態に係る手摺りベルト案内装置90は、第2の実施の形態のものと第3の実施の形態のものとを組み合わせた構成となっている。以下、第4の実施の形態に係る手摺りベルト案内装置90について説明する。
【0040】
図10は、第4の実施の形態に係る手摺りベルト案内装置90の詳細を示す側面図である。図10に示すように、手摺りベルト案内装置90は、第1の実施の形態のものに加えて、移動方向規定ローラ97およびバネ部材(第1バネ部材、第2バネ部材)98の双方を備えている。このため、第4の実施の形態において、バネ部材98は、手摺りベルト40が移動方向規定ローラ97側に移動して、移動方向規定ローラ97が手摺りベルト40と同方向に変位したときに、移動方向規定ローラ97に対してもとの位置に復帰させる力を付与することとなる。
【0041】
以上のようにして、第4の実施の形態に係る乗客コンベア1およびその手摺りベルト案内装置90によれば、第2および第3の実施の形態と同様に、手摺りベルト40の変位時に規制ローラ94が手摺りベルト40に強く接触することなく、手摺りベルト40の屈折やノッキングの発生の頻度を抑制することができる。さらに、規制ローラ94が手摺りベルト40から外れてしまう頻度も少なくなり、案内機能を果たさなくなってしまう事態を抑制することができる。また、リミッター95を備えるため、リミッター95がない場合と比較して比較的早くに適切な位置に復帰することとなり、案内機能を果たさなくなってしまう事態を一層抑制することができる。また、規制ローラ94が手摺りベルト40に常時接触するなど、手摺りベルト40の屈折やノッキングの発生が生じやすい状態を回避することが可能となり、手摺りベルト40の屈折やノッキングの発生の頻度を一層抑制することができる。
【0042】
また、手摺りベルト案内装置90が移動方向規定ローラ97を備えるため、より好適に手摺りベルト40を案内することができる。また、移動方向規定ローラ97が手摺りベルト40と同様に変位をするため、移動方向規定ローラ97が手摺りベルト40から外れてしまう頻度も少なくなり、案内機能を果たさなくなってしまう事態を一層抑制することができる。また、バネ部材98を備えるため、バネ部材98がない場合と比較して、規制ローラ94を早期にもとの位置に復帰させることができ、規制ローラ94が案内機能を果たさなくなってしまう頻度を一層抑制することができる。
【0043】
さらに、第4の実施の形態によれば、バネ部材98は、手摺りベルト40が移動方向規定ローラ97側に移動して、移動方向規定ローラ97が手摺りベルトと同方向に移動したときに、移動方向規定ローラ97に対してもとの位置に復帰させる力を付与する。このため、手摺りベルト40が移動方向規定ローラ97側に移動して移動方向規定ローラ97を弾いた場合、バネ部材98がない場合と比較して、移動方向規定ローラ97を早期にもとの位置に復帰させることができる。これにより、移動方向規定ローラ97が案内機能を果たさなくなってしまう頻度を抑制することができる。
【0044】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、各実施の形態を組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態ではエスカレータを乗客コンベア1の一例として挙げたが、これに限らず、乗客コンベア1は動く歩道であってもよい。
【0045】
また、上記実施の形態では、下階側が乗り口であり、上階側が降り口であるエスカレータを例に説明したが、これに限らず、上階側が乗り口であり、下階側が降り口であるエスカレータに適用してもよい。
【0046】
また、上記実施の形態では、手摺りベルト40の下方にガイドローラ84が設けられ、手摺りベルト40が上方にしか変位しない場合を例に説明したが、これに限らず、手摺りベルト40が下方に変位する場合に適用してもよい。さらに、手摺りベルト40が上下に変位する場合に適用してもよい。さらには、手摺りベルト40が左右方向などの他方向に変位する場合に適用してもよい。
【0047】
また、上記実施の形態では、規制ローラ94が手摺りベルト40に常時接することがない手摺りベルト案内装置90を説明したが、これに限らず、非常に弱い力などで規制ローラ94が手摺りベルト40に接触していてもよい。
【0048】
また、第4実施の形態では、1つのバネ部材98を用い、規制ローラ94および移動方向規定ローラ97が弾かれた場合に、これらを初期位置に復帰させる力を付与しているが、バネ部材98は1つに限らず複数であってもよい。また、規制ローラ94を初期位置に復帰させるバネ部材と、移動方向規定ローラ97を初期位置に復帰させるバネ部材とが別々に設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るエスカレータの概略側面図である。
【図2】図1に示した手摺りベルト案内装置の詳細を示す側面図である。
【図3】図2に示したA−A断面図である。
【図4】他の手摺りベルト案内装置の一例を示す断面図である。
【図5】第1の実施の形態に係る手摺りベルト案内装置の動作を示す側面図である。
【図6】第1の実施の形態に係る手摺りベルト案内装置の動作を示す第2の側面図である。
【図7】第2の実施の形態に係る手摺りベルト案内装置の詳細を示す側面図である。
【図8】図6に示したB−B断面図である。
【図9】第3の実施の形態に係る手摺りベルト案内装置の詳細を示す側面図である。
【図10】第4の実施の形態に係る手摺りベルト案内装置の詳細を示す側面図である。
【符号の説明】
【0050】
1...乗客コンベア
10...トラス構造体
20...多数の踏段
30...一対の欄干
40...手摺りベルト
50...一対のスカート部
60...駆動装置
61...駆動チェーン
70...踏段駆動部
71...踏段駆動輪
72...第1スプロケット
80...手摺りベルト駆動部
81...第2スプロケット
82...手摺りチェーン
83...手摺駆動輪
84...ガイドローラ
90...手摺りベルト案内装置
91...サポート
92...支持アーム(変位部材)
93...軸
94...規制ローラ
95...リミッター
96...初期位置決定部材
97...移動方向規定ローラ
98...バネ部材(第1バネ部材、第2バネ部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り口と降り口との間を循環移動する手摺りベルトにおける降り口側から乗り口側に移動する当該手摺りベルトの幅方向の変位を規制する規制ローラと、
前記手摺りベルトの幅方向および移動方向に略直交する略直交方向に前記手摺りベルトが変位した場合に、前記手摺りベルトの変位と同方向に前記規制ローラを変位させる変位部材と、
を備えることを特徴とする乗客コンベアの手摺りベルト案内装置。
【請求項2】
前記手摺りベルトから前記規制ローラに向かう方向に、前記規制ローラが規定量を超える変位を防止するリミッターを備えることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの手摺りベルト案内装置。
【請求項3】
前記規制ローラの初期位置を決定すると共に、前記手摺りベルトが前記規制ローラ側に移動して当該規制ローラを変位させない状態で当該規制ローラを初期位置に保持する初期位置決定部材を備えることを特徴とする請求項2に記載の乗客コンベアの手摺りベルト案内装置。
【請求項4】
前記手摺りベルトが前記規制ローラ側に移動して、前記規制ローラが前記手摺りベルトと同方向に変位したときに、前記規制ローラに対してもとの位置に復帰させる力を付与する第1バネ部材を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の乗客コンベアの手摺りベルト案内装置。
【請求項5】
前記手摺りベルトに接する場合に当該手摺りベルトの移動に応じて回転する移動方向規定ローラを備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の乗客コンベアの手摺りベルト案内装置。
【請求項6】
前記変位部材は、前記手摺りベルトが略直交方向に変位した場合に、前記手摺りベルトの移動と同方向に前記移動方向規定ローラを変位させることを特徴とする請求項5に記載の乗客コンベアの手摺りベルト案内装置。
【請求項7】
前記手摺りベルトが前記移動方向規定ローラ側に移動して、前記移動方向規定ローラが前記手摺りベルトと同方向に変位したときに、前記移動方向規定ローラに対してもとの位置に復帰させる力を付与する第2バネ部材を備えることを特徴とする請求項5または請求項6のいずれかに記載の乗客コンベアの手摺りベルト案内装置。
【請求項8】
乗り口と降り口との間を循環移動する手摺りベルトと、
前記手摺りベルトが降り口側から乗り口側に移動する間において当該手摺りベルトを案内する乗客コンベアの手摺りベルト案内装置とを備え、
前記手摺りベルト案内装置は、前記手摺りベルトの幅方向の変位を規制する規制ローラと、前記手摺りベルトの幅方向および移動方向に略直交する略直交方向に前記手摺りベルトが変位した場合に、前記手摺りベルトの変位と同方向に前記規制ローラを変位させる変位部材と、を有する
ことを特徴とする乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−62103(P2009−62103A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228899(P2007−228899)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】