乗客コンベアの移動手摺、及びその製造方法
【課題】本発明は、接続加工時の作業効率を向上させることができるとともに、加熱時に加熱用型の結合箇所からの芯体の流出を抑えることができる乗客コンベアの移動手摺、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】帯状体第1端1b及び帯状体第2端のテンションメンバ層2dの芯体2において、各テンションメンバ4と各テンションメンバ4の周囲の芯体2の残部とにより複数のテンションメンバ接続部2fが形成される。帯状体第1端1bのテンションメンバ接続部2fと帯状体第2端のテンションメンバ接続部2fとが、手摺用帯状体1aの幅方向に互い違いに組み合わされて、帯状体第1端1bと帯状体第2端とが互いに組み合わせられる。この組み合わせ箇所が加熱されることによって、無端状の移動手摺が形成される。
【解決手段】帯状体第1端1b及び帯状体第2端のテンションメンバ層2dの芯体2において、各テンションメンバ4と各テンションメンバ4の周囲の芯体2の残部とにより複数のテンションメンバ接続部2fが形成される。帯状体第1端1bのテンションメンバ接続部2fと帯状体第2端のテンションメンバ接続部2fとが、手摺用帯状体1aの幅方向に互い違いに組み合わされて、帯状体第1端1bと帯状体第2端とが互いに組み合わせられる。この組み合わせ箇所が加熱されることによって、無端状の移動手摺が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エスカレータ又は動く歩道の手摺レールに設けられ、モータの駆動力により手摺レールに沿って循環移動する乗客コンベアの移動手摺、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の乗客コンベアの移動手摺の製造方法では、移動手摺の長手方向両端の抗張体が熱可塑性材料からなる芯体から露出されて、その抗張体の露出箇所同士が重ね合わせられて、接着剤によって互いに接着される。そして、抗張体同士の接着箇所が芯体により被覆されることにより、無端状の移動手摺が形成される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、他の従来の乗客コンベアの移動手摺の接続方法では、長手方向一方の未加硫ゴム被覆テンションメンバと、長手方向の他方の未加硫ゴム被覆テンションメンバとが、テンションメンバ素線の配線ピッチの1/2寸法分ずらして、互いに重ね合わせられて、その重ね合わせ箇所がプレス加硫されることによって、長手方向両端のテンションメンバ同士が接続される(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−211872号公報
【特許文献2】特開平11−106171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示すような従来の乗客コンベアの移動手摺の接続方法では、抗張体を芯体から露出させて、長手方向両端における抗張体の露出箇所同士を接着させた後、移動手摺を無端状(環状)に接続しているが、芯体の熱融着によって抗張体と芯体とが一体化しており、また、熱可塑性材料は比較的に硬度が高いため、芯体を抗張体から削ぎ落として抗張体を露出させる際の作業は容易ではなく、接続加工時の作業効率が低下していた。
【0006】
また、特許文献2に示すような従来の乗客コンベアの移動手摺の接続方法において、芯体に熱可塑性材料を用いた場合、長手方向両端の芯体同士を接続する際には、芯体が上下分離結合式の加熱用型の結合箇所から型の外部へ流出してしまい、流出したままの状態で芯体が冷え固まると、その箇所に流出痕が残り、移動手摺の接続箇所の意匠性が低下してしまう。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、接続加工時の作業効率を向上させることができるとともに、加熱時に加熱用型の結合箇所からの芯体の流出を抑えることができる乗客コンベアの移動手摺、及びその製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る乗客コンベアの移動手摺の製造方法は、熱可塑性材料により帯状に形成された芯体、芯体の厚み方向一端面に設けられ手摺レールに沿って摺動される耐摩擦材、及び芯体の幅方向に互いに間隔をおいて芯体の長手方向に沿って芯体内に配置された複数の抗張用線材を備えた手摺用帯状体の長手方向両端を互いに接続することにより無端状の移動手摺を形成する製造方法であって、手摺用帯状体の長手方向両端の芯体を、各抗張用線材を含む層である線材層と、耐摩擦材に隣接する層である耐摩擦材層と、線材層に対する耐摩擦材層の反対側の層である表面層とに分離する工程、手摺用帯状体の長手方向両端の線材層から抗張用線材の周囲の芯体を残して、互いに隣り合う抗張用線材同士の間の芯体を除去し、各抗張用線材と各抗張用線材の周囲の芯体の残部とから複数の線材接続部を形成する工程、耐摩擦材層及び表面層を、線材接続部の先端から線材接続部の付け根側へ後退するように詰める工程、手摺用帯状体の長手方向両端の線材接続部同士を、手摺用帯状体の幅方向に互い違いに並べて、その長手方向両端の耐摩擦材層同士及び表面層同士をそれぞれ接合し、その長手方向両端を互いに組み合わせる工程、及び手摺用帯状体の長手方向両端の組み合わせ箇所を加熱して、その長手方向両端を互いに接続する工程を含んでいる製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
この発明の乗客コンベアの移動手摺の製造方法は、各抗張用線材の周囲の芯体の残部と各抗張用線材とにより複数の線材接続部が手摺用帯状体の長手方向両端に形成され、その長手方向両端の線材接続部同士が手摺用帯状体の幅方向に互い違いに並べられて、その長手方向両端の組み合わせ箇所が加熱されることによって、その長手方向両端が互いに接続されるので、特許文献1に示すような接続方法における抗張体の露出工程が不要となることにより、容易に接続加工を行うことができ、接続加工時の作業効率を向上させることができる。これとともに、特許文献2に示すような接続方法とは異なり、帯状体第1端と帯状体第2端とを重ね合わせずに、手摺用帯状体の長手方向一端の芯体の除去箇所を、手摺用帯状体の長手方向他端の線材接続部の芯体が補完することにより、加熱時に加熱用型の結合箇所からの芯体の流出を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による乗客コンベアの移動手摺を示す断面図である。
図において、移動手摺1の形状は、断面C字状でかつ無端状である。また、移動手摺1は、乗客コンベアとしてのエスカレータ又は動く歩道の手摺レール(図示せず)上に設けられ、ステップ(図示せず)とともに乗客を支えるためのものである。さらにまた、移動手摺1は、モータ(図示せず)の駆動によって、ステップと同期して走行する。さらに、移動手摺1は、帯状の手摺用帯状体1aによって形成されており、手摺用帯状体1aの長手方向両端が互いに接続されることによって無端状となっている。
【0011】
手摺用帯状体1aは、長手方向一端である帯状体第1端1bと、長手方向他端である帯状体第2端1cとを有している。また、手摺用帯状体1aは、熱可塑性エラストマ(熱可塑性樹脂)により帯状でかつ断面C字状に形成された芯体2、耐摩擦材としての帆布3、スチールワイヤからなる抗張用線材としての複数のテンションメンバ4によって構成されている。
【0012】
芯体2のC字の内面は、手摺レールに対向している。また、芯体2は、帯状でかつ扁平状であり所定の厚みをもつ手摺面部2aと、手摺面部2aの幅方向一端及び他端に手摺面部2aの長手方向に連続してそれぞれ配置された一対の湾曲部2bとを有している。一対の湾曲部2bは、手摺面部2aの幅方向外側へ向けてそれぞれ湾曲している。一対の湾曲部2bは、手摺面部2aを挟んで互いに逆方向に向けて断面U字状に湾曲している。
【0013】
帆布3は、芯体2のC字の内面に設けられている。また、帆布3は、手摺レール上を摺動される。各テンションメンバ4は、芯体2の幅方向に互いに間隔をおいて芯体2内に設けられ、芯体2の長手方向に沿って配置されている。ここで、芯体2、帆布3及びテンションメンバ4が一体に成型器(図示せず)を通して押し出し成形されることによって、手摺用帯状体1aが形成される。
【0014】
次に、図1の移動手摺1の製造工程について説明する。図2〜11は、図1の移動手摺1の製造工程の一部を説明するための説明図である。なお、図2,6は、手摺用帯状体1aの帯状体第1端1bを示す平面図である。また、図3は、手摺用帯状体1aの帯状体第1端1bを示す断面図である。さらに、図4,7は、手摺用帯状体1aの帯状体第1端1bを示す側面図である。さらにまた、図5は、図3の一部を拡大して示す断面図である。また、図8〜11は、手摺用帯状体1aの帯状体第1端1b及び帯状体第2端1cを示す平面図である。
【0015】
まず、手摺用帯状体1aの帯状体第1端1bが、図2の線Aに沿って切断される。そして、手摺用帯状体1aの帯状体第1端1bのうち、各テンションメンバ4に対する芯体2の帆布3側の箇所(図3のテンションメンバ4の直下の箇所)と、各テンションメンバ4に対する芯体2の反帆布3側の箇所(図3のテンションメンバ4の直上の箇所)とに、手摺面部2aの幅方向に間隔をおいて、即ち図3に示す線B及び線Cに沿って、図2に示すD寸法分の切り込みが入れられる。この切り込みによって、図3に示すように、芯体2が、帆布3に隣接する層である帆布層(耐摩擦材層)2c、各テンションメンバ4を含む層であるテンションメンバ層(線材層)2d、及びテンションメンバ層2dに対する反帆布3側の層である表面層2eの三層に、手摺面部2aの厚み方向に分離される。
【0016】
これらの三層のうち、帆布層2c及び表面層2eが、手摺用帯状体1aの幅方向に沿って、図2に示すE寸法分切断され、テンションメンバ層2dの先端から付け根側に後退するように詰められる。そして、図4に示すように、帆布層2c及び表面層2eがテンションメンバ層2dから押し広げられて、テンションメンバ層2dに、テンションメンバ4の周囲の芯体2を残すように手摺面部2aの厚み方向に、図2に示すF寸法分の切り込み(図5に示す線G及び線H)がテンションメンバ4に沿って入れられ、テンションメンバ4同士の間の芯体2が除去(切除)される。
【0017】
これによって、各テンションメンバ4と、各テンションメンバ4の周囲の芯体2の残部とから複数のテンションメンバ接続部(線材接続部)2fが形成される。これとともに、互いに隣り合うテンションメンバ接続部2f同士の間で、帆布層2c及び表面層2eの間の箇所、即ち芯体2が除去された箇所に、接続隙間2gが形成される。テンションメンバ接続部2fの長さ寸法、及び接続隙間2gの奥行き寸法は、ともに図2に示すF寸法となっており、互いに一致している。
【0018】
また、手摺用帯状体1aの幅方向一端(図2,6の上端)のテンションメンバ層2dには、図6,7に示すように、手摺用帯状体1aの長手方向外側へ突出する挿入部2hが形成され、手摺用帯状体1aの幅方向他端(図2,6の下端)のテンションメンバ層2dには、テンションメンバ接続部2fの先端からテンションメンバ接続部2fの付け根まで窪む切り欠け部2iが形成される。
【0019】
ここで、各切り込みの寸法の一例を挙げると、D寸法が40mmであり、E寸法が80mmであり、F寸法が100mmである。なお、これらの寸法は、D寸法を基準とした場合に、E寸法がD寸法の約2倍となり、F寸法がD寸法の2倍を超える寸法となればよく、加熱用型のサイズに応じて適宜変更可能である。
【0020】
次に、手摺用帯状体1aの帯状体第2端1cについても、手摺用帯状体1aの帯状体第1端1bの場合と同様の加工が施される。そして、手摺用帯状体1aが略環状に曲げられ、図8,9に示すように、帯状体第1端1bと帯状体第2端1cとが互いに突き合わされて(向かい合わされて)配置され、帯状体第1端1bのテンションメンバ接続部2fと、帯状体第2端1cのテンションメンバ接続部2fとが、図10に示すように、手摺用帯状体1aの幅方向に互い違いに並べられる。即ち、手摺用帯状体1aの長手方向両端のテンションメンバ接続部2f同士が、手摺用帯状体1aの幅方向に互い違いに並べられる。
【0021】
そして、図11に示すように、帯状体第1端1bの挿入部2hが帯状体第2端1cの切り欠け部2iに、帯状体第2端1cの挿入部2hが帯状体第1端1bの切り欠け部2iに、帯状体第1端1bのテンションメンバ接続部2fが帯状体第2端1cの接続隙間2gに、帯状体第2端1cのテンションメンバ接続部2fが帯状体第1端1bの接続隙間2gにそれぞれ挿入される。このときに、帯状体第1端1bの帆布層2cの先端面と、帯状体第2端1cの帆布層2cの先端面とが互いに接合される。これとともに、帯状体第1端1bの表面層2eの先端面と、帯状体第2端1cの帆布層2cの先端面とが、図11のI線のように互いに接合される。これによって、帯状体第1端1bと帯状体第2端1cとが互いに組み合わせられる。
【0022】
この状態で、帯状体第1端1bと帯状体第2端1cとの組み合わせ箇所が、上下分離結合式の加熱用型(図示せず)で加熱されることによって、帯状体第1端1bと帯状体第2端1cとが相互に熱融着し、その後、冷却されることによって無端状の移動手摺1が形成される。なお、帯状体第1端1bと帯状体第2端1cとの組み合わせ箇所が加熱される際に、帯状体第1端1bの芯体2をなす熱可塑性エラストマと、帯状体第2端1cの芯体2をなす熱可塑性エラストマとが相互に熱融着することにより、帯状体第1端1bと帯状体第2端1cとの接合境界と、帆布層2c、テンションメンバ層2d及び表面層2eの層同士の接合境界とが全て消滅する。
【0023】
以上の工程によって、帯状の手摺用帯状体1aの長手方向両端が互いに接続され、無端状の移動手摺1が形成される。また、以上の工程を経て形成された移動手摺1において、帯状体第1端1bと帯状体第2端1cとの接続箇所では、帯状体第1端1bのテンションメンバ4と手摺用帯状体1aの帯状体第2端1cのテンションメンバ4とが、手摺用帯状体1aの幅方向に互い違いに並べられている。さらに、帯状体第1端1bと帯状体第2端1cとの接続箇所では、帯状体第1端1bのテンションメンバ接続部2fの芯体2と、帯状体第2端1cのテンションメンバ接続部2fの芯体2とが相互に融着されている。
【0024】
上記のような乗客コンベアの移動手摺の製造方法では、テンションメンバ4の周囲の芯体2の残部とテンションメンバ4とによりテンションメンバ接続部2fが形成され、帯状体第1端1bのテンションメンバ接続部2fと帯状体第2端1cのテンションメンバ接続部2fとが、手摺用帯状体1aの幅方向に互い違いに組み合わされて加熱されることによって、帯状の手摺用帯状体1aから無端状の移動手摺1が形成されるので、特許文献1に示すような従来の接続方法における抗張体の露出工程が不要となることにより、容易に接続加工を行うことができ、接続加工時の作業効率を向上させることができる。
【0025】
これとともに、特許文献2に示すような接続方法とは異なり、帯状体第1端1bと帯状体第2端1cとを重ね合わせずに、帯状体第1端1b及び帯状体第2端1cの一方の芯体2の除去箇所(接続隙間2g)を他方のテンションメンバ接続部2fの芯体2が補完することにより、加熱時に加熱用型の結合箇所からの芯体2の流出を抑えることができ、移動手摺1の接続箇所の意匠性の低下を抑えることができる。これに加えて、加熱時の芯体2の過不足が生じないことにより、手摺用帯状体1aの帯状体第1端1bと帯状体第2端1cとを互いに強固に接続することができる。
【0026】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2について説明する。図12,13は、実施の形態2による移動手摺の製造工程の一部を示す平面図である。実施の形態1では、帆布層2c及び表面層2eを詰める工程で、帆布層2c及び表面層2eが手摺用帯状体1aの幅方向に沿って切断されたが、実施の形態2では、手摺用帯状体1aの幅方向一端が手摺用帯状体1aの幅方向他端からテンションメンバ接続部2の付け根側へ後退するように、帆布層2c及び表面層2eが切断されて、帆布層2c及び表面層2eに、傾斜切断面2jが形成される。そして、帯状体第1端1bの傾斜切断面2jと帯状体第2端1cの傾斜切断面2jとが、図12のJ線に沿うように互いに接合される。他の構成及び製造工程は、実施の形態1と同様である。
【0027】
上記のような乗客コンベアの移動手摺では、手摺用帯状体1aの幅方向一端が手摺用帯状体1aの幅方向他端からテンションメンバ接続部2の付け根側へ後退するように、帆布層2c及び表面層2eが切断されて、帆布層2c及び表面層2eに傾斜切断面2jが形成されて、帯状体第1端1bの傾斜切断面2jと帯状体第2端1cの傾斜切断面2jとが互いに接合されるので、帯状体第1端1bの帆布層2c及び表面層2eと、帯状体第2端1cの帆布層2c及び表面層2eとのそれぞれの接合箇所に作用する応力を分散させることができる。
【0028】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3について説明する。図14,15は、実施の形態3による移動手摺の製造工程の一部を示す平面図である。実施の形態1では、帯状体第1端1b又は帯状体第2端1cにおいて、複数のテンションメンバ接続部2fの先端の位置がいずれも手摺用帯状体1aの長手方向で一致していたが、実施の形態3では、複数のテンションメンバ接続部2fのうち一部の先端の位置が、複数のテンションメンバ接続部2fのうち残りの先端の位置から、手摺用帯状体1aの長手方向に図14のK寸法分ずらして配置されている。即ち、複数のテンションメンバ接続部2fのうちの一部の長さ寸法と、その残りの長さ寸法とが、互いに異なる長さ寸法となっており、複数のテンションメンバ接続部2fのうち一部の先端の位置とその残りの先端の位置とで、手摺用帯状体1aの長手方向に1段階の寸法差が設けられている。
【0029】
また、実施の形態1では、帯状体第1端1b又は帯状体第2端1cにおいて、複数の接続隙間2gの奥部の位置がいずれも手摺用帯状体1aの長手方向で一致していたが、実施の形態3では、複数の接続隙間2gのうち一部の奥部の位置が、複数の接続隙間2gのうち残りの奥部の位置から、手摺用帯状体1aの長手方向に図14のL寸法分ずらして配置されている。ここで、K寸法及びL寸法は、ともに例えば10mmであり、互いにほぼ一致する寸法となっている。また、K寸法及びL寸法は、適宜変更可能である。他の構成及び製造工程は実施の形態1と同様である。
【0030】
上記のような乗客コンベアの移動手摺では、帯状体第1端1b又は帯状体第2端1cにおける複数のテンションメンバ接続部2fのうち一部の先端の位置が、複数のテンションメンバ接続部2fのうち残りの先端の位置から、手摺用帯状体1aの長手方向にずらして配置されているので、帯状体第1端1b又は帯状体第2端1cのテンションメンバ接続部2fと、帯状体第2端1c又は帯状体第1端1bの接続隙間2gの奥部との接続箇所に作用する応力を分散させることができる。
【0031】
なお、実施の形態3では、複数のテンションメンバ接続部2fのうち一部の先端の位置とその残りの先端の位置とで、手摺用帯状体1aの長手方向に1段階の寸法差を設けたが、この例に限るものではなく、手摺用帯状体の長手方向に2段階以上の寸法差を設けてもよい。
【0032】
また、実施の形態3の製造工程の一部と、実施の形態2の製造工程の一部とを組み合わせてもよい。即ち、帯状体第1端1b又は帯状体第2端1cにおける複数のテンションメンバ接続部2fのうち一部の先端の位置を、複数のテンションメンバ接続部2fのうち残りの先端の位置から手摺用帯状体1aの長手方向にずらして配置して、手摺用帯状体1aの幅方向一端が手摺用帯状体1aの幅方向他端からテンションメンバ接続部2の付け根側へ後退するように、帯状体第1端1b及び帯状体第2端1cの帆布層2c及び表面層2eを切断してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の実施の形態1による乗客コンベアの移動手摺を示す断面図である。
【図2】図1の移動手摺の製造工程の一部を説明するための説明図である。
【図3】図1の移動手摺の製造工程の一部を説明するための説明図である。
【図4】図1の移動手摺の製造工程の一部を説明するための説明図である。
【図5】図1の移動手摺の製造工程の一部を説明するための説明図である。
【図6】図1の移動手摺の製造工程の一部を説明するための説明図である。
【図7】図1の移動手摺の製造工程の一部を説明するための説明図である。
【図8】図1の移動手摺の製造工程の一部を説明するための説明図である。
【図9】図1の移動手摺の製造工程の一部を説明するための説明図である。
【図10】図1の移動手摺の製造工程の一部を説明するための説明図である。
【図11】図1の移動手摺の製造工程の一部を説明するための説明図である。
【図12】この発明の実施の形態2による乗客コンベアの移動手摺の製造工程の一部を示す平面図である。
【図13】この発明の実施の形態2による乗客コンベアの移動手摺の製造工程の一部を示す平面図である。
【図14】この発明の実施の形態3による乗客コンベアの移動手摺の製造工程の一部を示す平面図である。
【図15】この発明の実施の形態3による乗客コンベアの移動手摺の製造工程の一部を示す平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 移動手摺、1a 手摺用帯状体、1b 帯状体第1端、1c 帯状体第2端、2 芯体、2c 帆布層(耐摩擦材層)、2d テンションメンバ層(線材層)、2e 表面層、2f テンションメンバ接続部(線材接続部)、2j 傾斜切断面、3 帆布(耐摩擦材)、4 テンションメンバ(抗張用線材)。
【技術分野】
【0001】
この発明は、エスカレータ又は動く歩道の手摺レールに設けられ、モータの駆動力により手摺レールに沿って循環移動する乗客コンベアの移動手摺、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の乗客コンベアの移動手摺の製造方法では、移動手摺の長手方向両端の抗張体が熱可塑性材料からなる芯体から露出されて、その抗張体の露出箇所同士が重ね合わせられて、接着剤によって互いに接着される。そして、抗張体同士の接着箇所が芯体により被覆されることにより、無端状の移動手摺が形成される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、他の従来の乗客コンベアの移動手摺の接続方法では、長手方向一方の未加硫ゴム被覆テンションメンバと、長手方向の他方の未加硫ゴム被覆テンションメンバとが、テンションメンバ素線の配線ピッチの1/2寸法分ずらして、互いに重ね合わせられて、その重ね合わせ箇所がプレス加硫されることによって、長手方向両端のテンションメンバ同士が接続される(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−211872号公報
【特許文献2】特開平11−106171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示すような従来の乗客コンベアの移動手摺の接続方法では、抗張体を芯体から露出させて、長手方向両端における抗張体の露出箇所同士を接着させた後、移動手摺を無端状(環状)に接続しているが、芯体の熱融着によって抗張体と芯体とが一体化しており、また、熱可塑性材料は比較的に硬度が高いため、芯体を抗張体から削ぎ落として抗張体を露出させる際の作業は容易ではなく、接続加工時の作業効率が低下していた。
【0006】
また、特許文献2に示すような従来の乗客コンベアの移動手摺の接続方法において、芯体に熱可塑性材料を用いた場合、長手方向両端の芯体同士を接続する際には、芯体が上下分離結合式の加熱用型の結合箇所から型の外部へ流出してしまい、流出したままの状態で芯体が冷え固まると、その箇所に流出痕が残り、移動手摺の接続箇所の意匠性が低下してしまう。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、接続加工時の作業効率を向上させることができるとともに、加熱時に加熱用型の結合箇所からの芯体の流出を抑えることができる乗客コンベアの移動手摺、及びその製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る乗客コンベアの移動手摺の製造方法は、熱可塑性材料により帯状に形成された芯体、芯体の厚み方向一端面に設けられ手摺レールに沿って摺動される耐摩擦材、及び芯体の幅方向に互いに間隔をおいて芯体の長手方向に沿って芯体内に配置された複数の抗張用線材を備えた手摺用帯状体の長手方向両端を互いに接続することにより無端状の移動手摺を形成する製造方法であって、手摺用帯状体の長手方向両端の芯体を、各抗張用線材を含む層である線材層と、耐摩擦材に隣接する層である耐摩擦材層と、線材層に対する耐摩擦材層の反対側の層である表面層とに分離する工程、手摺用帯状体の長手方向両端の線材層から抗張用線材の周囲の芯体を残して、互いに隣り合う抗張用線材同士の間の芯体を除去し、各抗張用線材と各抗張用線材の周囲の芯体の残部とから複数の線材接続部を形成する工程、耐摩擦材層及び表面層を、線材接続部の先端から線材接続部の付け根側へ後退するように詰める工程、手摺用帯状体の長手方向両端の線材接続部同士を、手摺用帯状体の幅方向に互い違いに並べて、その長手方向両端の耐摩擦材層同士及び表面層同士をそれぞれ接合し、その長手方向両端を互いに組み合わせる工程、及び手摺用帯状体の長手方向両端の組み合わせ箇所を加熱して、その長手方向両端を互いに接続する工程を含んでいる製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
この発明の乗客コンベアの移動手摺の製造方法は、各抗張用線材の周囲の芯体の残部と各抗張用線材とにより複数の線材接続部が手摺用帯状体の長手方向両端に形成され、その長手方向両端の線材接続部同士が手摺用帯状体の幅方向に互い違いに並べられて、その長手方向両端の組み合わせ箇所が加熱されることによって、その長手方向両端が互いに接続されるので、特許文献1に示すような接続方法における抗張体の露出工程が不要となることにより、容易に接続加工を行うことができ、接続加工時の作業効率を向上させることができる。これとともに、特許文献2に示すような接続方法とは異なり、帯状体第1端と帯状体第2端とを重ね合わせずに、手摺用帯状体の長手方向一端の芯体の除去箇所を、手摺用帯状体の長手方向他端の線材接続部の芯体が補完することにより、加熱時に加熱用型の結合箇所からの芯体の流出を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による乗客コンベアの移動手摺を示す断面図である。
図において、移動手摺1の形状は、断面C字状でかつ無端状である。また、移動手摺1は、乗客コンベアとしてのエスカレータ又は動く歩道の手摺レール(図示せず)上に設けられ、ステップ(図示せず)とともに乗客を支えるためのものである。さらにまた、移動手摺1は、モータ(図示せず)の駆動によって、ステップと同期して走行する。さらに、移動手摺1は、帯状の手摺用帯状体1aによって形成されており、手摺用帯状体1aの長手方向両端が互いに接続されることによって無端状となっている。
【0011】
手摺用帯状体1aは、長手方向一端である帯状体第1端1bと、長手方向他端である帯状体第2端1cとを有している。また、手摺用帯状体1aは、熱可塑性エラストマ(熱可塑性樹脂)により帯状でかつ断面C字状に形成された芯体2、耐摩擦材としての帆布3、スチールワイヤからなる抗張用線材としての複数のテンションメンバ4によって構成されている。
【0012】
芯体2のC字の内面は、手摺レールに対向している。また、芯体2は、帯状でかつ扁平状であり所定の厚みをもつ手摺面部2aと、手摺面部2aの幅方向一端及び他端に手摺面部2aの長手方向に連続してそれぞれ配置された一対の湾曲部2bとを有している。一対の湾曲部2bは、手摺面部2aの幅方向外側へ向けてそれぞれ湾曲している。一対の湾曲部2bは、手摺面部2aを挟んで互いに逆方向に向けて断面U字状に湾曲している。
【0013】
帆布3は、芯体2のC字の内面に設けられている。また、帆布3は、手摺レール上を摺動される。各テンションメンバ4は、芯体2の幅方向に互いに間隔をおいて芯体2内に設けられ、芯体2の長手方向に沿って配置されている。ここで、芯体2、帆布3及びテンションメンバ4が一体に成型器(図示せず)を通して押し出し成形されることによって、手摺用帯状体1aが形成される。
【0014】
次に、図1の移動手摺1の製造工程について説明する。図2〜11は、図1の移動手摺1の製造工程の一部を説明するための説明図である。なお、図2,6は、手摺用帯状体1aの帯状体第1端1bを示す平面図である。また、図3は、手摺用帯状体1aの帯状体第1端1bを示す断面図である。さらに、図4,7は、手摺用帯状体1aの帯状体第1端1bを示す側面図である。さらにまた、図5は、図3の一部を拡大して示す断面図である。また、図8〜11は、手摺用帯状体1aの帯状体第1端1b及び帯状体第2端1cを示す平面図である。
【0015】
まず、手摺用帯状体1aの帯状体第1端1bが、図2の線Aに沿って切断される。そして、手摺用帯状体1aの帯状体第1端1bのうち、各テンションメンバ4に対する芯体2の帆布3側の箇所(図3のテンションメンバ4の直下の箇所)と、各テンションメンバ4に対する芯体2の反帆布3側の箇所(図3のテンションメンバ4の直上の箇所)とに、手摺面部2aの幅方向に間隔をおいて、即ち図3に示す線B及び線Cに沿って、図2に示すD寸法分の切り込みが入れられる。この切り込みによって、図3に示すように、芯体2が、帆布3に隣接する層である帆布層(耐摩擦材層)2c、各テンションメンバ4を含む層であるテンションメンバ層(線材層)2d、及びテンションメンバ層2dに対する反帆布3側の層である表面層2eの三層に、手摺面部2aの厚み方向に分離される。
【0016】
これらの三層のうち、帆布層2c及び表面層2eが、手摺用帯状体1aの幅方向に沿って、図2に示すE寸法分切断され、テンションメンバ層2dの先端から付け根側に後退するように詰められる。そして、図4に示すように、帆布層2c及び表面層2eがテンションメンバ層2dから押し広げられて、テンションメンバ層2dに、テンションメンバ4の周囲の芯体2を残すように手摺面部2aの厚み方向に、図2に示すF寸法分の切り込み(図5に示す線G及び線H)がテンションメンバ4に沿って入れられ、テンションメンバ4同士の間の芯体2が除去(切除)される。
【0017】
これによって、各テンションメンバ4と、各テンションメンバ4の周囲の芯体2の残部とから複数のテンションメンバ接続部(線材接続部)2fが形成される。これとともに、互いに隣り合うテンションメンバ接続部2f同士の間で、帆布層2c及び表面層2eの間の箇所、即ち芯体2が除去された箇所に、接続隙間2gが形成される。テンションメンバ接続部2fの長さ寸法、及び接続隙間2gの奥行き寸法は、ともに図2に示すF寸法となっており、互いに一致している。
【0018】
また、手摺用帯状体1aの幅方向一端(図2,6の上端)のテンションメンバ層2dには、図6,7に示すように、手摺用帯状体1aの長手方向外側へ突出する挿入部2hが形成され、手摺用帯状体1aの幅方向他端(図2,6の下端)のテンションメンバ層2dには、テンションメンバ接続部2fの先端からテンションメンバ接続部2fの付け根まで窪む切り欠け部2iが形成される。
【0019】
ここで、各切り込みの寸法の一例を挙げると、D寸法が40mmであり、E寸法が80mmであり、F寸法が100mmである。なお、これらの寸法は、D寸法を基準とした場合に、E寸法がD寸法の約2倍となり、F寸法がD寸法の2倍を超える寸法となればよく、加熱用型のサイズに応じて適宜変更可能である。
【0020】
次に、手摺用帯状体1aの帯状体第2端1cについても、手摺用帯状体1aの帯状体第1端1bの場合と同様の加工が施される。そして、手摺用帯状体1aが略環状に曲げられ、図8,9に示すように、帯状体第1端1bと帯状体第2端1cとが互いに突き合わされて(向かい合わされて)配置され、帯状体第1端1bのテンションメンバ接続部2fと、帯状体第2端1cのテンションメンバ接続部2fとが、図10に示すように、手摺用帯状体1aの幅方向に互い違いに並べられる。即ち、手摺用帯状体1aの長手方向両端のテンションメンバ接続部2f同士が、手摺用帯状体1aの幅方向に互い違いに並べられる。
【0021】
そして、図11に示すように、帯状体第1端1bの挿入部2hが帯状体第2端1cの切り欠け部2iに、帯状体第2端1cの挿入部2hが帯状体第1端1bの切り欠け部2iに、帯状体第1端1bのテンションメンバ接続部2fが帯状体第2端1cの接続隙間2gに、帯状体第2端1cのテンションメンバ接続部2fが帯状体第1端1bの接続隙間2gにそれぞれ挿入される。このときに、帯状体第1端1bの帆布層2cの先端面と、帯状体第2端1cの帆布層2cの先端面とが互いに接合される。これとともに、帯状体第1端1bの表面層2eの先端面と、帯状体第2端1cの帆布層2cの先端面とが、図11のI線のように互いに接合される。これによって、帯状体第1端1bと帯状体第2端1cとが互いに組み合わせられる。
【0022】
この状態で、帯状体第1端1bと帯状体第2端1cとの組み合わせ箇所が、上下分離結合式の加熱用型(図示せず)で加熱されることによって、帯状体第1端1bと帯状体第2端1cとが相互に熱融着し、その後、冷却されることによって無端状の移動手摺1が形成される。なお、帯状体第1端1bと帯状体第2端1cとの組み合わせ箇所が加熱される際に、帯状体第1端1bの芯体2をなす熱可塑性エラストマと、帯状体第2端1cの芯体2をなす熱可塑性エラストマとが相互に熱融着することにより、帯状体第1端1bと帯状体第2端1cとの接合境界と、帆布層2c、テンションメンバ層2d及び表面層2eの層同士の接合境界とが全て消滅する。
【0023】
以上の工程によって、帯状の手摺用帯状体1aの長手方向両端が互いに接続され、無端状の移動手摺1が形成される。また、以上の工程を経て形成された移動手摺1において、帯状体第1端1bと帯状体第2端1cとの接続箇所では、帯状体第1端1bのテンションメンバ4と手摺用帯状体1aの帯状体第2端1cのテンションメンバ4とが、手摺用帯状体1aの幅方向に互い違いに並べられている。さらに、帯状体第1端1bと帯状体第2端1cとの接続箇所では、帯状体第1端1bのテンションメンバ接続部2fの芯体2と、帯状体第2端1cのテンションメンバ接続部2fの芯体2とが相互に融着されている。
【0024】
上記のような乗客コンベアの移動手摺の製造方法では、テンションメンバ4の周囲の芯体2の残部とテンションメンバ4とによりテンションメンバ接続部2fが形成され、帯状体第1端1bのテンションメンバ接続部2fと帯状体第2端1cのテンションメンバ接続部2fとが、手摺用帯状体1aの幅方向に互い違いに組み合わされて加熱されることによって、帯状の手摺用帯状体1aから無端状の移動手摺1が形成されるので、特許文献1に示すような従来の接続方法における抗張体の露出工程が不要となることにより、容易に接続加工を行うことができ、接続加工時の作業効率を向上させることができる。
【0025】
これとともに、特許文献2に示すような接続方法とは異なり、帯状体第1端1bと帯状体第2端1cとを重ね合わせずに、帯状体第1端1b及び帯状体第2端1cの一方の芯体2の除去箇所(接続隙間2g)を他方のテンションメンバ接続部2fの芯体2が補完することにより、加熱時に加熱用型の結合箇所からの芯体2の流出を抑えることができ、移動手摺1の接続箇所の意匠性の低下を抑えることができる。これに加えて、加熱時の芯体2の過不足が生じないことにより、手摺用帯状体1aの帯状体第1端1bと帯状体第2端1cとを互いに強固に接続することができる。
【0026】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2について説明する。図12,13は、実施の形態2による移動手摺の製造工程の一部を示す平面図である。実施の形態1では、帆布層2c及び表面層2eを詰める工程で、帆布層2c及び表面層2eが手摺用帯状体1aの幅方向に沿って切断されたが、実施の形態2では、手摺用帯状体1aの幅方向一端が手摺用帯状体1aの幅方向他端からテンションメンバ接続部2の付け根側へ後退するように、帆布層2c及び表面層2eが切断されて、帆布層2c及び表面層2eに、傾斜切断面2jが形成される。そして、帯状体第1端1bの傾斜切断面2jと帯状体第2端1cの傾斜切断面2jとが、図12のJ線に沿うように互いに接合される。他の構成及び製造工程は、実施の形態1と同様である。
【0027】
上記のような乗客コンベアの移動手摺では、手摺用帯状体1aの幅方向一端が手摺用帯状体1aの幅方向他端からテンションメンバ接続部2の付け根側へ後退するように、帆布層2c及び表面層2eが切断されて、帆布層2c及び表面層2eに傾斜切断面2jが形成されて、帯状体第1端1bの傾斜切断面2jと帯状体第2端1cの傾斜切断面2jとが互いに接合されるので、帯状体第1端1bの帆布層2c及び表面層2eと、帯状体第2端1cの帆布層2c及び表面層2eとのそれぞれの接合箇所に作用する応力を分散させることができる。
【0028】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3について説明する。図14,15は、実施の形態3による移動手摺の製造工程の一部を示す平面図である。実施の形態1では、帯状体第1端1b又は帯状体第2端1cにおいて、複数のテンションメンバ接続部2fの先端の位置がいずれも手摺用帯状体1aの長手方向で一致していたが、実施の形態3では、複数のテンションメンバ接続部2fのうち一部の先端の位置が、複数のテンションメンバ接続部2fのうち残りの先端の位置から、手摺用帯状体1aの長手方向に図14のK寸法分ずらして配置されている。即ち、複数のテンションメンバ接続部2fのうちの一部の長さ寸法と、その残りの長さ寸法とが、互いに異なる長さ寸法となっており、複数のテンションメンバ接続部2fのうち一部の先端の位置とその残りの先端の位置とで、手摺用帯状体1aの長手方向に1段階の寸法差が設けられている。
【0029】
また、実施の形態1では、帯状体第1端1b又は帯状体第2端1cにおいて、複数の接続隙間2gの奥部の位置がいずれも手摺用帯状体1aの長手方向で一致していたが、実施の形態3では、複数の接続隙間2gのうち一部の奥部の位置が、複数の接続隙間2gのうち残りの奥部の位置から、手摺用帯状体1aの長手方向に図14のL寸法分ずらして配置されている。ここで、K寸法及びL寸法は、ともに例えば10mmであり、互いにほぼ一致する寸法となっている。また、K寸法及びL寸法は、適宜変更可能である。他の構成及び製造工程は実施の形態1と同様である。
【0030】
上記のような乗客コンベアの移動手摺では、帯状体第1端1b又は帯状体第2端1cにおける複数のテンションメンバ接続部2fのうち一部の先端の位置が、複数のテンションメンバ接続部2fのうち残りの先端の位置から、手摺用帯状体1aの長手方向にずらして配置されているので、帯状体第1端1b又は帯状体第2端1cのテンションメンバ接続部2fと、帯状体第2端1c又は帯状体第1端1bの接続隙間2gの奥部との接続箇所に作用する応力を分散させることができる。
【0031】
なお、実施の形態3では、複数のテンションメンバ接続部2fのうち一部の先端の位置とその残りの先端の位置とで、手摺用帯状体1aの長手方向に1段階の寸法差を設けたが、この例に限るものではなく、手摺用帯状体の長手方向に2段階以上の寸法差を設けてもよい。
【0032】
また、実施の形態3の製造工程の一部と、実施の形態2の製造工程の一部とを組み合わせてもよい。即ち、帯状体第1端1b又は帯状体第2端1cにおける複数のテンションメンバ接続部2fのうち一部の先端の位置を、複数のテンションメンバ接続部2fのうち残りの先端の位置から手摺用帯状体1aの長手方向にずらして配置して、手摺用帯状体1aの幅方向一端が手摺用帯状体1aの幅方向他端からテンションメンバ接続部2の付け根側へ後退するように、帯状体第1端1b及び帯状体第2端1cの帆布層2c及び表面層2eを切断してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の実施の形態1による乗客コンベアの移動手摺を示す断面図である。
【図2】図1の移動手摺の製造工程の一部を説明するための説明図である。
【図3】図1の移動手摺の製造工程の一部を説明するための説明図である。
【図4】図1の移動手摺の製造工程の一部を説明するための説明図である。
【図5】図1の移動手摺の製造工程の一部を説明するための説明図である。
【図6】図1の移動手摺の製造工程の一部を説明するための説明図である。
【図7】図1の移動手摺の製造工程の一部を説明するための説明図である。
【図8】図1の移動手摺の製造工程の一部を説明するための説明図である。
【図9】図1の移動手摺の製造工程の一部を説明するための説明図である。
【図10】図1の移動手摺の製造工程の一部を説明するための説明図である。
【図11】図1の移動手摺の製造工程の一部を説明するための説明図である。
【図12】この発明の実施の形態2による乗客コンベアの移動手摺の製造工程の一部を示す平面図である。
【図13】この発明の実施の形態2による乗客コンベアの移動手摺の製造工程の一部を示す平面図である。
【図14】この発明の実施の形態3による乗客コンベアの移動手摺の製造工程の一部を示す平面図である。
【図15】この発明の実施の形態3による乗客コンベアの移動手摺の製造工程の一部を示す平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 移動手摺、1a 手摺用帯状体、1b 帯状体第1端、1c 帯状体第2端、2 芯体、2c 帆布層(耐摩擦材層)、2d テンションメンバ層(線材層)、2e 表面層、2f テンションメンバ接続部(線材接続部)、2j 傾斜切断面、3 帆布(耐摩擦材)、4 テンションメンバ(抗張用線材)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性材料により帯状に形成された芯体、上記芯体の厚み方向一端面に設けられ手摺レールに沿って摺動される耐摩擦材、及び上記芯体の幅方向に互いに間隔をおいて上記芯体の長手方向に沿って上記芯体内に配置された複数の抗張用線材を備えた手摺用帯状体の長手方向両端を互いに接続することにより無端状の移動手摺を形成する乗客コンベアの移動手摺の製造方法であって、
上記手摺用帯状体の長手方向両端の上記芯体を、上記各抗張用線材を含む層である線材層と、上記耐摩擦材に隣接する層である耐摩擦材層と、上記線材層に対する上記耐摩擦材層の反対側の層である表面層とに分離する工程、
上記手摺用帯状体の長手方向両端の上記線材層から上記抗張用線材の周囲の上記芯体を残して、互いに隣り合う上記抗張用線材同士の間の上記芯体を除去し、上記各抗張用線材と上記各抗張用線材の周囲の上記芯体の残部とから複数の線材接続部を形成する工程、
上記耐摩擦材層及び上記表面層を、上記線材接続部の先端から上記線材接続部の付け根側へ後退するように詰める工程、
上記手摺用帯状体の長手方向両端の上記線材接続部同士を、上記手摺用帯状体の幅方向に互い違いに並べて、その長手方向両端の上記耐摩擦材層同士及び上記表面層同士をそれぞれ接合し、その長手方向両端を互いに組み合わせる工程、及び
上記手摺用帯状体の長手方向両端の組み合わせ箇所を加熱して、その長手方向両端を互いに接続する工程
を含んでいることを特徴とする乗客コンベアの移動手摺の製造方法。
【請求項2】
上記耐摩擦材層及び上記表面層を詰める工程で、上記手摺用帯状体の幅方向一端がその幅方向他端から上記線材接続部の付け根側へ後退するように、上記耐摩擦材層及び上記表面層の先端面を形成することを特徴とする請求項1記載の乗客コンベアの移動手摺の製造方法。
【請求項3】
上記複数の線材接続部を形成する工程で、上記複数の線材接続部のうち一部の先端の位置を、上記複数の線材接続部のうち残りの先端の位置から、上記手摺用帯状体の長手方向にずらすことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベアの移動手摺の製造方法。
【請求項4】
熱可塑性材料により帯状に形成された芯体、上記芯体の厚み方向一端面に設けられ手摺レールに沿って摺動される耐摩擦材、及び上記芯体の幅方向に互いに間隔をおいて上記芯体の長手方向に沿って上記芯体内に配置された複数の抗張用線材を有し、長手方向両端が互いに接続される手摺用帯状体を備え、
上記手摺用帯状体の長手方向両端は、上記手摺用帯状体の幅方向に互いに間隔をおいて並べられた上記各抗張用線材と上記各抗張用線材の周囲の上記芯体とからなる複数の線材接続部を有しており、
上記手摺用帯状体の長手方向両端の接続箇所では、その長手方向両端の上記線材接続部同士が上記手摺用帯状体の幅方向に互い違いに組み合わされて、上記線材接続部の上記芯体が相互に融着されていることを特徴とすることを特徴とする乗客コンベアの移動手摺。
【請求項1】
熱可塑性材料により帯状に形成された芯体、上記芯体の厚み方向一端面に設けられ手摺レールに沿って摺動される耐摩擦材、及び上記芯体の幅方向に互いに間隔をおいて上記芯体の長手方向に沿って上記芯体内に配置された複数の抗張用線材を備えた手摺用帯状体の長手方向両端を互いに接続することにより無端状の移動手摺を形成する乗客コンベアの移動手摺の製造方法であって、
上記手摺用帯状体の長手方向両端の上記芯体を、上記各抗張用線材を含む層である線材層と、上記耐摩擦材に隣接する層である耐摩擦材層と、上記線材層に対する上記耐摩擦材層の反対側の層である表面層とに分離する工程、
上記手摺用帯状体の長手方向両端の上記線材層から上記抗張用線材の周囲の上記芯体を残して、互いに隣り合う上記抗張用線材同士の間の上記芯体を除去し、上記各抗張用線材と上記各抗張用線材の周囲の上記芯体の残部とから複数の線材接続部を形成する工程、
上記耐摩擦材層及び上記表面層を、上記線材接続部の先端から上記線材接続部の付け根側へ後退するように詰める工程、
上記手摺用帯状体の長手方向両端の上記線材接続部同士を、上記手摺用帯状体の幅方向に互い違いに並べて、その長手方向両端の上記耐摩擦材層同士及び上記表面層同士をそれぞれ接合し、その長手方向両端を互いに組み合わせる工程、及び
上記手摺用帯状体の長手方向両端の組み合わせ箇所を加熱して、その長手方向両端を互いに接続する工程
を含んでいることを特徴とする乗客コンベアの移動手摺の製造方法。
【請求項2】
上記耐摩擦材層及び上記表面層を詰める工程で、上記手摺用帯状体の幅方向一端がその幅方向他端から上記線材接続部の付け根側へ後退するように、上記耐摩擦材層及び上記表面層の先端面を形成することを特徴とする請求項1記載の乗客コンベアの移動手摺の製造方法。
【請求項3】
上記複数の線材接続部を形成する工程で、上記複数の線材接続部のうち一部の先端の位置を、上記複数の線材接続部のうち残りの先端の位置から、上記手摺用帯状体の長手方向にずらすことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベアの移動手摺の製造方法。
【請求項4】
熱可塑性材料により帯状に形成された芯体、上記芯体の厚み方向一端面に設けられ手摺レールに沿って摺動される耐摩擦材、及び上記芯体の幅方向に互いに間隔をおいて上記芯体の長手方向に沿って上記芯体内に配置された複数の抗張用線材を有し、長手方向両端が互いに接続される手摺用帯状体を備え、
上記手摺用帯状体の長手方向両端は、上記手摺用帯状体の幅方向に互いに間隔をおいて並べられた上記各抗張用線材と上記各抗張用線材の周囲の上記芯体とからなる複数の線材接続部を有しており、
上記手摺用帯状体の長手方向両端の接続箇所では、その長手方向両端の上記線材接続部同士が上記手摺用帯状体の幅方向に互い違いに組み合わされて、上記線材接続部の上記芯体が相互に融着されていることを特徴とすることを特徴とする乗客コンベアの移動手摺。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−149409(P2009−149409A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328817(P2007−328817)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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