説明

乗客コンベア

【課題】エスカレータ等における乗客の乗り降りの安全を図る。
【解決手段】、乗降口における乗降板7またはくし板6と移動踏み板1との間の境界領域を映し出し、その境界領域に近づく乗客Yの目の位置方向に反射させる鏡体8を、移動踏み板1の列の外側に設けた。
従って、乗客Yは、乗降板7(または、くし板6)と移動踏み板1との間の境界領域と、自分との間の位置や距離関係を、鏡体8を見て確認できるので、乗客は安全にまた安心して乗客コンベアを利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大きな荷物等を身体の前に抱えた乗客でも安全に乗り降りできる乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
移動踏み板列の両側に欄干を設けたエスカレータが上下方向に並設された状況においては、下階乗降口の乗客が上階の乗降口の状況を知り得るように、上部乗降口の上方、すなわち上方のエスカレータの外装板底部に鏡体を設ける考えが提案されている。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−180669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のエスカレータでは、上部乗降口の上方に鏡体設置により、下階側でエスカレータに乗り込もうとする乗客は、その鏡体に映し出された映像から、上階側の乗降口等の様子を知ることができる。
【0004】
このように、下階側の乗客が上階側の様子を知り得ても、我々乗客がしばしば経験するように、身体の前に大きな手荷物等を抱きかかえた状態では、エスカレータや動く歩道の乗降口では、その抱えた手荷物が邪魔をして、自分の足元の位置が見えにくいことがある。
【0005】
利用客が、乗降口で静止状態の乗降板から、移動踏み板にうまく乗り移るには、自分の乗降板上における足の位置と、移動する相手移動踏み板との間の距離間隔を的確に認識しないと、乗り移りの動作のタイミングがうまくとれず、円滑に乗り移ることができない。これは、乗客が、乗降口で移動踏み板から乗降板に降りる場合も同じである。
【0006】
従来は、下階側から上階側の様子は知り得たとしても、大きな手荷物を前に抱えた乗客が、自分の足元を確かめる有効な手段がなかったので、乗降板から移動踏み板側へ、あるいは移動踏み板から乗降板側への乗り移りタイミングをうまくとることができずに、うっかりすると躓いたり、転倒したりする恐れもあった。
【0007】
このように、大きな手荷物等を抱えた乗客が、自分の足元、とりわけ乗降板(ないしは、くし板)と移動踏み板との境界線を知る手段がなく、乗客は不安な状態で利用せざるを得なかったので、改善が要望されていた。
【0008】
そこで、本発明は、乗降口近傍で、乗客が移動踏み板と乗降板(あるいは、くし板)との境界領域を容易かつ適切に認識できる乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、移動踏み板列の両側に欄干を設けた乗客コンベアにおいて、乗降口における乗降板またはくし板と移動踏み板との間の境界領域を映し出し、前記境界領域に近づく乗客の目の方向に反射させる鏡体を、移動踏み板列の外側に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の乗客コンベアは、上記のように、乗降口における乗降板またはくし板と移動踏み板との間の境界領域を映し出し、境界領域に近づく乗客の目の方向に反射させる鏡体を、踏み板列の外側に設けたので、移動踏み板と乗降板等との間の境界領域に近づいた乗客は、映し出された鏡体を見て、自分の足先と境界との間の位置関係を容易かつ適切に確認できる。
【0011】
従って、たとえ大きな手荷物や子供等を前に抱きかかえ、自分の足元を直接視認することが困難な乗降客でも、移動踏み板列の外側に設けられた鏡体に写し出された乗降板等と移動踏み板との間の境界部分を自分の目で確認できる。
【0012】
従って、乗客は自分の立っている位置と、移動踏み板との距離関係を適切に認識でき、乗降板等から移動踏み板側へ、あるいは移動踏み板側から乗降板側へ、タイミング良く、かつ安全にまた安心して乗り移ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の乗客コンベアの一実施例を図1ないし図5を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1及び図2は、本発明の一実施例に係る乗客コンベアにおいて、乗客Yが乗客コンベアに乗ろうとしている状態を説明した要部正面図で、図2は図1のA−A矢視側面図である。
【0015】
すなわち、図1に示したように、乗客コンベアは、移動踏み板1と、この移動踏み板1の図示左右両側で、それぞれ内デッキ2と外デッキ3との間に透明なガラス製の欄干パネル4が立設され、その欄干パネル4上で運転方向に移動する移動手摺5が設けられて構成されている。
【0016】
移動踏み板1に乗客Yを導く乗降口には、図2に示したように、くし板6及び乗降板7が連なるように構成されている。
【0017】
そこで、この実施例の乗客コンベアは、乗降口におけるくし板6と移動踏み板1との間の境界領域を映し出し、その境界領域に近づく乗客Yの目の高さ位置方向に反射させる鏡体8を、外デッキ3に立設させて構成されている。
【0018】
従って、図1並びにその要部を拡大した図3に示したように、乗降口の乗客Yは、図示矢印Z方向へ導かれる視野により、欄干パネル4及び鏡体8を介して、移動踏み板1におけるくし板6との境界領域(一点鎖線で囲んだ領域)の様子を自分の目で確認できる。
【0019】
なお、この実施例では、図1及び図3に示したように、鏡体8は、移動手摺5の高さ以下で、一点点線5aで示した移動手摺5の外側位置から外側にはみ出さない位置に設置されている。
【0020】
図4は、鏡体8を乗客コンベアの正面側から見た拡大正面図で、図5はその要部拡大右側面図である。
【0021】
すなわち、鏡体8は、外デッキ3に立設される支柱81と、その支柱81の先端部に取り付けられたヒンジ機構82と、図4に示したように、ヒンジ機構82により図示矢印R方向に回動可能な鏡面体83とで構成されている。
【0022】
従って、鏡面体83は支柱81に対する矢印R方向の傾き角度を調整することができるので、乗降口で移動踏み板1に近づく乗客Yの目の高さ位置、あるいは、同じく乗降口に近づく移動踏み板1上の乗客Yの目の高さ位置に対応して、鏡面体83の角度が最適となるように調整することができる。
【0023】
なお、図4に示したように、ヒンジ機構82は図示矢印R方向に変えることができる旨説明したが、ヒンジ機構82をいわゆる二軸ヒンジで構成し、矢印R方向に加えて、支柱81の軸方向(鉛直方向)を回動軸として回動可能に構成し、鏡体8の据え付け位置の自由度がより広がるようにしても良い。
【0024】
従ってまた、ヒンジ機構82を二軸ヒンジとすれば、作業員は鏡体8の据え付け調整の自由度も拡がり、据え付け調整作業を効率良く行うことができる。
【0025】
なお、この実施例では、欄干パネル4は透明なガラス製によるものとし、乗客Yはその欄干パネル4を通して、外側の鏡体8により、自分の足元を見ることがことができる旨説明したが、もしも欄干パネル4が不透明なステンレス製の場合は、シート状の鏡体8をその欄干パネル4の内側面に貼り付けたり、あるいは欄干パネル4面に、乗客の障害物とならない位置に取り付け構成することで、同様な機能を得ることができる。
【0026】
また、この実施例の鏡体8は、図1及び図3に示したように、乗客Yが乗客コンベアを利用するときにつかむ移動手摺5の外側位置よりも外側にははみ出ない位置に設置したので、乗客Yが万一、手荷物Yaを移動手摺5の外側にぶら下げたときでも、手荷物Ya等が鏡体8と衝突することがないので乗客は安心して利用できる。
【0027】
なお、図1に示したように、上記実施例の説明では、鏡体8は、向かって左側の欄干の外側にのみ設けたように説明したが、このようにいずれか一方ではなく、これに対向するように右側の欄干の外側、すなわち左右両側に設置した場合には、移動踏み板5上で二人が並んで乗降する乗客が、共に鏡体8,8を利用して、それぞれ自分の足元の位置を確認することができる。
【0028】
また、乗客コンベアは、複数台並設されることもあるが、隣接した乗客コンベアでは、対向する欄干パネル4,4間に、それぞれ鏡体8,8を並設することになる。従って、これら並設される鏡体8,8を、それぞれ個別に取り付けても良く、また外デッキ3に共通した支柱81を立設させて、その支柱81に左右二つの鏡面体83を取り付けても良い。
【0029】
また、鏡体8の鏡面体83は平面をなしているものとして説明したが、適宜の曲面、すなわち凸面あるいは凹面を有するものでも良い。
【0030】
いずれにしても、この実施例の乗客コンベアによれば、乗客はエスカレータや動く歩道等の乗客コンベアに乗り込もうとする際、あるいは乗客コンベアから降りようとする場合、たとえ大きな荷物を前に抱え込み、自分の足元位置を自分の目で直接確かめ難い状況の元でも、サイド(側方)に設置された鏡体8の鏡面で移動踏み板1とくし板6(くし板6がない場合は、直接、乗降板7)との間の境界領域と自分との、距離や位置関係を確かめることができるので、安全にまた安心して乗り降りすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る乗客コンベアの一実施例を説明する要部正面図である。
【図2】図1のA−A矢視側面図である。
【図3】図1の要部拡大図である。
【図4】図1に示した鏡体の拡大正面図である。
【図5】図4に示した鏡体の要部拡大右側面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 移動手摺
2 欄干パネル
3 外デッキ
4 内デッキ
5 移動踏み板
6 くし板
7 乗降板
8 鏡体
81 支柱
82 ヒンジ機構
83 鏡面体
Y 乗客
Ya 荷物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動踏み板列の両側に欄干を設けた乗客コンベアにおいて、
乗降口における乗降板またはくし板と移動踏み板との間の境界領域を映し出し、前記境界領域に近づく乗客の目の方向に反射させる鏡体を、移動踏み板列の外側に設けたことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記鏡体は、外デッキ上に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記鏡体は、左右の移動手摺りから外側にはみ出さないように設置されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記鏡体は、ヒンジ機構を介して前記外デッキ上に鏡面を取り付けた構成としたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記鏡体は、欄干パネルの内側面に鏡面を取り付けた構成としたことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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