説明

乗客コンベア

【課題】停電時に建物内にいる者が避難経路を迅速に理解することができる乗客コンベアを提供する。
【解決手段】乗客コンベア1において、無端状に連結されて循環移動可能に設けられ、光が通過する通過部がそれぞれ形成された複数の踏み部3と、複数の踏み部3の内側に対して光を照射する第1光源8aと、電気を蓄える補助電源13と、停電の発生を検出する検出部18と、検出部18により停電の発生が検出された場合、補助電源13に蓄えられた電気により第1光源8aを点灯させる手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客を搬送する乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道等の乗客コンベアは、様々な建物に設置されて用いられている。乗客コンベアは、無端状に形成され循環移動可能に設けられた複数の踏み部(例えば、踏段及びパレット)により、乗客を搬送する装置である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような乗客コンベアでは、地震等の災害発生時に停電が発生した場合、通常、乗客コンベアの運転は停止される。この停電時、建物内にいる者は、非常口に向かう避難経路を視認して理解し、非常口に向かって移動する。このとき、非常口に一刻も早く到達するため、建物内にいる者は、停電で停止している乗客コンベアを通って非常口に向かうことがある。
【特許文献1】特開平10−045363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、停電時には、室内の照明が消えて建物内が暗くなるため、建物内にいる者が避難経路を迅速に理解することは困難になる。特に、点灯する非常口を視認することができたとしても、その非常口までの避難経路を視認することは困難である。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、停電時に建物内にいる者が避難経路を迅速に理解することができる乗客コンベアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態に係る特徴は、乗客コンベアにおいて、無端状に連結されて循環移動可能に設けられ、光が通過する通過部がそれぞれ形成された複数の踏み部と、複数の踏み部の内側に対して光を照射する第1光源と、電気を蓄える補助電源と、停電の発生を検出する検出部と、検出部により停電の発生が検出された場合、補助電源に蓄えられた電気により第1光源を点灯させる手段とを備えることである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、停電時に建物内にいる者が避難経路を迅速に理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施の一形態について図面を参照して説明する。
【0009】
図1に示すように、本発明の実施の一形態に係る乗客コンベア1は、建物の上階と下階との間に亘って据え付けられたトラス等の本体枠2と、無端状に連結されて本体枠2内に循環移動可能に設けられた複数の踏み部3と、それらの踏み部3の両側に位置して本体枠2上に立設される一対の欄干4と、各踏み部3を循環移動させる駆動部5と、その駆動部5を含む各部を制御する制御部6とを備えている。
【0010】
本体枠2は、上階と下階との間に斜めに配置されている。本体枠2の上階側の乗降口及び下階側の乗降口には、乗降板7a、7bがそれぞれ設けられている。また、本体枠2内には、各踏み部3の内側に対して光を照射する複数の第1光源8aと、各乗降板7a、7bの内側に対して光を照射する複数の第2光源8bとが設けられている。さらに、本体枠2内には、各踏み部3を循環移動方向に案内するコンベアガイドレール9が設けられている。なお、各踏み部3は、無端状に形成されたコンベアチェーン10により無端状に連結されている。
【0011】
各乗降板7a、7bは、図2に示すように、透光性を有して避難方向を示す指示部11をそれぞれ具備している。この指示部11は、光を透過させる透過部11aと、光を遮断する遮光部11bとを有している。透過部11aは、例えば透光性を有するガラスや樹脂等の材料により形成されている。また、遮光部11bは、遮光性を有する樹脂等の材料により、例えば矢印や記号等の図形や文字等の形状に形成されている。なお、図2では、遮光部11bは矢印や「非常口方面」という文字の形状に形成されている。
【0012】
各第1光源8aは、図3に示すように、各踏み部3の循環移動方向に平行に位置付けられ、露出する各踏み部3の下方にそれぞれ設けられている(図1参照)。また、各第2光源8bは、乗降板7aの端部及び乗降板7bの端部に沿うように位置付けられ、乗降板7a及び乗降板7bの下方にそれぞれ設けられている。なお、第1光源8a及び第2光源8bとしては、例えば、熱陰極蛍光灯や冷陰極蛍光灯等の放電灯、電球、LED及び有機EL等を用いる。各第1光源8a及び各第2光源8bは、スイッチ12を介して補助電源13に接続されている(図1参照)。補助電源13は、電気を蓄える装置であり、本体枠2内に設けられている。なお、補助電源13としては、例えば二次電池等を用いる。
【0013】
踏み部3は、図4に示すように、支持体であるフレーム3aと、そのフレーム3aに設けられた踏板3bと、その踏板3bに連続してフレーム3aに設けられた蹴上板(ライザ)3cと、フレーム3aに設けられた駆動ローラ3d及び追従ローラ3eとを備えている。この踏み部3が踏段として機能する。踏板3b及び蹴上板3cは平板状に形成されている。これらの踏板3b及び蹴上板3cには、光が通過する複数の通過部Tがそれぞれ形成されている。各通過部Tは、例えば円形状に形成された貫通孔であり、人の指や靴の紐等の物体が入らない大きさに形成されている。駆動ローラ3d及び追従ローラ3eは、フレーム3aに回転可能に設けられており、コンベアガイドレール9により案内される。これにより、踏み部3はコンベアガイドレール9に沿ってスムーズに循環移動する。このような踏み部3に対して各第1光源8aから照射された光は、各通過部Tを通過して踏み部3の外部にもれ出すことになる。
【0014】
一対の欄干4は、本体枠2上に立設されて平行に対向し、各踏み部3の両側に配置されている(図1及び図2参照)。欄干4の周縁部には、ガイドレール14と、そのガイドレール14に巻き掛けられて循環移動する手摺ベルト15とが設けられている。ガイドレール14は、循環移動する手摺ベルト15をガイドするためのレールである。手摺ベルト15は、断面形状C字形に形成されたベルトであり、ガイドレール14に沿って配置されている。手摺ベルト15の外周面はエスカレータ利用者が手をかける部分であり、手摺ベルト15は踏み部3と同期して略同じ速度で循環移動する。また、一対の欄干4には、円形状に形成された乗場灯16及び足元を照らすためのコムライト等のフットランプ17がそれぞれ設けられている。
【0015】
駆動部5は、上階の乗降板7aの下方に回転可能に設けられた駆動スプロケット5aと、下階の乗降板7bの下方に回転可能に設けられた従動スプロケット5bと、駆動スプロケット5aを回転駆動する駆動モータ5cとを備えている(図1参照)。駆動スプロケット5a及び従動スプロケット5bの間には、コンベアチェーン10が掛け渡されている。駆動スプロケット5aが駆動モータ5cの回転駆動により回転し、それに応じて、コンベアチェーン10が駆動スプロケット5aと従動スプロケット5bとの間を循環移動し、各踏み部3が循環移動する。駆動モータ5cは、上階の乗降板7aの下方に設けられており、停電の発生及び停電の解消を検出する検出部18を介して主電源19に接続される。検出部18は、本体枠2内に設けられており、主電源19からの電流量が所定値以下になった場合に、停電が発生したことを検知し、主電源19からの電流量が所定値より大きくなった場合に、停電が解消されたことを検知する。
【0016】
制御部6は、各種の制御を行うCPUと、そのCPUが実行するプログラムや固定データを記憶するROMと、各種のデータを一時的に記憶するRAMと、時間をカウントするタイマとを備えており、駆動部5の駆動モータ5cの回転制御及びスイッチ12のオン・オフ制御等の各種の制御を行う。この制御部6は、本体枠2内に設けられている(図1参照)。
【0017】
次に、このような乗客コンベア1の避難経路報知処理について説明する。乗客コンベア1の制御部6は各種のプログラムに基づいて避難経路報知処理を実行する。
【0018】
図5に示すように、制御部6は、停電が発生したか否かを判断し(ステップS1)、停電の発生に待機する(ステップS1のNO)。このとき、制御部6は、検出部18による検出結果に基づいて、すなわち検出部18により停電の発生が検出された場合に、停電が発生したと判断する。
【0019】
停電が発生したと判断した場合には(ステップS1のYES)、補助電源13に蓄えられた電気により各第1光源8a及び各第2光源8bを点灯させる(ステップS2)。具体的には、制御部6は、スイッチ12をオン状態にし、各第1光源8a及び各第2光源8bと補助電源13とを接続状態にする。
【0020】
これにより、各第1光源8a及び各第2光源8bは補助電源13からの電気により点灯する。このとき、各第1光源8aから照射された光は各踏み部3の通過部Tを通過し、各第2光源8bから照射された光は各乗降板7a、7bの指示部11の透過部11aを通過する。これにより、停電時でも、各踏み部3の通過部T及び各乗降板7a、7bの指示部11の透過部11aから光がもれ出し、各踏み部3及び各乗降板7a、7bの指示部11が明るくなるので、建物内にいる者は乗客コンベア1を視認することが可能になる。
【0021】
その後、停電が解消されたか否かを判断し(ステップS3)、停電が解消されるまで、各第1光源8a及び各第2光源8bの点灯を継続する(ステップS3のNO)。なお、制御部6は、検出部18による検出結果に基づいて、すなわち検出部18により停電の解消が検出された場合に、停電が解消されたと判断する。
【0022】
停電が解消されたと判断した場合には(ステップS3のYES)、補助電源13による点灯を停止させる(ステップS4)。具体的には、制御部6は、スイッチ12をオフ状態にし、各第1光源8a及び各第2光源8bと補助電源13とを切断状態にする。これにより、各第1光源8a及び各第2光源8bの点灯が停止する。
【0023】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、通過部Tをそれぞれ有する各踏み部3の内側に対して光を照射する複数の第1光源8aと、停電を検出する検出部18とを設け、停電の発生を検出した場合、補助電源13に蓄えられた電気により各第1光源8aを点灯させることによって、停電時でも、各踏み部3の通過部Tから光がもれ出し、乗客コンベア1を利用する避難経路が視認可能になるので、停電時に建物内にいる者が避難経路を迅速に理解することができる。
【0024】
さらに、透光性を有して避難方向を示す指示部11を具備する乗降板7a、7bを各踏み部3に対する乗降口に設け、その乗降板7a、7bの内側に対して光を照射する第2光源8bを設け、停電の発生を検出した場合、補助電源13に蓄えられた電気により、第1光源8aと共に第2光源8bを点灯させることによって、停電時でも、各乗降板7a、7bの指示部11から光がもれ出し、乗客コンベア1を利用する避難経路に加え、避難方向も視認可能になるので、建物内にいる者が避難経路を確実に理解することができる。
【0025】
踏み部3は、通過部Tが形成された踏板3bと、通過部Tが形成された蹴上板3cとを具備していることから、踏板3bの通過部Tから光がもれ出し、加えて、蹴上板3cの通過部Tからも光がもれ出すので、踏み部3を確実に視認することが可能になり、乗客コンベア1を利用する避難を容易に行うことができる。
【0026】
(他の実施の形態)
なお、本発明は、前述の実施の形態に限るものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【0027】
例えば、前述の実施の形態においては、踏み部3の踏板3b及び蹴上板3cに通過部Tとして貫通孔を形成しているが、これに限るものではなく、例えばその貫通孔に透光性を有する蓋材を嵌め込むようにしてもよい。この場合には、ゴミ等が貫通孔から本体枠2内に侵入することを防止することができる。さらに、通過部Tの大きさを大きくすることが可能になるので、通過部Tからのもれ出る光の量を向上させることができ、その結果として、避難経路をより確実に視認可能にすることができる。
【0028】
また、前述の実施の形態においては、全ての踏み部3に通過部Tを設けるようにしているが、これに限るものではなく、例えば、各踏み部3に一段おきに通過部Tを設けるようにしてもよい。加えて、踏み部3の踏板3b及び蹴上板3cの両方に通過部Tを設けているが、これに限るものではなく、例えば、踏み部3の踏板3b及び蹴上板3cのどちらか一方に通過部Tを設けるようにしてもよい。
【0029】
また、前述の実施の形態においては、指示部11の遮光部11bを記号や文字等の形状に形成しているが、これに限るものではなく、例えば、指示部11の遮光部11bにかえて透過部11aを記号や文字等の形状に形成するようにしてもよい。
【0030】
また、前述の実施の形態においては、検出部18により主電源19からの電流量に応じて停電の発生を検知するようにしているが、これに限るものではなく、例えば検出部18として照度を計測する照度計を設け、その照度計により停電の発生を検知するようにしてもよい。この場合には、通常の消灯と停電の発生との区別を行う必要があるため、店舗の営業時間中等の所定時間だけ検出部18による停電の発生検出を行う制御を実行する。
【0031】
また、前述の実施の形態においては、各第1光源8a及び各第2光源8bを停電中ずっと点灯させているが、これに限るものではなく、例えば各第1光源8a及び各第2光源8bを点滅させる制御を行うようにしてもよい。
【0032】
また、前述の実施の形態においては、通常運転時だけ乗場灯16及びフットランプ17を点灯させているが、これに限るものではなく、例えば停電の発生時にも乗場灯16及びフットランプ17を点灯させるようにしてもよい。この場合には、避難経路をより確実に視認可能にすることができる。
【0033】
最後に、前述の実施の形態においては、主電源19の電気により駆動モータ5cを駆動するようにしているが、これに限るものではなく、例えば、補助電源13の充電容量を検出する充電検出部を設け、その充電検出部により検出された充電容量に応じて、すなわちその充電容量が所定の充電容量以上である場合、補助電源13に蓄えられた電気により駆動モータ5cを駆動するようにしてもよい。なお、この場合には、各第1光源8a及び各第2光源8bの点灯が駆動モータ5cの駆動より優先される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の一形態に係る乗客コンベアの概略構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す乗客コンベアを示す正面図である。
【図3】図1及び図2に示す乗客コンベアを示す平面図である。
【図4】図1及び図2に示す乗客コンベアが備える踏み部を示す斜視図である。
【図5】図1及び図2に示す乗客コンベアの避難経路報知処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
1 乗客コンベア
3 踏み部
3b 踏板
3c 蹴上板
7a 乗降板
7b 乗降板
8a 第1光源
8b 第2光源
11 指示部
13 補助電源
18 検出部
T 通過部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結されて循環移動可能に設けられ、光が通過する通過部がそれぞれ形成された複数の踏み部と、
前記複数の踏み部の内側に対して光を照射する第1光源と、
電気を蓄える補助電源と、
停電の発生を検出する検出部と、
前記検出部により前記停電の発生が検出された場合、前記補助電源に蓄えられた前記電気により前記第1光源を点灯させる手段と、
を備えることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記複数の踏み部に対する乗降口に設けられた板であって、透光性を有して避難方向を示す指示部を具備する乗降板と、
前記乗降板の内側に対して光を照射する第2光源と、
を備え、
前記第1光源を点灯させる手段は、前記補助電源に蓄えられた前記電気により、前記第1光源と共に前記第2光源を点灯させることを特徴とする請求項1記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記踏み部は、前記通過部が形成された踏板と、前記通過部が形成された蹴上板とを具備していることを特徴とする請求項1又は2記載の乗客コンベア。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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