説明

乗客コンベア

【課題】踏み段に関する安全検出器が動作した場合に、異常に関与した踏み段を特定できる乗客コンベアを提供する。
【解決手段】無端状に連結されて循環移動する多数の踏み段を備えた乗客コンベアにおいて、踏み段に設けられた被検出部と、被検出部を検出すると共に、踏み段を特定して踏み段特定信号を発生する踏み段検出器54と、該踏み段検出器54から予め定められた第1位置に設けられ、踏み段に関係する異常を検出すると共に、該異常に基づいて第1異常検出信号を発生する第1CSS検出器101と、第1異常検出信号が発生した時の踏み段特定信号に基づいて異常に関与した踏み段を特定する踏み段特定器80とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の乗客コンベアの踏み段特定装置は下記特許文献1に記載のように、踏段に設けられた識別マークと、該識別マークを読み取るために不動のエスカレータ本体に設けられた読取手段と、該読取手段によって読み取られた識別信号に基づいて目的とする踏段を検索して所定位置に停止させる検索手段と、を備えたものである。
【0003】
かかる踏み段特定装置によれば、踏段に設けられた識別マークと、この識別マークを読み取るために不動のエスカレータ本体に設けられた読取手段と、読取手段によって読み取られた識別信号に基づいて目的とする踏段を検索して所定位置に停止させる検索手段とを備えているので、識別マークの読取信号に基づいて目標とする踏段を自動的に検索でき、従来の目視による確認作業が不要となり、作業性が飛躍的に高まる。また、各踏段が特定できるので、個々の踏段毎に工事履歴や手入れ履歴について管理が可能となる。
【特許文献1】特開2000−53359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、乗客コンベアの踏み段特定装置は、踏み段に関係する踏み段安全装置が動作した場合に、動作した該踏み段を特定するものではなく、踏み段に関する安全装置が動作した場合に、異常に関与した踏み段を特定できるものではなかった。このため、異常に関与した踏み段を特定しずらいために、復旧に時間を要するという課題があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、踏み段に関する安全検出器が動作した場合に、異常に関与した踏み段を特定できる乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る乗客コンベアは、無端状に連結されて循環移動する多数の踏み段を備えた乗客コンベアにおいて、前記踏み段に設けられた識別部と、前記識別部を検出すると共に、前記踏み段を特定して踏み段特定信号を発生する踏み段検出手段と、該踏み段検出手段から予め定められた第1位置に設けられ、前記踏み段に関係する異常を検出すると共に、該異常に基づいて第1異常検出信号を発生する第1異常検出手段と、前記第1異常検出信号が発生した時の前記踏み段特定信号に基づいて前記異常に関与した踏み段を特定する踏み段特定手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0007】
第2の発明に係る乗客コンベアは、第1位置に対応して踏み段の数に換算した第1踏み段数を記憶する記憶手段を備え、踏み段特定手段は、第1異常検出信号を発生すると、前記記憶手段から第1踏み段数を読み出すと共に、踏み段特定信号に基づいて特定した踏み段数に前記第1踏み段数を加算した踏み段を異常に関与した踏み段とする、ことを特徴とするものである。
これにより、第1異常検出器と踏み段検出手段との距離に応じて、踏み段の数に換算した第1踏み段数を記憶手段に記憶し、踏み段特定手段は、第1異常検出信号を発生すると、前記記憶手段から第1踏み段数を読み出すと共に、踏み段特定信号に基づいて特定した踏み段数に第1踏み段数を加算した踏み段を異常に関与した踏み段とする。このため、踏み段検出手段を第1異常検出手段の近傍に設ける必要がなくなるので、踏み段検出手段の取り付けが容易になる。
【0008】
第3の発明に係る乗客コンベアは、踏み段検出手段から離れた第2の位置に設けられ、踏み段に関係する異常を検出すると共に、該異常に基づいて第2異常検出信号を発生する第2異常検出手段を備え、記憶手段は、第2位置に対応して踏み段の数に換算した第2踏み段数を記憶し、踏み段特定手段は、第1異常検出信号を発生すると、前記記憶手段から第1踏み段数を読み出すと共に、前記踏み段特定信号に基づいて特定した踏み段数に前記第1踏み段数を加算した踏み段を異常に関与した踏み段とする、ことを特徴とするものである。
これにより、異常検出手段を複数有していても、一つの踏み段検出手段で足りる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、踏み段に関する安全検出器が動作した場合に、異常に関与した踏み段を特定できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
本発明の一実施の形態を図1から図4によって説明する。図1は本発明の一実施の形態を示す乗客コンベアの全体図、図2は発明の一実施の形態を示す乗客コンベアの制御装置の全体図、図3は図1に示す踏み段の側面図、図4は図1に示す踏み段及び踏み段検出器の正面図である。
図1おいて、乗客コンベアは、手摺4と、デッキボード(欄干)5と、複数の踏み段10とを有しており、乗降口には、下側トラス7と、上側トラス9とを備えている。デッキボード(欄干)5の内部には、踏み段10を駆動する移動機構20を備えている。
【0011】
移動機構20は、下部くし2aを有すると共に、乗員が乗り込む乗込み部2から上部くし3aを有する降り部3に移動させると共に、踏み段10を循環移動させる上部に設けられた第1スプロケット21と、下部に設けられた第2スプロケット22と、第1スプロケット21と第2スプロケット22とを連結する無端状のチェーン24と、踏み段10の走行を案内させる無端状のレール26とを備え、各段の踏み段10の固定部10cがチェーン24に所定間隔で固定されている。
駆動部30は、移動機構20を駆動するもので、第1スプロケット21の軸(図示せず)を、減速機31を介して回転駆動するモータ33と、モータ33を駆動制御する制御盤35を有している。そして、乗込み部2から降り部3に沿って設けられると共に、移動機構20及び駆動部30は、踏み段10の側面近傍に設けられた側板40により覆われている。
そして、踏み段10には、駆動ローラー12、追従ローラー16が設けられて該ローラ12,16がレール26の上を回転するように形成されている。
【0012】
乗客コンベアの安全検出器は、第1位置としての下部くし2aの近傍に設けられると共に、異常を検出することにより第1異常検出信号を発生する第1異常検出手段として第1CSS(Comb Safety Switch)検出器101と、第2位置としての上部くし3aの近傍には、異常を検出することにより第2異常検出信号を発生する第2CSS検出器102とを備えている。
ここで、第2の位置は、第1の位置から所定距離離れており、該所定距離は、踏み段10の数で換算できるように形成されており、踏み段10の数でX段と成っている。
第1及び第2CSS検出器101,102は、障害物が踏み段10と下部くし2a又は上部くし3aの間に挟まれて下部くし2a又は上部くし3aが持ち上がることにより異常検出信号を発生するように形成されている。
【0013】
図2において、乗客コンベアの制御装置は、第1CSS検出器101の近傍に設けられて踏み段10を検出すると共に、踏み段10を特定する踏み段特定信号を発生する踏み段検出器54と、第1及び第2CSS検出器101,102が異常検出信号を発生した時の踏み段10を特定する踏み段特定器80と、特定した踏み段10及び動作した第1,第2CSS検出器101,102を表示する表示器90とを備えている。
【0014】
図3及び図4において、識別部としての被検出部52は、踏み段10の軸14にリング状の色彩が付された第1から第7色帯部52a〜52gを有していて、すべての踏み段10の軸14に設けられている。
踏み段検出器54は、乗客コンベアに対応して一つのみ設けられると共に、該第1から第7色帯部52a〜52gに対応した反射型の第1から第7センサ54a〜54gとを有している。
ここで、第1から第7色帯部52a〜52gは、黒色と白色とを組み合わせて2進数表示で踏み段10が特定できるように形成されている。つまり、第1センサ54aは、第1色帯部52aが黒色であれば、が「0」信号を出力し、第1色帯部52aが白色であれば、「1」信号を出力することにより、第1、第2、・・第7センサ54a〜54gは、順に2進数の2、2、・・・25、26の桁を出力して踏み段特定信号を発生するように形成されている。
【0015】
踏み段特定器80は、踏み段検出器54の踏み段特定信号により第1又は第2CSS検出器101,102が動作した踏み段10を特定すると共に、踏み段10を10進数表示する信号を発生する演算部82と、第1CSS検出器101と第2CSS検出器102との距離を踏み段10の数で示すと共に、その数Xを記憶する記憶手段としてのRAM84とを備えている。
【0016】
演算部82は、第1CSS検出器101からの第1異常検出信号が発生すると、踏み段検出器54の踏み段特定信号により踏み段10の段数を例えばA段と特定して表示器90に踏み段10の段数と異常動作した第1CSS検出器101とを表示するように形成されている。
また、演算部82は、第2CSS検出器102からの第2異常検出信号が発生すると、上記のようにして踏み段10の段数をA段と特定して、RAM84から読み出したX段とA段とを加算したY段として、第2CSS検出器102が第2異常検出信号を発生する原因となった踏み段10の段数Yを求めると共に、表示器90に踏み段10の段数と異常動作した第2CSS検出器102とを表示するように形成されている。
【0017】
上記のように構成された乗客コンベアの動作を図1から図4を参照して説明する。いま、乗客コンベアの踏み段10が下から上に循環運転している。踏み段検出器54は、各踏み段10に設けられた被検出部52から踏み段特定信号を発生して踏み段特定器80に入力している。
【0018】
いま、乗り込み部に乗員が乗り込む際に、傘の先端などが下部くし2aと踏み段10との間に挟まると、下部くし2aが持ち上がり、第1CSS検出器101が第1異常検出信号を発生して踏み段特定器80に入力する。踏み段特定器80の演算部82は、踏み段特定信号により踏み段10の段数を例えば、A段として、RAM84から第1位置としてゼロを読み出して、該ゼロとA段とを加算して求めたA段を、異常に関与した踏み段10とする。踏み段特定器80は、表示器90動作した異常検出器が第1CSS検出器101であることを表示すると共に、異常に関与した踏み段10をA段として表示する。
【0019】
次に、降り部から乗客が降りる際に傘の先端などが上部くし3aと踏み段10との間に挟まると、上部くし3aが持ち上がり、第2CSS検出器102が第2異常検出信号を発生して踏み段特定器80に入力する。踏み段特定器80の演算部82は、踏み段特定信号により踏み段10の段数を例えば、A段として、RAM84から第2位置としてX段を読み出して、該X段とA段とを加算して求めたY段を、異常に関与した踏み段10とする。踏み段特定器80は、表示器90動作した異常検出器が第2CSS検出器102であることを表示すると共に、異常に関与した踏み段10をY段として表示する。
【0020】
上記実施形態の乗客コンベアは、無端状に連結されて循環移動する多数の踏み段10を備えた乗客コンベアにおいて、踏み段10に設けられた被検出部52と、被検出部52を検出すると共に、踏み段10を特定して踏み段特定信号を発生する踏み段検出器54と、該踏み段検出器54から予め定められた第1位置に設けられ、踏み段10に関係する異常を検出すると共に、該異常に基づいて第1異常検出信号を発生する第1CSS検出器101と、第1異常検出信号が発生した時の踏み段特定信号に基づいて異常に関与した踏み段10を特定する踏み段特定器80と、を備えたものである。
これにより、踏み段10に関する第1CSS検出器101が動作した場合に、異常に関与した踏み段10を特定できるので、故障の復旧が速やかに成される。
【0021】
また、上記実施形態の乗客コンベアは、踏み段検出器54から離れた第2の位置に設けられ、踏み段10に関係する異常を検出すると共に、該異常に基づいて第2異常検出信号を発生する第2CSS検出器102を備え、踏み段特定器80のRAM84段は、第2位置に対応して踏み段の数に換算した第2踏み段数Xを記憶し、踏み段特定器80は、第2異常検出信号を発生すると、RAM84から第2踏み段数Xを読み出すと共に、踏み段特定信号に基づいて特定した踏み段数に第2踏み段数Xを加算した踏み段を異常に関与した踏み段とする、ものである。
これにより、第1及び第2CSS検出器101,102を複数有していても、一つの踏み段検出器54で足りる。
【0022】
上記実施の形態では、踏み段検出器54を第1CSS検出器101の近傍に取付けたが、第2CSS検出器102の近傍に取付けても良い。この場合には、踏み段特定器80のRAM84に第1位置がX段、第2位置がゼロを記憶することになる。
これにより、第1CSS検出器101と踏み段検出器80との距離に応じて、踏み段10の数に換算した第1踏み段数XをRAM84に記憶し、踏み段特定器80は、第1異常検出信号を発生すると、RAM84から第1踏み段数Xを読み出すと共に、踏み段特定信号に基づいて特定した踏み段数に第1踏み段数を加算した踏み段を異常に関与した踏み段とする。
このため、踏み段検出器54を第1CSS検出器101の近傍に設ける必要がなくなるので、踏み段検出器54の取り付けが容易になる。
【0023】
上記実施の形態では、踏み段10に関係する異常を検出すると共に、該異常に基づいて異常検出信号を発生する第1、第2CSS検出器101,102としてCSS検出器を例に説明したが、踏み段10の浮き上がりを追従ローラー16の浮き上がりを感知すると作動して異常検出信号を発生するCRS(Curved rail Safety Device)検出器、スカートガードと踏み段10との間に挟まれた場合に作動して異常検出信号を発生するSSS(Skirt guard Safety Switch)検出器、踏み段10の駆動ローラー12,追従ローラー16が剥離したときに作動して異常検出信号を発生するSRS(Step Roller Safety Device)検出器を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、乗客コンベアに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態を示す乗客コンベアの全体図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示す乗客コンベアの制御装置の全体図である。
【図3】図1に示す踏み段の側面図である。
【図4】図1に示す踏み段及び踏み段検出器の正面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 踏み段、52 識別部、54 踏み段検出器、80 踏み段特定器、84 RAM(記憶手段)、101 第1CSS検出器、102 第2CSS検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結されて循環移動する多数の踏み段を備えた乗客コンベアにおいて、
前記踏み段に設けられた識別部と、
前記識別部を検出すると共に、前記踏み段を特定して踏み段特定信号を発生する踏み段検出手段と、
該踏み段検出手段から予め定められた第1位置に設けられ、前記踏み段に関係する異常を検出すると共に、該異常に基づいて第1異常検出信号を発生する第1異常検出手段と、
前記第1異常検出信号が発生した時の前記踏み段特定信号に基づいて前記異常に関与した踏み段を特定する踏み段特定手段と、
を備えたことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記第1位置に対応して前記踏み段の数に換算した第1踏み段数を記憶する記憶手段を備え、
前記踏み段特定手段は、第1異常検出信号を発生すると、前記記憶手段から第1踏み段数を読み出すと共に、前記踏み段特定信号に基づいて特定した踏み段数に前記第1踏み段数を加算した踏み段を異常に関与した踏み段とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記踏み段検出手段から離れた第2の位置に設けられ、前記踏み段に関係する異常を検出すると共に、該異常に基づいて第2異常検出信号を発生する第2異常検出手段を備え、
前記記憶手段は、前記第2位置に対応して前記踏み段の数に換算した第2踏み段数を記憶し、
前記踏み段特定手段は、第2異常検出信号を発生すると、前記記憶手段から前記第2踏み段数を読み出すと共に、前記踏み段特定信号に基づいて特定した踏み段数に前記第2踏み段数を加算した踏み段を異常に関与した踏み段とする、
ことを特徴とする請求項2に記載の乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−222357(P2008−222357A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61626(P2007−61626)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】